説明

分析装置

【課題】反応容器内の混合液を均一に攪拌することができる分析装置を提供すること。
【解決手段】検体と試薬との混合液が収容される反応容器21内の混合液を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置1において、反応容器21に反応容器21の形状および反応容器21内に収容されるべき混合液の体積に応じて定められる周波数の音波を照射することによって、混合液に音響流を発生させる第1の櫛型電極24cと、反応容器21を振動させる第2の櫛型電極24b,24dと、第1の櫛型電極24cによって音響流を発生させるとともに第2の櫛型電極24b,24dによって反応容器21を振動させることによって混合液を攪拌する制御を行なう供給電力制御部31aとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器内の検体と試薬との混合液を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反応容器内の検体と試薬との混合液を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置においては、音波によって反応容器内の混合液に音響流を発生し、この音響流によって混合液を攪拌する分析装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3168886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された分析装置では、反応容器内部の壁面近傍に位置する混合液は、反応容器内部の壁面から離れた位置の混合液よりも壁面の影響を受けるため流れが弱くなってしまう。このため、反応容器内の混合液を均一に攪拌することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、反応容器内の混合液を均一に攪拌することができる分析装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分析装置は、検体と試薬との混合液が収容される反応容器内の前記混合液を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置において、前記反応容器の形状および該反応容器内に収容されるべき前記混合液の体積に応じて定められる周波数の音波を前記反応容器に照射することによって前記混合液に音響流を発生させる音響流発生手段と、前記反応容器を振動させる振動手段と、前記音響流発生手段に前記音響流を発生させるとともに前記振動手段に前記反応容器を振動させることによって前記混合液を攪拌する制御を行なう制御手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記反応容器の底面の下方に設けられ、圧電体からなる基板を有し、前記音響流発生手段は、前記基板上の前記反応容器の底面中央付近と向かい合う位置に設けられ、音波を発生する第1の櫛型電極であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記振動手段は、前記音響流発生手段が発生する音波より低い周波数の音波を前記反応容器に照射することによって前記反応容器を振動させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記反応容器の底面の下方に設けられ、圧電体からなる基板を有し、前記振動手段は、前記基板上の前記反応容器の底面の外縁付近と向かい合う位置に設けられ、音波を発生する第2の櫛型電極であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記反応容器を固定する反応容器固定部材を有し、前記振動手段は、前記反応容器固定部材を介して前記反応容器に振動を伝えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記振動手段は前記反応容器固定部材に取り付けられた圧電素子であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記検体の分析項目に応じて前記音響流発生手段が発生する音響流の強さ、および前記振動手段による前記反応容器の振動の強さを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る分析装置においては、音響流発生手段によって混合液に音響流を発生させるとともに振動手段によって反応容器を振動させて混合液を攪拌する制御を行なうので、反応容器内部の壁面近傍に位置する混合液の流れを、反応容器内部の壁面から離れた位置の混合液の流れにのせることが可能となる。従って、反応容器内の混合液を均一に攪拌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る分析装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した反応部の要部断面図である。
【図3】図3は、図2に示した反応容器および表面弾性波素子を示す斜視図である。
【図4】図4は、分析装置による混合液の攪拌処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1の変形例に係る反応部の要部断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2に係る分析装置の構成を模式的に示す図である。
【図7】図7は、図6に示した反応部の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る分析装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る分析装置1の構成を模式的に示す図である。分析装置1は、反応容器21に収容された検体と試薬とを反応させて光学的に測定する測定部10と、測定部10を含む分析装置1全体の制御および測定部10における測定結果の分析を行う制御装置30とを有する。分析装置1は、測定部10および制御装置30を連携させることによって複数の検体の分析を自動的に行う。
【0017】
測定部10は、検体供給部11、検体分注部12、分析光学系13、洗浄部14、試薬テーブル15、試薬分注部16、および反応部20を有する。
【0018】
検体供給部11は、検体が収容される検体容器11aが保持された複数の検体ラック11bを収納して検体分注位置に順次移送する。
【0019】
検体分注部12は、検体供給部11の検体分注位置に移送された検体容器11a内から検体を吸引し、反応部20上の検体吐き出し位置に移送された反応容器21に、検体を吐き出して分注を行う。
【0020】
分析光学系13は、所定の測定位置に移送された反応容器21に測定光を照射し、反応容器21内の検体と試薬との混合液を透過した光を分光し、各波長光の強度測定を行うことによって、検体と試薬との混合液に特有の波長の吸光度を測定する。
【0021】
洗浄部14は、図示しないノズルによって、分析光学系13による測定が終了した反応容器21内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行う。
【0022】
試薬テーブル15は、ホイール15aを有する。ホイール15aは、複数の試薬容器15bを保持し、図示しない駆動機構によって回転することにより試薬容器15bを周方向に沿って移送する。
【0023】
試薬分注部16は、試薬テーブル15上の所定位置に移送された試薬容器15b内の試薬を吸引し、反応部20上の所定位置に移送された反応容器21に、試薬を吐出して分注を行う。
【0024】
反応部20は、検体と試薬との混合液が収容される反応容器21を保持し、反応容器21内の混合液を攪拌して反応させる。反応部20は、反応容器保持機構22および恒温液収容槽25を有する。
【0025】
図2は、図1に示した反応部20の要部断面図である。反応容器21は、側壁と底壁とによって上部に開口が形成された中空4角柱形状をなし、検体と試薬との混合液を収容する。反応容器21は、分析光を透過する素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。
【0026】
反応容器保持機構22は、図2に示すように、反応容器固定部材23および音波を発生する表面弾性波(SAW)素子24を有する。反応容器固定部材23は、複数の表面弾性波素子24が周方向に沿って並べて取り付けられ、表面弾性波素子24と向かい合う位置に複数の反応容器21を周方向に沿って並べて固定する。また、反応容器固定部材23は、反応容器21の底面と、表面弾性波素子24とを向かい合わせて反応容器21を支持する支持部23aを有する。支持部23aは、ゴム等の弾性体を用いる。反応容器保持機構22は、図示しない駆動機構によって反応容器固定部材23を周方向に回転させて反応容器21を移送する。
【0027】
表面弾性波素子24は、例えば、図示しないスリップリングによって電力を供給されて音波を発生する。表面弾性波素子24は、例えば、ニオブ酸リチウム等の圧電体からなる基板24aの表面に、第1の櫛型電極(IDT)24cおよび第2の櫛型電極24b,24dが設けられる。第1の櫛型電極24cおよび第2の櫛型電極24b,24dは、基板24a上に互いに間隔をあけて設けられる。
【0028】
第1の櫛型電極24cは、図3に示すように、反応容器21の底面中央付近と向かい合う位置に設けられ、図2に示すように、音響流発生手段として反応容器21に反応容器21の形状および反応容器21内に収容されるべき混合液の体積に応じて定められる周波数の音波を照射することによって、混合液Sに音響流Fを発生させる。
【0029】
第2の櫛型電極24b,24dは、図3に示すように、反応容器21の底面の外縁付近と向かい合う位置に設けられ、図2に示すように、振動手段として第1の櫛型電極24cが発生する音波より低い周波数の音波を反応容器21に照射することによって反応容器21を振動させる。
【0030】
恒温液収容槽25は、外形が円形状を有し、円の中心から径方向に沿って切断した断面が凹状をなし、表面弾性波素子24と反応容器21の底面との間に恒温液Lを満たした状態で恒温液Lを収容する。恒温液収容槽25内の恒温液Lは、図示しない循環手段によって所定の温度に保たれて恒温液収容槽25内を循環する。恒温液収容槽25は、上部を図示しない円盤状の蓋によって覆われる。
【0031】
制御装置30は、図1に示すように、制御部31、入力部32、表示部33および記憶部34を有する。測定部10および制御装置30内の各部は、制御部31に接続される。制御部31は、CPU等によって実現され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。また、制御部31は、分析光学系13によって測定された測定結果をもとに、検体内における検出対象物の濃度を求め、検体の成分分析等を行う。
【0032】
制御部31は、供給電力制御部31aを有する。供給電力制御部31aは、制御手段として第1の櫛型電極24cに音響流を発生させるとともに第2の櫛型電極24b,24dに反応容器21を振動さることによって混合液を攪拌する制御を行なう。供給電力制御部31aは、検体の分析項目に応じて、第1の櫛型電極24cが発生する音響流の強さ、および第2の櫛型電極24b,24dによる反応容器21の振動の強さを制御する。
【0033】
具体的には、供給電力制御部31aは、検体の分析項目に応じて第1の櫛型電極24cおよび第2の櫛型電極24b,24dに供給する電力を決定し、決定した電力を第1の櫛型電極24cおよび第2の櫛型電極24b,24dに供給する制御を行う。例えば、第1の櫛型電極24cに供給する電力の大きさを大、中、小の3つのレベルに分けて設定し、第2の櫛型電極24b,24dについても第1の櫛型電極24cとは異なるレベルで電力の大きさを大、中、小の3つのレベルに分けて設定する。ここで、混合液の粘度が高いとされる検体の分析項目の場合、混合液が音波を吸収し易いので、反応容器21の振動を大きくして音響流による攪拌を抑えるようにする。すなわち、第2の櫛型電極24b,24dへ供給する電力を大レベルとし、第1の櫛型電極24cに供給する電力を中レベルあるいは小レベルとする。
【0034】
また、混合液の液量が多く粘性が低いとされる検体の分析項目の場合、混合液が音波を吸収し難く、混合液の流れが発生し易いため、第1の櫛型電極24cに供給する電力を大レベルとし、第2の櫛型電極24b,24dへ供給する電力を中レベルあるいは小レベルとする。なお、検体の分析項目と、第1の櫛型電極24cおよび第2の櫛型電極24b,24dへ供給する電力の大きさとの対応情報は、記憶部34に予め記憶される。
【0035】
入力部32は、キーボードやマウス等によって実現され、検体の分析項目等の分析に関する各種情報の入力が可能である。表示部33は、ディスプレイパネルやプリンタ等によって実現され、検体の分析データや警報等の各種情報を出力する。記憶部34は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にこの処理にかかわる各種プログラムをハードディスクから読み出して電気的に記憶するメモリとを有する。記憶部34は、演算処理された吸光度等を含む検体の分析データを記憶する。
【0036】
この分析装置1では、順次移送される反応容器21に対して、試薬分注部16が、試薬容器15bから反応容器21に試薬を分注し、検体分注部12が、検体容器11aから反応容器21に所定量の検体を分注する。続いて、恒温液収容槽25内の攪拌位置で、表面弾性波素子24から発生させた音波によって反応容器21内の検体と試薬との混合液を音響流および反応容器21の振動によって撹拌して反応させた後、分析光学系13が、混合液の吸光度測定を行う。そして、制御部31が、測定結果を分析し、検体の成分分析等を自動的に行う。また、洗浄部14が、分析光学系13による測定が終了した反応容器21の洗浄・乾燥を行い、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。なお、恒温液収容槽25内の攪拌位置とは、検体分注部12、分析光学系13、洗浄部14および試薬分注部15のそれぞれが処理を行う恒温液収容槽25内の反応容器21の位置とは異なる位置である。この実施の形態1では、恒温液収容槽25内の所定の位置を攪拌位置としている。
【0037】
次に、図4に示すフローチャートを参照して、分析装置1による混合液の攪拌処理の処理手順を説明する。図4は、分析装置1による混合液の攪拌処理の処理手順を示すフローチャートである。まず、制御部31は、混合液を収容した反応容器21が恒温液収容槽25内の攪拌位置に移送されたか否かを判断する(ステップS101)。制御部31が、混合液を収容した反応容器21は攪拌位置に移送されたと判断した場合(ステップS101,Yes)、分析装置1は、供給電力制御部31aの制御によって、検体の分析項目に応じた電力を第1の櫛型電極24cおよび第2の櫛型電極24b,24dに供給する(ステップS102)。これによって、第1の櫛型電極24cが発生した音響流、および第2の櫛型電極24b,24dによる反応容器21の振動によって、混合液が攪拌される。
【0038】
その後、制御部31は、所定時間経過したか否かを判断する(ステップS103)。制御部31が、所定時間経過したと判断した場合(ステップS103,Yes)、分析装置1は、第1の櫛型電極24cおよび第2の櫛型電極24b,24dへの電力の供給を停止する(ステップS104)。その後、制御部31は、反応部20内の反応容器21に収容された全ての混合液の攪拌処理が終了したか否かを判断する(ステップS105)。反応部20内の反応容器21に収容された全ての混合液の攪拌処理が終了した場合(ステップS105,Yes)、制御部31は、一連の処理を終了させる。
【0039】
ステップS101において、制御部31が、混合液を収容した反応容器21は攪拌位置に移送されていないと判断した場合(ステップS101,No)、ステップS101の処理を繰り返す。
【0040】
また、ステップS103において、制御部31が、所定時間経過していないと判断した場合(ステップS103,No)、ステップS103の処理を繰り返す。
【0041】
また、ステップS105において、制御部31が、全ての混合液の攪拌処理が終了していないと判断した場合(ステップS105,No)、分析装置1は、処理をステップS101に移行し、上述した処理を繰り返す。
【0042】
本実施の形態1では、第1の櫛型電極24cが、音波によって混合液に音響流を発生させるとともに、第2の櫛型電極24b,24dが、反応容器21を振動させるので、反応容器21内部の壁面近傍に位置する混合液の流れを、反応容器21内部の壁面から離れた位置の混合液の流れにのせることが可能となる。従って、反応容器21内の混合液を均一に攪拌することができる。
【0043】
また、本実施の形態1では、混合液にエネルギーを吸収されることによって混合液の発熱を生じ易い音響流のみでなく、反応容器21を振動させて混合液の攪拌を行うようにしているので、音響流のみで同等の攪拌能力を得ようとする場合に比して攪拌による混合液の発熱を低減することができる。
【0044】
また、本実施の形態1では、検体の分析項目に応じて第1の櫛型電極24cおよび第2の櫛型電極24b,24dに供給する電力を変化させているので、混合液の液量あるいは液性に応じた混合液の攪拌を行うことができる。
【0045】
つぎに、本実施の形態1の変形例について説明する。図5は、本発明の実施の形態1の変形例に係る反応部40の要部断面図である。反応部40は、反応容器21に対して恒温液をできる限り接触させないようにしたドライバス型である。反応部40は、図5に示すように、反応容器保持機構41および恒温槽42を有する。反応容器保持機構41は、反応容器固定部材41aおよび表面弾性波素子24を有する。反応容器固定部材41aは、表面弾性波素子24が周方向に沿って並べて取り付けられ、表面弾性波素子24と向かい合う位置に複数の反応容器21を周方向に沿って並べて固定する。
【0046】
反応容器固定部材41aは、支持部23aおよび恒温液収容部41bを有する。恒温液収容部41bは、表面弾性波素子24と反応容器21の底面との間に恒温液Lを満たした状態で恒温液Lを収容する。恒温液収容部41bは、シール材41cで覆うことによって液密にしている。反応容器保持機構41は、図示しない駆動機構によって反応容器固定部材41aを周方向に回転して反応容器21を移送する。恒温槽42は、恒温液収容槽25と同様に、外形が円形状を有し、円の中心から径方向に沿って切断した断面が凹状をなし、上部を図示しない円盤状の蓋によって覆われる。なお、恒温液収容部41b内で恒温液Lを循環させる場合、反応容器21の移送停止時に図示しない循環系統を恒温液収容部41bに接続させる。
【0047】
なお、本実施の形態1では、混合液を収容した反応容器21が攪拌位置に移送された際に第1の櫛型電極24cおよび第2の櫛型電極24b,24dに電力を供給するようにしているが、第1の櫛型電極24cおよび第2の櫛型電極24b,24dに電力を供給するタイミングはその他のタイミングであってもよい。例えば、反応容器21の移送動作の最中に第1の櫛型電極24cおよび第2の櫛型電極24b,24dに電力を供給して混合液を攪拌するようにしてもよい。また、混合液を攪拌するタイミングに加えて、分析光学系13での測光処理を行う直前のタイミングで第1の櫛型電極24cおよび第2の櫛型電極24b,24dに電力を供給してもよい。この場合、反応容器21内の測定光路上にある気泡を除去する効果が得られる。また、反応容器21の洗浄の際に第1の櫛型電極24cおよび第2の櫛型電極24b,24dに電力を供給してもよい。この場合、反応容器21内の水の残りを除去する効果が得られる。
【0048】
また、本実施の形態1では、表面弾性波素子24を反応容器固定部材23に設けるものを例示したが、これに限らず、混合液に音響流を発生させること、および反応容器21を振動させることができればよい。例えば、表面弾性波素子24を恒温液収容槽25に設けてもよい。
【0049】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図6は、本発明の実施の形態2に係る分析装置2の構成を示す模式図である。図7は、図6に示した反応部の要部断面図である。実施の形態1の分析装置1では、音響流発生手段および振動手段のそれぞれが、圧電体からなる基板24a上に設けられた櫛型電極であるものを例示したが、本発明の実施の形態2では、音響流発生手段および振動手段のそれぞれに互いに異なる種類の振動子を用いている。本実施の形態2では、分析装置2は、図6に示すように、測定部60および制御装置70を有する。測定部60は、反応部20に代わって反応部50を有する。また、制御装置70は、制御部31に代わって制御部71を有する。
【0050】
反応部50は、反応容器保持機構51および恒温液収容槽25を有する。反応容器保持機構51は、複数の反応容器21を保持して移送する。反応容器保持機構51は、図7に示すように、反応容器固定部材52、表面弾性波素子53、横方向振動子54および縦方向振動子55を有する。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0051】
反応容器固定部材52は、反応容器21を固定する。反応容器固定部材52は、回転部材52aおよび受け部材52bを有する。回転部材52aは、図示しない駆動機構によって周方向に回転される。
【0052】
受け部材52bは、互いに向かい合う側壁と底壁とを有する断面コの字形状をなし、回転部材52aの周方向に沿って並べて取り付けられる。受け部材52bは、受け部材52bの互いに向かい合う側壁にそれぞれ設けられて反応容器21の下部を支持する支持部52cを有する。支持部52cは、ゴム等の弾性体を用いる。
【0053】
表面弾性波素子53は、反応容器21の底面と離れて向かい合う受け部材52bの底面上に取り付けられる。表面弾性波素子53は、音響流発生手段として反応容器21の形状および反応容器21内に収容されるべき混合液の体積に応じて定められる周波数の音波を反応容器21に照射することによって混合液Sに音響流Fを発生させる。表面弾性波素子53は、例えば、ニオブ酸リチウム等の圧電体からなる基板53aの表面に櫛型電極(IDT)からなる音響流発生振動子53bが設けられる。
【0054】
横方向振動子54は、支持部52cに取り付けられ、振動手段として支持部52cを介して反応容器21に横方向の振動を伝える圧電素子である。縦方向振動子55は、受け部材52bの下部に取り付けられ、振動手段として反応容器21に縦方向の振動を伝える圧電素子である。なお、横方向振動子54および縦方向振動子55のそれぞれは、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる。
【0055】
制御部71は、供給電力制御部71aを有する。供給電力制御部71aは、実施の形態1の供給電力制御部31aと同様に、制御手段として検体の分析項目に応じて音響流発生振動子53bが発生する音響流の強さ、および横方向振動子54、縦方向振動子55による反応容器21の振動の強さを制御する。供給電力制御部71aは、検体の分析項目に応じて音響流発生振動子53b、横方向振動子54および縦方向振動子55に供給する電力を決定し、決定した電力を音響流発生振動子53b、横方向振動子54および縦方向振動子55に供給する制御を行う。
【0056】
本実施の形態2では、音響流発生振動子53bが、音波によって混合液に音響流を発生させるとともに、横方向振動子54および縦方向振動子55が、反応容器21を横方向および縦方向に振動させて混合液を攪拌するので、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0057】
また、本実施の形態2では、横方向振動子54によって反応容器21を横方向に振動させることによって、音響流発生振動子53bと反応容器21との相対位置を変化させているので、音響流の流れを変化させることができる。このため、反応容器21に対して相対位置が固定された状態で音響流を発生させる場合に比して、より効果的に音響流による攪拌を行うことができる。また、同じ流れの音響流によって長時間の攪拌を行うと、反応容器21の壁面を伝って液上がりを発生させてしまうおそれがあるが、音響流の流れを変化させることができるため、この液上がりについても防止することができる。
【0058】
なお、本実施の形態2では、表面弾性波素子53が、反応容器21の底面に向かい合う位置に配置されるものを例示したが、これに限らず、混合液に音響流を発生させることができればよい。例えば、反応容器21の側壁に向かい合う位置に配置されるようにしてもよい。
【0059】
また、本実施の形態1,2では、検体の分析項目に応じて音響流の強さ、および反応容器21の振動の強さを制御するものを例示したが、これに限らず、音響流を発生させるとともに反応容器21を振動させて混合液を攪拌する制御を行なうことができればよい。例えば、検体の分析項目が変化した場合においても、音響流の強さおよび反応容器21の振動の強さを変化させなくてもよい。
【0060】
また、本実施の形態1,2では、音響流発生手段として櫛型電極を用い、振動発生手段として櫛型電極あるいは圧電素子を用いるものを例示したが、これに限らず、音響流発生手段として混合液に音響流を発生させるものを用い、振動発生手段として反応容器21を振動させるものを用いればよい。例えば、音響発生手段としてチタン酸ジルコン酸鉛等の圧電素子を用いてもよい。
【0061】
なお、本実施の形態1,2では、反応容器21は、側壁と底壁とによって上部に開口が形成された中空4角柱形状をなすものを例示したが、これに限らず、混合液を収容することができればよい。例えば、側壁と底壁とによって上部に開口が形成された中空円柱形状の反応容器を用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1,2 分析装置
10,60 測定部
11 検体供給部
11a 検体容器
11b 検体ラック
12 検体分注部
13 分析光学系
14 洗浄部
15 試薬テーブル
16 試薬分注部
20,40,50 反応部
21 反応容器
22,41,51 反応容器保持機構
23,41a,52 反応容器固定部材
23a,52c 支持部
24,53 表面弾性波素子
24a,53a 基板
24b,24d 第2の櫛型電極
24c 第1の櫛型電極
25 恒温液収容槽
30,70 制御装置
31,71 制御部
31a,71a 供給電力制御部
32 入力部
33 表示部
34 記憶部
41b 恒温液収容部
41c シール材
42 恒温槽
52a 回転部材
52b 受け部材
53b 音響流発生振動子
54 横方向振動子
55 縦方向振動子
F 音響流
L 恒温液
S 混合液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬との混合液が収容される反応容器内の前記混合液を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置において、
前記反応容器の形状および該反応容器内に収容されるべき前記混合液の体積に応じて定められる周波数の音波を前記反応容器に照射することによって前記混合液に音響流を発生させる音響流発生手段と、
前記反応容器を振動させる振動手段と、
前記音響流発生手段に前記音響流を発生させるとともに前記振動手段に前記反応容器を振動させることによって前記混合液を攪拌する制御を行なう制御手段と、
を有することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記反応容器の底面の下方に設けられ、圧電体からなる基板を有し、
前記音響流発生手段は、前記基板上の前記反応容器の底面中央付近と向かい合う位置に設けられ、音波を発生する第1の櫛型電極であることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記振動手段は、前記音響流発生手段が発生する音波より低い周波数の音波を前記反応容器に照射することによって前記反応容器を振動させることを特徴とする請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記反応容器の底面の下方に設けられ、圧電体からなる基板を有し、
前記振動手段は、前記基板上の前記反応容器の底面の外縁付近と向かい合う位置に設けられ、音波を発生する第2の櫛型電極であることを特徴とする請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記反応容器を固定する反応容器固定部材を有し、
前記振動手段は、前記反応容器固定部材を介して前記反応容器に振動を伝えることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項6】
前記振動手段は前記反応容器固定部材に取り付けられた圧電素子であることを特徴とする請求項5に記載の分析装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記検体の分析項目に応じて前記音響流発生手段が発生する音響流の強さ、および前記振動手段による前記反応容器の振動の強さを制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−141244(P2011−141244A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3220(P2010−3220)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】