説明

分析装置

【課題】 分析装置における真空容器の蓋体による密閉を好適に行え、かつ開口部から容器本体内へのアクセスを容易化する。
【解決手段】 斜め上向きに開口する開口部1aを真空容器101の容器本体1に設け、その開口1a部に対して蓋体2が、シール部材3を押圧変形させて開口部1aを完全に閉止する閉止位置P1及びその閉止位置P1よりも上方であってシール部材3に接触又は近接する準閉止位置P2の間では上下方向に移動するとともに、その準閉止位置P2及びそこから水平に一定距離離間した中間位置P3の間では水平にスライド移動し、その中間位置P3及びそこから前記スライド方向とは異なる方向に一定距離離間した開放位置P4の間では上下左右前後いずれかの方向に移動するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線や電子線などを用いて真空中に置かれたサンプルの定量・定性分析を行う分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の分析装置に用いられる真空チャンバには、サンプルを出し入れするための開口部が設けてあり、その開口部を蓋体によって開閉できるように構成されている。その開閉構造は、従来、大きく分けて2つある。
【0003】
1つは引出構造である。スライド支持構造を設けておき、蓋体を水平にスライドさせて開口部を開閉できるように構成している。もう1つは、回転扉構造である。蓋体をチャンバ本体に鉛直軸又は水平軸周りに回転可能に取り付けておき、蓋体を横に開くか手前に倒すかして、開口部を開閉できるように構成している。
【特許文献1】特開平10−89482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記引出構造では、開成時でも蓋体が開口部の延長線上に位置するため、蓋体自体が邪魔になってチャンバ内部にアクセスしにくいという不具合がある。
一方、回転扉構造では、蓋体が開口部に平行に近づいてこないため、シール部材の押圧が場所によって不均等になりがちで、真空度に悪影響を及ぼす場合がある。
【0005】
さらに、いずれの構造でも、開口部の開口方向が横向き(水平方向)であり、蓋体は鉛直に起立した状態でこの開口部を閉止していることから、閉止時において、Oリングなどのシール部材を押圧変形させるために蓋体の重量を利用することが難しい。
【0006】
もちろん、特許文献1に示すように、開口部の開口方向を鉛直上向きとして、蓋体が上から被さる構造とすれば、蓋体の重量を利用できるが、その場合は蓋体を持ち上げるためのダンパや駆動機構などが必要となる。さらに、蓋体は真空による周囲からの圧縮力に耐えるだけの強度が必要で重量がかなり大きくなるため、それを支持するダンパや駆動機構も大がかりなものになりがちである。
【0007】
そこで本発明は、こういった問題点を鑑みて行われたものであって、
(1) 蓋体による開口部の閉止に際してシール部材に均等な力を加えることができて確実に密閉すること
(2) その閉止状態において蓋体の自重を利用できて閉止のための押圧機構を簡素化できること
(3) 蓋体の開放時の蓋体が開口部の邪魔にならないこと
(4) 蓋体の開閉動作が容易であること
(5) 蓋体の開口面積を大きくとれること
などが一挙に図れる分析装置を提供することを、その主目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る分析装置は、真空容器とその真空容器内に収容されたサンプルを分析する分析部とを備えた分析装置であって、
前記真空容器が、斜め上向きに開口する開口部を有した容器本体と、その開口部を閉止するための蓋体と、前記蓋体及び開口部間に介在するシール部材と、前記蓋体を開閉移動可能に支持する案内支持機構と、を備えたものであり、
前記蓋体が、シール部材を押圧変形させて開口部を完全に閉止する閉止位置及びその閉止位置よりも上方であってシール部材に接触又は近接する準閉止位置の間では上下を含む方向に移動するとともに、その準閉止位置及びそこから水平に一定距離離間した中間位置の間では水平方向にスライド移動し、その中間位置及びそこから前記スライド方向とは異なった方向に一定距離離間した開放位置の間では上下左右前後いずれかの方向に移動するように、前記案内支持機構によって支持されていることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、水平スライドにより蓋体がシール部材にほぼ接触するまで移動し、開口部を閉止するので、シール部材を偏圧することなく均等に押圧して仕様通りの真空を確実に保つことができる。また、水平スライド移動であるためその移動に大きな力が不要である。また、その準閉止位置から閉止位置にいたるわずかな距離において蓋体は下方にも移動可能であるため、開口部が斜め上向きに開口していることと併せて、蓋体の重量を利用した開口部の閉止を行うことができ、シール部材押圧のための押圧構造の簡素化を図れる。
【0010】
さらに、蓋体はスライドした中間位置から上下左右前後のいずれかの方向に退避した開放位置にまで移動するので、開口部を介したサンプルの搬出入、内部視認などのような、容器本体へのアクセスにおいて、その蓋体が邪魔になることを極力防止できる。また、開口部が斜め上向きに開口しており大面積化が容易であることも、前記容器本体内へのアクセス容易化に寄与する一因となっている。
【0011】
リンク機構などの複雑な構造を用いず、簡単な構成で案内支持機構を実現するには、前記案内支持機構が、容器本体に水平スライドのみ可能に支持されたブラケットと、前記スライド方向とは直交する水平軸周りに回転可能にブラケットに取り付けられ、かつ先端部で前記蓋体を支持するアームと、前記閉止位置及び準閉止位置の間においては前記アームのブラケットに対する回転を許容し、前記準閉止位置及び中間位置の間では前記回転を禁止し、前記中間位置及び開放位置の間では前記回転を許容する軌道規制部と、を具備したものであることが望ましい。
【0012】
構造をより簡単化するための好適な軌道規制部の具体的実施態様としては、前記軌道規制部が、前記アームの回転中心から偏位した部位に設けられた凸部と、前記容器本体側に設けられて前記凸部に係合する係合溝と、を具備したものであり、その係合溝が、少なくとも前記準閉止位置と中間位置との間における凸部の水平移動を許容する水平に延伸した直線部を有しているとともに、その直線部の両端部において係合溝の側面の一部が少なくとも開放され、凸部が前記直線部から外れて前記アーム先端の下方への回転を許容するように構成されているものを挙げることができる。
【0013】
前記準閉止位置から閉止位置の間においては、シール部材を所定量押圧する分のアームの微小な回転を許容しているが、このような構造において、アームに蓋体を完全に固定してしまうと、その間でのアームの回転によって蓋体の姿勢がわずかに変わり、シール部材への均等な押圧を多少なりとも阻害する。かかる不具合を回避し、蓋体が閉止位置でのアームの回転によっても姿勢を変化させることなく平行に移動できるようにして、シール部材へのより均等な押圧を可能とするには、前記蓋体をアームに回転可能に結合する回転結合構造と、その蓋体の回転範囲を規制する回転規制構造と、をさらに設け、前記回転規制構造による回転範囲を、前記閉止位置と準閉止位置との間におけるアームの回転による蓋体の傾きを打ち消して、開口部を閉止する正規の傾きに戻し得る範囲に設定しておくことが好ましい。
【0014】
蓋体の開閉作業を容易化するには、前記蓋体の移動のための補助力を与える補助力付与機構をさらに備えたものが望ましい。特に、前記補助力付与機構が、前記準閉止位置と中間位置との間での蓋体移動には補助力を付与せず、前記中間位置と開放位置との間での蓋体移動時に補助力を与えるものであれば、その構造簡素化を図れてなおよい。
【0015】
簡単な構成で実現できてメンテナンスがほとんど不要であり、しかも閉止位置における蓋体の自重による押圧力を適正なものに調整できるとともに、開放位置から中間位置への蓋体の移動を好適に補助できる補助力付与機構としては、前記ブラケットとアームとの間に設けられて、当該アームの回転のための補助力を付与する弾性部材を備え、その弾性部材が、閉止位置又は中間位置からのアームの回転に伴う変形により弾性復帰力を増大させるように構成されているものが好ましい。
【0016】
真空容器内の容量を大きくするには、前記蓋体の形状を、外側に膨出したものにすればよい。
【発明の効果】
【0017】
以上に述べたように、本発明によれば、蓋体の均一な押圧による開口部の確実な閉止、蓋体の自重を利用することによる押圧機構を簡素化、開放時における蓋体の開口部からの退避、スライド移動等による蓋体の開閉動作の容易化、開口部を斜めにすることによる蓋体の開口面積の増大化などを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る分析装置100は、模式的な全体斜視図を図1、内部構造を示す模式的断面図を図2に示すように、サンプルSを内部に収容する真空容器101と、その真空容器101の内部のサンプルSを分析するための分析部102とを備えたものである。この実施形態での分析部102は、サンプルSの直上に設けたX線源102aを利用するものであり、このX線源102aからX線導管(図示しない)を介して微小径に絞った一次X線を、真空容器101の内部に配置されたサンプルSに照射し、その蛍光X線あるいは透過X線を検出器(図示しない)で検出することにより、サンプルS中に含まれる元素の分析を行うことができるように構成されている。
【0020】
前記真空容器101は、図2、図4に示すように、サンプルSの搬出入のための開口部1aを有した容器本体1と、その開口部1aを閉止するための蓋体2と、その蓋体2を開閉可能に支持する案内支持機構4と、前記蓋体2の移動のための補助力を与える補助力付与機構9とを備えている。
【0021】
各部を説明すると、前記容器本体1は、図2に示すように、中空直方体の上部を、一辺に沿って斜めに切り取った形状を概略なすものであり、その切り取った斜めの部分が開口部1aとされている。この開口部1aは、矩形状をなすもので、容器本体1の厚みにより形成される周回面に亘って溝が形成してあり、その溝に、弾性樹脂を素材とするシール部材たるOリング3が一部突出するように嵌め込まれている。なお、この容器本体1の内部には、XYZ方向に移動可能な可動ステージAが設けてあり、その可動ステージA上に前記サンプルSが載置される。なお、以下の説明では、開口部1aが設けられている側を正面、すなわち前として説明するが、これはあくまで説明の便宜上のことであり、絶対的な方向を示すものではない。
【0022】
前記蓋体2は、図1及び図2に示すように、水平に倒した概略直角三角柱状をなす中空のもので、その斜めの面が前記容器本体1の開口部1aに対向してこれを閉止する。
【0023】
前記案内支持機構4は、図4〜図7等に示すように、前記蓋体2を、開口部1aが閉止される閉止位置P1と開放される開放位置P4との間で、後述する準閉止位置P2及び中間位置P3を通る所定軌道に沿って開閉移動させるものであり、図3に示すように、容器本体1に水平スライドのみ可能に支持された一対のブラケット5と、そのブラケット5に基端部を回転可能に取り付けられ、先端部で前記蓋体2を支持する一対のアーム6と、そのアーム6の動きを規制することにより蓋体2の動きを前記所定軌道に限定する軌道規制部7と、を具備している。
【0024】
ここでまず、前記各位置について詳述しておく。閉止位置P1とは、図4及び図9に示すように、蓋体2がシール部材3を押圧変形させて開口部1aを完全に閉止する位置のことであり、準閉止位置P2とは、図5及び図10に示すように、この閉止位置P1の若干斜め上方であって蓋体2がシール部材3に接触又は近接する位置のことである。また、中間位置P3とは、図6に示すように、準閉止位置P2から水平前方であって、蓋体2の全部が容器本体1の前端よりもさらに前に出た位置のことであり、開放位置P4とは、図7に示すように、中間位置P3の下であって蓋体2の全部が開口部1aの下端よりもさらに下方に沈んだ位置のことである。
【0025】
また、所定軌道とは、閉止位置P1−準閉止位置P2間において部分円弧状に上下方向に延びる軌道と、準閉止位置P2間−中間位置P3間において直線状に水平方向に延びる軌道と、中間位置P3−開放位置P4間において部分円弧状に上下方向に延びる軌道とからなる軌道のことである。
【0026】
しかして、ブラケット5は、図3に示すように、容器本体1の両側面に固定した前後水平に延びるレール部材Rに、スライドのみ可能に嵌合された板状をなすものである。
アーム6は、このブラケット5から左右水平に突出する回転軸51に基端部を取り付けられたもので、一対のアーム6の各先端部で、蓋体2の両側部をそれぞれ支持している。
【0027】
軌道規制部7は、図3に示すように、前記アーム6の回転中心から偏位した部位に設けられて内側方に突出する円柱状の凸部71と、前記容器本体1に取り付けられたレール部材Rの外側面に形成した係合溝72とを具備したものであり、凸部71が係合溝72に係合することによってアーム6の挙動を規制し、その先端部に取り付けられた蓋体2が前記所定軌道に沿って移動するよう規制する。
【0028】
具体的には、図3から図7までに示すように、係合溝72が、水平に延伸する直線部72aと、その直線部72aの基端部から連続して上方に延びる短円弧部72bと、先端部から連続して上方に延びる長円弧部72cとから形成されている。そして、前記準閉止位置P2及び中間位置P3の間では、凸部71が直線部72aに係合してアーム6の回転を禁止し、ブラケット5とともに動く水平移動のみを許容する。一方、準閉止位置P2と閉止位置P1との間では、凸部71が短円弧部72bに係合して、アーム6の回転のみを許容する。また、中間位置P3と開放位置P4との間では、凸部71が長円弧部72cに係合して、やはりアーム6の回転のみを許容する。
【0029】
前記補助力付与機構9は、図3に示すように、アーム6の回転中心から偏位した部位と、ブラケット5の所定部位との間に設けられた弾性部材91たるバネ91を主体として構成したものであり、アーム6のブラケット5に対する回転に対してその弾性復帰力を作用させる。具体的には、図7に示すように、アーム6の先端が下方に回転すると、バネ91が伸び、その弾性復帰力によってアーム6の先端、すなわち蓋体2を持ち上げる向きに弾性復帰力たる補助力を作用させる。したがって、アーム6が回転せずブラケット5とともにスライド移動する準閉止位置P2−中間位置P3間での蓋体2の移動には補助力を付与せず、主として前記中間位置P3−開放位置P4間での蓋体2の移動時に補助力を与える。また、準閉止位置P2−閉止位置P1間では、バネ91の伸びがわずかであるため、その間の蓋体2の移動には、それほど顕著な補助力を発揮しない。
【0030】
さらにこの実施形態では、図8に示すように、前記蓋体2を、アームの回転軸と平行な軸(左右水平軸)周りに回転可能にアーム6に結合する回転結合構造81と、その蓋体2の回転範囲を規制する回転規制構造82とをさらに設けている。回転規制構造82は、例えば蓋体2側から外方に突出させたピン821と、アーム6の内側面に設けられ、そのピン821がガタを有して嵌合する大径の嵌合穴822とからなるものであり、前記ピン821のがたつきの範囲内で蓋体2の回転を許容する。
【0031】
次に、このような構成における蓋体2の開閉動作について説明する。
まず、閉止位置P1から開放位置P4への蓋体2の開放動作について説明すると、図4及び図9に示すように、閉止位置P1においては、蓋体2は、その自重と図示しないラッチ機構による結合力によってOリング3を弾性変形させ、その状態を維持している。この状態から、ラッチ解除レバーL(図1参照)を操作して、ラッチ機構を解除する。
【0032】
このようにしてラッチ機構による拘束力が解除されると、図5及び図10に示すように、蓋体2は、準閉止位置P2に向かって持ち上げ可能な状態となる。このとき、閉止位置P1から準閉止位置P2までの距離はわずかであるうえ、Oリング3及びバネ91の弾性復帰力による持ち上げ力が作用するので、作業者は少しの力を加えることで、アーム6を上方にわずかに回転させ、蓋体2を準閉止位置P2にまで持ち上げることができる。この準閉止位置P2では、前記凸部71が係合溝72の直線部72aに係合して水平スライド移動を許容するので、蓋体2を手前、つまり開口部1aから離間する向きに移動させることが可能である。
【0033】
次に、この状態から蓋体2を手前に引く。そうすると、図6に示すように、蓋体2はアーム6とともに回転することなく、水平に中間位置P3まで移動する。このときの蓋体2(及びアーム6)の移動は水平移動であるから、作業者は大きな力を必要としない。
【0034】
そして蓋体2が中間位置P3までくると、凸部71が係合溝72の長円弧部72cに係合して、アーム6の下方への回転を許容するから、図7に示すように、蓋体2は自重により第3軌道に沿って開放位置P4にまで下降する。このとき、補助力付与機構9のバネ91が伸びて蓋体2の急激な落下を抑制する。以上が開放動作である。
【0035】
次に、開放位置P4から閉止位置P1への蓋体2の閉止動作について説明する。
まず、開放位置P4(図7参照)から作業者は蓋体2を持ち上げる。ところで、真空容器101は、大気圧による圧縮に耐え得るよう肉厚の金属で構成されており、蓋体2を同様でかなりの重量を有するものであるが、バネ91による弾性復帰力によって、作業者は比較的小さな力で蓋体2を中間位置P3にまで持ち上げることができる。そして、中間位置P3(図6参照)までくると、凸部71が係合溝72の直線部72aに係合して水平スライド移動を許容するので、蓋体2を奥、つまり開口部1aに接近する向きに移動させることが可能になる。
【0036】
次に、この状態から蓋体2を奥に押すと、開放動作のときと同様、蓋体2はアーム6とともに回転することなく、水平に準閉止位置P2にまで移動する(図5参照)。そうすると、凸部71が係合溝72の短円弧部72bに係合してアーム6の下方への回転を許容するので、蓋体2は自重とバネ91による引張力によって閉止位置P1に向かって下降しようとする。しかし、自重とバネ力のみでは、Oリング3を所定量弾性変形させて閉止位置P1にまで移動できないように設定してあって、作業者が少しの力を加えて初めて、蓋体2は閉止位置P1に到達する(図4参照)。このときラッチ機構が作動し、蓋体2を容器本体1に係止して閉止位置P1に維持する。以上が閉止動作である。
【0037】
したがって、このように構成した本実施形態によれば、水平スライドにより蓋体2がOリング3にほぼ接触するまで移動し、開口部1aを閉止するので、Oリング3をほとんど偏圧することなく均等に押圧して仕様通りの真空を確実に保つことができる。特に、この実施形態では、前記準閉止位置P2から閉止位置P1の間において、Oリング3を所定量押圧する分のアーム6の微小な回転を許容することで、その間のわずかなアーム6の回転によっても蓋体2の姿勢を変化させることなく平行に移動できるようにしているので、Oリング3へのより均等な押圧が可能となる。
【0038】
また、蓋体2の開閉において、中間位置P3と開放位置P4との間では水平スライド移動であるし、その他では補助力付与機構9が作用するため、大きな力は不要であり、蓋体2の開閉作業を容易化している。
【0039】
さらに、準閉止位置P2から閉止位置P1にいたるわずかな距離において蓋体2は下方に移動するため、開口部1aが斜め上向きに開口していることと併せて、蓋体2の重量を利用した開口部1aの閉止を行うことができ、Oリング3の押圧のための押圧構造(例えば前記ラッチ機構等)の簡素化を図れる。
【0040】
さらに、蓋体2が、開口部1aの正面から完全に外れてその下方の開放位置P4にまで移動するので、開口部1aを介した容器本体1へのアクセスにおいて、前記蓋体2が邪魔になることがない。また、開口部1aが斜め上向きに開口しており大面積化が容易であることも、前記容器本体1内へのアクセス容易化に寄与する一因となっている。
【0041】
加えて、前記蓋体2の形状が、前記開口部1aの開口面よりも外側に、つまりこの実施形態ではサンプルを移動させる方向である前方に膨出しているので、真空容器101内の有効容量の増大を図ることができる。
【0042】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、補助力付与機構は、弾性部材のみを利用したものに限られず、ダンパを利用したものでもよいし、弾性部材やダンパなどの受動部材のみならず、電磁力や油空圧を利用したアクチュエータなどの能動部材を利用したものでも構わない。
【0043】
また、案内支持機構は、要は、閉止位置、準閉止位置、中間位置、開放位置の順又はその逆に蓋体が動くように支持するものであればよく、リンク機構やカム機構を利用したものでも構成可能である。
【0044】
軌道規制部として、前記実施形態では、容器本体側に係合溝を設けアーム側に凸部を設けてこれらを係合させていたが、その逆、すなわち容器本体側に凸部を設け、アーム側に係合溝を設けた構成でもよい。
【0045】
さらに、開放位置は、前記実施形態では中間位置の下方に設定していたが、上方でも側方でも、斜め方向でもよく、要は開口部の正面から外れていればよい。
その他、本発明は前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る分析装置の模式的全体斜視図。
【図2】同実施形態における分析装置の内部構造を示す模式的縦断面図。
【図3】同実施形態における案内支持機構を示す部分分解斜視図。
【図4】同実施形態における蓋体が閉止位置にある状態を示した、動作説明のための側面図。
【図5】同実施形態における蓋体が準閉止位置にある状態を示した、動作説明のための側面図。
【図6】同実施形態における蓋体が中間位置にある状態を示した、動作説明のための側面図。
【図7】同実施形態における蓋体が開放位置にある状態を示した、動作説明のための側面図。
【図8】同実施形態における蓋体のアームに対する取付構造を示す部分拡大側面図。
【図9】同実施形態における蓋体が閉止位置にある状態を示した、動作説明のための拡大側面図。
【図10】同実施形態における蓋体が準閉止位置にある状態を示した、動作説明のための拡大側面図。
【符号の説明】
【0047】
100・・・分析装置
101・・・真空容器
S・・・サンプル
102・・・分析部
1・・・容器本体
1a・・・開口部
2・・・蓋体
3・・・シール部材
4・・・案内支持機構
P1・・・閉止位置
P2・・・準閉止位置
P3・・・中間位置
P4・・・開放位置
5・・・ブラケット
6・・・アーム
7・・・軌道規制部
71・・・凸部
72・・・係合溝
72a・・・直線部
81・・・回転結合構造
82・・・回転規制構造
9・・・補助力付与機構
91・・・弾性部材(バネ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器とその真空容器内に収容されたサンプルを分析する分析部とを備えた分析装置であって、
前記真空容器が、斜め上向きに開口する開口部を有した容器本体と、その開口部を閉止するための蓋体と、前記蓋体及び開口部間に介在するシール部材と、前記蓋体を開閉移動可能に支持する案内支持機構と、を備えたものであり、
前記蓋体が、
シール部材を押圧変形させて開口部を完全に閉止する閉止位置及びその閉止位置よりも上方であってシール部材に接触又は近接する準閉止位置の間では上下を含む方向に移動するとともに、
その準閉止位置及びそこから水平に一定距離離間した中間位置の間では水平方向にスライド移動し、
その中間位置及びそこから前記スライド方向とは異なった方向に一定距離離間した開放位置の間では上下左右前後いずれかの方向に移動するように、前記案内支持機構によって支持されている分析装置。
【請求項2】
前記案内支持機構が、
容器本体に水平スライドのみ可能に支持されたブラケットと、
前記スライド方向と直交する水平軸周りに回転可能にブラケットに取り付けられ、かつ先端部で前記蓋体を支持するアームと、
前記閉止位置及び準閉止位置の間においては前記アームのブラケットに対する回転を許容し、前記準閉止位置及び中間位置の間では前記回転を禁止し、前記中間位置及び開放位置の間では前記回転を許容する軌道規制部と、を具備したものである請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記軌道規制部が、
前記アームの回転中心から偏位した部位に設けられた凸部と、
前記容器本体側に設けられて前記凸部に係合する係合溝と、を具備したものであり、
その係合溝が、少なくとも前記準閉止位置と中間位置との間における凸部の水平移動を許容する水平に延伸した直線部を有しているとともに、その直線部の両端部において係合溝の側面の一部が少なくとも開放され、凸部が前記直線部から外れて前記アーム先端の下方への回転を許容するように構成されている請求項2記載の分析装置。
【請求項4】
前記蓋体をアームに回転可能に結合する回転結合構造と、その蓋体の回転範囲を規制する回転規制構造と、をさらに備え、
前記回転規制構造による回転範囲が、前記閉止位置と準閉止位置との間におけるアームの回転による蓋体の傾きを打ち消して、開口部を閉止する正規の傾きに戻し得る範囲に設定されている請求項2又は3記載の分析装置。
【請求項5】
前記蓋体の移動のための補助力を与える補助力付与機構をさらに備えたものである請求項1〜4いずれかに記載の分析装置。
【請求項6】
前記補助力付与機構が、前記準閉止位置と中間位置との間での蓋体移動には補助力を付与せず、前記中間位置と開放位置との間での蓋体移動時に補助力を与えるものである請求項5記載の分析装置。
【請求項7】
前記ブラケットとアームとの間に設けられて、当該アームの回転のための補助力を付与する弾性部材を備えたものであり、その弾性部材が、前記中間位置から開放位置へのアームの回転に伴う変形により弾性復帰力を増大させるように構成されている請求項3記載の分析装置。
【請求項8】
前記蓋体が、外側に膨んだ形状をなすものである請求項1〜7いずれかに記載の分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−24854(P2009−24854A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191397(P2007−191397)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】