説明

分注ノズルチップ

【課題】分注装置のノズルチップにより、血液等の検体中のフィブリン等の異物塊による詰まりや、子検体容器中への異物塊の混入を防止する。
【解決手段】ノズルチップ20の先端付近の内壁面に、先端側とは反対向きに傾けて針状突起28を立設する。検体24を吸い込む時には、検体の流れに、またはフィブリン26に押されて、針状突起28は撓んで、フィブリン26は、ノズルチップ20内に検体と共に吸い込まれる。ノズルチップ20より検体24を吐出するときには、針状突起28が傾いていることにより、フィブリン26が針状突起28に掛かり、ノズルチップ20内に捕捉されて、子検体容器22内に吐出されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の検体を、この検体を収容した容器から、一つまたは複数の別の容器に分注する分注装置のノズルに装着されるノズルチップに関する。
【背景技術】
【0002】
親検体容器に収容された血液、尿等の検体を分析するために、少量を子検体容器に取り分ける分注装置が知られている。分注動作においては、親検体容器に収容された検体に、分注ノズルの先端を差し入れ、検体を吸引し、所定量を吸引した後、分注ノズルを引き上げ、さらに、分注ノズルを、予め準備されている一つまたは複数の子検体容器の位置に移動させて、ここに所定量の検体を吐出する。分注ノズルの先端には、ノズルチップが装着されており、このノズルチップは、検体ごとに交換して使用される。
【0003】
分注対象の検体中には、フィブリン、クロッツなどと呼ばれる繊維状、ジェル状等の異物塊が含まれていることがある。これらの異物が含まれていると、ノズルのつまりが発生して、分注処理を停止させ、全体として処理速度を低下させる要因となる。また、異物塊をノズルに一旦吸い込んでしまうと、これが分注された検体に混入する可能性がある。フィブリンを分注ノズルから吸い込まないようにする手法が、下記特許文献1,2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2859845号明細書
【特許文献2】特開2001−242164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記、特許文献に記載された手法は、親検体容器内において、フィブリンを分注ノズルに吸い込まれない位置へと押しやり、そこで保持し、これを吸い込まないようにするものである。しかし、フィブリンを押しやるための部材を親検体容器中に入れており、検体に異物が混入する可能性が高まり、また作業工程も増加する。
【0006】
本発明は、検体に含まれるフィブリン等の異物塊の、分注された検体への混入を防止する効率的な手法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る分注装置の分注ノズルチップは、チップ内部に、吸い込んだ検体内の異物塊を捉え、試料吐出時に前記異物塊を吐出させないトラップ手段を有する。トラップ手段は、チップ内壁面に、吸い込む流れの向きに傾いて立設された複数の針状の突起とすることができる。また別のトラップ手段は、当該チップの吸込み時に開き、吐出時に閉じる網状の扉とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
チップ内に異物塊を捉えることにより、分注した検体への混入を防止することができる。また、親検体容器内から異物塊を取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】分注装置の概略構成を示す図である。
【図2】ノズルチップの詳細な構成を示す図、および分注動作の説明図である。
【図3】ノズルチップの詳細な構成を示す図、および分注動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、分注装置10の概略を示す図である。分注対象の検体が収められる親検体容器12は、事前に開栓され、分注位置に送られてくる。分注位置には、少なくとも上下、左右に移動可能な分注ヘッド(不図示)に搭載された分注ノズル14が配置される。分注ノズル14は、シリンダ16に繋がるパイプ18と、パイプの先端に装着されるノズルチップ20を含む。ノズルチップ20は、一つの親検体容器12に対して用いられた後は、取り外されて廃棄される。次の親検体容器12に対しては新しいノズルチップ20が装着される。分注ノズル14は、親検体容器12中に降下し、その先端が検体中に差し入れられ、シリンダ16が作動することにより、検体がノズル内に吸い込まれる。分注ノズル14は、検体を吸い込んだ状態で上昇し、さらに水平方向に(図1においては右方向に)移動して、検体を注入する子検体容器22上に達する。そして、分注ノズル14は、子検体容器22に向けて降下し、シリンダ16の動作によって、容器中で所定量の検体を吐出する。複数の子検体容器22に対し、分注を行う場合は、同様に、分注ノズル14は、上昇、水平移動および下降を行って次の子検体容器22に挿入され、この容器中に検体を注入する。所定の子検体容器22に対して分注が終了した後、ノズルチップ20は、パイプ18から取り外され、次に送られてくる親検体容器12に対しては新たなノズルチップ20が装着され、同様の動作が実行される。また、より多くの子検体容器に分注を行う場合には、図1に示す分注ノズル14等の構成を、親検体容器12の搬送路に沿って複数設け、個々の場所で、上述した分注処理を行う。
【0011】
図2は、本実施形態のノズルチップ20の詳細の構成と、その動作を示す図である。図中の親検体容器12中の検体24中には、異物塊としてのフィブリン26が析出している。一方、ノズルチップ20の内壁面、特に先端のコーンの部分の内壁面には、複数の針状の突起28が立設されている。針状突起28は、ノズルチップ20と一体に成形されても良く、また植え込まれてもよい。また、円環、またはノズルチップ先端のテーパに一致するテーパを有する円環の内壁面にに針状突起28を一体に、または植え込んで設け、この円環をノズルチップに挿入、固定するように、製作しても良い。針状突起28は、可撓性を有することが好ましく、図2において上方、つまりノズルチップ20内に流れ込む検体の流れの向きに傾けられて立設されている。また、針状突起28は、一つであってもよい。
【0012】
分注動作について説明する。親検体容器12内にノズルチップ20を挿入し、これの先端が検体24の液面より所定深さまで挿入されたら、検体24の吸込みを開始する(図2(a)参照)。容器12内の検体の液面の低下に合わせて、ノズルチップ20も降下させ、所定量の検体を吸い込む(図2(b)参照)。このとき、親検体容器12の検体24内にフィブリン26があると、これを吸い込む場合がある。フィブリン26が吸い込まれるときには、針状突起28が傾いて配置されているために、フィブリン26はここを通過してノズルチップ20内に吸い込まれる。このとき、針状突起28が検体の流れにより、またはフィブリン26に押されて撓むと、より好適にフィブリン26をノズルチップ20内に吸い込み入れることができる。
【0013】
検体を蓄えたノズルチップ20は、親検体容器12から子検体容器22内に移動され、ここに、検体24を吐出する(図2(c)参照)。このとき、フィブリン26は、針状突起28の傾きのために、これに捉えられ、ノズルチップ20内に残留する。対象の子検体容器22に対する検体の分注が終了すると、ノズルチップ20は、分注ヘッド14から取り外されて廃棄される。このとき、ノズルチップ20内に残留しているフィブリン26も一緒に廃棄される。
【0014】
前述のように、1回分注が終了した親検体容器12の検体について、さらに分注を行うことがあるが、この場合、上述のように親検体容器12からフィブリンが除去されていれば、後続の分注においては、針状突起のようなフィブリンを捕捉するための手段を有していない通常のノズルチップを使用することが可能となる。
【0015】
図3は、別の実施形態に係るノズルチップ30の構成と、その動作を示す図である。親検体容器12中の検体24中には、異物塊としてのフィブリン26が析出している。ノズルチップ30の内壁面、特に先端のコーンの部分と円管部分の境界付近には、網状の扉32が配置されている。ここで、網状とは、検体である液体は通すがフィブリン等の塊状の物体は通さないように、小さな隙間が多数形成された構造を指す。したがって、縦横に複数の部材が互いに交差するよう配置された格子状の構造、部材が平行に配置される構造等を採ることもできる。また、板状の部材に複数の穴を開けた構造であってもよい。
【0016】
扉32は、図3(b)に示されるように、上方すなわちノズル先端から離れる方向に開くが、逆向きには開かない。図においては、観音開きとなっているが、1枚で構成することもできる。また、扉32は、付け根部分において蝶番などにより、ノズルチップ30の本体に対して回動可能に結合されている。
【0017】
分注動作について説明する。親検体容器12内にノズルチップ30を挿入し、これの先端が検体24の液面より所定深さまで挿入されたら、検体24の吸込みを開始する(図3(a)参照)。容器12内の検体の液面の低下に合わせて、ノズルチップ30も降下させ、所定の量の検体を吸い込む(図3(b)参照)。検体24を吸い込む流れに押されて扉32が開く。このとき、親検体容器12の検体24内にフィブリン26があると、これを吸い込む場合がある。フィブリン26は、開いた扉32を通過する。
【0018】
所定量の検体を蓄えたノズルチップ30は、親検体容器12から子検体容器22内に移動され、検体24を吐出する(図3(c)参照)。このとき、扉32は、吐出する検体の流れにより閉じ、フィブリン26は、これを通過できずに捉えられ、ノズルチップ30内に残留する。対象の子検体容器22に対する検体の分注が終了すると、ノズルチップ30は、分注ヘッド14から取り外されて廃棄される。このとき、ノズルチップ30内に残留しているフィブリン26も一緒に廃棄される。
【0019】
前述のように、1回分注が終了した親検体容器12の検体について、さらに分注を行うことがあるが、この場合、上述のように親検体容器12からフィブリンが除去されていれば、後続の分注においては、針状突起のようなフィブリンを捕捉するための手段を有していない通常のノズルチップを使用することが可能となる。
【符号の説明】
【0020】
10 分注装置、12 親検体容器、14 分注ノズル、20 ノズルチップ、22 子検体容器、24 検体、26 フィブリン、28 針状突起(トラップ手段)、30 ノズルチップ、32 扉(トラップ手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注装置のノズルに装着される分注ノズルチップであって、チップ内部に、吸い込んだ試料内の異物塊を捉え、試料吐出時に前記異物塊を吐出させないトラップ手段を有する、分注ノズルチップ。
【請求項2】
請求項1に記載の分注ノズルチップであって、前記トラップ手段は、チップ内壁面に、吸い込む流れの向きに傾いて立設された針状の突起である、分注ノズルチップ。
【請求項3】
請求項1に記載の分注ノズルチップであって、前記トラップ手段は、当該チップの吸込み時に開き、吐出時に閉じる網状の扉である、分注ノズルチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−185816(P2010−185816A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30972(P2009−30972)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】