説明

分析装置

【課題】本発明の目的は、上記の課題に鑑み、液体分注機構による液体分注の正確度と精度、および高速化を達成することのできる分析装置を提供できる。
【解決手段】ステッピングモーターを動力源とする駆動機構を備える分析装置において、その駆動機構がステッピングモーターの回転出力軸から、少なくとも一つ以上の動力伝達部を介して、目的動作を実施するための可動部に動力が伝達されるものであって、ステッピングモーターの駆動方向反転に伴う可動部の空転量を、可動部の移動量およびステッピングモーターへの付与パルス量と残存パルス量から算出し、これに基づいて駆動機構の動作制御を実施することを特徴とする分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモーターを動力源とする駆動機構を備える分析装置に関する分析装置。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモーターは、コンピュータによる制御が可能なパルス信号によってモーターの回転角度と回転速度を正確に制御することができ、主に精密機器分野において機構駆動源として広く利用されている。例えば、血液,尿等の生体サンプル中の特定成分の定性・定量分析を行う自動分析装置においては、ステッピングモーターによって液体分注用シリンジのプランジャを駆動させて、シリンジと流路を介して接続される液体分注用ノズル等から所定量の生体サンプル,試薬、およびこれらの反応液等を吸引または吐出する機構が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−148032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の分析装置においては、分析結果の更なる信頼性向上と併せて、分析処理能力の向上が求められている。従って、分析装置の液体分注機構による液体分注の正確度と精度、および高速化は重要な課題である。
【0005】
ステッピングモーターを動力源としてシリンジのプランジャを駆動する液体分注機構は、ステッピングモーターの回転出力軸からギアやタイミングベルト等の動力伝達機構を介してシリンジのプランジャを直線方向に駆動させることにより、シリンジと流路を介して接続される液体分注用ノズル等から所定量の液体を吸引または吐出する。液体を吸引する場合はステッピングモーターをCW(時計回り)方向へ回転させて、プランジャを下方に駆動させ、一方、液体を吐出する場合はステッピングモーターをCCW方向(反時計回り)へ回転させて、プランジャを上方に駆動させる。尚、液体の吸引から吐出、或いは吐出から吸引の動作へと反転する場合は、ステッピングモーターの回転方向およびプランジャの駆動方向を逆転させる際、回転出力軸からプランジャ駆動部までを介するギアやタイミングベルト等の動力伝達機構の遊びに由来する空転を解消する為の予備動作を行って、液体分注量の正確度と精度の維持を図ることが一般的である。空転量は、ギアやタイミングベルト等の構成単位個々の寸法公差に起因しており、装置間差や経時的変動の抑制が困難である。
【0006】
しかしながら、空転を解消するための予備動作は、分析装置の高処理能力化への制約となっており、予備動作の省略が望まれる。
【0007】
特許文献1にはステッピングモーターの駆動電流が負荷トルクに対応した固有の波形を示す特徴を利用して、モーターへの実負荷に基づく空転を測定する方法が開示されている。しかし、ステッピングモーターに対する実負荷はモーター出力軸からの駆動伝達を構成する個々の要素において最も負荷を要するものに依存し、例えば駆動伝達末端部分のプランジャ動作とは必ずしも一致するものではなく、本公知方法を上記の分析装置における課題解決に適用することはできない。分析装置における液体分注性能を確保するための空転量測定は、駆動力伝達手段の末端部分である液体分注シリンジのプランジャ動作、或いは液体吸引・吐出ノズルからシリンジを介する流路中の流体動作に基づいて測定することが望まれる。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、液体分注機構による液体分注の正確度と精度、および高速化を達成することのできる分析装置を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための構成は以下のとおりである。
【0010】
ステッピングモーターを動力源とする駆動機構を備える分析装置において、その駆動機構がステッピングモーターの回転出力軸から、少なくとも一つ以上の動力伝達部を介して、目的動作を実施するための可動部に動力が伝達されるものであって、ステッピングモーターの駆動方向反転に伴う可動部の空転量を、可動部の移動量およびステッピングモーターへの付与パルス量と残存パルス量から算出し、これに基づいて駆動機構の動作制御を実施することを特徴とする分析装置。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、予備動作をすることなく、液体分注機構による液体分注の正確度と精度、および高速化を達成することのできる分析装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】分析装置の全体構成図。
【図2】検出系流路構成図。
【図3】シリンジユニット構成図。
【図4】空転測定動作フロー図。
【図5】フローセル構成図。
【図6】気液流れ測定による空転測定動作フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例に入る前に本発明を説明する。
【0014】
分析装置の分注機構において、液体分注を行う為のシリンジのプランジャを駆動させるステッピングモーターを、CW(時計回り)方向からCCW方向(反時計回り)、或いはCCW方向(反時計回り)からCW(時計回り)方向へと、所定量のパルス信号によって回転させ、分注シリンジのプランジャ移動量、さらには液体吸引・吐出ノズルからシリンジを介する流路中の流体移動量を測定し、付与パルス信号量から算出される移動量との差分から、ステッピングモーターの駆動方向反転に伴う動力伝達機構における末端部の動作に基づく空転量を測定する。そして、この空転測定値に基づいて、モーター駆動方向反転後の液体吸引または吐出のための付与パルス信号量を設定し、モーター駆動方向反転の際の予備動作を省略する。
【0015】
反応液や試薬等の液体や空気を吸引或いは吐出するためのノズル、液体や空気を吸引或いは吐出するための圧力差を発生させる圧力差発生手段としてのシリンジ、ノズルとシリンジを連絡する流路、シリンジのプランジャを駆動させるためのステッピングモーターから構成される分注機構を備える分析装置における本発明の具体的手段を説明する。
【0016】
第一例として、シリンジのプランジャ位置を検知するための透過型フォトインタラプタセンサを用いて空転量を測定する方法を下記する。先ずプランジャを液体吐出側の機械的限界点まで駆動してから、プランジャを液体吸引側に駆動させて、吐出側機械的限界点から吸引側方向に設けられたフォトインタラプタによる検知信号に従って停止させる。この位置を起点として更に吸引側へと、所定量のパルス信号を付与してプランジャを駆動させる。次いで、ステッピングモーターを反転させて吐出側へと、前記所定量よりも多いパルス信号を付与してプランジャを駆動させ、フォトインタラプタによる検知信号に従って停止させる。この際の残存パルス信号量とフォトインタラプタ検知から停止までのディレイパルス信号量設定値、更にフォトインタラプタ遮光板寸法とフォトインタラプタ感度を考慮して、ステッピングモーター反転に伴うプランジャ動作に基づく空転量を算出する。
【0017】
第二例として、液体吸引或いは吐出するためのノズルからシリンジを介する流路中の流体移動量に基づいて空転量を測定する方法を下記する。流路中の気体と液体を検知し得る電気化学的手段を用いるものもある。ここでは、流路中に挿入した所定容量の気泡を、流路内部に備えた電極によって検知し、上述のフォトインタラプタを用いる場合と同様にシリンジを駆動し、残存パルス信号量と電気化学的検知から停止までのディレイパルス信号量設定値、更に流路断面積と気泡体積,電気化学的検出感度も考慮して、ステッピングモーター反転に伴う流路中の流体移動に基づく空転量を算出する。
【0018】
これらの空転量測定値に基づいて、モーター反転後の液体吸引または吐出のための付与パルス信号量を設定し、モーター反転に伴う予備動作を行うことなく、液体分注量の精度と正確度を確保する。
【0019】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0020】
先ず図1を用いて本実施形態による分析装置の全体構成を説明する。分析装置100の、ラック101には、サンプルを保持するサンプル容器102が架設されており、ラック搬送ライン117によって、サンプル分注ノズル103の近傍のサンプル分注位置まで移動させる。インキュベータディスク104には、複数の反応容器105が設置可能であり、円周方向に設置された反応容器105をそれぞれ所定位置まで移動させるための回転運動が可能である。サンプル分注チップ及び反応容器搬送機構106は、X軸,Y軸,Z軸の3方向に移動可能であり、サンプル分注チップ及び反応容器保持部材107,反応容器攪拌機構108,サンプル分注チップ及び反応容器廃棄孔109,サンプル分注チップ装着位置110,インキュベータディスク104の所定箇所、の範囲を移動し、サンプル分注チップおよび反応容器の搬送を行う。サンプル分注チップ及び反応容器保持部材107には、未使用の反応容器とサンプル分注チップが複数設置されている。サンプル分注チップ及び反応容器搬送機構106は、サンプル分注チップ及び反応容器保持部材107の上方に移動し、下降して未使用の反応容器を把持した後上昇し、さらに、インキュベータディスク104の所定位置上方に移動し、下降して反応容器を設置する。次いで、サンプル分注チップ及び反応容器搬送機構106は、サンプル分注チップ及び反応容器保持部材107の上方に移動し、下降して未使用のサンプル分注チップを把持した後、上昇し、サンプル分注チップ装着位置110の上方に移動し、下降してサンプル分注チップを設置する。サンプル分注ノズル103は、回動及び上下動可能であり、サンプル分注チップ装着位置110の上方に回動移動した後、下降して、サンプル分注ノズル103の先端にサンプル分注チップを圧入して装着する。サンプル分注チップを装着したサンプル分注ノズル103は、搬送ラック101に載置されたサンプル容器102の上方に移動した後、下降して、サンプル容器102に保持されたサンプルを所定量吸引する。サンプルを吸引したサンプル分注ノズル103は、インキュベータディスク104の上方に移動した後、下降して、インキュベータディスク104に保持された未使用の反応容器105に、サンプルを吐出する。サンプル吐出が終了すると、サンプル分注ノズル103は、サンプル分注チップ及び反応容器廃棄孔109の上方に移動し、使用済みのサンプル分注チップを廃棄孔から廃棄する。試薬ディスク111には、複数の試薬容器118が設置されている。試薬ディスク111の上部には試薬ディスクカバー112が設けられ、試薬ディスク111内部は所定の温度に保温される。試薬ディスクカバー112の一部には、試薬ディスクカバー開口部113が設けられている。試薬分注ノズル114は回転と上下移動が可能であり、試薬ディスクカバー112の開口部113の上方に回転移動した後に下降し、試薬分注ノズル114の先端を所定の試薬容器内の試薬に浸漬して、所定量の試薬を吸引する。次いで、試薬分注ノズル114は上昇した後に、インキュベータディスク104の所定位置の上方に回転移動して、反応容器105に試薬を吐出する。サンプルと試薬の吐出された反応容器105は、インキュベータディスク104の回転によって所定位置に移動し、サンプル分注チップ及び反応容器搬送機構106によって、反応容器攪拌機構108へと搬送される。反応容器攪拌機構108は、反応容器に対して回転運動を加えることで反応容器内のサンプルと試薬を攪拌し、混和する。攪拌の終了した反応容器は、サンプル分注チップ及び反応容器搬送機構106によって、インキュベータディスク104の所定位置に戻される。反応液吸引ノズル115は回転と上下移動が可能であり、インキュベータディスク104において、サンプルと試薬が分注され、所定の反応時間が経過した反応容器105の上方に移動し、下降し、反応容器105内の反応液を吸引する。反応液吸引ノズル115で吸引された反応液は、検出部ユニット116で分析される。反応液の吸引された反応容器105は、インキュベータディスク104の回転によって所定位置に移動し、サンプル分注チップ及び反応容器搬送機構106によって、インキュベータディスク105からサンプル分注チップ及び反応容器廃棄孔109の上方に移動し、廃棄孔から廃棄する。
【0021】
次いで、図2の検出流路の全体構成図を用いて、先ずは従来の分析フローについて、説明する。液体や空気を吸引或いは吐出するための反応液吸引ノズル115、測定対象物を検出するためのフローセル検出器202、液体や空気を吸引或いは吐出するための圧力差を発生させるためのシリンジ203とプランジャ215、液体や空気を排出するためのドレイン204が、ノズルとフローセル検出器の入口接続部205を連絡する第一流路206、フローセル検出器の出口接続部207から第一弁208を経由して分岐部209へと連絡する第二流路210、次いで分岐部209を経由してシリンジへと連絡する第三流路211、分岐部209から第二弁212を経由してドレイン204へと連絡する第四流路213を備える。この流路構成において、プランジャ215の上下動作および第一弁208と第二弁212の開閉切替えによって、反応液吸引ノズル114から液体や空気の吸引或いは吐出を実施する。この流路構成を含む分析装置における分析サイクルは、測定対象物を含む試料と、検出標識を含む試薬と磁性粒子を含む試薬を混合した反応液において、測定対象物と検出標識と磁性粒子の複合体を形成させ、反応液吸引ノズル114を反応液を保持する容器に挿入し、フローセル検出器202の出口接続部207から分岐部209との間に設けた第一弁208を開き、分岐部209からドレイン204との間に設けた第二弁212を閉じてシリンジ203のプランジャ215を吸引側に動作させ、反応液を吸引し、フローセル内で反応液中の上記複合体を磁気的に検出部201に吸着させ、反応液吸引ノズル114を反応液容器から取り出した状態で、シリンジ203のプランジャ215を吸引側に動作させ、反応液と次に吸引する検出反応試薬を隔てるための分節空気相を吸引する。次いで、第一弁208を閉じ、第二弁212を開いてシリンジ203のプランジャ215を吐出側に動作させ、分岐部209からシリンジ203を連絡する第三流路211に滞留する液体と気体をドレイン204へと排出し、(A)次の液体吸引への予備動作としてシリンジ203のプランジャ215を吸引側へ動作させる。次いで、反応液吸引ノズル114を検出反応試薬を保持する容器に挿入し、第一弁208を開き、第二弁212を閉じてシリンジ203のプランジャ215を吸引側に動作させ、検出反応試薬を吸引し、フローセル検出器202の検出部201に磁気的に吸着させた磁性粒子の表面から反応液成分を除去し、検出反応試薬に置換して検出反応を誘起し、当該検出をフローセル検出器202に接続した検出器214により検出反応信号を検出する。次いで、第一弁208を閉じ、第二弁212を開いてシリンジ203のプランジャ215を吐出側に動作させ、分岐部209からシリンジ203を連絡211する流路に滞留する液体と気体をドレイン204へと排出し、(B)次の液体吸引への予備動作としてシリンジ203のプランジャ215を吸引側へ動作させる。次いで、反応液吸引ノズル114を検出反応試薬容器から取り出した状態で、第一弁208を開き、第二弁212を閉じてシリンジ203のプランジャ215を吸引側に動作させ、検出反応試薬と次に吸引する洗浄試薬とを隔てる為の分節空気相を吸引する。次いで、反応液吸引ノズル114を洗浄試薬を保持する容器に挿入し、第一弁208を開き、第二弁212を閉じてシリンジ203のプランジャ215を吸引側に動作させ、洗浄試薬を吸引し、フローセル検出器202の検出部201を洗浄する。この際、反応液吸引ノズル114を洗浄試薬容器から取り出しと挿入を交互に繰り返すことによって、洗浄試薬と空気相を交互に繰り返して吸引し、検出部201の洗浄効率を向上させる。次いで、第一弁208を閉じ、第二弁212を開いてシリンジ203を吐出側に動作させ、分岐部209からシリンジを連絡する第三流路211に滞留する液体と気体をドレイン204へと排出し、(C)次の液体吸引への予備動作としてシリンジ203のプランジャ215を吸引側へ動作させる。次いで、反応液吸引ノズル114を洗浄試薬容器から取り出した状態で、第一弁208を開き、第二弁212を閉じてシリンジ203のプランジャ215を吸引側に動作させ、洗浄試薬と次に吸引する検出準備試薬とを隔てる為の分節空気相を吸引する。次いで、反応液吸引ノズル114準備試薬を保持する容器に挿入し、第一弁208を開き、第二弁212を閉じて、シリンジ203のプランジャ215を吸引側に動作させ、検出準備試薬を吸引する。次いで、反応液吸引ノズル114を反応液容器へと移動させて反応液へ挿入する直前に、(D)第一弁208を閉じ、第二弁212を開いてシリンジ203のプランジャ215を吐出側に動作させる予備動作を行ってから、第一弁208を開き、第二弁212を閉じて検出準備試薬と次に吸引する反応液との間への分節空気相の混入を排除する。これにより、次に吸引する反応液が、反応液吸引ノズル114からフローセル検出器202までの流路内で、検出準備試薬に対して反応液が効率的に拡散し、後の検出反応を促進する。(E)次いで反応液吸引に向けて、第一弁208を閉じ、第二弁212を開いてシリンジ203のプランジャ215を吸引側に動作させる予備動作を行う。
【0022】
以上の通り、従来の分析フローにおいては、シリンジのプランジャ駆動方向の反転に伴って、(A)〜(E)のプランジャ駆動の予備動作を必要としており、分析サイクル効率化の阻害要因となっている。
【0023】
プランジャ駆動量に基づく空転測定方法について説明する。図3のシリンジユニット構成図に示す通り、シリンジ203内の液体あるいは気体の吐出、またはシリンジ203内への液体あるいは気体の吸引は、プランジャ215を上下方向301に駆動することによって行われており、その駆動力はステッピングモーター302からギアおよびベルト303を経由してプランジャ215へと伝達されている。そして、フォトインタラプタ用の遮光板304がベルト303の所定位置に固定され、一方、基準位置となる非可動部に、遮光板304が通過し得るようにフォトインタラプタセンサ305が固定されており、プランジャ215の基準位置を検知することができる。
【0024】
以下にプランジャの基準位置を検知する為のフォトインタラプタセンサを利用した空転量測定におけるプランジャ位置模式図を図4に示す。(1)遮光板がフォトインタラプタセンサに挿入された基準位置401から、(2)遮光板がフォトインタラプタセンサから外れる位置402までプランジャを吐出方向に駆動した後に、(3)遮光板が再びフォトインタラプタセンサに挿入される位置403までプランジャを吸引方向に駆動する。この際、フォトインタラプタセンサによる検知(明から暗)によって即停止させる。(4)次いで、所定量パルス(a)405を付与して、付与パルスを全量消費して停止する位置404までプランジャを吸引方向に駆動する。(5)次いで、所定量パルス(b)406を付与して、フォトインタラプタセンサによる検知(明から暗)によって即停止する位置407までプランジャを吐出方向に反転駆動させる。この際の残存パルス数を(c)として、この値が正となるように上記の付与パルス量を配慮する。また、吸引方向のプランジャ移動におけるフォトインタラプタセンサによる停止位置と、吐出方向のプランジャ移動におけるフォトインタラプタセンサによる停止位置の補正を行うための補正パルス(e)408を設ける。この補正パルス(e)408は、遮光板のプランジャ駆動方向の長さ、フォトインタラプタセンサによる遮光板の検知感度、検知から停止までのディレイパルス量に主に依存する。
【0025】
以上より、プランジャ駆動量を基準とする空転量(α)は、以下の式(1)にて算出される。
【0026】
α=(b−c+e)−a …式(1)
次に、流路中における気液流れを利用して空転量を測定する方法を図5および図6を引用して説明する。
【0027】
図5は分析装置のフローセルを模式的に示したものであり、フローセル検出器は測定対象物質を含む溶液を流すための流路501および溶液入口502,溶液出口503を持つ。流路中に電極504を設置し、電圧印加・電流測定手段505によりあらかじめ定めた電圧を印加し、電極間に流れた電流を測定する。
【0028】
本構成による空転量測定の手順について、図6を引用して説明する。図6(A)は分析装置の流路構成のうち、本説明に関わる部分のみを抽出して簡略化した図である。簡略化した構成図は、ノズル601,フローセル602,ノズルとフローセルを接続する流路603,フローセル内流路604,電極605,電圧印加・電流測定手段606,シリンジ607,フローセルとシリンジを接続する流路608,試薬容器609から構成される。なおこの図ではノズル駆動手段を略しているが、ノズルは駆動手段により上下に駆動することが可能である。シリンジ駆動手段についても略されているが、シリンジは駆動手段により吸引および吐出動作を行うことが可能である。試薬容器中には電解質を含む試薬が入れられている。
【0029】
はじめに図6(B)に示す通り、ノズルを試薬溶液610の中に入れた状態(611に図示)でシリンジを吸引動作させ(612に図示)、流路全体を試薬溶液で満たす(613に図示)。
【0030】
電極間には電圧印加・電流測定手段により電圧を印加し、さらに電極間に流れる電流を測定する。
【0031】
次に図6(C)(D)に示す通り、ノズルを試薬容器から空中に持ち上げ(614に図示)、一定時間経過後にノズルを再度試薬容器内に入れる(615に図示)。この間シリンジは一定の速度で吸引動作を続けさせる。この操作により流路内に一定量の空気616が導入される。
【0032】
シリンジの吸引動作を続けると、図6(E)に示す通り、導入された空気が電極部に達する(617に図示)。この時電極間が空気で満たされるため、電流が流れなくなる。
【0033】
さらにシリンジ吸引動作を続けると、図6(F)に示す通り、空気の後に導入された試薬溶液が電極部に達し、電極間が試薬溶液に置き換わる(618に図示)。このため再度電流が流れ始める。空気が到達する前の電流値をあらかじめ記録し、空気通過後の電流値と比較することで、電極間から空気の末端が通り過ぎた時間を推定することができる。この時間をt1とする。
【0034】
次に図6(G)に示す通り、空気末端が電極部を通過したことを確認した後あらかじめ定めた時間(t2)だけさらにシリンジを吸引動作した後、シリンジをいったん停止させる(619に図示)。
【0035】
次に図6(H)に示す通り、シリンジを吐出方向に前記吸引動作と同じ速度で駆動させる(620に図示)。これによりいったん電極部を通り過ぎた空気が再度電極部に戻ってくる(621に図示)。電極間に空気が入り始めると、電流値が減少し始める。あらかじめ記録した電極間が溶液で満たされている場合の電流と比較し、シリンジを吐出方向に駆動し始めてから、電流の減少を検出するまでの時間をt3とする。
【0036】
次に上記操作により測定したt1,t2,t3から空転量を計算する方法を説明する。空気が電極部を通過してからさらにシリンジ側に進んだ時間は上記の通りt2で表される。この位置まで運ばれた空気が、シリンジの吐出動作により再度電極部まで運ばれるのに要した時間は上記の通りt3で表される。
【0037】
ここで仮に空転が存在せずシリンジの駆動量がすべて流体の駆動に使用される場合を仮定すると、t2とt3には差が生じない。しかし、実際にはシリンジには空転が存在するため、t2とt3に差が生じる。このt2とt3の差(t3−t2)が空転によりシリンジ動作が溶液駆動に伝達されなかった時間である。空気を吸引および吐出する際のシリンジのパルス速度をuとすると、空転量(α)は以下の式(2)で算出される。
【0038】
α=(t3−t2)/u …式(2)
上記αが流路中の気液流れの挙動を基準とした空転量となる。
【0039】
上記方法によって、分析処理前あるいは分析準備動作において算出した空転の値(α)を、シリンジ駆動方向反転後の吸引あるいは吐出のシリンジ駆動への付与パルス量に加味することにより、上述(A)〜(E)のシリンジ駆動の予備動作を省略し、分析性能の信頼性を確保しつつ、分析サイクルおよび処理能力の向上が図られる。
【符号の説明】
【0040】
100 分析装置
101 ラック
102 サンプル容器
103 サンプル分注ノズル
104 インキュベータディスク
105 反応容器
106 サンプル分注チップおよび反応容器搬送機構
107 サンプル分注チップおよび反応容器保持部材
108 反応容器攪拌機構
109 サンプル分注チップおよび反応容器廃棄孔
110 サンプル分注チップ装着位置
111 試薬ディスク
112 試薬ディスクカバー
113 試薬ディスクカバー開口部
114 試薬分注ノズル
115 反応液吸引ノズル
116 検出ユニット
117 ラック搬送ライン
118,609 試薬容器
201 検出部
202 フローセル検出器
203,607 シリンジ
204 ドレイン
205 フローセル検出器入口接続部
206 第一流路
207 フローセル検出器出口接続部
208 第一弁
209 分岐部
210 第二流路
211 第三流路
212 第二弁
213 第四流路
214 検出器
215 プランジャ
301 上下方向
302 ステッピングモーター
303 ベルト
304 遮光板
305 フォトインタラプタセンサ
401 遮光板がフォトインタラプタセンサに挿入された基準位置
402 遮光板がフォトインタラプタセンサから外れる位置
403 遮光板が再びフォトインタラプタセンサに挿入される位置
404 付与パルスを全量消費して停止する位置
405 所定量パルス(a)
406 所定量パルス(b)
407 フォトインタラプタセンサによる検知(明から暗)によって即停止する位置
408 補正パルス(e)
501 フローセル内流路
502 溶液入口
503 溶液出口
504,605 電極
505 電圧印加・電流測定手段
601 ノズル
602 フローセル
603 ノズルとフローセルを接続する流路
604 フローセル内流路
606 電圧印加・電流測定手段
608 フローセルとシリンジを接続する流路
610 試薬溶液
611,615 ノズルを試薬溶液に入れた状態
612 シリンジ吸引動作
613 電極間に試薬溶液が満たされた状態
614 ノズルを空中に出した状態
616 流路内に導入された空気
617 電極間が空気で満たされた状態
618 空気末端が電極部を通過した状態
619 シリンジ動作停止
620 シリンジ吐出動作
612 空気先端が電極部に到達した状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモーターを動力源とする駆動機構を備える分析装置において、その駆動機構がステッピングモーターの回転出力軸から、少なくとも一つ以上の動力伝達部を介して、目的動作を実施するための可動部に動力が伝達されるものであって、ステッピングモーターの駆動方向反転に伴う可動部の空転量を、可動部の移動量およびステッピングモーターへの付与パルス量と残存パルス量から算出し、これに基づいて駆動機構の動作制御を実施することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分析装置において、目的動作を実施するための可動部が、圧力差を発生させるシリンジとプランジャ、液体を分注するためのノズル、およびシリンジとノズルを接続する流路から構成される液体分注機構における、プランジャであることを特徴とする分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の分析装置において、目的動作を実施するための可動部が、圧力差を発生させるシリンジとプランジャ、液体を分注するためのノズル、およびシリンジとノズルを接続する流路から構成される液体分注機構における、流路中の液流体であることを特徴とする分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の分析装置において、可動部の移動量を計測するための手段が、基準位置となる非可動部および可動部の各々に備えられた少なくとも一対以上の光学的検出器によって、可動部と基準位置の相対的位置を検知する光学的手法であることを特徴とする分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の分析装置において、流路中の気液流体の移動量を計測するための手段が、流路内に備えた少なくとも一対以上の電極によって、気液流体の気体層と液体層の境界面の電流変化量として検知する為の電気化学的手法であることを特徴とする分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の分析装置において、流路中の気液流体の移動量を計測するための手段が、流路内に備えた少なくとも一対以上の光学的検出器よって、気液流体の気体層と液体層の境界面の光学的特性変化として検知する為の光学的手法であることを特徴とする分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の分析装置において、ステッピングモーターの駆動方向反転に伴う可動部の空転量に基づく駆動機構の制御方法が、ステッピングモーターの駆動方向反転後の動作に対して、可動部の空転量分を加味することを特徴とする分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate