説明

分析装置

【課題】試薬のロット切り替わりタイミングでキャリブレーション用測定パラメータの変更があった場合であっても、旧ロットの試薬に対するキャリブレーション処理を可能にする分析装置を提供すること。
【解決手段】この発明にかかる分析装置1は、ロット番号などの試薬の各バージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータをそれぞれ記憶するデータベースと、キャリブレーション処理において実際に用いられる試薬のバージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータを記憶手段から取得するパラメータ設定部31aとを備え、パラメータ設定部31aが取得したキャリブレーション用測定パラメータをもとにキャリブレーション処理を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータの少なくとも一方をもとに、試薬を実際に用いた測定処理を行なって検量線を設定するキャリブレーション処理や検体の測定データを処理する検体分析データ処理の少なくとも一方を行なう分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を自動的に分析する装置として、試薬が分注された反応容器に検体を加え、反応容器内の試薬と検体の間で生じた反応を光学的に検出する分析装置が知られている。このような分析装置においては、試薬補充時などのタイミングで、分析項目ごとにキャリブレーション処理を行なうことによって分析精度を維持している。このキャリブレーション処理においては、既知の結果を示す標準物質(キャリブレーター)に対して分析項目に応じた試薬を実際に用いて分析を行ない、この標準物質に対する分析結果をもとに、測光処理の基準となる検量線を設定している。また、検体分析データ処理においては、検体(サンプル)に対して分析項目に応じた試薬を実際に用いて分析を行ない、この検体に対する分析結果をもとに、診断の基準となる情報を設定している。
【0003】
このキャリブレーション処理を行なって検量線を設定するためには、基本検量線、測定ポイント、キャリブレーター数、キャリブレーターの多重測定回数、測定範囲、キャリブレーション有効期限などのキャリブレーション用測定パラメータが検査項目ごとに必要となる。また、検体分析データ処理を行なって情報を設定するためには、濃度値ダイナミックレンジ、濃度値単位などの検体分析用測定パラメータが検査項目ごとに必要となる。従来の分析装置においては、これらパラメータを検査項目ごとにデータベースに記憶しておき、キャリブレーション処理や検体分析データ処理の対象となる検査項目に応じたこれらパラメータをデータベースから取得して、キャリブレーション処理や検体分析データ処理を行なっていた(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−275706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、キャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータは、試薬のロット切り替わりタイミングなどに応じて適時更新される。しかしながら、従来の分析装置は、これらパラメータを検査項目ごとに1種類しか持つことができなかった。このため、これらパラメータの更新後に、更新前に使用していた旧ロットの試薬を使用したい場合があっても、旧ロットの試薬に対応するパラメータが消去されているため、旧ロットの試薬に対するキャリブレーション処理や検体分析データ処理を行なうことができず、このロットの試薬を廃棄せざるを得ないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記した従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、試薬のロット切り替わりタイミングでキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータの変更があった場合であっても、旧ロットの試薬に対するキャリブレーション処理や検体分析データ処理を可能にする分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる分析装置は、キャリブレーション用測定パラメータをもとに試薬を実際に用いた測定処理を行なって検量線を設定するキャリブレーション処理を行なう分析装置において、前記試薬の各バージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータをそれぞれ記憶する記憶手段と、前記キャリブレーション処理において実際に用いられる試薬のバージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータを前記記憶手段から取得し、該取得したキャリブレーション用測定パラメータをもとに前記キャリブレーション処理を当該分析装置に実行させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる分析装置は、検体分析用測定パラメータをもとに試薬を実際に用いた測定処理を行なって検量線を設定するキャリブレーション処理を行なう分析装置において、前記試薬の各バージョンに対応する検体分析用測定パラメータをそれぞれ記憶する記憶手段と、前記検体分析データ処理において実際に用いられる試薬のバージョンに対応する検体分析用測定パラメータを前記記憶手段から取得し、該取得した検体分析用測定パラメータをもとに前記検体分析データ処理を当該分析装置に実行させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる分析装置は、キャリブレーション用測定パラメータおよび検体分析用測定パラメータをもとに試薬を実際に用いた測定処理を行なって検量線を設定するキャリブレーション処理および検体分析データ処理を行なう分析装置において、前記試薬の各バージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータおよび検体分析用測定パラメータをそれぞれ記憶する記憶手段と、前記キャリブレーション処理および検体分析データ処理において実際に用いられる試薬のバージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータおよび検体分析用測定パラメータを前記記憶手段から取得し、該取得したキャリブレーション用測定パラメータおよび検体分析用測定パラメータをもとに前記キャリブレーション処理および検体分析データ処理を当該分析装置に実行させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
さらにまた、この発明にかかる分析装置においては、前記試薬は、ロット番号ごとに前記バージョンが設定されており、前記記憶手段は、前記試薬の各ロット番号に対応するキャリブレーション用測定パラメータをそれぞれ記憶し、前記制御手段は、前記キャリブレーション処理において実際に用いられる試薬のロット番号に対応するキャリブレーション用測定パラメータを前記記憶手段から取得し、該取得したキャリブレーション用測定パラメータをもとに前記キャリブレーション処理を当該分析装置に実行させることを特徴とする。
【0011】
さらにまた、この発明にかかる分析装置においては、前記試薬は、ロット番号ごとに前記バージョンが設定されており、前記記憶手段は、前記試薬の各ロット番号に対応する検体分析用測定パラメータをそれぞれ記憶し、前記制御手段は、前記検体分析データ処理において実際に用いられる試薬のロット番号に対応する検体分析用測定パラメータを前記記憶手段から取得し、該取得した検体分析用測定パラメータをもとに前記検体分析データ処理を当該分析装置に実行させることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、この発明にかかる分析装置においては、前記キャリブレーション用測定パラメータは、基本検量線、測定ポイント、キャリブレーター数、キャリブレーターの多重測定回数、測定範囲、キャリブレーション有効期限の少なくともいずれかであることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、この発明にかかる分析装置においては、前記検体分析用測定パラメータは、濃度値ダイナミックレンジ、濃度値単位の少なくともいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、試薬の各バージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータをそれぞれ記憶する記憶手段と、キャリブレーション処理や検体分析データ処理において実際に用いられる試薬のバージョンに対応するこれらパラメータを記憶手段から取得し、該取得したパラメータをもとにキャリブレーション処理や検体分析データ処理を当該分析装置に実行させる制御手段とを備えることによって、試薬のロット切り替わりタイミングでキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータの変更があった場合であっても、旧ロットの試薬に対するキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータを取得できるため、旧ロットに対するキャリブレーション処理や検体分析データ処理を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である分析装置について、血液や尿などを生化学検査の手法を採用して分析する、いわゆる生化学分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0016】
図1は、実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態にかかる分析装置1は、分析対象である検体および試薬をキュベット21にそれぞれ分注し、分注したキュベット21内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御機構3とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学分析を自動的に行なう。なお、キュベット21は、容量が数μL〜数mLと微量な容器であり、測光部18の光源から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス、環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。キュベット21は、側壁と底壁とによって液体を保持する水平断面が四角形の液体保持部が形成され、液体保持部の上部に開口を有する四角筒形状の反応容器である。
【0017】
測定機構2は、図1に示すように、大別して検体移送部11、検体分注機構12、反応テーブル13、試薬庫14、試薬分注機構16、攪拌部17、測光部18および洗浄部19を備える。
【0018】
検体移送部11は、血液を検体として収容した複数の検体容器11aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック11bを備える。検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11a内の検体は、検体分注機構12によって、反応テーブル13上に配列して搬送されるキュベット21に分注される。
【0019】
検体分注機構12は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム12aを備える。このアーム12aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なうノズルが取り付けられている。検体分注機構12は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注機構12は、上述した検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11aの中からノズルによって検体を吸引し、アーム12aを図中時計回りに旋回させ、キュベット21に検体を吐出して分注を行なう。
【0020】
反応テーブル13は、キュベット21への検体や試薬の分注、キュベット21の攪拌、測光、洗浄および汚れ検出用測光を行なうためにキュベット21を所定の位置まで移送する。この反応テーブル13は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル13の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル13の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽がそれぞれ設けられている。
【0021】
試薬庫14は、キュベット21内に分注される試薬が収容された試薬容器15を複数収納できる。試薬庫14には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬容器15が着脱自在に収納される。試薬庫14は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫14の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器15を試薬分注機構16による試薬吸引位置まで移送する。試薬庫14の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、試薬庫14の下方には、恒温槽が設けられている。このため、試薬庫14内に試薬容器15が収納され、蓋が閉じられたときに、試薬容器15内に収容された試薬を冷却し、試薬容器15内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0022】
試薬容器15の側面部には、試薬容器15に収容された試薬に関する試薬情報が記録された記憶媒体が付されている。記憶媒体は、符号化された各種の情報を表示したバーコード記号であり、光学的に読み取られる。試薬情報として、この試薬が使用される検査項目名、試薬名、収容する試薬容量、試薬有効期限、ロット番号、ボトル番号、基本検量線データ、キャリブレーターコントロールデータがある。試薬庫14の外周部には、この記憶媒体を光学的に読み取る読取部14aが設けられている。読取部14aは、記憶媒体に対して赤外光または可視光を発し、記憶媒体からの反射光を処理することによって、記憶媒体の情報を読み取る。また、読取部14aは、記憶媒体を撮像処理し、撮像処理によって得られた画像情報を解読して、記憶媒体の情報を取得してもよい。読取部14aは、読み取った記憶媒体の情報を制御部31に出力する。なお、記憶媒体は、符号化された各種の情報を表示し光学的に読み取られるバーコード記号であるほか、所定周波数の電波を介して記憶する試薬情報の送信および記憶する試薬情報の書替えを行なうRFIDタグであってもよい。この場合、読取部14aは、所定周波数の電波を介して、記憶媒体の情報の読み取りおよび記憶媒体の情報の書替えを行なってもよい。
【0023】
試薬分注機構16は、検体分注機構12と同様に、試薬の吸引および吐出を行なう試薬ノズルが先端部に取り付けられたアーム16aを備える。アーム16aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なう。試薬分注機構16は、試薬庫14上の所定位置に移動された試薬容器15内の試薬をノズルによって吸引し、アーム16aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の所定位置に搬送されたキュベット21に分注する。攪拌部17は、キュベット21に分注された検体と試薬との攪拌を行ない、反応を促進させる。
【0024】
測光部18は、たとえば、所定の測光位置に搬送されたキュベット21にハロゲンランプなどの光源から分析光(340〜800nm)を照射し、キュベット21内の液体を透過した光を分光し、PDAなどの受光素子による各波長光の強度測定を行なうことによって、分析対象である検体と試薬との反応液に特有の波長の吸光度を測定する。
【0025】
洗浄部19は、洗浄ノズルによって、測光部18による測定が終了したキュベット21内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで分析処理が終了したキュベット21を洗浄する。この洗浄されたキュベット21は再利用される。
【0026】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、データベース35および出力部36を備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0027】
制御部31は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行ない、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。
【0028】
入力部32は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部33は、測光部18によって測定された吸光度に基づいて検体の成分分析等を行なう。データベース35は、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。
【0029】
出力部36は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。また、出力部36は、図示しない通信ネットワークを介して外部装置に諸情報を出力する。
【0030】
以上のように構成された分析装置1では、列をなして順次搬送される複数のキュベット21に対して、検体分注機構12が検体容器11a中の検体を分注し、試薬分注機構16が試薬容器15中の試薬を分注した後、測光部18が検体と試薬とを反応させた状態の検体の分光強度測定を行ない、この測定結果を分析部33が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行なわれる。また、洗浄部19が測光部18による測定が終了した後に搬送されるキュベット21を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行なわれる。
【0031】
ここで、試薬は、試薬の改良にともなってバージョンが上がっていく。たとえば、試薬のロット番号が新たに切り替わるときに、試薬の改良結果を踏まえ、この改良に対応した製造方法で試薬が製造され、バージョンが上がっていく。データベース35は、図2に示すように、この試薬の各バージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータをそれぞれ記憶するパラメータ用データベース351を有する。パラメータ用データベース351は、図2に示すように、試薬の各バージョンに対応する各パラメータであるパラメータ1〜パラメータnを記憶する。パラメータ1〜パラメータnは、図3の表に示すように、検査項目および試薬のバージョンに応じてそれぞれ定められる。前述したように、試薬のバージョンは、各ロット番号に応じてそれぞれ定められるものであるため、図3の表に示すように、パラメータ1〜パラメータnは、各バージョンに該当するロット番号に対しても対応づけられている。
【0032】
なお、キャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータであるパラメータ1〜nは、基本検量線を示す演算式、測定ポイント、キャリブレーター数、同じキャリブレーターを複数回測定しばらつきを求めるためのキャリブレーターの多重測定回数、キャリブレーション有効期限、検体における濃度値ダイナミックレンジ、濃度値単位などである。たとえば、パラメータ1の場合、測定ポイントが濃度値0.0、1.0、2.0、3.0、4.0の5ポイントであり基本検量線が検量線M1であるのに対し、パラメータ2の場合、測定ポイントが濃度値0.1、1.1、2.1、3.1、4.1、5.1の6ポイントであり基本検量線が検量線M2である。
【0033】
制御部31は、キャリブレーション処理や検体分析データ処理におけるキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータを設定するパラメータ設定部31aを有する。パラメータ設定部31aは、キャリブレーション処理や検体分析データ処理の開始を指示された場合、これら処理において実際に用いられる試薬のバージョンに対応する各パラメータをパラメータ用データベース351におけるパラメータ1〜nの中から取得し、該取得したパラメータを各処理におけるパラメータとして設定する。制御部31は、パラメータ設定部31aが設定した各パラメータをもとに各処理を当該分析装置に実行させる。
【0034】
つぎに、図4を参照して、分析装置1においてキャリブレーション処理や検体分析データ処理を実行するまでの処理手順について説明する。まず、制御部31は、分析装置の起動時に試薬庫14および読取部14aを制御して、試薬庫14内に保管されている試薬容器15の記憶媒体に対する読取処理を行なって試薬容器15の試薬情報を取得する(ステップS2)。これによって、制御部31は、キャリブレーション処理や検体分析データ処理において用いられる試薬容器15の試薬情報を取得する。なお、試薬情報として、この試薬が使用される検査項目名、試薬名、収容する試薬容量、試薬有効期限、ロット番号、ボトル番号が取得される。その後、制御部31は、分析部33からの指示情報の受信の有無をもとに、キャリブレーション処理や検体分析データ処理の演算指示があったか否かを判断する(ステップS3)。制御部31は、分析部33からの指示があると判断するまでステップS3の判断処理を繰り返す。
【0035】
分析部33は、分析装置1にセットされたサンプル(キャリブレータまたは検査対象の検体)のデータを取得した時点で、制御部31に演算指示を出力する。演算指示を受けた時点で、制御部31はサンプルの測定データを取得する(ステップS4)。その後、キャリブレーション演算処理や検体分析データ演算処理を行なう場合、パラメータ設定部31aが、データベース35内のパラメータ用データベース351を参照する(ステップS5)。そして、パラメータ設定部31aは、パラメータ用データベース351内のパラメータ1〜nの中からキャリブレーション処理や検体分析データ処理において用いられる試薬容器15の試薬情報に対応するキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータを取得し、取得したキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータを、開始が指示されたキャリブレーション処理や検体分析データ処理におけるキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータとして設定する(ステップS6)。パラメータ設定部31aは、たとえば、キャリブレーション処理や検体分析データ処理において用いられる試薬容器15の試薬情報において、検査項目が「A」でありロット番号が「01」である場合にはパラメータ1をキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータとして設定し、検査項目が「A」でありロット番号が「03」である場合にはパラメータ2をキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータとして設定する。
【0036】
そして、制御部31は、パラメータ設定部31aが設定したキャリブレーション用測定パラメータを用いてキャリブレーション処理を当該分析装置に実行させて検量線を設定するキャリブレーション演算処理、および/または、検体分析用測定パラメータを用いて検体分析データ演算処理を行なう(ステップS7)。その後、制御部31は、分析処理の対象(キャリブレータや他の検体)がまだセットされているか否かをもとに分析終了か否かを判断する(ステップS8)。制御部31は、分析処理の対象がセットされておらず分析終了と判断した場合は(ステップS8:No)、分析処理動作を終了し、分析処理の対象がセットされており分析終了ではないと判断した場合は(ステップS8:Yes)、前述したステップS3の演算指示待ち動作に移行する。
【0037】
このように、本実施の形態にかかる分析装置においては、試薬の各バージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータをそれぞれ記憶し、キャリブレーション処理や検体分析データ処理において実際に用いられる試薬のバージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータを、記憶されたパラメータの中から取得し、該取得したパラメータをもとにキャリブレーション処理や検体分析データ処理における演算を当該分析装置に実行させる。
【0038】
このため、本実施の形態によれば、試薬のロット切り替わりタイミングで試薬のバージョンが変更し、このバージョンに対応させて新たなキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータが設定された場合であっても、旧ロットの試薬に対するキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータも適切に取得できるため、旧ロットに対するキャリブレーション処理や検体分析データ処理を行なうことができる。
【0039】
特に試薬改良にともない試薬全体としての変化はごく小さいものであっても、分析処理に使用する試薬量が微量であるため、キャリブレーション処理や検体分析データ処理における検量線の設定や検体分析結果の設定に大きな影響を与え、正しい分析精度を保持できない場合があり得る。これに対し、本実施の形態においては、試薬改良があった場合であっても、各試薬のバージョンすなわち各試薬のロット番号に対応した最適なキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータでキャリブレーション処理や検体分析データ処理を行なって検量線や検体分析結果を設定することができるため、いずれのバージョンの試薬を用いた場合であっても分析精度を高く保持することができる上に、試薬の無駄も発生せず、高価な試薬を適切に使用可能である。
【0040】
また、複数本の試薬容器15に対して一度にキャリブレーション処理を連続して行なう場合においても、試薬容器のロット番号がそれぞれ異なる場合には、従来であれば、一部のロット番号に対してはキャリブレーション処理が行なえず、また、たとえキャリブレーション処理を行なうことができたとしても各ロット番号に応じたキャリブレーション用測定パラメータを中央管理サーバなどから取得してキャリブレーション処理ごとに設定しなおすという煩雑な処理を行なわざるを得なかった。これに対し、本実施の形態においては、試薬の各バージョンすなわち試薬の各ロット番号に対応するキャリブレーション用測定パラメータを記憶しているため、試薬のロット番号が異なる場合であっても各試薬のロット番号に対応するキャリブレーション用測定パラメータを自動的に取得し、そのまま連続してキャリブレーション処理を実行することができることから、分析装置の操作者の作業負担を格段に軽減できる。
【0041】
なお、データベース35内のパラメータ用データベース351には、入力部32からのキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータの追加指示情報、またはネットワーク回線などを介して外部から送信されたキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータの追加指示情報をもとに、新たなバージョンの試薬に対応するキャリブレーション用測定パラメータや検体分析用測定パラメータが追加可能である。
【0042】
また、上記実施の形態で説明した分析装置1は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記憶媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置の処理動作を実現する。ここで、所定の記憶媒体とは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステムの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などのように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」など、コンピュータシステムによって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記憶媒体を含むものである。
【0043】
また、このコンピュータシステムは、ネットワーク回線を介して接続した管理サーバや他のコンピュータシステムからプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで分析装置の処理動作を実現する。
【0044】
さらにまた、上記実施の形態で説明した分析装置1は、一般的に生化学検査と呼ばれる検査手法を採用した分析を行なう生化学分析装置であるが、本発明を、一般的に免疫学検査と呼ばれる検査手法を採用した、いわゆる免疫分析装置に適用しても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すデータベースを説明する図である。
【図3】図1に示す各パラメータと試薬情報とを対応づけた表を示す図である。
【図4】図1に示す分析装置におけるキャリブレーション処理を実行するまでの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
1 分析装置
2 測定機構
3 制御機構
11 検体移送部
11b 検体ラック
11a 検体容器
12 検体分注機構
12a,16a アーム
13 反応テーブル
14 試薬庫
14a 読取部
15 試薬容器
16 試薬分注機構
17 攪拌部
18 測光部
19 洗浄部
21 キュベット
31 制御部
31a パラメータ設定部
32 入力部
33 分析部
35 データベース
36 出力部
351 パラメータ用データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリブレーション用測定パラメータをもとに試薬を実際に用いた測定処理を行なって検量線を設定するキャリブレーション処理を行なう分析装置において、
前記試薬の各バージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータをそれぞれ記憶する記憶手段と、
前記キャリブレーション処理において実際に用いられる試薬のバージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータを前記記憶手段から取得し、該取得したキャリブレーション用測定パラメータをもとに前記キャリブレーション処理を当該分析装置に実行させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
検体分析用測定パラメータをもとに試薬を実際に用いた測定処理を行なって検量線を設定するキャリブレーション処理を行なう分析装置において、
前記試薬の各バージョンに対応する検体分析用測定パラメータをそれぞれ記憶する記憶手段と、
前記検体分析データ処理において実際に用いられる試薬のバージョンに対応する検体分析用測定パラメータを前記記憶手段から取得し、該取得した検体分析用測定パラメータをもとに前記検体分析データ処理を当該分析装置に実行させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項3】
キャリブレーション用測定パラメータおよび検体分析用測定パラメータをもとに試薬を実際に用いた測定処理を行なって検量線を設定するキャリブレーション処理および検体分析データ処理を行なう分析装置において、
前記試薬の各バージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータおよび検体分析用測定パラメータをそれぞれ記憶する記憶手段と、
前記キャリブレーション処理および検体分析データ処理において実際に用いられる試薬のバージョンに対応するキャリブレーション用測定パラメータおよび検体分析用測定パラメータを前記記憶手段から取得し、該取得したキャリブレーション用測定パラメータおよび検体分析用測定パラメータをもとに前記キャリブレーション処理および検体分析データ処理を当該分析装置に実行させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項4】
前記試薬は、ロット番号ごとに前記バージョンが設定されており、
前記記憶手段は、前記試薬の各ロット番号に対応するキャリブレーション用測定パラメータをそれぞれ記憶し、
前記制御手段は、前記キャリブレーション処理において実際に用いられる試薬のロット番号に対応するキャリブレーション用測定パラメータを前記記憶手段から取得し、該取得したキャリブレーション用測定パラメータをもとに前記キャリブレーション処理を当該分析装置に実行させることを特徴とする請求項1または3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記試薬は、ロット番号ごとに前記バージョンが設定されており、
前記記憶手段は、前記試薬の各ロット番号に対応する検体分析用測定パラメータをそれぞれ記憶し、
前記制御手段は、前記検体分析データ処理において実際に用いられる試薬のロット番号に対応する検体分析用測定パラメータを前記記憶手段から取得し、該取得した検体分析用測定パラメータをもとに前記検体分析データ処理を当該分析装置に実行させることを特徴とする請求項2または3に記載の分析装置。
【請求項6】
前記キャリブレーション用測定パラメータは、基本検量線、測定ポイント、キャリブレーター数、キャリブレーターの多重測定回数、測定範囲、キャリブレーション有効期限の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1,3,4のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項7】
前記検体分析用測定パラメータは、濃度値ダイナミックレンジ、濃度値単位の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項2、3、5のいずれか一つに記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−180676(P2009−180676A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21669(P2008−21669)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】