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分析装置
説明

分析装置

【課題】測定スループットを低減することなく、また、多成分の標準化合物を添加することなく、正確な定量を行う方法、手段を提供する。
【解決手段】測定試料に特定の化合物を添加した混合物をイオン化し、生成したイオンを質量分析する手段を有し、上記測定試料中に含まれる測定対象化合物の濃度を定量する分析装置において、測定対象化合物および添加化合物、各々に対し、あるマトリックス成分の濃度に対する信号強度依存性を格納するデータベースを有し、質量分析手段により得られた測定対象化合物由来の信号と添加化合物由来の信号から、データベースを用いて測定対象化合物の濃度を補正する。
【効果】 従来技術に比べ、低コストでスループットの高い質量分析を用いた多成分分析装置が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析を用いた分析装置およびそれを用いた方法に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析計での定量測定は一般的に行われているが、定量の構成方法として非特許文献1に記載される方法が最も良く知られている。ここでは、予め装置に既知濃度の標準試料(測定対象化合物)を導入し、濃度−シグナル強度の関係(検量線)を求める。その後、測定対象サンプルを導入して濃度を決定する。ただし、質量分析計に固有の問題として、イオン化の際、存在する夾雑成分の影響(マトリックス効果)やその日の装置状況により、試料濃度に対する信号量(感度)が大幅に変化し、定量精度に深刻な影響を与える課題がある。
【0003】
この問題を解決するために、下記の定量方式が用いられている。
【0004】
特許文献1に、内部標準として、他の類似化合物を添加する方法が記載されている。添加する化合物としては、測定対象と類似の化学的特定をもち、尚且つ生成するイオンのm/zが測定対象と異なるものが良いとされている。理想的な、添加物質としては、測定対象の化合物の一部元素(炭素や水素)を同位体置換したものが用いられる。この場合には添加化合物の感度変動を測定対象化合物の感度変動と同一と見なすことにより、マトリックス効果や装置感度の変化を補正することが可能である。
【0005】
非特許文献2に、既知濃度の測定対象化合物そのものを測定試料に添加したものと、添加しないものを2回測定する方法が記載されている(標準添加法)。この方法では、測定対象標準添加したサンプルの信号量と、添加したサンプルの信号量の差分から測定対象化合物の感度を見積もることができるため、マトリックス効果や装置感度の変化を補正することが可能である。
【0006】
非特許文献3に、マトリックス効果や装置感度の補正の必要性の有無を判断するバリデーション方法について記載されている。特許文献1、非特許文献2に記載された方式は、マトリックス効果や装置状況による感度変化を補正する有効な手法であるが、安定同位体を必要とすることや、既知量の測定対象化合物を添加する複雑な測定手段を必要とすることから、トータルでの測定コストの増大を招く。このため、質量分析計に導入する前に、固相抽出や液体クロマトグラフなどの前処理手段により、マトリックス成分と測定対象化合物とを分離して質量分析計に導入する方法が一般的に用いられている。ただし、この分離が十分で感度が検量線作成時と同等であることを保障することを目的に、前処理された成分に対し、既知量の類似化合物を導入して感度をモニタする。添加化合物の感度がマトリックス成分に影響を受ける場合には、前処理工程を繰り返し改良し、最終的に影響が無いような前処理測定方式を開発することができる。この方法では、予め作成された検量線を定量に用いるため、測定成分ごとに標準化合物を添加する必要がなくなる。
【0007】
【特許文献1】米国特許6580067
【非特許文献1】Xu X他、Rapid Communications in Mass Spectrometry, 17,832, 2003.
【非特許文献2】Ito S他、J. Chromatography A 943, 39, 2002.
【非特許文献3】Bongfiglio R他、Rapid Communications in Mass Spectrometry, 13(12), 1175, 1999.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
質量分析において近年、多成分同時測定の重要性が増している。特許文献1、非特許文献2においては、多成分の定量を行う際には、その数とほぼ同数の標準物質を用意する必要がある。特に、特許文献1においては、測定対象化合物の安定同位体が必要となるが、それらは通常入手が困難であり、入手可能な場合でも高価であるなどの問題がある。また、測定対象物質が化学的に不安定な場合には、その安定同位体も不安定であり、保管が難しいなどの課題がある。また、非特許文献2では元のサンプルを分画したり、標準添加したサンプルを測定したりする測定作業が追加されるため測定作業が複雑化し、測定コストが増大する課題がある。
【0009】
また、非特許文献3などを用いて、前処理方式により、マトリックス成分の影響を低減しようとすると、一般的に前処理の複雑化や、長時間化を招くため、測定スループットが低下する課題がある。
本発明の課題は、測定スループットを低減することなく、また、多成分の標準化合物を添加することなしに、多成分測定を可能とする質量分析計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の分析装置は、測定試料に特定化合物を添加した混合物をイオン化するイオン化手段と、生成したイオンを質量分析する手段と、測定試料中に含まれる測定対象化合物の濃度を定量するデータ処理部とを有し、データ処理部は、上記測定対象化合物および上記添加化合物、各々に対し、あるマトリックス成分の濃度に対する信号強度依存性を格納したデータベースを有し、上記質量分析手段により得られた測定対象化合物由来の信号と上記添加化合物由来の信号から、上記データベースを用いて測定対象化合物の濃度を算出することを特徴とする。また、測定試料を導入する手段と添加化合物を導入する手段と、導入された測定試料を分離する手段を備え、混合物をイオン化手段へ導入することを特徴とする。
【0011】
また、前記測定試料にイオン化を補助する特定化学物質を添加した混合物をサンプルプレートにスポットし、スポットしたサンプルをイオン化手段によりイオン化することを特徴とする。
【0012】
また、本開示の測定試料中に含まれる測定対象化合物の濃度を定量する分析方法では、測定試料に特定化合物を添加した混合物をイオン化部でイオン化し、生成した前記イオンを質量分析部で測定し、データ処理部において、前記測定対象化合物及び前記添加化合物の各々に対し、あるマトリックス成分の濃度に対する信号強度依存性を格納したデータベースを用い、前記質量分析部により測定された前記測定対象化合物由来の信号と前記添加化合物由来の信号とから、前記データベースを用いて前記測定対象化合物の濃度を算出することを特徴とする。そして、タンデム質量分析を行う場合には、データ処理部は、混合物から生成したイオンのm/z、前記イオンを分解後のイオンのm/z、及びそれらのイオン強度の情報を用いる。
【0013】
また、本質量分析計の感度変動の校正方法では、既知濃度の化合物をイオン化部へ導入し、イオン化された化合物由来のイオン強度を質量分析部で測定し、データ処理部において、前記化合物についてマトリックス成分の濃度に対する信号強度依存性を格納したデータベースを用い、前記マトリックス成分の濃度が0の時の前記化合物の感度との比較を行うことを特徴とする。ここで、データ処理部は、前記比較の結果に基づき、前記質量分析部での測定結果を用いて前記データベースの校正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測定スループットを低減することなく、また、多成分の標準化合物を添加することなしに、多成分測定を可能とする質量分析計が実現する。
【実施例1】
【0015】
本発明における溶液試料の多成分分析の実施例ついて以下に説明する。図1は、本方式を実施した計測装置の構成図である。液体クロマト用ポンプなどの送液手段1により測定対象サンプルは分離手段2へと導入される。順相カラム、逆相カラム、イオン交換カラム、サイズ排除カラムなどからなる分離手段2で時間的に分離されて後段に溶出される。この分離後の溶液に対し、送液手段3により、1〜数種類の既知濃度の化合物を含んだ溶液が添加される。添加する化合物としては、予めマトリックス影響による感度変化をデータベース化した化合物が用いられる。分離溶出液と添加化合物溶液との混合液は質量分析計のイオン化部へ導入される。エレクトロスプレーイオン源、大気圧化学イオン源、大気圧光イオン源、大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン源、マトリックス支援レーザー脱離イオン源、化学イオン源、電子衝撃イオン源などからなるイオン化部では、それぞれ異なるイオン化方式により、測定対象化合物および添加した化合物に対してイオン化が行われる。それぞれのイオン化効率に関して、マトリックスの影響は異なるため、予め使用するイオン化方式ごとにマトリックス濃度に対する感度影響を調べたデータベース11を測定対象化合物および添加化合物のすべてに対して作成しておく。質量分析部5ではイオン化部で生成したイオンに対し、各々のm/zとイオン強度を測定し、データ処理部10へと送信する。なお、質量分析部11では化合物から生成したイオンのm/zだけでなく、それらを分解した後に生成するイオンのm/zの情報を用いるタンデム質量分析とよばれる方法も用いられる。この場合には、それらの分解前後のm/zの組み合わせと分解後のイオンのイオン強度を測定し、データ処理部10へ送信される。
【0016】
データ処理部には、予め測定対象化合物および添加化合物から生成するイオンのm/z(もしくは分解後に生成するイオンのm/z)、および、それらの既知濃度を、イオン化部へ導入した場合の信号強度(すなわち感度)、および感度のマトリックス濃度依存性をデータベースとして記録しておく。データ処理部ではm/z(もしくはm/zの組み合わせ)により、成分の種類が同定できる。
【0017】
これらのデータベースに格納された情報から、定量を行う方法について図2を用いて説明する。マトリックス濃度r(血漿抽出液を希釈する際の抽出液の混在比)を変数とした測定対象化合物および標準添加化合物の感度関数SO(r)、SIS(r)を予めデータベース11に格納しておく。質量分析部5から送信される測定対象化合物および標準添加化合物の信号量をIO、IIS、測定対象サンプルに含まれるマトリックス濃度(未知)をX、標準添加化合物の濃度をCIS、得られる測定対象化合物の濃度をCOとすると、添加化合物の感度SIS(X)は、(数1)で表される。
(数1)

(数1)で求められた結果とデータベースに予め格納されている関数SIS(r)から、マトリックス濃度Xが算出できる。次にマトリックス濃度Xと予めデータベースに格納された関数SO(r)から、測定対象化合物の感度SO(X)が求まる。SO(X)と質量分析部6から送られる測定対象化合物由来の信号量IOから測定対象化合物の濃度をCOは(数2)で求められる。
(数2)

【0018】
以上、本発明によりマトリックス効果を校正するシーケンスについて説明した。
次に、マトリックス濃度rを変数とした測定対象化合物および標準添加化合物の感度関数SO(r)、SIS(r)の具体的な作成方法について説明する。図3は、マトリックス濃度を変化させたときの、化合物A〜Eの感度を示したものである。イオン化法4はエレクトロスプレーイオン化の正イオン化モード、質量分析5には飛行時間型の質量分析計を用いた。縦軸には化合物A、B、C、DおよびEに由来した分子イオン強度を濃度で除算したもの(感度)、横軸のマトリックス濃度を示している。図中にはプロットが数点しか示されていないが、このプロット点を細かく取ることによってSO(r)、SIS(r)をより精度良く取得することが可能である。しかし、多くの点をデータ取得する手間を省くために、これらの実験データを(数3)で近似することも可能である。
(数3)

【0019】
A、Bはフィッテング定数。図3には、(数3)で近似プロットした結果も図示している。
【0020】
測定対象化合物および標準添加化合物の感度関数SO(r)、SIS(r)の作成は定量測定の開始前に行う必要がある。同様の目的に複数の装置を用いる場合には、上記の作業を装置ごとに行っても良いし、特定の装置で取得したデータベースをすべての装置に共有化しても良い。
【0021】
この他にも、実際に測定する測定サンプルにより、典型的なマトリックス成分(尿や細胞)およびそれらの抽出液を選んで、マトリックス濃度と定義することにより、より精度を高めることができる。一方、NH4ClやNaClなどの塩を入手容易な化合物を選んでも良い、この場合には精度が低下する問題が生じる一方で、データベースを作成するためのマトリックスが簡便かつ再現性良く用意できるというメリットもある。
【0022】
図3のデータベースを用いて、実際に測定を行った結果を以下に示す。化合物Cを添加化合物として送液手段3により送液し、測定サンプル中の化合物A、B、D、Eを校正した。血液抽出液のマトリックス(濃度不明)を混入して、A: 125 ppb、B: 83 ppb、D: 416 ppb、E: 416 ppbとなるような溶液を予め作成した。これに、標準添加化合物Cとして250 ppbを加えた。本方式の効果を説明するため2種類の従来の定量法を比較対象とした。従来例1は非特許文献1に記載されているもので、予め検量線を作成して、そこで得られた感度から定量を行う方法である。従来法1ではマトリックス効果がないとして定量を行うため、定量値に大幅な誤差が観測された。次に、従来例2として特許文献1に記載された方式を用いた。標準添加物質である化合物Cの感度変化と同じの感度変化を他の化合物も受けたものと仮定し、化合物濃度の算出を行った。従来例2では化合物Cと感度関数のマトリックス濃度依存性が似ている化合物A、化合物Bに関しては良好な定量値が得られたが、マトリックス濃度依存性が異なる化合物D、化合物Eに関しては大幅な定量誤差が観測された。一方、本方式を用いた場合について説明する。まず、化合物C由来のイオン強度と添加濃度から、化合物Cの感度が算出できる。この感度と化合物Cのデータベース(図3を数3にて近似)から、マトリックス濃度(混在比率)は0.045と算出された。この結果と、化合物A、B、D、Eのデータベース中の感度関数から、図4に示す定量結果が得られた。本方式では、従来例1や従来例2と異なり、すべての化合物に対して測定精度20%以内で定量値が一致した。
【0023】
従来例(非特許文献1)では、測定対象化合物とほぼ同数の化合物を添加する必要があり、コストの増大を招いたが、本実施例では、測定対象化合物および添加化合物の感度のマトリックス濃度依存性を予め取得しデータベースに格納しておくことにより、原理的には1種類の標準添加化合物で、多成分の測定対象化合物の定量を可能とすることができる。一方、この添加化合物を複数用いることにより、測定精度を高めることも可能である。たとえば、マトリックス影響の高いものと低いものを各々添加化合物として1つずつ選択し、それらとマトリックス依存性の似たものをグループ分けして各々の特性の近い添加化合物でマトリックス濃度を校正することにより、測定精度を向上することは可能である。
【0024】
また、上記実施例では、液体クロマトグラフィーによる分離を行ったが、他の液体分離方式を用いても良いし、また、分離手段を用いなくとも本発明は全く同様に適用可能である。分離手段を省略することにより測定時間の短縮や簡便化による装置コストの低減が可能である。一方、分離手段を省略するとマトリックス効果の影響が大きくなるというデメリットもある。また、上記実施例では分離手段2の後に、添加化合物を含んだ溶液を混入していたが、分離手段の前に溶液を混入しても良い。この場合には、添加化合物のイオン強度から分離手段2の透過効率をモニタできるメリットがある。一方で、分離手段2に液体クロマトカラムを用いた場合、カラム劣化が早まるというデメリットもある。
【0025】
以上、マトリックス効果による感度変動の校正方法について説明したが、質量分析装置の感度変動要因には、マトリックス効果以外にも質量分析部5の透過率低下に起因するものも存在する。以下に、質量分析部に起因した校正方式を説明する。質量分析部の校正を行うときにも図1の装置で可能である。この場合には、測定試料の送液を止めて、マトリックス成分がイオン化部4へと送液されないようにする。このとき、既知濃度の添加化合物のみがイオン化部4へ導入される。イオン化部4でイオン化された添加化合物由来のイオン強度を質量分析部5でモニタし、データ処理部10へと送信される。データ処理部10にはマトリックス濃度が0のときの添加化合物の感度がデータベース11に保存してあるため、これと比較を行う。大きく異なる場合(2〜3倍以上)には、ユーザーにクリーニングやメンテナンスのアラームを出す。また、データベースと少しの変動(2〜3倍以内)であれば、予め蓄積されているデータベース上の感度を(数4)(数5)で補正する。
(数4)

【0026】
(数5)

【0027】
S'ISは、上記測定の実測信号量、S'IS(X)、S'O(X)は補正後の感度データベース。マトリックスによる感度変動と異なり、装置由来の感度変動は化合物の化学特性にほとんど依存しないため、以上の方法でかなり精度良く校正することが可能である。一方、装置による感度変動はm/zについて依存性を示すことがあるため、異なるm/zのイオンを生成する複数の化合物を添加化合物として選択することも有効である。
【実施例2】
【0028】
本発明におけるガス試料の多成分分析の実施例ついて以下に説明する。図5に装置構成を示す。送気ポンプなどの送気手段6により測定対象ガスは分離手段7へと導入される。分離手段7は、キャピラリーカラムなどからなる分離手段7で時間的に分離されて後段に溶出される。この分離後のガスに対し、送気手段8により、1〜数種類の化合物を含んだガスが添加される。添加化合物としては、予めマトリックス影響による感度変化をデータベースに格納した化合物が用いられる。分離ガスと添加化合物ガスとの混合ガスは質量分析計のイオン化部4へ導入される。大気圧化学イオン源、大気圧光イオン源、化学イオン源、電子衝撃イオン源などからなるイオン化部4では、それぞれ異なるイオン化方式により、測定対象化合物および添加した化合物に対してイオン化が行われる。それぞれのイオン化効率に関して、マトリックスの影響は異なるため、予め使用するイオン化方式ごとにマトリックス濃度に対する感度影響を調べたデータベース11を測定対象化合物および添加物質のすべてに対して作成しておく。以下の校正方法については実施例1と全く同様である。また、実施例1と同様に、上記実施例では、クロマトグラフィーによる分離を行ったが、分離手段を用いなくとも本発明は全く同様に適用可能である。分離手段を省略することにより測定時間の短縮や簡便化による装置コストの低減が可能である。一方、分離手段を省略するとマトリックスの影響が大きくなるというデメリットもある。また、上記実施例では分離手段7の後に、添加化合物を含んだガスを混入していたが、分離手段の前にガスを混入しても良い。この場合には、添加化合物のイオン強度から分離手段7の透過効率をモニタできるメリットがある。一方で、ガスクロマトカラムを用いた場合、カラムの劣化が早まるというデメリットもある。
【実施例3】
【0029】
本発明は、実施例1、2のようなオンライン計測装置のみでなく、オフライン測定装置にも適用可能である。図6に装置構成を示す。測定試料の送液、分離および添加溶液の混入方法については実施例1とほぼ同様である。実施例3のうちイオン化にマトリックス支援レーザーイオン化など、イオン化を補助する化学物質(CHCA(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)、シナピン酸(3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸)など)を必要とする場合には、その化学物質を予め添加溶液中に加えておき、それらを混合した試料をスポット手段13でサンプルプレート14にスポットする。スポットしたプレートを試料溶液が乾燥した後、イオン化部4へ導入する。イオン化部4では、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)、大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン源、マトリックス支援レーザー脱離イオン源、2次イオン衝撃イオン化、高速原子衝撃イオン化(FAB)などの様々なイオン化が行われる。それぞれのイオン化効率に関して、マトリックスが与える影響は異なるため、予め使用するイオン化方式ごとにマトリックス濃度に対する感度影響を調べたデータベース11を測定対象化合物および添加物質のすべてに対して作成しておく。以下の校正方法については実施例1と全く同様である。
【0030】
以上の実施例には、いろいろな校正方式の具体的なバリエーションを示したが、添加化合物をイオン化部に導入する手段を有し、測定対象化合物および添加化合物のマトリックス混合比に対する感度をデータベースとして予めデータベースに格納しておき、添加化合物由来のイオン強度からマトリックス混合比を算出し、算出した混合比から測定対象化合物の感度を算出して、その感度と測定対象化合物由来のイオン強度から、測定対象化合物を定量することについては共通であり、これにより、測定スループットを低減することなく、また、多成分の標準化合物を添加すること無しに、多成分測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本方式の実施例1。
【図2】実施例1の測定シーケンス。
【図3】本方式の効果の説明図。
【図4】本方式の効果の説明図。
【図5】本方式の実施例2。
【図6】本方式の実施例3。
【符号の説明】
【0032】
1…送液手段、2…分離手段、3…送液手段、4…イオン化部、5…質量分析部、6…送気手段、7…分離手段、8…送気手段、10…データ処理部、11…データベース部、12…スポッター、13…サンプルプレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定試料に特定化合物を添加した混合物をイオン化するイオン化手段と、
生成したイオンを質量分析する手段と、
上記測定試料中に含まれる測定対象化合物の濃度を定量するデータ処理部とを有する分析装置において、
前記データ処理部は、
上記測定対象化合物および上記添加化合物、各々に対し、あるマトリックス成分の濃度に対する信号強度依存性を格納したデータベースを有し、
上記質量分析手段により得られた測定対象化合物由来の信号と上記添加化合物由来の信号から、上記データベースを用いて測定対象化合物の濃度を算出することを特徴とした分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分析装置において、前記データベースは、イオン化方式ごとに前記信号強度依存性が格納されていることを特徴とする分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の分析装置において、前記測定試料を導入する手段と前記添加化合物を導入する手段と、導入された前記測定試料を分離する分離手段を備え、前記混合物を前記イオン化手段へ導入することを特徴とする分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の分析装置において、前記分離手段は、前記測定試料を導入する手段と前記添加化合物を導入する手段との間に設けられていることを特徴とする分析装置。
【請求項5】
請求項3に記載の分析装置において、前記添加化合物を導入する手段は、前記測定試料を導入する手段と前記分離手段との間に設けられていることを特徴とする分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の分析装置において、前記添加化合物は、前記データベースに格納されたマトリックス成分の濃度に対する信号強度依存性の異なる複数の化合物であることを特徴とする分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の分析装置において、該マトリックス成分が血液または血液から抽出された成分であることを特徴とする分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載の分析装置において、該マトリックス成分が塩であることを特徴とする分析装置。
【請求項9】
請求項1に記載の分析装置において、前記測定試料が液体であることを特徴とする分析装置。
【請求項10】
請求項1に記載の分析装置において、前記測定試料がガスであることを特徴とする分析装置。
【請求項11】
請求項1に記載の分析装置において、前記測定試料にイオン化を補助する特定化学物質を添加した混合物をサンプルプレートにスポットし、スポットしたサンプルをイオン化手段によりイオン化することを特徴とする分析装置。
【請求項12】
測定試料中に含まれる測定対象化合物の濃度を定量する分析方法であって、
測定試料に特定化合物を添加した混合物をイオン化部でイオン化し、
生成した前記イオンを質量分析部で測定し、
データ処理部において、前記測定対象化合物及び前記添加化合物の各々に対し、あるマトリックス成分の濃度に対する信号強度依存性を格納したデータベースを用い、前記質量分析部により測定された前記測定対象化合物由来の信号と前記添加化合物由来の信号とから、前記データベースを用いて前記測定対象化合物の濃度を算出することを特徴とする分析方法。
【請求項13】
請求項12に記載の分析方法であって、前記測定試料に対し、前記データベースに格納されたマトリックス影響の異なる複数の既知濃度の化合物を添加することを特徴とする質量分析方法。
【請求項14】
請求項12に記載の分析方法であって、前記質量分析部はタンデム質量分析を行い、前記データ処理部は、前記混合物から生成したイオンのm/z、前記イオンを分解後のイオンのm/z、及びそれらのイオン強度の情報を用いることを特徴とする質量分析方法。
【請求項15】
質量分析計の感度変動の校正方法であって、
既知濃度の化合物をイオン化部へ導入し、
イオン化された化合物由来のイオン強度を質量分析部で測定し、
データ処理部において、前記化合物についてマトリックス成分の濃度に対する信号強度依存性を格納したデータベースを用い、前記マトリックス成分の濃度が0の時の前記化合物の感度との比較を行うことを特徴とする較正方法。
【請求項16】
請求項15に記載の較正方法であって、前記データ処理部は、前記比較の結果に基づき、前記質量分析部での測定結果を用いて前記データベースの校正を行うことを特徴とする較正方法。
【請求項17】
請求項15に記載の較正方法であって、前記既知濃度の化合物は、m/zの異なる複数の化合物であることを特徴とする較正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−63389(P2009−63389A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230903(P2007−230903)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】