説明

分析

複数のアナライトのそれぞれについてのサンプルを分析する方法が説明される。方法は、液体サンプル(例えば全血)を有する間隔の空いた試験ゾーンのアレイに接触することを含む。試験ゾーンはマイクロ流体デバイスのチャネル内に配置される。チャネルは少なくとも1つの柔軟な壁面と、柔軟であっても、または柔軟でなくてもよい第2の壁面とにより画定される。各試験ゾーンはそれぞれの標的アナライトに特有のプローブ化合物を含む。マイクロ流体デバイスは圧縮されて、チャネル内の壁面の内面間の距離であるチャネルの厚みを低減する。各アナライトの存在は、対応する位置における内面間の距離が減少している複数の試験ゾーンのそれぞれにおける相互作用を光学的に検出することにより決定される。各試験ゾーンにおける相互作用は、サンプル中の標的アナライトの存在を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年5月3日出願の米国特許出願第60/915,884号および2008年3月14日出願の米国特許出願第61/036,537号の優先権を主張し、それぞれの全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、2006年9月22日出願の米国仮特許出願第60/826,678号と、米国を指定し、2004年5月6日出願の独国特許出願DE102004022263号、シリアル番号11/593,021号を有し、2006年11月6日出願の米国継続出願の優先権を主張する、2005年5月6日出願の国際特許出願第PCT/EP2005/004923号の米国継続出願と、米国を指定し、2005年11月4日出願の独国特許出願DE102005052752号、2006年11月6日出願の国際出願の優先権を主張する、2006年11月6日出願の国際特許出願第PCT/EP2006/068153号およびEP06/068155号と、2006年11月22日出願の米国仮特許出願60/867,019号とに関する。上記出願のそれぞれの全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は分析(例えば、サンプル中の1つ以上のアナライトに対する分析)に関する。
【背景技術】
【0004】
分析はサンプル中の1つ以上のアナライトの存在を決定するために実行される。分析は、サンプルについて複数の分析(例えば複数の異なるアナライトのそれぞれに対して)を実行するために用いることができる。典型的なアレイには、それぞれがポリヌクレオチド、抗体または蛋白質などの異なるプローブ化合物を有する、複数の間隔を空けた試験ゾーンを有する基板を含む。使用中は、アレイはサンプルと接触し、次にサンプルはアレイの各位置と相互に作用する。各位置においては、相互作用は、例えば、対応するアナライトとその位置のプローブ化合物との結合および/または対応するアナライトとプローブ化合物との間の化学反応を含んでもよい。反応は結果として検出可能な生成物(例えば沈殿物)をもたらす。相互作用の存在および程度は、対応するアナライトがサンプル中に存在するかどうかに依存する。
【0005】
一般に、相互作用は光学的に(例えば蛍光によって)検出される。例えば、光学的検出は、少なくとも一次元(例えば2次元)の相互に間隔を空けた複数の感光素子(例えばピクセル)を有する、撮像検出器(例えばCCD)を用いて実行できる。感光素子のそれぞれは、基板の異なる空間位置からの光を受光するように配置される。このようにして、複数の感光素子により同時に検出された光を合成して、基板の少なくとも一次元(例えば2次元)に画像データを生成できる。画像データを評価して、アレイの複数の位置における相互作用の存在および/または程度を決定できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は分析(例えばサンプル中の複数のアナライトに対する分析)に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様においては、1つの分析方法は:
間隔を空けた試験ゾーンのアレイを液体サンプルと接触させることを含み、試験ゾーンは、マイクロ流体デバイスの第1基板の内面と第2基板の内面との間に配置され、基板の少なくとも一方は柔軟性があり、各試験ゾーンは、標的アナライトに対する分析に関係するように構成されたプローブ化合物を含むことと、
試験ゾーンに対応する位置における第1および第2基板の内面間の距離を低減することと、
対応する位置における内面間の距離が低減された複数の試験ゾーンのそれぞれにおける相互作用の存在を連続的に光学的に決定することを含み、各試験ゾーンにおける相互作用が標的アナライトのサンプル中の存在を示すこととを含む。
【0008】
分析方法はさらに、複数の試験ゾーンのそれぞれについて、光学的に決定された相互作用に基づいてそれぞれのアナライトの存在を決定することを含んでもよい。
【0009】
少なくともいくつかの試験ゾーンのそれぞれについて、複数の試験ゾーンのそれぞれにおける相互作用は、試験ゾーンのアナライトとプローブ化合物との間の結合反応であってもよい。
【0010】
光学的に決定するステップは、ゼロ次検出器を用いて試験ゾーンのそれぞれからの光を検出することを含んでもよい。
【0011】
ゼロ次検出器を用いて試験ゾーンのそれぞれからの光を検出するステップは、基本的に、ゼロ次検出器を用いて光を検出することであってもよい。
【0012】
分析方法はさらに、第1および第2基板の内面間の距離が低減されている、複数の位置のそれぞれについて、試験ゾーンにおいて光学的に決定するステップの後に、内面間の距離をその後増加することを含んでもよい。
【0013】
距離を低減するステップは、試験ゾーンに対応する位置において第1および第2基板の内面間の距離を連続的に低減することを含んでもよい。この実施形態では、分析方法はさらに、第1および第2基板の内面間の距離が低減される、複数の位置のそれぞれについて、試験ゾーン領域における結合を光学的に検出するステップ後に、内面間の距離をその後増加することを含んでもよい。
【0014】
光学的に決定するステップは、対応する配置における内面間の距離が低減される、複数の試験ゾーンのそれぞれにおける相互作用を連続的に検出することを含んでもよい。一実施形態では、光学的に検出するステップは、わずかN個の試験ゾーンからの光を同時に検出することを含む。ここで、N≦5またはN≦3またはN=1である。あるいは、光学的に決定するステップは、ゼロ次検出器を用いて試験ゾーンのそれぞれからの光を検出することを含む。ゼロ次検出器を用いて試験ゾーンのそれぞれからの光を検出するステップは、基本的、ゼロ次検出器を用いて光を検出することであってもよい。
【0015】
光学的に検出するステップは、光学的決定を実行するために用いられる光検出器の光検出ゾーンに対してマイクロ流体デバイスを移動することを含んでもよい。
【0016】
距離を低減するステップは、マイクロ流体デバイスに圧縮力を加える部材に対して、マイクロ流体デバイスを移動することを含む。部材に対してマイクロ流体デバイスを移動するステップは、部材の少なくとも一部を回転させることを含んでもよい。
【0017】
各試験ゾーンは細長く、主軸を画定してもよい。さらに、マイクロ流体デバイスを移動するステップは、複数の試験ゾーンのそれぞれの主軸に概して垂直の移動軸に沿ってデバイスを移動することを含んでもよい。例えば、複数の試験ゾーンの移動軸および主軸は10°以内でまたはさらに5°以内で垂直である。
【0018】
さらに、試験ゾーンの大多数またはさらにすべての移動軸および主軸は概して垂直であってもよい。
【0019】
分析方法はさらに、移動のステップ中に、マイクロ流体デバイスの参照コードに含まれる情報を読み取ること、および読み取り情報に基づいて複数の試験ゾーンのそれぞれの特性を決定することを含んでもよい。
【0020】
決定するステップは、複数の試験ゾーンのそれぞれについて、試験ゾーンが光検出を実行するのに用いられる光検出器の検出ゾーン内にあるときを表す値を決定することを含んでもよい。さらに、決定するステップは、マイクロ流体デバイスの試験ゾーンの生理化学特性を決定することを含んでもよい。例えば、生理化学特性は、複数の試験ゾーンのそれぞれにより決定できるアナライトを表す。さらに、決定するステップは、使用に先立って、マイクロ流体デバイス内に貯蔵された試薬のアイデンティティを決定することを含んでもよい。
【0021】
試験ゾーンの垂直寸法に沿った幅に対する主軸に沿った長さの割合は、少なくとも2.5またはさらに少なくとも5であってもよい。
【0022】
光学的に検出するステップは、接触ステップの後に、試験ゾーンを液体のないサンプルと最初に接触させることなく実行されてもよい。
【0023】
光学的に決定するステップは、試験ゾーンからの蛍光を励起および検出することを含んでもよい。
【0024】
別の態様では、分析方法は:
間隔を空けた試験ゾーンのアレイをサンプルと接触させることを含み、試験ゾーンは、第1の面と第2の面との間に配置され、各試験ゾーンは、それぞれのアナライトに対する分析に関係するように構成されたプローブ化合物を含むことと、
試験ゾーンに対応する位置における内面間の距離を低減することと、
対応する位置における内面間の距離が低減された複数の試験ゾーンのそれぞれにおける分析の結果を連続的に光学的に決定することとを含む。
【0025】
分析方法はさらに、複数の試験ゾーンのそれぞれについて、分析の結果に基づいてそれぞれのアナライトの存在を決定することを含んでもよい。
【0026】
試験ゾーンの少なくともいくつかのそれぞれについて、分析結果は、試験ゾーンのアナライトとプローブ化合物との間の結合反応を表すことができる。
【0027】
光学的に決定するステップは、ゼロ次検出器を用いて試験ゾーンのそれぞれからの光を検出することを含んでもよい。
【0028】
ゼロ次検出器を用いて試験ゾーンのそれぞれからの光を検出するステップは、基本的に、ゼロ次検出器を用いて光を検出することであってもよい。
【0029】
分析方法はさらに、内面間の距離が低減された、複数の位置のそれぞれについて、試験ゾーンにおいて光学的に決定するステップの後に、その後に内面間の距離を増加することを含んでもよい。
【0030】
距離を低減するステップは、試験ゾーンに対応する位置における内面間の距離を連続的に低減することを含んでもよい。
【0031】
別の態様では、分析システムは:
間隔を空けた試験ゾーンのアレイを備えるマイクロ流体デバイスを受け取るように構成されたマイクロ流体デバイスリーダであって、試験ゾーンはマイクロ流体デバイスの第1基板の内面と第2基板の内面間に配置され、基板の少なくとも一方は柔軟性があり、各試験ゾーンは標的アナライトに対する分析に関係するように構成されたプローブ化合物を含む、マイクロ流体デバイスリーダと、
少なくとも1つの試験ゾーンがマイクロ流体デバイスの検出ゾーン内にあるとき、試験ゾーンの少なくとも1つからの光を検出するように構成された光検出器と、
マイクロ流体デバイスおよび光検出器の検出ゾーンのうちの少なくとも一方を他方まで移動させるように構成された移動器と、
光デバイスの検出ゾーンに対応する位置における第1基板および第2基板の内面間の距離を低減するように構成された圧縮器と、
光検出器からの信号を受け取るように構成されたプロセッサであって、信号は試験ゾーンから検出された光を表すプロセッサとを備える。
【0032】
システムは、わずかN個の試験ゾーンからの光を同時に光学的に検出するように構成されてもよい。ここで、N≦5またはN≦3またはN=1である。
【0033】
検出器は蛍光検出器であってもよい。
【0034】
別の態様では、分析デバイスは、両基板の間にチャネルを画定する第1および第2基板を備え、基板の少なくとも一方は柔軟性があり、チャネルは間隔を空けた試験ゾーンのアレイを備え、各試験ゾーンは標的アナライトに対する分析に関係するように構成されたプローブ化合物を含む。
【0035】
別の態様では、製造品は:
基板と、
複数の細長い試験ゾーンとを備え、各試験ゾーンは標的アナライトに対する分析に関係するように構成されたプローブ化合物をそれぞれ備え、各試験ゾーンは主軸とこの主軸に垂直な幅とを画定し、試験ゾーンの主軸は概して平行である。
【0036】
別の態様では、分析方法は:
毛細管の穴に液体サンプルを導入することと、
液体サンプルの液体サンプル−ガスの境界面に作用する圧力を低減することにより、液体サンプルの少なくとも一部をマイクロ流体デバイスのマイクロ流体ネットワーク内に導入することとを含む。
【0037】
分析方法はさらに、毛細管の穴に液体サンプルを導入するステップの後に、毛細管をマイクロ流体デバイスに接続し、液体サンプルが毛細管内に残るようにすることを含んでもよい。
【0038】
圧力を低減するステップは、マイクロ流体ネットワークの少なくとも一部を圧縮することによりネットワークからガスを移動させ、およびその後に、マイクロ流体ネットワークの少なくとも一部を減圧することにより実行されてもよい。
【0039】
マイクロ流体ネットワークは、一般に平らな第1および第2の基板により、それら基板の間に少なくとも部分的に画定され、基板の少なくとも一方は、外部圧力を加えると変形して、マイクロ流体ネットワークの少なくとも一部を圧縮し、少なくとも一方の基板は、外部圧力を解放すると最初の状態に回復して、マイクロ流体ネットワークの少なくとも一部分の復元を可能にする傾向がある。
【0040】
さらに、マイクロ流体ネットワークは、入口および入口と流体連通する検出領域を含むマイクロ流体チャネルと、検出領域と流体連通するマイクロ流体流路とによって少なくとも部分的に画定されることができ、マイクロ流体流路は、外部圧力を加えると少なくとも部分的に変形して、マイクロ流体流路の少なくとも一部を圧縮する壁面を有し、壁面は外部圧力を解放すると最初の状態に回復して、マイクロ流体流路の少なくとも一部分の復元を可能にする傾向がある。
【0041】
分析方法はさらに、液体サンプルをマイクロ流体ネットワーク内に存在する1つ以上の試薬と混合して、混合物を生成することを含んでもよい。混合物は、マイクロ流体ネットワークに導入された液体サンプルの少なくとも90%を含んでもよい。1つ以上の試薬は、サンプルと反応して、サンプル中に存在するラベルおよびアナライトを含む複合物を生成する、検出可能なラベルを含む。
【0042】
分析方法はさらに、液体サンプルのサブセット内に存在する複合物の量を表す信号を光学的に検出することを含んでもよく、サブセットはマイクロ流体デバイスの検出ゾーン内に存在する。
【0043】
分析方法はさらに、検出ゾーンから液体サンプルのサブセットを移動することと、検出ゾーンに液体サンプルの異なるサブセットを導入することと、異なるサブセット内に存在する複合物の量を表す信号を光学的に検出することとを含んでもよい。サブセットを移動するステップおよび異なるサブセットを導入するステップは、マイクロ流体ネットワークの少なくとも一部を圧縮することにより実行され、圧縮部分はネットワークに沿って検出ゾーンから少なくとも部分的にずれている。少なくとも一部を圧縮するステップは、マイクロ流体ネットワークの第1部分を圧縮することと、最初に圧縮を完全に解放することなく、移動および導入のステップを実行するのに十分な量だけ、マイクロ流体ネットワークに沿って圧縮位置を移動することとを含んでもよい。
【0044】
分析方法はさらに、マイクロ流体ネットワークの圧縮を最初に完全に解放することなく、異なるサブセット内に存在する複合物の量を表す信号を光学的に検出するステップを実行することを含んでもよい。
【0045】
分析方法はさらに、毛細管の穴に液体サンプルを導入するステップと液体サンプルの少なくとも一部をマイクロ流体ネットワークに導入するステップとの中間に、液体サンプルが毛細管から流れ出すのを防止することを含んでもよい。液体サンプルが毛細管から流れ出るのを防止するステップは、液体サンプル−ガスの境界面に作用する圧力を増加することを含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体ネットワークは液体サンプルの毛細管の流れを促進しない。第1および第2基板の少なくとも一方により画定される、マイクロ流体ネットワークの内面は疎水性であってもよい。
【0047】
アナライトは粒子、例えば細胞であってもよい。
【0048】
分析方法はさらに、マイクロ流体デバイスおよび光検出器のうちの少なくとも一方を他方に対して移動することと、その後に液体サンプルの異なるサブセット内に存在する複合物の量を表す光信号を検出することとを含んでもよい。
【0049】
毛細管は第1および第2開放端を備える、エンドツーエンド毛細管であってもよく、毛細管の穴は全容積Vを含み、液体サンプルの少なくとも一部を導入するステップはマイクロ流体ネットワーク内に液体サンプルの少なくとも90%を導入することを含む。
【0050】
別の態様では、分析方法は:
マイクロ流体デバイスの第1基板の内面と第2基板の内面との間に配置されたマイクロ流体ネットワークに液体サンプルを導入することを含み、基板の少なくとも1つは柔軟性があり、液体サンプルは複数の粒子を含むことと、
マイクロ流体ネットワーク内の複数の位置における第1および第2基板の内面間の距離を連続的に低減することにより、液体サンプルの少なくとも一部分および光ラベルを含む混合物を生成することと、
複数の複合物を生成することを含み、各複合物は複数の粒子のうちの1つおよび光ラベルの少なくとも1つを備えることと、
混合物のサブセット内に存在する複合物を検出することとを含む。
【0051】
分析方法はさらに、混合物の複数の異なるサブセットのそれぞれの中に存在する複合物を検出することを含んでもよい。
【0052】
複数の異なるサブセットの全容積は、マイクロ流体デバイスに導入される液体サンプルの容積の少なくとも90%であってもよい。
【0053】
分析方法はさらに、液体サンプルの全容積Vをマイクロ流体デバイスに導入することを含んでもよく、この場合、混合物の全容積は容積Vの少なくとも90%である。
【0054】
分析方法はさらに、混合物の全容積の少なくとも90%内に存在する複合物を検出することを含んでもよい。
【0055】
粒子は細胞であってもよい。
【0056】
光ラベルは蛍光ラベルであってもよい。
【0057】
別の態様では、分析方法は:
マイクロ流体デバイスの第1基板の内面と第2基板の内面との間に配置されたマイクロ流体ネットワークに液体サンプルの全容積Vを導入することを含み、基板の少なくとも一方は柔軟性があり、液体サンプルは複数の粒子を含むことと、
マイクロ流体ネットワーク内で混合物を生成することを含み、混合物は液体サンプルの容積Vの少なくとも約90%および光ラベルを含むことと、
複数の複合物を生成することを含み、各複合物は複数の粒子のうちの1つおよび光ラベルの少なくとも1つを含むことと、
混合物のサブセット内に存在する複合物を検出することとを含む。
【0058】
混合物は液体サンプルの容積Vの少なくとも約95%を含んでもよい。
【0059】
分析方法はさらに、混合物の複数の異なるサブセットのそれぞれの中に存在する複合物を検出することを含んでもよい。
【0060】
複数の異なるサブセットの全容積はマイクロ流体デバイスに導入される液体サンプルの容積の少なくとも約90%であってもよい。
【0061】
別の態様では、アナライトを検出するデバイスは:
入口および入口と流体連通する検出領域を含む、マイクロ流体チャネルを有するカートリッジと、少なくとも部分的に変形可能な壁面を有し、チャネルの検出領域と流体連通する、マイクロ流体流路と、入口を密封し、入口、マイクロ流体チャネルおよびマイクロ流体流路を含む流体回路を形成するように構成された密閉部材を有するキャップとを備える。
【0062】
検出デバイスのキャップおよびカートリッジは流体回路形成後に不可逆的に閉じられるように構成されてもよい。
【0063】
あるいは、キャップはカートリッジに柔軟に結合されてもよい。
【0064】
さらに、キャップおよびカートリッジは、キャップを取り外しできるような第1の相対的位置に係合し、および流体回路形成後にキャップを不可逆的に閉じるような第2の相対的位置に係合するように構成されてもよい。
【0065】
検出領域はカートリッジの少なくとも1つの面と蓋の1つの面とにより範囲を限定されてもよい。蓋は、検出領域を覆う透明フィルムを含んでもよい。さらに、蓋はカートリッジに接着剤で固定されてもよい。
【0066】
別の態様では、アナライトを検出するデバイスは内面上に抗凝固剤を有する毛細管の入口を含むマイクロ流体チャネルと、試薬を含むチャンバと、入口と流体連通する検出領域とを有するカートリッジと、少なくとも部分的に変形可能な壁面を有し、およびチャネルの検出領域と流体連通するマイクロ流体流路と、入口を密封し、入口、マイクロ流体チャネルおよびマイクロ流体流路を含む流体回路を形成するように構成された密閉部材を有するキャップとを備える。
【0067】
別の態様では、蛍光検出器は光源と、10°以上の立体角を得る集光レンズと、10°以上の立体角を得て顕微鏡対象物を撮像するように構成された対物レンズとを含む。
【0068】
集光レンズおよび/または対物レンズは、10°から15°の立体角、例えば12°から14°(例えば13.5°)を得ることができる。
【0069】
蛍光検出器はさらに開口を含んでもよい。開口は、10°以上の立体角(例えば10°から15°または12°から14°または13.5°)を得るように構成されてもよい。
【0070】
蛍光検出器はさらに少なくとも1つのフィルタを含んでもよい。フィルタは所定の一連の放射波長に関して選択されてもよい。例えば、1つのフィルタは1つの特定の波長を有する光を通過するように選択され、別のフィルタは、例えば、カートリッジ内のラベリング試薬のために用いられる染料の放射波長に依存して、異なる特定の波長を有する光を通過するように選択されてもよい。
【0071】
別の態様では、アナライトを検出するシステムは:
カートリッジを備え、このカートリッジは、入口および入口と流体連通する検出領域を含むマイクロ流体チャネルと、少なくとも部分的に変形可能な壁面を有し、およびチャネルの検出領域と流体連通するマイクロ流体流路と、入口を密封し、入口、マイクロ流体チャネルおよびマイクロ流体流路を含む流体回路を形成するように構成された密閉部材を有するキャップと、光源を含む蛍光検出器と、10°以上の立体角を得る集光レンズと、10°以上の立体角を得る対物レンズとを含む。
【0072】
蛍光検出器はカメラを含んでもよい。
【0073】
さらに、蛍光検出器は1つ以上の選択可能な放射フィルタを含んでもよい。
【0074】
別の態様では、液体サンプル中のアナライトを検出する方法は:
マイクロ流体チャネルに液体サンプルを導入し、これにより、チャネルにより密封され、および輸送流体により第1端において範囲を限定された連続した液体スラグを生成することと、
輸送流体が液体スラグの第1端と第2端との間の流体連通を提供するように流体回路を形成することと、
輸送流体によって液体スラグの第1および第2端に差圧を加えることとを含む。
【0075】
別の態様では、液体サンプル中のアナライトを検出する方法は:
マイクロ流体チャネルに液体サンプルを導入し、これにより、チャネルにより密閉されおよび輸送流体により第1端において範囲を限定された連続した液体スラグを生成することを含み、液体サンプルは複数の粒子を含むことと、
輸送流体が液体スラグの第1端と第2端との間の流体連通を提供するように流体回路を形成することと、
輸送流体によって液体スラグの第1および第2端に差圧を加えることにより、液体サンプルの少なくとも一部および光ラベルを含む混合物を生成することと、
複数の複合物を生成することを含み、各複合物は複数の粒子の1つおよび光ラベルの少なくとも1つを含むことと、
混合物のサブセット内に存在する複合物を検出することとを含む。
【0076】
次に、デバイスおよび方法(例えば、アナライトを検出するデバイス、システムおよび方法)のさらなる例示的な実施形態が説明される。
【0077】
流体回路の一部は弾性変形可能な壁面により形成されてもよい。
【0078】
液体スラグの第1および第2端に差圧を加えるステップは、弾性変形可能な壁面を圧縮することを含んでもよい。
【0079】
液体サンプルは、所望に応じて、決定されるべきアナライトに基づいて選択されてもよい。例示的なサンプルは、水、水溶液、有機溶液、無機溶液、ヒトおよび他の動物の体液、例えば尿、痰、唾液、脳脊髄液、全血、ならびに血漿および血清などの血液由来の物質を含む。
【0080】
決定されるべきアナライトは、所望に応じて選択されてもよい。例えば、アナライトは、医薬品(例えば診断)、研究(例えば薬物発見)、産業(例えば水または食品の品質の監視)または法医学に関係してもよい。決定されるべき例示的なアナライトは、病気などの生理学的状態のマーカ(例えば診断マーカまたは予測マーカ)を含む。このようなマーカは心臓マーカ(例えばナトリウム利尿ペプチドおよびトロポニンファミリのメンバ)、がんマーカ(例えば核マトリクス蛋白質)、遺伝子マーカ(例えばポリヌクレオチド)、敗血症マーカ、神経マーカおよび病原性状態を示すマーカを含む。アナライトは、病原体(例えばバクテリア、ウイルスまたは菌類)の存在を表すものであってもよい。
【0081】
典型的な実施形態では、アナライトの1つ以上は、ウイルス、バクテリア、細胞、菌類または胞子などの粒子を含む。例えば、国際特許出願第PCT/EP2006/069153号(この全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載された粒子はいずれも検出可能である。自然発生粒子の例には、特に原核細胞(例えば、大腸菌または枯草菌などのバクテリア細胞)、真核細胞(例えば、サッカロマイセスセレヴィシエなどのイースト菌、Sf9またはHigh5細胞などの昆虫細胞、ヒーラ細胞またはコス細胞などの永遠に伝えられる細胞系および哺乳動物の血液細胞などの1次細胞)またはウイルス(例えばMI3またはT7ファージなどのファージ粒子)を含む。1つの実施形態では、粒子は細胞であってもよい。
【0082】
ラベルまたはプローブ化合物または捕捉分子は、所望に応じて、決定されるべきアナライトに基づいて選択されてもよい。アナライトの存在を決定するための適切なラベルまたはプローブ化合物は、2006年9月22日出願の米国仮特許出願第60/826,678号に記載されており、この仮出願の全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。ラベルまたは捕捉分子またはプローブまたはプローブ分子または分子プローブは、分子または複合物を示すと理解され、これらのラベルまたは分子を用いて、特定の特性結合挙動または特定の反応性によって、他の分子を検出できる。例示的なプローブ化合物は、ペプチドなどの生体高分子、蛋白質、抗原、抗体、炭水化物、核酸および/またはこれらの類似物および/または上述の生体高分子の混合高分子を含む。
【0083】
本発明に従って使用できる検出可能なマーカまたはラベルは、化学的、物理的または酵素反応において、検出可能な化合物または信号を直接または間接的に生成する、任意の化合物を含む。好ましくは、ラベルは、特に酵素ラベル、着色ラベル、蛍光ラベル、色素ラベル、発光ラベル、放射ラベル、ハプテン、ビオチン、金属複合物、金属から選択されてもよく、および蛍光ラベルを有するコロイド金が特に好ましい。これらの種類のラベルすべては当該技術分野では十分に確立されている。このようなラベルが介在する物理的反応の例は蛍光放射である。したがって、光ラベルは蛍光ラベルであってもよい。
【0084】
分析方法はさらに、第1光ラベルおよび第2光ラベル抗体でアナライトをラベリングすることを含んでもよく、この場合、第1および第2光ラベルは異なる。第1および第2光ラベルは、別個の放射波長を有する、第1および第2蛍光性ラベルであってもよい。ラベルは抗体であってもよい。例えば、分析方法はさらに、第1光ラベル蛍光性抗体および第2蛍光性抗体でアナライトをラベリングすることを含んでもよく、この場合、第1および第2蛍光性抗体は別個の放射波長を有する。
【0085】
アナライトを検出するステップは、第1蛍光抗体の放射波長においてアナライトの第1画像を記録することと、第2蛍光抗体の放射波長においてアナライトの第2画像を記録することと、第1および第2画像を比較することとを含んでもよい。
【0086】
分析方法はさらに、混合物の複数の異なるサブセットのそれぞれの中に存在する複合物を検出することを含んでもよい。例えば、マイクロ流体デバイスの各混合物内の粒子は、存在する場合、検出可能なラベルと結合して、複合物を生成できる。複合物の生成を可能にする適切な培養期間後に、複合物の存在が検出される。複合物の検出の例は、国際特許出願第PCT/EP2006/068153号に記載され、この全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
複数の異なるサブセットの全容積は、マイクロ流体デバイスに導入される液体サンプルの容積の少なくとも90%であってもよい。
【0088】
分析方法はさらに、マイクロ流体デバイスに液体サンプルの全容積Vを導入することを含んでもよく、この場合、混合物の全容積は容積Vの少なくとも約90%または少なくとも約95%であってもよい。
【0089】
分析方法はさらに、混合物の全容積の少なくとも10%内、例えば、混合物の全容積の10%から90%、15%から50%または20%から30%内に存在する複合物を検出することを含んでもよい。
【0090】
マイクロ流体チャネルは入口および入口と流体連通する検出領域を含んでもよい。さらに、マイクロ流体チャネルはマイクロ流体デバイスのマイクロ流体チャネルであってもよい。
【0091】
分析方法はさらに、液体サンプルをマイクロ流体チャネルに導入する前に、毛細管の穴に液体サンプルを導入することを含んでもよい。
【0092】
毛細管は一般に、標準的な毛細管(例えばプラスチック毛細管などのエンドツーエンド毛細管)である。エンドツーエンド毛細管は内側の穴と、第1および第2開口(1つは穴のどちらかの端部にある)とを含む。毛細管の穴は、へパリンなどの凝固防止剤を含んでもよい。例えば、毛細管はヘパリンなどでコーティングされた抗凝固剤であってよい。一般に、毛細管の穴は液体サンプルの全容積Vを含むように構成される。容積Vは一般に、約25マイクロリットル以下(例えば約20マイクロリットル以下、約15マイクロリットル以下、約10マイクロリットル以下、約5マイクロリットル以下)である。一般的に、容積Vは約1マイクロリットル以上(例えば約3または5または7.5マイクロリットル以上)である。
【0093】
分析方法はさらに、毛細管の穴に液体サンプルを導入するステップとマイクロ流体チャネルに液体サンプルを導入するステップとの中間に、マイクロ流体デバイスに毛細管を接続し、液体サンプルが毛細管内に残るようにすることを含んでもよい。
【0094】
分析方法はさらに、液体サンプルのサブセット内に存在する複合物の量を表す信号を光学的に検出することを含んでもよく、サブセットはマイクロ流体デバイスの検出ゾーンまたは検出領域内に存在する。
【0095】
いくつかの実施形態では、毛細管の出口は、例えば約5μL、10μLまたは20μLの所定の容積を有する反応チャンバに向かって開いている。いくつかの実施形態では、反応チャンバは試薬ペレットを含む。試薬ペレットは、ラベル、例えば、蛍光染料でラベルされ、サンプル内で検出されるべき抗原に親和性を有する抗体を含んでもよい。例えば、液体サンプル中のヘルパーT細胞の数を検出するために、試薬ペレットは、第1蛍光染料(例えばフィコエリトリン)でラベルされたアンチ−CD4+−抗体、および第2蛍光染料(例えばフィコエリトリン−Cy5)でラベルされたアンチ−CD3+−抗体、塩、および安定化試薬などを含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1ゾーンの内面はサンプルを処理するのに必要な試薬で覆われる。液体サンプル中の細胞などの粒子を検出するための例示的な分析は、例えば、国際公開第2007/051861号パンフレットに記載されており、この明細書の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。国際公開第2007/051861号パンフレットに記載されているように、検出はマイクロ流体チャネル内で実行されてもよい。したがって、マイクロ流体チャネルは少なくとも部分的に光学的に透明である。例えば、マイクロ流体チャネルは少なくとも部分的に光透過性の層で覆われてもよい。
【0096】
液体サンプルを導入するステップは、弾性変形可能な壁面を圧縮することにより実行されてもよい。弾性変形可能な壁面を圧縮するステップは、流体回路の第1部分を圧縮することと、および最初に圧縮を完全に解放することなく、圧縮箇所を、移動および導入のステップを実行するのに十分な量だけ流体回路に沿って移動することとを含んでもよい。
【0097】
分析方法は、最初に圧縮を完全に解放した状態で、異なるサブセット内に存在する複合物の量を表す信号を光学的に検出するステップを実行することをさらに含む。
【0098】
分析方法はさらに、毛細管の穴に液体サンプルを導入するステップとマイクロ流体チャネルに液体サンプルの少なくとも一部を導入するステップとの中間に、液体サンプルが毛細管から流れ出るのを防止することを含んでもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体チャネルの検出領域は液体サンプルの毛細管流れを促進しない。
【0100】
さらに、マイクロ流体チャネルの内面の少なくとも一部は疎水性であってもよい。
【0101】
分析方法はさらに、マイクロ流体デバイスおよび光検出器の少なくとも一方を他方に対して移動し、その後に液体サンプルの異なるサブセット内に存在する複合物の量を表す光信号を検出することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】マイクロ流体デバイスを示している。
【図2】図1のマイクロ流体デバイスの側面図である。
【図3a】図1のマイクロ流体デバイスの2つの試験ゾーンの平面図である。
【図3b】図3aの試験ゾーンを形成する方法を示している。
【図3c】図3aの試験ゾーンを形成する方法を示している。
【図3d】図3aの試験ゾーンを形成する方法を示している。
【図3e】図3aの試験ゾーンを形成する方法を示している。
【図3f】図3aの試験ゾーンを形成する方法を示している。
【図3g】図3aの試験ゾーンを形成する方法を示している。
【図4】図1のマイクロ流体デバイスを作動するために構成されたシステムの側面図である。
【図5】図1のマイクロ流体デバイスを作動するために構成されたシステムの部分側面図である。
【図6】図1のマイクロ流体デバイスのチャネルに沿った位置に応じて蛍光強度データを示している。
【図7】マイクロ流体デバイスを示している。
【図8a】図7のマイクロ流体デバイスの2つの試験ゾーンうちの一方の平面図である。
【図8b】図7のマイクロ流体デバイスの2つの試験ゾーンのうちの他方の平面図である。
【図9】マイクロ流体デバイスを示している。
【図10a】図9のマイクロ流体デバイスの断面側面図であり、また液体サンプル物質を含む毛細管を示している。
【図10b】毛細管がマイクロ流体デバイスの入口に接続されている状態の、図10aのマイクロ流体デバイスを示しており、液体サンプルはマイクロ流体デバイスのマイクロ流体ネットワーク内に進入していない。
【図10c】液体サンプルの一部がサンプル毛細管からマイクロ流体デバイスのマイクロ流体ネットワーク内に吸入されている状態の、図10cのマイクロ流体デバイスを示している。
【図10d】液体サンプルをサンプル毛細管からマイクロ流体デバイスのマイクロ流体ネットワーク内に吸引するステップが完了している状態の、図10cのマイクロ流体デバイスを示している。
【図10e】液体サンプルの一部がマイクロ流体ネットワークの全長に沿って距離Δl移動された状態の、図10dのマイクロ流体デバイスを示している。
【図10f】図10eのマイクロ流体デバイスおよび液体サンプルの一部中に存在するアナライトの検出を示している。
【図11】図1、図7および図9のいずれかのマイクロ流体デバイスを作動するための作動システムを示している。作動システムは、図4および図5の作動システムのいずれかまたはすべての機能を含む。
【図12】流体回路の概略図を示している。
【図13】流体回路を有するカートリッジの断面図を示している。
【図14a】蛍光検出器の断面図を示している。
【図14b】蛍光検出器の断面図を示している。
【図15】検出器の光路の概略図を示している。
【図16a】蛍光検出器を用いる細胞計数分析の図を示している。
【図16b】蛍光検出器を用いる細胞計数分析の図を示している。
【図17】蛍光検出器を用いる細胞計数分析から生じる2つの画像の重ね合わせを示している。
【発明を実施するための形態】
【0103】
サンプルを分析して複数のアナライトの存在を決定する方法(例えば定性的におよび/または定量的に)は、マイクロ流体デバイスのチャネル内にサンプルを導入することを含む。マイクロ流体デバイスは、分析の設計および複雑性に依存して、単一チャネルまたは複数チャネルを有してもよい。いくつかの実施形態では、チャネルは、デバイスの第1および第2基板の対向した内面の間に画定される。
【0104】
一般に、分析を実行するためのデバイスは、少なくとも1つの変形可能な表面により範囲を限定される、マイクロ流体流路を含んでもよい。例えば、マイクロ流体流路は、デバイスの第1および第2基板の対向した内面の間に画定され、第2基板は第1基板と比較すると相対的に柔軟であってもよい。別の例では、マイクロ流体流路の一部は圧縮可能なゾーンを含んでもよい。圧縮可能なゾーンは流体回路の全長であってもよく、全長に沿った回路の少なくとも1つの壁面は圧縮可能または変形可能である。局部的な圧縮力が変形可能な表面に加えられると、表面は変形する。十分な力が加えられると、変形可能な表面はマイクロ流体流路を中断する程度にまで圧縮される。マイクロ流体流路に対して表面の変形箇所を移動するステップは、具体的には、変形可能な表面がマイクロ流体流路を中断する程度に圧縮されるとき、マイクロ流体流路内の液体を移動できる。
【0105】
いくつかの実施形態では、第2基板は第1基板と比較して相対的に柔軟であってもよい。複数の試験ゾーンはチャネルに沿って間隔を空けていてもよい。各試験ゾーンは、それぞれのアナライトに対する分析に関係するように構成された、固定化されたプローブ化合物を含む。一般に、各分析はプローブ化合物と、それぞれのアナライトとのまたはアナライトおよび試薬(例えば光ラベル)を含むそれぞれの複合物との相互作用を含む。
【0106】
各試験ゾーンについての分析結果を決定するために、第2基板の外面に局部的な圧縮力を加えてもよい。圧縮力は、第1および第2基板の内面を分離する距離の局部的な低減を引き起こす。局部的な距離の低減する位置は、チャネル内に画定される光検出ゾーンと重なる。距離が低減されると、移動物質(例えばサンプル、非結合光プローブおよび/または試薬)は、検出ゾーンにおいて基板間から移動する。マイクロ流体デバイスは、試験ゾーンが検出ゾーンを連続的に通過するように移動される。各試験ゾーンについての分析結果は、試験ゾーンが検出ゾーンを通過するときに、光学的に(例えば蛍光によって)決定される。各アナライトの存在は、分析結果に基づいて決定される(例えば、定量的におよび/または定性的に)。
【0107】
分析結果は一般に、サンプルと試験ゾーンとを接触させた後、最初に試験ゾーンを洗浄液に接触させることなく、決定されてもよい。
【0108】
決定されるべきアナライトは所望に応じて選択されてもよい。例えば、アナライトは、医薬品(例えば診断)、研究(例えば薬物発見)、産業(例えば水または食品の品質の監視)または法医学に関係してもよい。決定されるべき例示的なアナライトは、病気などの生理学的状態のマーカ(例えば診断マーカまたは予測マーカ)を含む。このようなマーカは心臓マーカ(例えばナトリウム利尿ペプチドおよびトロポニンファミリのメンバ)、がんマーカ(例えば核基質蛋白質)、遺伝子マーカ(例えばポリヌクレオチド)、敗血症マーカ、神経マーカおよび病原性状態を示すマーカを含む。アナライトは、病原体(例えばバクテリア、ウイルスまたは菌類)の存在を表すものであってもよい。
【0109】
試験ゾーンのプローブ化合物は決定されるべきアナライトに基づいて、所望に応じて選択されてもよい。例示的なプローブ化合物はポリヌクレオチド、抗体および蛋白質を含む。
【0110】
サンプル液体は決定されるべきアナライトに基づいて、所望に応じて選択されてもよい。例示的なサンプルは、水、水溶液、有機溶液、無機溶液、ヒトおよび他の動物の体液、例えば尿、痰、唾液、脳脊髄液、血液全体および血漿および血清などの血液由来の物質を含む。
【0111】
図1、図2および図4を参照すると、マイクロ流体デバイス100および作動システム500を用いてサンプルを分析し、複数のアナライトの存在を決定する(例えば定量的および/または定性的に)ことができる。マイクロ流体デバイス100は、マイクロ流体ネットワーク107を画定する第1および第2基板102、104を含み、このネットワークは、入口106と、入口と連通するチャネル110およびリザーバ108を含む。複数の間隔を空けた試験ゾーン112iはチャネル110内に配置される。各試験ゾーン112iは、アナライトに対する分析に関係するように構成された、1つ以上の試薬(例えばプローブ化合物)を含む。チャネル110はまた参照ゾーン117を含む。デバイス100はまた、複数のインデシア116jを含む参照パターン114を含む。参照パターン114は試験ゾーン112iの空間特性に関する情報を提供する。
【0112】
作動システム500はハウジング502と、検出器504と、参照パターンリーダ506と、検出器504およびパターンリーダ508と通信するプロセッサとを含む。検出器504は、サンプルと試験ゾーン112iとの間の相互作用を検出する光学的な蛍光検出器である。検出器504は、光源550(例えば発光ダイオードまたはレーザダイオード)およびゼロ次光検出器552(例えば光電子増倍管またはアバランシェフォトダイオードなどのフォトダイオード)を含む。参照パターンリーダ506は、システム500の動作中にデバイス100の参照パターン114を読み取る。
【0113】
次に、マイクロ流体デバイス100およびシステム500をより詳細に説明する。
【0114】
第1基板102は一般に、蛍光ラベルからの蛍光を励起および検出するために有効な光の波長に対しては光学的に透過性(透明)である。例えば、第1基板102は、約350nmから約800nmの間の少なくとも1つの波長領域において、入射光の少なくとも約75%(例えば少なくとも約85%、少なくとも約90%)を透過してもよい。第1基板102は、例えば、高分子材料、ガラスまたはシリカから形成してもよい。第2基板104は一般に、曲げやすいまたは柔軟な材料(例えば弾性高分子材料)から形成される。第1基板102は第2基板104より柔軟性が劣ってもよい。例えば、第1基板102は実質的に硬質であってもよい(例えばデバイス100の操作を容易にするために十分に硬質)。
【0115】
チャネル110は毛細管チャネルである。入口106に供給されたサンプル113は、毛細管力によりチャネル110に沿って移動する。チャネル110は、主軸alに沿う方向に向けられる。リザーバ108は、サンプルの前方にガスの構成を防止するための通気孔111を含む。
【0116】
各試験ゾーン112iは一般に、アナライトが存在するときに検出可能な相互作用を提供するように構成された試薬(例えばプローブ化合物)を含む。相互作用は、例えば、対応するアナライトと試験位置のプローブ化合物との結合および/または対応するアナライトとプローブ化合物との間の化学反応を含んでもよい。反応により検出可能な生成物(例えば沈殿物)が生じる。例示的なプローブ化合物は、蛋白質、抗体およびポリヌクレオチドを含む。アナライトの存在を決定するための適切なプローブ化合物は、2006年9月22日出願の米国特許仮出願第60/826,678号に記載されており、この仮出願の全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
また図3aを参照すると、各試験ゾーン112iは、細長く、チャネル110の主軸alと概して垂直に向けられた主軸a2を有する。一般に、試験ゾーン112の垂直寸法に沿った幅wに対する主軸a2に沿った長さの割合は、少なくとも2.5(例えば少なくとも5)である。軸a2に沿った長さは、一般に少なくとも200μm(例えば少なくとも約360ミクロン)、一般に約2000μm以下(例えば約1000μm以下、約750μm以下)である。幅wは、一般に少なくとも約25μm(例えば少なくとも約50ミクロン)および一般に約500μm以下(例えば約250μm以下、約150μm以下)である。例示的な実施形態では、試験ゾーン112は長さが約500μmおよび幅が約100μmである。
【0118】
図2で明らかなように、試験ゾーン112iはチャネル110に沿って、近接する試験ゾーンから距離d7の間隔を空けている。試験ゾーン112i間の距離d7は検出器504の検出ゾーンに関連して以下に詳細に説明する。
【0119】
試験ゾーン112iは所望に応じて形成されてもよい。一般に、試薬は第1基板と接触する。次に、試薬および基板は相対的に横方向に移動され、細長い試験ゾーンを形成する。
【0120】
図3bから図3gを参照すると、試験ゾーン112iを形成する方法は、毛細管スポッタ400からの試薬を第1基板102上に分配することを含む。図3bでは、1つ以上のプローブ化合物を含む試薬液402の量は(例えば約2から8nlの間、約3から5nlの間)、毛細管スポッタの毛細管の遠位端404に導入される。遠位端404は一般に、約80から120μm(例えば約100μm)の間の直径を有する。試薬液402および基板102は、最初は距離d1だけ分離されている(例えば接触しない)。一般に、d1は少なくとも約250μm(例えば約500μm)である。
【0121】
図3cでは、遠位端404と基板102とは、試薬液402が基板102の位置と接触するように、より小さい分離距離d2になる。より小さい分離距離d2では、遠位部404は基板102の位置に近接する(例えばd2がゼロになるように接触する)。遠位端404および基板102は、近接する(例えば接触する)位置において、分離距離d2にしばらくの間(例えば約1秒以下、約0.5秒以下、約0.25秒以下)維持される。いくつかの実施形態では、遠位端402が近接する(例えば接触する)位置に維持される時間は、ほとんどゼロに近い。
【0122】
図3dでは、遠位端404および基板102は、遠位端404および基板が遠位端404の試薬液402により接続された状態である、中間分離距離d3まで移動される。一般に、中間分離距離d3は少なくとも約5μmである(例えば少なくとも約10μmおよび約30μm以下、約25μm以下)である。例示的な実施形態では、中間分離距離d3は約20μmである。
【0123】
図3eでは、遠位端404および基板102は、培養時間の間は中間分離距離d3に維持され、これにより、遠位端における試薬液402の少なくとも一部(例えば少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約40%)が気化して、試薬液402の残存部分402’のみが残るようにされる。一般に、試薬液402の約75%以下(例えば約50%以下)だけが気化して、溶液402’を残す。培養時間は溶液402の特性(例えばプローブ化合物の濃度および溶剤の蒸気圧)および遠位端404の環境(例えば相対湿度および相対温度)に依存する。通常の培養時間は、先端部および基板が近接位置d2にある時間より長い(少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも約35倍である)。例示的な培養時間は、最短で約5秒(例えば約10秒、少なくとも約20秒、少なくとも約25秒)である。
【0124】
図3fでは、中間分離d3における培養時間後に、遠位端404および基板102のうちの少なくとも一方が他方に対して横方向に移動され、主軸a2に沿って試薬液402’を分配する。図3gでは、横方向移動が完了すると、遠位端402と基板102とは分離し、試薬液によって接続されなくなる。例えば、遠位端404および基板102は、最初の分離距離dlに戻ってもよい。方法を繰り返して(例えば異なる試薬液を用いて)、基板の複数の位置のそれぞれにおいて細長い試験ゾーンに分配することができる。
【0125】
一般に、遠位端と基板の垂直方向の分離は、基板に対して遠位端を移動することにより変更される。一般に、遠位端と基板の水平方向の分離は、遠位端に対して基板を移動することにより実行される。例示的な試薬液、プローブ化合物および分配デバイスは、2006年9月22日出願の米国仮特許出願第60/826,678号に記載されており、この仮出願の全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
図3aで明らかなように、また図8aおよび図8bを参照すると、細長い試験ゾーン112iを形成する方法は、遠位端および基板を横方向に移動するステップを省略する分配方法に比べて、プローブ化合物のより均等な分配を実現する。試験ゾーン112iは第1部分119および第2部分121を含む。第1部分119におけるプローブ化合物の分布は、第2部分121または試験ゾーン312iにおける分布に比べてより均等であり、これは横方向移動のステップなしに実行された。
【0127】
図1に戻ると、参照ゾーン117は、サンプル中のいずれのアナライトの存在とも無関係に、検出器504により検出可能な応答を生成する。参照ゾーン117は一般に、蛍光媒体(例えば高分子または固定化蛍光分子)を含む。参照ゾーン117はシステム500の動作に関連して以下に詳細に説明する。
【0128】
参照パターン114のインデシア116jは、システム500の参照パターンリーダ506により読み取られるように構成される。インデシア116jは磁気材料(例えば磁気インク)から構成される。パターンリーダ506は、インデシア116jの存在を検出できる。参照パターン114はシステム500の動作に関連して以下に詳細に説明する。
【0129】
図4に戻ると、作動システム500のハウジング502は、デバイス100と、圧縮ローラ516および支持ローラ518、520を含む圧縮システムと、制動バネ514を含む移動アクチュエータ512とを収容するための開口部510を含む。デバイス100がハウジング500内に収容されると、検出器504はチャネル110内の光学検出ゾーン524を画定する。使用中は、デバイス100は検出ゾーン524に対して移動される。試験ゾーン112iは連続的に検出ゾーンに出入りする。検出器504はサンプルと連続する試験ゾーン112iとの間の相互作用を連続的に検出する。検出器504はまた参照ゾーン117を検知する。
【0130】
図6を参照すると、検出器504は、デバイス100が移動する距離(相対または絶対距離)に応じて信号600を出力する。信号600は、参照ゾーン117を表すピーク617と、各ゾーン112iにおける相互作用を表すピーク612iとを含む。同時に、パターンリーダ506は、デバイス100が移動する距離に応じて、インデシア116iを表す信号602を出力する。インデシア116iが試験ゾーン112iに空間的に関連することから、プロセッサ508は、試験ゾーンが信号を示さない場合(例えば、ゼロと区別できない信号612aを示す試験ゾーン112aの場合のような)であっても、検出ゾーン524が特定の試験ゾーンと一致する時を決定できる。参照ゾーン117および対応する信号617を、信号602の代替として、または信号602と組み合わせて用いることにより、信号600のどの領域が特定の試験ゾーンに対応するかを決定できる。
【0131】
次に、圧縮システムを説明する。使用中は、圧縮システムはデバイス100を圧縮して、チャネル110内の基板102、104間の距離を低減する。デバイス100がハウジング502内に収容されると、第1基板102の外面132は支持ローラ518、520の方向に向けられ、第2基板104の外面134は圧縮ローラ516の方向に向けられる。支持ローラ518、529と圧縮ローラ516と間の距離d4はデバイス100の厚みd1(図5)より小さい。第2基板104は第1基板102と比較して相対的に柔軟であることから、圧縮ローラ516は第2基板104を圧縮して、第2基板104の内面103と第1基板102の内面105との間の距離d6を局部的に低減する。
【0132】
弛緩状態(例えば非圧縮状態)では(図2)、距離d6は一般に少なくとも約25μm(例えば約50μm、少なくとも約75μm)である。非圧縮状態では、距離d6は一般に約500μm以下(例えば約250μm以下)である。局所的に低減された距離状態(例えば局所的に圧縮された状態)(図4の試験ゾーン112e)では、距離d6は一般に約15μm以下(例えば約10μm以下、約5μm以下例えば約25μm以下)である。低減された距離状態で分離された表面間で実行される蛍光検出の例は、国際特許出願第PCT/EP2005/004923号の米国継続出願に記載されており、この全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0133】
図4および図5で明らかなように、圧縮システムは、チャネル110の全長の一部のみにわたってチャネル110内の距離d8を低減する。典型的には、距離d8は、試験ゾーン112iを分離する距離d7に比べて、約5倍以下の長さ(例えば約3倍以下の長さ、約2倍以下の長さ、ほぼ同じの長さ)である。
【0134】
一般に、距離d7は十分大きく、検出器504により画定される光学検出ゾーン524がチャネル110内の試験ゾーン112iのすべてより小さい(例えば5以下、3以下、2以下)範囲を含む。例示的な実施形態では、d7は十分大きく、チャネル110の主軸alに沿った検出ゾーン524の幅は同時に3つを超える試験ゾーン112iに接触しない(例えば2つ以下、1つ以下である)。チャネル110の主軸alに垂直の検出ゾーン524の幅は一般に、軸a2に沿った試験ゾーン112iの長さとほぼ同一またはそれ以下(例えば75%以下、50%以下、30%以下)である。
【0135】
使用中、サンプル液体は入口106に供給される。毛細管力はサンプルをチャネル110に沿ってリザーバ108の方向に吸引する。サンプル液体はチャネル110に沿って試験ゾーン112iと接触する。サンプル内のアナライトは試験ゾーンのプローブ化合物と相互に作用する。適切な培養時間後、デバイス100がハウジング500に挿入され、移動アクチュエータ512のバネ514を圧縮する。デバイス100の挿入中、圧縮ローラ516および支持ローラ520は、デバイス100が圧縮されないように間隔を空けている。デバイス100が完全に挿入されると、検出ゾーン524は参照ゾーン117をほぼ覆うように配置される。圧縮ローラ516はチャネル110を局部的に圧縮する(図5)。
【0136】
サンプルのアナライトと試験ゾーン112iとの間の相互作用が決定される準備が完了すると(例えば培養期間後に)、移動アクチュエータ512は、検出器504の検出ゾーン524に対してデバイス100を移動する(図4)。試験ゾーン112iは検出ゾーン524を連続的に通過し、光源からの光で照射される。圧縮ローラ516は、距離d6の局部的低減が検出ゾーン524に空間的に一致するように配置される。したがって、光検出器は連続的に、試験ゾーン112iから光を検出し、この間、試験ゾーンのそれぞれは局部的に低減された距離状態(例えば局部的に圧縮される状態)にある(図4の試験ゾーン112e)。各試験ゾーンから発生する蛍光はレンズにより集光され、光検出器により検出される。距離d6の連続的な局部的低減および光学的決定は、各試験ゾーンが検出ゾーン524を通過して移動するまで、続行される。
【0137】
各試験ゾーンのプローブ化合物およびアナライトに加えて、第2基板104の内面103と第1基板102の内面105との間のチャネル110内に他の物質が存在する。このような物質の例はサンプルの付随物および試薬(例えば非結合または未反応の光プローブ)を含む。これらの物質は一般に、試験ゾーン112iとサンプルの相互作用に関連しない、背景放射(例えば、蛍光または散乱光)を生成する。背景放射の強度は一般に、検出ゾーン524に対応する位置における内面間に残る、このような物質の量に比例する。しかしながら、各試験ゾーンにおける相互作用を表す光信号の強度は、試験ゾーンの近辺に空間的に局所化している。光検出器は、相互作用を示す蛍光および背景放射の両方を受光し、検出する。
【0138】
図9、図10aおよび図11を参照すると、マイクロ流体デバイス700および作動システム500’を用いてサンプルを分析して、1つ以上のアナライトの存在を決定する(例えば定性的および/または定量的に)ことができる。典型的な実施形態では、アナライトの1つ以上は、ウイルス、バクテリア、細胞、菌類または胞子などの粒子を含む。例えば、国際特許出願第PCT/EP2006/068153号(全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載された粒子はいずれも検出可能である。
【0139】
マイクロ流体デバイス700は、マイクロ流体ネットワーク707を画定する第1および第2基板702、704を含み、このネットワークは、入口706と、入口と連通する複数のチャネル710a、710b、710c(各チャネルはそれぞれのリザーバ708a、708b、708cを有する)を含む。各リザーバは、アナライトに対する分析に関係するように構成された試薬物質709a、709b、709c(例えばプローブ化合物)を含む。デバイス700は、上述と同一であってもよい、複数のインデシア116j(図9、図10a、図11には図示せず)を含む参照パターン114を含んでもよい。
【0140】
作動システム500’はハウジング502’と、検出器504’と、参照パターンリーダ(図示せず)と、検出器504’およびパターンリーダと通信するプロセッサとを含む。検出器504は、アナライト(例えば粒子)および検出可能なラベル(例えば光ラベル)を含む複合物を検出する、光学的な蛍光検出器である。適切なラベルの例は、国際特許出願第PCT/EP2006/068153号に記載されており、この全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。検出器504’は、光源550’(例えば発光ダイオードまたはレーザダイオード)と光検出器552’(例えばダイオードアレイなどの1次検出器または多次元検出器(例えば電荷結合検出器などの画像検出器))とを含む。光検出器は一般に、マイクロ流体デバイスの各チャネル内に画定されたそれぞれの検出ゾーンからの光を空間的に選択して検出する。
【0141】
次に、マイクロ流体デバイス700およびシステム500’をより詳細に説明する。
【0142】
第1基板702は一般に、光学的に、蛍光ラベルからの蛍光を励起および検出するのに有効な光の波長に対しては光透過性(例えば透明)である。例えば、第1基板702は、約350nmから約800nmの間の少なくとも1つの波長範囲内の入射光の少なくとも約75%(例えば少なくとも約85%、少なくとも約90%)を透過してもよい。第1基板702は、例えば、高分子材料、ガラスまたはシリカから形成されてもよい。第2基板704は一般に、曲げやすいまたは柔軟な材料(例えば弾性高分子材料)から形成される。第1基板702は第2基板704より柔軟性が劣ってもよい。例えば、第1基板702は実質的に硬質であってもよい(例えば、デバイス700の操作を容易にするために十分に硬質)。
【0143】
チャネル710aから710cは一般に、チャネル内の液体サンプルの移動を促進するが、一般には毛細管チャネルではない(すなわち、液体は一般に、毛細管現象によりデバイス700のチャネル内で移動しない)。例えば、チャネルの1つ以上の内面は、液体サンプルの毛細管運動を抑制するために疎水性であってもよい。代替的に、またはこれと組み合わせて、チャネルの内側寸法を大幅に大きくして、毛細管力がチャネル内のサンプルの実質的な移動を駆動するようにしてもよい。当然ながら、いくつかの実施形態では、チャネルは毛細管チャネルであってもよい。
【0144】
デバイス700は3つのチャネルおよび対応するリザーバを備えて示されているが、一般にN個のチャネルおよび対応するリザーバを有し、ここではNは少なくとも1であり、一般に20未満である。
【0145】
各リザーバ708iは一般に、アナライトが存在する状態で検出可能な相互作用を提供するように構成された試薬735i(例えば光ラベルなどの検出可能なラベル)を含む。相互作用は、例えば、対応するアナライトをラベルに結合して、アナライトおよび1つ以上のラベルを含む複合物を生成することを含んでもよい。このような複合物の例は、国際特許出願第PCT/EP2006/068153号に記載されている(この全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。各試薬は一般に、異なるアナライトの検出を可能にするように構成される。
【0146】
図10bから図10fを参照すると、デバイス700は以下のように作動する。ある量の液体サンプル738(例えば、血液、唾液または尿などの生体液体)が毛細管736に導入される。毛細管737は一般に、標準的な毛細管(例えば、プラスチック毛細管などのエンドツーエンド毛細管)である。エンドツーエンド毛細管は内側の穴と、第1および第2開口と(一方の開口はどちらかの端部にある)を含む。毛細管は、へパリンなどで抗凝固コーティングされる。適切な毛細管の例には、Kabe Labortechnik社(Nurnbrecht−Elsenroth、Deutschland、http://www.kabe−labortechnik.de/index.php?sprache=de&akt_seite=startseite_produkte.php)から市販されている20μlへパリンでコーティングされた毛細管がある。一般に、毛細管の穴は、液体サンプルの全容積Vを収容するように構成される。容積Vは一般に約25マイクロリットル以下(例えば約20マイクロリットル以下、約15マイクロリットル以下、約10マイクロリットル以下)である。一般に、容積Vは約5マイクロリットル以上(例えば約7.5マイクロリットル以上)である。
【0147】
図10bで明らかなように、デバイス700の入口706は毛細管736を収容するように構成される。サンプル737は一般に、毛細管736内に残り、導入力を受けるまでマイクロ流体デバイスには入らない。
【0148】
図10cで明らかなように、導入力は、基板702、704の内面間の距離を低減することによりサンプル737に加えられ、マイクロ流体ネットワーク内の容積を低減する。例えば、図10cは、マイクロ流体ネットワークの一部に沿って移動するローラを示している。一般に、圧縮により、対向する内面は相互に接触する。チャネル内の容積が、チャネルの所定の領域の復元後に増加するに伴い、液体サンプル737の内面739に作用するガス圧が低減して、サンプルをマイクロ流体ネットワーク内に強制的に押し込む。圧縮および復元は、マイクロ流体ネットワークに沿ったローラ716の単一の連続移動で実行されるか、または蠕動方式のような複数ステップで連続的に実行されてもよい。
【0149】
図10dで明らかなように、液体サンプル737の容積Vの実質的にすべて(例えば少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、基本的にすべて)は、マイクロ流体ネットワーク内に吸入される。例示的な実施形態では、容積Vの少なくとも90%はネットワーク内に吸入される。
【0150】
マイクロ流体ネットワーク内の液体サンプルはチャネル710iおよびリザーバ708iのそれぞれに入り、各リザーバ内の試薬を移動させて混合物を生成する。一般に、混合物の生成は、マイクロ流体ネットワーク内に液体サンプルのバルク運動を引き起こすことにより促進される。このようなバルク運動は一般に、マイクロ流体デバイスの圧縮および復元により生じて、基板702、704の間の内側の距離を低減する。圧縮および復元は、他に対して、ローラ716およびマイクロ流体デバイス700の少なくとも一方の繰返し運動により、蠕動方式で実行されてもよい。
【0151】
一般に、デバイス700のN個のチャネル内の試薬735iの混合により生成される混合物の全容積は、デバイス700に導入される液体サンプルの量の少なくとも約70%(例えば少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、本質的にすべて)を含む。例示的な実施形態では、デバイス700のN個のチャネル内の試薬735iの混合により生成される混合物の全容積は、デバイス700に導入される液体サンプルの量の少なくとも約90%を含む。
【0152】
マイクロ流体デバイスの各混合物内の粒子は、存在する場合、検出可能なラベルと結合して複合物を生成する。複合物の生成を可能にする適切な培養期間後、複合物の存在が検出される。各試薬735iは一般に、異なるアナライトの検出を可能にするように構成される。複合物の検出の例は、国際特許出願第PCT/EP2006/068153号に記載されており、この全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0153】
図10fを参照すると、検出は一般に、デバイス内の各混合物のサブセット内で発生する。一般に、検出は各混合物の複数の異なるサブセット内で実行されてもよい。例えば、圧縮状態においてローラ716を移動し、混合物の新しい部分を各検出ゾーン内に移動することによって、各混合物の異なるサブセットは検出ゾーンを通過して移動できる。これを複数回実行することにより、各混合物の実質的にすべて(例えば少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、本質的にすべて)が検出を受けるようにしてもよい。この実施形態において、検出は圧縮状態においてローラ716を用いて実行される。すでに検出を受けた混合物は、廃棄物コンテナとして作用する毛細管736に入る。
【0154】
いくつかの実施形態では、検出の実行は、光検出器に対してデバイス700を走査することによって、各検出が連続的に溶液の異なるサブセットを含むようにしてなされる。これを複数回実行することにより、各混合物の実質的にすべて(例えば少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、本質的にすべて)が検出を受けるようにしてもよい。この実施形態において、検出は復元状態においてローラ716を用いて実行される。
【0155】
分析を実行する方法およびデバイスを説明した。他の実施形態の例を次に説明する。
【0156】
入口106は、遮るものがない開口として説明されているが、他の構成も可能である。例えば、入口は、シリンジを受け入れる、シリンジ取り付け部(例えば気密取り付け部)を備えて構成されてもよい。代替方法として、入口は、サンプルが針により導入されるガスケットとして構成されてもよい。別の代替方法として、入口は、サンプルを導入できるが、サンプルを排出できない、一方向弁を備えて取り付けられてもよい。別の代替方法として、入口は標準的な毛細管(例えばプラスチック毛細管などのエンドツーエンド毛細管)を受け入れるように構成されてもよい。毛細管は、へパリンなどの抗凝固剤でコーティングされてもよい。適切な毛細管の例には、Kabe Labortechnik社(Nurnbrecht−Elsenroth、Deutschland、http://www.kabe−labortechnik.de/index.php?sprache=de&akt_seite=startseite_produkte.php)から市販されている20μlへパリンコーティング毛細管がある。
【0157】
マイクロ流体デバイスが毛細管現象により満たされると説明してきたが、他の実施形態を用いてもよい。例えば、システム500は、サンプルを入口に供給する前に、マイクロ流体ネットワークの内部容積を低減するように設計されてもよい。サンプルが供給されると、内部容積が増加し、それによりサンプルを吸入する。このような容積の減少は、例えば、圧縮ローラ516を用いて達成されてもよい。例えば、マイクロ流体デバイスは、移動アクチュエータ512の制動バネ514が圧縮状態になるように、ハウジング500内に収容されてもよい。圧縮ローラ516は、リザーバ108に対応する位置でデバイス100を圧縮するように配置される。この圧縮によりリザーバ108の内部容積が低減する。容積の低減は、デバイス100内に受け入れられるサンプルの容積とほぼ同じ容積(例えば、容積より少なくとも約25%大きい、例えば容積より少なくとも50%大きい)である。リザーバ108が圧縮状態にあると、サンプルの容積はデバイス100の入口106に供給される。圧縮ローラ516は入口106から離れて、デバイス100の反対端137に向かって後退する。ローラ516がリザーバ108から離れると、リザーバが復元し、その結果マイクロ流体ネットワークの内部容積は増加する。容積の増加により、デバイスにサンプルを吸入する真空が生じる。
【0158】
開放毛細管チャネルを有するマイクロ流体デバイスを説明してきたが、他の実施形態を用いてもよい。例えば、チャネルは、全長の少なくとも一部に沿ってチャネルの断面の少なくとも一部(例えば大部分またはすべて)を占有する媒体を含んでもよい。一般に、媒体は、それぞれ間隔を空けた試験ゾーン(例えば捕捉容積)を画定するために、複数のプローブ化合物に固定できるものであり、各試験ゾーンは3次元に配置された捕捉位置を有する。媒体にある穴または空隙により、液体はチャネルに沿って浸透する(例えば毛細管現象によって)。チャネルに沿った液体の移動は、例えば、上述のようにチャネル内に真空を生成することにより、促進または誘発されてもよい。一般に、プローブ化合物は、チャネルに沿って間隔を空けた試験ゾーンを画定するために、多孔質の媒体に対して固定される。アナライトと試験ゾーンのプローブ化合物との相互作用は、デバイス100の試験ゾーン112iについて説明したのと同様に、連続的に決定されてもよい。各試験ゾーンは3次元に配置されるため、チャネルの対向する内面間の距離を低減するステップは、試験ゾーンの固定化されたプローブ化合物により占有される捕捉容積を低減する。光検出は、低減された容積(すなわち低減された距離)状態において試験ゾーンにおいて実行される。
【0159】
試験ゾーン112iは細長いとして説明してきたが、他の構成も可能である。例えば、図7を参照すると、マイクロ流体デバイス300は複数の試験ゾーン312iを含み、それぞれの試験ゾーンは概して円形構成を有する。形状の差以外は、試験ゾーン312iはデバイス100の試験ゾーン112iと同一であってもよい。試験ゾーンの差以外は、デバイス100および300は同一であってもよい。
【0160】
試験ゾーン112iを形成する方法は、遠位端404および基板102の横方向移動を開始する前に(図3f)、遠位端404および基板102を最初の分離距離d1(図3b)から近接分離距離d2(図3c)および中間分離距離d3(図3d)に移動する、と説明してきたが、他の実施形態が実行されてもよい。例えば、遠位端404および基板102を横方向に移動して、先端部404および基板102を近接分離距離d2に置いてもよい。この実施形態では、分離距離d2は一般に0より大きい。
【0161】
試験ゾーン112iを形成する方法は、試薬液402の残存部分402’のみが残るまで、培養時間の間に遠位端404および基板102を中間分離距離d3に維持するステップを含む、と説明してきたが、他の実施形態が実行されてもよい。例えば、遠位端404および基板102の横方向の移動は、遠位端404および基板102が近接分離距離d2(図3c)から分離距離d3(図3d)に移動されると、即座に開始してもよい。言い換えると、培養時間はほぼゼロであってもよい。別の例として、培養中、試薬液を気化するステップは、追加の試薬液を毛細管の先端に導入するステップに置き換えてもよい。したがって、毛細管の先端の試薬の総量は培養中に増加する。
【0162】
試験ゾーン112iを形成する方法は、遠位端404および基板102を分離距離d3に維持する培養時間を含む、と説明してきたが、他の実施形態が実行されてもよい。例えば、分離距離d3は培養時間中に変化してもよい。例えば、先端404を、培養時間中に基板102に対して水平方向および/または垂直方向に振動させてもよい。代替的に、またはこれと組み合わせて、先端404を、水平方向の移動中に基板102に対して水平方向および/または垂直方向に振動させてもよい。このような振動は、培養または水平方向の移動中に第1基板へのプローブ分子の輸送を促進できる。
【0163】
試験ゾーン112iを形成する方法は、毛細管分配デバイスを使用する、と説明してきたが、他の分配デバイスが使用されてもよい。例えば、物質は固体分配デバイス(例えば固体棒)から分配されてもよい。
【0164】
試験ゾーン112iを形成する方法は、ある量の試薬液を毛細管スポッタの毛細管の遠位端に導入し(図3b)、および先端および基板をより小さい分離距離d2に移動して、試薬液402が基板102の位置に接触するようにする、と説明してきたが、他の実施形態が実行されてもよい。例えば、試薬液は、遠位端および基板がより小さい分離距離に移動した後(例えば遠位端が基板と接触した後)にだけ、遠位端に導入されてもよい。
【0165】
チャネルの内面間の距離を連続的に低減する方法およびマイクロ流体デバイスリーダを説明してきたが、他の構成も可能である。例えば、マイクロ流体デバイスリーダは、チャネルの大部分(例えば実質的にすべてまたはすべて)に沿って、内面間の距離を同時に低減するように構成されてもよい。次に、リーダは検出器の検出ゾーンをチャネルに沿って移動して、異なる試験ゾーンが連続的に読み取られるようにしてもよい。
【0166】
第1の相対的に硬質な基板および第2の相対的に柔軟な基板を有するマイクロ流体デバイスを説明してきたが、他の実施形態が使用されてもよい。例えば、チャネルの対向する内面の画定する両方の基板は柔軟であってもよい。このような実施形態では、光検出器の一部は圧縮システムの一部を形成してもよい。例えば、マイクロ流体デバイスは、圧縮ローラと検出器の光学系との間を移動してもよい。
【0167】
参照パターンは、マイクロ流体デバイスの試験ゾーンの空間的特性に関する情報を提供する、と説明してきたが、参照パターンは、追加のまたは代替の情報を提供してもよい。例えば、参照パターンは、マイクロ流体デバイスの試験ゾーンの生理化学特性に関する情報を提供してもよい。このような特性には、それに対して試験ゾーンを構成して分析する、アナライトを含む。他の特性には、デバイス上に保存された試薬のアイデンティティおよび特性ならびにデバイスのデータ情報(例えば使用期限)を含む。
【0168】
磁気インデシアを含む参照パターンを説明してきたが、他のインデシアが使用されてもよい。例えば、インデシアが、周囲の物質と比較して異なる光学濃度または反射率を有する領域から形成されてもよい。参照パターンリーダは一般に、透過率または反射率によりインデシアを読み取るように構成された、光学式リーダである。
【0169】
他の実施形態では、第1基板は、例えば、射出成形によって形成されたチャネルを含んでもよい。チャネルは、2次元および3次元(すなわち幅および深さ)より実質的に大きい1次元(長さ)を有する。チャネルは、矩形、V字形(三角形)、U字形または他の形状の断面を有してもよい。いくつかの実施形態では、チャネルの断面の形状および/または寸法はチャネルの全長に沿って変化してもよい。第2基板は、接着剤により第1基板に固定されてもよい。第2基板は、例えば透明テープから形成されてもよい。第2基板(例えばテープ)が機械的剛性を有し、これにより、第2基板(例えばテープ)の外面の機械的接触が、第2基板の内面を実質的に変形させないようにしてもよい。
【0170】
ある特定の実施形態では、チャネルは、チューブ、パイプ、毛細管などの内面により画定されてもよい。チャネルは、矩形、V字形(三角形)または他の形状の断面を有してもよい。いくつかの実施形態では、チャネルの断面の形状および/または寸法はチャネルの全長に沿って変化してもよい。チャネルの一部は光学的に透明であってもよい。
【0171】
いくつかの実施形態では、チャネルは、分析に使用される検出システムにより検出可能であるように構成された、画定された構造体または固定化された分子などの、1つ以上の参照および/またはアライメントマークを含む。アライメントマークは、例えば、固定化された蛍光ビーズ、固定化された蛍光高分子、蛋白質、核酸などを含んでもよい。アライメントマークはまた、微細構造などとのような物理構造を含んでもよい。
【0172】
マイクロ流体デバイスは、サンプルをチャネルに導入した後に流体回路を形成するように構成されてもよい。流体回路はエンドレスループで液体サンプルを密封する。液体サンプルが流体回路内に密封され、液体サンプルの容積が流体回路の全容積より小さくなると、流体回路の残りの容積は輸送液体によって占められる可能性がある。輸送流体はサンプル流体と実質的に不混和性流体であってもよい(例えば、親水性/疎水性、または密度差の理由で)。輸送流体は、例えば空気などの気体であってもよい。典型的には、流体サンプルは連続スラグ内の流体回路内に存在する。
【0173】
流体回路の一部は圧縮可能なゾーンを含む。圧縮可能なゾーンは流体回路の全長であってもよく、全長に沿った回路の少なくとも1つの壁面は圧縮可能または変形可能である。圧縮可能なゾーンに局所的な圧縮力が加えられると、壁面は変形する。十分な力が加えられると、壁面は流体回路を中断する程度にまで圧縮される。最も一般的には、流体回路は所定の位置(この位置ではチャネルが輸送流体で満たされている)で中断される。
【0174】
流体回路が中断されると、流体回路内の流体サンプルの位置は、中断位置を流体回路の残りの位置に対して移動することにより、操作できる。中断位置を移動することにより、中断位置の一方側の輸送流体の容積が減少し、これに対応して、中断位置の他方側の輸送流体の容積が増加する。容積の変化は結果的に、流体サンプルの端部(すなわち、その位置において流体サンプルと輸送流体とが合流する)に差圧を発生する。流体サンプルは、流体回路内で移動することにより、圧力を均等化するように反応する。
【0175】
1つ以上の試験ゾーンがチャネルに沿って間隔を空けていてもよい。典型的には、各分析は、それぞれのアナライトとプローブ化合物との相互作用、またはアナライトおよび試薬(例えば光ラベル)を含むそれぞれの複合物とプローブ化合物との相互作用を含む。
【0176】
チャネル内のサンプルの位置は、圧縮可能なゾーンの一部に局所的な圧縮力を加えるように構成されたアクチュエータまたはローラにより制御できる。マイクロ流体デバイスはアクチュエータまたはローラに対して移動し、これによりサンプルがチャネル内の所望の位置に移動するようにされる。あるいは、マイクロ流体デバイスが静止している間に、ローラが移動してもよい。
【0177】
図12のa)は閉じた状態の流体回路10を示す。流体回路10は第1ゾーン1と、マイクロ流体チャネル2と、第2ゾーン3と、入口4とを含む。閉じた状態では、第2ゾーン3は入口4に緊密に接続されている。図12のb)は、入口4において流体サンプル5を受け入れる準備ができている、開いた状態の流体回路10を示す。流体サンプル5が入口4に接触した後、毛管現象により液体サンプル5を第1ゾーン1内に吸入する。図12のc)からd)は、サンプルが供給された後の閉じた状態の流体回路を示す。ローラ6は、第2ゾーンが非圧縮状態(図12のc)に示すとおり)、または圧縮状態(図12のd)に示すとおり)のいずれかになるように、第2ゾーン3に対して位置合わせされる。流体回路10内の液体サンプル5の位置は、ローラ6を位置合わせすることにより第2ゾーン3が圧縮状態なるようにし、および圧縮状態を維持する間に、第2ゾーン3に対してローラ6を移動することにより(図12のd)に矢印で示す)調節できる。流体回路が閉じているため、ローラ6の移動によりローラの両側に差圧が生じ、差圧が液体サンプルの移動を引き起こし、それにより、均等圧を回復する。流体回路はカートリッジ内で作用するように構成されてもよい。特定の例では、流体回路は変形によって圧縮できるマイクロ流体流路と、検出領域を含むマイクロ流体チャネルと、閉じた流体回路を可逆的または不可逆的に形成できる密封部材とを有してもよい。
【0178】
図13は例示的なカートリッジ100の切断図を示す。カートリッジ100は基板101と、キャップ102と、第1ゾーン103、コンジット108、チャネル105、第2ゾーン104、および入口/緊密接続部109を含む流体回路とを含む。チャネル105は少なくとも部分的に光透過性の層により覆われてもよい。第1ゾーン103は、所望のサンプル容積(例えば、1μLから20μL、2μLから10μL、または約5μL)を保持するために選択された、例えば毛細管であってもよい。毛細管はその内面を抗凝固剤でコーティングされてもよい。毛細管の入口109はサンプル106を受け入れるように構成される。いくつかの実施形態では、毛細管の出口は所定の容積(例えば、約5μL、10μLまたは20μL)を備える反応チャンバ110に向かって開いている。いくつかの実施形態では、反応チャンバ110は試薬ペレット107を含む。試薬ペレット107は、蛍光染料でラベルされ、およびサンプル中で検出される抗原に対する親和力を有する抗体を含んでもよい。例えば、液体サンプル中のヘルパーT細胞の数を検出するために、試薬ペレットは、第1蛍光染料(例えばフィコエリトリン)でラベルされたアンチ−CD4+−抗体、および第2蛍光染料(例えばフィコエリトリン−Cy5)でラベルされたアンチ−CD3+−抗体、塩、および安定化試薬などを含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1ゾーンの内面はサンプルを処理するのに必要な試薬で覆われる。液体サンプル中の細胞などの粒子を検出するための例示的な分析は、例えば、国際公開第2007/051861号パンフレットに記載されており、この明細書の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。反応チャンバ110と流体連通するコンジット108は、反応チャンバとチャネル105の第1端とを接続する。国際公開第2007/051861号パンフレットに記載されているように、検出はチャネル内で実行されてもよい。したがって、チャネルは少なくとも部分的に光学的に透明である。例えば、チャネル105は少なくとも部分的に透過性の層で覆われてもよい。チャネル105の第2端は、コンジット108を介して第2ゾーン104の第1端に接続される。第2ゾーンは少なくとも部分的に柔軟であり、これにより第2ゾーンの内径がゼロまで減少できる。たとえば、第2ゾーンは弾性シリコーンチューブなどであってもよい。第2ゾーンの第2端はキャップ102内に組み込まれ、このキャップ102は基板に接触し、第2ゾーンを保持するように適合されている。キャップを開くことにより、第1ゾーンと第2ゾーンとの間の緊密な接続部109が開き、キャップを閉じることにより、第1ゾーンと第2ゾーンとの間の緊密な接続部109が閉じる。
【0179】
出荷状態では、マイクロ流体デバイスは閉じられていてもよい。すなわち、第2ゾーンが接続部109において第1ゾーンとの緊密な接続を形成する。あるいは、マイクロ流体デバイスは開いた状態で出荷されてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、カートリッジが最初に閉じられた後に、カートリッジが開くのを防止するように構成された機構を含む(例えば安全目的のため)。キャップ102内の密封部材が毛細管103の端部との流体密封接続を形成すると、接続部109は閉じられる。動作中、ユーザはキャップを開き、それによりキャップの第1端の第1ゾーンを開放する。ユーザが第1ゾーンの開放端をサンプル液(例えば、指先穿刺により生成される血液液滴)に接触させる。このようにして、毛細管103はサンプルで満たされる。ユーザはキャップを閉じ、それにより第1ゾーンと第2ゾーンとの間の接続部109を閉じる。この段階で、流体回路は、反応チャンバ、コンジット、チャネルおよび第2ゾーン内に連続した所定容積のサンプル液、試薬ペレット、および連続した容積の輸送流体(例えば空気)を含む。ユーザはマイクロ流体デバイスを作動するために設計された装置内にマイクロ流体デバイスを置く。装置は第2ゾーンを圧縮するように構成されたアクチュエータ、検出器、およびコントローラを含む。アクチュエータは第2ゾーンを圧縮し、圧縮点における第2ゾーンの直径をゼロまで減少する。圧縮された状態の間に、デバイスおよびアクチュエータが相互に移動すると、輸送流体の圧力はサンプル容積の一端で増加し、一方で、サンプル容積の他端では減少する。サンプル容積の各端の圧力が均等になるまで、サンプル容積は流体回路内で移動する。
【0180】
チャネル105は、外部力を加えない状態ではチャネル105内でサンプルが移動しないように疎水性であってもよい。いくつかの実施形態では、試薬ペレット107に近接した壁面もまた疎水性であってもよい。親水性材料を使用すると、試薬ペレットの長期間の安定性が疎水性材料に比べて低下する可能性がある。
【0181】
一実施形態では、アクチュエータは装置内に固定され、マイクロ流体デバイスは圧縮手段に対して移動する。国際公開第2007/051861号パンフレットに記載されているように、アクチュエータは、例えばローラである。
【0182】
マイクロ流体デバイスが装置内で移動することにより、サンプルが移動して反応チャンバ内に入り、それによりこのチャンバ内で試薬ペレットを溶解してもよい。抗体はサンプル中に存在するそれぞれの抗原に結合する。サンプルの種類に応じて、抗原はサンプル液中に浮遊する粒子上(例えば、液体サンプル中の細胞表面上)に位置してもよい。抗体はラベルされるため(例えば蛍光染料により)、抗体がそれぞれの抗原に結合すると、抗原も同様にラベルされる。たとえば、国際公開第2007/051861号パンフレットを参照のこと。さらにデバイスを装置に対して同一方向に移動することにより、サンプルはチャネル内に移動する。チャネルが満たされると、検出が開始される。
【0183】
望ましくは、検出器は小型、安価、および汎用性を備える。すなわち、検出器は本明細書に記載する用途だけでなく他の用途に適合可能である。検出器は蛍光顕微鏡であってもよく、好ましくは、超小型の外形寸法であり、カートリッジに比べて高さが低い。検出器は5μm以上のサイズの物体を画像化でき、分析に使用される蛍光染料から放射される波長の信号を検出するように構成される。光源は分析に使用される蛍光染料を励起するのに適するスペクトルの光を放射する高出力LEDであってもよい。異なる染料を使用する場合、例えば、異なる2つの波長の光を放射する少なくとも2つの異なる染料を使用する場合、検出は少なくとも2つの異なる波長のそれぞれを検出できなければならない。検出器は焦点調節機構およびカメラを含んでもよい。
【0184】
通常、蛍光顕微鏡に対しては極めて高出力の光源が使用される。この理由は、ほぼ平行な光ビームを有し、放射光の小部分のみ(約2°の立体角)が使用されるためである。集光レンズと、光源から放射される光の大部分を集光する検出レンズとを用いることにより、低出力光源(例えばLED)を使用できる。従来から、蛍光顕微鏡は光学的忠実度に関しては極めて高い値を有し、従って、視野は集光レンズに対して大きい立体角から外れると言われてきた。実際に、視野は、高い光学的忠実度を達成するために、比較的重い、大型の、複雑な光学系を必要とする傾向にあった。
【0185】
図14aおよび図14bを参照すると、例示的な検出器500は、第1光路502および第2光路を含む本体501を含む。特定の例では、光路のそれぞれは、個別に、概して円筒形または他の適切な構造を有してもよい。第1光路502は励起光路を表し、第2光路503は検出光路を表す。
【0186】
第1光路502は光源505とカートリッジ516とを接続する。光源505は、455nm、470nmおよび528nmの放射波長と、120°の視角を有する(ランベルト発光体)、高出力LED(例えば、Platinum Dragon(R)LED(Osram))であってもよい。蛍光染料を使用する場合、光源は分析において用いられる蛍光染料の励起波長に応じて選択される。例えば、フィコエリトリンおよびフィコエリトリン−Cy5を使用する場合、光源は約520nmの波長を有する光を放射するように選択され、一方、フィコエリトリンおよびPerCPを使用する場合、光源は約480nmの波長を有する光を放射するように選択される。集光レンズ506(例えば、屈折率1.533のトパーズから作られる)はLEDから放射された光を集光して第1光路502内に導く。開口部502aは、13.5°以下の最大立体角でダイクロイックミラー504を照射できるように構成される。光路502はまた、505nmから530nmの間の波長を有する光を通過させる、帯域通過フィルタ507(励起フィルタ)を含む。したがって、残りの励起波長は約528nmになる。
【0187】
光路503は、ダイクロイックミラー504を介してCMOSカメラを物体516に接続し、光路502に対してある一定角度(図14では90°で示される)に構成される。光路503はまた、第1放射フィルタ510を含む。いくつかの実施形態では、フィルタ510はフィルタチェンジャ512に取り付けられる。フィルタチェンジャ512は追加の放射フィルタ、例えばフィルタ513を含んでもよい。放射フィルタ510および513は放射波長の所定のセット、例えば、カートリッジ内の試薬をラベリングするのに用いられる蛍光染料の放射波長に関連して選択されてもよい。例えば、フィルタ510および513は、フィコエリトリンおよびフィコエリトリン−Cy5の放射波長に対応して、それぞれ590nmおよび685nmの波長を有する光を通過させるように選択されてもよい。光路503は、ダイクロイックミラー504上に最大13.5°の立体角を形成するように構成された開口部503aを含む。
【0188】
ダイクロイックミラー504は励起光路50から検出光路503を分離するように構成される。いくつかの実施形態では、ダイクロイックミラーは、波長<=568nmを有する光は通過するが、波長>568nmを有する光は反射する、ショートパスダイクロイックミラーである。このように、ダイクロイックミラー504により、励起光路からの光は通過するが、物体516からの光は反射して検出光路に入る。この場合も、ダイクロイックミラー504の物理特性は、分析において使用されるラベル(例えば蛍光染料)に応じて選択される。
【0189】
いくつかの実施形態では、検出器はさらに、焦点調節機構514を備え、この機構514により検出レンズ508と物体との距離を5mm以下(例えば、1または2mm)まで連続的に変化させる。
【0190】
いくつかの実施形態では、検出レンズ508は0.4以下、例えば0.2の検出光学開口と、0.5以下、例えば0.4の励起光学開口とを有するように構成される。
【0191】
検出器はまた、例えば640×480ピクセルの解像度を有する8ビット濃淡値のCMOSカメラなどのデジタル撮像デバイスなどを含んでもよい。他の実施形態では、デジタル撮像デバイスはより高い解像度を有してもよく、および/またはカラーCMOSカメラであってもよい。
【0192】
いくつかの実施形態では、検出システムの再生倍率は1:1から1:10の間、例えば1:3、1:4または1:5である。
【0193】
いくつかの実施形態では、物体516と検出レンズ508との間の距離は、2mmから20mm、たとえば、8mm、9mm、または10mmである。
【0194】
図15を参照すると、動作中、光源505から放射された光はレンズ506によって集光され、励起フィルタ507によって濾光される。光は開口502a、ダイクロイックミラー504、検出レンズ508、開口509を通過し、物体601を励起する。いくつかの実施形態では、物体516はサンプル液、例えば血液で満たされたチャネルであり、サンプル液は多くの粒子、例えば検出されるべきヘルパーT細胞を含む。粒子は抗体に結合した1つ以上の蛍光染料でラベルされてもよい。他の実施形態では、物体は、1つ以上の蛍光染料でラベルされ、およびチャネル表面の1つに固定されたプローブ分子またはプローブ分子のアレイに結合した、標的分子を含むチャネルである。染料はLEDからの励起光の影響を受けて蛍光を発する。蛍光染料から放射された光は開口509、検出レンズ508を通過し、ダイクロイックミラー504により反射されて検出光路503に入る。そこで光は、蛍光染料から放射された光の波長を有する光を通過するように適合された、検出フィルタ510(またはフィルタチェンジャ512の位置に応じて513)を通過する。フィルタを通過後、光は付属のCMOSカメラ511のCMOSチップによって集光される。
【0195】
図16aから図16bは検出器を使用して、例えば血液サンプル中に存在するヘルパーT細胞の数を検出できる方法を示す。デバイスおよび反応チャンバの詳細は、上記および参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2007/051861号パンフレットで見ることができる。上述の例においては、カートリッジは2つのラベルされた抗体、すなわち、フィコエリトリンでラベルされたアンチ−CD4抗体、およびフィコエリトリン−Cy5でラベルされたアンチ−CD3抗体で調製される。ヘルパーT細胞はそれら細胞の表面上に両方の抗原を示すため、ヘルパーT細胞は両方の蛍光染料でラベルされる。他の細胞、すなわち細胞の表面上の両方の抗原のうちの1つのみを示す細胞がサンプル中に存在してもよい。これらの細胞は一致した蛍光染料でのみラベルされる。
【0196】
それぞれの蛍光染料でラベルされた抗体との反応後、蛍光を発する細胞712を含む液体サンプルは移動して検出チャネル711内に入る。第1位置では(図16a)、検出器710はチャネル711の一部分713上の像を表す第1画像714を検出する。一部分713は所定の容積のサンプル、例えば100nLを表す。画像714は、サンプル中に存在するフィコエリトリンでラベルされたアンチ−CD4+抗体により放射された光を通過させ、フィコエリトリン−Cy5−アンチ−CD3+抗体により放射された光を遮断するように構成された、第1フィルタを用いて取り込まれる。同じ位置の第2画像715は、フィコエリトリン−Cy5−アンチ−CD3+抗体により放射された光を通過させ、フィコエリトリンでラベルされたアンチ−CD4+により放射された光を遮断するように構成された、第2フィルタを用いて取り込まれる。画像714および715は一部分713内の様々な数の信号を示してもよい。さらに、光学系の収差によって、両方の画像714および715は相互のアライメントから外れることもある。
【0197】
ソフトウェア(例えば、ClondiagによるIconoclust)を使用して、例えば、チャネル内のアライメントマーク(図示せず)を用いることにより、または両方の画像内に存在する信号間の関係を分析することにより、両方の画像714および715をアライメントすることができる。さらに、ソフトウェアは、両方の画像内で検出された信号を識別し、記録する(716)。図16aでは、3つの信号が両方の画像内に存在すると特定された。これは、両方の抗原を有する3つの細胞が一部分713内に見出されたことを意味する。結果は表示されてもよく、さらなる計算または統計のために用いられてもよく、あるいはさらなる処理のために保存されてもよい。
【0198】
検出器710およびチャネル711は、チャネル711の別の部分717を見るために相互に移動され(図16b)、検出手順が繰り返される。画像718および719は、それぞれ第1および第2フィルタを用いて記録される。ソフトウェアは、両方の画像内で検出された信号を識別し、記録する(720)。
【0199】
検出チャネルの追加の部分において検出を繰り返して、各部分のそれぞれ内の細胞の数を表す一式の値を得てもよい。サンプル中に存在する細胞の数、ならびに対応する統計パラメータは、この一式の値から計算されてもよい。例えば、100nL当たりの3つの細胞の平均は、5μLのサンプル容積中の細胞の総数150に一致する。
【0200】
図17は、液体サンプルとして血液を使用するT細胞カウント試験の間において検出された2つの画像の重ね合わせを示す。両方の画像は、異なる2つの検出フィルタを使用して、チャネルの同一位置(例えば、図5の画像714および715と同様)において検出される。801および802は2つの異なる検出ファイルを利用して撮像される1つのアライメントマークを表す。2つの画像間のずれは明らかに検出可能であり、マークを用いることにより修正できる。803および804はアライメントマーク801および802と同様に同一距離だけ位置が変化した単一細胞を表す。この細胞は両方の画像内に存在するため、この細胞が両方の抗体でラベルされており、ヘルパーT細胞であると決定できる。805は2つの重ね合わせた画像のうちの1つ内だけで検出可能な細胞を表す。このようにして、この細胞が細胞表面上の両方の抗原を示さず、したがってヘルパーT細胞ではないことを導き出すことができる。画像内にはまた他の血液細胞も見ることができる。血液細胞は蛍光抗体でラベルされていないため、それら細胞は単に、影として見ることができる(806)。
【0201】
他の実施形態は特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナライトを検出するためのデバイスであって、デバイスがカートリッジとキャップとを備え、
カートリッジが、
入口と入口と流体連通する検出領域とを含むマイクロ流体チャネルと、
少なくとも部分的に変形可能な壁面を有し、およびチャネルの検出領域と流体連通するマイクロ流体流路とを有し、
キャップが、入口を密封し、および入口とマイクロ流体チャネルとマイクロ流体流路とを含む流体回路を形成するように構成された密封部材を有する、アナライトの検出デバイス。
【請求項2】
流体回路を形成後、キャップおよびカートリッジが不可逆的に閉じるように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
キャップがカートリッジに柔軟に結合されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
キャップおよびカートリッジが、キャップを取り外すことができるような第1の相対的位置に係合し、および流体回路を形成後、キャップを不可逆的に閉じるような第2の相対的位置に係合するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
検出領域がカートリッジの少なくとも1つの面と少なくとも蓋の1つの面とにより範囲を限定されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
蓋が検出領域を覆う透明フィルムを含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
蓋がカートリッジに接着剤で固定されている、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
アナライトを検出するためのシステムであって、システムがカートリッジとキャップと蛍光検出器とを備え、
カートリッジが、
入口と入口と流体連通する検出領域とを含むマイクロ流体チャネルと、
少なくとも部分的に変形可能な壁面を有し、およびチャネルの検出領域と流体連通するマイクロ流体流路とを有し、
キャップが、
入口を密封し、および入口とマイクロ流体チャネルとマイクロ流体流路とを含む流体回路を形成するように構成された密封部材を有し、
蛍光検出器が、
光源と、
10°以上の立体角を得る集光レンズと、
10°以上の立体角を得る対物レンズとを含む、アナライトを検出するためのシステム。
【請求項9】
蛍光検出器がカメラを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
蛍光検出器が1つ以上の選択可能な放射フィルタを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
液体サンプルをマイクロ流体チャネルに導入することにより、チャネルによって密封され、および輸送液体によって第1端において範囲を限定された連続した液体スラグを生成することと、
輸送液体が液体スラグの第1端と第2端との間の流体連通を提供するように流体回路を形成することと、
輸送液体によって液体スラグの第1端と第2端とに差圧を加えることとを含む、アナライトを検出する方法。
【請求項12】
流体回路の一部分が弾性変形可能な壁面により形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
液体スラグの第1端と第2端とに差圧を供給するステップが、弾性変形可能な壁面に圧縮を加えることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1蛍光抗体と第2蛍光抗体とでアナライトをラベリングすることをさらに含み、第1および第2の蛍光抗体が別個の放射波長を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
アナライトを検出するステップが、第1蛍光抗体の放射波長におけるアナライトの第1画像を記録することと、第2蛍光抗体の放射波長におけるアナライトの第2画像を記録することと、第1および第2画像を比較することとを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
複数の粒子を含む液体サンプルをマイクロ流体チャネルに導入することにより、チャネルによって密封され、および輸送液体によって第1端において範囲を限定された連続した液体スラグを生成することと、
輸送液体が液体スラグの第1端と第2端との間の流体連通を提供するように流体回路を形成することと、
輸送液体によって液体スラグの第1端と第2端とに差圧を加えることにより、液体サンプルの少なくとも一部と光ラベルとを含む混合物を生成することと、
各複合物が複数の粒子のうちの1つと光ラベルのうちの少なくとも1つとを含む、複数の複合物を生成することと、
混合物のサブセット内に存在する複合物を検出することとを含む、方法。
【請求項17】
流体回路の一部分が弾性変形可能な壁面により形成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
液体スラグの第1端と第2端とに差圧を加えるステップが、弾性変形可能な壁面に圧縮を加えることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
混合物の複数の異なるサブセットのそれぞれ内に存在する複合物を検出することをさらに含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
複数の異なるサブセットの全容積が、マイクロ流体デバイスに導入された液体サンプルの容積の少なくとも90%である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
液体サンプルの全容積Vをマイクロ流体デバイスに導入することを含み、混合物の全容積が容積Vの少なくとも90%である、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
混合物が液体サンプルの容積Vの少なくとも約90%を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
混合物の全容積の少なくとも10%内に存在する複合物を検出することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
粒子が細胞であり、光ラベルが蛍光ラベルである、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
マイクロ流体チャネルが、入口と入口と流体連通する検出領域とを含み、およびマイクロ流体デバイスのマイクロ流体チャネルである、請求項11から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
液体サンプルをマイクロ流体チャネルに導入する前に、液体サンプルを毛細管の穴に導入することをさらに含む、請求項11から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
液体サンプルを毛細管の穴に導入するステップと、液体サンプルをマイクロ流体チャネルに導入するステップとの中間に、毛細管をマイクロ流体デバイスに接続し、液体サンプルが毛細管内に残るようにすることをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
液体サンプルのサブセット内に存在する複合物の量を表す信号を光学的に検出することをさらに含み、サブセットがマイクロ流体デバイスの検出領域内に存在する、請求項11から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
液体サンプルをマイクロ流体チャネルに導入するステップが、弾性変形可能な壁面に圧縮を加えることにより実行される、請求項11から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
弾性変形可能な壁面に圧縮を加えるステップが、流体回路の第1部分に圧縮を加え、最初に圧縮を完全に解放することなく、導入ステップを実行するのに十分な量だけ、圧縮を加えた箇所を流体回路に沿って移動させることを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
最初に圧縮を完全に解放した状態で、サブセット内に存在する複合物の量を表す信号を光学的に検出するステップを実行することを含む、請求項11から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
液体サンプルが血液である、請求項11から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
毛細管の穴が凝固防止剤を含む、請求項26から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
液体サンプルを毛細管の穴に導入するステップと、液体サンプルの少なくとも一部をマイクロ流体チャネルに導入するステップとの中間に、液体サンプルが毛細管から流れ出るのを防止することを含む、請求項26から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
マイクロ流体チャネルの検出領域が液体サンプルの毛細管流れを促進しない、請求項11から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
マイクロ流体チャネルの内面の少なくとも一部が疎水性である、請求項11から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
マイクロ流体デバイスおよび光検出器のうちの少なくとも一方を他方に対して移動し、その後、液体サンプルの異なるサブセット内に存在する複合物の量を表す光信号を検出することをさらに含む、請求項25から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
毛細管が第1および第2開放端を備えるエンドツーエンド毛細管であり、毛細管の穴が全容積Vを有し、液体サンプルの少なくとも一部を導入するステップが、液体サンプルの少なくとも90%をマイクロ流体チャネルに導入することを含む、請求項26から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
請求項11から38に記載の方法のいずれかを実行するように構成された、デバイス。
【請求項40】
アナライトを検出するためのデバイスであって、デバイスがカートリッジとキャップとを備え、
カートリッジが、
内面上に抗凝固剤を有する毛細管入口と、試薬を含むチャンバと、入口と流体連通する検出領域とを含むマイクロ流体チャネルと、
少なくとも部分的に変形可能な壁面を有し、およびチャネルの検出領域と流体連通するマイクロ流体流路とを有し、
キャップが、
入口を密封し、および入口とマイクロ流体チャネルとマイクロ流体流路とを含む流体回路を形成するように構成された密封部材を有する、アナライトの検出デバイス。
【請求項41】
光源と、
10°以上の立体角を得る集光レンズと、
10°以上の立体角を得る対物レンズであって、顕微鏡対象物を撮像するように構成された対物レンズとを含む、蛍光検出器。
【請求項42】
液体サンプルを毛細管の穴に導入することと、
液体サンプルの液体サンプル−ガスの境界面に作用する圧力を低減することによって、液体サンプルの少なくとも一部をマイクロ流体デバイスのマイクロ流体ネットワーク内に導入することとを含む、方法。
【請求項43】
液体サンプルを毛細管の穴に導入するステップ後に、毛細管をマイクロ流体デバイスに接続し、液体サンプルが毛細管内に残るようにすることをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
圧力を低減するステップが、マイクロ流体ネットワークの少なくとも一部分を圧縮することによりネットワークからガスを移動させ、その後にマイクロ流体ネットワークの少なくとも一部分を復元することによって実行される、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
マイクロ流体ネットワークが、少なくとも部分的に、第1および第2の概して平らな基板によりそれら基板間に画定されており、基板の少なくとも一方が外部圧力を加えると変形して、マイクロ流体ネットワークの少なくとも一部分を圧縮し、少なくとも一方の基板が、外部圧力を解放すると最初の状態に回復して、マイクロ流体ネットワークの少なくとも一部分を復元可能にする傾向がある、請求項42から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
マイクロ流体ネットワークが、入口および入口と流体連通する検出領域を含むマイクロ流体チャネルと、検出領域と流体連通するマイクロ流体流路とによって、少なくとも部分的に画定されており、マイクロ流体流路が、外部圧力を加えると少なくとも部分的に変形して、マイクロ流体流路の少なくとも一部分を圧縮する壁面を有し、壁面が、外部圧力を解放すると最初の状態に回復して、マイクロ流体流路の少なくとも一部分を復元可能にする傾向がある、請求項42から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
液体サンプルをマイクロ流体ネットワーク内に存在する1つ以上の試薬と混合して、混合物を生成することをさらに含む、請求項42から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
混合物が、マイクロ流体ネットワークに導入された液体サンプルの少なくとも90%を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
1つ以上の試薬が、サンプルと反応してラベルとサンプル中に存在するアナライトを含む複合物を生成する、検出可能なラベルを含む、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
液体サンプルのサブセット内に存在する複合物の量を表す信号を光学的に検出することをさらに含み、サブセットが、マイクロ流体デバイスの検出ゾーン内に存在する、請求項47から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
液体サンプルのサブセットを検出ゾーンから移動することと、液体サンプルの異なるサブセットを検出ゾーンに導入することと、異なるサブセット内に存在する複合物の量を表す信号を光学的に検出することとをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
サブセットを移動するステップおよび異なるサブセットを導入するステップが、マイクロ流体ネットワークの少なくとも一部分を圧縮することにより実行され、圧縮部分がネットワークに沿って、検出ゾーンから少なくとも部分的にずれている、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも一部分を圧縮するステップが、マイクロ流体ネットワークの第1部分を圧縮することと、最初に圧縮を完全に解放することなく、圧縮箇所を移動および導入のステップを実行するのに十分な量だけマイクロ流体ネットワークに沿って移動することとを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
最初にマイクロ流体ネットワークの圧縮を完全に解放することなく、異なるサブセット内に存在する複合物の量を表す信号を光学的に検出するステップを実行することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
液体サンプルが血液である、請求項42から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
毛細管の穴が凝固防止剤を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
液体サンプルを毛細管の穴に導入するステップと、液体サンプルの少なくとも一部をマイクロ流体ネットワークに導入するステップとの中間に、液体サンプルが毛細管から流れ出るのを防止することを含む、請求項42から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
液体サンプルが毛細管から流れ出るのを防止するステップが、液体サンプル−ガスの境界面に作用する圧力を増加することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
マイクロ流体ネットワークが液体サンプルの毛細管流れを促進しない、請求項42から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
第1および第2基板のうちの少なくとも一方によって画定されたマイクロ流体ネットワークの内面が疎水性である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
アナライトが粒子である、請求項42から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
粒子が細胞である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
マイクロ流体デバイスおよび光検出器のうちの少なくとも一方を他方に対して移動し、その後、液体サンプルの異なるサブセット内に存在する複合物の量を表す光信号を検出することをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項64】
毛細管が第1および第2開放端を備えるエンドツーエンド毛細管であり、毛細管の穴が全容積Vを有し、液体サンプルの少なくとも一部を導入するステップが、液体サンプルの少なくとも90%をマイクロ流体ネットワークに導入することを含む、請求項42から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
請求項42から64のいずれかを実行するように構成された、デバイス。
【請求項66】
マイクロ流体デバイスの第1基板の内面と第2基板の内面との間に配置されたマイクロ流体ネットワークに液体サンプルを導入し、基板の少なくとも一方が柔軟であり、液体サンプルが複数の粒子を含むことと、
マイクロ流体ネットワーク内の複数の位置において、第1基板の内面と第2基板の内面との間の距離を連続的に低減することによって、液体サンプルの少なくとも一部と光ラベルとを含む混合物を生成することと、
各複合物が複数の粒子のうちの1つと光ラベルのうちの少なくとも1つとを含む、複数の複合物を生成することと、
混合物のサブセット内に存在する複合物を検出することとを含む、方法。
【請求項67】
混合物の複数の異なるサブセットのそれぞれ内に存在する複合物を検出することをさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
複数の異なるサブセットの全容積が、マイクロ流体デバイスに導入された液体サンプルの容積の少なくとも90%である、請求項66または67に記載の方法。
【請求項69】
液体サンプルの全容積Vをマイクロ流体デバイスに導入することを含み、混合物の全容積が容積Vの少なくとも90%である、請求項66から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
混合物の全容積の少なくとも約90%内に存在する複合物を検出することを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
粒子が細胞であり、光ラベルが蛍光ラベルである、請求項66から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
マイクロ流体デバイスの第1基板の内面と第2基板の内面との間に配置されたマイクロ流体ネットワークに液体サンプルの全容積Vを導入し、基板の少なくとも一方が柔軟であり、液体サンプルが複数の粒子を含むことと、
マイクロ流体ネットワーク内で混合物を生成し、混合物が液体サンプルの容積Vの少なくとも約95%と光ラベルを含むことと、
各複合物が複数の粒子のうちの1つと光ラベルのうちの少なくとも1つとを含む、複数の複合物を生成することと、
混合物のサブセット内に存在する複合物を検出することとを含む、方法。
【請求項73】
混合物が液体サンプルの容積Vの少なくとも約95%を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
混合物の複数の異なるサブセットのそれぞれ内に存在する複合物を検出することをさらに含む、請求項72または73に記載の方法。
【請求項75】
複数の異なるサブセットの全容積が、マイクロ流体デバイスに導入された液体サンプルの容積の少なくとも90%である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
請求項66から75の方法のいずれかを実行するように構成された、デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図3f】
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【図3g】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図10e】
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【図10f】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−526283(P2010−526283A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504758(P2010−504758)
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055508
【国際公開番号】WO2008/135564
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(508135149)クロンデイアグ・ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】