説明

分析装置

【課題】 イムノクロマトグラフィ法を用い、人為的なミスが介入するおそれがなく、被検物質の検出またはその定量を高い信頼性をもって行うことのできる分析装置を提供すること。
【解決手段】 この分析装置は、被検物質によって呈色反応を生ずる反応領域および前記呈色反応に関連する情報を表すコード領域を同一表面上に有する試験片における当該反応領域および当該コード領域を含む分析領域を視野領域に含む撮影装置を具えており、前記反応領域における呈色の程度によって前記被検物質を検出するものにおいて、撮影装置によって第1の撮影条件で撮影された分析領域の画像をコード読み取り用画像データとして取得すると共に、第1の撮影条件とは異なる第2の撮影条件で撮影された分析領域の画像を被検物質検出用画像データとして取得する構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、イムノクロマトグラフィ法を利用した被検物質の検出または定量に用いられる分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば診察室や病棟などの「患者の近いところ」で行われるポイントオブケア検査(POCT)の手法として、イムノクロマトグラフィ法(免疫学的クロマトグラフィー法)が注目されており、このようなイムノクロマトグラフィ法を用いたPOCT用の分析装置においては、煩雑な操作を要さず短時間で信頼性の高い測定を行うことのできるものが求められている。
【0003】
一方、このようなPOCTにおいて用いられるイムノクロマトグラフィ試験片(ストリップ)は、試薬の調整を必要とせず、血液や尿などの被検査液を当該試験片上に滴下するなどの簡単な操作のみでその中の被検物質を分析することが可能であり、被検査液中の被検物質を簡便かつ迅速に分析するのに非常に有用であるため、現在多数のものが実用化されている。
【0004】
イムノクロマトグラフィ試験片には、通常、ロット毎の試薬のバラツキ等による反応性を補正するために当該試験片に応じた検量線情報が付加されているが、検量線情報が例えば磁気カードなどにより提供されている場合には、ロットの異なる磁気カードを誤って使用してしまい不正確な測定結果となるおそれがあることから、試験片における反応領域とは別個に、例えば試験片に固有の検量線情報を表した例えば二次元コードなどによるコード領域を設けることなどによって、試験片自体に保持されていることが望ましい。
しかしながら、このような試験片が用いられる場合には、分析装置においては、反応領域における呈色の程度を検出するためのセンサと、コード領域に表されたコードを読み取るためのセンサの複数のセンサを備えた構成とされていること、あるいは、一のセンサにより反応領域における呈色の程度の検出およびコード領域に表されたコードの読み取りを行うために、試験片およびセンサの一方を他方に対して相対的に移動させる機構が設けられた構成とされていることが必要となるため、分析装置の構造が複雑になり、コスト的に有利に製造することができない。
【0005】
このような問題に対して、被検物質によって呈色反応を生ずる反応領域およびビットパターンによるコードが表示されたコード領域を有する試験片における当該反応領域および当該コード領域を含む分析領域を視野領域に含む撮像素子を具えてなる分析装置において、試験片の反応領域とコード領域とを同時に撮像することにより、コード領域におけるビットパターンによって表された情報を取得すると共に反応領域における呈色の程度を検出する構成のものが提案されている(特許文献1参照。)。
この分析装置においては、磁気カードやICカードに記録された、試験片のビットパターンに対応する各種の情報(ロット情報、有効期限情報、検量線情報等)を予め読み込ませておき、撮像素子によって撮像された画像から取得されるビットパターンに基づいて、当該試験片についての検量線情報などを取得し、取得された画像における反応領域の呈色程度に応じた被検物質の濃度が検量線情報に基づいて算出される。また、コード領域に表れたビットパターンを試験片の有効期限情報を含むものとすることにより、試験片の有効期限をチェックすることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−266882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、試験片における反応領域およびコード領域は、互いに明度に差があるため、試験片の反応領域とコード領域とを同一の条件で撮像している上記の分析装置においては、反応領域における呈色の程度を検出するために適正な明るさに調整された撮影条件で取得された画像においては、コード領域に表れたビットパターンを適正に読み取ることができず、一方、コード領域に表れたコードを読み取るために適正な明るさに調整された撮影条件で取得された画像においては、反応領域が暗くなりすぎるため、被検物質の検出を高い信頼性で行うことができない、という問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、例えばイムノクロマトグラフィ法を用いた分析装置において、被検物質の検出またはその定量を高い信頼性をもって行うことのできる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の分析装置は、被検物質によって呈色反応を生ずる反応領域および前記呈色反応に関連する情報を含むコードが表示されるコード領域を同一表面上に有する試験片における当該反応領域および当該コード領域を含む分析領域を視野領域に含む撮影装置を具えており、前記反応領域における呈色の程度によって前記被検物質を検出する分析装置において、
前記撮影装置によって第1の撮影条件で撮影された前記分析領域の画像がコード読み取り用画像データとして取得されると共に、当該第1の撮影条件とは異なる第2の撮影条件で撮影された前記分析領域の画像が被検物質検出用画像データとして取得されることを特徴とする。
【0010】
本発明の分析装置においては、前記第2の撮影条件は、前記第1の撮影条件より露光量が大きく設定されていることが好ましい。
具体的には、前記第2の撮影条件は、前記第1の撮影条件より露光時間が長く設定されることにより露光量が大きく設定されていること、あるいは、前記分析領域を照明する照明装置による前記分析領域における照度が前記第1の撮影条件より高く設定されることにより露光量が大きく設定された構成とすることができる。
【0011】
また、本発明の分析装置においては、前記試験片におけるコード領域に表示されたコードが、前記反応領域における呈色の程度と前記被検物質の濃度との関係を示す検量線に係る検量線情報を含むものであり、
前記コード読み取り用画像データより取得される当該検量線情報に基づいて、前記被検物質検出用画像データより前記被検物質の濃度を算出する濃度算出機構をさらに具えた構成とされていることが好ましい。
【0012】
さらにまた、本発明の分析装置においては、前記試験片におけるコード領域に表示されたコードが、前記反応領域における呈色状態が検出可能となる反応時間に係る反応時間情報を含むものであり、
前記試験片がセットされたことが検出されてから前記コード読み取り用画像より取得される前記反応時間が経過した後に、前記撮影装置によって前記第2の撮影条件で前記分析領域の画像が撮影される構成とされていることが好ましい。
【0013】
さらにまた、本発明の分析装置においては、前記撮影装置は、CMOSイメージセンサを具えてなるものであることが好ましい。
【0014】
本発明の分析装置は、イムノクロマトグラフィ法により生体成分中の被検物質を定量分析するために好適に用いられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の分析装置によれば、試験片における反応領域およびコード領域を含む分析領域を含む視野領域を有する撮影装置によって、試験片における分析領域について、試験片におけるコード領域に最適な第1の撮影条件で撮影された画像および試験片における反応領域に最適な第2の撮影条件で撮影された画像が、それぞれ、コード読み取り用画像データおよび被検物質検出用画像データとして取得されるので、極めて簡素な構成のものでありながら、コード領域に表示されたコードに含まれる情報の不読や誤読を回避することができると共に反応領域における呈色状態を高い信頼性をもって分析することができる。
また、必要な情報がコード領域に表示されるコードに含まれていることにより、使用者による情報入力などにおいて人為的ミスが介入するおそれがないので、この点においても、所要の分析を容易にかつ高い信頼性で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の分析装置の一例における外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の分析装置において用いられるイムノクロマトグラフィ試験片の一例における構成の概略を示す平面図である。
【図3】本発明の分析装置における検出部の構成の概略を示す斜視図である。
【図4】本発明の分析装置の動作フロー図である。
【図5】第1の撮影条件で撮影された画像データ(コード読み取り用画像データ)の一例を示す図である。
【図6】図5に示す画像データにおける検体の展開方向の輝度プロファイルの一例を示すグラフである。
【図7】第2の撮影条件で撮影された画像データ(被検物質検出用画像データ)を示す図である。
【図8】図7に示す画像データにおける検体の展開方向の輝度プロファイルの一例を示すグラフである。
【図9】コード領域に表示されたコードに含まれる検量線情報としての、被検物質濃度と呈色部分濃度の関係を示す検量線の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の分析装置は、例えばイムノクロマトグラフィ法により生体成分中の被検物質を定量分析するために用いられるものである。
図1は、本発明の分析装置の一例における外観を示す斜視図である。図1において、11は電源スイッチ、12は分析すべき検体に係るID情報などを入力すると共に動作指令信号を入力するタッチパネルである。13は試験片挿入口であって、検体に含まれる被検物質によって呈色反応を生ずる反応領域および呈色反応に関連する情報を含むコードが表示されたコード領域を同一表面上に有するストリップ状のイムノクロマトグラフィ試験片(以下、単に「試験片」という。)が、反応領域およびコード領域を有する表面が上方を向いた状態で、水平な姿勢で挿入される。
【0018】
試験片20は、図2に示すように、例えば濾紙などの多孔質支持体21(図2においては便宜上斜線が付してある)がケース20Aの内部に収容され、各々多孔質支持体21を外部に露出させる2箇所の開口部22A、22Bが検体の展開方向(図2において白抜きの矢印で示す。)に離間した位置に形成されて構成されている。そして、一方の開口部22Aにより検体滴下部23が構成されていると共に他方の開口部22Bにより読み取り部24が構成されている。多孔質支持体21の、ケース20Aにおける他方の開口部22Bを介して外部に露出される表面領域には、例えば標識抗体、および、被検物質に応じた抗体または抗原が、検体の展開方向と直交する方向(図2において上下方向)に延びるライン状に固定化されており、これにより、反応領域Rが形成されている。
また、検体の展開方向における読み取り部24の下流側の位置には、例えばQRコード(登録商標)などの二次元コード25が設けられており、これにより、コード領域Cが形成されている。
二次元コード25に含まれる情報としては、例えば分析項目、有効期限、ロット番号などの試験片20の基本情報、および、例えば反応時間、検量線などの試験片20に固有の呈色反応に関連する情報などを例示することができる。
【0019】
この分析装置における検出部は、図3に示すように、試験片20の有無を検出する試験片検出用センサ30と、試験片20が適正な位置にセットされた状態において、試験片20における反応領域Rおよびコード領域Cを含む分析領域を視野領域(図2において二点鎖線で示す。)Sに含む撮影装置40と、少なくとも試験片20における視野領域Sを含む領域(照明領域、図2において破線で示す。)Lを照明する照明装置50と、試験片検出用センサ30、撮影装置40および照明装置50の各々の動作を制御する制御手段(図示せず)とを具えている。
試験片検出用センサ30としては、例えばフォトインタラプタなどを用いることができる。
【0020】
撮影装置40は、試験片20の分析領域による反射光を受光して試験片20の分析領域全体における光強度分布像を撮影するものであり、例えばCMOS(Complementary Metal- Oxide Semiconductor)イメージセンサ41よりなる撮影素子を具えてなるものにより構成されていることが好ましい。
【0021】
照明装置50としては、例えば、試験片20が標識として金コロイドが用いられたものである場合には、被検物質によって例えばピンク色に呈色することから、例えば発光ピーク波長が525nm付近にある緑色光を発するLED51を光源として具えてなるものであることが好ましい。ここに、照明装置50における光源としては、反応領域における呈色部分(ライン)の呈色濃度とのコントラストが大きくなる色光を照射するものであればよく、例えば半導体レーザーや、ランプとバンドパスフィルターが組み合わされたものなどにより構成されていてもよい。
照明装置50による照明領域Lの大きさは、例えば照明装置50の試験片20の表面に対する配置位置(離間距離)によって調整することができる。
【0022】
制御手段は、撮影装置40による撮影条件を調整して互いに異なる第1の撮影条件および第2の撮影条件で撮影した、試験片20における分析領域についての2つの画像データを、第1の撮影条件によるものをコード読み取り用画像データ、第2の撮影条件によるものを被検物質検出用画像データとして取得し、各々の画像データを分析する機能を有する。
コード読み取り画像データおよび被検物質検出用画像データは、例えば0〜255の256階調の濃淡画像で表現されるものであって、例えば、反応領域Rおよびコード領域Cに係る最大階調部が、それぞれ、例えば200から250の範囲内であれば、コード領域Cにおいて表示される情報の読み取り、および、反応領域Rの呈色状態の読み取りを適正に行うことができる。
また、制御手段は、コード読み取り用画像データより取得される検量線情報に基づいて、被検物質検出用画像データより被検物質の濃度を算出する濃度算出機構を具えている。
【0023】
撮影装置40による撮影条件を調整する手法としては、例えば、撮影装置40におけるCMOSイメージセンサ41の電子シャッターのシャッタースピード(シャッター時間)を制御することにより露光時間を調整し、これにより、露光量(CMOSイメージセンサ41に受光される光の光量)を調整する方法、あるいは、照明装置50におけるLED51の発光量を制御することにより露光量を調整する方法などを用いることが好ましい。ここに、露光時間を調整して露光量を調整する方法としては、例えば、CMOSイメージセンサ41のゲイン(感度)または絞りを調整する方法もあるが、CMOSイメージセンサ41のゲインを大きくして露光量を大きくするとノイズが増え、また、絞りを変えると写り方が変化するため、CMOSイメージセンサ41の電子シャッターのシャッタースピード(シャッター時間)を制御することにより露光時間を調整する方法が望ましい。
【0024】
撮影装置40による第1の撮影条件は、試験片20の分析領域におけるコード領域Cの撮影に最適な明るさとなるよう設定されており、具体的には例えば、2次元コード25の周辺の最も明るい箇所がCMOSイメージセンサ41の最大階調を超えないよう、CMOSイメージセンサ41の電子シャッターのシャッタースピード(露光時間)および/または照明装置50におけるLED51の発光量の大きさ、すなわちCMOSイメージセンサ41に対する露光量の大きさが設定されている。
【0025】
撮影装置40による第2の撮影条件は、試験片20の分析領域における反応領域Rの撮影に最適な明るさとなるよう設定されており、具体的には例えば、露光量が第1の撮影条件より大きくなる条件、反応領域Rにおける呈色した箇所(検出ラインおよびコントロールライン)以外の最も明るい箇所がCMOSイメージセンサ41の最大階調を超えない範囲内において、CMOSイメージセンサ41の電子シャッターのシャッタースピード(露光時間)および/または照明装置50におけるLED51の発光量の大きさが、第1の撮影条件より大きくなる条件に設定されている。
第2の撮影条件におけるCMOSイメージセンサ41に対する露光量は、第1の撮影条件におけるCMOSイメージセンサ41に対する露光量の例えば1.3倍程度である。
【0026】
以上において、CMOSイメージセンサ41の電子シャッターのシャッタースピードの調整は、例えばCMOSカメラモジュールの動作条件を変更することにより行うことができる。
また、LED51の発光量の調整は、例えばLED51に対する供給電流の大きさを変更することにより行うことができる。
【0027】
以下、上記の分析装置の動作について説明する。
分析装置の電源スイッチ11が投入されると、タッチパネル12にメニュー画面が表示されて測定可能な状態とされる。
図4に示すように、タッチパネル12において分析開始ボタンを押すと(S1)、分析すべき検体に係るID情報の入力画面となり、タッチパネル12を操作して当該ID情報を入力する(S2)。その後、試験片20における検体滴下部23に検体を滴下して試験片20を試験片挿入口13にコード領域C側から挿入する。
【0028】
検出部における試験片検出用センサ30によって試験片20がセットされたことが検出されると(S3)、制御手段によって第1の撮影条件に調整された状態において、撮影装置40によって試験片20における分析領域の画像が撮影され、当該画像がコード領域Cに設けられた二次元コード25に表示された情報を検出するためのコード検出用画像データとして取得される(S4)。第1の撮影条件で撮影された画像データ(コード読み取り用画像データ)の一例を図5に示すと共に、図5に示す画像データにおける検体の展開方向の輝度プロファイルの一例を図6に示す。ここに、コード読み取り用画像データは、コード領域(c−d−e―h線包囲部分)に対応する画素(ピクセル)においては、二次元コードに表れた情報を適正に読み取るための十分な出力(最大階調部が225程度の濃度)が得られ、反応領域(a−b−f−g線包囲部分)に対応する画素においては、被検物質の検出を高い信頼性で行うための十分な出力が得られず、全体的に暗い画像(最大階調部が180程度の濃度)であることが図5および図6から理解される。
【0029】
また、コード読み取り用画像データの画像解析においては、CMOSイメージセンサ41の視野領域S内における、試験片20が適正な位置にセットされた状態において2次元コード25が位置されるべき領域を含む所定の大きさの領域が解析領域A1として設定されており、試験片20のコード領域Cが解析領域A1内に位置されているか否かの判定処理が行われる。そして、試験片20の2次元コード25が解析領域A1内に位置されていないことが確認された場合には、試験片20が適正な位置にセットされていないと判断されて使用者に報知される。従って、試験片20が適正に挿入されていないことにより、実際には、試験片20の反応領域RがCMOSイメージセンサ41の視野領域S内に位置されていないにも拘らず、CMOSイメージセンサ41よりの出力に基づいて分析を行い、分析を完了してしまうといった問題が生ずることを回避することができる。
【0030】
次いで、取得されたコード検出用画像データの解析領域A1におけるコード領域Cについて適宜の画像解析が制御手段によって行われることにより(S5)、二次元コード25に表示された当該試験片20に固有の情報、例えば反応領域Rにおける呈色状態が検出可能となる反応時間に係る反応時間情報、検体に含まれる被検物質の濃度を算出(定量)するための検量線に係る検量線情報などが読み取られてメモリに記録される。
【0031】
そして、試験片20がセットされたことが検出されてからの経過時間が、取得された反応時間情報に係る反応時間を超えたことが制御手段によって検出されると(S6)、撮影装置40による撮影条件を第2の撮影条件に変更して試験片20における分析領域の画像が撮影装置40によって撮影され、当該画像が反応領域Rにおける呈色の状態を検出するための被検物質検出用画像データとして取得される(S7)。第2の撮影条件で撮影された画像データ(被検物質検出用画像データ)の一例を図7に示すと共に、図7に示す画像データにおける検体の展開方向の輝度プロファイルの一例(図6と同一の画素によるもの)を図8に示す。ここに、被検物質検出用画像データは、反応領域(a−b−f−g線包囲部分)に対応する画素においては、被検物質の検出を高い信頼性で行うための十分な大きさの出力(最大階調部が240程度の濃度)が得られ、コード領域(c−d−e―h線包囲部分)に対応する一部の画素の出力が、CMOSイメージセンサ41の最大階調を超える(露出オーバーする)大きさとなるものであることが理解される。上記の分析装置においては、撮影素子としてCMOSイメージセンサ41が用いられることにより、例えばCCDイメージセンサにおいて生ずる「スミア」と称される撮影素子の内部で発生する電荷のオーバーフローに起因するノイズが生ずることを抑制することができるため、反応領域Rに対応する画素の出力に影響を及ぼすことはない。
【0032】
取得された被検物質検出用画像データの解析領域A2における試験片20の反応領域Rについて適宜の画像解析が制御手段によって行われることにより、反応領域Rにおいて例えばライン状に表れる呈色部分の光学的濃度が算出される(S8)。
その後、図9に示すように、コード読み取り用画像データより取得された検量線情報に係る検量線に基づいて、上記において算出された呈色部分の光学的濃度Yに応じた被検物質の濃度Xが算出され(S9)、その結果が分析結果としてタッチパネル12に表示される(S10)。
【0033】
而して、上記の分析装置によれば、試験片20における反応領域Rおよびコード領域Cを含む分析領域を含む視野領域Sを有する撮影装置40によって、試験片20における分析領域について、試験片20におけるコード領域Cに最適な第1の撮影条件で撮影された画像および試験片20における反応領域Rに最適な第2の撮影条件で撮影された画像が、それぞれ、コード読み取り用画像データおよび被検物質検出用画像データとして取得されるので、極めて簡素な構成のものでありながら、コード領域Cにおける二次元コード25に表示された情報の不読や誤読を回避することができると共に反応領域Rにおける呈色状態を高い信頼性をもって分析することができる。
また、必要な情報がコード領域Cにおける二次元コード25に含まれていることにより、使用者による情報入力などにおいて人為的ミスが介入するおそれがないので、この点においても、所要の分析を容易にかつ高い信頼性で行うことができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、本発明の分析装置において用いられる試験片は、反応領域とコード領域が検体の展開方向に離間して並んだ位置に配置された構成のものである必要はなく、撮影素子の視野領域内に反応領域とコード領域とが位置されるよう互いに近接した位置に配置された構成のものであればよい。
また、検出部における照明装置の配置位置および姿勢、並びに、撮影装置の配置位置および姿勢などの具体的構成は適宜に変更することができる。
【符号の説明】
【0035】
11 電源スイッチ
12 タッチパネル
13 試験片挿入口
20 イムノクロマトグラフィ試験片(試験片)
20A ケース
21 多孔質支持体
22A、22B 開口部
23 検体滴下部
24 読み取り部
25 二次元コード
30 試験片検出用センサ
40 撮影装置
41 CMOSイメージセンサ(撮影素子)
50 照明装置
51 LED
C コード領域
R 反応領域
S 視野領域
L 照明領域
A1,A2 解析領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物質によって呈色反応を生ずる反応領域および前記呈色反応に関連する情報を含むコードが表示されるコード領域を同一表面上に有する試験片における当該反応領域および当該コード領域を含む分析領域を視野領域に含む撮影装置を具えており、前記反応領域における呈色の程度によって前記被検物質を検出する分析装置において、
前記撮影装置によって第1の撮影条件で撮影された前記分析領域の画像がコード読み取り用画像データとして取得されると共に、当該第1の撮影条件とは異なる第2の撮影条件で撮影された前記分析領域の画像が被検物質検出用画像データとして取得されることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記第2の撮影条件は、前記第1の撮影条件より露光量が大きいことを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記第2の撮影条件は、前記第1の撮影条件より露光時間が長いことを特徴する請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記分析領域を照明する照明装置をさらに具えており、
前記第2の撮影条件は、前記第1の撮影条件より前記分析領域における照度が高いことを特徴する請求項2または請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記試験片におけるコード領域に表示されたコードが、前記反応領域における呈色の程度と前記被検物質の濃度との関係を示す検量線に係る検量線情報を含むものであり、
前記コード読み取り用画像データより取得される当該検量線情報に基づいて、前記被検物質検出用画像データより前記被検物質の濃度を算出する濃度算出機構をさらに具えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の分析装置。
【請求項6】
前記試験片におけるコード領域に表示されたコードが、前記反応領域における呈色状態が検出可能となる反応時間に係る反応時間情報を含むものであり、
前記試験片がセットされたことが検出されてから前記コード読み取り用画像より取得される前記反応時間が経過した後に、前記撮影装置によって前記第2の撮影条件で前記分析領域の画像が撮影されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の分析装置。
【請求項7】
前記撮影装置は、CMOSイメージセンサを具えてなることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の分析装置。
【請求項8】
イムノクロマトグラフィ法により生体成分中の被検物質を定量分析するために用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−225864(P2012−225864A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95810(P2011−95810)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】