分析装置
【課題】円板状の1枚の検査ディスクを用いて試料の分析と分析データの記録とを統括的に行うことが出来るとともに、1枚の検査基板に微細なウェルを多数形成し、これらのうち任意の範囲のウェルを使用してコンパクトな構成で高速に分析処理を行うことのできる分析装置を提供する。
【解決手段】ジェットヘッド20の複数のノズルが光ヘッド40の対物レンズ41の光軸位置と重なるように配置され、光ヘッド40によるレーザ光の照射と反射光の検出によってジェットヘッド20をマイクロウェルWの形成された半径方向の位置へ移動させ、ロータリーエンコーダの出力に基づき検査ディスクDの回転角度を検出しながら複数のノズルからタイミングをずらして液滴をそれぞれ噴射させることで、1個のマイクロウェルに複数種類の液剤を投入する構成とした。
【解決手段】ジェットヘッド20の複数のノズルが光ヘッド40の対物レンズ41の光軸位置と重なるように配置され、光ヘッド40によるレーザ光の照射と反射光の検出によってジェットヘッド20をマイクロウェルWの形成された半径方向の位置へ移動させ、ロータリーエンコーダの出力に基づき検査ディスクDの回転角度を検出しながら複数のノズルからタイミングをずらして液滴をそれぞれ噴射させることで、1個のマイクロウェルに複数種類の液剤を投入する構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばDNA(デオキシリボ核酸)等の検査を行う分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、DNAチップを用いて検体の分析を行う分析手法が知られている。DNAチップは、多種類のcDNA(相補的DNA)の断片をチップ上に固定化したものであり、そこに検体から抽出したmRNA(メッセンジャーリボ核酸)の溶液をふりかけることで、DNAに特定の遺伝子配列が含まれるか否かを分析することが出来る。すなわち、mRNAは、同じ配列をもったcDNAとだけ結合し、その他のc−DNAとは結合しない。そして、蛍光物質を用いてmRNAとcDNAとが結合したものと非結合のものとを識別することで、検体のDNAに特定の遺伝子配列が存在しているか否かを評価することができる。例えば、cDNAに細胞の癌化と関連のあるDNA断片を使用することで、検体から取り出した細胞にどれだけの割合で癌細胞が含まれているか等の分析も行うことが出来る。
【0003】
また、本願の発明に関連する従来技術として、次のような技術の開示があった。例えば、特許文献1と2には、円板形状のバイオアッセイ基板を用いてDNA溶液の滴下と蛍光検出とを行うバイオアッセイ装置について開示されている。また、特許文献3には、円板形状のバイオアッセイ基板の内周側の所定範囲に信号記録膜を形成し、バイオアッセイ用基板の検査に関する情報を記録することが開示されている。また、特許文献4には、検体の試料が付着されたチップ上にジェットヘッドから複数の薬液を噴出して試料と反応させ、蛍光検出により試料の分析を行う装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−133021号公報
【特許文献2】特開2006−133077号公報
【特許文献3】特開2005−03450号公報
【特許文献4】特開2007−113996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、1枚の検査基板を用いて長期に渡る複数回の検査・分析を行い、且つ、同一の検査基板にそれまでの分析結果の情報を統括的にまとめておけるような分析キットがあれば、大変便利であると考えた。このような分析キットにより、例えば、一人の被験者に1枚の検査基板を割り当てておくことで、一人の被験者の過去から現在までの検査・分析の実施や、分析データの格納を1枚の検査基板で統括的に行うことが出来る。
【0005】
このような構成を実現するには、1枚の検査基板に微細なウェルを多数設けて、任意のウェルを少しずつ使用して多数回の検査を行えるようにする必要があると考えられた。
【0006】
しかしながら、引用文献1と2の技術は、溶液を噴射する複数のノズルを放射状に配置し、さらにこれらを固定しているため、基板上に微細なウェルを多数設けた場合、ウェルの列数に対応させて多数のノズルを放射状に設けなければならず、溶液を噴射する構成が大型になるという課題があった。また、多数のウェルのうち任意の範囲のウェルのみ用いて分析を行う場合には、使用するウェルに必要な液剤を投入する必要があることから、使用するウェルをその都度変えるような柔軟な対応が難しいという課題があった。
【0007】
また、引用文献3の技術は、滴下ヘッドにより溶液をウェル内に滴下する構成であるため、滴下する溶液の容量が比較的多くなって、微細なウェルに対応させるのが難しいという課題があった。また、1つのウェルに高速に複数の液剤を投入するのが難しいという課題があった。
【0008】
この発明の目的は、光ディスクの技術を応用し、円板状の検査基板を用いて試料の分析と分析データ等の記録を統括的に行うことが出来るとともに、1枚の検査基板に微細なウェルを多数形成し、この多数のウェルのうち任意の範囲のウェルのみを使用してコンパクトな構成で且つ高速な検査を行うことのできる分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、試料を反応させるための複数のマイクロウェルとデータ記録が可能な記録領域とが形成された円板形状の検査ディスクを用いて、試料の分析と分析データの記録とを行う分析装置であって、前記検査ディスクを回転駆動するスピンドル機構と、このスピンドル機構により回転される前記検査ディスクの回転角度を検出するロータリーエンコーダと、複数の液剤を微細液滴にしてそれぞれ噴射する複数のノズルを有し、これら複数のノズルが前記検査ディスクの回転方向に並んで配置されたジェットヘッドと、前記検査ディスクに対して光の照射と集光とを行う対物レンズを有し、前記検査ディスクへ励起光を照射してそこから発せられる蛍光量を検出する蛍光検出部、および、前記検査ディスクへレーザ光を照射してデータの記録再生を行うデータ記録部を有する光ヘッドと、前記ジェットヘッドと前記光ヘッドとを前記検査ディスクに対して半径方向へ相対的に移動させるスライド機構と、各部の制御を行う制御手段と、を備え、前記複数のノズルの前記検査ディスクの半径方向の位置が前記光ヘッドの前記対物レンズの光軸位置と重なるように配置され、前記制御手段は、前記光ヘッドによるレーザ光の照射と反射光の検出によって前記ジェットヘッドを前記マイクロウェルの形成された半径位置へ移動させ、前記ロータリーエンコーダの出力に基づき前記検査ディスクの回転角度を検出しながら前記複数のノズルからタイミングをずらして微細液滴をそれぞれ噴射させることで、1個のマイクロウェルに複数種類の液剤を投入するように構成とした。
【0010】
このような手段によれば、1枚の検査ディスクで試料の分析とその分析データの記録とを統括的に行うことができるとともに、微細なウェルが多数形成された検査ディスクに対して、その任意の範囲のウェルに必要な液剤を投入して試料の検査を行うことが可能となる。また、液剤を投入するジェットヘッドは、1つのノズルから全てのマイクロウェルに液剤の投入を行うことが出来る構成となるため、多数のマイクロウェルを形成しても、液剤を投入する構成はコンパクトにすることが出来る。
【0011】
具体的には、前記ジェットヘッドは、前記液剤を20ピコリットル以下の微細液滴にして噴射する構成とすると良い。
【0012】
これにより、検査ディスクに形成するマイクロウェルの大きさを小さくして、より多数のマイクロウェルを形成することが出来る。
【0013】
また具体的には、前記検査ディスクは、中央に同心円の貫通孔を有し、中央側から一定の半径範囲に、基板表面が凹状に形成された複数のマイクロウェルが渦巻き状に列を成して形成されるとともに、基板表面が凹状にされた溝が前記マイクロウェルの列に沿って隣接するマイクロウェルをつなぐように形成され、前記マイクロウェルの形成領域より外周側に、レーザ光によりデータマークが形成可能な記録層を有するデータ記録領域が形成された構成とすると良い。
【0014】
さらに具体的には、前記制御手段は、前記溝にレーザ光の焦点が合うように前記光ヘッドの半径方向の位置を調整することで、前記ジェットヘッドの位置を前記マイクロウェルの形成された半径位置に合わせる構成とすると良い。
【0015】
このような構成により、ジョットヘッドを上記の溝に沿った状態で検査ディスクを回転させ、溝に沿った複数のマイクロウェルで連続的に試料の分析を行うことが可能となる。また、溝の検出によりマイクロウェルの位置の確認や、ジェットヘッドを所定のマイクロウェルの箇所まで移動させるのも容易となる。
【0016】
好ましくは、前記制御手段は、試料の分析処理の開始の指示を受けたら、前記記録領域の格納データを読み出して前記マイクロウェルの未使用領域を確認するステップと、前記前記未使用領域のマイクロウェルに前記ジェットヘッドから液剤を投入させるステップと、前記液剤が投入されたマイクロウェルの蛍光検出を行うステップと、前記記録領域に前記蛍光検出に関するデータと使用したマイクロウェルの範囲を示すデータとを記録するステップとを順次行う構成とすると良い。
【0017】
このような構成により、自動的な制御によって、1枚の検査ディスクで長期に渡る複数回の検査を行うことが可能となり、且つ、同一の検査ディスクにそれまでの分析データを統括的にまとめていくことが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従うと、円板状の検査ディスクで試料の分析と分析データの格納を統括的に行うことができるとともに、1枚の検査ディスクに微細なウェルを多数形成し、この多数のウェルのうち任意の範囲のウェルのみを使用してコンパクトな構成で高速な検査を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態の分析装置1のメカ構成および光学構成を示す構成図、図2は、実施形態の分析装置1の回路構成を示すブロック図である。
【0021】
この実施の形態の分析装置1は、円板状の検査ディスクDを用いて人のDNAの分析とこの分析データの記録とを行うもので、検査ディスクDを回転軸10aに保持して回転駆動するスピンドルモータ10と、検査ディスクDのエンコードマークを検出して回転角度を検出するロータリーエンコーダ12と、検査ディスクDのマイクロウェル(Micro Well)に検体となる血液の溶液や薬液を投入するジェットヘッド20と、蛍光検出やデータの記録再生等を行う光学系(41〜61)を有する光ヘッド40と、これらジェットヘッド20と光ヘッド40とが搭載されるベースフレーム14と、ベースフレーム14をナット17,17とリードスクリュー15aを介して検査ディスクDの半径方向へ移動させるスライドモータ15等を備えている。
【0022】
光ヘッド40に搭載される光学系は、光を検査ディスクDに収束させたりその反射光や蛍光を集光する対物レンズ41と、この対物レンズ41をフォーカス方向とトラッキング方向に微小変位させるレンズアクチュエータ42と、レーザ光や励起光と蛍光とを分離するダイクロイックミラー43と、赤色の蛍光と緑の蛍光を透過させるエミッタフィルタ44a,44bと、蛍光の光量検出を行うPMT(フォトマルチプライア)45と、励起光を出射する光源49と、励起光を平行光にするコリメータレンズ47と、励起光の波長を抽出するエキサイタフィルタ47と、励起光を反射し記録再生用のレーザ光を透過するフィルタミラー46と、記録再生用のレーザ光を出射する半導体レーザ53と、記録再生用のレーザ光の進行波と反射波とを分離するための1/4波長板50および偏光ビームスプリッタ52と、記録再生用のレーザ光を平行光にするコリメータレンズ51と、記録再生用のレーザ光の反射ビームを3方向に分離するプリズム54,57と、点状又は線状の隙間が形成されたスリット55と、スリット55を通過した光強度を検出する第1光センサ56と、2個のプリズムを異なる角度で互いに接触させて固定した光学素子58と、光学素子58を通過した光を複数分割された検出面でそれぞれ検出する第2光センサ59と、反射ビームに非点収差を付与する円筒レンズなどの光学レンズ60と、光学レンズ60を通過した光を複数分割された検出面でそれぞれ検出する第3光センサ61等を備えている。
【0023】
ジェットヘッド20は、回転軸10aに保持された検査ディスクDの上方に配置されている。一方、光ヘッド40の対物レンズ41は検査ディスクDの下側に配置されている。これらジェットヘッド20と対物レンズ41は、そのノズルの延長線と、対物レンズ41の光軸とが、検査ディスクDの半径方向の同一長の位置に来るようにアライメントされている。
【0024】
ロータリーエンコーダ12は、例えば、反射型の光センサにより構成される。
【0025】
エミッタフィルタ44a,44bは、図示略の駆動装置により光軸上に何れか一方が移動されて、蛍光の通過波長が切り換えられるようになっている。
【0026】
スリット55と第1光センサ56は、共焦点法により対物レンズ41により収束されるレーザ光の焦点と反射面とのズレ量を検出するためのものである。また、光学素子58と第2光センサ59は、ダブルナイフエッジ法により上記レーザ光の焦点のズレ量を検出するためのものである。また、円筒レンズ等の光学レンズ60および第3光センサ61は、非点収差法により上記レーザ光の焦点のズレ量を検出するためのものである。また、第3光センサ61は、データの読み出し時に再生信号を生成するのにも使用されるものである。
【0027】
また、この実施の形態の分析装置1には、図2に示すように、第2光センサ59や第3光センサ61の検出信号を演算してフォーカス誤差信号を生成する演算回路65,66と、光センサ56,59,61の検出出力から得られるフォーカス誤差信号をデジタル信号に変換するデジタルサンプリング回路62〜63,71と、PMT45の蛍光検出信号をデジタル信号に変換するデジタルサンプリング回路64と、これら光センサ45,56,59,61やロータリーエンコーダ12等から信号を入力してレンズアクチュエータ42、ジェットヘッド20、スライドモータ15、スピンドルモータ10等の駆動制御を行う制御回路70と、データ記録用の信号処理を行う書込み用データ処理回路69と、スライドモータ15やスピンドルモータ10を駆動するドライバ67,68と、半導体レーザ53を駆動するレーザドライバ73等を備えている。
【0028】
スライドモータ15は、ステッピングモータ等から構成され、制御回路70はその回転量から光ヘッド40やジェットヘッド20が検査ディスクDの半径方向のどの位置にいるかを認識できるようになっている。
【0029】
図3は、本発明の実施形態の検査ディスクの構成を示す平面図、図4は、そのマイクロアッセイ領域に形成されるマイクロウェルの全体構成を概略的に表わした図、図5は、マイクロウェルの詳細な構成を示す斜視図、図6は、検査ディスクの一部の断面図である。
【0030】
検査ディスクDは、例えばコンパクトディスクと同等の円板形状をしてなるもので、その中央には、回転軸10aに保持される同心円状の貫通孔D0が形成されている。また、この貫通孔D0に近い内周側の下面には回転角度を検出させるためのエンコードマークM1が形成され、このエンコードマークM1より外周側でディスク半径の中盤までの範囲には、微細なマイクロウェルWをディスク上面に多数有するマイクロアッセイ領域A1が形成されている。さらに、その外周側には、光ディスクと同様にディスク内にレーザ光によりデータマークが形成可能な記録層を有するデータ記録領域A2が形成されている。
【0031】
図4と図5に示すように、マイクロアッセイ領域A1には、ディスク表面が円形凹状に成型されたマイクロウェルWが中央側から外側へと渦を巻くような配列で多数形成されている。なお、図4は、概略的にマイクロウェルが渦状に並んでいること示すものであり、実際には、渦の隣接する2列はもっと近接して並らび、列に沿った隣接するマイクロウェルWの間隔ももっと狭く形成されている。
【0032】
また、列に沿って隣接する2個のマイクロウェルW,Wの間には、両者を結ぶように細い溝Gが形成されている。マイクロウェルは、例えば直径が10μm程度、溝は0.4μm程度である。また、特に制限されるものではないが、図3の一部の拡大図に示すように、マイクロウェルWは内周側から外周側にかけて所定の回転角に1個の割合で形成されている。このようなマイクロウェルWと溝Gの加工は光ディスクを形成する工程と同様にディスク材料を射出成型して形成するときに、その型枠にこの微細な形状を形成しておくことで作成可能なものである。
【0033】
データ記録領域A2は、DVD(デジタル多用途ディスク)などの光ディスクと同様に、例えば、検査ディスクの中央の深さ位置に記録層b1が形成されたものである。記録層b1は、光ディスクのものと同様に、レーザ光によりマークが形成される色素膜や反射膜並びに記録溝などを有するものである。
【0034】
図7と図8には、ジェットヘッド20の構成を示す正面図と側面図とをそれぞれ示す。
【0035】
ジェットヘッド20は、図7に示すように、複数本の独立した流路22a〜22dおよびノズル23a〜23dを有し、これらノズル23a〜23dの先端から液剤を微細液滴にして噴射するものである。なお、図7には、流路22a〜22dやノズル23a〜23dが4つ形成されている例を示しているが、100個や200個など膨大な数形成されるものである。
【0036】
微細液滴は、例えば3pl(ピコリットル)程度の液滴であるが、20pl以下の液滴であれば、検査ディスクDの回転により液剤がマイクロウェルWから飛び出したりすることがなく、試薬等の使用量を低減して検査のランニングコストの低減効果を得ることが出来る。流路22a〜22dやノズル23a〜23dは、図8に示すように、例えばシリコンブロック25bの表面にエッチング処理を施して溝を形成し、その上にガラス25aなどを接合することで、これらシリコンブロック25bとガラス25aの間に形成することが出来る。
【0037】
また、流路22a〜22dの途中には、ピエゾ素子24a〜24dの一面が各流路22a〜22dを覆うように設けられ、これらのピエゾ素子24a〜24dに電圧を印加して駆動することで、流路22a〜22d内の液剤が押圧されてノズル23a〜23dの先端から微細な液滴が噴射されるようになっている。
【0038】
流路22a〜22dの上端側にはパイプ26が接続され、これらのパイプ26から液剤が供給されるようになっている。これらの構成はホルダ枠20Aにより保持・固定されている。また、パイプ26の先には液剤が投入される小さなタンクが設けられ、そこに液薬や試料の溶剤を投入し、ノズル23a〜23dから噴射させることが可能になっている。
【0039】
複数のノズル23a〜23dは、図7に示すように、回転軸10aに保持された検査ディスクDの回転方向(円周の接線方向)に並ぶように組みつけられている。
【0040】
図9は、ロータリーエンコーダの出力の一例を示すタイムチャートを、図10は、ジェットヘッドの駆動動作の一例を説明するタイムチャートを示す。
【0041】
エンコードマークM1は、特に制限されるものではないが、例えば、マイクロウェルWが1個形成される角度範囲に1個の検出信号が出力されるように細かい角度毎に形成された複数のマークと、1回転に1個の検出信号が出力されるように形成された同心円上に1個のマークとを有している。ロータリーエンコーダ12は、これら両者のマークを独立して検出することで、検査ディスクが1回転するごとに1回の検出パルスが出力されるエンコーダ出力Aと、マイクロウェルWが1個ある角度範囲ごとに1個の検出パルスが出力されるエンコーダ出力Bとを生成する。
【0042】
図10に示すように、制御回路70は、エンコーダ出力Bの1個の検出パルスを基準に、所定の遅延間隔td0,td,td,tdでジェットヘッド20のピエゾ素子24a〜24dを順番に駆動する。それにより、1個のマイクロウェルW内のほぼ同一点に複数のノズル23a〜23dから液剤を噴射して投入することが可能になっている。エンコーダ出力Bのパルスから最初のピエゾ素子24aを駆動させるまでの遅延td0は、エンコードマークM1の開始点からマイクロウェルW中の所定点(例えば中央の点)までの回転角と、検査ディスクDの角速度に応じた時間である。また、1つのピエゾ素子の駆動から次の隣接するピエゾ素子の駆動までの遅延時間tdは、ジェットヘッド20の複数のノズル23a〜23dの間隔と、検査ディスクDの液剤噴射点での速度(角速度×その点までの半径)とに応じた時間である。制御回路70は、検査ディスクの角速度と、液剤噴射点の半径とを求め、それらから演算した上記の遅延間隔td0,td,td,tdごとにジェットヘッド20のピエゾ素子24a〜24dを順番に駆動していくことで、マイクロウェルW中の所定の点へ複数の液剤を投与することが可能になっている。
【0043】
次に、上記構成の分析装置1を用いた分析処理の動作について説明する。
【0044】
この分析装置1では、検体となる試料や薬剤として種々のものを使用することで、様々な分析を行うことができるが、ここでは、被験者のDNA溶剤を試料として、被験者のDNAに癌化に関与する様々な遺伝子配列が含まれているか否かを分析する処理について説明する。
【0045】
先ず、分析原理の概略を説明する。この分析装置1で上記のような分析処理を行うには、ジェットヘッド20から噴射する液剤として、被験者のDNAが溶かされた例えば血液溶剤、また、癌化に関与するDNA配列を有した多数種類のcDNAの溶剤、また、二本鎖DNAに結合して蛍光を発する構造に変質する蛍光物質の溶剤などを用いる。そして、1個のマイクロウェルに1つのcDNAを対応させるかたちで、複数のマイクロウェルに多数種類のcDNAと血液溶剤と蛍光物質溶剤とをそれぞれ投入して反応させる。
【0046】
すると、被験者の血液溶剤のDNAにcDNAに対応した遺伝子配列があれば、被験者のDNAに係るmRNAとcDNAとが結合して二本鎖DNAとなり、それと蛍光物質とが結合して蛍光を発する構造に変質する。一方、被験者の血液溶剤のDNAにcDNAに対応する遺伝子配列がなければ、被験者のDNAに係るmRNAとcDNAとは結合せず、それゆえ、二本鎖DNAが生成されずに蛍光物質も蛍光体に変質しない。
【0047】
そこで、上記の液剤を複数のマイクロウェルWに投入して反応させたら、これらのマイクロウェルWに検査ディスクDの下方から励起光を照射し、そこからの蛍光の発光量をPMT45で検出する。そして、蛍光量が一定以上であったマイクロウェルWに投入されたcDNAを確認することで、被験者から採取したDNAにこの癌化に関与するcDNAの遺伝子配列が含まれることを分析結果として得ることが出来る。
【0048】
次に、上記の分析装置1による分析処理の処理手順について説明する。
【0049】
図11は、マイクロウェルWに液剤を投入している状態を示す斜視図、図12は、光ヘッド40によりその光軸位置をマイクロアッセイ領域の溝に合わせた状態とデータ記録の際の状態とを表わした説明図、図13は、マイクロアッセイ領域A1の溝Gに焦点位置を合わせる際に使用する際のフォーカス誤差信号を示すグラフである。
【0050】
また、図14には、1枚の検査ディスクDを用いて初めて分析処理を実施する場合に制御回路70により実行されるイニシャル処理のフローチャートを、図15には、分析実行の指示がなされた場合に制御回路70により実行されるマイクロアッセイ処理のフローチャートを、それぞれ示す。
【0051】
未使用の検査ディスクDを初めて使用する場合、検査ディスクDを装置にセットすると、光ヘッド40がそのデータ記録領域A2のデータにアクセスすることで、制御回路70により未使用の検査ディスクDであることが検出される。そして、未使用の検査ディスクDが検出されると、図14のイニシャル処理が開始される。
【0052】
イニシャル処理では、先ず、制御回路70は、検査ディスクDの各マイクロウェルWとそこに投入するcDNAの情報を、例えば表(スプレッドシート)のデータ形式にして外部から装置1に入力させる(ステップS1)。これらのデータは設定者が用意する。これらのデータが入力されたら、制御回路70は光ヘッド40を検査ディスクDのデータ記録領域A2の際内周部分に移動させ(ステップS2)、そこにこれらのデータを書き込む(ステップS3)。データ書込み時の制御は、一般的な光ディスクで行われているものと同様のものであり詳細は省略する。
【0053】
次いで、イニシャル処理が済んだ状態において、分析装置1に分析処理開始の指令が入力されると、図15のマイクロアッセイ処理が開始される。マイクロアッセイ処理が開始されると、先ず、制御回路70は光ヘッド40をデータ記録領域A2の内周部分に移動させ、そこから、各マイクロウェルWに投入するcDNAの情報が記録された表データを読み込む(ステップS11)。次いで、データ記録領域A2の制御データを読み込んで未使用のマイクロウェルWの範囲を確認する(ステップS12)。
【0054】
そして、未使用のマイクロウェルWの範囲を確認したら、その範囲のうち、内周に近い側から今回の分析処理で使用する複数のマイクロウェルWの範囲を指定して、この複数のマイクロウェルWに、検体となる試料(血液溶液)、並びに、上記の表データに基づく薬液と蛍光物質とをジェットヘッド20を駆動して投入する(ステップS13)。
【0055】
指定のマイクロウェルWに液剤を投入する際には、図11〜図12に示すように、光ヘッド40からレーザ光を出射させて、このレーザ光がマイクロアッセイ領域A1の溝Gの位置で焦点を結ぶようにサーボ制御した状態にする。このようなサーボ制御を実現するには、先ず、第1〜第3の光センサ56,59,61の出力に基づき図13に示すような3つのフォーカス誤差信号を入力して、これらに基づきレーザ光のフォーカスを検査ディスクDの上面に合わせる。
【0056】
図13に示すように、共焦点法により得られるフォーカス誤差信号はアフォーカル系の光学系により比較的大きな範囲でフォーカスのズレを検出できる。一方、ダブルナイフエッジ法により得られるフォーカス誤差信号と非点収差法により得られるフォーカス誤差信号は、比較的中程度の範囲ならびに小さな範囲で正確なフォーカスのズレを検出することが出来る。従って、これらの3つの信号を利用して、フォーカスが大きく外れている範囲では共焦点法のフォーカス誤差信号を使用し、フォーカスが徐々に近づくにつれてダブルナイフエッジ法と非点収差法のフォーカス誤差信号を使用して、フォーカスサーボをかける。それにより、レーザ光のフォーカスを検査ディスクDの上面に合わせる。
【0057】
次いで、レーザ光の焦点がスパイラル状に配された溝Gの位置に来たときに、この溝Gの底面部にフォーカス位置をずらすとともに、溝Gの横方向(検査ディスクDの半径方向)に対してもサーボ制御を行って、レーザ光の焦点が溝Gに沿って移動するように制御する。横方向のサーボ制御は、図示は省略するが、光ディスクの記録溝で行われるトラッキングサーボ制御と同様の構成を適用することが出来る。すなわち、3ビーム法などを用いて、レーザ光が溝Gから外れないように、レンズアクチュエータ42の横方向の駆動制御とスライドモータ15の駆動制御とを行う。なお、溝Gの途中にはマイクロウェルWが設けられ、この範囲で溝Gはなくなるが、マイクロウェルWの直径は10μm程度なので、検査ディスクDをある程度のスピードで回転させることで、レーザ光の焦点が溝Gから外れないようにサーボ制御を続けることが出来る。
【0058】
このようなサーボ制御により、光ヘッド40の対物レンズ41が、スパイラル状に配列された溝GやマイクロウェルWに沿った状態にされ、それにより、ジェットヘッド20の各ノズル23a〜23d…も同様にスパイラル状に配された溝GやマイクロウェルWに沿った位置に制御される。
【0059】
そして、この状態において、図9に示したロータリーエンコーダ12の出力と、スライドモータ15の回転量の検出とから、制御回路70は、何番目のマイクロウェルWの上方位置にジェットヘッド20が位置するかを割り出す。そして、指定のマイクロウェルWの上方位置にジェットヘッド20が来たときに、図10で説明したタイミングでジェットヘッド20のピエゾ素子24a〜24d…のうち投入する液剤に対応するものを駆動して、試料(血液溶液)やcDNAを含んだ薬液および蛍光物質を投入する。そして、このような液剤の投入を、複数種類の薬液分、続けざまに指定された複数のマイクロウェルWに対して行う(ステップS13)。
【0060】
液剤を投入したら、次に、液剤が反応する時間を待機し(ステップS14)、その後、液剤を投入したマイクロウェルWに対して蛍光検出を行う(ステップS15)。蛍光検出の際も、先に説明したように、まず、レーザ光を使用して対物レンズ41の焦点をスパイラル状に配された溝GやマイクロウェルWに合わせた後、光源49から励起光を出射させてPMT45の出力信号をデジタル化して取り込む。このような蛍光検出の処理を、ステップS13で液剤を投入した複数のマイクロウェルWに対してそれぞれ1回又は複数回行う。また、蛍光検出部のエミッタフィルタ44a,44bを切り換えて複数回行う。
【0061】
次に、取り込んだPMT45の出力から、蛍光出力が閾値を超えたマイクロウェルWと、表データからそこに投入した液薬のcDNAを抽出して、解析結果のデータを生成する(ステップS16)。
【0062】
解析結果のデータを生成したら、次に、光ヘッド40を検査ディスクDのデータ記録領域A2に移動させ、データの書き込まれていないセクタに、今回の分析処理で使用したマイクロウェルWの範囲と解析結果データとを書き込む(ステップS17)。このように使用したマイクロウェルWの範囲を記録しておくことで、次に、同一の検査ディスクDを用いて分析処理を行うときに、使用済みのマイクロウェルWは除外して、未使用のマイクロウェルWを用いて分析処理を行うことが可能となる。
【0063】
次に、蛍光検出のローデータ(Raw Data)も続けて検査ディスクDのデータ記録領域A2に書き込む(ステップS18)。ローデータを記録しておくことで、後に、蛍光検出の測定結果を別の手法で解析処理したり、検証したりすることが可能となる。そして、このローデータの書込みが終了したら1回の分析処理を終了する。
【0064】
以上のように、この実施形態の分析装置1によれば、1枚の検査ディスクDを用いて複数回分の試料の分析とその分析データの記録とを統括的に行うことが出来る。さらに、レーザ光を用いたサーボ制御とロータリーエンコーダ12の回転角度の検出とにより、ジェットヘッド20の1つのノズルから任意のマイクロウェルWに指定の液剤を噴射投入することができるため、ジェットヘッド20を必要最小限のコンパクトな構成にできる。また、ジェットヘッド20は20pl以下の微細液滴を投入する構成であるので、マイクロウェルWを微細化して1枚の検査ディスクDに多くのマイクロウェルWを形成することができ、それにより、1枚の検査ディスクDで非常に多くの回数分析処理を行うことが可能となる。
【0065】
また、複数のマイクロウェルWは、渦巻状に列を成して形成され、この列に沿って溝Gが形成されているので、レーザ光の焦点がこの溝Gに沿って外れないようにサーボ制御をかけることで、ジェットヘッド20の位置をこの溝Gに沿ったマイクロウェルWの上方位置に容易に合わせることが出来る。また、ロータリーエンコーダ12の出力と合わせて判断することで、何番目のマイクロウェルWに対応する位置にジェットヘッド20があるのか判別することが可能となる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では光ヘッド40とジェットヘッド20とをベースフレーム14に一体的にした構成を例示したが、これらを別のフレームに設けるとともに、これら2個のフレームが連動して等距離ずつ移動する構成にしても良い。また、マイクロウェルWが同一の回転角に1個ずつ設けられる構成としているが、例えば、等間隔で1個ずつ設ける構成としても良い。また、上記実施の形態では、mRNAとcDNAとの結合に基づくDNAの検査に本発明の分析装置を用いた例を示したが、分析内容は種々のものに応用可能であるし、分析に利用する試料と薬剤の反応の種類も様々なものを利用可能である。
【0067】
その他、光学系やエンコーダマークM1の構成、並びに、検査ディスクDのデータ記録領域A2に格納するデータ等、実施形態で示した細部等は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態の分析装置1のメカ構成および光学構成を示す構成図である。
【図2】実施形態の分析装置1の回路構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態の検査ディスクの構成を示す平面図である。
【図4】マイクロアッセイ領域の構成を概略的に表わした図である。
【図5】マイクロウェルの詳細な構成を示す斜視図である。
【図6】検査ディスクの断面図である。
【図7】ジェットヘッドの構成を示す正面図である。
【図8】ジェットヘッドの構成を示す側面図である。
【図9】ロータリーエンコーダの出力の一例を示すタイムチャートである。
【図10】ジェットヘッドの駆動動作の一例を説明するタイムチャートである。
【図11】マイクロウェルに液剤を投入している状態を示す斜視図である。
【図12】光ヘッドによる蛍光検出の状態とデータ記録の状態を表わした説明図である。
【図13】光ヘッドのフォーカスサーボ制御に使用されるフォーカス誤差信号を示す波形図である。
【図14】制御回路により実行される検査ディスクに対するイニシャル処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】制御回路により実行されるマイクロアッセイ処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1 分析装置
10 スピンドルモータ
12 ロータリーエンコーダ
15 スライドモータ
15a リードスクリュー
20 ジェットヘッド
23a〜23d ノズル
24a〜24d ピエゾ素子
40 光ヘッド
41 対物レンズ
42 レンズアクチュエータ
45 PMT
49 励起光の光源
53 半導体レーザ
56,59,61 光センサ
D 検査ディスク
A1 マイクロアッセイ領域
A2 データ記録領域
M1 エンコードマーク
W マイクロウェル
G 溝
b1 記録層
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばDNA(デオキシリボ核酸)等の検査を行う分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、DNAチップを用いて検体の分析を行う分析手法が知られている。DNAチップは、多種類のcDNA(相補的DNA)の断片をチップ上に固定化したものであり、そこに検体から抽出したmRNA(メッセンジャーリボ核酸)の溶液をふりかけることで、DNAに特定の遺伝子配列が含まれるか否かを分析することが出来る。すなわち、mRNAは、同じ配列をもったcDNAとだけ結合し、その他のc−DNAとは結合しない。そして、蛍光物質を用いてmRNAとcDNAとが結合したものと非結合のものとを識別することで、検体のDNAに特定の遺伝子配列が存在しているか否かを評価することができる。例えば、cDNAに細胞の癌化と関連のあるDNA断片を使用することで、検体から取り出した細胞にどれだけの割合で癌細胞が含まれているか等の分析も行うことが出来る。
【0003】
また、本願の発明に関連する従来技術として、次のような技術の開示があった。例えば、特許文献1と2には、円板形状のバイオアッセイ基板を用いてDNA溶液の滴下と蛍光検出とを行うバイオアッセイ装置について開示されている。また、特許文献3には、円板形状のバイオアッセイ基板の内周側の所定範囲に信号記録膜を形成し、バイオアッセイ用基板の検査に関する情報を記録することが開示されている。また、特許文献4には、検体の試料が付着されたチップ上にジェットヘッドから複数の薬液を噴出して試料と反応させ、蛍光検出により試料の分析を行う装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−133021号公報
【特許文献2】特開2006−133077号公報
【特許文献3】特開2005−03450号公報
【特許文献4】特開2007−113996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、1枚の検査基板を用いて長期に渡る複数回の検査・分析を行い、且つ、同一の検査基板にそれまでの分析結果の情報を統括的にまとめておけるような分析キットがあれば、大変便利であると考えた。このような分析キットにより、例えば、一人の被験者に1枚の検査基板を割り当てておくことで、一人の被験者の過去から現在までの検査・分析の実施や、分析データの格納を1枚の検査基板で統括的に行うことが出来る。
【0005】
このような構成を実現するには、1枚の検査基板に微細なウェルを多数設けて、任意のウェルを少しずつ使用して多数回の検査を行えるようにする必要があると考えられた。
【0006】
しかしながら、引用文献1と2の技術は、溶液を噴射する複数のノズルを放射状に配置し、さらにこれらを固定しているため、基板上に微細なウェルを多数設けた場合、ウェルの列数に対応させて多数のノズルを放射状に設けなければならず、溶液を噴射する構成が大型になるという課題があった。また、多数のウェルのうち任意の範囲のウェルのみ用いて分析を行う場合には、使用するウェルに必要な液剤を投入する必要があることから、使用するウェルをその都度変えるような柔軟な対応が難しいという課題があった。
【0007】
また、引用文献3の技術は、滴下ヘッドにより溶液をウェル内に滴下する構成であるため、滴下する溶液の容量が比較的多くなって、微細なウェルに対応させるのが難しいという課題があった。また、1つのウェルに高速に複数の液剤を投入するのが難しいという課題があった。
【0008】
この発明の目的は、光ディスクの技術を応用し、円板状の検査基板を用いて試料の分析と分析データ等の記録を統括的に行うことが出来るとともに、1枚の検査基板に微細なウェルを多数形成し、この多数のウェルのうち任意の範囲のウェルのみを使用してコンパクトな構成で且つ高速な検査を行うことのできる分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、試料を反応させるための複数のマイクロウェルとデータ記録が可能な記録領域とが形成された円板形状の検査ディスクを用いて、試料の分析と分析データの記録とを行う分析装置であって、前記検査ディスクを回転駆動するスピンドル機構と、このスピンドル機構により回転される前記検査ディスクの回転角度を検出するロータリーエンコーダと、複数の液剤を微細液滴にしてそれぞれ噴射する複数のノズルを有し、これら複数のノズルが前記検査ディスクの回転方向に並んで配置されたジェットヘッドと、前記検査ディスクに対して光の照射と集光とを行う対物レンズを有し、前記検査ディスクへ励起光を照射してそこから発せられる蛍光量を検出する蛍光検出部、および、前記検査ディスクへレーザ光を照射してデータの記録再生を行うデータ記録部を有する光ヘッドと、前記ジェットヘッドと前記光ヘッドとを前記検査ディスクに対して半径方向へ相対的に移動させるスライド機構と、各部の制御を行う制御手段と、を備え、前記複数のノズルの前記検査ディスクの半径方向の位置が前記光ヘッドの前記対物レンズの光軸位置と重なるように配置され、前記制御手段は、前記光ヘッドによるレーザ光の照射と反射光の検出によって前記ジェットヘッドを前記マイクロウェルの形成された半径位置へ移動させ、前記ロータリーエンコーダの出力に基づき前記検査ディスクの回転角度を検出しながら前記複数のノズルからタイミングをずらして微細液滴をそれぞれ噴射させることで、1個のマイクロウェルに複数種類の液剤を投入するように構成とした。
【0010】
このような手段によれば、1枚の検査ディスクで試料の分析とその分析データの記録とを統括的に行うことができるとともに、微細なウェルが多数形成された検査ディスクに対して、その任意の範囲のウェルに必要な液剤を投入して試料の検査を行うことが可能となる。また、液剤を投入するジェットヘッドは、1つのノズルから全てのマイクロウェルに液剤の投入を行うことが出来る構成となるため、多数のマイクロウェルを形成しても、液剤を投入する構成はコンパクトにすることが出来る。
【0011】
具体的には、前記ジェットヘッドは、前記液剤を20ピコリットル以下の微細液滴にして噴射する構成とすると良い。
【0012】
これにより、検査ディスクに形成するマイクロウェルの大きさを小さくして、より多数のマイクロウェルを形成することが出来る。
【0013】
また具体的には、前記検査ディスクは、中央に同心円の貫通孔を有し、中央側から一定の半径範囲に、基板表面が凹状に形成された複数のマイクロウェルが渦巻き状に列を成して形成されるとともに、基板表面が凹状にされた溝が前記マイクロウェルの列に沿って隣接するマイクロウェルをつなぐように形成され、前記マイクロウェルの形成領域より外周側に、レーザ光によりデータマークが形成可能な記録層を有するデータ記録領域が形成された構成とすると良い。
【0014】
さらに具体的には、前記制御手段は、前記溝にレーザ光の焦点が合うように前記光ヘッドの半径方向の位置を調整することで、前記ジェットヘッドの位置を前記マイクロウェルの形成された半径位置に合わせる構成とすると良い。
【0015】
このような構成により、ジョットヘッドを上記の溝に沿った状態で検査ディスクを回転させ、溝に沿った複数のマイクロウェルで連続的に試料の分析を行うことが可能となる。また、溝の検出によりマイクロウェルの位置の確認や、ジェットヘッドを所定のマイクロウェルの箇所まで移動させるのも容易となる。
【0016】
好ましくは、前記制御手段は、試料の分析処理の開始の指示を受けたら、前記記録領域の格納データを読み出して前記マイクロウェルの未使用領域を確認するステップと、前記前記未使用領域のマイクロウェルに前記ジェットヘッドから液剤を投入させるステップと、前記液剤が投入されたマイクロウェルの蛍光検出を行うステップと、前記記録領域に前記蛍光検出に関するデータと使用したマイクロウェルの範囲を示すデータとを記録するステップとを順次行う構成とすると良い。
【0017】
このような構成により、自動的な制御によって、1枚の検査ディスクで長期に渡る複数回の検査を行うことが可能となり、且つ、同一の検査ディスクにそれまでの分析データを統括的にまとめていくことが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従うと、円板状の検査ディスクで試料の分析と分析データの格納を統括的に行うことができるとともに、1枚の検査ディスクに微細なウェルを多数形成し、この多数のウェルのうち任意の範囲のウェルのみを使用してコンパクトな構成で高速な検査を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態の分析装置1のメカ構成および光学構成を示す構成図、図2は、実施形態の分析装置1の回路構成を示すブロック図である。
【0021】
この実施の形態の分析装置1は、円板状の検査ディスクDを用いて人のDNAの分析とこの分析データの記録とを行うもので、検査ディスクDを回転軸10aに保持して回転駆動するスピンドルモータ10と、検査ディスクDのエンコードマークを検出して回転角度を検出するロータリーエンコーダ12と、検査ディスクDのマイクロウェル(Micro Well)に検体となる血液の溶液や薬液を投入するジェットヘッド20と、蛍光検出やデータの記録再生等を行う光学系(41〜61)を有する光ヘッド40と、これらジェットヘッド20と光ヘッド40とが搭載されるベースフレーム14と、ベースフレーム14をナット17,17とリードスクリュー15aを介して検査ディスクDの半径方向へ移動させるスライドモータ15等を備えている。
【0022】
光ヘッド40に搭載される光学系は、光を検査ディスクDに収束させたりその反射光や蛍光を集光する対物レンズ41と、この対物レンズ41をフォーカス方向とトラッキング方向に微小変位させるレンズアクチュエータ42と、レーザ光や励起光と蛍光とを分離するダイクロイックミラー43と、赤色の蛍光と緑の蛍光を透過させるエミッタフィルタ44a,44bと、蛍光の光量検出を行うPMT(フォトマルチプライア)45と、励起光を出射する光源49と、励起光を平行光にするコリメータレンズ47と、励起光の波長を抽出するエキサイタフィルタ47と、励起光を反射し記録再生用のレーザ光を透過するフィルタミラー46と、記録再生用のレーザ光を出射する半導体レーザ53と、記録再生用のレーザ光の進行波と反射波とを分離するための1/4波長板50および偏光ビームスプリッタ52と、記録再生用のレーザ光を平行光にするコリメータレンズ51と、記録再生用のレーザ光の反射ビームを3方向に分離するプリズム54,57と、点状又は線状の隙間が形成されたスリット55と、スリット55を通過した光強度を検出する第1光センサ56と、2個のプリズムを異なる角度で互いに接触させて固定した光学素子58と、光学素子58を通過した光を複数分割された検出面でそれぞれ検出する第2光センサ59と、反射ビームに非点収差を付与する円筒レンズなどの光学レンズ60と、光学レンズ60を通過した光を複数分割された検出面でそれぞれ検出する第3光センサ61等を備えている。
【0023】
ジェットヘッド20は、回転軸10aに保持された検査ディスクDの上方に配置されている。一方、光ヘッド40の対物レンズ41は検査ディスクDの下側に配置されている。これらジェットヘッド20と対物レンズ41は、そのノズルの延長線と、対物レンズ41の光軸とが、検査ディスクDの半径方向の同一長の位置に来るようにアライメントされている。
【0024】
ロータリーエンコーダ12は、例えば、反射型の光センサにより構成される。
【0025】
エミッタフィルタ44a,44bは、図示略の駆動装置により光軸上に何れか一方が移動されて、蛍光の通過波長が切り換えられるようになっている。
【0026】
スリット55と第1光センサ56は、共焦点法により対物レンズ41により収束されるレーザ光の焦点と反射面とのズレ量を検出するためのものである。また、光学素子58と第2光センサ59は、ダブルナイフエッジ法により上記レーザ光の焦点のズレ量を検出するためのものである。また、円筒レンズ等の光学レンズ60および第3光センサ61は、非点収差法により上記レーザ光の焦点のズレ量を検出するためのものである。また、第3光センサ61は、データの読み出し時に再生信号を生成するのにも使用されるものである。
【0027】
また、この実施の形態の分析装置1には、図2に示すように、第2光センサ59や第3光センサ61の検出信号を演算してフォーカス誤差信号を生成する演算回路65,66と、光センサ56,59,61の検出出力から得られるフォーカス誤差信号をデジタル信号に変換するデジタルサンプリング回路62〜63,71と、PMT45の蛍光検出信号をデジタル信号に変換するデジタルサンプリング回路64と、これら光センサ45,56,59,61やロータリーエンコーダ12等から信号を入力してレンズアクチュエータ42、ジェットヘッド20、スライドモータ15、スピンドルモータ10等の駆動制御を行う制御回路70と、データ記録用の信号処理を行う書込み用データ処理回路69と、スライドモータ15やスピンドルモータ10を駆動するドライバ67,68と、半導体レーザ53を駆動するレーザドライバ73等を備えている。
【0028】
スライドモータ15は、ステッピングモータ等から構成され、制御回路70はその回転量から光ヘッド40やジェットヘッド20が検査ディスクDの半径方向のどの位置にいるかを認識できるようになっている。
【0029】
図3は、本発明の実施形態の検査ディスクの構成を示す平面図、図4は、そのマイクロアッセイ領域に形成されるマイクロウェルの全体構成を概略的に表わした図、図5は、マイクロウェルの詳細な構成を示す斜視図、図6は、検査ディスクの一部の断面図である。
【0030】
検査ディスクDは、例えばコンパクトディスクと同等の円板形状をしてなるもので、その中央には、回転軸10aに保持される同心円状の貫通孔D0が形成されている。また、この貫通孔D0に近い内周側の下面には回転角度を検出させるためのエンコードマークM1が形成され、このエンコードマークM1より外周側でディスク半径の中盤までの範囲には、微細なマイクロウェルWをディスク上面に多数有するマイクロアッセイ領域A1が形成されている。さらに、その外周側には、光ディスクと同様にディスク内にレーザ光によりデータマークが形成可能な記録層を有するデータ記録領域A2が形成されている。
【0031】
図4と図5に示すように、マイクロアッセイ領域A1には、ディスク表面が円形凹状に成型されたマイクロウェルWが中央側から外側へと渦を巻くような配列で多数形成されている。なお、図4は、概略的にマイクロウェルが渦状に並んでいること示すものであり、実際には、渦の隣接する2列はもっと近接して並らび、列に沿った隣接するマイクロウェルWの間隔ももっと狭く形成されている。
【0032】
また、列に沿って隣接する2個のマイクロウェルW,Wの間には、両者を結ぶように細い溝Gが形成されている。マイクロウェルは、例えば直径が10μm程度、溝は0.4μm程度である。また、特に制限されるものではないが、図3の一部の拡大図に示すように、マイクロウェルWは内周側から外周側にかけて所定の回転角に1個の割合で形成されている。このようなマイクロウェルWと溝Gの加工は光ディスクを形成する工程と同様にディスク材料を射出成型して形成するときに、その型枠にこの微細な形状を形成しておくことで作成可能なものである。
【0033】
データ記録領域A2は、DVD(デジタル多用途ディスク)などの光ディスクと同様に、例えば、検査ディスクの中央の深さ位置に記録層b1が形成されたものである。記録層b1は、光ディスクのものと同様に、レーザ光によりマークが形成される色素膜や反射膜並びに記録溝などを有するものである。
【0034】
図7と図8には、ジェットヘッド20の構成を示す正面図と側面図とをそれぞれ示す。
【0035】
ジェットヘッド20は、図7に示すように、複数本の独立した流路22a〜22dおよびノズル23a〜23dを有し、これらノズル23a〜23dの先端から液剤を微細液滴にして噴射するものである。なお、図7には、流路22a〜22dやノズル23a〜23dが4つ形成されている例を示しているが、100個や200個など膨大な数形成されるものである。
【0036】
微細液滴は、例えば3pl(ピコリットル)程度の液滴であるが、20pl以下の液滴であれば、検査ディスクDの回転により液剤がマイクロウェルWから飛び出したりすることがなく、試薬等の使用量を低減して検査のランニングコストの低減効果を得ることが出来る。流路22a〜22dやノズル23a〜23dは、図8に示すように、例えばシリコンブロック25bの表面にエッチング処理を施して溝を形成し、その上にガラス25aなどを接合することで、これらシリコンブロック25bとガラス25aの間に形成することが出来る。
【0037】
また、流路22a〜22dの途中には、ピエゾ素子24a〜24dの一面が各流路22a〜22dを覆うように設けられ、これらのピエゾ素子24a〜24dに電圧を印加して駆動することで、流路22a〜22d内の液剤が押圧されてノズル23a〜23dの先端から微細な液滴が噴射されるようになっている。
【0038】
流路22a〜22dの上端側にはパイプ26が接続され、これらのパイプ26から液剤が供給されるようになっている。これらの構成はホルダ枠20Aにより保持・固定されている。また、パイプ26の先には液剤が投入される小さなタンクが設けられ、そこに液薬や試料の溶剤を投入し、ノズル23a〜23dから噴射させることが可能になっている。
【0039】
複数のノズル23a〜23dは、図7に示すように、回転軸10aに保持された検査ディスクDの回転方向(円周の接線方向)に並ぶように組みつけられている。
【0040】
図9は、ロータリーエンコーダの出力の一例を示すタイムチャートを、図10は、ジェットヘッドの駆動動作の一例を説明するタイムチャートを示す。
【0041】
エンコードマークM1は、特に制限されるものではないが、例えば、マイクロウェルWが1個形成される角度範囲に1個の検出信号が出力されるように細かい角度毎に形成された複数のマークと、1回転に1個の検出信号が出力されるように形成された同心円上に1個のマークとを有している。ロータリーエンコーダ12は、これら両者のマークを独立して検出することで、検査ディスクが1回転するごとに1回の検出パルスが出力されるエンコーダ出力Aと、マイクロウェルWが1個ある角度範囲ごとに1個の検出パルスが出力されるエンコーダ出力Bとを生成する。
【0042】
図10に示すように、制御回路70は、エンコーダ出力Bの1個の検出パルスを基準に、所定の遅延間隔td0,td,td,tdでジェットヘッド20のピエゾ素子24a〜24dを順番に駆動する。それにより、1個のマイクロウェルW内のほぼ同一点に複数のノズル23a〜23dから液剤を噴射して投入することが可能になっている。エンコーダ出力Bのパルスから最初のピエゾ素子24aを駆動させるまでの遅延td0は、エンコードマークM1の開始点からマイクロウェルW中の所定点(例えば中央の点)までの回転角と、検査ディスクDの角速度に応じた時間である。また、1つのピエゾ素子の駆動から次の隣接するピエゾ素子の駆動までの遅延時間tdは、ジェットヘッド20の複数のノズル23a〜23dの間隔と、検査ディスクDの液剤噴射点での速度(角速度×その点までの半径)とに応じた時間である。制御回路70は、検査ディスクの角速度と、液剤噴射点の半径とを求め、それらから演算した上記の遅延間隔td0,td,td,tdごとにジェットヘッド20のピエゾ素子24a〜24dを順番に駆動していくことで、マイクロウェルW中の所定の点へ複数の液剤を投与することが可能になっている。
【0043】
次に、上記構成の分析装置1を用いた分析処理の動作について説明する。
【0044】
この分析装置1では、検体となる試料や薬剤として種々のものを使用することで、様々な分析を行うことができるが、ここでは、被験者のDNA溶剤を試料として、被験者のDNAに癌化に関与する様々な遺伝子配列が含まれているか否かを分析する処理について説明する。
【0045】
先ず、分析原理の概略を説明する。この分析装置1で上記のような分析処理を行うには、ジェットヘッド20から噴射する液剤として、被験者のDNAが溶かされた例えば血液溶剤、また、癌化に関与するDNA配列を有した多数種類のcDNAの溶剤、また、二本鎖DNAに結合して蛍光を発する構造に変質する蛍光物質の溶剤などを用いる。そして、1個のマイクロウェルに1つのcDNAを対応させるかたちで、複数のマイクロウェルに多数種類のcDNAと血液溶剤と蛍光物質溶剤とをそれぞれ投入して反応させる。
【0046】
すると、被験者の血液溶剤のDNAにcDNAに対応した遺伝子配列があれば、被験者のDNAに係るmRNAとcDNAとが結合して二本鎖DNAとなり、それと蛍光物質とが結合して蛍光を発する構造に変質する。一方、被験者の血液溶剤のDNAにcDNAに対応する遺伝子配列がなければ、被験者のDNAに係るmRNAとcDNAとは結合せず、それゆえ、二本鎖DNAが生成されずに蛍光物質も蛍光体に変質しない。
【0047】
そこで、上記の液剤を複数のマイクロウェルWに投入して反応させたら、これらのマイクロウェルWに検査ディスクDの下方から励起光を照射し、そこからの蛍光の発光量をPMT45で検出する。そして、蛍光量が一定以上であったマイクロウェルWに投入されたcDNAを確認することで、被験者から採取したDNAにこの癌化に関与するcDNAの遺伝子配列が含まれることを分析結果として得ることが出来る。
【0048】
次に、上記の分析装置1による分析処理の処理手順について説明する。
【0049】
図11は、マイクロウェルWに液剤を投入している状態を示す斜視図、図12は、光ヘッド40によりその光軸位置をマイクロアッセイ領域の溝に合わせた状態とデータ記録の際の状態とを表わした説明図、図13は、マイクロアッセイ領域A1の溝Gに焦点位置を合わせる際に使用する際のフォーカス誤差信号を示すグラフである。
【0050】
また、図14には、1枚の検査ディスクDを用いて初めて分析処理を実施する場合に制御回路70により実行されるイニシャル処理のフローチャートを、図15には、分析実行の指示がなされた場合に制御回路70により実行されるマイクロアッセイ処理のフローチャートを、それぞれ示す。
【0051】
未使用の検査ディスクDを初めて使用する場合、検査ディスクDを装置にセットすると、光ヘッド40がそのデータ記録領域A2のデータにアクセスすることで、制御回路70により未使用の検査ディスクDであることが検出される。そして、未使用の検査ディスクDが検出されると、図14のイニシャル処理が開始される。
【0052】
イニシャル処理では、先ず、制御回路70は、検査ディスクDの各マイクロウェルWとそこに投入するcDNAの情報を、例えば表(スプレッドシート)のデータ形式にして外部から装置1に入力させる(ステップS1)。これらのデータは設定者が用意する。これらのデータが入力されたら、制御回路70は光ヘッド40を検査ディスクDのデータ記録領域A2の際内周部分に移動させ(ステップS2)、そこにこれらのデータを書き込む(ステップS3)。データ書込み時の制御は、一般的な光ディスクで行われているものと同様のものであり詳細は省略する。
【0053】
次いで、イニシャル処理が済んだ状態において、分析装置1に分析処理開始の指令が入力されると、図15のマイクロアッセイ処理が開始される。マイクロアッセイ処理が開始されると、先ず、制御回路70は光ヘッド40をデータ記録領域A2の内周部分に移動させ、そこから、各マイクロウェルWに投入するcDNAの情報が記録された表データを読み込む(ステップS11)。次いで、データ記録領域A2の制御データを読み込んで未使用のマイクロウェルWの範囲を確認する(ステップS12)。
【0054】
そして、未使用のマイクロウェルWの範囲を確認したら、その範囲のうち、内周に近い側から今回の分析処理で使用する複数のマイクロウェルWの範囲を指定して、この複数のマイクロウェルWに、検体となる試料(血液溶液)、並びに、上記の表データに基づく薬液と蛍光物質とをジェットヘッド20を駆動して投入する(ステップS13)。
【0055】
指定のマイクロウェルWに液剤を投入する際には、図11〜図12に示すように、光ヘッド40からレーザ光を出射させて、このレーザ光がマイクロアッセイ領域A1の溝Gの位置で焦点を結ぶようにサーボ制御した状態にする。このようなサーボ制御を実現するには、先ず、第1〜第3の光センサ56,59,61の出力に基づき図13に示すような3つのフォーカス誤差信号を入力して、これらに基づきレーザ光のフォーカスを検査ディスクDの上面に合わせる。
【0056】
図13に示すように、共焦点法により得られるフォーカス誤差信号はアフォーカル系の光学系により比較的大きな範囲でフォーカスのズレを検出できる。一方、ダブルナイフエッジ法により得られるフォーカス誤差信号と非点収差法により得られるフォーカス誤差信号は、比較的中程度の範囲ならびに小さな範囲で正確なフォーカスのズレを検出することが出来る。従って、これらの3つの信号を利用して、フォーカスが大きく外れている範囲では共焦点法のフォーカス誤差信号を使用し、フォーカスが徐々に近づくにつれてダブルナイフエッジ法と非点収差法のフォーカス誤差信号を使用して、フォーカスサーボをかける。それにより、レーザ光のフォーカスを検査ディスクDの上面に合わせる。
【0057】
次いで、レーザ光の焦点がスパイラル状に配された溝Gの位置に来たときに、この溝Gの底面部にフォーカス位置をずらすとともに、溝Gの横方向(検査ディスクDの半径方向)に対してもサーボ制御を行って、レーザ光の焦点が溝Gに沿って移動するように制御する。横方向のサーボ制御は、図示は省略するが、光ディスクの記録溝で行われるトラッキングサーボ制御と同様の構成を適用することが出来る。すなわち、3ビーム法などを用いて、レーザ光が溝Gから外れないように、レンズアクチュエータ42の横方向の駆動制御とスライドモータ15の駆動制御とを行う。なお、溝Gの途中にはマイクロウェルWが設けられ、この範囲で溝Gはなくなるが、マイクロウェルWの直径は10μm程度なので、検査ディスクDをある程度のスピードで回転させることで、レーザ光の焦点が溝Gから外れないようにサーボ制御を続けることが出来る。
【0058】
このようなサーボ制御により、光ヘッド40の対物レンズ41が、スパイラル状に配列された溝GやマイクロウェルWに沿った状態にされ、それにより、ジェットヘッド20の各ノズル23a〜23d…も同様にスパイラル状に配された溝GやマイクロウェルWに沿った位置に制御される。
【0059】
そして、この状態において、図9に示したロータリーエンコーダ12の出力と、スライドモータ15の回転量の検出とから、制御回路70は、何番目のマイクロウェルWの上方位置にジェットヘッド20が位置するかを割り出す。そして、指定のマイクロウェルWの上方位置にジェットヘッド20が来たときに、図10で説明したタイミングでジェットヘッド20のピエゾ素子24a〜24d…のうち投入する液剤に対応するものを駆動して、試料(血液溶液)やcDNAを含んだ薬液および蛍光物質を投入する。そして、このような液剤の投入を、複数種類の薬液分、続けざまに指定された複数のマイクロウェルWに対して行う(ステップS13)。
【0060】
液剤を投入したら、次に、液剤が反応する時間を待機し(ステップS14)、その後、液剤を投入したマイクロウェルWに対して蛍光検出を行う(ステップS15)。蛍光検出の際も、先に説明したように、まず、レーザ光を使用して対物レンズ41の焦点をスパイラル状に配された溝GやマイクロウェルWに合わせた後、光源49から励起光を出射させてPMT45の出力信号をデジタル化して取り込む。このような蛍光検出の処理を、ステップS13で液剤を投入した複数のマイクロウェルWに対してそれぞれ1回又は複数回行う。また、蛍光検出部のエミッタフィルタ44a,44bを切り換えて複数回行う。
【0061】
次に、取り込んだPMT45の出力から、蛍光出力が閾値を超えたマイクロウェルWと、表データからそこに投入した液薬のcDNAを抽出して、解析結果のデータを生成する(ステップS16)。
【0062】
解析結果のデータを生成したら、次に、光ヘッド40を検査ディスクDのデータ記録領域A2に移動させ、データの書き込まれていないセクタに、今回の分析処理で使用したマイクロウェルWの範囲と解析結果データとを書き込む(ステップS17)。このように使用したマイクロウェルWの範囲を記録しておくことで、次に、同一の検査ディスクDを用いて分析処理を行うときに、使用済みのマイクロウェルWは除外して、未使用のマイクロウェルWを用いて分析処理を行うことが可能となる。
【0063】
次に、蛍光検出のローデータ(Raw Data)も続けて検査ディスクDのデータ記録領域A2に書き込む(ステップS18)。ローデータを記録しておくことで、後に、蛍光検出の測定結果を別の手法で解析処理したり、検証したりすることが可能となる。そして、このローデータの書込みが終了したら1回の分析処理を終了する。
【0064】
以上のように、この実施形態の分析装置1によれば、1枚の検査ディスクDを用いて複数回分の試料の分析とその分析データの記録とを統括的に行うことが出来る。さらに、レーザ光を用いたサーボ制御とロータリーエンコーダ12の回転角度の検出とにより、ジェットヘッド20の1つのノズルから任意のマイクロウェルWに指定の液剤を噴射投入することができるため、ジェットヘッド20を必要最小限のコンパクトな構成にできる。また、ジェットヘッド20は20pl以下の微細液滴を投入する構成であるので、マイクロウェルWを微細化して1枚の検査ディスクDに多くのマイクロウェルWを形成することができ、それにより、1枚の検査ディスクDで非常に多くの回数分析処理を行うことが可能となる。
【0065】
また、複数のマイクロウェルWは、渦巻状に列を成して形成され、この列に沿って溝Gが形成されているので、レーザ光の焦点がこの溝Gに沿って外れないようにサーボ制御をかけることで、ジェットヘッド20の位置をこの溝Gに沿ったマイクロウェルWの上方位置に容易に合わせることが出来る。また、ロータリーエンコーダ12の出力と合わせて判断することで、何番目のマイクロウェルWに対応する位置にジェットヘッド20があるのか判別することが可能となる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では光ヘッド40とジェットヘッド20とをベースフレーム14に一体的にした構成を例示したが、これらを別のフレームに設けるとともに、これら2個のフレームが連動して等距離ずつ移動する構成にしても良い。また、マイクロウェルWが同一の回転角に1個ずつ設けられる構成としているが、例えば、等間隔で1個ずつ設ける構成としても良い。また、上記実施の形態では、mRNAとcDNAとの結合に基づくDNAの検査に本発明の分析装置を用いた例を示したが、分析内容は種々のものに応用可能であるし、分析に利用する試料と薬剤の反応の種類も様々なものを利用可能である。
【0067】
その他、光学系やエンコーダマークM1の構成、並びに、検査ディスクDのデータ記録領域A2に格納するデータ等、実施形態で示した細部等は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態の分析装置1のメカ構成および光学構成を示す構成図である。
【図2】実施形態の分析装置1の回路構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態の検査ディスクの構成を示す平面図である。
【図4】マイクロアッセイ領域の構成を概略的に表わした図である。
【図5】マイクロウェルの詳細な構成を示す斜視図である。
【図6】検査ディスクの断面図である。
【図7】ジェットヘッドの構成を示す正面図である。
【図8】ジェットヘッドの構成を示す側面図である。
【図9】ロータリーエンコーダの出力の一例を示すタイムチャートである。
【図10】ジェットヘッドの駆動動作の一例を説明するタイムチャートである。
【図11】マイクロウェルに液剤を投入している状態を示す斜視図である。
【図12】光ヘッドによる蛍光検出の状態とデータ記録の状態を表わした説明図である。
【図13】光ヘッドのフォーカスサーボ制御に使用されるフォーカス誤差信号を示す波形図である。
【図14】制御回路により実行される検査ディスクに対するイニシャル処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】制御回路により実行されるマイクロアッセイ処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1 分析装置
10 スピンドルモータ
12 ロータリーエンコーダ
15 スライドモータ
15a リードスクリュー
20 ジェットヘッド
23a〜23d ノズル
24a〜24d ピエゾ素子
40 光ヘッド
41 対物レンズ
42 レンズアクチュエータ
45 PMT
49 励起光の光源
53 半導体レーザ
56,59,61 光センサ
D 検査ディスク
A1 マイクロアッセイ領域
A2 データ記録領域
M1 エンコードマーク
W マイクロウェル
G 溝
b1 記録層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を反応させるための複数のマイクロウェルとデータ記録が可能な記録領域とが形成された円板形状の検査ディスクを用いて、試料の分析と分析データの記録とを行う分析装置であって、
前記検査ディスクを回転駆動するスピンドル機構と、
このスピンドル機構により回転される前記検査ディスクの回転角度を検出するロータリーエンコーダと、
複数の液剤を微細液滴にしてそれぞれ噴射する複数のノズルを有し、これら複数のノズルが前記検査ディスクの回転方向に並んで配置されたジェットヘッドと、
前記検査ディスクに対して光の照射と集光とを行う対物レンズを有し、前記検査ディスクへ励起光を照射してそこから発せられる蛍光量を検出する蛍光検出部、および、前記検査ディスクへレーザ光を照射してデータの記録再生を行うデータ記録部を有する光ヘッドと、
前記ジェットヘッドと前記光ヘッドとを前記検査ディスクに対して半径方向へ相対的に移動させるスライド機構と、
各部の制御を行う制御手段と、
を備え、
前記複数のノズルの前記検査ディスクの半径方向の位置が前記光ヘッドの前記対物レンズの光軸位置と重なるように配置され、
前記制御手段は、
前記光ヘッドによるレーザ光の照射と反射光の検出によって前記ジェットヘッドを前記マイクロウェルの形成された半径位置へ移動させ、
前記ロータリーエンコーダの出力に基づき前記検査ディスクの回転角度を検出しながら前記複数のノズルからタイミングをずらして微細液滴をそれぞれ噴射させることで、1個のマイクロウェルに複数種類の液剤を投入するように構成されていることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記ジェットヘッドは、前記液剤を20ピコリットル以下の微細液滴にして噴射する構成であることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記検査ディスクは、
中央に同心円の貫通孔を有し、
中央側から一定の半径範囲に、基板表面が凹状に形成された複数のマイクロウェルが渦巻き状に列を成して形成されるとともに、基板表面が凹状にされた溝が前記マイクロウェルの列に沿って隣接するマイクロウェルをつなぐように形成され、
前記マイクロウェルの形成領域より外周側に、レーザ光によりデータマークが形成可能な記録層を有するデータ記録領域が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記溝にレーザ光の焦点が合うように前記光ヘッドの半径方向の位置を調整することで、前記ジェットヘッドの位置を前記マイクロウェルの形成された半径位置に合わせることを特徴とする請求項3記載の分析装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
試料の分析処理の開始の指示を受けたら、
前記記録領域の格納データを読み出して前記マイクロウェルの未使用領域を確認するステップと、
前記前記未使用領域のマイクロウェルに前記ジェットヘッドから液剤を投入させるステップと、
前記液剤が投入されたマイクロウェルの蛍光検出を行うステップと、
前記記録領域に前記蛍光検出に関するデータと使用したマイクロウェルの範囲を示すデータとを記録するステップと、
を順次行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
円板形状で、中央側から一定の半径範囲に、基板表面が凹状に形成された複数のマイクロウェルが渦巻き状に列を成して形成されるとともに、基板表面が凹状にされた溝が前記マイクロウェルの列に沿って隣接するマイクロウェルをつなぐように形成され、前記マイクロウェルの形成領域より外周側に、レーザ光によりデータマークが形成可能な記録層を有するデータ記録領域が形成されている検査ディスクを用いて、試料の分析と分析データの記録とを行う分析装置であって、
前記検査ディスクを回転駆動するスピンドル機構と、
このスピンドル機構により回転される前記検査ディスクの回転角度を検出するロータリーエンコーダと、
複数の液剤を20ピコリットル以下の微細液滴にしてそれぞれ噴射する複数のノズルを有し、これら複数のノズルが前記検査ディスクの回転方向に並んで配置されたジェットヘッドと、
前記検査ディスクに対して光の照射と集光とを行う対物レンズを有し、前記検査ディスクへ励起光を照射してそこから発せられる蛍光量を検出する蛍光検出部、および、前記検査ディスクへレーザ光を照射してデータの記録再生を行うデータ記録部を有する光ヘッドと、
前記ジェットヘッドと前記光ヘッドとを前記検査ディスクに対して半径方向へ相対的に移動させるスライド機構と、
各部の制御を行う制御手段と、
を備え、
前記複数のノズルの前記検査ディスクの半径方向の位置が前記光ヘッドの前記対物レンズの光軸位置と重なるように配置され、
前記制御手段は、
試料の分析処理の開始の指示を受けたら、
前記記録領域の格納データを読み出して前記マイクロウェルの未使用領域を確認するステップと、
前記前記未使用領域のマイクロウェルに前記ジェットヘッドから液剤を投入させるステップと、
前記液剤が投入されたマイクロウェルの蛍光検出を行うステップと、
前記記録領域に前記蛍光検出に関するデータと使用したマイクロウェルの範囲を示すデータとを記録するステップと、
を順次行うとともに、
前記液剤を投入させるステップにおいて、
前記溝にレーザ光の焦点が合うように前記光ヘッドの半径方向の位置を調整することで、前記ジェットヘッドの位置を前記マイクロウェルの形成された半径位置に移動させ、
前記ロータリーエンコーダの出力に基づき前記検査ディスクの回転角度を検出しながら前記複数のノズルからタイミングをずらして微細液滴をそれぞれ噴射させることで、1個のマイクロウェルに複数種類の液剤を投入するように構成されていることを特徴とする分析装置。
【請求項1】
試料を反応させるための複数のマイクロウェルとデータ記録が可能な記録領域とが形成された円板形状の検査ディスクを用いて、試料の分析と分析データの記録とを行う分析装置であって、
前記検査ディスクを回転駆動するスピンドル機構と、
このスピンドル機構により回転される前記検査ディスクの回転角度を検出するロータリーエンコーダと、
複数の液剤を微細液滴にしてそれぞれ噴射する複数のノズルを有し、これら複数のノズルが前記検査ディスクの回転方向に並んで配置されたジェットヘッドと、
前記検査ディスクに対して光の照射と集光とを行う対物レンズを有し、前記検査ディスクへ励起光を照射してそこから発せられる蛍光量を検出する蛍光検出部、および、前記検査ディスクへレーザ光を照射してデータの記録再生を行うデータ記録部を有する光ヘッドと、
前記ジェットヘッドと前記光ヘッドとを前記検査ディスクに対して半径方向へ相対的に移動させるスライド機構と、
各部の制御を行う制御手段と、
を備え、
前記複数のノズルの前記検査ディスクの半径方向の位置が前記光ヘッドの前記対物レンズの光軸位置と重なるように配置され、
前記制御手段は、
前記光ヘッドによるレーザ光の照射と反射光の検出によって前記ジェットヘッドを前記マイクロウェルの形成された半径位置へ移動させ、
前記ロータリーエンコーダの出力に基づき前記検査ディスクの回転角度を検出しながら前記複数のノズルからタイミングをずらして微細液滴をそれぞれ噴射させることで、1個のマイクロウェルに複数種類の液剤を投入するように構成されていることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記ジェットヘッドは、前記液剤を20ピコリットル以下の微細液滴にして噴射する構成であることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記検査ディスクは、
中央に同心円の貫通孔を有し、
中央側から一定の半径範囲に、基板表面が凹状に形成された複数のマイクロウェルが渦巻き状に列を成して形成されるとともに、基板表面が凹状にされた溝が前記マイクロウェルの列に沿って隣接するマイクロウェルをつなぐように形成され、
前記マイクロウェルの形成領域より外周側に、レーザ光によりデータマークが形成可能な記録層を有するデータ記録領域が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記溝にレーザ光の焦点が合うように前記光ヘッドの半径方向の位置を調整することで、前記ジェットヘッドの位置を前記マイクロウェルの形成された半径位置に合わせることを特徴とする請求項3記載の分析装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
試料の分析処理の開始の指示を受けたら、
前記記録領域の格納データを読み出して前記マイクロウェルの未使用領域を確認するステップと、
前記前記未使用領域のマイクロウェルに前記ジェットヘッドから液剤を投入させるステップと、
前記液剤が投入されたマイクロウェルの蛍光検出を行うステップと、
前記記録領域に前記蛍光検出に関するデータと使用したマイクロウェルの範囲を示すデータとを記録するステップと、
を順次行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
円板形状で、中央側から一定の半径範囲に、基板表面が凹状に形成された複数のマイクロウェルが渦巻き状に列を成して形成されるとともに、基板表面が凹状にされた溝が前記マイクロウェルの列に沿って隣接するマイクロウェルをつなぐように形成され、前記マイクロウェルの形成領域より外周側に、レーザ光によりデータマークが形成可能な記録層を有するデータ記録領域が形成されている検査ディスクを用いて、試料の分析と分析データの記録とを行う分析装置であって、
前記検査ディスクを回転駆動するスピンドル機構と、
このスピンドル機構により回転される前記検査ディスクの回転角度を検出するロータリーエンコーダと、
複数の液剤を20ピコリットル以下の微細液滴にしてそれぞれ噴射する複数のノズルを有し、これら複数のノズルが前記検査ディスクの回転方向に並んで配置されたジェットヘッドと、
前記検査ディスクに対して光の照射と集光とを行う対物レンズを有し、前記検査ディスクへ励起光を照射してそこから発せられる蛍光量を検出する蛍光検出部、および、前記検査ディスクへレーザ光を照射してデータの記録再生を行うデータ記録部を有する光ヘッドと、
前記ジェットヘッドと前記光ヘッドとを前記検査ディスクに対して半径方向へ相対的に移動させるスライド機構と、
各部の制御を行う制御手段と、
を備え、
前記複数のノズルの前記検査ディスクの半径方向の位置が前記光ヘッドの前記対物レンズの光軸位置と重なるように配置され、
前記制御手段は、
試料の分析処理の開始の指示を受けたら、
前記記録領域の格納データを読み出して前記マイクロウェルの未使用領域を確認するステップと、
前記前記未使用領域のマイクロウェルに前記ジェットヘッドから液剤を投入させるステップと、
前記液剤が投入されたマイクロウェルの蛍光検出を行うステップと、
前記記録領域に前記蛍光検出に関するデータと使用したマイクロウェルの範囲を示すデータとを記録するステップと、
を順次行うとともに、
前記液剤を投入させるステップにおいて、
前記溝にレーザ光の焦点が合うように前記光ヘッドの半径方向の位置を調整することで、前記ジェットヘッドの位置を前記マイクロウェルの形成された半径位置に移動させ、
前記ロータリーエンコーダの出力に基づき前記検査ディスクの回転角度を検出しながら前記複数のノズルからタイミングをずらして微細液滴をそれぞれ噴射させることで、1個のマイクロウェルに複数種類の液剤を投入するように構成されていることを特徴とする分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−63310(P2009−63310A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228965(P2007−228965)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
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