説明

分析装置

【課題】分析装置が設置された検査室等の空気の流動に影響されることなく、試薬庫内での結露の発生を好適に抑制することが可能な分析装置を提供する。
【解決手段】本発明の分析装置1は、筐体2Aと、筐体2A内に収容されるとともに、当該筐体2A内の空気を導入する空気導入口604を有している、試薬容器300を収容するための試薬庫20と、空気導入口604を介して試薬庫20内に導入された筐体2A内の空気を冷却する冷却器601および冷却部材21b1,21c1と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固分析装置や免疫分析装置等の試薬容器に収容された試薬を用いて検体を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体と試薬とを混和して調製された測定試料の測定結果を分析する分析装置が知られている。この分析装置において、試薬は、試薬容器に収納された状態で所定の試薬庫内に収容され、この試薬庫内において劣化を防止するために所定の温度に冷却されている。
例えば、下記特許文献1には、複数の試薬容器を載置する試薬収容部と、この試薬収容部に隣接し、冷却器からの冷気を導入する冷気導入室と、冷却器に冷気を戻す冷気排出室を備えた冷気循環部と、冷気導入室から試薬収容部に冷気を導入する冷気導入口と、試薬収容部から冷気排出室に冷気を排出する冷気排出口と、冷却排出室の冷却器近傍に、外気を冷気排出室に導入する外気導入口と、を備えた試薬保冷庫を具備する自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−84366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の自動分析装置では、試薬収容部内の気圧差を解消し、冷気を適切に循環させるために、外気導入口から試薬保冷庫内に外気を取り入れるように構成されている。しかし、自動分析装置が設置されている検査室は、例えばエアコン等の空調機が作動していたり扇風機が作動していたりして空気の流動が不安定な場合があり、そのために外気導入口から過剰に外気が流入してしまう恐れがある。外気導入口から温かい外気が過剰に流入すると、外気に含まれる水蒸気が試薬容器等に接触して大量の結露を生じ、試薬に悪影響を与える可能性が高くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、分析装置が設置された検査室等における外気の流動に影響されることなく、試薬庫内での結露の発生を好適に抑制することが可能な分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の分析装置は、第1空間を有する筐体と、前記第1空間内の空気を導入する空気導入口を有している、試薬容器を収容するための第2空間を有する試薬庫と、前記空気導入口を介して前記第1空間から前記第2空間内に導入された空気を冷却する冷却手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、試薬庫の第2空間内には空気導入口を介して筐体の第1空間内の空気が導入される。筐体の第1空間内の空気は、筐体外部と比較して空気の流動が安定しているため、検査室等における外気の流動の影響を受けにくく、試薬庫内に過剰に外気が導入されることによって大量の結露が発生するといった不都合が生じることを抑制することができる。
【0008】
(2)前記分析装置は、前記空気導入口を介して導入された空気を前記第2空間内で流動させる流動部を更に備えていることが好ましい。このように空気導入口から導入された空気を流動部により流動させることによって、試薬庫内の温度を適切に均一化することが可能となる。
【0009】
(3)なお、上記の場合、前記流動部は、前記空気導入口を介した前記第1空間内の空気の導入を促進させるように構成されていることが好ましい。このように空気導入口を介した筐体の第1空間内の空気の導入を促進することにより、試薬庫内の空気の流動が更に促進され、試薬庫内の温度を更に均一化することが可能となる。
【0010】
(4)前記試薬庫の内面は、熱伝導性を有する材質により形成されており、前記冷却手段は、前記試薬庫の内面を冷却するように構成されていることが好ましい。
このように構成することにより、例えば、試薬庫外で生成した冷気を試薬庫内に導入して試薬を冷却する場合に比べて、試薬庫内の空気の温度を、試薬の目標温度(保存温度)に近づけることができる。したがって、試薬庫内の空気の温度が過剰に低下して湿度が下がりすぎるのを抑制し、試薬の乾燥を防止することができる。
【0011】
(5)なお、上記の場合、前記冷却手段によって冷却される前記試薬庫の内面の温度と、この温度よりも高い前記試薬の目標温度との温度差を3℃以内に設定することが可能となる。
【0012】
(6)前記分析装置は、前記流動部によって流動される空気の結露を促進する結露促進部を更に備えていることが好ましい。このように、空気導入口から導入された空気を結露促進部において結露させることにより、当該空気の湿度を下げた状態で試薬庫内を流動させることができる。そのため、試薬庫内の結露の発生を更に抑制することができる。
【0013】
(7)前記筐体には、フィルタを備えた外気取入口が設けられていることが好ましい。これによって塵埃等が除去された清浄な空気を筐体内に空気を取り入れることができ、試薬庫内にも清浄な空気を導入することができる。また、筐体内の空気導入口近傍にフィルタを設けた場合、当該フィルタの清掃や交換を筐体を開放した状態で行う必要があり、作業が繁雑となるが、筐体の外気取入口にフィルタを設けることによって交換や清掃等の作業を容易に行うことが可能となる。
【0014】
(8)前記試薬庫には、前記試薬容器内の試薬を吸引するための試薬吸引口が形成されており、前記分析装置は、前記空気導入口と前記試薬吸引口との間の空気の流通を抑制する流通障害部材を更に備えていることが好ましい。このような構成によって、試薬吸引口から排出された試薬庫内の空気が直接的に空気導入口に引き込まれるのを防止することができる。これにより、試薬吸引口と空気導入口との間における、試薬庫内外の小さい範囲で空気が循環するのを防止することができ、試薬庫内の全体においてバランスよく空気を流動させ、試薬庫内の温度を均一化することができる。
【0015】
(9)前記試薬庫は、上面が開放されており、前記試薬容器を収容するための本体部と、前記空気導入口を有しており、前記本体の上面を覆う着脱可能な蓋部と、を備えていることが好ましい。この構成によると、蓋部を取り外すことによって、本体部の上面から試薬の交換を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分析装置が設置された検査室等における空気の流動に影響されることなく、試薬庫内での結露の発生を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る検体分析装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示される検体分析装置の平面図である。
【図3】図1に示される検体分析装置の測定機構部の平面図である。
【図4】測定機構部および試薬保存部の内部を示す斜視図である。
【図5】図4に示される測定機構部および試薬保存部の内部を示す平面図である。
【図6】図1に示される検体分析装置の制御装置を示すブロック図である。
【図7】第1試薬容器ラックの一例を示す斜視図である。
【図8】第2試薬容器ラックの一例を示す斜視図である。
【図9】図7に示される第1試薬容器ラックに試薬容器が保持された状態を示す斜視図である。
【図10】図8に示される第2試薬容器ラックに試薬容器が保持された状態を示す斜視図である。
【図11】図1に示される検体分析装置のブロック図である。
【図12】図1に示される検体分析装置の測定機構部の制御部のブロック図である。
【図13】図4に示される試薬保存部の空気流通部分を示す斜視図である。
【図14】図4に示される試薬保存部を模式的示す断面図である。
【図15】図1に示される検体分析装置を背面側から見た斜視図である。
【図16】図1に示される検体分析装置の底面図である。
【図17】図1に示される検体分析装置の筐体を示す概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る検体分析装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る検体分析装置1の全体構成を示す斜視図であり、図2は同平面図である。図3は図1に示される検体分析装置1の測定機構部の平面図、図4は測定機構部および試薬保存部の内部を示す斜視図であり、図5は図4に示される測定機構部および試薬保存部の内部を示す平面図である。また、図6は検体分析装置1の制御装置を示すブロック図である。
【0019】
[検体分析装置1の全体構成]
検体分析装置1は、血液の凝固・線溶機能に関連する特定の物質の量や活性の度合いを光学的に測定して分析するための装置であり、検体としては血漿を用いる。本実施の形態に係る検体分析装置1では、凝固時間法、合成基質法および免疫比濁法を用いて検体の光学的な測定を行っている。本実施の形態で用いる凝固時間法は、検体が凝固する過程を透過光の変化として検出する測定方法である。そして、測定項目としては、PT(プロトロンビン時間)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)やFbg(フィブリノーゲン量)等がある。また、合成基質法の測定項目としてはATIII等、免疫比濁法の測定項目としてはDダイマー、FDP等がある。
【0020】
検体分析装置1は、図1および図2に示されるように、測定機構部2と、測定機構部2の前面側に配置された搬送機構部3と、測定機構部2に電気的に接続された制御装置4とにより構成されている。また、測定機構部2は、筐体2Aやカバー体2Bによって覆われている。筐体2Aは、図17の斜線部の示すとおり、測定機構部2の後部側および底部側を覆っており、内部に空間を有している。カバー体2Bは、筐体2Aの前上部左側に取り付けられ、測定機構部2の前部左側を開閉可能に覆っている。また、測定機構部2には、測定を行う際の検体の容器となるキュベット200(図4参照)を投入するキュベット投入部5が設けられている。キュベット投入部5には、開閉可能な蓋5aと、キュベット投入部5の中を視認可能な窓5bとが設けられている。また、キュベット投入部5の前面側には、緊急停止ボタン1aと、測定開始ボタン1bとが設けられている。蓋5a(図1参照)は、キュベット供給機構部160の第1ホッパ161a(図4参照)にキュベット200を投入するために設けられている。また、ユーザは、窓5bから第1ホッパ161a(図4参照)に貯留されているキュベット200の残量を視認することが可能である。緊急停止ボタン1a(図1参照)は、緊急の場合に測定を停止させる機能を有する。測定開始ボタン1b(図1参照)は、押すことにより、測定が開始されるように構成されている。これにより、ユーザは、キュベット200を投入した後、直ぐに測定を開始することが可能である。なお、制御装置4の操作によっても測定の開始および停止が可能である。
【0021】
〔制御装置4の構成〕
制御装置4は、パーソナルコンピュータ401(PC)等からなり、図1および図2に示されるように、制御部4aと、表示部4bと、キーボード4cとを含んでいる。制御部4aは、後述する測定機構部2の制御部501に当該測定機構部2の動作開始信号を送信するとともに、測定機構部2で得られた検体の光学的な情報を分析するための機能を有している。この制御部4aは、CPU、ROM、RAM等からなる。また、表示部4bは、検体中に存在する干渉物質(ヘモグロビン、乳び(脂質)およびビリルビン)に関する情報と、制御部4aで得られた分析結果とを表示するために設けられている。
【0022】
制御部4aは、図6に示されるように、CPU401aと、ROM401bと、RAM401cと、ハードディスク401dと、読出装置401eと、入出力インタフェース401fと、通信インタフェース401gと、画像出力インタフェース401hとから主として構成されている。CPU401a、ROM401b、RAM401c、ハードディスク401d、読出装置401e、入出力インタフェース401f、通信インタフェース401g、および画像出力インタフェース401hは、バス401iによって接続されている。
【0023】
〔搬送機構部3の構成〕
搬送機構部3は、図1〜3に示されるように、測定機構部2に検体を供給するために、検体を収容した複数(本実施の形態では、10本)の試験管250が載置されたラック251を測定機構部2の吸引位置2a(図3参照)に搬送する機能を有している。また、搬送機構部3は、未処理の検体を収容した試験管250が収納されたラック251をセットするためのラックセット領域3aと、処理済みの検体を収容した試験管250が収納されたラック251を収容するためのラック収容領域3bとを有している。
【0024】
〔測定機構部2の構成〕
測定機構部2は、搬送機構部3から供給された検体に対して光学的な測定を行うことにより、供給された検体に関する光学的な情報を取得することが可能なように構成されている。本実施の形態では、搬送機構部3のラック251に載置された試験管250から測定機構部2のキュベット200内に分注された検体に対して光学的な測定が行われる。
【0025】
測定機構部2は、図11に示されるように、検体分注駆動部70aと、試薬分注駆動部120aと、第1駆動部502と、第2駆動部503と、第1ロック検知部504と、第2ロック検知部505と、試薬バーコードリーダ350と、検体バーコードリーダ3cと、第1光学的情報取得部80と、第2光学的情報取得部130と、搬送機構部3等に電気的に接続される制御部501とを有している。
【0026】
検体分注駆動部70aは、検体分注アーム70(図3および図5参照)を回転上下させる機能を有するステッピングモータ部や、このステッピングモータ部を駆動させるための駆動回路、検体を吸引および分注するためのポンプ等(いずれも図示せず)を備えている。
【0027】
また、試薬分注駆動部120aは、試薬分注アーム120(図3および図5参照)を回転上下させる機能を有するステッピングモータ部や、このステッピングモータ部を駆動させるための駆動回路、試薬を吸引および分注するためのポンプ等(いずれも図示せず)を備えている。
【0028】
第1駆動部502は、後述する第1試薬テーブル11(図5、図14参照)を回転させる機能を有する第1ステッピングモータ(図示せず)と、当該第1ステッピングモータを駆動させるための駆動回路(図示せず)とを備えている。そして、第1試薬テーブル11は、制御部501から第1駆動部502に供給された駆動パルス信号のパルス数に応じた分だけ回転し、停止する。
【0029】
同様に、第2駆動部503は、後述する第2試薬テーブル12(図5、図14参照)を回転させる機能を有する第2ステッピングモータ(図示せず)と、当該第2ステッピングモータを駆動させるための駆動回路(図示せず)とを備えている。そして、第2試薬テーブル12は、制御部501から第2駆動部503に供給された駆動パルス信号のパルス数に応じた分だけ回転し、停止する。
【0030】
なお、制御部501は、供給した駆動パルス信号のパルス数をカウントすることにより、第1試薬テーブル11および第2試薬テーブル12の原点位置からの各試薬テーブル11、12の回転移動量を決定し、各試薬テーブル11、12の回転移動を制御することが可能である。
【0031】
第1ロック検知部504は、後述する第1蓋30(図3参照)のロック状態を検知するとともに、ロックされたときにロック信号を制御部501に送信する機能を有している。
同様に、第2ロック検知部505は、後述する第2蓋40(図3参照)のロック状態を検知するとともに、ロックされたときにロック信号を制御部501に送信する機能を有している。
【0032】
試薬バーコードリーダ350は、第1試薬テーブル11および第2試薬テーブル12上の各バーコードを読み取る機能を有しており、後述する試薬保存部6における試薬庫20の周壁21cの近傍に、当該試薬庫20と所定の距離を隔てて設けられている(図3〜5参照)。この試薬バーコードリーダ350は、制御部501との間でデータの送受信を行うことが可能であるとともに、試薬バーコードリーダ350をON/OFF制御するための駆動回路(図示せず)を有している。なお、試薬バーコードリーダ350の位置は常に固定されている。
【0033】
検体バーコードリーダ3cは、搬送機構部3によって搬送されたラック251に載置された検体を収容した試験管250に貼付されたバーコードを読み取る機能を有しており、前述した測定機構部2の吸引位置2aの近傍に、当該搬送機構部3によって搬送されるラック251に対向するように設けられている(図3〜5参照)。この検体バーコードリーダ3cは、制御部501との間でデータの送受信を行うことが可能であるとともに、検体バーコードリーダ3cをON/OFF制御するための駆動回路(図示せず)を有している。なお、検体バーコードリーダ3cの位置は常に固定されている。
【0034】
第1光学情報取得部80と第2光学情報取得部130(図3および図5参照)は、検体の光学的情報を取得するための機能を有しており、制御部501との間でデータの送受信を行うことが可能なように構成されている。
【0035】
制御部501は、図12に示されるように、CPU501aとROM501bと、RAM501cと、通信インタフェース501dとから主として構成されている。
CPU501aは、ROM501bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM501cに読み出されたコンピュータプログラムを実行することが可能である。ROM501bは、CPU501aに実行させるためのコンピュータプログラムおよび当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータ等を記憶している。RAM501cは、ROM501bに記憶しているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU501aの作業領域として利用される。
【0036】
通信インタフェース501dは、制御装置4に接続されており、検体の光学的な情報を制御装置4に送信するとともに、制御装置4の制御部4aからの信号を受信するための機能を果たす。また、通信インタフェース501dは、搬送機構部3および測定機構部2の各部を駆動するためのCPU501aからの指令を送信するための機能を有する。
【0037】
また、測定機構部2は、図3に示されるように、試薬を保存するための試薬保存部6と、試薬を交換または追加するための試薬交換部7とを含んでいる。
試薬保存部6は、キュベット200内の検体に添加される試薬を収容した試薬容器300(図2参照)を、低温(約10℃)で冷蔵保存するとともに、回転方向に搬送するために設けられている。試薬を低温で保存することにより、試薬が変質することが抑制される。また、試薬保存部6は、図3〜5に示されるように、試薬の保持および回転搬送を行う試薬搬送部10(図4および図5参照)と、この試薬搬送部10の周囲を覆うように設けられた試薬庫20(図3参照)とを含んでいる。また、試薬が保持される試薬搬送部10は、試薬庫20内に形成される冷蔵領域に配置されている。なお、試薬保存部6における試薬庫20のより具体的な構成と試薬の冷却機能については後で詳しく説明する。
【0038】
この試薬搬送部10は、図5に示されるように、円形状の第1試薬テーブル11と、この第1試薬テーブル11の外側に、当該第1試薬テーブル11に対して同心円状に配置された円環形状の第2試薬テーブル12とを含んでいる。また、第1試薬テーブル11および第2試薬テーブル12は、それぞれ、試薬容器300を保持する第1試薬容器ラック310および第2試薬容器ラック320が着脱可能に配置されるように構成されている。
【0039】
第1試薬テーブル11および第2試薬テーブル12は、それぞれ、時計回り方向および反時計回り方向の両方に回転可能で、かつ、各々のテーブルが互いに独立して回転可能なように構成されている。これにより、試薬が収容された試薬容器300を保持する第1試薬容器ラック310および第2試薬容器ラック320は、それぞれ、第1試薬テーブル11および第2試薬テーブル12によって回転方向に搬送される。また、試薬容器300を回転方向に搬送することによって、後述する試薬分注アーム120が試薬を分注する際に、分注対象の試薬を試薬分注アーム120の近傍に配置させることが可能である。
【0040】
図4に示されるように、試薬庫20の側面の試薬バーコードリーダ350と対向する位置には、開閉可能なシャッタ21aが設けられている。このシャッタ21aは、試薬バーコードリーダ350によって試薬容器300、第1試薬容器ラック310および第2試薬容器ラック320のバーコードを読み取る時にのみ開くように構成されている。これにより、試薬保存部6(冷蔵領域)内の冷気が外部に逃げることが抑制される。
【0041】
試薬庫20は、有底円筒形に形成された庫本体部21(図4,図5参照)と、この庫本体部21の上部開口を塞ぐ蓋22、23、30,40(図3参照)とを備えており、庫本体部21の内部と蓋22、23、30,40によって形成される空間を有しており、試薬容器300を収容可能となっている。蓋22、23、30,40は、庫本体部21の上壁として機能するとともに庫本体部21の略後側半分を塞ぐように庫本体部21に固定されている固定蓋22と、庫本体部21の略前側右半分を覆う取り外し可能な第1,第2蓋30,40と、庫本体部21の略前側左半分を覆う取り外し可能な第3蓋23とにより構成されている。固定蓋22は筐体2A内に配置され、第3蓋23は、筐体2Aの前部側に配置されたカバー体2B内に配置されている。第1,第2蓋30,40は、カバー体2Bの右側において露出され、後述する試薬交換部7を構成している。固定蓋22と第1〜第3蓋30,40,23とは、筐体2Aの前壁部2A1によって概ね前後に区画されている。
【0042】
図3に示されるように、試薬庫20の固定蓋22には、3つの穴部22a〜22cが形成されている。また、試薬庫20の第3蓋23には、3つの穴部23a〜23cが形成されている。この固定蓋22の3つの穴部22a〜22cを介して、試薬分注アーム120により試薬保存部6に保存されている試薬の吸引が行われる。また、第3蓋23の3つの穴部23a〜23cを介して、検体分注アーム70により試薬保存部6に保存されている試薬の吸引が行われる。検体分注アーム70は、試験管250内の検体をキュベット200に分注するだけでなく、そのピペット部の洗浄やキュベット200に対する試薬の分注を行うために試薬庫20にもアクセスするように構成されている。
【0043】
なお、穴部22a、23aは、第1試薬容器ラック310に保持されている試薬容器300の上方に位置する。この穴部22a,23aを介して、第1試薬容器ラック310に保持されている試薬容器300から試薬の吸引が行われる。また、穴部22b,22cおよび23b,23cは、それぞれ、第2試薬容器ラック320の後列および前列に保持されている試薬容器300の上方に位置する。この穴部22b,22cおよび23b,23cを介して、第2試薬容器ラック320の後列および前列に保持されている試薬容器300から試薬の吸引が行われる。
【0044】
また、第3蓋23が第1蓋30および第2蓋40とともに取り外されることによって、試薬庫20の前部側が略半円形状に開口される。この開口を介して、検体分析装置1において測定を開始する際に、試薬庫20内に第1試薬容器ラック310および第2試薬容器ラック320が配置される。
【0045】
また、図5に示されるように、第1試薬容器ラック310は、第1試薬テーブル11に5つ配置可能である。この5つの第1試薬容器ラック310に、試薬容器300が円環状に配置される。第1試薬容器ラック310は、図7および図9に示されるように、試薬容器300を保持するための2つの保持部311および312と、保持部311および312の前面側にそれぞれ設けられた切欠部311aおよび312aと、上方に突出するように設けられた1つの把持部313とを含んでいる。また、図7に示されるように、保持部311および312は、平面的に見て円形状に形成されており、円筒形状の試薬容器300が差し込まれることにより試薬容器300を保持可能である。また、アダプタ(図示せず)を保持部311または312に取り付けることにより、前記保持部311または312の内径よりも小さい外径を有する試薬容器300を保持部311または312に保持させることが可能である。また、第1試薬容器ラック310は、保持部311および312の内径の組み合わせが異なるように形成された2種類のラックを含んでいる。ユーザは、適宜ラックの種類を変えることによって、様々な大きさの試薬容器300に対応可能である。また、保持部311および312の外側面の前面側には、それぞれ、バーコード311bおよび312bが設けられており、保持部311および312の内側面には、それぞれ、バーコード311cおよび312cが設けられている。
【0046】
2つの保持部311および312は、検体から測定用試料を調製する際に添加される種々の試薬を収容した複数の試薬容器300を1つずつ保持することが可能である。すなわち、第1試薬テーブル11には、最大10個(2×5=10)の試薬容器300が配置可能である。また、切欠部311aおよび312aは、それぞれ、バーコード311cおよび312cを試薬バーコードリーダ350(図5参照)によって読み取るために設けられている。また、把持部313は、第1試薬容器ラック310を試薬保存部6から取り出すときに把持される。
【0047】
バーコード311bおよび312bには、それぞれ、保持部311および312の位置を識別するための位置情報(ホルダ番号)が含まれている。また、バーコード311cおよび312cには、保持部311および312に保持される試薬容器300は存在しないことを示す情報(試薬容器無し情報)が含まれている。また、試薬容器300のバーコード300aには、試薬容器300に収容されている試薬の詳細情報(試薬名、試薬容器の種類、ロット番号、試薬の有効期限等の情報)を特定するための情報が含まれている。
【0048】
また、第2試薬容器ラック320は、図5に示されるように、第2試薬テーブル12に5つ配置可能である。この5つの試薬容器ラック320に、試薬容器300が円環状に配置される。また、互いに隣接する第2試薬容器ラック320の5箇所の隙間のうち、1個所は、他の4箇所の隙間の間隔よりも大きい間隔を有する。この大きい間隔を有する隙間12aを介して、試薬保存部6の外部に位置する試薬バーコードリーダ350により、第2試薬テーブル12の内側に位置する第1試薬テーブル11に配置される第1試薬容器ラック310のバーコード311bおよび312bと、第1試薬容器ラック310に保持される試薬容器300のバーコード300aとが読み取られる。また、第2試薬容器ラック320は、図8および図10に示されるように、試薬容器300を保持するための6つの保持部321〜326と、保持部321〜326の前面側にそれぞれ設けられた切欠部321a〜326aと、上方に突出するように設けられた1つの把持部327とを含んでいる。また、第2試薬容器ラック320の保持部321〜326は、第1試薬容器ラック310と同様に、平面的に見て円形状に形成されており、円筒形状の試薬容器300が差し込まれることにより試薬容器300を保持可能である。この第2試薬容器ラック320は、保持部321〜326の内径の組み合わせがそれぞれ異なるように形成された3種類のラックを含んでいる。また、第2試薬容器ラック320には、第1試薬容器ラック310に配置された試薬と同じ試薬を配置することが可能に構成されている。
【0049】
また、前列側の切欠部321aの両側には、バーコード321bと322bとが設けられている。また、同様に、切欠部323aの両側および切欠部325aの両側には、それぞれ、バーコード323bおよび324b、および、バーコード325bおよび326bが設けられている。また、保持部321〜326の内側面には、それぞれ、バーコード321c〜326cが設けられている。
【0050】
このバーコード321b〜326bには、それぞれ、保持部321〜326の位置を識別するための位置情報(ホルダ番号)が含まれている。また、バーコード321cおよび326cには、保持部321〜326に保持される試薬容器300は存在しないことを示す情報(試薬容器無し情報)が含まれている。
【0051】
また、試薬バーコードリーダ350によって読み取られたバーコード情報を元に、制御部4aは、ハードディスク401dに記憶されている試薬マスタ、試薬ロットマスタおよび容器マスタ等のテーブルを参照して、ホルダ番号、試薬名、ロット番号、試薬容器の種類、試薬の有効期限等の試薬識別情報を取得するように構成されている。そして、取得された試薬識別情報は、ハードディスク401dに記憶されている試薬情報データベース(図示せず)に格納されるように構成されている。試薬情報データベースに格納された情報は、制御装置4の制御部4aにより表示部4bに反映されるように構成されている。
【0052】
また、試薬交換部7は、図1および図2に示されるように、検体分析装置1の中央部近傍に設けられている。ここで、本実施の形態では、試薬交換部7は、図3に示されるように、ロック機構31および41をそれぞれ備えた取り外し可能な第1蓋30および第2蓋40と、ユーザに第1試薬テーブル11および第2試薬テーブル12の搬送状態を通知する通知部50とを含んでいる。
【0053】
第1蓋30は、第1試薬テーブル11(第1試薬容器ラック310)に配置された試薬容器300の交換が行われる際に取り外すことが可能なように構成されている。また、第1蓋30のロック機構31は、通常使用時、または、試薬の交換または追加が終了した後に、第1蓋30が外れないようにロックするとともに、第1試薬テーブル11における試薬の交換または追加が終了したことを制御部4aに認識させるために設けられている。
【0054】
また、第2蓋40は、第2試薬テーブル12(第2試薬容器ラック320)に配置された試薬容器300の交換の際に取り外すことが可能なように構成されている。また、第2蓋40のロック機構41は、通常使用時、または、試薬の交換が終了した後に、第2蓋40が外れないようにロックするとともに、第2試薬テーブル12における試薬の交換または追加が終了したことを制御部4aに認識させるために設けられている。
【0055】
また、通知部50は、2つのLEDインジケータ51および52を含んでいる。図1および図3に示されるように、2つのLEDインジケータ51および52は、第2蓋40の近傍に配置されており、検体分析装置1の外部からユーザが視認可能である。また、LEDインジケータ51および52は、青色または赤色に発光可能である。
【0056】
LEDインジケータ51は、ユーザが指定した第1試薬テーブル11の試薬に対応する第1試薬容器ラック310が、試薬の交換が可能な取出位置(第1蓋30の下方)に移動されたことをユーザに通知する機能を有する。具体的には、第1試薬テーブル11が回転移動中には、LEDインジケータ51は、赤色に発光し、指定された第1試薬テーブル11の試薬に対応する第1試薬容器ラック310が取出位置に移動されて停止したときには、青色に発光するように構成されている。これにより、ユーザに、試薬の交換または追加のために第1蓋30を取り外すタイミングを通知することが可能である。
【0057】
また、LEDインジケータ52は、ユーザが指定した第2試薬テーブル12の試薬に対応する第2試薬容器ラック320が、試薬の交換が可能な取出位置(第2蓋40の下方)に移動されたことをユーザに通知する機能を有する。LEDインジケータ52は、LEDインジケータ51と同様に、第2試薬テーブル12が回転移動中には赤色に発光し、指定された第2試薬テーブル12の試薬に対応する第2試薬容器ラック320が取出位置に移動されて停止した時には、青色に発光するように構成されている。
【0058】
また、試薬の交換または追加が終了した後、第1蓋30または第2蓋40のロックがユーザにより行われると、検体分析装置1は、自動的に、交換された試薬が保持される第1試薬容器ラック310または第2試薬容器ラック320に保持される全ての試薬容器300のバーコード300aの読み取りが行われるように構成されている。これにより、たとえば、1つの試薬を指定して試薬の交換を指示した際に、指定した試薬に加えて、同じ第1試薬容器ラック310または第2試薬容器ラック320に含まれる指定した試薬以外の試薬を交換した場合にも、交換後の試薬の配置が正しく把握される。
【0059】
また、測定機構部2は、さらに、図3〜5に示されるように、キュベット搬送部60と、検体分注アーム70と、第1光学的情報取得部80と、ランプユニット90と、加温部100と、キュベット移送部110と、試薬分注アーム120と、第2光学的情報取得部130と、緊急検体セット部140と、流体部150と、キュベット供給機構部160とを備えている。
【0060】
〔試薬庫20の構成および試薬の冷却機能〕
以下、試薬保存部6の試薬庫20のより具体的な構成および試薬の冷却機能について詳細に説明する。
図14は、試薬庫20を模式的に示す断面図である。試薬庫20は、有底円筒形状に形成された庫本体部21と、この庫本体部21の上部開口を閉鎖する蓋部(固定蓋22,および第1〜第3蓋30,40,23)とを備えており、庫本体部21の内部と蓋22、23、30,40によって形成される空間を有しており、試薬容器300を収容可能となっている。
【0061】
庫本体部21の底壁21bと周壁21cとは、それぞれ内外2層構造に形成されており、各内側層21b1、21c1は、アルミ等の熱伝導性の高い材質によって形成された伝熱層とされている。一方、各外側層21b2、21c2は、内側層21b1,21c1よりも熱伝導性の低い合成樹脂等の材料によって形成された断熱層とされている。また、蓋22,30,40,23も内側層21b1,21c1よりも熱伝導性の低い合成樹脂等の材料によって形成された断熱層とされている。
【0062】
庫本体部21の底壁21bの内側層21b1は、一部が下方に露出しており、その露出面には、1または複数個(図示例では2個)の冷却器601が設けられている。本実施形態の冷却器601は、ペルチェ素子601aを用いたものであり、このペルチェ素子601aの下面(排熱側)にはヒートシンク601bが設けられ、このヒートシンク601bの下面には放熱ファン601cが設けられている。冷却器601は、熱伝導性の高い庫本体部21の内側層21b1を直接的に冷却することによって、この内側層21b1自体を冷却媒体として用い、試薬庫20内の空気を冷却するように構成されている。なお、冷却器601としては、ペルチェ素子601aを用いたものに限らず、例えば内側層21b1,21c1を空冷または水冷によって冷却する構成であってもよい。
【0063】
放熱ファン601cは、検体分析装置1の筐体2A内の空気を吸引してヒートシンク60bへ送り込み、ヒートシンク601bで熱交換したのちに、検体分析装置1の底面A1に形成された排気口から温風を排出するように構成されている。また、検体分析装置1の底面1Aには、温風を排出するための排気ダクト602が設けられている。図16は、検体分析装置1の底面図であり、検体分析装置1の底面1Aに設けられた排気ダクト602は、その排気口602aが、検体分析装置1の左右側方へ向くように形成されている。また、排気ダクト602の前側には、放熱用の空気を吸引するための吸引孔603が形成されている。排気ダクト602の排気口602aが左右側方に向いていることによって、排気が吸気孔603に直接的に吸引されるのを防止することができ、また、検体分析装置1の前方で操作するユーザに温風が当たらないようにすることができる。
【0064】
図3および図14に示されるように、試薬庫20の上面中央には、筐体2A内の空気を試薬庫20内に取り入れるための空気導入口604が形成されている。具体的に、この空気導入口604は、固定蓋22を上下方向に貫通するように形成されている。このような構成にすることにより、空気導入口を介して筐体2A内の空気を試薬庫20に取り入れることが可能となる。さらに、この空気導入口604の真下には、空気導入口604から導入された空気の流通路を形成する円筒形状の流通筒605が立設され、この流通筒605には、空気導入口604から導入された空気を流通筒605内で下方に流動させるとともに、空気導入口604を介した空気の導入を促進する流動ファン606が設けられている。この流動ファン606を作動することによって、筐体2A内の空気が空気導入口604を介して積極的に試薬庫20内に導入されるとともに、流通筒605内を通過して下方に流動し、その後、流通筒605の下端から排出して試薬庫20内全体を流動するように構成されている。
【0065】
流通筒605は、その下端部が第1試薬テーブル11と一体化されており、この第1試薬テーブル11とともに中心周りに回転するように構成されている。第1試薬テーブル11および第2試薬テーブル12の上面部(試薬載置部)11a,12aは、合成樹脂等の熱伝導性の低い材質によって形成され、試薬テーブル11,12の下面部11b、12bは、上面部11a、12aよりも熱伝導性が高いアルミ等の材質で形成され、上面部11a,11bとの間には、スペーサ11c、12cを介して空気の流通隙間610が形成されている。この流通隙間610は、流通筒605内と連通しており、空気導入口604から導入された空気は流通筒605内を通って流通隙間610へ流れるように構成されている。第1,第2試薬テーブル11,12の上面部11a,12aは、熱伝導性の低い材質によって形成されているので、この第1,第2試薬テーブル11,12上の試薬容器300は、流通隙間610を流れる冷気によって直接的に冷却されることは少なく、試薬庫20の全体を流動する冷気によって冷却される。
【0066】
流通筒605内において、流動ファン606の下側には、アルミ等の熱伝導性が高い材質により形成された結露促進ブロック(結露促進部材)607が設けられている。図13にも示すように、この結露促進ブロック607には、上向きに突出する多数の棒状突起607aが整列した状態で設けられている。結露促進ブロック607は、試薬庫20の底壁21の内側層21b1に接触するように設けられている。したがって、この結露促進ブロック607も冷却器601によって冷却され、冷却媒体として試薬庫20内の空気を冷却するように構成されている。
【0067】
流動ファン606によって空気導入口604から導入された空気は、直接的に結露促進ブロック607に吹き付けられ、この空気に含まれる水蒸気が結露促進ブロック607において結露することによって、余計な湿気が除去される。特に、結露促進ブロック607は、多数の棒状突起607aが形成されることによって、空気との接触面積が増大されており、結露の発生がより促進されるようになっている。
【0068】
結露促進ブロック607に吹き付けられた空気は、流通隙間610を通って径方向外側に流動し、さらに、周壁21cの内側層21c1に沿って上向きに流動する。この流動により、試薬庫20内の空気は内側層21c1によってさらに冷却されるか、または冷却された状態に維持される。また、周壁21cの上部に到った空気は、蓋22の下面に沿って径方向内側へ流動する。このような空気の流れによって試薬庫20内の全体が冷却される。そして、試薬庫20内の空気は、再度流通筒605の上部に到るとともに、流通筒605の上部に形成された環流口620から流通筒605内に環流されるようになっている。
【0069】
具体的には、流通筒605の上部には、環流口620を有する環流部材621が設けられている。環流部材621は、図13に示すように、中央に開口を有する上下一対のリング体622と、この上下一対のリング体622の間に放射状に配置された複数枚の案内羽根623とからなり、上下一対のリング体622間でかつ各案内羽根623の間に、環流口620を有している。空気導入口604から取り入れられて試薬庫20内を流動した後の空気は、環流口620内に流入し、空気導入口604から新たに導入された空気とともに、結露促進ブロック607に吹き付けられるようになっている。このように試薬庫20内を流動することによって低温とされた空気を流通筒605内に環流させることにより、試薬庫20内の温度を迅速に均一化することが可能となり、冷却効率を向上することができる。
なお、試薬庫20内を流動する空気の一部は、図3に示されるように、試薬庫20の蓋22,23に形成された穴部22a〜22c、23a〜23cから排出され、これによって試薬庫20内の気圧のバランスが図られている。
【0070】
図3に示すように、空気導入口604は、筐体2Aの前壁2A1よりも前側に配置されているが、筐体2A内(前壁2A1よりも後側)の空気を導入するために、吸気ダクト(流路部材)630が接続されている。吸気ダクト630は、試薬庫20の蓋22の上面において、空気導入口604から後方へ延びるとともに、前壁2A1を貫通している。さらに、吸気ダクト630は、固定蓋22に形成された試薬吸引用の穴部22a〜22cとは反対側(左側)に屈曲するようにL字形状に形成されている。
吸気ダクト630は、固定蓋22に形成された穴部22a〜22cと空気導入口604との間に配置されており、各穴部22a〜22cから排出された直後の試薬庫20内の空気が直接的に空気導入口604に流れるのを抑制する流動障害部材としての機能を有している。
【0071】
このような吸気ダクト630を設けたのは次の理由による。空気導入口604に吸気ダクト630を設けない場合、穴部22a〜22cから排出された空気はその近くにある空気導入口604に積極的に吸引され、この空気導入口604と穴部22a〜22cと間における試薬庫20内外の狭い範囲で空気循環が生じやすくなる。このような循環が生じると、他の穴部23a〜23cから空気が排出され難くなり、試薬庫20内における空気の流動がアンバランスとなって、庫内温度が不均一になる。したがって、上記のように吸気ダクト630を設けることによって、各穴部22a〜22c、23a〜23cからバランスよく排気することが可能となり、試薬庫20内の温度の均一化を図ることができる。
【0072】
また、吸気ダクト630は、試薬交換のために第1,第2蓋30,40を開いたときに、装置1外の光が試薬庫20の開口から空気導入口604を介して筐体2A内に入り込み、光学的情報取得部130に到るのを抑制する機能を有している。すなわち、吸気ダクト630は、空気導入口604と光学的情報取得部130との間を遮光する遮光部材として機能している。
【0073】
本実施形態では、試薬庫20の内部(内側層21b1,21c1)を冷却器601によって冷却するとともに、試薬庫20内で空気を流動(循環)させることによって試薬庫20内を均一に低温状態にしているので、試薬の設定温度(目標温度)と、試薬庫の内側層21b1,21c1の温度との差を大きくする必要がない。具体的には、試薬庫20の内側層21b1,21c1は、試薬の設定温度(目標温度)よりも2℃〜3℃程度低温となるように冷却器601によって冷却すればよい。そのため、試薬庫20内の空気を冷やしすぎることが無く、試薬庫20内の湿度を適度に維持することができ、試薬の乾燥を防止することが可能となる。
【0074】
すなわち、試薬庫とは別の場所で生成した冷気を試薬庫内に送り込み、この冷気を循環させて試薬を冷却する場合、試薬を目標温度にするためには、この目標温度よりも冷気の温度を大きく低下させなければならず、これによって試薬庫内の湿度が低下して、試薬の乾燥が促進され、試薬成分に悪影響を及ぼす可能性があるが、本実施形態の場合にはこのような問題が生じることもない。
【0075】
図15は、検体分析装置1の背面側から見た斜視図である。検体分析装置1の背面側には外気取入口640が形成され、この外気取入口640にはフィルタ641が装着されている。したがって、検体分析装置1の筐体2A内には、フィルタ641によって塵埃が除去された清浄な空気が流入し、空気導入口604から試薬庫20内に導入される空気も清浄化されている。
なお、このようなフィルタ641は、空気導入口604や吸気ダクト630に設けることも可能であるが、フィルタ641が筐体2A内にあると交換や清掃が煩雑になるため、筐体2Aに設けることが好ましい。
【0076】
上記のように、本実施形態の検体分析装置1は、空気導入口640を介して検体分析装置1内、より具体的には、筺体2A内の空気を導入し、導入された空気を、ペルチェ素子601aによって冷却された試薬庫20の内側層21b1によって冷却するように構成されている。これにより、検査室内の外気の流動の影響を受けにくくなるため、試薬庫20内に過剰な空気が導入されることが抑制され、結露の発生を抑制することができる。なお、通常、検体分析装置1の内部の空気は、分析装置内部で動作する機器の影響により、外気と比較して温度が高く、冷却すれば結露が発生しやすくなる。本発明の発明者らは、このような状況にもかかわらず、分析装置の内部の空気を試薬庫に導入するように分析装置を構成すれば、結露の発生を抑制できることを見出した。
【0077】
〔試薬交換・追加動作〕
試薬保存部6の試薬庫20に対して、試薬容器300の交換や追加等を行う作業は、試薬交換部7を構成する第1蓋30や第2蓋40を開くことによって行うが、この際、試薬庫20内に設けられた流動ファン606や試薬庫20の内側層を冷却する冷却器601は作動を停止する。具体的には、第1,第2蓋30,40を開くためにロック機構31,41が解除されたことを制御部501が認識すると、制御部501は、流動ファン606および冷却器601を停止するように動作制御する。これによって、試薬庫20内に余分な空気が流入するのを防ぐとともに、第1,第2蓋30,40を開くことによって試薬庫20内に流入する外気に含まれた水蒸気が結露するのを防止することができる。
【0078】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、上記実施形態による検体分析装置1は、流動ファン606により、試薬庫20内の空気を循環させているが、本発明はこれに限らず、ペルチェ素子601aを試薬庫20の上面側(例えば、蓋22)に配置すれば、冷気が試薬庫内で下降し、空気が循環するため、流動ファン606を省略することも可能である。
また、上記実施形態では、試薬庫20の固定蓋22に空気導入口604が形成されているが、取り外し可能な蓋(第1〜第3蓋30,40,23)に空気導入口604が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 検体分析装置
2A 筐体
20 試薬庫
21b1 内側層
21c1 内側層
22a,22b,22c 試薬吸引口
23a,23b,23c 試薬吸引口
300 試薬容器
601 冷却器
604 空気導入口
605 流通筒
606 流動ファン
607 結露促進ブロック(結露促進部)
610 流通隙間
630 吸気ダクト(流通障害部材;流路部材)
640 外気取入口
641 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1空間を有する筐体と、
前記第1空間内の空気を導入する空気導入口を有している、試薬容器を収容するための第2空間を有する試薬庫と、
前記空気導入口を介して前記第1空間から前記第2空間内に導入された空気を冷却する冷却手段と、
を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記空気導入口を介して導入された空気を前記第2空間内で流動させる流動部を更に備えている請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記流動部は、前記空気導入口を介した前記第1空間内の空気の導入を促進させるように構成されている、請求項2記載の分析装置。
【請求項4】
前記試薬庫の内面は、熱伝導性を有する材質により形成されており、
前記冷却手段は、前記試薬庫の内面を冷却するように構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の分析装置。
【請求項5】
前記冷却手段によって冷却される前記試薬庫の内面の温度と、この温度よりも高い前記試薬の目標温度との温度差が、3℃以内に設定されている請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
前記流動部によって流動される空気の結露を促進する結露促進部を更に備えている請求項2〜5のいずれかに記載の分析装置。
【請求項7】
前記筐体に、フィルタを備えた外気取入口が設けられている請求項1〜6のいずれかに記載の分析装置。
【請求項8】
前記試薬庫には、前記試薬容器内の試薬を吸引するための試薬吸引口が形成されており、
前記空気導入口と前記試薬吸引口との間の空気の流通を抑制する流通障害部材を更に備えている請求項1〜7のいずれかに記載の分析装置。
【請求項9】
前記試薬庫は、上面が開放されており、前記試薬容器を収容するための本体部と、前記空気導入口を有しており、前記本体の上面を覆う着脱可能な蓋部と、を備えている請求項1〜8のいずれかに記載の分析装置。

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−237021(P2010−237021A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85060(P2009−85060)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】