説明

分波器

【課題】線形性能の高い分波器を提供すること。
【解決手段】受信端子Trxとアンテナ端子Tantとの間に接続され、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含む、受信帯域を有する受信用フィルタ10と、送信端子Ttxと前記アンテナ端子との間に接続され、弾性波共振器を含む、送信帯域を有する送信用フィルタ20と、を具備し、前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器S11の共振周波数は、前記受信帯域の上端周波数より高い分波器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分波器に関し、例えば、受信用フィルタと送信用フィルタとを含む分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、周波数分割多重(FDD:Frequency Division Duplex)方式の移動体端末には、1つのアンテナを用い送受信を同時に行なうため分波器が用いられる。分波器は、受信用フィルタと送信用フィルタとを備えている。受信用フィルタおよび送信用フィルタとしては、弾性波共振器が用いられる。弾性波共振器として、弾性表面波共振器、弾性境界波共振器または圧電薄膜共振器が用いられる。
【0003】
特許文献1および2には、耐電力性を向上させるため、入力端子に近い弾性波共振器を直列に分割する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−332884号公報
【特許文献2】特開2006−74202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分波器の線形性能が低いと、例えば、通信機の受信感度が劣化する。本発明は、線形性能の高い分波器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、受信端子とアンテナ端子との間に接続され、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含む、受信帯域を有する受信用フィルタと、送信端子と前記アンテナ端子との間に接続され、弾性波共振器を含む、送信帯域を有する送信用フィルタと、を具備し、前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の共振周波数は、前記受信帯域の上端周波数より高いことを特徴とする分波器である。本発明によれば、線形性能の高い分波器を提供することができる。
【0007】
上記構成において、前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の共振周波数は、前記受信帯域の上端周波数の102%以上である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2以上に直列に分割されており、分割された各共振器の共振周波数の平均値は、前記受信帯域の上端周波数より高い構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2個に直列に分割されており、分割された各共振器の共振周波数の平均値は、前記受信帯域の上端周波数の100.9%以上である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器は、複数の直列共振器であり、前記受信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の共振周波数は、前記受信用フィルタの前記複数の直列共振器の中で最も高い構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器は、複数の直列共振器であり、前記受信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記受信端子に最も近い直列共振器の共振周波数は、前記受信用フィルタの前記複数の直列共振器の中で最も低いこと構成とすることができる。
【0012】
本発明は、受信端子とアンテナ端子との間に接続され、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含む、受信帯域を有する受信用フィルタと、送信端子と前記アンテナ端子との間に接続され、弾性波共振器を含む、送信帯域を有する送信用フィルタと、を具備し、前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は3個に直列に分割されており、分割された各共振器の共振周波数の平均値は、前記受信帯域内にあることを特徴とする分波器である。本発明によれば、線形性能の高い分波器を提供することができる。
【0013】
上記構成において、前記受信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の並列共振器を含み、前記受信用フィルタの前記1または複数の並列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い並列共振器の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、前記送信帯域の上端周波数の99.8%以上である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記アンテナ端子に最も近い並列共振器の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、前記送信帯域の上端周波数以上である構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記受信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の並列共振器を含み、前記受信用フィルタの前記1または複数の並列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い並列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された並列共振器のうち少なくとも1個の寄生グランドインダクタンスを含めない共振周波数は、前記送信帯域の上端周波数以上である構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記受信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の並列共振器を含み、前記受信用フィルタの前記1または複数の並列直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い並列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された各共振器の平均の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、前記送信帯域の上端周波数の99.8%以上である構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記分割された各共振器の平均の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、前記送信帯域の上端周波数以上である構成とすることができる。
【0018】
上記構成において、前記受信用フィルタは、弾性波共振器である複数の並列共振器を含み、前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い並列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い並列共振器の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器の中で最も高い構成とすることができる。
【0019】
上記構成において、前記受信用フィルタは、弾性波共振器である複数の並列共振器を含み、前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い並列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の寄生グランドインダクタンスを含めない共振周波数は、前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器の中で最も高い構成とすることができる。
【0020】
上記構成において、前記受信用フィルタは、弾性波共振器である複数の並列共振器を含み、前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器のうち前記受信端子に最も近い並列共振器は分割されておらず、前記受信端子に最も近い並列共振器の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器の中で最も低い構成とすることができる。
【0021】
上記構成において、前記受信用フィルタは、弾性波共振器である複数の並列共振器を含み、前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器のうち前記受信端子に最も近い並列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の寄生グランドインダクタンスを含めない共振周波数は、前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器の中で最も低い構成とすることができる。
【0022】
上記構成において、前記送信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含み、前記送信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の反共振周波数は、前記受信帯域の下限周波数の100.1%以上かつ100.4%以下である構成とすることができる。
【0023】
上記構成において、前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の反共振周波数は、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち最も高くはない構成とすることができる。
【0024】
上記構成において、前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の反共振周波数は、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち最も低くはない構成とするとこができる。
【0025】
上記構成において、前記送信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含み、前記送信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の反共振周波数は、前記受信帯域の下限周波数の100.1%以上かつ100.4%以下である構成とすることができる。
【0026】
上記構成において、前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の反共振周波数は、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち最も高くはない構成とすることができる。
【0027】
上記構成において、前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の反共振周波数は、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち最も低くはない構成とすることができる。
【0028】
上記構成において、前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の反共振周波数は、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち最も低い構成とすることができる。
【0029】
上記構成において、前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の反共振周波数は、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち最も低い構成とすることができる。
【0030】
上記構成において、前記送信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含み、前記送信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の反共振周波数は、前記受信帯域内にある構成とすることができる。
【0031】
上記構成において、前記送信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含み、前記送信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の反共振周波数は、前記受信帯域内にある構成とすることができる。
【0032】
上記構成において、前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器から2つめの直列共振器は分割されておらず、前記2つめの直列共振器の反共振周波数は、前記受信帯域の下限周波数の102.1%以下である構成とすることができる。
【0033】
上記構成において、前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器から2つめの直列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の反共振周波数は、前記受信帯域の下限周波数の102.1%以下である構成とすることができる。
【0034】
上記構成において、前記受信用フィルタおよび前記送信用フィルタの少なくとも一方には、多重モード弾性波フィルタが含まれる構成とすることができる。
【0035】
上記構成において、前記多重モードフィルタは2個以上に直列に分割されている構成とすることができる。
【0036】
上記構成において、前記受信帯域は、1930MHzから1990MHzであり、前記送信帯域は、1850MHzから1910MHzである構成とすることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、線形性能の高い分波器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、分波器の例を示すブロック図である。
【図2】図2は、ラダー型フィルタの例を示す回路図である。
【図3】図3は、多重モードフィルタの例を示す回路図である
【図4】図4は、ラダー型フィルタと多重モードフィルタが組み合わされたフィルタの例を示す回路図である。
【図5】図5は、多重モードフィルタと共振器を組み合わせたフィルタの例を示す回路図である。
【図6】図6(a)は、弾性表面波共振器を示す平面図、図6(b)は図6(a)のA−A断面図である。
【図7】図7(a)は、ラブ波共振器の断面図、図7(b)は、弾性境界波共振器の断面図である。
【図8】図8(a)は、圧電薄膜共振器を示す平面図、図8(b)は図8(a)のA−A断面図である。
【図9】図9(a)および図9(b)は、多重モードフィルタを示す図である。
【図10】図10は、弾性表面波共振器、ラブ波共振器および弾性境界波共振器のアドミタンス特性を示す図である。
【図11】図11(a)は直列共振器Sの回路図、図11(b)は並列共振器Pの回路図、図11(c)は、直列共振器および並列共振器の通過特性を示す図である。
【図12】図12(a)は、複数段のラダー型フィルタの回路図、図12(b)は、通過特性を示す図である。
【図13】図13(a)は、分波器の回路図、図13(b)は、通過特性を示す図である。
【図14】図14(a)は、分波器の回路図、図14(b)は、受信端子から出力される信号のスペクトルを示す図である。
【図15】図15は、トリプルビート値の測定結果の例を示す図である。
【図16】図16は、分波器の回路図である。
【図17】図17は、実施例1における分波器の回路図である。
【図18】図18は、直列共振器S11の分割数に対するトリプルビート値を示す図である。
【図19】図19は、シミュレーションに用いた分波器の通過特性と共振器S11単体の通過特性を示す図である。
【図20】図20は、共振器S11の共振周波数に対する共振器S11単独のトリプルビート値の平均値を示す図である。
【図21】図21は、共振器S11の共振周波数に対するトータルのトリプルビート値の最大値を示した図である。
【図22】図22(a)は、実施例2のシミュレーションに用いた分波器の回路図である。図22(b)は、直列共振器S24が分割されていない分波器の回路図である。
【図23】図23は、シミュレーションに用いた送信用フィルタの通過特性と共振器S24単体の通過特性を示す図である。
【図24】図24は、受信帯域Brxにおけるトリプルビート値を示す図である。
【図25】図25(a)は、実施例3のシミュレーションに用いた分波器の回路図である。図25(b)は、並列共振器S11が分割されていない分波器の回路図である。
【図26】図26は、シミュレーションに用いた受信用フィルタの通過特性と共振器P11単体の通過特性を示す図である。
【図27】図27は、受信帯域Brxにおけるトリプルビート値を示す図である。
【図28】図28(a)は、実施例4のシミュレーションに用いた分波器の回路図である。図28(b)は、直列共振器S23が分割されていない分波器の回路図である。
【図29】図29(a)は、送信用フィルタの通過特性と各直列共振器の通過特性を示した図である。図29(b)は、受信帯域におけるトリプルビート値を示した図である。
【図30】図30は、送信用フィルタの通過特性と、直列共振器S23a単体の通過特性を示した図である。
【図31】図31は、実施例4のトリプルビート値を示す図である。
【図32】図32(a)は、比較例に係る分波器の回路図、図32(b)は、実施例5に係る分波器の回路図である。
【図33】図33は、比較例に係る分波器の送信用フィルタの通過特性と、各直列共振器の通過特性を示す図である。
【図34】図34は、実施例5に係る分波器の送信用フィルタの通過特性と、各直列共振器の通過特性を示す図である。
【図35】図35は、比較例に係る分波器の受信用フィルタの通過特性と、各直列共振器の通過特性を示す図である。
【図36】図36は、実施例5に係る分波器の受信用フィルタの通過特性と、各直列共振器の通過特性を示す図である。
【図37】図37は、比較例に係る分波器の受信用フィルタの通過特性と、各並列共振器の通過特性を示す図である。
【図38】図38は、実施例5に係る分波器の受信用フィルタの通過特性と、各並列共振器の通過特性を示す図である。
【図39】図39(a)および図39(b)は、それぞれ比較例および実施例5の送信用フィルタチップの平面図である。
【図40】図40(a)および図40(b)は、それぞれ比較例および実施例5の受信用フィルタチップの平面図である。
【図41】図41(a)から図41(c)は、各チップが実装される積層基板の平面図である。
【図42】図42は、パッケージを示す解体斜視図である。
【図43】図43は、プリント基板を示す平面図である。
【図44】図44は、比較例と実施例5との分波器のトリプルビート値の測定結果を示す図である。
【図45】図45は、実施例6に係る分波器の回路図である。
【図46】図46は、実施例6の受信用フィルタチップの平面図である。
【図47】図47(a)から図47(c)は、各チップが実装される積層基板の平面図である。
【図48】図48は、実施例7に係る分波器の回路図である。
【図49】図49は、実施例7の受信用フィルタチップの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
まず、以下に説明する実施例において用いられる分波器について説明する。図1は、分波器の例を示すブロック図である。図1のように、分波器100は、受信用フィルタ10、送信用フィルタ20および整合回路30を備えている。受信用フィルタ10は、アンテナ端子Tantと受信端子Trxとの間に接続されている。送信用フィルタ20は、アンテナ端子Tantと送信端子Ttxとの間に接続されている。受信用フィルタ10と送信用フィルタ20との少なくとも一方とアンテナ端子Tantとの間に整合回路30が接続されている。
【0040】
送信用フィルタ20は、送信端子Ttxから入力された信号のうち送信帯域の信号を送信信号Stxとして通過させ、他の周波数の信号を減衰させる。受信用フィルタ10は、アンテナ端子Tantから入力された信号のうち受信帯域の信号を受信信号Srxとして通過させ、他の周波数の信号を減衰させる。整合回路30は、送信帯域と受信帯域とにおいて、アンテナ端子Tantのインピーダンスを整合させる。
【0041】
次に、実施例の分波器に用いられるフィルタの例について説明する。図2は、ラダー型フィルタの例を示す回路図である。図2のように、ラダー型フィルタ32は、1または複数の直列共振器S1〜S3と1または複数の並列共振器P1〜P2とを備えている。直列共振器S1〜S3は、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に直列に接続されている。並列共振器P1〜P2は、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に並列に接続されている。分波器100の受信用フィルタ10および送信用フィルタ20の少なくとも一方として、ラダー型フィルタ32を用いることができる。
【0042】
図3は、多重モードフィルタの例を示す回路図である。図3のように、多重モードフィルタ34は共振器R1〜R3とを備えている。共振器R1〜R3は弾性波の伝搬方向に配列されている。共振器R2の一端が入力端子Tinに、他端がグランドに接続されている。共振器R1およびR3のそれぞれ一端が出力端子Toutに、それぞれの他端がグランドに接続されている。分波器100の受信用フィルタ10および送信用フィルタ20の少なくとも一方として、多重モードフィルタ34を用いることができる。
【0043】
図4は、ラダー型フィルタと多重モードフィルタが組み合わされたフィルタの例を示す回路図である。図4のように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間にラダー型フィルタ32と多重モードフィルタ34とが接続されている。ラダー型フィルタ32は、直列共振器S1〜S2と並列共振器P1〜P2とを備えている。多重モードフィルタ34は、共振器R1〜R3を備えている。分波器100の受信用フィルタ10および送信用フィルタ20の少なくとも一方として、ラダー型フィルタ32と多重モードフィルタ34とを組み合わせたフィルタを用いることができる。
【0044】
図5は、多重モードフィルタと共振器を組み合わせたフィルタの例を示す回路図である。図5のように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に直列共振器S1と多重モードフィルタ34とが直列に接続され、並列共振器P1が並列に接続されている。分波器100の受信用フィルタ10および送信用フィルタ20の少なくとも一方として、多重モードフィルタ34と共振器を組み合わせたフィルタを用いることができる。
【0045】
次に、フィルタに用いられる共振器の例について説明する。図6(a)は、弾性表面波共振器を示す平面図、図6(b)は図6(a)のA−A断面図である。図6(a)および図6(b)のように、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム等の圧電基板50上にアルミニウムまたは銅等の金属膜52が形成されている。金属膜52により、反射器R0、IDT(Interdigital Transducer)IDT0、入力端子Tinおよび出力端子Toutが形成されている。IDTは、2つのくし型電極54を備えている。2つのくし型電極54にはそれぞれ入力端子Tinおよび出力端子Toutが接続されている。入力端子Tinおよび出力端子Toutは例えばパッドである。IDT0の伝搬方向の両側に反射器R0が配置されている。くし型電極54および反射器R0は、弾性波の波長λに対応する間隔に配置された電極指を備えている。IDT0により励振された弾性波は反射器R0により反射される。これにより、弾性表面波共振器は弾性波の波長λに対応する周波数において共振する。
【0046】
図7(a)は、ラブ波共振器の断面図、図7(b)は、弾性境界波共振器の断面図である。ラブ波共振器および弾性境界波共振器の平面図は図6(a)と同じであり説明を省略する。図7(a)のように、ラブ波共振器においては、金属膜52を覆うように誘電体膜56が形成されている。誘電体膜56としては、例えば酸化シリコン膜を用いることができる。図7(b)のように、弾性境界波共振器においては、金属膜52を覆うように誘電体膜56が形成されている。さらに、誘電体膜56上に誘電体膜58が形成されている。誘電体膜58は、例えば酸化アルミニウム膜である。弾性波を誘電体膜56内に閉じ込めるため誘電体膜58の音速は誘電体膜56より速いことが好ましい。
【0047】
図8(a)は、圧電薄膜共振器を示す平面図、図8(b)は図8(a)のA−A断面図である。図8(a)および図8(b)のように、例えばシリコン等の基板4上に下部電極42、窒化アルミニウム等の圧電膜44、上部電極46が順次積層されている。圧電膜44を挟み上部電極46と下部電極42とが重なる領域が共振領域47である。共振領域47においては、上下方向に伝搬する弾性波が共振し共振器として機能する。共振領域47の下方の基板40には、空隙48が形成されている。空隙48は、基板40と下部電極42との間に形成されていてもよい。また、空隙48の代わりに、弾性波を反射する音響多層膜が形成されていてもよい。
【0048】
図2から図5に示したフィルタの共振器としては、図6(a)から図8(b)に例示した弾性表面波共振器、ラブ波共振器、弾性境界波共振器および圧電薄膜共振器の少なくとも1つを用いることができる。
【0049】
次に、多重モードフィルタの例を説明する。図9(a)および図9(b)は、多重モードフィルタを示す図である。図9(a)は、弾性表面波、ラブ波および弾性境界波を用いた多重モードフィルタの平面図である。反射器R0の間に複数のIDT1〜3が弾性波の伝搬方向に配列されている。IDT2の一方のくし型電極が入力端子Tinに接続され、他方のくし型電極がグランドに接続されている。IDT1およびIDT3のそれぞれの一方のくし型電極が出力端子Toutに接続され、それぞれの他方のくし型電極がグランドに接続されている。図9(a)の例では、出力が不平衡出力であるが、平衡出力とすることもできる。
【0050】
図9(b)は、バルク波を用いた多重モードフィルタの断面図である。圧電膜60と圧電膜60を挟み電極62を備える圧電薄膜共振器66a〜66dが複数積層されている。圧電薄膜共振器66aと66bとの間には、誘電体膜64が設けられている。圧電薄膜共振器66cと66dとの間には、誘電体膜64が設けられている。圧電薄膜共振器66bの下部電極と圧電薄膜共振器66cの上部電極とは共通に設けられている。圧電薄膜共振器66aの上部電極は出力端子Tout1に接続され、下部電極はグランドに接続されている。圧電薄膜共振器66bの上部電極はグランドに接続され、下部電極は入力端子Tinに接続されている。圧電薄膜共振器66cの上部電極は入力端子Tinに接続され、下部電極はグランドに接続されている。圧電薄膜共振器66dの上部電極は出力端子Tout2に接続され、下部電極はグランドに接続されている。図9(b)の例では、出力が平衡出力であるが、不平衡出力とすることもできる。
【0051】
次に、ラダー型フィルタの動作原理を説明する。図10は、弾性表面波共振器、ラブ波共振器および弾性境界波共振器のアドミタンス特性を示す図である。これらの共振器は、共振周波数frと反共振周波数faとを有する二重共振のアドミタンス特性を示す。
【0052】
図11(a)は直列共振器Sの回路図、図11(b)は並列共振器Pの回路図、図11(c)は、直列共振器および並列共振器の通過特性を示す図である。図11(a)のように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に直列に図10のようなアドミタンス特性を有する弾性波共振器が直列共振器Sとして接続されている。図11(b)のように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に並列に図10のようなアドミタンス特性を有する弾性波共振器が並列共振器Pとして接続されている。
【0053】
図11(c)において、直列共振器Sの通過特性を実線、並列共振器Pの通過特性を破線で示している。図11(c)のように、直列共振器Sは、共振周波数frsと反共振周波数fasとの間を遷移周波数とするローパスフィルタとして機能する。並列共振器Pは、共振周波数frpと反共振周波数fapとの間を遷移周波数とするハイパスフィルタとして機能する。直列共振器Sの共振周波数frsと並列共振器Pの反共振周波数fapはほぼ一致するように設定される。直列共振器Sと並列共振器Pとを接続し、1段のラダー型フィルタとすることにより、バンドパスフィルタが形成される。
【0054】
図12(a)は、複数段のラダー型フィルタの回路図、図12(b)は、通過特性を示す図である。図12(a)のように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1段のラダー型フィルタを複数接続する。これにより、図12(b)のように、通過帯域と抑圧域を有するバンドパスフィルタが形成される。
【0055】
次に、分波器の特性について説明する。図13(a)は、分波器の回路図、図13(b)は、通過特性を示す図である。図13(a)のように、受信用フィルタ10および送信用フィルタ20はラダー型フィルタを用い形成されている。受信用フィルタ10は、直列共振器S11〜S14と並列共振器P11〜P13とを備えている。送信用フィルタ20は、直列共振器S21〜S24と並列共振器P21〜P23とを備えている。整合回路30は、アンテナ端子Tantとグランド間に接続されたインダクタL1を備えている。送信信号Stxは、送信端子Ttxから入力し送信用フィルタ20を通過しアンテナ端子Tantに出力する。受信信号Srxは、アンテナ端子Tantから入力し受信用フィルタ10を通過し受信端子Trxに出力する。
【0056】
図13(b)において、送信端子Ttxから入力し送信用フィルタ20を通過しアンテナ端子Tantに出力する送信用フィルタ20の通過特性を破線で示している。アンテナ端子Tantから入力し受信用フィルタ10を通過し受信端子Trxに出力する受信用フィルタ10の通過特性を実線で示している。受信帯域Brxおよび送信帯域Btxは、通信方式に対応し定められている。FDD方式では、受信帯域Brxと送信帯域Btxとは異なるように設定されている。受信帯域Brxと送信帯域Btxとの間は幅Bgのガードバンドである。受信用フィルタ10の通過帯域は受信帯域Brxを含むように設計され、送信用フィルタ20の通過帯域は送信帯域Btxを含むように設計されている。送信帯域Btxは、受信用フィルタ10の抑圧域となるように設計され、受信帯域Brxは、送信用フィルタ20の抑圧域となるように設計されている。
【0057】
次に、分波器の線形性能を評価する試験のひとつであるトリプルビート試験について説明する。図14(a)は、分波器の回路図、図14(b)は、受信端子から出力される信号のスペクトルを示す図である。図14(a)を参照し、分波器の構成は、図13(a)と同じであり説明を省略する。図14(a)および図14(b)を参照し、送信端子Ttxから送信信号Stx1とStx2とを入力する。送信信号Stx1およびStx2の周波数は、送信帯域Btx内であり、それぞれ周波数ftx1およびftx2である。周波数ftx1とftx2との周波数差はΔfである。Δfとしては例えば、1MHzである。送信信号Stx1およびStx2のパワーは例えば+22dBmである。
【0058】
アンテナ端子Tantからジャマー信号Sjamを入力する。ジャマー信号Sjamの周波数は、受信帯域Brx内であり、周波数fjamである。周波数fjamは、送信信号Stx2の周波数ftx2にガードバンド幅Bgと送信帯域Btx(または受信帯域Brx)を加算した周波数に設定される。ジャマー信号Sjamのパワーは例えば−27dBmである。以下の実施例におけるシミュレーションおよび測定では、Δfを1MHz、送信信号Stx1およびStx2のパワーを+22dBm、ジャマー信号Sjamのパワーを−27dBmとしている。
【0059】
この状態で、受信端子Trxから出力される信号スペクトルをスペクトルアナライザ等を用い測定することにより、図14(b)のスペクトル特性が得られる。図14(b)のように、送信信号Stx1およびStx2並びにジャマー信号Sjam以外に、ジャマー信号Sjam付近に非線形信号S01およびS02が観測される。非線形信号S01およびS02は、分波器の非線形性により生じる信号であり、それぞれの周波数はfjam−Δfおよびfjam+Δfとなる。
【0060】
ジャマー信号Sjamと非線形信号S01およびS02とのパワー比(非線形信号S01およびS02のパワー/ジャマー信号Sjamのパワー)がトリプルビート値TBと定義される。トリプルビート値の単位はdBcである。トリプルビート値TBが小さいほど、分波器の非線形性が小さいことを示し、分波器の線形性が高いことを示す。分波器の線形性が低いと、分波器を用いる通信機の受信感度が劣化するため、トリプルビート値TBが小さいことが求められる。
【0061】
トリプルビート値の測定は、送信信号Stx1およびStx2並びにジャマー信号Sjamを同時にスイープして行なわれる。スイープの範囲は、受信帯域Brxの範囲である。送信帯域Btxと受信帯域Brxとの幅が同じ場合、例えば送信信号Stx2が送信帯域Btxの下限周波数であり、かつジャマー信号Sjamが受信帯域Btxの下限周波数から高周波数側にスイープを開始する。例えば送信信号Stx2が送信帯域Btxの上限周波数であり、かつジャマー信号Sjamが受信帯域Btxの上限周波数においてスイープを終了する。
【0062】
図15は、トリプルビート値の測定結果の例を示す図である。図15のように、ジャマー信号Sjamを受信帯域Brx内をスイープし、各周波数におけるトリプルビート値TBを測定している。トリプルビート値の仕様は、−79dBc〜−82dBc以下に設定されることが多い。図15においては、−79dBcを仕様Specとしている。受信帯域Brx内の高周波側において、トリプルビート値が仕様Specより大きくなっている。
【0063】
次に、非線形信号S01およびS02が発生するメカニズムを説明する。図16は、分波器の回路図である。図16において、分波器の構成は、図13と同じであり説明を省略する。図16を参照し、送信端子Ttxから入力された送信信号Stx1およびStx2は、実線矢印のように全てアンテナ端子Tantから出力されるのが理想である。しかし、実際には破線矢印のように受信用フィルタ10に漏洩信号Stx1leakおよびStx2leakとして流入する。また、アンテナ端子Tantから入力されたジャマー信号Sjamは、実線矢印のように全て受信端子Trxから出力されるのが理想である。しかし、実際には、破線矢印のように、送信用フィルタ20に漏洩信号Sjamleakとして流入する。
【0064】
したがって、トリプルビート試験中は、分波器中のいずれの共振器にも送信信号Stx1およびStx2並びにジャマー信号Sjamが流れている。これらの3つの信号が1つの共振器に流れ込むことにより、非線形信号が生成される。具体的には、1つの共振器には、送信信号Stx1およびStx2並びにジャマー信号Sjamがそれぞれ独立に流れたときに励振される弾性波の変位を各々掛け合わせたものに比例した非線形変位が励起される。この非線形変位が非線形信号を誘導する。したがって、1つの共振器から生成される非線形信号は、送信信号Stx1およびStx2並びにジャマー信号Sjamが励振する弾性波が大きいほど大きくなる。
【0065】
弾性波フィルタを用いた分波器は、一般に誘電体フィルタを用いた分波器に比べて線形性が低く、図15に示したようなトリプルビート値の仕様を満たせない場合が多い。
【0066】
以下に、非線形性を向上させる分波器の実施例について説明する。なお、以下の実施例は、送信帯域Btxが1850MHz〜1910MHz、受信帯域Brxが1930MHz〜1990MHzの北米PCS(Personal Communications Service)に用いる分波器について説明するが、他の通信方式に用いる分波器に以下の実施例を用いてもよい。
【0067】
また、以下の実施例においてシミュレーションを行うため、本発明者らは、弾性表面波フィルタを用いた分波器のトリプルビート値をシミュレーションするシミュレータを開発した。このシミュレータは、モード結合理論をベースとしている。このシミュレータでは、各共振器に流れ込む各信号によって励振される弾性表面波の変位を計算し、これらの変位から励起される非線形変位を計算すると同時に、発生する非線形信号を算出している。
【実施例1】
【0068】
実施例1は、受信用フィルタ10の最もアンテナ端子Tant側の直列共振器の共振周波数を調整する例である。上記シミュレータを用い、分波器の非線形現象を解析した結果、ほとんどの場合、受信用フィルタ10のアンテナ端子Tantに近い共振器から発生する非線形信号が最も大きいことがわかった。
【0069】
共振器の線形性は、共振器を直列に分割することにより向上する。ここで、分割とは、共振器のインピーダンス(主に静電容量値)が変わらないように分割することである。
【0070】
図17は、実施例1における分波器の回路図である。図17のように、分波器は、受信用フィルタ10、送信用フィルタ20および整合回路30を備えている。受信用フィルタ10は、前段がラダー型フィルタであり、後段は多重モードフィルタである。ラダー型フィルタは、直列共振器S11およびS12、並列共振器P11およびP12を備えている。直列共振器S12は2個に分割され、並列共振器P11は3個に分割されている。後段の多重モードフィルタF01およびF02が並列に接続されている。多重モードフィルタF01およびF02の後段には、さらにそれぞれ共振器R01およびR02が接続されている。受信端子Trx1およびTrx2には平衡信号が出力される。
【0071】
送信用フィルタ20は、ラダー型フィルタであり、直列共振器S21〜S24および並列共振器P21〜P23を備えている。直列共振器S21〜S23は2個に分割され、直列共振器S24は3個に分割されている。共振器S11以外の共振器が分割されているのは、共振器S11以外の共振器から発生する非線形信号を小さくし、共振器S11から発生する非線形信号を分かり易くするためである。
【0072】
図11(c)のように、直列共振器の共振周波数は、一般的に通過帯域の中央付近に設定する。よって、共振器S11の共振周波数は受信帯域Brxの中央付近の1964MHzとした。
【0073】
図18は、直列共振器S11の分割数に対するトリプルビート値を示す図である。共振器の分割は分割後の合成静電容量が分割前と同じとなるように分割する。例えば、共振器をn分割する場合は、共振器の開口長および電極指の対数を調整し、分割後の1個の共振器の静電容量が分割前の共振器のn倍となるようにする。分割後の共振器の共振周波数は、分割前と同じ1964MHzとした。図18におけるトリプルビート値は、ジャマー信号を受信帯域内をスイープした際のトリプルビート値の最悪値を示している。
【0074】
図18のように、直列共振器S11を直列に分割することにより、トリプルビート値が改善する。このように直列共振器S11の分割はトリプルビート値の改善に非常に有効である。しかしながら、直列共振器S11を5分割してもトリプルビート値は−77dBc程度である。さらに分割数を増やしてもトリプルビート値は飽和傾向にある。さらに、共振器の分割数を増やすと、分割された共振器1個当りの静電容量を増加させるため面積が大きくなる。例えば、共振器をn分割すると、共振器のサイズはn倍となり、フィルタ面積が増大してしまう。さらに、共振器の分割により電極の抵抗が増大し、フィルタの損失が増加してしまう。
【0075】
そこで、直列共振器の分割以外のトリプルビート値の改善方法を検討した。その結果、トリプルビート値は、共振器の分割以外にも直列共振器S11の共振周波数によって、大きく変化することを見出した。
【0076】
図19は、シミュレーションに用いた分波器の通過特性と共振器S11単体の通過特性を示す図である。図19を参照し、共振器S11の共振周波数が1944MHz、2008MHzおよび2270MHzのときの共振特性を示している。実線は、共振器S11の共振周波数が2008MHzの場合の受信用フィルタ10の通過特性を示し、破線は、送信用フィルタ20の通過特性を示している。
【0077】
図20は、共振器S11の共振周波数に対する共振器S11単独のトリプルビート値の平均値を示す図である。分割数が1から5の直列共振器S11について共振周波数を、図19のように1944MHzから2270MHzまで変化させている。縦軸は、共振器S11以外の非線形信号を0とし、共振器S11単独でのトリプルビート値を計算し、受信帯域Brxに渡るトリプルビート値の平均値を示している。共振器S11が2個以上に分割されている場合は、最もアンテナ端子Tant側の共振器単独のトリプルビート値の平均値を示している。
【0078】
図20より、直列共振器S11の共振周波数を高くすることにより、共振器S11から発生する非線形信号を小さくできることがわかる。これは、共振器S11の共振周波数が高くなるほど、送信信号Stx1およびStx2並びにジャマー信号Sjamの周波数が相対的に共振器S11の共振周波数から遠ざかる。これにより、共振器S11内で励振される弾性表面波の振幅が小さくなる。よって、励起される非線形変位も小さくなるためと考えられる。共振器S11の分割数を増やしても、共振器S11の共振周波数を高くすることにより、トリプルビート値は改善する。以上から、直列共振器S11を分割しなくとも直列共振器S11の共振周波数を高くすることで、トリプルビート値を改善できることがわかった。また、直列共振器S11を分割する場合でも2分割または3分割と現実的な分割数でトリプルビート値の規格を満足できる可能性があることがわかった。
【0079】
図21は、共振器S11の共振周波数に対するトータルのトリプルビート値の最大値を示した図である。縦軸は、図17の分波器の全共振器からの非線形信号を合計して算出したトリプルビート値の受信帯域Brx全域における最悪値を示している。図21のように、共振器S11の共振周波数を一定の周波数(例えば2050MHz)より高くしてもトリプルビート値は改善しない。これは、共振器S11の共振周波数が一定の周波数以上では、共振器S11の非線形信号が共振器S11以外の共振器からの非線形信号より小さくなる。このため、共振器S11の非線形信号をより低減しても、トータルのトリプルビート値は改善しないことを示している。
【0080】
例えば、トリプルビート値の仕様を−79dBc以下とした場合、共振器S11を分割しない場合は、共振器S11の共振周波数を2030MHz以上とすれば、トリプルビート値の仕様を満足する。共振器S11を2個に直列に分割した場合は、共振器S11の共振周波数を2010MHz以上とすれば、トリプルビート値の仕様を満足する。共振器S11を3個に直列に分割した場合は、共振器S11の共振周波数を1980MHz以上とすれば、トリプルビート値の仕様を満足する。なお、トリプルビート値の仕様は各種通信方式において一般的には−79dBc〜−82dBc以下である。図21では、一般的に用いられるトリプルビート値の仕様のうち緩い仕様を採用した。
【0081】
以上のシミュレーションにおいては、分割した共振器S11の共振周波数は全て同じとしたが、互いに異なるように設計してもよい。共振器S11の共振周波数を互いに異なるように設計した場合は、分割した共振器S11の共振周波数の平均値でおおよそトリプルビート値が決まることは自明である。また、図17では、受信用フィルタ10としてラダー型フィルタと多重モードフィルタとの組み合わせたフィルタを用いたが、受信用フィルタ10をラダー型フィルタだけで形成しても同様の結果となる。
【0082】
実施例1によれば、受信用フィルタ10は、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含んでいる。受信用フィルタ10の1または複数の直列共振器のうちアンテナ端子Tantに最も近い直列共振器S11の共振周波数は、受信帯域Brxの上端周波数より高い。このように、直列共振器S11の共振周波数を受信帯域Brxの上端周波数より高くすることにより、図20および図21のように、トリプルビート値を改善することができる。なお、バンドパスフィルタとして機能させるためには、他の直列共振器の少なくとも1つの共振周波数は受信帯域Brx内にであることが好ましい。さらに、他の直列共振器の全ての共振周波数は受信帯域Brx内にであることが好ましい。
【0083】
また、直列共振器S11が分割されていない場合、図21より直列共振器S11の共振周波数は2030MHz以上(つまり、受信帯域Brxの上端周波数1990MHzの102%以上)であることが好ましい。これにより、トリプルビート値を改善できる。
【0084】
さらに、直列共振器S11が2以上に直列に分割されている場合、図21より分割された各共振器の共振周波数の平均値は、受信帯域の上端周波数(1990MHz)より高いことが好ましい。これにより、トリプルビート値を改善できる。
【0085】
さらに、直列共振器S11が2個に直列に分割されている場合、図21より、分割された各共振器の共振周波数の平均値は、2010MHz以上(つまり受信帯域の上端周波数1990MHzの100.9%以上)であることが好ましい。これにより、トリプルビート値を改善できる。
【0086】
さらに、受信用フィルタ10の直列共振器S11およびS12のうちアンテナ端子Tantに最も近い直列共振器S11の共振周波数は、受信用フィルタ10の直列共振器の中で最も高いことが好ましい。アンテナ端子Tantに最も近い直列共振器S11が非線形性に最も影響する。このため、この共振器S11の共振周波数を送信信号Stx1およびStx2並びにジャマー信号Sjamから最も遠ざけることが好ましいためである。
【0087】
さらに、受信用フィルタ10の直列共振器S11およびS12のうち受信端子Trxに最も近い直列共振器S12の共振周波数は、受信用フィルタ10の直列共振器S11およびS12の中で最も低いが好ましい。最も受信端子Trx側の直列共振器S12は、最も非線形性に影響しないためである。
【0088】
さらに、直列共振器S11が3個に直列に分割されている場合、分割された各共振器の共振周波数の平均値は、受信帯域Brx内にあることが好ましい。図21のように、直列共振器S11が3個以上に分割されている場合、共振器S11の共振周波数が受信帯域Brx内にあっても、トリプルビート値の仕様を満足できる。
【実施例2】
【0089】
実施例2は、送信用フィルタ20の最もアンテナ端子Tant側の直列共振器の共振周波数を調整する例である。トリプルビートの非線形信号は、共振器に、送信信号Btx1およびBtx2並びにジャマー信号Sjamの3信号が同時に流れることにより発生する。したがって、送信用フィルタ20のうち最もアンテナ端子Tantに近い直列共振器S24が、送信用フィルタ20に流れ込むジャマー信号の漏洩信号Sjamleakを十分に抑圧することができる。この場合、直列共振器S24より送信端子Ttx側に流れ込む漏洩信号Sjamleakが減り、送信用フィルタ20において発生する非線形信号を小さくできる。
【0090】
図22(a)は、実施例2のシミュレーションに用いた分波器の回路図である。図22(b)は、直列共振器S24が分割されていない分波器の回路図である。図22(a)のように、受信用フィルタ10の直列共振器S11が3分割されている。3分割された直列共振器S11の共振周波数の平均値は1960MHzとした。受信用フィルタ10の並列共振器P11が2分割されている。送信用フィルタ20の直列共振器S24が4分割されている。その他の構成は図17と同じであり説明を省略する。
【0091】
図23は、シミュレーションに用いた送信用フィルタの通過特性と共振器S24単体の通過特性を示す図である。図23中の曲線に付された数字は、共振器S24の反共振周波数を示している。図23を参照し、分割された共振器S24の反共振周波数は互いに全て同じとした。分割された共振器S24の反共振周波数を1940MHz(実施例1における値)から受信帯域Brxの下限周波数である1930MHzまで2MHz間隔で変化させた。送信用フィルタ20の通過特性は、送信帯域Btxではほとんど変わらないが、受信帯域Brxにおいては多少変化する。
【0092】
図24は、受信帯域Brxにおけるトリプルビート値を示す図である。トリプルビート値は、分波器内の全ての共振器の非線形信号を考慮したものである。図24中の曲線に付された数字は、共振器S24の反共振周波数を示している。図24より、共振器S24の反共振周波数を変化させても、周波数が1945MHz以上ではトリプルビート値はほとんど変化しない。これは、周波数が1945MHz以上においては、共振器S11の非線形信号が最も大きく支配的なためである。一方、周波数が1945MHz以下では、トリプルビート値に変化が観測される。これは、周波数が1945MHz以下では、送信用フィルタ20からの非線形信号が共振器S11からの非線形信号より大きいためである。特に、周波数が1935MHz以下においては、共振器S24の反共振周波数を低くすることにより、トリプルビート値が改善する。
【0093】
これは、図23の共振器S24の通過特性より、共振器S24の反共振周波数を受信帯域Brxの下限周波数近くまで低くすると、受信帯域Brxの低帯域側の通過量が低下するためである。これにより、ジャマー信号Sjamの送信用フィルタ20への漏洩を抑制できる。よって、送信用フィルタ20における非線形信号の発生を抑制できる。
【0094】
一方で、共振器S24の反共振周波数を受信帯域Brxの下限周波数1930MHzに近づけすぎると、周波数1935MHzから1945MHzのトリプルビート値が悪化する。これは、図23の共振器S24の通過特性より、共振器S24の反共振周波数を受信帯域Brxの下限周波数近くまで低くすると、周波数1935MHzから1945MHzの信号の共振器S24単体の通過量が増加するためである。以上より、共振器S24の反共振周波数は1932MHz〜1938MHzが好ましい。
【0095】
実施例2のシミュレーションは、共振器S24を4分割した場合を例に行った。しかし、図22(b)のように、共振器S24が分割されていない場合も同様の結果が得られる。共振器S24の通過特性を用い、ジャマー信号の漏洩信号Sjamleakを送信端子Ttx側に流れ込むのを抑制する目的で、反共振周波数を設定するためである。または4分割以外に分割されていても実施例2と同様の結果が得られる。さらに、共振器S24が分割されている場合、分割された共振器S24のうち少なくとも1つが図23の通過特性を有していればよい。共振器S24のうち少なくとも1つが図23の通過特性を有していれば、送信用フィルタ20に流れ込むジャマー信号の漏洩信号Sjamleakを抑制できるためである。好ましくは、分割された共振器S24の全てが図23の通過特性を有していることが好ましい。
【0096】
実施例2によれば、送信用フィルタ20は、1または複数の直列共振器を含んでいる。直列共振器S24が分割されていない場合、直列共振器S24の反共振周波数は、1932MHz以上(つまり受信帯域Brxの下限周波数1930の100.1%以上)かつ1938MHz以下(つまり受信帯域Brxの下限周波数1930の100.4%以下)であることが好ましい。これにより、図24のように、受信帯域Brx内のトリプルビート値を抑制できる。直列共振器S24の反共振周波数は、1934MHz以上(つまり受信帯域Brxの下限周波数1930の100.2%以上)かつ1936MHz以下(つまり受信帯域Brxの下限周波数1930の100.3%以下)であることがより好ましい。
【0097】
直列共振器S24が2個以上に直列に分割されている場合、分割された共振器のうち少なくとも1個の反共振周波数が、受信帯域の下限周波数の100.1%以上かつ100.4%以下であることが好ましい。より送信用フィルタ20へのジャマー信号Sjamの漏洩を抑制するため、分割された共振器の全ての反共振周波数が、受信帯域の下限周波数の100.1%以上かつ100.4%以下であることが好ましい。
【0098】
直列共振器S24は分割されていない場合、直列共振器S24の反共振周波数は、送信用フィルタ20の複数の直列共振器S21〜S24のうち最も高くはないことが好ましい。例えば、直列共振器S22〜S23のいずれかの反共振周波数は直列共振器S24より高いことが好ましい。また、直列共振器S24が2個以上に直列に分割されている場合、分割された直列共振器S24の少なくとも1個の反共振周波数は、送信用フィルタ10の複数の直列共振器S21〜S24のうち最も高くはないことが好ましい。これらにより、ラダー型フィルタにおいて通過帯域を形成することができる。
【0099】
直列共振器S24は分割されていない場合、直列共振器S24の反共振周波数は、送信用フィルタ20の複数の直列共振器S21〜S24のうち最も低くはないことが好ましい。例えば、直列共振器S22〜S23のいずれかの反共振周波数は直列共振器S24より低いことが好ましい。また、直列共振器S24が2個以上に直列に分割されている場合、分割された直列共振器S24の少なくとも1個の反共振周波数は、送信用フィルタ10の複数の直列共振器S21〜S24のうち最も低くはないことが好ましい。これらにより、ラダー型フィルタにおいて通過帯域を形成することができる。
【0100】
直列共振器S24が分割されていない場合、直列共振器S24の反共振周波数は、送信用フィルタ20の複数の直列共振器S21〜S24のうち最も低くくすることもできる。また、直列共振器S24が2個以上に直列に分割されている場合、分割された共振器S24のうち少なくとも1個の反共振周波数は、送信用フィルタ20の複数の直列共振器S21〜S24のうち最も低くくすることもできる。これらにより、ラダー型フィルタにおいて通過帯域を形成することができる。
【0101】
図22(b)のように、直列共振器S24が分割されていない場合、直列共振器S24の反共振周波数を、受信帯域Brx内とすることができる。これにより、トリプルビート値を抑制できる。また、図22(a)において、直列共振器S24が2個以上に直列に分割されている場合、分割された共振器S24のうち少なくとも1個の反共振周波数を、受信帯域Brx内とすることもできる。
【実施例3】
【0102】
実施例3は、受信用フィルタ10の最もアンテナ端子Tant側の並列共振器の共振周波数を調整する例である。トリプルビートの非線形信号は、共振器に、送信信号Btx1およびBtx2並びにジャマー信号Sjamの3信号が同時に流れることにより発生する。したがって、受信用フィルタ10のうち最もアンテナ端子Tantに近い並列共振器P11が、受信用フィルタ10に流れ込む送信信号の漏洩信号Stx1leakおよびStx1leakを十分に抑圧することができる。この場合、並列共振器P11より受信端子Trx側に流れ込む漏洩信号Stx1leakおよびStx1leakが減り、受信用フィルタ10において発生する非線形信号を小さくできる。
【0103】
図25(a)は、実施例3のシミュレーションに用いた分波器の回路図である。図25(b)は、並列共振器S11が分割されていない分波器の回路図である。図25(a)のように、受信用フィルタ10の直列共振器S11が2分割されている。分割された直列共振器S11の共振周波数は2100MHzとした。受信用フィルタ10の並列共振器P11が4分割されている。送信用フィルタ20の直列共振器S24が4分割されている。分割された直列共振器S24の反共振周波数は1936MHzとした。その他の構成は図22(a)と同じであり説明を省略する。
【0104】
図26は、シミュレーションに用いた受信用フィルタの通過特性と共振器P11単体の通過特性を示す図である。図26中の曲線に付された数字は、共振器P11の共振周波数を示している。図26を参照し、分割された共振器P11の共振周波数は全て同じとした。分割された共振器P11の共振周波数を1909MHz(実施例1および2における値)から1917MHzまで2MHz間隔で変化させた。以上の共振器P11の共振周波数には、寄生グランドインダクタンスを含まない。受信用フィルタ10の通過特性は、共振器P11の共振周波数によらずほとんど変わらない。
【0105】
図27は、受信帯域Brxにおけるトリプルビート値を示す図である。トリプルビート値は、分波器内の全ての共振器の非線形信号を考慮したものである図27中の曲線に付された数字は、共振器P11の共振周波数を示している。図27より、共振器P11の共振周波数を変化させても、周波数が1975MHz以下ではトリプルビート値はほとんど変化しない。一方、周波数が1975MHz以上では、トリプルビート値に変化が観測される。これは、周波数が1975MHz以下においては、並列共振器P11より受信端子Trx側の受信フィルタの非線形信号が支配的になっているためである。
【0106】
特に、周波数が1985MHz以上では、共振器P11の共振周波数を高くすることにより、トリプルビート値が改善する。これは、図26の共振器P11の通過特性より説明できる。その前に、並列共振器P11のグランド側端子にはフィルタチップの配線、バンプおよびパッケージ配線等が接続される。これらのインダクタンスが並列共振器P11のグランド端子に付加される。並列共振器のグランド端子にインダクタンス成分が付加されると、並列共振器の共振周波数は低周波側にシフトする。このため、並列共振器P11のグランド端子に付加されている寄生インダクタンスを考慮すると、並列共振器P11の共振周波数は、図26より約5MHz低くなっている。例えば、1.9GHz帯において、並列共振器に一般的なグランドインピーダンスである0.1nHが付加されると、並列共振器の共振周波数は約5MHz低くなる。
【0107】
図26の並列共振器P11の通過特性を約5MHz低くシフトさせると、送信帯域Btxの上限近くでは、並列共振器P11の共振周波数が高くなると、並列共振器P11の通過量が減少する。よって、ジャマー信号Sjamが受信帯域Brxの上限近く(例えば1985MHz以上)のとき、並列共振器P11は対応する送信信号の漏洩信号Stx1leakおよびStx2leakを抑圧する。これにより、送信信号Stx1およびStx2の受信用フィルタ10への漏洩を抑制できる。よって、受信用フィルタ10における非線形信号の発生を抑制できる。
【0108】
一方で、図27において、共振器P11の共振周波数を1917MHzにすると、周波数1975MHzから1985MHzのトリプルビート値が悪化する。これは、図26の寄生グランドインダクタンスを考慮した共振器P11の通過特性より、共振器P11の共振周波数を1917MHzとすると、送信帯域Btxの上限から5〜15MHz低い周波数の共振器P11単体の通過量が増加するためである。以上より、共振器P11の共振周波数は、寄生グランドインダクタンスを含めない場合、1911MHz〜1917MHzが好ましい。寄生グランドインダクタンスを含めた場合、1906MHz〜1912MHzが好ましい。ただし、周波数1975MHzから1985MHzのトリプルビート値の悪化は、実施例2の図24の周波数1935MHzから1945MHzほどは大きくない。よって、寄生グランドインダクタンスを含めた場合および含めない場合とも、共振器P11の共振周波数は送信帯域Btxの上限周波数以上であることが好ましい。
【0109】
実施例3のシミュレーションは、共振器P11を4分割した場合を例に行った。しかし、実施例2の考察と同様に、図25(b)のように、共振器P11が分割されていない場合も同様の結果が得られる。または4分割以外に分割されていても実施例3と同様の結果が得られる。さらに、共振器P11が分割されている場合、送信信号の受信端子Trx側への漏洩を抑制するためには、分割された共振器P11の共振周波数の少なくとも1個が図26の通過特性を有していればよい。好ましくは、分割された共振器P11の全てが図26の通過特性を有していることが好ましい。
【0110】
実施例3によれば、受信用フィルタ10は、1または複数の並列共振器を含む。並列共振器P11が分割されていない場合、並列共振器P11の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、1906MHz(つまり送信帯域Btxの上端周波数1910MHzの99.8%)以上であることが好ましい。これにより、図27のように、トリプルビート値を抑制できる。また、並列共振器P11が2個以上に直列に分割されている場合、分割された各共振器P11の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数の平均値は、1906MHz以上(つまり送信帯域Btxの上端周波数1910MHzの99.8%以上)であることが好ましい。さらに、共振器P11の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、1912MHz以下(つまり送信帯域の上端周波数の100.1%以下)であることが好ましい。
【0111】
図25(b)のように、並列共振器P11が分割されていない場合、並列共振器P11の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、送信帯域Btxの上端周波数1910MHz以上であることが好ましい。これにより、図27のように、トリプルビート値を抑制できる。また、図25(a)において、並列共振器P11が2個以上に直列に分割されている場合、分割された各共振器P11の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数の平均値は、送信帯域Btxの上端周波数1910MHz以上であることが好ましい。さらに、並列共振器P11が2個以上に直列に分割されている場合、分割された各共振器P11の少なくとも1つの寄生グランドインダクタンスを含めない共振周波数は、送信帯域Btxの上端周波数1910MHz以上であることが好ましい。なお、分割された各共振器P11の少なくとも1つの共振周波数を寄生グランドインダクタンスを含めない共振周波数を用い議論しているのは、並列共振器P11の個々の共振周波数を議論する場合、寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は意味をなさないためである。
【0112】
並列共振器P11が分割されていない場合に、並列共振器P11の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、受信用フィルタ10の並列共振器の中で最も高くすることができる。並列共振器P11が2個以上に直列に分割されている場合に、分割された共振器P11のうち少なくとも1個の寄生グランドインダクタンスを含めない共振周波数は、受信用フィルタ10の複数の並列共振器P11〜P12の中で最も高くすることができる。最もアンテナ端子Tantに近い並列共振器P11は非線形性に最も影響するためである。
【0113】
受信用フィルタ10のうち受信端子Trxに最も近い並列共振器P12が分割されていない場合に、並列共振器P12の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、受信用フィルタ10の複数の並列共振器P11〜P12の中で最も低くすることができる。また、並列共振器P12が2個以上に直列に分割されている場合に、分割された共振器P12のうち少なくとも1個の寄生グランドインダクタンスを含めない共振周波数は、受信用フィルタ10の複数の並列共振器P11〜P12の中で最も低くすることができる。最も受信端子Trx側の並列共振器P12は、最も非線形性に影響しないためである。
【実施例4】
【0114】
実施例4は、直列共振器S23の反共振周波数を調整する例である。図28(a)は、実施例4のシミュレーションに用いた分波器の回路図である。図28(b)は、直列共振器S23が分割されていない分波器の回路図である。図28(a)のように、受信用フィルタ10の直列共振器S11を2分割とした。送信用フィルタ20の並列共振器P21とP22とに共通に寄生グランドインダクタンスL21、並列共振器P23に寄生グランドインダクタンスL22を設けた。2分割された直列共振器S21、S22およびS23は、送信端子Ttx側を共振器S21a、S22aおよびS23aとした。アンテナ端子Tant側を共振器S21b、S22bおよびS23bとした。その他の構成は実施例1の図17と同じであり説明を省略する。
【0115】
図29(a)は、送信用フィルタの通過特性と各直列共振器の通過特性を示した図である。この例では、直列共振器S23aの反共振周波数を1978MHzとしている。図29(b)は、受信帯域におけるトリプルビート値を示した図である。図29(b)のように、受信帯域Brxの中央付近において、トリプルビート値が悪化している。
【0116】
図30は、送信用フィルタの通過特性と、直列共振器S23a単体の通過特性を示した図である。図30中の曲線に付された数字は、共振器S23aの反共振周波数を示している。図30のように、直列共振器S23aの反共振周波数を1980MHzから5MHz刻みで1930MHzまで変化させた。受信帯域Brxにおける送信用フィルタ20の減衰量の仕様は−43dBである。いずれの送信用フィルタ20ともこの仕様をほぼ満足している。
【0117】
図31は、実施例4のトリプルビート値を示す図である。全ての共振器の非線形信号を考慮したトータルのトリプルビート値と直列共振器S23a単体のトリプルビート値を図示している。図31中の曲線に付された数字は、共振器S23aの反共振周波数を示している。図31のように、直列共振器S23aの反共振周波数を低くすると、トリプルビート値が改善している。直列共振器S23aの反共振周波数が1970MHz以下で、トリプルビート値は小さくなる。1960MHz以下で、トータルのトリプルビート値に影響しなくなる。すなわち直列共振器S23aの非線形信号は全他の非線形性にほぼ影響しなくなる。
【0118】
実施例4によれば、送信用フィルタ20が複数の直列共振器を含む。送信用フィルタ20の複数の直列共振器のうちアンテナ端子Tantに最も近い直列共振器S24から2つめの直列共振器S23aおよびS23bの反共振周波数は、1970MHz以下(つまり受信帯域Brxの下限周波数1930MHzの102.1%以下)であることが好ましい。さらに、直列共振器S23aの反共振周波数は、1960MHz以下(つまり受信帯域Brxの下限周波数1930MHzの101.6%以下)であることがより好ましい。
【0119】
実施例4のシミュレーションは、共振器S23を2分割した場合を例に行った。しかし、実施例2の考察と同様に、図28(b)のように、共振器S23が分割されていない場合も同様の結果が得られる。または2分割以外に分割されていても実施例4と同様の結果が得られる。さらに、共振器S23が分割されている場合、分割された共振器S23の反共振周波数の少なくとも1個が図29の通過特性を有していればよい。分割された共振器S23の全てが図29の通過特性を有していることが好ましい。
【0120】
以上のように、アンテナ端子Tantに最も近い直列共振器から2つめの直列共振器が2個以上に分割された場合、分割された共振器S23aおよびS23bのうち少なくとも1個の反共振周波数が受信帯域Brxの下限周波数の102.1%以下であることが好ましい。分割された共振器の全ての反共振周波数が受信帯域Brxの下限周波数の102.1%以下であることがより好ましい。
【0121】
また、図28(b)のように、アンテナ端子Tantに最も近い直列共振器から2つめの直列共振器が分割されていない場合、分割されていない共振器S23の反共振周波数が受信帯域Brxの下限周波数の102.1%以下であることが好ましい。
【実施例5】
【0122】
実施例5は、分波器を作製し、トリプルビート値を測定した例である。図32(a)は、比較例に係る分波器の回路図、図32(b)は、実施例5に係る分波器の回路図である。受信用フィルタ10および送信用フィルタ20は、弾性表面波共振器を用いたフィルタである。図32(b)のように実施例5に係る分波器の構成は図25(a)の実施例3の構成と同じであり、説明を省略する。なお、直列共振器S22のうち送信端子Ttx側を共振器S22a、アンテナ端子Tant側を共振器S22bとする。また、直列共振器S12のうち受信端子Trx側を共振器S12b、アンテナ端子Tant側を共振器S12aとする。図32(a)のように、比較例に係る分波器においては、直列共振器S11が3分割、直列共振器S24が2分割、並列共振器P11が2分割されている。また、並列共振器P12は分割されていない。その他の構成は図32(b)と同じであり説明を省略する。
【0123】
図33は、比較例に係る分波器の送信用フィルタの通過特性と、各直列共振器の通過特性を示す図である。図34は、実施例5に係る分波器の送信用フィルタの通過特性と、各直列共振器の通過特性を示す図である。図33および図34のように、比較例の直列共振器S24の反共振周波数は1940MHzであるが、実施例5では、直列共振器S24の反共振周波数を1936MHzとした。直列共振器S24の反共振周波数の変更により、送信用フィルタ20の受信帯域の抑圧度が悪化する。これを補正するため実施例5では、直列共振器S22aの反共振周波数を比較例より4MHz低くした。
【0124】
図35は、比較例に係る分波器の受信用フィルタの通過特性と、各直列共振器の通過特性を示す図である。図36は、実施例5に係る分波器の受信用フィルタの通過特性と、各直列共振器の通過特性を示す図である。図35および図36のように、比較例の直列共振器S11の共振周波数は1952MHzであるが、実施例5では、2070MHzとした。直列共振器S11の共振周波数の変更により、受信用フィルタ10の通過帯域よりも高周波数側の抑圧度が悪化する。これを補正するため、実施例5では直列共振器S12bの共振周波数を比較例の直列共振器S11と同じ1952MHzとした。なお、直列共振器S12aでなく、直列共振器S12bの共振周波数を変更したのは、非線形性により影響しないアンテナ端子Tantから遠い共振器の共振周波数を通過帯域に近づけるためである。
【0125】
図37は、比較例に係る分波器の受信用フィルタの通過特性と、各並列共振器の通過特性を示す図である。図38は、実施例5に係る分波器の受信用フィルタの通過特性と、各並列共振器の通過特性を示す図である。図37および図38のように、比較例の並列共振器P11の共振周波数は1909MHz(寄生グランドインダクタンスを含めると1904MHz)であるが、実施例5では、1913MHz(寄生グランドインダクタンスを含めると1908MHz)とした。並列共振器P11の共振周波数の変更により、受信用フィルタ10の送信帯域Btxの抑圧度が悪化する。これを補正するため、実施例5の並列共振器P12の共振周波数を比較例の並列共振器P11と同じ1909MHzとした。
【0126】
図39(a)および図39(b)は、それぞれ比較例および実施例5の送信用フィルタチップ78の平面図である。図39(a)および図39(b)のように、タンタル酸リチウムからなる圧電基板70上に、アルミニウムを主成分とする金属膜が形成されている。金属膜により、各共振器、パッド72および配線が形成される。パッド72上にはバンプ74が形成されている。パッド72のうち、パッドAntはアンテナ端子に接続されるパッド、パッドTxは送信端子に接続されるパッド、パッドGndはグランドに接続されるパッドである。各共振器は、図32(a)および図32(b)の回路図中の共振器に対応している。なお、図33から図39(b)は、各共振器を設計するためのシミュレーションの結果である。
【0127】
図40(a)および図40(b)は、それぞれ比較例および実施例5の受信用フィルタチップ76の平面図である。図40(a)および図40(b)のように、タンタル酸リチウムからなる圧電基板70上に、アルミニウムを主成分とする金属膜が形成されている。金属膜により、各共振器、パッド72および配線が形成される。パッド72上にはバンプ74が形成されている。パッド72のうち、パッドAntはアンテナ端子に接続されるパッド、パッドRx1およびRx2は受信端子に接続されるパッド、パッドGndはグランドに接続されるパッドである。各共振器は、図32(a)および図32(b)の回路図中の共振器に対応している。
【0128】
図41(a)から図41(c)は、各チップが実装される積層基板の平面図である。図41(a)は、送信用フィルタチップ78および受信用フィルタチップ76がフリップチップ実装されるダイアタッチ層81の上面図である。送信用フィルタチップ78および受信用フィルタチップ76を透視している。チップ76および38のパッド72を図示している。図41(b)は、下面にフットパッド83が形成されているフットパッド層82の上面図である。フットパッド83は透視して破線で示している。図41(c)は、フットパッド層82の下面を透視した図である。
【0129】
図41(a)のように、セラミック等の絶縁体からなるダイアタッチ層81の上面には銅等の金属からなる配線84が形成されている。各チップ76および78のパッド72は配線84にバンプを介し接合されている。ビア86はダイアタッチ層81を貫通する金属が埋め込まれたビアである。
【0130】
図41(b)のように、セラミック等の絶縁体からなるフットパッド層82の上面には銅等の金属からなる配線84が形成されている。ダイアタッチ層81を貫通したビア86が配線84に電気的に接続されている。ビア88はフットパッド層82を貫通する金属が埋め込まれたビアである。
【0131】
図41(c)のように、金属からなるフットパッド83にはフットパッド層82を貫通したビア88が電気的に接続されている。フットパッド83のうち、フットパッドAntはアンテナ端子に接続されるフットパッド、フットパッドTxは送信端子に接続されるフットパッド、フットパッドRx1およびRx2は受信端子に接続されるフットパッド、フットパッドGndはグランドに接続されるフットパッドである。
【0132】
図42は、パッケージを示す解体斜視図である。図42のように、ダイアタッチ層およびフットパッド層を含む積層基板80上にセラミック等の絶縁体からなるキャビティ層92が形成されている。キャビティ層92の中央にはキャビティ96が形成されている。積層基板80上にチップ76および78をフリップチップ実装する。金属からなるリッド94をキャビティ層92上に固着する。これにより、チップ76および78は、キャビティ96に気密封止される。以上により、チップ76および78が実装されたパッケージ90が形成される。
【0133】
図43は、プリント基板を示す平面図である。プリント基板98上には金属からなる配線95が形成されている。プリント基板98上にパッケージ90を表面実装する。パッケージ90のフットパッドAntはアンテナ端子Tantに接続する配線95に接続される。アンテナ端子Tantに接続される配線95とグランド端子Tgndとの間にチップインダクタ99が表面実装される。パッケージ90のフットパッドTxは送信端子Ttxに接続する配線95に接続される。パッケージ90のフットパッドRx1およびRx2は、それぞれ受信端子Trx1およびTrx2に接続する配線95に接続される。
【0134】
図44は、比較例と実施例5との分波器のトリプルビート値の測定結果を示す図である。図44を参照し、実線は実施例5、破線は比較例を示している。比較例に係る分波器においては、受信帯域Brxの一部でトリプルビート値の仕様である−79dBc以下を満足していない。これに対し、実施例5に係る分波器においては、受信帯域Brxの全域においてトリプルビート値の仕様である−79dBc以下を満足している。このように、実施例5は、比較例に対し、非線形性を改善することができた。
【実施例6】
【0135】
実施例6は受信用フィルタ10の直列共振器S11をキャパシタに置き換えた例である。実施例1によれば、受信用フィルタ10の最もアンテナ端子Tant側の直列共振器S11の共振周波数を高くすることにより線形性を向上できる。これは、直列共振器S11は、送信帯域Btxおよび受信帯域Brxにおいて、ほとんど弾性波が励起されておらず、ほぼキャパシタとして機能していることを意味している。したがって、直列共振器S11をキャパシタに置き換えれば、実施例1以上にトリプルビート値を改善できる。
【0136】
図45は、実施例6に係る分波器の回路図である。実施例5の図32(b)における直列共振器S11をキャパシタCに置き換えている。その他の構成は図32(b)と同じであり説明を省略する。
【0137】
図46は、実施例6の受信用フィルタチップの平面図である。実施例5の図40(b)に比べ、直列共振器S11が設けられていない。その他の構成は図40(b)と同じであり説明を省略する。
【0138】
図47(a)から図47(c)は、各チップが実装される積層基板の平面図である。図47(a)および図47(b)のように、ダイアタッチ層81の上面に、送信用フィルタチップ76のパッドAntに電気的に接続する電極85aが形成されている。フットパッド層82の上面に、アンテナ側のフットパッドAntに電気的に接続する電極85bが形成されている。電極85aと電極85bとの間のダイアタッチ層81を形成する誘電体がキャパシタとして機能する。このように、キャパシタCを積層基板80内に形成することができる。キャパシタCは、チップコンデンサ等を用いてもよい。実施例6によれば、トリプルビート値を改善できる。
【0139】
実施例6および7においては、送信用フィルタチップ76および受信用フィルタチップ78は、積層セッラミック基板に実装されているが、セラミックパッケージまたはプリント基板に実装されていてもよい。また、送信用フィルタチップ76および受信用フィルタチップ78は、フリップチップ実装されているが、フェースアップ実装されていてもよい。さらに、送信用フィルタ20と受信用フィルタ10は、それぞれ別のチップに形成されているが、同じチップに形成されていてもよい。
【0140】
整合回路30として、インダクタL1を用いたが他の構成の整合回路でもよい。例えば、アンテナ端子と受信用フィルタとの間にキャパシタが接続されていてもよい。また、インダクタL1としてチップインダクタを用いたが、積層セラミック等のパッケージ内に形成されていてもよい。
【実施例7】
【0141】
実施例7は、受信用フィルタ10の多重モードフィルタを分割する例である。図48は、実施例7に係る分波器の回路図である。図48のように、受信用フィルタ10においては、アンテナ端子Tantと受信端子Trx1との間に直列共振器S11a1およびS11b1、多重モードフィルタF01aおよびF01bが直列に接続されている。アンテナ端子Tantと受信端子Trx2との間に直列共振器S11a2およびS11b2、多重モードフィルタF02aおよびF02bが直列に接続されている。受信端子Trx1とTrx2との間に共振器R1が接続されている。送信用フィルタ20の構成は、実施例5の図32(b)と同じであり説明を省略する。
【0142】
図49は、実施例7の受信用フィルタチップの平面図である。圧電基板70上に金属膜が形成されている。金属膜により、各共振器、パッド72および配線が形成される。パッド72上にはバンプ74が形成されている。パッド72のうち、パッドAntはアンテナ端子に接続されるパッド、パッドRx1およびRx2は受信端子に接続されるパッド、パッドGndはグランドに接続されるパッドである。各共振器は、図48の回路図中の共振器に対応している。その他の構成は実施例5と同じである。実施例7では、アンテナ端子Tantに最も近い直列共振器を2分割する。直列共振器S11a1、S11b1、S11a2およびS11b2の共振周波数を、受信帯域Brxより十分高く設定する。多重モードフィルタを2個に分割する。これにより、非線形性を改善することができる。
【0143】
実施例7のように、多重モードフィルタを2個以上に直列に分割することもできる。また、多重モードフィルタは、受信用フィルタ10および送信用フィルタ20の少なくとも一方に含まれていればよい。
【0144】
実施例1から7において、多重モードフィルタは、多重モードフィルタが縦続接続されたフィルタでもよい。また、実施例1から7において、受信用フィルタ10および送信用フィルタ20の少なくとも一方はラダー型フィルタでもよく、両方がラダー型フィルタでもよい。
【0145】
実施例1から実施例7においては、送信帯域Btxが1850MHz〜1910MHz、受信帯域Brxが1930MHz〜1990MHzの北米PCSに用いる分波器を例に説明した。送信帯域Btxおよび受信帯域Brxの周波数帯域が変化した場合も周波数が相似変換されるだけであり、トリプルビート値はほとんど変化しない。よって、実施例1から実施例7については、他の送信帯域Btxおよび受信帯域Brxを有する分波器にも適用できる。例えば、送信帯域が824MHz〜849MHz、受信帯域が869MHz〜894MHzのCellularシステム用の分波器に適用することもできる。
【0146】
実施例1から実施例7において、受信用フィルタ10の最もアンテナ端子Tantに近い共振器は直列共振器であったが、並列共振器でもよい。実施例1の効果をより得るためには、受信用フィルタ10の最もアンテナ端子Tantに近い共振器は直列共振器であることが好ましい。また、送信用フィルタ20の最もアンテナ端子Tantに近い共振器は直列共振器であったが、並列共振器でもよい。実施例2の効果をより得るためには、送信用フィルタ20の最もアンテナ端子Tantに近い共振器は直列共振器であることが好ましい。
【0147】
また、実施例1から実施例7において、弾性表面波共振器を用いた例を説明したが、ラブ波共振器、弾性境界波共振器または圧電薄膜共振器を用いることもできる。これらの共振器を用いても前述の非線形性が改善できる。
【0148】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0149】
10 受信用フィルタ
20 送信用フィルタ
30 整合回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信端子とアンテナ端子との間に接続され、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含む、受信帯域を有する受信用フィルタと、
送信端子と前記アンテナ端子との間に接続され、弾性波共振器を含む、送信帯域を有する送信用フィルタと、
を具備し、
前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の共振周波数は、前記受信帯域の上端周波数より高いことを特徴とする分波器。
【請求項2】
前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の共振周波数は、前記受信帯域の上端周波数の102%以上であることを特徴とする請求項1記載の分波器。
【請求項3】
前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2以上に直列に分割されており、分割された各共振器の共振周波数の平均値は、前記受信帯域の上端周波数より高いことを特徴とする請求項1記載の分波器。
【請求項4】
前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2個に直列に分割されており、分割された各共振器の共振周波数の平均値は、前記受信帯域の上端周波数の100.9%以上であることを特徴とする請求項1記載の分波器。
【請求項5】
前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器は、複数の直列共振器であり、
前記受信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の共振周波数は、前記受信用フィルタの前記複数の直列共振器の中で最も高いことを特徴とする請求項1記載の分波器。
【請求項6】
前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器は、複数の直列共振器であり、
前記受信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記受信端子に最も近い直列共振器の共振周波数は、前記受信用フィルタの前記複数の直列共振器の中で最も低いことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の分波器。
【請求項7】
受信端子とアンテナ端子との間に接続され、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含む、受信帯域を有する受信用フィルタと、
送信端子と前記アンテナ端子との間に接続され、弾性波共振器を含む、送信帯域を有する送信用フィルタと、
を具備し、
前記受信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は3個に直列に分割されており、分割された各共振器の共振周波数の平均値は、前記受信帯域内にあることを特徴とする分波器。
【請求項8】
前記受信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の並列共振器を含み、
前記受信用フィルタの前記1または複数の並列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い並列共振器の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、前記送信帯域の上端周波数の99.8%以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の分波器。
【請求項9】
前記アンテナ端子に最も近い並列共振器の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、前記送信帯域の上端周波数以上であることを特徴とする請求項8記載の分波器。
【請求項10】
前記受信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の並列共振器を含み、
前記受信用フィルタの前記1または複数の並列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い並列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された並列共振器のうち少なくとも1個の寄生グランドインダクタンスを含めない共振周波数は、前記送信帯域の上端周波数以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の分波器。
【請求項11】
前記受信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の並列共振器を含み、
前記受信用フィルタの前記1または複数の並列直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い並列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された各共振器の平均の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、前記送信帯域の上端周波数の99.8%以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の分波器。
【請求項12】
前記分割された各共振器の平均の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、前記送信帯域の上端周波数以上であることを特徴とする請求項11記載の分波器。
【請求項13】
前記受信用フィルタは、弾性波共振器である複数の並列共振器を含み、
前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い並列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い並列共振器の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器の中で最も高いことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の分波器。
【請求項14】
前記受信用フィルタは、弾性波共振器である複数の並列共振器を含み、
前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い並列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の寄生グランドインダクタンスを含めない共振周波数は、前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器の中で最も高いことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の分波器。
【請求項15】
前記受信用フィルタは、弾性波共振器である複数の並列共振器を含み、
前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器のうち前記受信端子に最も近い並列共振器は分割されておらず、前記受信端子に最も近い並列共振器の寄生グランドインダクタンスを含めた共振周波数は、前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器の中で最も低いことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の分波器。
【請求項16】
前記受信用フィルタは、弾性波共振器である複数の並列共振器を含み、
前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器のうち前記受信端子に最も近い並列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の寄生グランドインダクタンスを含めない共振周波数は、前記受信用フィルタの前記複数の並列共振器の中で最も低いことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の分波器。
【請求項17】
前記送信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含み、
前記送信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の反共振周波数は、前記受信帯域の下限周波数の100.1%以上かつ100.4%以下であることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項記載の分波器。
【請求項18】
前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、
前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の反共振周波数は、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち最も高くはないことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項記載の分波器。
【請求項19】
前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、
前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の反共振周波数は、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち最も低くはないことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項記載の分波器。
【請求項20】
前記送信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含み、
前記送信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の反共振周波数は、前記受信帯域の下限周波数の100.1%以上かつ100.4%以下であることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項記載の分波器。
【請求項21】
前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、
前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の反共振周波数は、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち最も高くはないことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項記載の分波器。
【請求項22】
前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、
前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の反共振周波数は、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち最も低くはないことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項記載の分波器。
【請求項23】
前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、
前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の反共振周波数は、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち最も低いことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項記載の分波器。
【請求項24】
前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、
前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の反共振周波数は、前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち最も低いことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項記載の分波器。
【請求項25】
前記送信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含み、
前記送信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は分割されておらず、前記アンテナ端子に最も近い直列共振器の反共振周波数は、前記受信帯域内にあることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項記載の分波器。
【請求項26】
前記送信用フィルタは、弾性波共振器である1または複数の直列共振器を含み、
前記送信用フィルタの前記1または複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の反共振周波数は、前記受信帯域内にあることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項記載の分波器。
【請求項27】
前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、
前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器から2つめの直列共振器は分割されておらず、前記2つめの直列共振器の反共振周波数は、前記受信帯域の下限周波数の102.1%以下であることを特徴とする請求項1から26のいずれか一項記載の分波器。
【請求項28】
前記送信用フィルタは、弾性波共振器である複数の直列共振器を含み、
前記送信用フィルタの前記複数の直列共振器のうち前記アンテナ端子に最も近い直列共振器から2つめの直列共振器は2個以上に直列に分割されており、分割された共振器のうち少なくとも1個の反共振周波数は、前記受信帯域の下限周波数の102.1%以下であることを特徴とする請求項1から26のいずれか一項記載の分波器。
【請求項29】
前記受信用フィルタおよび前記送信用フィルタの少なくとも一方には、多重モード弾性波フィルタが含まれることを特徴とする請求項1から28のいずれか一項記載の分波器。
【請求項30】
前記多重モードフィルタは2個以上に直列に分割されていることを特徴とする請求項29記載の分波器。
【請求項31】
前記受信帯域は、1930MHzから1990MHzであり、前記送信帯域は、1850MHzから1910MHzであることを特徴とする請求項1から30のいずれか一項記載の分波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【公開番号】特開2012−151697(P2012−151697A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9297(P2011−9297)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】