説明

分析試料保持装置、試料分析装置、及び分析試料保持装置の製造方法

【課題】所定の試料を比色分析するのに適した、小型の
分析試料保持装置及び試料分析装置を提供する。
【解決手段】回折格子G101に侵入した分析光r5は、回折格子G101によって分光され、分光された分析光r6として、第1基材部101の表面P101に形成される分析光導出部A101に向かって垂直に進行する。このように、生体試料分析チップの内部に回折格子G101を配置することによって、生体試料分析チップに投光する前に、白色光から所定波長の分析光を分光する必要がない。また、分析の項目に対応する所定波長の分析光を発光する光源を複数用意しておく必要もない。よって、分析装置を小型にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の試料を分析する際に用いる分析試料保持装置及び試料分析装置に関し、特に、比色分析により分析するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分析試料保持装置の一つである検体分析装置について、図18を用いて説明する。図18に示すように、検体分析装置では、光源ランプ1からの測定光24はミラーA2、スリット3を介しグレーティング4に照射され分光される。グレーティング4は、パルスモータにより回され、分析に必要な波長を任意に選択できる。グレーティング4より分光された測定光24がスリット3を介しミラーB5に照射されハーフミラー6に照射され、セル用検知器16側と、リファレンス用検知器17側に分光される。測定光による測定は、セル用検知器16とリファレンス用検知器17との比較により行う。比色分析部100は、検体の分析が分光光度計測により行なわれる。電解質分析部200は、検体の分析が電解質分析により計測される。これにより、分光光度計を用いた検体分析と、電解質分析の検体分析を行なうことができる。
【0003】
比色分析部100は、保温ブロック7、保温セル8、フローセル9、ペルチェ素子A(熱源)10、蓋体50を有する。保温ブロック7は、銅を含む熱伝導性の良好な金属材料で形成されている。保温ブロック7は保温セル8が嵌め込まれる保温セル収納窪70、フローセル9が嵌め込まれるフローセル収納窪71を有する。保温セル8を保温セル収納窪70に、フローセル9をフローセル収納窪71に収納し、蓋体50を保温ブロック7に取り付け、ネジ72をすることにより、保温セル8とフローセル9は、保温ブロック7の内部に収納保持される。フローセル9は石英で形成され、検体を流通する検体流通孔73が貫通するように形成されている。フローセル9には、検体流通孔73に交差するように測定光が透過される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−64879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の検体分析装置には、以下に示すような改善すべき点がある。検体分析装置は、フローセル9に分析に適切な測定光24を投光するために、ミラーA2、スリット3、グレーティング4、ミラーB5、ハーフミラー6といった構成を必要とする。このため、検体分析装置を小型化できない、という改善すべき点がある。
【0006】
そこで、本発明は、安価な分析試料保持装置の提供を目的とする。また、本発明は、小型の分析装置の提供を目的とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0008】
本発明に係る分析試料保持装置は、分析光を用いて試料を分析する際に用いる分析試料保持装置であって、前記分析試料保持装置は、外部から内部に前記分析光を導入する分析光導入部、前記内部から前記外部に前記分析光を導出する分析光導出部、前記試料を保持する試料保持路であって、前記分析試料保持装置の前記内部に形成される試料保持路、有し、前記試料保持路は、前記分析光導入部から導入された前記分析光を前記試料保持路に沿う方向に反射する導入反射部、前記試料保持路を通過してきた前記分析光を前記分析光導出部の方向へ反射する導出反射部、前記分析光を分光する分光部であって、前記導出反射部によって前記分析光導出部の方向へ反射された前記分析光を分光した後、前記分析光導出部へ導出する分光部、を有すること、を特徴とする。
【0009】
これにより、分析試料保持装置が分光部を有するので、分析試料保持装置を分析するための試料分析装置に分析光を投光するための複雑な光学系を配置する必要がない。したがって、資料分析装置の構成を簡略化すると共に、小型化することができる。
【0010】
本発明に係る分析試料保持装置は、分析光を用いて試料を分析する際に用いる分析試料保持装置であって、前記分析試料保持装置は、第1基材部及び第2基材部を有し、前記第1基材部は、前記内部から前記外部に前記分析光を導出する分析光導出部であって、第1表面に配置される分析光導出部、前記試料を保持する第1試料保持路であって、前記第1表面とは対向して位置する第2表面から内部に向かって凹状に形成される第1試料保持路、
【0011】
を有し、前記第2基材部は、外部から内部に前記分析光を導入する分析光導入部であって、第3表面に配置される分析光導入部、前記試料を保持する第2試料保持路であって、前記第3表面とは対向して位置する第4表面から内部に向かって凹状に形成される第2試料保持路、を有し、前記第1試料保持路は、前記分析光導入部から導入された前記分析光を前記第1試料保持路に沿う方向に反射する第1反射部、前記第1試料保持路に沿って進行してきた前記分析光を前記第2試料保持路の方向へ反射する第2反射部、を有し、前記第2試料保持路は、前記第1試料保持路の方向から進行してきた前記分析光を前記第2試料保持路に沿う方向へ反射する第3反射部、前記第2試料保持路に沿って進行してきた前記分析光を前記分析光導出部へ反射する第4反射部、を有し、前記第1基材部及び前記第2基材部は、前記第2表面と前記第4表面とが対向するように配置され、前記第1試料保持路と前記第2試料保持路とが連続した試料保持路を形成し、前記第1試料保持路は、前記分析光を分光する分光部であって、前記導出反射部によって前記分析光導出部の方向へ反射された前記分析光を分光した後、前記分析光導出部へ導出する分光部、を有すること、を特徴とする。
【0012】
これにより、第1反射部〜第4反射部を有する分析試料保持装置が分光部を有するので、分析試料保持装置を分析するための試料分析装置に分析光を投光するための複雑な光学系を配置する必要がない。したがって、第1反射部〜第4反射部を有する分析試料保持装置を分析するための資料分析装置の構成を簡略化すると共に、小型化することができる。
【0013】
本発明に係る分析試料保持装置では、前記分光部は、回折格子であること、を特徴とする。これにより、簡易な構成で分析光を分光することができる。また、簡単に分析光を分光することができる。
【0014】
本発明に係る分析試料保持装置では、前記試料保持路は、前記分析光から点光源を生成するための開口部を有すること、を特徴とする。これにより、効率よく分析光を分光することができる。
【0015】
本発明に係る試料分析装置のいずれかを用いて、前記分析試料保持装置に保持されている試料を分析する試料分析装置であって、前記試料分析装置は、前記分析試料保持装置に対して分析光を投光する分析光投光部、前記分析試料保持装置から導出された分析光を受光する受光部、を有し、前記分析光投光部は、前記分析光を投光する光源部、前記光源部から投光された前記分析光を前記分析試料保持装置の前記分析光導入部へ反射する反射部、を有すること、を特徴とする。
【0016】
これにより、分光部を有する分析試料保持装置を分析するための試料分析装置に所定の分析光を投光するための複雑な光学系を配置する必要がない。したがって、資料分析装置の構成を簡略化すると共に、小型化することができる。
【0017】
本発明に係る試料分析装置では、前記反射部は、複数のマイクロプリズムが一体として形成されたものであること、を特徴とする。
【0018】
これにより、容易に分析光を面状光とすることができる。
【0019】
本発明に係る試料分析装置では、前記光源部は、白色光を投光すること、を特徴とする。これにより、白色光を分光し、分光された所定波長の分析光を分析することによって、複数の分析項目に対応することができる。
【0020】
本発明に係る試料分析装置では、前記光源部は、点光源であること、を特徴とする。これにより、試料分析装置を簡単な構成にできる。
【0021】
本発明に係る試料分析装置では、前記光源部は、1つの光源を有すること、を特徴とする。これにより、試料分析装置を簡単な構成にできる。
【0022】
本発明に係る試料分析装置では、前記光源部は、複数の光源を有すること、を特徴とする。これにより、分析光の照度を高めることができるので、効率よく分析することができる。
【0023】
本発明に係る試料分析装置では、前記光源部は、所定の波長を有する光を投光する複数の光源を有すること、を特徴とする。これにより、分析項目に対応する所定波長の分析光を用いることができるので、複数の分析項目に対応することができる。
【0024】
ここで、各請求項における構成要素と実施例における構成要素との対応関係を示す。分析試料保持装置は生体試料分析チップ100に対応する。
【0025】
分析光導入部は分析光導入開口A105に、分析光導出部は分析光導出部A101に、試料保持路は試料保持路R100に、導入反射部は第1反射面M101に、導出反射部は第4反射面M104に、分光部は回折格子G101に、それぞれ対応する。
【0026】
第1基材部は第1基材部101又は第1基材部モデルm101に、第2基材部は第2基材部103又は第2基材部モデルm103に、それぞれ対応する。
【0027】
分析光導出部は分析光導出部A101に、第1表面は第1基材部101の表面P101に、第1試料保持路は第1試料保持路R101又は第1空間r101に、第2表面は第1基材部101の表面P102に、それぞれ対応する。
【0028】
分析光導入部は分析光導入開口A105に、第3表面は第2基材部103の表面P103に、第2試料保持路は第2試料保持路R103又は第2空間r103に、第4表面は第2基材部103の表面P104に、それぞれ対応する。
【0029】
第1反射部は第1反射面M101又は第1傾斜面s101に、第2反射部は第2反射面M102又は第2傾斜面s102に、第3反射部は第3反射面M103又は第3傾斜面s103に、第4反射部は第4反射面M104又は第4傾斜面s104に、それぞれ対応する。また、試料は血液に対応する。
【0030】
開口部はスリットS104の円孔H104に対応する。
【0031】
試料分析装置は分析装置150に、分析光投光部は投光部151に、受光部は受光部153に、それぞれ対応する。
【0032】
光源部はLED161、261、361〜367に、反射部はプリズムアレイ165に、それぞれ対応する。

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る分析試料保持装置の一実施形態である生体試料分析チップ100の斜視図である。
【図2】生体試料分析チップ100の図1のXX面における断面図である。
【図3】第4反射面M104のスリットS104を示す図である。
【図4】生体試料分析チップ100における分析光の光路を示す図である。
【図5】分析装置150の概要構成を示す図である。
【図6】生体試料分析チップ100の製造方法を示す図である。
【図7】生体試料分析チップ100の製造方法を示す図である。
【図8】生体試料分析チップ100の製造方法を示す図である。
【図9】生体試料分析チップ100の製造方法を示す図である。
【図10】生体試料分析チップ100の製造方法を示す図である。
【図11】生体試料分析チップ100の製造方法を示す図である。
【図12】分析試料保持装置の他の実施例を示す図である。
【図13】分析試料保持装置の他の実施例を示す図である。
【図14】分析装置の他の実施例を示す図である。
【図15】分析試料保持装置の他の実施例を示す図である。
【図16】分析試料保持装置の他の実施例を示す図である。
【図17】分析試料保持装置の他の実施例を示す図である。
【図18】従来の分析試料保持装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0035】
第1 構成
1.生体試料保持分析チップ100の構成
本発明に係る分析試料保持装置の一実施例である生体試料分析チップ100は、比色分析を用いた血液分析を行う際に用いるディスポーザブル・チップである。生体試料分析チップ100を用いた血液の比色分析では、生体試料としての血液を混合した試薬を生体試料分析チップ100の内部に蓄積し、蓄積した試薬に対して外部から内部に導入した分析光を透過させ、分析光の特定波長の光の透過率から試薬の発色度合いを定量化したうえで、血液の状態、ひいては人の健康状態を判断する。
【0036】
生体試料分析チップ100の構成について図1を用いて説明する。図1は斜め上方から見た生体試料分析チップ100の斜視図を示している。生体試料分析チップ100は、平面四角形、縦横の長さ30mm、厚さ200μmの板形状を有している。なお、生体試料分析チップ100の大きさについては、使用者が扱いやすい大きさであれば、例示のものに限定されない。
【0037】
生体試料分析チップ100は、第1基材部101、第2基材部103及びノイズカットマスク105を有している。第1基材部101、第2基材部103及びノイズカットマスク105は、下層からこの順番で配置されている。第1基材部101及び第2基材部103は、透明なポリマー物質、例えばポリカーボネイト、により形成されている。
【0038】
また、ノイズカットマスク105は、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)等の金属膜より形成されている。なお、ノイズカットマスク105は、スクリーン印刷により形成したカーボン膜等により形成してもよい。
【0039】
生体試料分析チップ100は、内部に並列に配置された複数の試料保持路R100を有している。生体試料分析チップ100に複数の試料保持路R100を配置することによって、複数の分析項目について同時に分析することが可能となる。
【0040】
試料保持路R100は、第1反射面M101、第2反射面M102、第3反射面M103、及び第4反射面M104を有している。第1反射面M101〜第4反射面M104は、それぞれ、鏡面に加工されている。
【0041】
ノイズカットマスク105は、外部から投光された分析光を選択的に内部に取り込むための分析光導入開口A105を有している。これにより、外部から投光された分析光のうち分析に必要なもののみを内部に取り込むことができる。
【0042】
なお、図1においては、複数配置される試料保持路R100のうちの一つについてのみ番号を付している。
【0043】
次に、図1におけるXX断面を示す図2を用いて、生体試料分析チップ100の内部を詳細に説明する。
【0044】
生体試料分析チップ100は、内部に試料保持路R100を有している。試料保持路R100は、生体試料及び生体試料を分析するための試薬を生体試料分析チップ100の内部に保持するための空間である。
【0045】
試料保持路R100は、第1試料保持路R101、第2試料保持路R103を有している。
【0046】
第1試料保持路R101は、第1基材部101の表面P102から内部に向かって凹状に形成されている。第1試料保持路R101は、上底が下底よりも長い台形の断面を有している。第1試料保持路R101の一の端部には、第1反射面M101が、他の一の端部には第2反射面M102が形成されている。
【0047】
第1反射面M101及び第2反射面M102には、鏡面加工が施されている。これにより、分析光を効率よく反射することができる。また、第1反射面M101は、垂直上方から入射してきた分析光を、第1試料保持路R101に沿うように水平方向へ反射する。第2反射面M102は、水平方向から入射してきた分析光を、第2試料保持路が存在する垂直上方へ反射する。
【0048】
また、第1試料保持路R101の底部には回折格子G101が形成されている。回折格子G101は、第2試料保持路R103の第4反射面に対向する位置に配置される。これにより、回折格子G101は、生体試料分析チップ100の内部を通過してきた分析光を分光して、外部に導出することができる。
【0049】
第2試料保持路R103は、第2基材部103の表面P104から内部に向かって凹状に形成される。第2試料保持路R103は、三角形状の断面を有している。第2試料保持路R103の一の端部には、第3反射面M103が、他の一の端部には第4反射面M104が形成されている。第2試料保持路R103の第3反射面M103は、第1試料保持路R101の第2反射面M102に対向する位置に形成される。
【0050】
第3反射面M103及び第4反射面M104には、鏡面加工が施されている。これにより、分析光を効率よく反射することができる。また、第3反射面M103は、第1試料保持路R101が存在する垂直下方から入射してきた分析光を、第2試料保持路R103に沿うように水平方向へ反射する。第4反射面M104は、第2試料保持路R103に沿って水平方向から入射してきた分析光を垂直下方へ反射する。
【0051】
なお、第4反射面M104によって垂直下方へ反射された分析光は、第1基材部101の表面P101に形成される分析光導出部A101を介して、生体試料分析チップ100の外部へ導出される。
【0052】
さらに、第4反射面M104上にはスリットS104が形成されている。第4反射面M104の第3反射面M103側から見た平面図を図3に示す。スリットS104は中央に小さい円孔H104を有している。スリットS104の円孔H104以外の領域では、分析光は通過できない。円孔H104を通過した分析光は、スリットS104の直下に配置されている第4反射面M104によって反射され、回折格子G101へと進行する。
【0053】
試料保持路R100は、第1基材部101の表面P102と第2基材部103の表面P104とが対向するように接合され、第1試料保持路R101と第2試料保持路R103とが連続することにより形成された空間である。
【0054】
分析光導入開口A105は、ノイズカットマスク105に対して垂直に入射した分析光のうち、分析に必要なものを生体試料分析チップ100の内部に導入するための開口である。分析光導入開口A105は、導入した分析光が第1基材部101の第1反射面M101に到達する位置に、つまり第1反射面M101の上方に形成される。
【0055】
なお、第2基材部103には、試料保持部R105が形成される。試料保持部R105は、所定量の血液及び試薬を蓄積する。試料保持部R105は、ノイズカットマスク105に形成される分析光導入開口A105に接続する。
【0056】
生体試料分析チップ100では、ノイズカットマスク105側から導入した分析光を、第1基材部101側へ導出する。これにより、分析光を投光するための光源部と、分析光の色度合いを定量化するためのセンサ部とを、生体試料分析チップ100を挟んだ異なる位置に配置することができる。よって、光源部及びセンサ部を配置するにあたり、両者の干渉を考慮する必要がないので、自由に分析装置を設計することができる。
【0057】
図4を用いて、第1反射面M101〜第4反射面M104を用いた分析光の光路について説明する。
【0058】
ノイズカットマスク105の表面S105に対して垂直に入射した分析光r0は、ノイズカットマスク105に形成される分析光導入開口A105から、第2基材部R103の表面P103に形成される分析光導入部A104を介して、生体試料分析チップ100の内部に導入され、分析光r1として、第1反射面M101に到達する。分析光r1は、第1反射面M101によって反射され、分析光r2として、第1試料保持路R101に沿って生体試料分析チップ100の内部を水平に進行する。分析光r2は、第2反射面M102によって反射され、分析光r3として、第2試料保持路R103の方向に向かって垂直に進行する。分析光r3、第3射面M103よって反射され、分析光r4して、第2試料法事路R103に沿って生体試料分析チップ100の内部を第4反射面M104の方向に向かって水平に進行する。分析光r4は、第4反射面M104によって反射され、分析光r5として、回折格子G101へ進入する。
【0059】
回折格子G101に侵入した分析光r5は、回折格子G101によって分光され、分光された分析光r6として、第1基材部101の表面P101に形成される分析光導出部A101に向かって垂直に進行する。
【0060】
このように、生体試料分析チップ100の内部に回折格子G101を配置することによって、生体試料分析チップ100に投光する前に、白色光から所定波長の分析光を分光する必要がない。また、分析の項目に対応する所定波長の分析光を発光する光源を複数用意しておく必要もない。よって、従来の分析装置に比して分析等150を小型にすることができる。
【0061】
また、分析光を生体試料分析チップ100の内部において複数回反射させることによって、分析光r2、分析光r3、分析光r4、分析光r5の試料保持路R100の内部の進行長さによって、最低限、比色分析に必要とされる量の分析光を吸収できる長さ(最低限長さ)を確保することが可能となる。
【0062】
また、分析光を生体試料分析チップ100の厚さ方向に反射させることによって、試料保持路R100の幅を拡幅することなく、試料内部を通過する分析光の通過距離を延長することができる。これにより、複数の試料保持路R100を並列に配置し、分析項目を複数にしつつ、生体試料分析チップ100を小型化することができる。
【0063】
2.分析装置の構成
次に、生体試料分析チップ100に対応する分析装置150の構成の概略について図5を用いて説明する。ここで、図5Aは分析装置150の簡易構成を、図5Bは投光部151の上面図を、それぞれ示している。図5Aに示すように、分析装置150は、分析光を投光する投光部151、生体試料分析チップ100から導出された分析光を受光する受光部153、及びチップ配置部155を有している。投光部151は、生体試料分析チップ100に投光するための分析光を生成し、生体試料分析チップ100の分析光導入開口A105へ分析光を投光する。受光部153は、回折格子G101によって分光され、外部に導出された分析光を受光する。受光部153は、フォトダイオードを有しており、分光された分析光の色、強度を検出する。
【0064】
チップ配置部155は、投光部151と受光部153の間に位置する。つまり、投光部151及び受光部153は、チップ配置部155を挟んで、上下に分離して配置される。チップ配置部155には、生体試料分析チップ100が配置される。
【0065】
以下において、投光部151の構成について説明する。投光部151は、分析光の光源となる発光ダイオード161(以下、LED161:LED/Light Emitting Diode)及び面状光生成部163を有している。LED161は、面状光生成部163の一端部に一つ配置される。したがって、一つのLED161から投光された分析光が、プリズムアレイ165に投光される。LED161は、分析光として白色光を発光する。分析装置150で使用する生体試料分析チップ100は内部に回折格子G101を有している。このため、生体試料分析チップ100に投光する前に、白色光から所定波長の分析光を分光する必要がない。また、分析の項目に対応する所定波長の分析光を発光する光源を複数用意しておく必要もない。よって、従来の分析装置に比して分析等150を小型にすることができる。このような分析装置の小型化は、生体試料分析チップの小型化と相まって、分析装置の可搬性を向上させ、いつでもどこでも分析を行うことを可能とする。
【0066】
面状光生成部163は、ガラスによって形成されている。また、面状光生成部163は、チップ配置部155に生体試料分析チップ100を配置したときの分析光導入開口A105に対応する位置にプリズムアレイ165を有している。
【0067】
プリズムアレイ165は、LED161から投光された分析光を分析光導入開口A105の方向へ反射する。また、図5Bに示すように、プリズムアレイ165は、複数のプリズムPRが平面上に一体として配置されるものである。よって、LED161から投光された分析光は、面状光となって、分析光導入開口A105の方向へ反射される。分析光を面状光とすることによって、分析光を均一に、分析光導入開口A105を介して、生体試料分析チップ100の内部へ投稿することができる。
【0068】
プリズムアレイ165は、面状光発生部163を構成するガラスをプリズム状に彫りこむことによって形成される。例えば、シリコンウェハ等にフォトリソグラフィやエッチング等の半導体加工技術を用いてマイクロサイズのプリズム状のアレイパターンを形成する。プリズム状のアレイパターンを形成したシリコンウェハを金型として、ガラスを用いてプリズムアレイ165を有する面状光生成部163を生成する。また、ナノ加工機などの切削NC加工技術を用いて、プリズムアレイの凹型の構造を掘り込むようにしてもよい。
【0069】
第2 生体試料分析チップ100の製造方法
生体試料分析チップ100の製造方法について図6〜図11を用いて説明する。本実施例における生体試料分析チップ100の製造方法は、ポリカーボネイトを用いて生体試料分析チップ100を製造するものである。ポリカーボネイトは安価な材料であり、また、ナノインプリントにより大量に製造することができる。よって、本実施例における生体試料分析チップ100の製造方法は、生体試料分析チップ100を安価に製造することを可能とする。
【0070】
本実施例における生体試料分析チップ100の製造方法は、モデル製造プロセス、金型製造プロセス、及び製品製造プロセスによって構成される。モデル製造プロセスでは、第1基材部101の鋳型を形成するための第1基材部モデル及び第2基材部103の鋳型を形成するための第2基材部モデルを製造する。金型製造プロセスでは、第1基材部モデル及び第2基材部モデルを用いて、第1基材部101及び第2基材部103をナノインプリントにより製造するための第1基材部金型及び第2基材部金型を製造する。製品製造プロセスでは、第1基材部金型及び第2基材部金型を用いて、第1基材部101及び第2基材部103を製造し、両者を接合することによって生体試料分析チップ100を製造する。
【0071】
以下において、各プロセスを説明する。
【0072】
1.モデル製造プロセス
まず、生体試料分析チップ100を形成するための第1基材部モデルm101の形成について説明する。
【0073】
図6Aに示すように、酸化炉においてシリコン(Si)層L101上に酸化膜(SiO2)によるマスク層L103を形成する。マスク層L103上にフォトレジストを塗布してレジスト層を形成した後、リソグラフィによりレジスト層に所定のパターンを形成する。
【0074】
その後、エッチングにより、レジスト層に形成したパターンをマスク層L103に形成する。この際、図6Bに示すように、マスク層L103に第1開口a103を形成する。図7に示すように、第1開口a103は、横長の長方形形状を有している。
【0075】
図6に戻って、マスク層L103をマスクとして異方性エッチングを施す。これにより、図6Cに示すように、シリコン層L101の表面p102から内部に向かって凹状に形成された第1空間r101を形成する。第1空間r101では、一の端部に第1傾斜面s101、他の一の端部に第2傾斜面s102が形成される。第1傾斜面s101及び第2傾斜面s102は、シリコン層L101の上側からみて、内側に傾斜するように形成される。
【0076】
このように、端部に第1傾斜面s101及び第2傾斜面s102を有し、表面p102から内部に向かって狭小となる第1空間r101を、異方性エッチングを用いて容易に形成することができる。なお、第1傾斜面s101、第2傾斜面s102の水平方向に対する傾斜角度α、βについては、異方性エッチングの際に使用する界面活性剤の添加濃度によって調整することができる。
【0077】
次に、図6Dに示すように、マスク層L103を除去する。さらに、図6Eに示すように、異方性エッチングを用いて、シリコン層L101を所定の形状・大きさとすることによって、第1基材部モデルm101を形成する。
【0078】
次に、生体試料分析チップ100を形成するための第2基材部モデルm103の形成について説明する。第2基材部モデルm103の製造方法は、第1基材部モデルm101の製造法と同様である。ただし、第2試料保持路r103を形成するに先立って形成する開口である第2開口a303の形状が第1基材部モデルm101の第1開口a103とは異なる。
【0079】
図8Aに示すように、酸化炉においてシリコン(Si)層L301上に酸化膜(SiO2)によるマスク層L303を形成する。マスク層L303上にフォトレジストを塗布してレジスト層を形成した後、リソグラフィによりレジスト層に所定のパターンを形成する。
【0080】
その後、エッチングにより、レジスト層に形成したパターンをマスク層L303に形成する。この際、図8Bに示すように、マスク層L303に第2開口a303及び第3開口a305を形成する。図9に示すように、第2開口a303は、長方形形状であるが、水平方向の長さが第1開口a103よりも短い長方形形状を有している。第3開口a305についても同様である。
【0081】
図8に戻って、マスク層L303をマスクとして異方性エッチングを施す。これにより、図8Cに示すように、シリコン層L303の表面p104から内部に向かって凹状に形成される第2空間r103を形成する。第2空間r103は、一の端部に第3傾斜面s103、他の一の端部に第4傾斜面s104を有する。第3傾斜面s103及び第4傾斜面s104は、シリコン層L301の上面からみて、内側に傾斜するように形成される。このように、端部に第3傾斜面s103及び第4傾斜面s104有し、表面p103から内部に向かって狭小となる第2空間r102を、異方性エッチングを用いて容易に形成することができる。なお、第3傾斜面s103、第4傾斜面s104の水平方向に対する傾斜角度γ、δについては、異方性エッチングの際に使用する界面活性剤の添加濃度によって調整することができる。
【0082】
第2空間r103の形成と同様に、異方性エッチングにより、第3空間r105を形成する。
【0083】
次に、図8Dに示すように、マスク層L303を除去する。さらに、図8Eに示すように、異方性エッチングを用いて、シリコン層L301を所定の形状・大きさとすることによって、第2基材部モデルm103を形成する。
【0084】
2.金型製造プロセス
次に、第1基材部モデルm101及び第2基材部モデルm103から、ナノインプリントに用いる金型を製造する金型製造部プロセスについて説明する。図10Aに示すように、第1基材部モデルm101に対して、ニッケルメッキを用いた電鋳技術を用いることによって、第1基材部鋳型C101を成形する。
【0085】
次に、図10Bに示すように、第1基材部鋳型C101の所定の位置に回折格子用の型CG101(以下、回折格子用型CG101)を形成し、第1基材部鋳型C201を形成する。ここで、回折格子用型G101の加工については、ナノ精度の加工機を用いることによって、第1基材部鋳型C101に直接的に回折格子用型G101を構成する凹凸を形成する。
【0086】
次に、図10Cに示すように、第2基材部モデルm103に対して、ニッケルメッキを用いた電鋳技術を用いることによって、第2基材部鋳型C103を成形する。
【0087】
なお、ニッケルメッキを用いた電鋳技術については、一般的に用いられている電鋳技術を用いればよい。電鋳技術を用いることによって、第1基材部モデルm101における第1空間r101、第1傾斜面s101、第2傾斜面s102を、精度良く、第1基材部101の第1試料保持路R101、第1傾斜面S101、第2傾斜面S102に、それぞれ再現することができる。第2基材部モデルm103における第2空間r103、第3傾斜面s103、第4傾斜面s104、第3空間r105についても同様に、精度良く、第2基材部103の第2試料保持路R103、第3傾斜面S103、第4傾斜面S104、試料保持部R105に、それぞれ再現することができる。
【0088】
3.製品製造プロセス
次に、成形した第1基材部鋳型C201及び第2基材部鋳型C103を用いて生体試料分析チップ100を製造する製品製造プロセスについて説明する。図10Dに示すように、ポリカーボネイトを材料として、第1基材部鋳型C201を用いたナノインプリントにより第1基材部101を成形する。同様に、ポリカーボネイトを材料として、第2基材部鋳型C103を用いたナノインプリントにより第2基材部103を成形する。
【0089】
図11Aに示すように、第1基材部101を成形した後、第1傾斜面S101、第2傾斜面S102に対して銀メッキ加工により鏡面加工を施し、それぞれ、第1反射面M101、第2反射面M102を形成する。これにより、分析光を効率よく反射させることができる。同様に、第2基材部103を成形した後、第3反射面M103、第4反射面M104を形成する。
【0090】
図11Bに示すように、第1反射面M101〜第4反射面M104を形成した後、第1基材部101の表面P102と第2基材部103の表面P104とが対向するように、第1基材部101及び第2基材部103を接合する。このとき、第1基材部101の第2傾斜面M102と、第2基材部103の第3傾斜面M103とが対向して位置するようにする。なお、接合に際しては、ポリカーボネイトを接合する際に一般的に用いられる接合技術を用いる。
【0091】
その後、図11Cに示すように、第2基材部103上にノイズカットマスク105を形成する。なお、ノイズカットマスク105は、薄板に貫通孔を加工したステンシルマスクを第2基材部103上に貼り付けて固定した後、その上から蒸着或いはスパッタにより所定の金属を成膜することによって形成する。これにより、ステンシルマスクの貫通孔部分のみに成膜することができる。なお、ノイズカットマスク105の形成については、スクリーン印刷やグラビア印刷を用いて、分析光導入開口A105以外の領域に成膜するようにしてもよい。
【0092】
このように、生体試料分析チップ100を、第1試料保持路R101を有する第1基材部101と第2試料保持路R103を有する第2基材部103とに分割し、第1基材部101に端部に反射面を有し、第1基材部101に表面P102から内部に向かって狭小となる第1試料保持路R101を、第2基材部103に表面P104から内部に向かって狭小となる第2試料保持路R102を、それぞれ形成するようにしている。これにより、第1基材部鋳型C101及び第2基材部鋳型C103から第1基材部101、第2基材部103を取り出すことが可能となる。つまり、第1基材部鋳型C101及び第2基材部鋳型C103を用いて第1基材部101、第2基材部103を成型することが可能となる。よって、生体試料分析チップ100を大量に、かつ、安価に製造することが可能となる。
【0093】
また、生体試料分析チップ100の内部に回折格子G101を形成するにあたって、第1基材部鋳型C101に回折格子用型CG101を加工している。開設格子用型CG101は容易に加工できるので、容易に開設格子用型CG101を有する第1基材部鋳型C201を形成することができる。
【0094】
また、生体試料分析チップ100を製造するにあたって、樹脂であるポリカーボネイトを用いるため、より安価に生体試料分析チップ100を製造することが可能となる。
【0095】
[その他の実施例]
(1) 生体試料 : 前述の実施例1においては、生体試料として血液を用いたが、比色分析を用いて所定の分析を行えるものであれば、例示のものに限定されない。
【0096】
(2) ポリカーボネイト : 前述の実施例1においては、生体試料分析チップ100の材料としてポリカーボネイトを用いたが、第1反射面M101〜第4反射面M104を形成することができ、分析光による比色分析に用いることができる材料であれば例示のものに限定されない。例えば、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等であってもよい。
【0097】
(3) 鋳型を用いた製造 : 前述の実施例1においては、第1基材部鋳型C101及び第2基材部用鋳型C103を用いて、ナノインプリントにより第1基材部101及び第2基材部103を形成するとしたが、第1基材部鋳型C101及び第2基材部用鋳型C103を用いて第1基材部101及び第2基材部103を形成できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、射出成型、圧空成型、真空成型、ホットエンボッシング等を用いて形成するようにしてもよい。
【0098】
(4) 第2試料保持路R103の形状 : 前述の実施例1においては、第2試料保持路R103は、断面三角形状としたが、第3反射面M103及び第4反射面M104を有するものであれば、例示のものに限定されない。例えば、図12に示すように、第1試料保持路R101と同様に、断面台形形状としてもよい。これにより、試料を通過する分析光の距離さらに延長することができる。なお、回折格子G101は、試料保持路R101の底面、第4反射面M104に対向する位置に配置する。
【0099】
(5) 第1基材部モデルm101、第2基材部モデルm103 : 前述の実施例1においては、第1基材部モデルm101及び第2基材部モデルm103を第1基材部鋳型C101、第2基材部鋳型C103を製造するためのモデルとして用いたが、第1基材部モデルm101、第2基材部モデルm103を接合して生体試料分析チップを製造するようにしてもよい。この場合、第1傾斜面s101〜第4傾斜面s104に鏡面加工を施すようにすればよい。
【0100】
(6) 生体試料分析チップ100の構成 : 前述の実施例1においては、2つの機材部である第1基材部101、第2基材部103を接合することによって生体試料分析チップ100を製造するとしたが、3つ以上の機材部を接合するようにしてもよい。例えば、図13に示すように、第1基材部101、第2基材部103、及び第3基材部111を接合するようにしてもよい。この場合、第3基材部111に第3試料保持路R111及び第4試料保持路R113を形成するようにすればよい。なお、第3試料保持路R111は、第2反射面M102によって反射された分析光が第3反射面M103に進行できる位置に配置する。同様に、第4試料保持路R113は、第4反射面M104によって反射された分析光が分析光導出部A101に進行できる位置に配置する。なお、回折格子G101は、試料保持路R101の底面、第4反射面M104に対向する位置に配置する。
【0101】
(7)分析装置150の投光部151における光源:前述の実施例1においては、分析装置150の投光部151には白色光を投光するLED161が一つ、光源として配置されていたが、分析光を投光できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、図16Aに示すように、生体試料分析チップ100が有する試料保持路R100の数に対応して白色光を投光するLED261を配置するようにしてもよい。図14Aにおいては、4つの試料保持路R100に対して、4つのLED261が配置されている。
【0102】
また、前述の実施例1においては、白色光を投光するLED161を分析光の光源としたが、複数の分析項目に対応して複数の波長を含む分析光であれば、例示のものに限定されない。例えば、図14Bに示すように、異なる波長を有する分析光をそれぞれ投光するLED361〜LED367を配置し、投光することによって分析光を生成するようにしてもよい。
【0103】
(8)スリットS104 : 前述の実施例1においては、スリットS104を第4反射面M104上に配置するとしたが、例示のものに限定されない。例えば、第2反射面M102、第3反射面M103上に配置するようにしてもよい。
【0104】
(9)生体試料分析チップ100の構成:前述の実施例1においては、第1反射面M101〜第4反射面M104を有する生体試料分析チップ100に回折格子G101を形成するとしたが、分析光導入部から導入された前記分析光を試料保持路に沿う方向に反射する導入反射部、試料保持路を通過してきた分析光を前記分析光導出部の方向へ反射する導出反射部を有する生体試料分析チップであれば、例示のものに限定されない。例えば、第1反射面M101及び第4反射面M104の2つの反射面のみを有するものであってもよい。
【0105】
(10)空気孔 : 前述の実施例1において、さらに、生体試料を試料保持路R100に流入させやすくするために大気開放用の空気孔AHを形成するようにしてもよい。図15に空気孔AHを形成した生体試料分析チップを示す。図15Aは、図2と同様に、生体試料分析チップ100の試料保持路R100における断面を示している。図12B、図15Dは図15Aにおける図2Aの生体試料分析チップ100のP−P断面を、図15C、図15Eは図2Aの生体試料分析チップ100の平面図の一部を、図15F、図15Hは図15Aにおける図2Aの生体試料分析チップ100の左側面図を、図15G、図15Iは図2Aの生体試料分析チップ100の底面図の一部を、それぞれ示している。
【0106】
図15B、図15Cは、第2基材部103に、第2基材部103からノイズカットマスク105に向かう空気孔AHを形成した状態を示している。図15D、図15Eは、第1基材部101に、第1基材部101の底面に向かう空気孔AHを形成した状態を示している。図15F、図15Gは、第2基材部103に、第2基材部103から左側面に向かう空気孔AHを形成した状態を示している。図15H、図15Iは、第1基材部101に、第1基材部101の側面に向かう空気孔AHを形成した状態を示している。ここで、空気孔の形成については、試料保持路R100に生体試料を導入し易くするものであれば、例示のものに限定されない。
【0107】
なお、空気孔AHの形成にあたっては、例えば、第1基材部101を形成した後(図8C参照)、形成した第1基材部101に対してCO2レーザやYAGレーザによって孔形成加工を施したり、所定の金型により空気孔AHの打ち抜き加工を施したりすればよい。
【0108】
(11)回折格子G101の位置:前述の実施例1においては、回折格子G101は生体試料分析チップ100内部の第1試料保持路R101に配置されたが、分析光を分光できる位置であれば、例示のものに限定されない。例えば、図16に示すように、生体試料分析チップ100の第1基材部101の下面P101に回折格子G101を形成するようにしてもよい。この場合、回折格子G101と生体試料とが互いに接触することを防止することができる。よって、回折格子G101の目詰まり等、不具合の発生を防止することができる。
【0109】
(12)分光手段:前述の実施例1においては、回折格子G101によって分析光を分光するとしたが、分析光を分光できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、回折格子G101に代えてプリズムを形成してもよい。この場合、図17Aに示すように、生体試料分析チップ100の第1基材部101の第1試料保持路R101の下面の第4反射面M104に対向する領域にプリズムPR1を形成するようにしてもよい。この場合、第1基材部101の第1試料保持路R101の下面のうち、第4反射面M104に対向する領域を所定の傾斜面とする。同様に、図17Bに示すように、第1基材部101の下面P101の第4反射面M104に対向する領域にプリズムPR3を形成するようにしてもよい。
【0110】
さらに、図17Cに示すように、第1基材部101の下面P101の第4反射面M104に対向する領域に、回折格子(グレーティング)及びプリズムの機能が一体となったグリズムGRを形成するようにしてもよい。

【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明に係る分析試料保持装置は、例えば、血液を比色分析によって分析する際に用いるディスポーザブル・チップとして用いることができる。また、本発明に係る分析装置は、例えば、血液を比色分析によって分析する際に用いるディスポーザブル・チップを分析対象とする分析装置として用いることができる。

【符号の説明】
【0112】
100・・・・・生体試料分析チップ
R100・・・・試料保持路
101・・・・・第1基材部
M101・・・第1反射面
M102・・・第2反射面
R101・・・第1試料保持路
A101・・・分析光導出部
P101・・・表面
P102・・・表面
103・・・・・第2基材部
M103・・・第3反射面
M104・・・第4反射面
R103・・・第2試料保持路
A104・・・分析光導入部
P103・・・表面
P104・・・表面
G101・・・・回折格子
150・・・・・分析装置
151・・・・・投光部
161・・・・光源部
163・・・・面状光生成部
165・・・・プリズムアレイ
153・・・・・受光部
105・・・・・ノイズカットマスク
A105・・・分析光導入開口
C101・・・・第1基材部鋳型
C201・・・・第1基材部鋳型
C103・・・・第2基材部鋳型
m101・・・・・第1基材部モデル
s101・・・第1傾斜面
s102・・・第2傾斜面
r101・・・第1空間
m103・・・・第2基材部モデル
s103・・・第3反射面
s104・・・第4反射面
r103・・・第2空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析光を用いて試料を分析する際に用いる分析試料保持装置であって、
前記分析試料保持装置は、
外部から内部に前記分析光を導入する分析光導入部、
前記内部から前記外部に前記分析光を導出する分析光導出部、
前記試料を保持する試料保持路であって、前記分析試料保持装置の前記内部に形成される試料保持路、
を有し
前記試料保持路は、
前記分析光導入部から導入された前記分析光を前記試料保持路に沿う方向に反射する導入反射部、
前記試料保持路を通過してきた前記分析光を前記分析光導出部の方向へ反射する導出反射部、
前記分析光を分光する分光部であって、前記導出反射部によって前記分析光導出部の方向へ反射された前記分析光を分光した後、前記分析光導出部へ導出する分光部、
を有すること、
を特徴とする分析試料保持装置。
【請求項2】
分析光を用いて試料を分析する際に用いる分析試料保持装置であって、
前記分析試料保持装置は、
第1基材部及び第2基材部を有し、
前記第1基材部は、
前記内部から前記外部に前記分析光を導出する分析光導出部であって、第1表面に配置される分析光導出部、
前記試料を保持する第1試料保持路であって、前記第1表面とは対向して位置する第2表面から内部に向かって凹状に形成される第1試料保持路、
を有し、
前記第2基材部は、
外部から内部に前記分析光を導入する分析光導入部であって、第3表面に配置される分析光導入部、
前記試料を保持する第2試料保持路であって、前記第3表面とは対向して位置する第4表面から内部に向かって凹状に形成される第2試料保持路、
を有し、
前記第1試料保持路は、
前記分析光導入部から導入された前記分析光を前記第1試料保持路に沿う方向に反射する第1反射部、
前記第1試料保持路に沿って進行してきた前記分析光を前記第2試料保持路の方向へ反射する第2反射部、
を有し、
前記第2試料保持路は、
前記第1試料保持路の方向から進行してきた前記分析光を前記第2試料保持路に沿う方向へ反射する第3反射部、
前記第2試料保持路に沿って進行してきた前記分析光を前記分析光導出部へ反射する第4反射部、
を有し、
前記第1基材部及び前記第2基材部は、
前記第2表面と前記第4表面とが対向するように配置され、前記第1試料保持路と前記第2試料保持路とが連続した試料保持路を形成し、
前記第1試料保持路は、
前記分析光を分光する分光部であって、前記導出反射部によって前記分析光導出部の方向へ反射された前記分析光を分光した後、前記分析光導出部へ導出する分光部、
を有すること、
を特徴とする分析試料保持装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る分析試料保持装置において、
前記分光部は、
回折格子であること、
を特徴とする分析試料保持装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3に係る分析試料保持装置のいずれかにおいて、
前記試料保持路は、
前記分析光から点光源を生成するための開口部を有すること、
を特徴とする分析試料保持装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4に係る分析試料保持装置のいずれかを用いて、前記分析試料保持装置に保持されている試料を分析する試料分析装置であって、
前記試料分析装置は、
前記分析試料保持装置に対して分析光を投光する分析光投光部、
前記分析試料保持装置から導出された分析光を受光する受光部、
を有し、
前記分析光投光部は、
前記分析光を投光する光源部、
前記光源部から投光された前記分析光を前記分析試料保持装置の前記分析光導入部へ反射する反射部、
を有すること、
を特徴とする試料分析装置。
【請求項6】
請求項5に係る試料分析装置において、
前記反射部は、
複数のマイクロプリズムが一体として形成されたものであること、
を特徴とする試料分析装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に係る試料分析装置において、
前記光源部は、
白色光を投光すること、
を特徴とする試料分析装置。
【請求項8】
請求項5〜請求項7に係る試料分析装置のいずれかにおいて、
前記光源部は、
点光源であること、
を特徴とする試料分析装置。
【請求項9】
請求項5〜請求項8に係る試料分析装置のいずれかにおいて、
前記光源部は、
1つの光源を有すること、
を特徴とする試料分析装置。
【請求項10】
請求項5〜請求項9に係る試料分析装置のいずれかにおいて、
前記光源部は、
複数の光源を有すること、
を特徴とする試料分析装置。
【請求項11】
請求項5〜請求項9に係る試料分析装置のいずれかにおいて、
前記光源部は、
所定の波長を有する光を投光する複数の光源を有すること、
を特徴とする試料分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−202881(P2012−202881A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68991(P2011−68991)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、文部科学省、地域イノベーションクラスタープログラム(グローバル型)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501397920)旭光電機株式会社 (45)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】