説明

分析装置

【課題】試料カップに収容することに適さない有機物試料であっても容易に分析することができる分析装置を提供する。
【解決手段】分析装置1は、加熱炉2と、試料保持手段4と、キャリヤガス導入手段36と、分離手段5と、検出手段6とを備える。試料保持手段4は、有機物試料を保持して加熱炉2の加熱位置に挿入する管状部材45と、キャリヤガスを管状部材45に案内するキャリヤガス案内路46とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物試料の組成や微細構造を解析するために、該有機物試料を加熱することにより生成する気相成分を分析することが行われている。このような分析に用いられる装置として、例えば図4に示す分析装置1が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
分析装置1は、上下方向に備えられた筒状の加熱炉2と、接続手段3と、試料保持手段4と、分離手段5と、検出手段6とを備えている。加熱炉2は、外周部にヒータ22を備えると共に、上端部に接続手段3が設けられている。
【0004】
接続手段3は、加熱炉2と試料保持手段4とを接続する部材であり、内周側に試料保持手段4に保持された有機物試料が挿通される貫通孔35を備えると共に、貫通孔35にキャリヤガスを導入するキャリヤガス導入口36を備えている。試料保持手段4は、サンプラー本体41と、サンプラー本体41に取着されたロッド48とを備え、ロッド48の先端には前記有機物試料を収容する試料カップ49が設けられている。
【0005】
分析装置1では、サンプラー本体41を接続手段3に接続することにより、試料カップ49に収容された前記有機物試料を加熱炉2に挿入し、ヒータ22で加熱することにより、複数の気相成分を生成させる。生成された気相成分は、キャリヤガス導入口36から導入されるキャリヤガスにより分離手段5に案内されて、個々の気相成分に分離され、検出手段6により検出される。
【0006】
前記有機物試料の加熱は、プラスチック等の高分子体の場合には、該有機物試料を熱分解させて複数の気相成分を生成させるようにすることができる。或いは、まず、前記プラスチックに含まれる低分子成分が気化される程度の温度に加熱して該低分子成分からなる複数の気相成分を生成させた後、さらに高温に加熱して該プラスチックを熱分解することにより複数の気相成分を生成させるようにしてもよい。
【0007】
ところで、前記有機物試料には、前記試料カップ49に収容することに適さないものがある。例えば、前記有機物試料自体が気体である場合、あるいは該有機物試料を反応試薬と反応させて反応生成物を分析しようとする場合等には、該有機物試料を試料カップ49に収容することが難しい。
【0008】
そこで、前記有機物試料自体が気体である場合には、活性炭等の吸着剤に該有機物試料を吸着させ、該吸着剤を加熱炉2内で加熱することにより、該吸着剤にから該有機物試料を熱脱着させて複数の気相成分を得ることが考えられる。
【0009】
また、前記有機物試料を反応試薬と反応させて反応生成物を分析しようとする場合には、該有機物試料と反応試薬とをガラス製カプセルに封入して加熱炉2内で加熱することにより反応させる方法が知られている。この場合、反応後に加熱炉2内で前記ガラス製カプセルを破壊することにより、反応生成物の複数の気相成分を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−82434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記吸着剤又は前記ガラス製カプセルを用いる場合、分析後に該吸着剤や破壊された該ガラス製カプセルの残骸を加熱炉2から回収することが難しいという不都合がある。
【0012】
そこで、本発明は、かかる不都合を解消して、試料カップに収容することに適さない有機物試料であっても容易に分析することができる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明は、有機物試料を加熱して複数の気相成分を生成する筒状の加熱炉と、該有機物試料を保持して、該加熱炉の一方の端部から該加熱炉の加熱位置に挿入する試料保持手段と、キャリヤガスを該加熱炉に導入するキャリヤガス導入手段と、該加熱炉の他方の端部に接続され該キャリヤガスにより導入される該複数の気相成分を個々の気相成分に分離する分離手段と、該分離手段に接続され該分離手段により分離された個々の気相成分を検出する検出手段とを備える分析装置において、該試料保持手段は、該有機物試料を保持して該加熱炉の加熱位置に挿入する管状部材と、該キャリヤガス導入手段により導入されるキャリヤガスを該管状部材に案内するキャリヤガス案内手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の分析装置では、試料カップに収容することに適さない有機物試料を前記管状部材に保持させ、該管状部材を前記試料保持手段に取着することにより、該有機物試料を前記加熱炉に挿入し、加熱位置に配置する。そして、前記管状部材に保持させた前記有機物試料を前記加熱位置で加熱することにより、該管状部材内で複数の気相成分を生成させることができる。
【0015】
このとき、本発明の分析装置では、前記キャリヤガス導入手段により導入されるキャリヤガスが、前記キャリヤガス案内手段を介して前記管状部材に案内される。そこで、前記管状部材内で生成した前記複数の気相成分は、前記キャリヤガスにより前記加熱炉内に導入され、さらに前記分離手段に導入される。この結果、前記複数の気相成分を前記分離手段により個々の気相成分に分離し、前記検出手段により検出することができる。
【0016】
また、前記複数の気相成分の検出が終了した後には、前記管状部材により、前記有機物試料を保持させた媒体を回収することができる。
【0017】
本発明の分析装置において、前記管状部材は、両端部が開放されていると共に内部に前記有機物試料を吸着する吸着剤が充填されているものを用いることができる。前記管状部材によれば、一方の端部から吸引することにより、他方の端部から気体状態の有機物試料を該管状部材内に導入し、前記吸着剤に吸着させることにより捕捉することができる。
【0018】
前記管状部材は、前記試料保持手段に取着されて前記加熱炉に挿入されたときに、該熱炉炉内で加熱されることにより、前記吸着剤に吸着されている有機物試料を熱脱着させて複数の気相成分を生成させる。このとき、前記管状部材には、前記キャリヤガス案内手段を介してキャリヤガスが案内されているので、生成した複数の気相成分を該キャリヤガスにより該加熱炉内に導入することができる。前記複数の気相成分は、さらに、前記加熱炉内を介して前記分離手段に導入される。
【0019】
前記吸着剤は、前記複数の気相成分が前記分離手段に導入された後も、前記管状部材に充填された状態を保持しており、該管状部材と共に前記加熱炉から除去することができる。
【0020】
また、本発明の分析装置において、前記管状部材は、一方の端部が開放されていると共に、他方の端部に試料収容部が着脱自在に取着されるものを用いることもできる。前記試料収容部は、前記有機物試料と反応試薬とが封入されたガラス製カプセルを収容する有底筒状体であって底部に気相成分の流通可能な貫通孔を備えている。
【0021】
この場合、前記試料保持手段は、前記管状部材内部で前記試料収容部方向に前進して該ガラス製カプセルを破壊するカプセル破壊部材を備えている。
【0022】
前記管状部材は、前記試料保持手段に取着されて前記加熱炉に挿入されたときに、該熱炉炉内で加熱されることにより、前記ガラス製カプセルに封入されている前記有機物試料が前記反応試薬と反応し、反応生成物が得られる。前記反応生成物は、そのまま気化され、或いはさらに熱分解されることにより、複数の気相成分が生成する。
【0023】
前記複数の気相成分は、前記試料保持手段のカプセル破壊部材を前記試料収容部方向に前進させ、前記ガラス製カプセルを破壊することにより、該ガラス製カプセルから放出される。このとき、前記管状部材は、前記管状部材には、前記キャリヤガス案内手段を介してキャリヤガスが案内されているので、生成した複数の気相成分を該キャリヤガスにより、前記試料収容部の貫通孔から該加熱炉内に流出させることができる。前記複数の気相成分は、さらに、前記加熱炉内を介して前記分離手段に導入される。
【0024】
前記ガラス製カプセルの残骸は、前記複数の気相成分が前記分離手段に導入された後も、前記試料収容部に収容されたままとなっており、前記管状部材と共に前記加熱炉から除去することができる。
【0025】
本発明の分析装置では、前記管状部材の各態様に応じて、前記試料保持手段を交換する場合、個々の試料保持手段に前記キャリヤガス導入手段及び前記キャリヤガス案内手段を設けてもよい。しかし、加熱炉側に前記キャリヤガス導入手段を設ける一方、個々の試料保持手段に前記キャリヤガス案内手段を設けて、該キャリヤガス導入手段と該キャリヤガス案内手段とを接続することができれば、個々の試料保持手段に対し該キャリヤガス導入手段を共通化することができ有利である。
【0026】
そこで、本発明の分析装置は、前記加熱炉の一方の端部に設けられ、前記加熱炉と前記試料保持手段とを接続すると共に、内周側に該試料保持手段に保持された該有機物試料が挿通される貫通孔と、該貫通孔に開口して該貫通孔内にキャリヤガスを導入する前記キャリヤガス導入手段とを備える接続手段を備え、前記試料保持手段は、該接続手段の該貫通孔に間隙を存して嵌合されると共に前記管状部材が取着される嵌合部材を備え、前記キャリヤガス案内手段は、該嵌合部材の外周面に開口し、該嵌合部材に取着された該管状部材の端部に該キャリヤガスを案内するキャリヤガス案内路とを備え、該接続手段又は該試料保持手段は、該貫通孔の内周面と該嵌合部材との間隙に設けられ、該キャリヤガス導入手段及び該キャリヤガス案内路の開口部より該加熱炉に近い側で該間隙を封止して、該キャリヤガス導入手段により該貫通孔に導入されるキャリヤガスを該キャリヤガス案内路に供給する封止部材を備えることが好ましい。
【0027】
この場合、前記試料保持手段は、前記嵌合部材に前記管状部材が取着されている状態で、該管状部材を前記接続手段の貫通孔に挿通し、該嵌合部材が該貫通孔に嵌合されることにより該接続手段に装着される。このとき、前記キャリヤガス案内手段は、前記嵌合部材の外周面に開口するキャリヤガス案内路を備えている。また、前記貫通孔の内周面には前記キャリヤガス導入手段が開口している。
【0028】
一方、前記貫通孔の内周面と前記嵌合部材の外周面との間には間隙があり、前記キャリヤガス導入手段の開口部と、前記キャリヤガス案内路の開口部とは、相互に接続されていない。しかし、前記間隙には、前記キャリヤガス導入手段及び前記キャリヤガス案内路の開口部よりも前記加熱炉に近い側で該間隙を封止する封止部材が備えられている。
【0029】
この結果、前記キャリヤガス導入手段により前記貫通孔に導入されたキャリヤガスは、該貫通孔から前記加熱炉に直接流入することが前記封止部材により阻止され、前記キャリヤガス案内路に流入することとなる。従って、前記キャリヤガス案内路により、前記キャリヤガスを前記管状部材内部に案内することができる。
【0030】
尚、前記封止部材は、前記貫通孔の内周面と前記嵌合部材の外周面との間隙に配設されていればよく、前記接続手段又は前記試料保持手段のどちらに設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の分析装置の一実施形態を示す説明的断面図。
【図2】図1に示す分析装置に用いられる試料保持手段の一構成例を示す説明的断面図。
【図3】図1に示す分析装置に用いられる試料保持手段の他の構成例を示す説明的断面図。
【図4】従来の分析装置の一形態を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0033】
図1に示すように、本実施形態の分析装置1は、筒状の加熱炉2と、接続手段3と、試料保持手段4と、分離手段5と、検出手段6とを備えている。
【0034】
加熱炉2は、石英管からなり、ハウジング21内に上下方向に備えられると共に、外周部に設けられたヒータ22を備えている。また、加熱炉2は、その内部に上端部に連接する大径部23と、テーパ部24を介して大径部23の下部に連接する小径部25とを備えている。
【0035】
接続手段3は、加熱炉2の上端部外周側に装着される第1の管状部31と、ハウジング21上に載置されるフランジ部32を介して第1の管状部31に連接する第2の管状部33とを備えている。第2の管状部33は、外周面に雄ねじ部34を備えると共に、内周側には上方から下方に向かって次第に縮径するテーパ状貫通孔35を備えている。テーパ状貫通孔35は、加熱炉2の大径部23の内周側に開口している。
【0036】
また、第2の管状部33は、雄ねじ部34とフランジ部32との間にキャリヤガス導入手段としてのキャリヤガス導入口36を備え、キャリヤガス導入口36は管壁を貫通して内周面のテーパ状貫通孔35に開口している。キャリヤガス導入口36には、図示しないキャリヤガス源から、ヘリウム、窒素等のキャリヤガスが供給される。
【0037】
試料保持手段4は、柱状のサンプラー本体41と、サンプラー本体41の先端部に連接されサンプラー本体41より大径の筒状部42とを備えている。筒状部42は内周側に雌ねじ部43を備える袋ナット状となっており、雌ねじ部43が接続手段3の雄ねじ部34に螺合されることにより着脱自在とされている。
【0038】
サンプラー本体41の先端部には、接続手段3のテーパ状貫通孔35の形状に沿う円錐状の嵌合部材44が備えられており、嵌合部材44はテーパ状貫通孔35に間隙を存して嵌合されるようになっている。また、嵌合部材44には、金属製細管からなる管状部材45が着脱自在に取着されるようになっている。管状部材45は、内部に有機物試料を保持すると共に、テーパ状貫通孔35に挿通され、該有機物試料を加熱炉2の加熱位置である大径部23に挿入する。
【0039】
本実施形態の分析装置1では、管状部材45の内部に有機物試料が保持されているので、該有機物試料から生成した気相成分を加熱炉2内に案内するには、管状部材45内にキャリヤガスを導入する必要がある。そこで、サンプラー本体41には、キャリヤガス導入口36からテーパ状貫通孔35内に導入されたキャリヤガスを、嵌合部材44の外周面から管状部材45の端部に案内するキャリヤガス案内路46が備えられている。
【0040】
また、分析装置1では、テーパ状貫通孔35と嵌合部材44との間隙に、キャリヤガス導入口36及びキャリヤガス案内路46の開口部より加熱炉2に近い側で該間隙を封止する封止部材としてのO−リング47が備えられている。O−リング47により、キャリヤガス導入口36からテーパ状貫通孔35内に導入されたキャリヤガスは、加熱炉2内に直接流入することが阻止され、キャリヤガス案内路46に流入するようにされている。
【0041】
分離手段5は、恒温槽51内に配設されたキャピラリーカラム等の分離カラム52と、分離カラム52の先端部と加熱炉2の小径部25の下端部とを接続する試料導入部53とを備えている。恒温槽51は図示しない制御手段により所定温度に保持される。
【0042】
検出手段6は、分離カラム52の後端部に接続され、例えば四重極質量分析計等の検出器61を備えている。
【0043】
尚、分析装置1において、金属からなる部材は少なくとも前記キャリヤガスに暴露される部分にシリカコート等のコーティングが施され、不活性化されている。また、気密を要する部分には適宜O−リングが配設されている。
【0044】
本実施形態の分析装置1において、試料保持手段4は、例えば図2に示すように、内部に活性炭等の吸着剤451を充填した管状部材45aを備えるものとすることができる。管状部材45aは両端部が開放されており、一方の端部に近い部分に吸着剤451が充填されると共に、吸着剤451から遠い方の端部でサンプラー本体41の嵌合部材44に取着されている。管状部材45aは、一方の端部に真空ポンプ等を取着して、他方の端部から気体の有機物試料を内部に吸引することにより、該有機物試料を吸着剤451に吸着させて捕捉することができる。
【0045】
また、試料保持手段4は、例えば図3に示すように、先端部が閉塞された管状の試料収容部452が着脱自在とされている管状部材45bを備えるものとしてもよい。試料収容部452は、管状部材45bと同様の金属製細管からなり、有機物試料と反応試薬とが封入されたガラス製カプセル453を収容する。また、試料収容部452は、閉塞された先端部に気相成分を流通可能とする細孔454を備えている。
【0046】
このとき、サンプラー本体41は、管状部材45b内に挿入されてガラス製カプセル453を破壊するロッド411を備えている。ロッド411は、サンプラー本体41の末端部に設けられた回転ノブ412を回転操作することにより、管状部材45b内で進退自在とされている。
【0047】
次に、分析装置1の作動として、試料保持手段4が管状部材45aを備える場合について説明する。
【0048】
この場合は、まず、管状部材45aの一方の端部に真空ポンプ等を取着して、他方の端部から香気成分等の気体状態の有機物試料を内部に吸引することにより、該有機物試料を吸着剤451に吸着させて捕捉する。次に、管状部材45aの吸着剤451から遠い方の端部を、サンプラー本体41の嵌合部材44に取着する。
【0049】
次に、サンプラー本体41の筒状部42を接続手段3の第2の管状部33に螺着することにより、試料保持手段4を接続手段3を介して加熱炉2に接続する。このとき、サンプラー本体41の嵌合部材44は、第2の管状部33のテーパ状貫通孔35に間隙を存して嵌合されており、該間隙はO−リング47により封止されている。また、管状部材45aはテーパ状貫通孔35に挿通されて、吸着剤451が充填されている部分が加熱炉2内の加熱位置である大径部23に挿入されている。
【0050】
次に、図示しないキャリヤガス源からキャリヤガス導入口36にキャリヤガスを流通する。このようにすると、キャリヤガス導入口36からテーパ状貫通孔35内に導入されたキャリヤガスは、加熱炉2に流入することがO−リング47により阻止され、サンプラー本体41に設けられたキャリヤガス案内路46に流入する。そして、前記キャリヤガスは、キャリヤガス案内路46を介して、管状部材45a内に案内される。
【0051】
次に、ヒータ22を所定の温度に昇温させ、管状部材45aを加熱することにより、吸着剤451に吸着されている前記有機物試料を熱脱着させ、複数の気相成分を生成させる。このようにすると、前記複数の気相成分は、管状部材45a内に流通されている前記キャリヤガスにより、加熱炉2内に案内され、小径部25、試料導入部53を介して分離カラム52に導入される。
【0052】
この結果、前記有機物試料から生成した複数の気相成分が分離カラム52により個々の気相成分に分離され、検出器61により検出される。検出器61の検出結果は、例えばクロマトグラムとして得ることができる。
【0053】
次に、分析装置1の作動として、試料保持手段4が管状部材45bを備える場合について説明する。
【0054】
この場合は、まず、予め一方の端部が閉塞されたガラス管に、トリグリセライド等の有機物試料と、メチル化試薬等の反応試薬とを収容し、該ガラス管の開放端部をガスバーナで加熱して閉塞する。この結果、有機物試料と反応試薬とが封入されたガラス製カプセル453が形成される。
【0055】
次に、ガラス製カプセル453を試料収容部452に収容し、試料収容部452を管状部材45bに取着する。試料収容部452は、例えば、開放端部の内周面に雌ねじ部を形成しておき、該雌ねじ部を管状部材45bの一方の端部の外周面に形成された雄ねじ部に螺着することにより、管状部材45bに接続することができる。
【0056】
次に、管状部材45bの試料収容部452が接続されている側と反対側の端部を、サンプラー本体41の嵌合部材44に取着する。
【0057】
次に、サンプラー本体41の筒状部42を接続手段3の第2の管状部33に螺着することにより、試料保持手段4を接続手段3を介して加熱炉2に接続する。このようにすると、試料保持手段4が管状部材45aを備える場合と同様にして、キャリヤガス源からキャリヤガス導入口36を介してテーパ状貫通孔35内に導入されたキャリヤガスが、キャリヤガス案内路46を介して、管状部材45b内に案内される。
【0058】
次に、ヒータ22を所定の温度に昇温させ、管状部材45bを加熱することにより、ガラス製カプセル453に封入されている前記有機物試料と前記反応試薬とを反応させると共に、反応生成物を気化させ、複数の気相成分を生成させる。そして、サンプラー本体41に設けられている回転ノブ412を回転操作することにより、ロッド411を管状部材45b内で試料収容部452方向に進出させ、ロッド411によりガラス製カプセル453を破壊する。この結果、前記複数の気相成分がガラス製カプセル453の外部に放出される。
【0059】
このようにすると、前記複数の気相成分は、管状部材45b内に流通されている前記キャリヤガスにより、試料収容部452の細孔454から加熱炉2内に案内され、小径部25、試料導入部53を介して分離カラム52に導入される。
【0060】
この結果、前記有機物試料から生成した複数の気相成分が分離カラム52により個々の気相成分に分離され、検出器61により検出される。検出器61の検出結果は、例えばクロマトグラムとして得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1…分析装置、 2…加熱炉、 3…接続手段、 4…試料保持手段、 5…分離手段、 6…検出手段、 44…嵌合部材、 45…管状部材、 46…キャリヤガス案内路、 47…封止部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物試料を加熱して複数の気相成分を生成する筒状の加熱炉と、
該有機物試料を保持して、該加熱炉の一方の端部から該加熱炉の加熱位置に挿入する試料保持手段と、
キャリヤガスを該加熱炉に導入するキャリヤガス導入手段と、
該加熱炉の他方の端部に接続され該キャリヤガスにより導入される該複数の気相成分を個々の気相成分に分離する分離手段と、
該分離手段に接続され該分離手段により分離された個々の気相成分を検出する検出手段とを備える分析装置において、
該試料保持手段は、該有機物試料を保持して該加熱炉の加熱位置に挿入する管状部材と、該キャリヤガス導入手段により導入されるキャリヤガスを該管状部材に案内するキャリヤガス案内手段とを備えることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の分析装置において、前記管状部材は、両端部が開放されていると共に内部に前記有機物試料を吸着する吸着剤が充填されていることを特徴とする分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の分析装置において、前記管状部材は、一方の端部が開放されていると共に、他方の端部に前記有機物試料と反応試薬とが封入されたガラス製カプセルを収容する有底筒状体であって底部に気相成分の流通可能な貫通孔を備える試料収容部が着脱自在に取着され、前記試料保持手段は、該管状部材内部で該試料収容部方向に前進して該ガラス製カプセルを破壊するカプセル破壊部材を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の分析装置において、
前記加熱炉の一方の端部に設けられ、前記加熱炉と前記試料保持手段とを接続すると共に、内周側に該試料保持手段に保持された該有機物試料が挿通される貫通孔と、該貫通孔に開口して該貫通孔内にキャリヤガスを導入する前記キャリヤガス導入手段とを備える接続手段を備え、
前記試料保持手段は、該接続手段の該貫通孔に間隙を存して嵌合されると共に前記管状部材が取着される嵌合部材を備え、
前記キャリヤガス案内手段は、該嵌合部材の外周面に開口し、該嵌合部材に取着された該管状部材の端部に該キャリヤガスを案内するキャリヤガス案内路を備え、
該接続手段又は該試料保持手段は、該貫通孔の内周面と該嵌合部材との間隙に設けられ、該キャリヤガス導入手段及び該キャリヤガス案内路の開口部より該加熱炉に近い側で該間隙を封止して、該キャリヤガス導入手段により該貫通孔に導入されるキャリヤガスを該キャリヤガス案内路に供給する封止部材を備えることを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−37410(P2012−37410A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178420(P2010−178420)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(392013224)フロンティア・ラボ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】