分注方法
【課題】微量の液体を精度よく分注する分注方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る分注方法は、第1液体および第2液体が収容された第1容器から管を用いて前記第1液体を第2容器に分注する分注方法であって、前記第2液体を前記管の内部に吸引する第1吸引工程、前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程、前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程、前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記管から前記第2容器に吐出する第1吐出工程、前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記管から前記第2容器に吐出する第2吐出工程、および前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の少なくとも一部を前記管から前記第2容器に吐出する第3吐出工程を含む。
【解決手段】本発明に係る分注方法は、第1液体および第2液体が収容された第1容器から管を用いて前記第1液体を第2容器に分注する分注方法であって、前記第2液体を前記管の内部に吸引する第1吸引工程、前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程、前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程、前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記管から前記第2容器に吐出する第1吐出工程、前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記管から前記第2容器に吐出する第2吐出工程、および前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の少なくとも一部を前記管から前記第2容器に吐出する第3吐出工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学の分野において、PCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)の技術が確立されている。最近、PCR法における増幅の精度や検出感度は向上してきており、極微量の検体(DNA等)を増幅し、検出・解析することができるようになってきた。
【0003】
PCRに用いる検体や試薬は、稀少であり高価であることが多いので、PCRの反応液の量(体積)が小さいほど費用および効率の面で好ましい。したがって、PCRの反応液の液量を、できるだけ小さくして取り扱うことができる手法が望まれる。
【0004】
微量の液体を取り扱う方法の例としては、特許文献1に、対象とする液体を、該液体と混和せず相分離をする送液用の液体を用いて、細い管の中で移送する方法が開示されている。また、特許文献2には、遺伝子解析装置として、PCRの反応液を流路内で移動させてPCRを行う装置と、その使用方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−025148号公報
【特許文献2】特開2007−175002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術文献に開示された方法は、対象とする液体を0.5μL(マイクロリットル)より大きい体積で取り扱うものである。そのため、対象となる液体自体は、別途さらに大きい規模で調製されていた。したがって、対象となる液体の調製は、例えば、市販の機器や実験器具を用いて行うことができた。
【0007】
ところが、特に最近のPCRでは、微量反応の技術の向上や、低コスト化の要望の高まりによって、対象となる液体を、1μL程度の体積で調製することが求められてきている。このような場合には、ナノリットル(nL)のオーダー(1μL未満)の検体や試薬の溶液を正確な体積で、計量、送液等して取り扱う必要があるが、先行文献に開示された方法などで用いられる従来の分注方法では、精密な取り扱いが難しかった。例えば、比較的精密とされる手動のピペットを用いた場合でも、液体の体積が0.2μL未満となると、もはや精度よく計量、送液、分注することは困難であった。
【0008】
また、マイクロリットルあるいはナノリットルのオーダー(100μL未満)の微量の液体は、計量、分注する等の作業において、液体の一部が蒸発する場合があり、液量が変動したり、溶質の濃度が変動したりするという問題もあった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その幾つかの態様に係る目的の一つは、微量の液体を精度よく分注する分注方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0011】
[適用例1]本発明に係る分注方法の一態様は、第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器から、管を用いて前記第1液体を第2容器に分注する分注方法であって、前記第2液体を前記管の一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記第2容器における前記第2液体中に吐出する第2吐出工程と、前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第3吐出工程と、を含む。
【0012】
本適用例の分注方法によれば、第1液体は、第1容器に収容された状態、並びに吸引工程および吐出工程において、第2液体によって封じられた状態であるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本適用例の分注方法によれば、第1液体は、第1容器から第2容器に分注される際には、第2液体に接する状態で取り扱われるので、大気等に接触しにくい。そのため、第1液体から構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体の溶媒および溶質の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0013】
また、本適用例の分注方法によれば、第2吐出工程で、第1液体が、第2液体中に吐出される。そのため、第2吐出工程において、管内または管の一端付近に第1液体が残存しにくい。したがって精度よく第1液体を第1容器から第2容器へと分注することができる。
【0014】
ここで、本明細書において、分注とは、液体をある容器から他の容器へ所定量に分けて移すことを指す。分注との文言は、生化学の分野では当業者に理解されるであろうが、英語では「dispense」に相当する。なお、分注を行う器具は、分注器などと呼称され、英語では「dispenser」と称される。また、本発明に係る分注方法は、生化学の分野に限定されるものではなく、化学、薬学、生物学、工学など広範な分野に適用されうる。また、本明細書において、「分注する」とは、所定の容器から液体を取り出し、他の容器に、当該液体の少なくとも一部を導入することと、所定の容器から液体を取り出し、複数の他の所定の容器に、当該液体を所定量ずつ導入することを含む。
【0015】
本明細書において、管とは、第1液体が当該管内でプラグ状の形状を維持できる内径を有する筒のことを指す。また、液体がプラグ状の形状を有する状態とは、管の長手方向において、実質的に当該液体のみが占める部分が存在し、他の物質が当該液体によって区画されている状態を指す。ここでの実質的にとは、例えば管の内壁に薄膜状の他の物質(第2液体等)が存在してもよいことを指す。
【0016】
[適用例2]本発明に係る分注方法の一態様は、第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器、並びに、前記第2液体および前記第2液体と混和せず前記第2液体よりも比重の大きい第3液体が収容された第3容器から、管を用いて前記第1液体および前記第3液体を第2容器に分注する分注方法であって、前記第2液体を前記管の一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、前記第3容器に収容された前記第3液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第4吸引工程と、前記第3容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第5吸引工程と、前記第5吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、前記第4吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第3液体を前記第2容器に吐出する第2吐出工程と、前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の一部を前記第2容器に吐出する第3吐出工程と、前記第3吐出工程で管の内部に残された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第4吐出工程と、前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記第2容器に吐出する第5吐出工程と、前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第6吐出工程と、を含む。
【0017】
本適用例の分注方法によれば、第1液体および第3液体は、第1容器および第3容器から第2容器に収容された状態、並びに吸引工程および吐出工程において、第2液体によって封じられた状態であるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本適用例の分注方法によれば、第1液体および第3液体は、分注される際には、第2液体に接する状態で取り扱われるので大気等に接触しにくい。そのため、第1液体および第3液体からそれらの構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体または第3液体へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体および第3液体の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0018】
また、本適用例の分注方法によれば、第5吐出工程で、第3液体が第2液体中に吐出され、第2吐出工程で、第1液体が第2液体中に吐出される。そのため、第5吐出工程および第2吐出工程において、管内または管の一端付近に第3液体および第1液体が残存しにくい。したがって精度よく第1液体および第3液体を第2容器へと分注することができる。
【0019】
[適用例3]本発明に係る分注方法の一態様は、第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器、および、前記第2液体および前記第2液体と混和せず前記第2液体よりも比重の大きい第3液体が収容された第3容器から、一端が開放され他端に液溜が接続された管を用いて、前記第1液体および前記第3液体を第2容器に分注する分注方法であって、前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、前記第3容器に収容された前記第3液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第4吸引工程と、前記第3容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第5吸引工程と、前記管の内部に前記第5吸引工程で吸引された前記第2液体の少なくとも一部が残るように、前記液溜に前記管の内部の各液体を吸引して、前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体、および前記第4吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第3液体を、前記液溜内で混合させて第4液体とし、かつ、前記第1吸引工程、前記第3吸引工程、および前記第5吸引工程で吸引された前記第2液体を混合させる混合工程と、前記管の内部に残された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、前記第4液体を前記第2容器に吐出する第2吐出工程と、前記混合工程で混合された前記第2液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第3吐出工程と、を含む。
【0020】
本適用例の分注方法によれば、第1液体および第3液体を確実に混合することができる。すなわち、本適用例の分注方法によれば、混合工程において第1液体および第3液体の液滴を、液溜中で合一させて第4液体の液滴を形成できるので、第1液体および第3液体を第2容器に吐出した後に第2容器内で両者の液滴を合一させる場合に比べて、より確実に第1液体および第3液体を混合することができる。
【0021】
また、本適用例の分注方法によれば、第1液体、第3液体および第4液体は、第1容器および第3容器から第2容器に収容された状態、並びに吸引工程、混合工程および吐出工程において、第2液体によって封じられた状態であるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本適用例の分注方法によれば、第1液体、第3液体および第4液体は、分注される際には、第2液体に接する状態で取り扱われるので大気等に接触しにくい。そのため、第1液体、第3液体または第4液体からそれらの構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体、第3液体または第4液体へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体、第3液体および第4液体の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0022】
また、本適用例の分注方法によれば、第2吐出工程で、第4液体が第2液体中に吐出される。そのため、第2吐出工程において、管内または管の一端付近に第4液体が残存しにくい。したがって精度よく第4液体を第2容器へと分注することができる。
【0023】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、前記第2容器にはあらかじめ前記第2液体が収容されていてもよい。
【0024】
本適用例の分注方法によれば、各吐出工程において、管の一端を第2液体に接触させやすいので、管内または管の一端付近に第1液体、第3液体または第4液体がさらに残存しにくい。これにより、さらに精度よく第1液体、第3液体または第4液体を第2容器へと分注することができる。
【0025】
[適用例5]本発明に係る分注方法の一態様は、第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器から、管を用いて前記第1液体を、前記第1液体と混和せず前記第2液体と混和する第3液体が収容された第2容器に管を用いて前記第1液体を分注する分注方法であって、前記第2液体または前記第3液体を前記管の一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記第2容器に吐出する第2吐出工程と、前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体または前記第3液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第11吐出工程と、を含む。
【0026】
本適用例の分注方法によれば、第1液体は、第1容器から第2容器に収容された状態、並びに吸引工程および吐出工程において、第2液体または第3液体によって封じられた状態であるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本適用例の分注方法によれば、第1液体は、第1容器から第2容器に分注される際には、第2液体または第3液体に接する状態で取り扱われ大気等に接触しにくい。そのため、第1液体から構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体の溶媒および溶質の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0027】
また、本適用例の分注方法によれば、第2吐出工程で、第1液体が、前記第3液体および前記第2液体の混合液体中に吐出される。そのため、第2吐出工程において、管内または管の一端付近に第1液体が残存しにくい。したがって精度よく第1液体を第1容器から第2容器へと分注することができる。
【0028】
[適用例6]適用例5において、前記第3液体は、導電性を有してもよい。
【0029】
本適用例の分注方法によれば、第1液体および第2液体の少なくとも一方が帯電した場合に、各吐出工程において、管の先端付近で第1液体および第2液体の少なくとも一方が、第3液体との間の静電的な引力または斥力によって、予期せぬ挙動を示すことを抑制することができる。そのため、より確実に第1液体を第1容器から第2容器へと分注することができる。
【0030】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれか一例において、前記第2液体は、導電性を有してもよい。
【0031】
本適用例の分注方法によれば、各液体が帯電した場合に、各吐出工程において、管の先端付近で少なくとも第1液体が、第2容器またはその内容物との間の静電的な引力または斥力によって、予期せぬ挙動を示すことを抑制することができる。そのためより確実に第1液体を第2容器へと分注することができる。
【0032】
[適用例8]適用例1ないし適用例7のいずれか一例において、前記管は、少なくとも内壁が疎水性を有してもよい。
【0033】
本適用例の分注方法によれば、管の内壁に水性の液体が付着しにくい。これにより、第1液体、第3液体および第4液体が水溶液である場合に、第2吸引工程とそれ以降の各工程において、管内における第1液体、第3液体および第4液体の移動がより滑らかとなる。また、各吐出工程において、管内に第1液体、第3液体および第4液体がさらに残存しにくい。そのため、より精度よく液体を分注することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態に係る分注方法のフローチャート。
【図2】図2(a)は、第1実施形態に係る第1吸引工程を模式的に示し、図2(b)は、第1実施形態に係る第2吸引工程を模式的に示し、図2(c)は、第1実施形態に係る第3吸引工程を模式的に示し、図2(d)は、第1実施形態に係る第3吸引工程を経た後の状態を模式的に示す。
【図3】図3(a)は、第1実施形態に係る第1吐出工程の準備状態を模式的に示し、図3(b)は、第1実施形態に係る第1吐出工程を模式的に示し、図3(c)は、第1実施形態に係る第2吐出工程を模式的に示し、図3(d)は、第1実施形態に係る第3吐出工程を模式的に示す。
【図4】第2実施形態に係る分注方法のフローチャート。
【図5】図5(a)は、第2実施形態に係る第4吸引工程の準備状態を模式的に示し、図5(b)は、第2実施形態に係る第4吸引工程を模式的に示し、図5(c)は、第2実施形態に係る第5吸引工程を模式的に示し、図5(d)は、第2実施形態に係る第5吸引工程を経た後の管の状態を模式的に示す。
【図6】第3実施形態に係る分注方法のフローチャート。
【図7】図7(a)は、第3実施形態に係る第5吸引工程を模式的に示し、図7(b)および図7(c)は、第3実施形態に係る混合工程を模式的に示し、図7(d)および図7(e)は、第3実施形態に係る混合工程を経た後の状態を模式的に示す。
【図8】図8(a)は、第3実施形態に係る第8吐出工程を模式的に示し、図8(b)は、第3実施形態に係る第10吐出工程を模式的に示す。
【図9】第4実施形態に係る分注方法のフローチャート。
【図10】図10(a)は、第4実施形態で用いる第2容器を模式的に示し、図10(b)は、第4実施形態に係る第1吐出工程を模式的に示し、図10(c)は、第4実施形態に係る第11吐出工程を経た後の状態を模式的に示す。
【図11】実施形態に係る分注装置の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は、以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお以下の実施形態で説明される構成や工程の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0036】
1.第1実施形態
本発明に係る分注方法の第1実施形態を述べる。図1は、本実施形態の分注方法のフローチャートである。図2および図3は、それぞれ本実施形態の分注方法の一部の工程を模式的に示す図である。図2(a)は、本実施形態に係る第1吸引工程を模式的に示し、図2(b)は、本実施形態に係る第2吸引工程を模式的に示し、図2(c)は、本実施形態に係る第3吸引工程を模式的に示し、図2(d)は、本実施形態に係る第3吸引工程を経た後の状態を模式的に示している。図3(a)は、本実施形態に係る第1吐出工程の準備状態を模式的に示し、図3(b)は、本実施形態に係る第1吐出工程を模式的に示し、図3(c)は、本実施形態に係る第2吐出工程を模式的に示し、図3(d)は、本実施形態に係る第3吐出工程を模式的に示している。
【0037】
1.1.構成
本実施形態の分注方法は、第1液体L1および第2液体L2が収容された第1容器10から、管20を用いて第1液体L1を第2容器30に分注する分注方法である。
【0038】
1.1.1.第1液体
第1液体L1は、後述の第2液体L2と混和しない液体である。また、第1液体L1は、第2液体L2よりも比重が大きい液体である。第1液体L1は、このような性質を有するため、図1に示すように、第1容器10内に第1液体L1および第2液体L2が共存する場合には、第1液体L1と第2液体L2の間に界面I12が形成される。換言すると、第1液体L1と後述の第2液体L2とが共存する場合には液液相分離状態となる。界面I12の重力の作用する方向における下側(第1容器10の底側)に第1液体L1が位置し、界面I12の上側(第1容器10の開口側)に第2液体L2が位置することになる。また、第1液体L1は、表面張力を有し、第1液体L1の体積が小さくなると、第2液体L2中で液滴を形成することができる。なお、本明細書では「上」、「下」との表記は、重力の作用する方向における上下を表すものとする。
【0039】
第1液体L1は、水性、油性のいずれであってもよい。例えば、第1液体L1が水性である場合には、第2液体L2は、油性であることができ、また、その逆であってもよい。第1液体L1は、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)の反応液、またはPCRの反応液を調製するための溶液であってもよい。第1液体L1がPCRの反応液である場合には、反応液には増幅の対象とする核酸(標的核酸)および反応に必要な試薬(例えば、DNAポリメラーゼおよびプライマーなど)が含まれる。第1液体L1を用いて調製される溶液がPCRの反応液である場合には、第1溶液L1は、核酸(標的核酸)または反応に必要な試薬のうちの少なくとも一種を含む溶液であることができる。この場合などは、第2容器30に残りの一部の試薬をあらかじめ収容しておいてもよい。また、第1液体L1としては、例えば、大気中の酸素によって酸化されやすい物質や、大気中の水等の分子と反応しやすい物質の溶液であってもよい。
【0040】
1.1.2.第2液体
第2液体L2は、第1液体L1と混和しない液体である。また、第2液体L2は、第1液体L1よりも比重が小さい液体である。第2液体L2は、第1液体L1が水性である場合には油性であることができる。例えば、第1液体L1がPCRの反応液、またはPCRの反応液を調製するための溶液である場合には、第2液体L2は、オイルであることができる。このようなオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーン系オイル、パラフィン系オイルおよびミネラルオイル並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
1.1.3.管
管20は、両端に開口を有し、内部に該開口間を連通し液体を流通させることができる流路を有する。本明細書では、管20の一方の端を一端といい、他方の端を他端という。また、管20の内径とは、管20の流路の断面における最大径である。管20の形状は任意であるが、例えば、円筒状とすることができる。管20の長さおよび内径は、第1液体L1のプラグを形成できる範囲で任意である。また、管20は、直線状であっても屈曲した形状であってもよい。第1液体L1および第2液体L2などがPCRの反応液等である場合には、管20の内径は、例えば、0.2mm以下が好ましい。管20の内径が0.2mmである場合には、管20内に1mmの長さの液柱を形成すると、当該液柱は、約30ナノリットル(nL)の体積となる。
【0042】
管20は、第1液体L1が当該管20内でプラグ状の形状を維持できる内径を有する。第1液体L1がプラグ状の形状を有する状態とは、管20の長手方向(流路に沿う方向)において、実質的に第1液体L1のみが占める部分が存在する状態をいう。第1液体L1がプラグ状の形状を有する場合は、管20の長手方向において、第1液体L1によって他の物質が区画されている。この場合、例えば管20の内壁に薄膜状の他の物質(第2液体等)が存在してもよい。
【0043】
管20の具体例としては、両端が開口したキャピラリー(細管)が挙げられる。管20は、他端側から流路内が吸引(減圧)されることによって、一端側から液体、気体を流路内に吸引することができる。管20の他端側から流路内を吸引する手段としては、特に限定されず、ポンプ、ピペッター、シリンジなどの機器を例示することができ、作業者が口で吸ってもよい。また、管20は、他端側から流路内に圧力を印加することによって、一端側から液体、気体を吐出させることができる。すなわち、本明細書においては加圧または減圧する器具が取り付けられる管20の端部を他端、液体が吸引または吐出される管20の端部を一端としている。後述する吸引工程において、管20内に、液体のプラグが形成されるため、管20からは、管20に吸引された順番と逆の順番で液体が吐出されることになる(いわゆる先入れ後出し(ファーストインラストアウト))。管20の他端側から流路内に圧力を印加する手段としては、特に限定されず、吸引・加圧機能を備えたポンプ、ピペッター、シリンジなどの機器を例示することができ、作業者が口で息を吹き込んでもよい。なお、1マイクロリットル(μL)以下の体積の第1液体L1を吸引・吐出する場合には、管20内の流速は、1μL/s以下とすることが好ましく、より好ましくは1μL/分以下であり、ポンプ、ピペッターなどの機器は、そのような流速が得られるようなものを用いることが好ましい。
【0044】
管20の材質としては、無機材料(例えば耐熱性ガラス(パイレックス(登録商標)))、および有機材料(例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂)を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。管20がガラス、ポリカーボネート等の可視光を透過する材質で形成されると、管20内に形成された第1液体L1と第2液体L2との間の(相分離)界面I12を外部から目視することができるため好ましい。また、管20の材質としては、撥水性と親油性の両方を備えた材料(例えば、PTFE)が望ましい。管20にこのような材質を用いることにより、第1液体L1が水性であり、かつ、第2液体L2が油性である場合に、管20の表面に第2液体L2が皮膜を形成しやすく、第1液体L1が管20に付着しにくくできる。そのため、複数種の第1液体L1を使用する場合などに、第1液体L1が管20の内壁に付着して生じる第1液体L1間の混合を抑制することができる。
【0045】
管20は、少なくとも内壁が疎水性を有することが好ましい。管20の少なくとも内壁が疎水性を有すると、分注する液体が水性である場合に、該液体が管20に付着しにくい。また、管20の少なくとも内壁が疎水性を有すると、各実施形態の各工程において、管20内における水性の液体の移動がより滑らかとなり、また、各吐出工程において、管内に水性の液体がさらに残存しにくい。そのため、より精度よく液体を分注することができる。
【0046】
管20の内壁を疎水性にする方法としては、管20の材質として上述のPTFEやポリプロピレンを用いることが挙げられ、その他にも管20が疎水性の小さい材質である場合でも、管20の内壁に例えば、プラズマ処理を施したり、疎水性物質のコーティングを施すことによって管20の内壁を疎水性にすることができる。コーティングの例としては、アルキルシラン等で表面処理をした疎水性シリカなどが挙げられる。
【0047】
1.1.4.第1容器
第1容器10は、本実施形態の分注方法によって分注される第1液体L1が収容される容器である。本実施形態の分注方法では、第1容器10には、第2液体L2も収容される。第1容器10の形状および容積は、第1液体L1および第2液体L2が収容されたときに、第1容器10内に第1液体L1と第2液体L2との間の界面I12が形成され、第1液体L1が大気に接触しないように配置でき、管20の一端を後述する分注方法に適した位置まで挿入できるかぎり任意である。すなわち、例えば第1容器10の開口および管20の一端の断面形状が円形である場合、第1容器10の開口の直径は管20の一端の外形よりも大きいものが適している。第1容器10は、例えば、試験管、バイアル、生化学の分野で一般に使用される容器などであることができる。
【0048】
第1容器10の材質としては、無機材料(例えば耐熱性ガラス(パイレックス(登録商標)))、及び有機材料(例えばポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂)を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。第1容器10がガラス、ポリカーボネート、ポリプロピレン等の可視光を透過する材質で形成されると、第1容器10内に形成された第1液体L1と第2液体L2との間の界面I12を外部から目視することができるため好ましい。
【0049】
1.1.5.第2容器
第2容器30は、本実施形態の分注方法によって第1液体L1が分注されて収容される。本実施形態の分注方法では、第2容器30には、第2液体L2も収容される。第2容器30の形状は、第1液体L1および第2液体L2が収容されたときに、第2容器30内に第1液体L1と第2液体L2との間の界面I12が形成され、第1液体L1を大気に接触しないように配置できるかぎり任意である。
【0050】
本実施形態の分注方法では、第2容器30は、複数準備されてもよい。第2容器30は、例えば、試験管、バイアル、生化学の分野で一般にウェルと称される容器などであることができる。また、第2容器30がウェルである場合には、複数(例えば8×12=96個)のウェルが一つの部材に形成された板を使用することができる。
【0051】
第2容器30の材質としては、無機材料(例えば耐熱性ガラス(パイレックス(登録商標)))、及び有機材料(例えばポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂)を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。
【0052】
また、第2容器30の外部から、その内部を観察するような用途(例えば、リアルタイムPCRなど)に第2容器30を用いる場合には、必要に応じて、材質を透明なものとすることができる。なお、ここでの「透明」の程度は第2容器30の使用目的に適する程度であればよい。例えば、視覚的な観察であれば内部が視認できる程度であればよい。リアルタイムPCRなどにおける蛍光測定であれば第2容器30外部から反応液の蛍光が光学的に測定できる程度であればよい。第2容器30の開口から蛍光測定を行う場合には、第2容器30の材質に、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、アニリンブラック、若しくは、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、Co又はCuの酸化物、Si、Ti、Ta、Zr又はCrの炭化物などの黒色物質等を配合することにより、樹脂等の有する自発蛍光を抑制することができ、PCRの精度を高めることができる。またなお、第2容器30を、PCRの反応容器として使用する場合には、第2容器30の材質は、核酸やタンパク質の吸着が少なく、ポリメラーゼ等の酵素反応を阻害しない材質であることが好ましい。
【0053】
1.2.分注方法
本実施形態の分注方法は、第1吸引工程と、第2吸引工程と、第3吸引工程と、第1吐出工程と、第2吐出工程と、第3吐出工程とを含む。
【0054】
1.2.1.第1吸引工程
第1吸引工程(ステップS11)では、第2液体L2を管20の一端側から管20内に吸引する。第1吸引工程で吸引される第2液体L2は、第1容器10内に収容された第2液体L2であっても、他の容器に収容された第2液体L2であってもよい。第1吸引工程で吸引される第2液体L2の体積は特に限定されないが、第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20内の気体の影響を受けない程度の体積であることが好ましい。
【0055】
第1吸引工程によって、管20の内壁の第2液体L2が接触した領域が第2液体L2に覆われる。これにより、第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20の内壁に付着しにくくし、および第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20内で移動しやすくすることができる。第1吸引工程を行うことにより、第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20内の気体と接触しにくくすることができる。
【0056】
図2(a)は、第1吸引工程において、第1容器10内に収容された第2液体L2を管20の一端側から吸引した様子を模式的に表している。第1吸引工程を経ると、管20の一端側に、第2液体L2の液柱が形成される。
【0057】
1.2.2.第2吸引工程
第2吸引工程(ステップS12)は、第1吸引工程(ステップS11)の後で行われる。第2吸引工程と第1吸引工程との間には、例えば、第1吸引工程で第1容器10以外の容器から第2液体L2を吸引した場合に、管20の一端を第1容器10内に移動させるなどの、他の工程が行われてもよい。
【0058】
第2吸引工程では、第1容器10において管20の一端が第1液体L1と第2液体L2との界面I12より下の位置で、第1液体L1を管20の一端側から管20内に吸引する。第2吸引工程で界面I12より下の位置に配置される一端は、第1吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0059】
第1吸引工程で、第1容器10内の第2液体L2を吸引した場合には、管20の一端を界面I12よりも下に移動させることにより、第2吸引工程を行うことができる。第2吸引工程で吸引される第1液体L1の体積は特に限定されない。
【0060】
図2(b)は、第2吸引工程において、第1容器10内に収容された第1液体L1を管20の一端側から吸引した様子を模式的に表している。第2吸引工程を経ると、管20の一端側に、第2液体L2の液柱の下に第1液体L1の液柱が形成される。
【0061】
1.2.3.第3吸引工程
第3吸引工程(ステップS13)は、第2吸引工程(ステップS12)に連続して行われる。第3吸引工程では、第1容器10において管20の一端が界面I12より上の位置で、第2液体L2を管20の一端側から管20内に吸引する。第3吸引工程で界面I12より上の位置に配置される一端は、第2吸引工程で第1液体L1を吸引した一端である。本明細書において、「A工程がB工程に連続して行われる」との表現は、A工程がB工程を行った容器において行われることを表す。また、「A工程がB工程の後で行われる」との表現は、A工程がB工程に連続して行われる場合と、A工程とB工程の間に他の工程が行われる場合とを含む。
【0062】
第3吸引工程で吸引される第2液体L2の体積は特に限定されない。第1吐出工程で、第2容器30にあらかじめ第2液体L2が収容されていない場合には、第3吸引工程で吸引された第2液体L2の体積は、当該第2液体L2が第1吐出工程で吐出された際に管20の一端の開口を浸す程度よりも大きいことが好ましい。
【0063】
図2(c)は、第3吸引工程において、第1容器10内に収容された第2液体L2を管20の一端側から吸引した様子を模式的に表している。第3吸引工程を経ると、管20の内部において、第1液体L1の液柱が2つの第2液体L2の液柱に挟まれた状態となる。図2(d)は、第3吸引工程を経た後の管20の状態を示している。図2(d)に示すように、第3吸引工程を経た後の管20では、一端側から第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2の順に液柱が形成されるので、第1液体L1を空気にほとんど触れさせない状態で管20を移動させることができる。
【0064】
1.2.4.第1吐出工程
第1吐出工程(ステップS21)は、第3吸引工程(ステップS13)の後で行われる。第3吸引工程と第1吐出工程との間には、少なくとも第1容器10から管20を第2容器30に移動させる工程が行われる。第3吸引工程と第1吐出工程との間には、他の工程が行われてもよい。
【0065】
第1吐出工程では、第3吸引工程(ステップS13)で管20内に吸引された第2液体L2を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第1吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第3吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0066】
第1吐出工程では、第2容器30に第2液体L2が吐出されるが、吐出された第2液体L2に管20の一端の開口が浸されるように行われる。第1吐出工程において、管20の一端の開口が浸されることにより、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を大気に接触させないようにすることができる。また、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を管20から吐出させやすくすることができる。
【0067】
第1吐出工程で吐出される第2液体L2を収容する第2容器30には、あらかじめ第2液体L2が収容されていてもよい。このようにすれば、第1吐出工程の前後で第2液体L2に管20の一端の開口を浸しやすく、第2吐出工程で吐出される第1液体L1をさらに大気に接触させにくくすることができる。また、第2容器30にあらかじめ第2液体L2が収容されていると、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を管20からさらに吐出させやすくすることができる。
【0068】
図3(a)は、第3吸引工程を経た後の管20が、第2容器30内に配置された状態を示している。図3(b)は、第1吐出工程が終了した状態を示しており、管20内に第1液体L1および第2液体L2の液柱が残存している状態を示している。
【0069】
1.2.5.第2吐出工程
第2吐出工程(ステップS22)は、第1吐出工程(ステップS21)に連続して行われる。第2吐出工程では、第2吸引工程(ステップS12)で管20内に吸引された第1液体L1を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第2吐出工程で第1液体L1が吐出される一端は、第2吸引工程で第1液体L1を吸引した一端である。
【0070】
第2吐出工程は、第2液体L2に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を大気に接触させないようにすることができる。また、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を管20から吐出させやすくなっている。
【0071】
図3(c)は、第2吐出工程が終了した状態を示しており、管20内に第2液体L2の液柱が残存し、第1液体L1が管20から出て、管20の一端に接触している状態を示している。第2吐出工程は、第2容器30中の第2液体L2に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第1液体L1が大気に接触することがない。
【0072】
1.2.6.第3吐出工程
第3吐出工程(ステップS23)は、第2吐出工程(ステップS22)に連続して行われる。第3吐出工程では、第1吸引工程(ステップS11)で管20内に吸引された第2液体L2の少なくとも一部を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第3吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第1吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0073】
第3吐出工程は、第2液体L2に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第3吐出工程で吐出される第2液体L2が、第2容器30中の第2液体L2と合一し、第2吐出工程で吐出された第1液体L1を管20から離脱させることができる。
【0074】
第3吐出工程で吐出される第2液体L2は、第1吸引工程で管20内に吸引された第2液体L2の一部であっても全部であってもよい。
【0075】
図3(d)は、第3吐出工程が終了し、第3吐出工程で第2液体L2の一部が吐出された状態を示しており、管20内に第2液体L2の液柱が残存し、第1液体L1が管20から離脱した状態を示している。第3吐出工程では、第2容器30中の第2液体L2に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第1液体L1が大気に接触しにくい。また、第3吐出工程は、第2容器30中の第2液体L2に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第3吐出工程によって、図示のように、管20内の第2液体L2の液柱と第2容器30内の第2液体L2とを連続させることができる。そのため、第1液体L1を管20の一端の開口から容易に離脱させることができる。なお、図3(d)では、離脱した第1液体L1が液滴を形成している例を示している。
【0076】
1.2.7.変形実施形態
上記第1実施形態では、1つの第1容器10から、1つの第2容器30へ第1液体L1を分注する分注方法を説明した。しかし、第1実施形態の分注方法は、1つの第1容器10から、複数の第2容器30へ第1液体L1を分注する変形実施が可能である。以下では、1つの第1容器10から、2つの第2容器30へ第1液体L1を分注する方法を説明する。
【0077】
本変形実施形態の分注方法は、第1吸引工程と、第2吸引工程と、第3吸引工程と、第1吐出工程と、第2吐出工程と、第3吐出工程とを含む。各工程は、上記第1実施形態で述べたと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0078】
本変形実施形態の分注方法では、図1に示したフローチャートのAで示す工程(第2吸引工程および第3吸引工程)が複数回行われ、最後の第3吸引工程の後、Bで示す工程(第1吐出工程、第2吐出工程および第3吐出工程)が複数回行われる。
【0079】
上記第1実施形態において、第3吸引工程が終了した後、再度、第2吸引工程および第3吸引工程を行うと、2回目の第3吸引工程が終了したときに、管20内には、一端側から第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2の順に液柱が形成され、この状態で管20を移動させることができる。
【0080】
そして1番目の第2容器30に対して、第1吐出工程、第2吐出工程および第3吐出工程を行うことによって、1番目の第2容器30に2回目の第2吸引工程で吸引した第1液体L1を分注することができる。このときの第3吸引工程において、第2液体L2の一部を管20内に残存させれば、上記第1実施形態において、第3吸引工程が終了した状態と同様の状態を形成することができる。そして、管20を2番目の第2容器30に移動させ、第1吐出工程、第2吐出工程および第3吐出工程を行うことによって、2番目の第2容器30に1回目の第2吸引工程で吸引した第1液体L1を分注することができる。
【0081】
このようにすれば、例えば、本実施形態の分注方法を分注装置等に採用した場合に、管20を第1容器10と第2容器30との間で移動させる回数を減らすことができる。すなわち、管20を移動させる工程を削減できるので、分注作業の所要時間の短縮を図ることができる。また、液体の吸引・吐出を、ポンプを用いて行う場合には、吸引および吐出の切り替えに時間がかかる場合があり、そのような場合にも、本変形実施形態では、切り替えの回数を減らすことができるため、分注作業の所要時間の短縮を図ることができる。
【0082】
1.3.作用効果
本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1は、第1容器10に収容された状態、並びに各吸引工程および各吐出工程において、第2液体L2によって封じられた状態であるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1は、第1容器10から第2容器30に分注される際には、第2液体L2に接する状態で取り扱われるので大気等に接触しにくい。そのため、第1液体L1から構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体L1へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体L1の溶媒および溶質の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0083】
また、本実施形態の分注方法によれば、第2吐出工程(ステップS22)で、第1液体L1が、第2液体L2中に吐出される。そのため、第2吐出工程において、管内または管の一端付近に第1液体L1が残存しにくい。したがって精度よく第1液体L1を第1容器10から第2容器30へと分注することができる。
【0084】
2.第2実施形態
本発明に係る分注方法の第2実施形態を述べる。図4は、本実施形態の分注方法を示すフローチャートである。図5は、本実施形態の分注方法の工程の一部を説明する模式図である。図5(a)は、本実施形態に係る第4吸引工程の準備状態を模式的に示し、図5(b)は、本実施形態に係る第4吸引工程を模式的に示し、図5(c)は、本実施形態に係る第5吸引工程を模式的に示し、図5(d)は、本実施形態に係る第5吸引工程を経た後の管の状態を模式的に示している。
【0085】
2.1.構成
本実施形態の分注方法は、第1液体L1および第2液体L2が収容された第1容器10、並びに、第2液体L2および第3液体L3が収容された第3容器12から、管20を用いて第1液体L1および第3液体L3を第2容器20に分注する分注方法である。
【0086】
本実施形態における第1液体L1、第2液体L2、第1容器10、管20は、第1実施形態で述べたと同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。
【0087】
2.1.1.第3液体
第3液体L3は、第2液体L2と混和しない液体である。また、第3液体L3は、第2液体L2より比重が大きい液体である。第3液体L3は、このような性質を有するため、図5に示すように、第3容器12内に第3液体L3および第2液体L2が共存する場合には、第3液体L3と第2液体L2の間に(相分離)界面I32が形成され、界面I32の下側(第3容器12の底側)に第3液体L3が位置し、界面I32の上側(第3容器12の開口側)に第2液体L2が位置することになる。また、第3液体L3は、表面張力を有し、第3液体L3の体積が小さければ、第2液体L2中で液滴を形成することができる。
【0088】
第3液体L3は、水性、油性のいずれであってもよい。例えば、第3液体L3が水性である場合には、第2液体L2は、油性であることができ、また、その逆であってもよい。第3液体L3は、例えば、PCRの反応液を調製するための溶液であってもよい。第3液体L3を用いて調製される溶液がPCRの反応液である場合には、第3液体L3は、核酸(標的核酸)または反応に必要な試薬のうち少なくとも一種を含む溶液であることができる。この場合などは、第2容器30に残りの一部の試薬をあらかじめ収容しておいてもよい。また、第3液体L3としては、例えば、大気中の酸素によって酸化されやすい物質や、大気中の水等の分子と反応しやすい物質の溶液であってもよい。
【0089】
2.1.2.第3容器
第3容器12は、第1実施形態で述べた第1容器10と実質的に同様である。第3容器12は、本実施形態の分注方法によって分注される第3液体L3が収容される容器である。本実施形態の分注方法では、第3容器12には、第2液体L2も収容される。第3容器12の形状は、第3液体L3および第2液体L2が収容されたときに、第3容器12内に第3液体L3と第2液体L2との間の界面I32が形成され、第3液体L3が大気に接触しないようにできるかぎり任意である。第3容器12は、例えば、試験管、バイアル、生化学の分野で一般に使用される容器などであることができる。第3容器12の材質は、第1容器10と同様である。
【0090】
2.2.分注方法
本実施形態の分注方法は、第1吸引工程と、第2吸引工程と、第3吸引工程と、第4吸引工程と、第5吸引工程と、第4吐出工程と、第5吐出工程と、第6吐出工程と、第7吐出工程と、第2吐出工程と、第3吐出工程と、を含む。
【0091】
本実施形態における第1吸引工程、第2吸引工程、第3吸引工程、第2吐出工程と、第3吐出工程は、第2吐出工程が第7吐出工程に連続して行われる以外は、第1実施形態で述べたと同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。本実施形態の分注方法は、第1実施形態と同様にして第1吸引工程から第3吸引工程(ステップS13)が行われ、その後、以下の工程が行われる。
【0092】
図5(a)は、本実施形態の分注方法において、第3吸引工程(ステップS13)を経た後の管20の状態を示している。図5(a)に示すように、第3吸引工程を経た後の管20では、一端側から第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2の順に液柱が形成され、この状態で管20を移動させることができる。
【0093】
2.2.1.第4吸引工程
第4吸引工程(ステップS14)は、第3吸引工程(ステップS13)の後で行われる。第4吸引工程と第3吸引工程との間には、例えば、管20の一端を第3容器12内に移動させるなどの、他の工程が行われてもよい。
【0094】
第4吸引工程では、第3容器12において管20の一端が第3液体L3と第2液体L2との界面I32より下の位置で、第3液体L3を管20の一端側から管20内に吸引する。第4吸引工程で界面I32より下の位置に配置される一端は、第3吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。第4吸引工程で吸引される第3液体L3の体積は特に限定されない。
【0095】
図5(b)は、第4吸引工程において、第3容器12内に収容された第3液体L3を管20の一端側から吸引した様子を模式的に表している。第4吸引工程を経ると、管20の一端側に、第2液体L2の液柱に対して第1液体L1の液柱とは反対側に第3液体L3の液柱が形成される。
【0096】
2.2.2.第5吸引工程
第5吸引工程(ステップS15)は、第4吸引工程(ステップS14)に連続して行われる。第5吸引工程では、第3容器12において管20の一端が界面I32より上の位置で、第2液体L2を管20の一端側から管20内に吸引する。第5吸引工程で界面I32より上の位置に配置される一端は、第4吸引工程で第3液体L3を吸引した一端である。
【0097】
第5吸引工程で吸引される第2液体L2の体積は特に限定されない。第4吐出工程で、第2容器30にあらかじめ第2液体L2が収容されていない場合には、第5吸引工程で吸引された第2液体L2の体積は、当該第2液体L2が第4吐出工程で吐出された際に管20の一端の開口を浸す程度よりも大きいことが好ましい。
【0098】
図5(c)は、第5吸引工程において、第3容器12内に収容された第2液体L2を管20の一端側から吸引した様子を模式的に表している。第5吸引工程を経ると、管20の一端側に、第3液体L3の液柱の下に第2液体L2の液柱が形成される。図5(d)は、第5吸引工程を経た後の管20の状態を示している。図5(d)に示すように、第5吸引工程を経た後の管20では、一端側から第2液体L2、第3液体L3、第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2の順に液柱が形成され、この状態で管20を移動させることができる。
【0099】
2.2.3.第4吐出工程
第4吐出工程(ステップS24)は、第5吸引工程(ステップS15)の後で行われる。第5吸引工程と第4吐出工程との間には、少なくとも第3容器12から管20を第2容器30に移動させる工程が行われる。第5吸引工程と第4吐出工程との間には、他の工程が行われてもよい。
【0100】
第4吐出工程では、第5吸引工程(ステップS15)で管20内に吸引された第2液体L2を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第4吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第5吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0101】
第4吐出工程では、第2容器30に第2液体L2が吐出されるが、吐出された第2液体L2に管20の一端の開口が浸されるように行われる。第4吐出工程において、管20の一端の開口が浸されることにより、第5吐出工程で吐出される第3液体L3を大気に接触させないようにすることができる。また、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第5吐出工程で吐出される第3液体L3を管20から吐出させやすくすることができる。
【0102】
第4吐出工程で吐出される第2液体L2を収容する第2容器30には、あらかじめ第2液体L2が収容されていてもよい。このようにすれば、第4吐出工程の前後で第2液体L2に管20の一端の開口を浸しやすく、第5吐出工程で吐出される第3液体L3をさらに大気に接触させにくくすることができる。また、第2容器30にあらかじめ第2液体L2が収容されていると、第5吐出工程で吐出される第3液体L3を管20からさらに吐出させやすくすることができる。
【0103】
2.2.4.第5吐出工程
第5吐出工程(ステップS25)は、第4吐出工程(ステップS24)に連続して行われる。第5吐出工程では、第4吸引工程(ステップS14)で管20内に吸引された第3液体L3を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第5吐出工程で第3液体L3が吐出される一端は、第4吐出工程で第3液体L3を吐出した一端である。
【0104】
第5吐出工程は、第2液体L2に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第5吐出工程で吐出される第3液体L3を大気に接触させないようにすることができる。また、第2吐出工程と同様に、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第5吐出工程で吐出される第3液体L3を管20から吐出させやすくなっている。
【0105】
2.2.5.第6吐出工程
第6吐出工程(ステップS26)は、第5吐出工程(ステップS25)に連続して行われる。第6吐出工程では、第3吸引工程(ステップS13)で管20内に吸引された第2液体L2の一部を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第6吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第3吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0106】
第6吐出工程は、第2液体L2に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第6吐出工程で吐出される第2液体L2が、第2容器30中の第2液体L2と合一し、第5吐出工程で吐出された第3液体L3を管20から離脱させることができる。
【0107】
第6吐出工程で吐出される第2液体L2は、第3吸引工程で管20内に吸引された第2液体L2の一部である。これにより、第6吐出工程が終了した後、管20は、一端側から第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2の順に液柱が形成され、この状態で管20を移動させることができる。
【0108】
2.2.6.第7吐出工程
第7吐出工程(ステップS27)は、第6吐出工程(ステップS26)の後で行われる。第6吐出工程と第7吐出工程との間には、管20を他の第2容器30に移動させる工程が行われてもよい。第7吐出工程は、第6吐出工程を行った第2容器30と同一の第2容器30に対して行われてもよいし、第6吐出工程を行った第2容器30とは異なる第2容器30に対して行われてもよい。
【0109】
第7吐出工程が、第6吐出工程を行った第2容器30と同一の第2容器30に対して行われる場合には、当該第2容器30内で、第1液体L1と第3液体L3とを混合することができる。また、第7吐出工程が、第6吐出工程を行った第2容器30とは異なる第2容器30に対して行われる場合には、各第2容器30に、第1液体L1と第3液体L3とをそれぞれ分注することができる。
【0110】
第7吐出工程では、第3吸引工程(ステップS13)で管20内に吸引され、第6吐出工程で管20内に残された第2液体L2の一部を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第7吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第3吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0111】
第7吐出工程では、第2容器30に第2液体L2が吐出されるが、吐出された第2液体L2に管20の一端の開口が浸されるように行われる。第7吐出工程において、管20の一端の開口が浸されることにより、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を大気に接触させないようにすることができる。また、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を管20から吐出させやすくすることができる。
【0112】
第7吐出工程で吐出される第2液体L2を収容する第2容器30には、あらかじめ第2液体L2が収容されていてもよい。このようにすれば、第7吐出工程の前後で第2液体L2に管20の一端の開口を浸しやすく、第2吐出工程で吐出される第1液体L1をさらに大気に接触させにくくすることができる。また、第2容器30にあらかじめ第2液体L2が収容されていると、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を管20からさらに吐出させやすくすることができる。
【0113】
本実施形態の分注方法では、第7吐出工程の後、第1実施形態で述べたと同様に、第2吐出工程と、第3吐出工程とが行われる。
【0114】
2.3.作用効果
本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1および第3液体L3は、第1容器10および第3容器12に収容された状態、並びに各吸引工程および各吐出工程において、第2液体L2によって封じられた状態にあるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1および第3液体L3は、分注される際には、第2液体L2に接する状態で取り扱われるので大気等に接触しにくい。そのため、第1液体L1および第3液体L3からそれらの構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体L1または第3液体L3へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体L1および第3液体L3の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0115】
また本実施形態の分注方法によれば、第5吐出工程(ステップS25)で、第3液体L3が第2液体L2中に吐出され、第2吐出工程(ステップS22)で、第1液体L1が第2液体L2中に吐出される。そのため、第5吐出工程および第2吐出工程において、管20内または管20の一端付近に第3液体L3および第1液体L1が残存しにくい。したがって精度よく第1液体L1および第3液体L3を第2容器30へと分注することができる。
【0116】
さらに、本実施形態の分注方法によれば、第3液体L3および第1液体L1は第2液体L2によって包埋されて取り扱われるので、第3液体L3および第1液体L1が互いに混合しにくい。そのため、1つの管20を用いて複数種の液体を分注することができる。したがって、第1実施形態の変形実施形態と同様に、本実施形態においても、複数種の液体を複数の第2容器30にそれぞれ分注することや、複数種の液体を1つの第2容器30に分注することができる。
【0117】
3.第3実施形態
本発明に係る分注方法の第3実施形態を述べる。図6は、分注方法を示すフローチャートである。図7および図8は、それぞれ本実施形態の分注方法の工程の一部を説明する模式図である。図7(a)は、本実施形態に係る第5吸引工程を模式的に示し、図7(b)および図7(c)は、本実施形態に係る混合工程を模式的に示し、図7(d)および図7(e)は、本実施形態に係る混合工程を経た後の状態を模式的に示している。図8(a)は、本実施形態に係る第8吐出工程を模式的に示し、図8(b)は、本実施形態に係る第10吐出工程を模式的に示している。
【0118】
3.1.構成
本実施形態の分注方法は、第1液体L1および第2液体L2が収容された第1容器10、および、第2液体L2および第3液体L3が収容された第3容器12から、一端が開放され他端側に液溜22が接続された管20を用いて、第1液体L1および第3液体L3を第2容器30に分注する分注方法である。
【0119】
本実施形態における第1液体L1、第2液体L2、第3液体L3、第1容器10、第3容器12、管20は、第1実施形態または第2実施形態で述べたと同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。本実施形態では、管20の他端側に液溜22が接続される。
【0120】
3.1.1.液溜
液溜22は、管20の他端側に接続される。液溜22は、管20の内径よりも大きい内径を有する容室である。液溜22は、管20と一体であっても、管20に着脱可能であってもよい。管20に液溜22が接続されても、液溜22の管20とは異なる位置にポンプ等を接続することで、管20は他端側から液溜22を介して液体を吸引することができる。液溜22の形状は、管20の他端側から管20内の液体が液溜22に吸引された際に液体がプラグを形成しない形状であれば特に限定されない。
【0121】
液溜22から管20へ液体を送液する場合は、液溜22内で液体のプラグが形成されないため、液溜22内の液体は、管20から液溜22に吸引された順番とは独立に、比重の大きい順番で送液される。液溜22内を吸引、加圧する手段は、管20で説明した手段と同様である。また、液溜22の材質は、管20の材質と同様である。
【0122】
さらに、液溜22は、少なくとも内壁が疎水性を有することが好ましい。液溜22の少なくとも内壁が疎水性を有すると、分注する液体が水性である場合に、該液体が液溜22に付着しにくい。
【0123】
3.2.分注方法
本実施形態の分注方法は、第1吸引工程と、第2吸引工程と、第3吸引工程と、第4吸引工程と、第5吸引工程と、混合工程と、第8吐出工程と、第9吐出工程と、第10吐出工程と、を含む。
【0124】
本実施形態における第1吸引工程、第2吸引工程、第3吸引工程、第4吸引工程、第5吸引工程は、第1実施形態および第2実施形態で述べたと同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。本実施形態の分注方法は、第2実施形態と同様に第5吸引工程(ステップS15)まで行われ、その後、以下の工程が行われる。
【0125】
図7(a)は、本実施形態の分注方法において、第5吸引工程(ステップS15)を経た後の管20が第3容器12に配置された状態を示している。図7(a)に示すように、第5吸引工程を経た後の管20では、一端側から第2液体L2、第3液体L3、第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2の順に液柱が形成されている。
【0126】
3.2.1.混合工程
混合工程(ステップS30)は、第5吸引工程(ステップ15)中または第5吸引工程(ステップ15)の後で行われる。図7(b)ないし(d)の例は、混合工程が第5吸引工程中に行われる様子を表している。図7(e)は、混合工程が、第5吸引工程を終えた後、管20を大気中に移動してから行われた後の様子を表している。
【0127】
混合工程では、管20内に第5吸引工程で吸引された第2液体L2の少なくとも一部が残るように、液溜22に管20内の各液体(第1吸引工程で吸引された第2液体L2、第2吸引工程で吸引された第1液体L1、第3吸引工程で吸引された第2液体L2、および第4吸引工程で吸引された第3液体、並びに、必要に応じて、第5吸引工程で吸引された第2液体の一部)を吸引する。そして、第2吸引工程で管20内に吸引された第1液体L1、および第4吸引工程で管20内に吸引された第3液体L3を、液溜22内で混合させて第4液体L4とする。かつ、第1吸引工程で吸引された第2液体L2、第3吸引工程で吸引された第2液体L2、および、場合によっては第5吸引工程で吸引された第2液体L2を混合させる。
【0128】
本明細書において、「A工程がB工程中に行われる」との表現は、B工程においてA工程が行われることを指す。したがって本実施形態の混合工程が第5吸引工程中に行われる場合は、混合工程が第5吸引工程において第2液体を管内に吸引しながら行われる場合のことを指す。またなお、本実施形態の混合工程が第5吸引工程の後に行われる場合は、混合工程が気体または他の液体を管内に吸引しながら行われる場合のことを指す。
【0129】
図7(b)に示すように、液溜22内に、第1吸引工程で吸引された第2液体L2および第2吸引工程で吸引された第1液体L1が導入されると、第1液体L1のプラグ形状が解けて、液溜22内に第1液体L1の液滴が形成される。続いて、図7(c)に示すようにさらに吸引すると、液溜22内に、第3吸引工程で吸引された第2液体L2および第4吸引工程で吸引された第3液体L3が導入される。液溜22に導入された第2液体L2同士は合一するので、第2液体L2よりも比重が大きい第1液体L1の液滴と第3液体L3とが液溜22内において接触する。そして、図7(d)に示すように、第1液体L1および第3液体L3との混合液体である第4液体L4の液滴が液溜22内に形成される。この状態においても、液溜22内では、第4液体L4のほうが第2液体L2よりも比重が大きいため、第4液体L4は、第2液体L2に包埋されて大気に接触しにくい。なお、混合は液溜22の管20に接続されている側を下にして行うことが好ましい。これにより、液溜22に空気が存在しても、第1液体L1、第3液体L3、および第4液体L4をさらに空気に触れにくくできる。
【0130】
第4液体L4は、第1液体L1および第3液体L3との混合液体である。例えば、第1液体L1がPCRにおける増幅対象の核酸の水溶液であり、第2液体L2がPCRにおける反応に必要な試薬であれば、第4液体L4はPCRの反応液である。
【0131】
混合工程を経ると、液溜22内に第4液体L4の液滴と第2液体L2が存在し、管20内には、第5吸引工程で吸引された第2液体L2の液柱が存在する状態となる。そして、この状態で管20を移動させることができる。
【0132】
3.2.2.第8吐出工程
第8吐出工程(ステップS28)は、混合工程(ステップS30)の後に行われる。第8吐出工程では、第5吸引工程(ステップS15)で管20内に吸引された第2液体L2のうち、混合工程を経て管20内に残された第2液体L2を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。混合工程と第8吐出工程との間には、他の工程が行われてもよい。第8吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第5吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0133】
第8吐出工程は、第2容器30に第2液体L2が吐出されるが、吐出された第2液体L2に管20の一端の開口が浸されるように行われる。第8吐出工程において、管20の一端の開口が浸されることにより、第9吐出工程で吐出される第4液体L4を大気に接触させにくくすることができる。また、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第9吐出工程で吐出される第4液体L4を管20から吐出させやすくすることができる。
【0134】
第8吐出工程で吐出される第2液体L2を収容する第2容器30には、あらかじめ第2液体L2が収容されていてもよい。このようにすれば、第8吐出工程の前後で第2液体L2に管20の一端の開口を浸しやすく、第9吐出工程で吐出される第4液体L4をさらに大気に接触させにくくすることができる。また、第2容器30にあらかじめ第2液体L2が収容されていると、第9吐出工程で吐出される第4液体L4を管20からさらに吐出させやすくすることができる。
【0135】
図8(a)は、第8吐出工程で管20が、第2容器30内に配置された状態を示している。なお、図8(a)は、第2容器30内にあらかじめ第2液体L2が収容されている状態を示している。
【0136】
3.2.3.第9吐出工程
第9吐出工程(ステップS29)は、第8吐出工程(ステップS28)に連続して行われる。第9吐出工程では、混合工程(ステップS30)で液溜22内に形成された第4液体L4を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第9吐出工程で第4液体L4が吐出される一端は、管20の液溜22が接続されていない一端である。
【0137】
第9吐出工程は、第2容器30内の第2液体L2に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第9吐出工程で吐出される第4液体L4を大気に接触させないようにすることができる。また、第2吐出工程と同様に、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第9吐出工程で吐出される第4液体L4を管20から吐出させやすくなっている。
【0138】
3.2.4.第10吐出工程
第10吐出工程(ステップS210)は、第9吐出工程(ステップS29)に連続して行われる。第10吐出工程では、混合工程(ステップS30)で混合された第2液体L2の少なくとも一部を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第10吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第1吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0139】
第10吐出工程は、第2液体L2に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第10吐出工程で吐出される第2液体L2が、第2容器30中の第2液体L2と合一し、第9吐出工程で吐出された第4液体L4を管20から離脱させることができる。第10吐出工程で吐出される第2液体L2は、混合工程で混合された第2液体L2の一部であっても全部であってもよい。
【0140】
図8(b)は、第10吐出工程が終了し、第10吐出工程で第2液体L2の一部が吐出された状態を示しており、管20内に第2液体L2の液柱が残存し、第4液体L4が管20から離脱した状態を示している。第10吐出工程では、第2容器30中の第2液体L2に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第4液体L4が大気に接触することが抑制される。また、第10吐出工程は、第2容器30中の第2液体L2に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第10吐出工程によって、図示のように、管20内の第2液体L2の液柱と第2容器30内の第2液体L2とを連続させることができる。そのため、第4液体L4を管20の一端の開口から容易に離脱させることができる。なお、図8(b)では、離脱した第4液体L4が液滴を形成している例を示している。
【0141】
3.3.作用効果
本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1および第3液体L3を確実に混合することができる。すなわち、本実施形態の分注方法によれば、混合工程において第1液体L1および第3液体L3の液滴を、液溜22中で合一させて第4液体L4の液滴を形成できるので、第1液体L1および第3液体L3を第2容器30にそれぞれ吐出した後に第2容器30内で両者の液滴を合一させる場合に比べて、第1液体L1と第3液体L3とを接触させやすいので、より確実に第1液体L1および第3液体L3を混合することができる。
【0142】
また、本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1、第3液体L3および第4液体L4は、第1容器10および第3容器12に収容された状態、並びに各吸引工程、混合工程および各吐出工程において、第2液体L2によって封じられるので、一貫して気相に接触しにくい。すなわち、本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1、第3液体L3および第4液体L4は、分注される際には、第2液体に接する状態で取り扱われるので大気等に接触しにくい。そのため、第1液体L1、第3液体L3または第4液体L4からそれらの構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体L1、第3液体L3または第4液体L4へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体L1、第3液体L3および第4液体L4の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0143】
また、本実施形態の分注方法によれば、第9吐出工程で、第4液体L4が第2液体L2中に吐出される。そのため、第9吐出工程において、管20内または管20の一端付近に第4液体L4が残存しにくい。したがって精度よく第4液体L4を第2容器30へと分注することができる。
【0144】
4.第4実施形態
本発明に係る分注方法の第4実施形態を述べる。図9は、本実施形態に係る分注方法を示すフローチャートである。図10は、本実施形態の分注方法の工程の一部を説明する模式図である。図10(a)は、本実施形態で用いる第2容器を模式的に示し、図10(b)は、本実施形態に係る第1吐出工程を模式的に示し、図10(c)は、本実施形態に係る第11吐出工程を経た後の状態を模式的に示している。
【0145】
4.1.構成
本実施形態の分注方法は、第1液体L1および第2液体L2が収容された第1容器10から、管20を用いて第1液体L1を、第5液体L5が収容された第2容器30に分注する分注方法である。
【0146】
本実施形態における第1液体L1、第2液体L2、第1容器10、管20は、第1実施形態または第2実施形態で述べたと同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。本実施形態では、第2容器30にあらかじめ第5液体L5が収容されている。
【0147】
4.1.1.第5液体
第5液体L5は、第1液体L1と混和しない液体である。また、第5液体L5は、第1液体L1よりも比重が小さい液体である。第5液体L5としては、第2液体L2と混和する液体が使用される。第5液体L5は、第2液体L2と同様に、第1液体L1が水性である場合には油性であることができる。第1液体L1がPCRの反応液である場合には、第5液体L5は、オイルであることができる。このようなオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーン系オイル、パラフィン系オイルおよびミネラルオイル並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0148】
4.2.分注方法
本実施形態の分注方法は、第6吸引工程と、第2吸引工程と、第3吸引工程と、第1吐出工程と、第2吐出工程と、第11吐出工程と、を含む。
【0149】
本実施形態における第2吸引工程、第3吸引工程、第1吐出工程、第2吐出工程は、第2吸引工程が第6吸引工程の後で行われる以外は、第1実施形態で述べたと同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。図10(a)は、第2容器30に第5液体L5が収容された状態を示す。
【0150】
4.2.1.第6吸引工程
第6吸引工程(ステップS16)では、第2液体L2または第5液体L5を管20の一端側から管20内に吸引する。第6吸引工程で第2液体L2が吸引される場合は、第1容器10内に収容された第2液体L2であっても、他の容器に収容された第2液体L2であってもよい。第6吸引工程で第5液体L5が吸引される場合は、第2容器30内に収容された第5液体L5であっても、他の容器に収容された第5液体L5であってもよい。第6吸引工程で吸引される第2液体L2または第5液体L5の体積は特に限定されないが、第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20内の気体の影響を受けない程度の体積で吸引されることが好ましい。
【0151】
第6吸引工程は、管20の内壁に第2液体L2または第5液体L5を接触させて、第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20の内壁に付着しにくくし、および第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20内で移動しやすくする。第6吸引工程を行うことにより、第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20内の気体と接触しにくくすることができる。
【0152】
第6吸引工程を経ると、管20の一端側に、第2液体L2の液柱が形成される。そして、本実施形態では、第6吸引工程(ステップS16)の後で第2吸引工程(ステップS12)が行われ、第1実施形態で述べたと同様に、第3吸引工程(ステップS13)、第1吐出工程(ステップS21)、第2吐出工程(ステップS22)の順で各工程が行われる。第2吐出工程を経ると、管20内に第2液体L2または第5液体L5の液柱が残存し、第1液体L1が管20から出て、第1液体L1が管20の一端に接触している状態となる(図3(c)参照)。
【0153】
なお、本実施形態では、第2容器30内には、あらかじめ第5液体L5が収容されているが、第1吐出工程を経ると第5液体L5と第2液体L2が混合される。したがって、第11吐出工程においては第2容器30内には、第5液体L5および第2液体L2の混合液体が収容されている。
【0154】
4.2.2.第11吐出工程
第11吐出工程(ステップS211)は、第2吐出工程(ステップS22)に連続して行われる。第11吐出工程では、第6吸引工程(ステップS16)で管20内に吸引された第2液体L2または第5液体L5の少なくとも一部を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第11吐出工程で第2液体L2または第5液体が吐出される一端は、第6吸引工程で第2液体L2または第5液体L5を吸引した一端である。
【0155】
第11吐出工程は、第2容器30内の第5液体L5および第2液体L2の混合液体に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第11吐出工程で吐出される第2液体L2または第5液体L5が、第2容器30中の第5液体L5および第2液体L2の混合液体と合一し、第2吐出工程で吐出された第1液体L1を管20から離脱させることができる。
【0156】
第11吐出工程で吐出される第2液体L2または第5液体L5は、第6吸引工程で管20内に吸引された第2液体L2または第5液体L5の一部でも全部でもよい。
【0157】
図10(c)は、第11吐出工程が終了し、第11吐出工程で第5液体L5の一部が吐出された状態を示しており、管20内に第5液体L5の液柱が残存し、第1液体L1が管20から離脱した状態を示している。第11吐出工程では、第2容器30中の第5液体L5および第2液体L2の混合液体に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第1液体L1が大気に接触しにくい。また、第11吐出工程は、第2容器30中の第5液体L5および第2液体L2の混合液体に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第11吐出工程によって、図示のように、管20内の第5液体L5の液柱と第2容器30内の第5液体L5および第2液体L2の混合液体とを連続させることができる。そのため、第1液体L1を管20の一端の開口から容易に離脱させることができる。なお、図10(c)では、離脱した第1液体L1が液滴を形成している例を示している。
【0158】
4.3.作用効果
本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1は、第1容器10に収容された状態、並びに各吸引工程および各吐出工程において、第2液体L2または第5液体L5によって封じられた状態であるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1は、第1容器10から第2容器30に分注される際には、第2液体L2または第5液体L5に接する状態で取り扱われ大気等に接触しにくい。そのため、第1液体L1から構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体L1へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体L1の溶媒および溶質の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0159】
また、本実施形態の分注方法によれば、第2吐出工程で、第1液体L1が、第5液体L5および第2液体L2の混合液体中に吐出される。そのため、第2吐出工程において、管20内または管20の一端付近に第1液体L1が残存しにくい。したがって精度よく第1液体L1を第1容器10から第2容器30へと分注することができる。
【0160】
5.その他の実施形態
上述の各実施形態において、第2液体L2および第5液体L5の少なくとも一方に導電性を有してもよい。
【0161】
第2液体L2または第5液体L5に導電性を付与する方法としては、添加剤を添加することが挙げられる。このような添加剤としては、カルビノール変性オイルやトリメチルシロキシケイ酸とシクロペンタシロキサンの混合物等がある。添加剤の好ましい添加量としては、第2液体L2または第5液体L5の電気抵抗率が、1012[Ω・m]以下となる程度である。この場合の添加剤の添加量は3%以下である。
【0162】
第2液体L2および第5液体L5の少なくとも一方が導電性を有すると、第1液体L1、第3液体L3、第4液体L4、管20、第1容器10、第3容器12、および第2容器30が帯電しにくくなるので、より安定した分注方法とすることができる。
【0163】
特に、各実施形態において、ナノリットルの規模の液体を扱う場合には、第2液体L2および第5液体L5の少なくとも一方が帯電していると、各種の不具合が生じる可能性が高くなる。不具合としては、具体的には、各工程における吸引、吐出動作の際、および管20の移動の際に、液体が管20から離脱しにくかったり、液体が容器から飛び出したりすることが挙げられる。しかし、第2液体L2および第5液体L5の少なくとも一方に導電性を付与すれば、このような不具合を生じにくくすることができる。
【0164】
上記第4実施形態において、第5液体L5に導電性を付与すれば、第1液体L1および第2液体L2の少なくとも一方が帯電した場合に、各吐出工程において、管20の先端付近で第1液体L1および第2液体L2の少なくとも一方が、第5液体L5との間の静電的な引力または斥力によって、予期せぬ挙動を示すことを抑制することができる。そのため、より確実に第1液体L1を第1容器10から第2容器30へと分注することができる。
【0165】
上記第1実施形態ないし第4実施形態において、第2液体L2に導電性を付与すれば、各液体が帯電した場合に、各吐出工程において、管20の先端付近で少なくとも第1液体L1が、第2容器30またはその内容物との間の静電的な引力または斥力によって、予期せぬ挙動を示すことを抑制することができる。そのためより確実に第1液体L1を第2容器30へと分注することができる。
【0166】
なお、本発明の分注方法は、上述の各実施形態、変形実施形態、およびその他の実施形態のそれぞれの一部または全部の工程を互いに適宜組み合わせてもよいことは容易に理解されるであろう。
【0167】
6.分注装置
上記各実施形態の分注方法は、作業者が行ってもよいが、以下に説明する分注装置を用いて行うことができる。以下に分注装置100を例示する。図11は、分注装置100を模式的に示す図である。分注装置100は、管20、支持体50、ポンプ60、ステージ70、移動機構80および制御手段90を有する。
【0168】
管20は、上記実施形態で述べた管20であり、一端が支持体50から下方に向かって突出するように、支持体50に支持されている。管20の他端側には、ポンプ60が接続されている。
【0169】
支持体50は、管20を支持する。支持体50は、例えば、管20を取り替えることのできる機構を有してもよい。支持体50は、移動機構80によって移動されることができる。
【0170】
ポンプ60は、管20内を他端側から吸引することと、管20内に他端側から圧力を印加することとができる。ポンプ60の吸引および加圧の動作は、制御手段90によって制御されることができる。
【0171】
ステージ70は、該ステージ70上に容器等を載置することができる。図11の例では、第1容器10および第2容器30がステージ70上に載置されている。ステージ70は、移動機構80によって移動されることができる。
【0172】
移動機構80は、支持体50およびステージ70の相対的な位置関係を変化させる機構である。図示の例では、移動機構80は、支持体50およびステージ70の両者に設けられているが、いずれか一方に設けられてもよい。移動機構80は、支持体50およびステージ70の相対的な位置関係を変化させて、管20を各容器間で移動させること、および各容器内の管20の一端の位置を変化させることができる。
【0173】
制御手段90は、ポンプ60および移動機構80の動作を制御することができる。制御手段90は、例えば、電子計算機(パーソナルコンピューター等)で構成することができる。制御手段90は、上述した分注方法に従ってポンプ60および移動機構80の動作を制御するプログラムを備えることができる。
【0174】
以上のような構成により、分注装置100によれば、上記実施形態の分注方法を行うことができ、例えば、第1容器10から第2容器30へ第1液体L1を分注することができる。
【0175】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0176】
10…第1容器、12…第3容器、20…管、22…液溜、30…第2容器、50…支持体、60…ポンプ、70…ステージ、80…移動機構、90…制御手段、100…分注装置、L1…第1液体、L2…第2液体、L3…第3液体、L4…第4液体、L5…第5液体、I12,I32…界面
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学の分野において、PCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)の技術が確立されている。最近、PCR法における増幅の精度や検出感度は向上してきており、極微量の検体(DNA等)を増幅し、検出・解析することができるようになってきた。
【0003】
PCRに用いる検体や試薬は、稀少であり高価であることが多いので、PCRの反応液の量(体積)が小さいほど費用および効率の面で好ましい。したがって、PCRの反応液の液量を、できるだけ小さくして取り扱うことができる手法が望まれる。
【0004】
微量の液体を取り扱う方法の例としては、特許文献1に、対象とする液体を、該液体と混和せず相分離をする送液用の液体を用いて、細い管の中で移送する方法が開示されている。また、特許文献2には、遺伝子解析装置として、PCRの反応液を流路内で移動させてPCRを行う装置と、その使用方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−025148号公報
【特許文献2】特開2007−175002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術文献に開示された方法は、対象とする液体を0.5μL(マイクロリットル)より大きい体積で取り扱うものである。そのため、対象となる液体自体は、別途さらに大きい規模で調製されていた。したがって、対象となる液体の調製は、例えば、市販の機器や実験器具を用いて行うことができた。
【0007】
ところが、特に最近のPCRでは、微量反応の技術の向上や、低コスト化の要望の高まりによって、対象となる液体を、1μL程度の体積で調製することが求められてきている。このような場合には、ナノリットル(nL)のオーダー(1μL未満)の検体や試薬の溶液を正確な体積で、計量、送液等して取り扱う必要があるが、先行文献に開示された方法などで用いられる従来の分注方法では、精密な取り扱いが難しかった。例えば、比較的精密とされる手動のピペットを用いた場合でも、液体の体積が0.2μL未満となると、もはや精度よく計量、送液、分注することは困難であった。
【0008】
また、マイクロリットルあるいはナノリットルのオーダー(100μL未満)の微量の液体は、計量、分注する等の作業において、液体の一部が蒸発する場合があり、液量が変動したり、溶質の濃度が変動したりするという問題もあった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その幾つかの態様に係る目的の一つは、微量の液体を精度よく分注する分注方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0011】
[適用例1]本発明に係る分注方法の一態様は、第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器から、管を用いて前記第1液体を第2容器に分注する分注方法であって、前記第2液体を前記管の一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記第2容器における前記第2液体中に吐出する第2吐出工程と、前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第3吐出工程と、を含む。
【0012】
本適用例の分注方法によれば、第1液体は、第1容器に収容された状態、並びに吸引工程および吐出工程において、第2液体によって封じられた状態であるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本適用例の分注方法によれば、第1液体は、第1容器から第2容器に分注される際には、第2液体に接する状態で取り扱われるので、大気等に接触しにくい。そのため、第1液体から構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体の溶媒および溶質の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0013】
また、本適用例の分注方法によれば、第2吐出工程で、第1液体が、第2液体中に吐出される。そのため、第2吐出工程において、管内または管の一端付近に第1液体が残存しにくい。したがって精度よく第1液体を第1容器から第2容器へと分注することができる。
【0014】
ここで、本明細書において、分注とは、液体をある容器から他の容器へ所定量に分けて移すことを指す。分注との文言は、生化学の分野では当業者に理解されるであろうが、英語では「dispense」に相当する。なお、分注を行う器具は、分注器などと呼称され、英語では「dispenser」と称される。また、本発明に係る分注方法は、生化学の分野に限定されるものではなく、化学、薬学、生物学、工学など広範な分野に適用されうる。また、本明細書において、「分注する」とは、所定の容器から液体を取り出し、他の容器に、当該液体の少なくとも一部を導入することと、所定の容器から液体を取り出し、複数の他の所定の容器に、当該液体を所定量ずつ導入することを含む。
【0015】
本明細書において、管とは、第1液体が当該管内でプラグ状の形状を維持できる内径を有する筒のことを指す。また、液体がプラグ状の形状を有する状態とは、管の長手方向において、実質的に当該液体のみが占める部分が存在し、他の物質が当該液体によって区画されている状態を指す。ここでの実質的にとは、例えば管の内壁に薄膜状の他の物質(第2液体等)が存在してもよいことを指す。
【0016】
[適用例2]本発明に係る分注方法の一態様は、第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器、並びに、前記第2液体および前記第2液体と混和せず前記第2液体よりも比重の大きい第3液体が収容された第3容器から、管を用いて前記第1液体および前記第3液体を第2容器に分注する分注方法であって、前記第2液体を前記管の一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、前記第3容器に収容された前記第3液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第4吸引工程と、前記第3容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第5吸引工程と、前記第5吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、前記第4吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第3液体を前記第2容器に吐出する第2吐出工程と、前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の一部を前記第2容器に吐出する第3吐出工程と、前記第3吐出工程で管の内部に残された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第4吐出工程と、前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記第2容器に吐出する第5吐出工程と、前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第6吐出工程と、を含む。
【0017】
本適用例の分注方法によれば、第1液体および第3液体は、第1容器および第3容器から第2容器に収容された状態、並びに吸引工程および吐出工程において、第2液体によって封じられた状態であるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本適用例の分注方法によれば、第1液体および第3液体は、分注される際には、第2液体に接する状態で取り扱われるので大気等に接触しにくい。そのため、第1液体および第3液体からそれらの構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体または第3液体へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体および第3液体の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0018】
また、本適用例の分注方法によれば、第5吐出工程で、第3液体が第2液体中に吐出され、第2吐出工程で、第1液体が第2液体中に吐出される。そのため、第5吐出工程および第2吐出工程において、管内または管の一端付近に第3液体および第1液体が残存しにくい。したがって精度よく第1液体および第3液体を第2容器へと分注することができる。
【0019】
[適用例3]本発明に係る分注方法の一態様は、第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器、および、前記第2液体および前記第2液体と混和せず前記第2液体よりも比重の大きい第3液体が収容された第3容器から、一端が開放され他端に液溜が接続された管を用いて、前記第1液体および前記第3液体を第2容器に分注する分注方法であって、前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、前記第3容器に収容された前記第3液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第4吸引工程と、前記第3容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第5吸引工程と、前記管の内部に前記第5吸引工程で吸引された前記第2液体の少なくとも一部が残るように、前記液溜に前記管の内部の各液体を吸引して、前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体、および前記第4吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第3液体を、前記液溜内で混合させて第4液体とし、かつ、前記第1吸引工程、前記第3吸引工程、および前記第5吸引工程で吸引された前記第2液体を混合させる混合工程と、前記管の内部に残された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、前記第4液体を前記第2容器に吐出する第2吐出工程と、前記混合工程で混合された前記第2液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第3吐出工程と、を含む。
【0020】
本適用例の分注方法によれば、第1液体および第3液体を確実に混合することができる。すなわち、本適用例の分注方法によれば、混合工程において第1液体および第3液体の液滴を、液溜中で合一させて第4液体の液滴を形成できるので、第1液体および第3液体を第2容器に吐出した後に第2容器内で両者の液滴を合一させる場合に比べて、より確実に第1液体および第3液体を混合することができる。
【0021】
また、本適用例の分注方法によれば、第1液体、第3液体および第4液体は、第1容器および第3容器から第2容器に収容された状態、並びに吸引工程、混合工程および吐出工程において、第2液体によって封じられた状態であるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本適用例の分注方法によれば、第1液体、第3液体および第4液体は、分注される際には、第2液体に接する状態で取り扱われるので大気等に接触しにくい。そのため、第1液体、第3液体または第4液体からそれらの構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体、第3液体または第4液体へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体、第3液体および第4液体の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0022】
また、本適用例の分注方法によれば、第2吐出工程で、第4液体が第2液体中に吐出される。そのため、第2吐出工程において、管内または管の一端付近に第4液体が残存しにくい。したがって精度よく第4液体を第2容器へと分注することができる。
【0023】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、前記第2容器にはあらかじめ前記第2液体が収容されていてもよい。
【0024】
本適用例の分注方法によれば、各吐出工程において、管の一端を第2液体に接触させやすいので、管内または管の一端付近に第1液体、第3液体または第4液体がさらに残存しにくい。これにより、さらに精度よく第1液体、第3液体または第4液体を第2容器へと分注することができる。
【0025】
[適用例5]本発明に係る分注方法の一態様は、第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器から、管を用いて前記第1液体を、前記第1液体と混和せず前記第2液体と混和する第3液体が収容された第2容器に管を用いて前記第1液体を分注する分注方法であって、前記第2液体または前記第3液体を前記管の一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記第2容器に吐出する第2吐出工程と、前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体または前記第3液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第11吐出工程と、を含む。
【0026】
本適用例の分注方法によれば、第1液体は、第1容器から第2容器に収容された状態、並びに吸引工程および吐出工程において、第2液体または第3液体によって封じられた状態であるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本適用例の分注方法によれば、第1液体は、第1容器から第2容器に分注される際には、第2液体または第3液体に接する状態で取り扱われ大気等に接触しにくい。そのため、第1液体から構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体の溶媒および溶質の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0027】
また、本適用例の分注方法によれば、第2吐出工程で、第1液体が、前記第3液体および前記第2液体の混合液体中に吐出される。そのため、第2吐出工程において、管内または管の一端付近に第1液体が残存しにくい。したがって精度よく第1液体を第1容器から第2容器へと分注することができる。
【0028】
[適用例6]適用例5において、前記第3液体は、導電性を有してもよい。
【0029】
本適用例の分注方法によれば、第1液体および第2液体の少なくとも一方が帯電した場合に、各吐出工程において、管の先端付近で第1液体および第2液体の少なくとも一方が、第3液体との間の静電的な引力または斥力によって、予期せぬ挙動を示すことを抑制することができる。そのため、より確実に第1液体を第1容器から第2容器へと分注することができる。
【0030】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれか一例において、前記第2液体は、導電性を有してもよい。
【0031】
本適用例の分注方法によれば、各液体が帯電した場合に、各吐出工程において、管の先端付近で少なくとも第1液体が、第2容器またはその内容物との間の静電的な引力または斥力によって、予期せぬ挙動を示すことを抑制することができる。そのためより確実に第1液体を第2容器へと分注することができる。
【0032】
[適用例8]適用例1ないし適用例7のいずれか一例において、前記管は、少なくとも内壁が疎水性を有してもよい。
【0033】
本適用例の分注方法によれば、管の内壁に水性の液体が付着しにくい。これにより、第1液体、第3液体および第4液体が水溶液である場合に、第2吸引工程とそれ以降の各工程において、管内における第1液体、第3液体および第4液体の移動がより滑らかとなる。また、各吐出工程において、管内に第1液体、第3液体および第4液体がさらに残存しにくい。そのため、より精度よく液体を分注することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態に係る分注方法のフローチャート。
【図2】図2(a)は、第1実施形態に係る第1吸引工程を模式的に示し、図2(b)は、第1実施形態に係る第2吸引工程を模式的に示し、図2(c)は、第1実施形態に係る第3吸引工程を模式的に示し、図2(d)は、第1実施形態に係る第3吸引工程を経た後の状態を模式的に示す。
【図3】図3(a)は、第1実施形態に係る第1吐出工程の準備状態を模式的に示し、図3(b)は、第1実施形態に係る第1吐出工程を模式的に示し、図3(c)は、第1実施形態に係る第2吐出工程を模式的に示し、図3(d)は、第1実施形態に係る第3吐出工程を模式的に示す。
【図4】第2実施形態に係る分注方法のフローチャート。
【図5】図5(a)は、第2実施形態に係る第4吸引工程の準備状態を模式的に示し、図5(b)は、第2実施形態に係る第4吸引工程を模式的に示し、図5(c)は、第2実施形態に係る第5吸引工程を模式的に示し、図5(d)は、第2実施形態に係る第5吸引工程を経た後の管の状態を模式的に示す。
【図6】第3実施形態に係る分注方法のフローチャート。
【図7】図7(a)は、第3実施形態に係る第5吸引工程を模式的に示し、図7(b)および図7(c)は、第3実施形態に係る混合工程を模式的に示し、図7(d)および図7(e)は、第3実施形態に係る混合工程を経た後の状態を模式的に示す。
【図8】図8(a)は、第3実施形態に係る第8吐出工程を模式的に示し、図8(b)は、第3実施形態に係る第10吐出工程を模式的に示す。
【図9】第4実施形態に係る分注方法のフローチャート。
【図10】図10(a)は、第4実施形態で用いる第2容器を模式的に示し、図10(b)は、第4実施形態に係る第1吐出工程を模式的に示し、図10(c)は、第4実施形態に係る第11吐出工程を経た後の状態を模式的に示す。
【図11】実施形態に係る分注装置の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は、以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお以下の実施形態で説明される構成や工程の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0036】
1.第1実施形態
本発明に係る分注方法の第1実施形態を述べる。図1は、本実施形態の分注方法のフローチャートである。図2および図3は、それぞれ本実施形態の分注方法の一部の工程を模式的に示す図である。図2(a)は、本実施形態に係る第1吸引工程を模式的に示し、図2(b)は、本実施形態に係る第2吸引工程を模式的に示し、図2(c)は、本実施形態に係る第3吸引工程を模式的に示し、図2(d)は、本実施形態に係る第3吸引工程を経た後の状態を模式的に示している。図3(a)は、本実施形態に係る第1吐出工程の準備状態を模式的に示し、図3(b)は、本実施形態に係る第1吐出工程を模式的に示し、図3(c)は、本実施形態に係る第2吐出工程を模式的に示し、図3(d)は、本実施形態に係る第3吐出工程を模式的に示している。
【0037】
1.1.構成
本実施形態の分注方法は、第1液体L1および第2液体L2が収容された第1容器10から、管20を用いて第1液体L1を第2容器30に分注する分注方法である。
【0038】
1.1.1.第1液体
第1液体L1は、後述の第2液体L2と混和しない液体である。また、第1液体L1は、第2液体L2よりも比重が大きい液体である。第1液体L1は、このような性質を有するため、図1に示すように、第1容器10内に第1液体L1および第2液体L2が共存する場合には、第1液体L1と第2液体L2の間に界面I12が形成される。換言すると、第1液体L1と後述の第2液体L2とが共存する場合には液液相分離状態となる。界面I12の重力の作用する方向における下側(第1容器10の底側)に第1液体L1が位置し、界面I12の上側(第1容器10の開口側)に第2液体L2が位置することになる。また、第1液体L1は、表面張力を有し、第1液体L1の体積が小さくなると、第2液体L2中で液滴を形成することができる。なお、本明細書では「上」、「下」との表記は、重力の作用する方向における上下を表すものとする。
【0039】
第1液体L1は、水性、油性のいずれであってもよい。例えば、第1液体L1が水性である場合には、第2液体L2は、油性であることができ、また、その逆であってもよい。第1液体L1は、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)の反応液、またはPCRの反応液を調製するための溶液であってもよい。第1液体L1がPCRの反応液である場合には、反応液には増幅の対象とする核酸(標的核酸)および反応に必要な試薬(例えば、DNAポリメラーゼおよびプライマーなど)が含まれる。第1液体L1を用いて調製される溶液がPCRの反応液である場合には、第1溶液L1は、核酸(標的核酸)または反応に必要な試薬のうちの少なくとも一種を含む溶液であることができる。この場合などは、第2容器30に残りの一部の試薬をあらかじめ収容しておいてもよい。また、第1液体L1としては、例えば、大気中の酸素によって酸化されやすい物質や、大気中の水等の分子と反応しやすい物質の溶液であってもよい。
【0040】
1.1.2.第2液体
第2液体L2は、第1液体L1と混和しない液体である。また、第2液体L2は、第1液体L1よりも比重が小さい液体である。第2液体L2は、第1液体L1が水性である場合には油性であることができる。例えば、第1液体L1がPCRの反応液、またはPCRの反応液を調製するための溶液である場合には、第2液体L2は、オイルであることができる。このようなオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーン系オイル、パラフィン系オイルおよびミネラルオイル並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
1.1.3.管
管20は、両端に開口を有し、内部に該開口間を連通し液体を流通させることができる流路を有する。本明細書では、管20の一方の端を一端といい、他方の端を他端という。また、管20の内径とは、管20の流路の断面における最大径である。管20の形状は任意であるが、例えば、円筒状とすることができる。管20の長さおよび内径は、第1液体L1のプラグを形成できる範囲で任意である。また、管20は、直線状であっても屈曲した形状であってもよい。第1液体L1および第2液体L2などがPCRの反応液等である場合には、管20の内径は、例えば、0.2mm以下が好ましい。管20の内径が0.2mmである場合には、管20内に1mmの長さの液柱を形成すると、当該液柱は、約30ナノリットル(nL)の体積となる。
【0042】
管20は、第1液体L1が当該管20内でプラグ状の形状を維持できる内径を有する。第1液体L1がプラグ状の形状を有する状態とは、管20の長手方向(流路に沿う方向)において、実質的に第1液体L1のみが占める部分が存在する状態をいう。第1液体L1がプラグ状の形状を有する場合は、管20の長手方向において、第1液体L1によって他の物質が区画されている。この場合、例えば管20の内壁に薄膜状の他の物質(第2液体等)が存在してもよい。
【0043】
管20の具体例としては、両端が開口したキャピラリー(細管)が挙げられる。管20は、他端側から流路内が吸引(減圧)されることによって、一端側から液体、気体を流路内に吸引することができる。管20の他端側から流路内を吸引する手段としては、特に限定されず、ポンプ、ピペッター、シリンジなどの機器を例示することができ、作業者が口で吸ってもよい。また、管20は、他端側から流路内に圧力を印加することによって、一端側から液体、気体を吐出させることができる。すなわち、本明細書においては加圧または減圧する器具が取り付けられる管20の端部を他端、液体が吸引または吐出される管20の端部を一端としている。後述する吸引工程において、管20内に、液体のプラグが形成されるため、管20からは、管20に吸引された順番と逆の順番で液体が吐出されることになる(いわゆる先入れ後出し(ファーストインラストアウト))。管20の他端側から流路内に圧力を印加する手段としては、特に限定されず、吸引・加圧機能を備えたポンプ、ピペッター、シリンジなどの機器を例示することができ、作業者が口で息を吹き込んでもよい。なお、1マイクロリットル(μL)以下の体積の第1液体L1を吸引・吐出する場合には、管20内の流速は、1μL/s以下とすることが好ましく、より好ましくは1μL/分以下であり、ポンプ、ピペッターなどの機器は、そのような流速が得られるようなものを用いることが好ましい。
【0044】
管20の材質としては、無機材料(例えば耐熱性ガラス(パイレックス(登録商標)))、および有機材料(例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂)を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。管20がガラス、ポリカーボネート等の可視光を透過する材質で形成されると、管20内に形成された第1液体L1と第2液体L2との間の(相分離)界面I12を外部から目視することができるため好ましい。また、管20の材質としては、撥水性と親油性の両方を備えた材料(例えば、PTFE)が望ましい。管20にこのような材質を用いることにより、第1液体L1が水性であり、かつ、第2液体L2が油性である場合に、管20の表面に第2液体L2が皮膜を形成しやすく、第1液体L1が管20に付着しにくくできる。そのため、複数種の第1液体L1を使用する場合などに、第1液体L1が管20の内壁に付着して生じる第1液体L1間の混合を抑制することができる。
【0045】
管20は、少なくとも内壁が疎水性を有することが好ましい。管20の少なくとも内壁が疎水性を有すると、分注する液体が水性である場合に、該液体が管20に付着しにくい。また、管20の少なくとも内壁が疎水性を有すると、各実施形態の各工程において、管20内における水性の液体の移動がより滑らかとなり、また、各吐出工程において、管内に水性の液体がさらに残存しにくい。そのため、より精度よく液体を分注することができる。
【0046】
管20の内壁を疎水性にする方法としては、管20の材質として上述のPTFEやポリプロピレンを用いることが挙げられ、その他にも管20が疎水性の小さい材質である場合でも、管20の内壁に例えば、プラズマ処理を施したり、疎水性物質のコーティングを施すことによって管20の内壁を疎水性にすることができる。コーティングの例としては、アルキルシラン等で表面処理をした疎水性シリカなどが挙げられる。
【0047】
1.1.4.第1容器
第1容器10は、本実施形態の分注方法によって分注される第1液体L1が収容される容器である。本実施形態の分注方法では、第1容器10には、第2液体L2も収容される。第1容器10の形状および容積は、第1液体L1および第2液体L2が収容されたときに、第1容器10内に第1液体L1と第2液体L2との間の界面I12が形成され、第1液体L1が大気に接触しないように配置でき、管20の一端を後述する分注方法に適した位置まで挿入できるかぎり任意である。すなわち、例えば第1容器10の開口および管20の一端の断面形状が円形である場合、第1容器10の開口の直径は管20の一端の外形よりも大きいものが適している。第1容器10は、例えば、試験管、バイアル、生化学の分野で一般に使用される容器などであることができる。
【0048】
第1容器10の材質としては、無機材料(例えば耐熱性ガラス(パイレックス(登録商標)))、及び有機材料(例えばポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂)を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。第1容器10がガラス、ポリカーボネート、ポリプロピレン等の可視光を透過する材質で形成されると、第1容器10内に形成された第1液体L1と第2液体L2との間の界面I12を外部から目視することができるため好ましい。
【0049】
1.1.5.第2容器
第2容器30は、本実施形態の分注方法によって第1液体L1が分注されて収容される。本実施形態の分注方法では、第2容器30には、第2液体L2も収容される。第2容器30の形状は、第1液体L1および第2液体L2が収容されたときに、第2容器30内に第1液体L1と第2液体L2との間の界面I12が形成され、第1液体L1を大気に接触しないように配置できるかぎり任意である。
【0050】
本実施形態の分注方法では、第2容器30は、複数準備されてもよい。第2容器30は、例えば、試験管、バイアル、生化学の分野で一般にウェルと称される容器などであることができる。また、第2容器30がウェルである場合には、複数(例えば8×12=96個)のウェルが一つの部材に形成された板を使用することができる。
【0051】
第2容器30の材質としては、無機材料(例えば耐熱性ガラス(パイレックス(登録商標)))、及び有機材料(例えばポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂)を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。
【0052】
また、第2容器30の外部から、その内部を観察するような用途(例えば、リアルタイムPCRなど)に第2容器30を用いる場合には、必要に応じて、材質を透明なものとすることができる。なお、ここでの「透明」の程度は第2容器30の使用目的に適する程度であればよい。例えば、視覚的な観察であれば内部が視認できる程度であればよい。リアルタイムPCRなどにおける蛍光測定であれば第2容器30外部から反応液の蛍光が光学的に測定できる程度であればよい。第2容器30の開口から蛍光測定を行う場合には、第2容器30の材質に、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、アニリンブラック、若しくは、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、Co又はCuの酸化物、Si、Ti、Ta、Zr又はCrの炭化物などの黒色物質等を配合することにより、樹脂等の有する自発蛍光を抑制することができ、PCRの精度を高めることができる。またなお、第2容器30を、PCRの反応容器として使用する場合には、第2容器30の材質は、核酸やタンパク質の吸着が少なく、ポリメラーゼ等の酵素反応を阻害しない材質であることが好ましい。
【0053】
1.2.分注方法
本実施形態の分注方法は、第1吸引工程と、第2吸引工程と、第3吸引工程と、第1吐出工程と、第2吐出工程と、第3吐出工程とを含む。
【0054】
1.2.1.第1吸引工程
第1吸引工程(ステップS11)では、第2液体L2を管20の一端側から管20内に吸引する。第1吸引工程で吸引される第2液体L2は、第1容器10内に収容された第2液体L2であっても、他の容器に収容された第2液体L2であってもよい。第1吸引工程で吸引される第2液体L2の体積は特に限定されないが、第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20内の気体の影響を受けない程度の体積であることが好ましい。
【0055】
第1吸引工程によって、管20の内壁の第2液体L2が接触した領域が第2液体L2に覆われる。これにより、第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20の内壁に付着しにくくし、および第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20内で移動しやすくすることができる。第1吸引工程を行うことにより、第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20内の気体と接触しにくくすることができる。
【0056】
図2(a)は、第1吸引工程において、第1容器10内に収容された第2液体L2を管20の一端側から吸引した様子を模式的に表している。第1吸引工程を経ると、管20の一端側に、第2液体L2の液柱が形成される。
【0057】
1.2.2.第2吸引工程
第2吸引工程(ステップS12)は、第1吸引工程(ステップS11)の後で行われる。第2吸引工程と第1吸引工程との間には、例えば、第1吸引工程で第1容器10以外の容器から第2液体L2を吸引した場合に、管20の一端を第1容器10内に移動させるなどの、他の工程が行われてもよい。
【0058】
第2吸引工程では、第1容器10において管20の一端が第1液体L1と第2液体L2との界面I12より下の位置で、第1液体L1を管20の一端側から管20内に吸引する。第2吸引工程で界面I12より下の位置に配置される一端は、第1吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0059】
第1吸引工程で、第1容器10内の第2液体L2を吸引した場合には、管20の一端を界面I12よりも下に移動させることにより、第2吸引工程を行うことができる。第2吸引工程で吸引される第1液体L1の体積は特に限定されない。
【0060】
図2(b)は、第2吸引工程において、第1容器10内に収容された第1液体L1を管20の一端側から吸引した様子を模式的に表している。第2吸引工程を経ると、管20の一端側に、第2液体L2の液柱の下に第1液体L1の液柱が形成される。
【0061】
1.2.3.第3吸引工程
第3吸引工程(ステップS13)は、第2吸引工程(ステップS12)に連続して行われる。第3吸引工程では、第1容器10において管20の一端が界面I12より上の位置で、第2液体L2を管20の一端側から管20内に吸引する。第3吸引工程で界面I12より上の位置に配置される一端は、第2吸引工程で第1液体L1を吸引した一端である。本明細書において、「A工程がB工程に連続して行われる」との表現は、A工程がB工程を行った容器において行われることを表す。また、「A工程がB工程の後で行われる」との表現は、A工程がB工程に連続して行われる場合と、A工程とB工程の間に他の工程が行われる場合とを含む。
【0062】
第3吸引工程で吸引される第2液体L2の体積は特に限定されない。第1吐出工程で、第2容器30にあらかじめ第2液体L2が収容されていない場合には、第3吸引工程で吸引された第2液体L2の体積は、当該第2液体L2が第1吐出工程で吐出された際に管20の一端の開口を浸す程度よりも大きいことが好ましい。
【0063】
図2(c)は、第3吸引工程において、第1容器10内に収容された第2液体L2を管20の一端側から吸引した様子を模式的に表している。第3吸引工程を経ると、管20の内部において、第1液体L1の液柱が2つの第2液体L2の液柱に挟まれた状態となる。図2(d)は、第3吸引工程を経た後の管20の状態を示している。図2(d)に示すように、第3吸引工程を経た後の管20では、一端側から第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2の順に液柱が形成されるので、第1液体L1を空気にほとんど触れさせない状態で管20を移動させることができる。
【0064】
1.2.4.第1吐出工程
第1吐出工程(ステップS21)は、第3吸引工程(ステップS13)の後で行われる。第3吸引工程と第1吐出工程との間には、少なくとも第1容器10から管20を第2容器30に移動させる工程が行われる。第3吸引工程と第1吐出工程との間には、他の工程が行われてもよい。
【0065】
第1吐出工程では、第3吸引工程(ステップS13)で管20内に吸引された第2液体L2を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第1吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第3吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0066】
第1吐出工程では、第2容器30に第2液体L2が吐出されるが、吐出された第2液体L2に管20の一端の開口が浸されるように行われる。第1吐出工程において、管20の一端の開口が浸されることにより、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を大気に接触させないようにすることができる。また、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を管20から吐出させやすくすることができる。
【0067】
第1吐出工程で吐出される第2液体L2を収容する第2容器30には、あらかじめ第2液体L2が収容されていてもよい。このようにすれば、第1吐出工程の前後で第2液体L2に管20の一端の開口を浸しやすく、第2吐出工程で吐出される第1液体L1をさらに大気に接触させにくくすることができる。また、第2容器30にあらかじめ第2液体L2が収容されていると、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を管20からさらに吐出させやすくすることができる。
【0068】
図3(a)は、第3吸引工程を経た後の管20が、第2容器30内に配置された状態を示している。図3(b)は、第1吐出工程が終了した状態を示しており、管20内に第1液体L1および第2液体L2の液柱が残存している状態を示している。
【0069】
1.2.5.第2吐出工程
第2吐出工程(ステップS22)は、第1吐出工程(ステップS21)に連続して行われる。第2吐出工程では、第2吸引工程(ステップS12)で管20内に吸引された第1液体L1を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第2吐出工程で第1液体L1が吐出される一端は、第2吸引工程で第1液体L1を吸引した一端である。
【0070】
第2吐出工程は、第2液体L2に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を大気に接触させないようにすることができる。また、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を管20から吐出させやすくなっている。
【0071】
図3(c)は、第2吐出工程が終了した状態を示しており、管20内に第2液体L2の液柱が残存し、第1液体L1が管20から出て、管20の一端に接触している状態を示している。第2吐出工程は、第2容器30中の第2液体L2に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第1液体L1が大気に接触することがない。
【0072】
1.2.6.第3吐出工程
第3吐出工程(ステップS23)は、第2吐出工程(ステップS22)に連続して行われる。第3吐出工程では、第1吸引工程(ステップS11)で管20内に吸引された第2液体L2の少なくとも一部を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第3吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第1吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0073】
第3吐出工程は、第2液体L2に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第3吐出工程で吐出される第2液体L2が、第2容器30中の第2液体L2と合一し、第2吐出工程で吐出された第1液体L1を管20から離脱させることができる。
【0074】
第3吐出工程で吐出される第2液体L2は、第1吸引工程で管20内に吸引された第2液体L2の一部であっても全部であってもよい。
【0075】
図3(d)は、第3吐出工程が終了し、第3吐出工程で第2液体L2の一部が吐出された状態を示しており、管20内に第2液体L2の液柱が残存し、第1液体L1が管20から離脱した状態を示している。第3吐出工程では、第2容器30中の第2液体L2に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第1液体L1が大気に接触しにくい。また、第3吐出工程は、第2容器30中の第2液体L2に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第3吐出工程によって、図示のように、管20内の第2液体L2の液柱と第2容器30内の第2液体L2とを連続させることができる。そのため、第1液体L1を管20の一端の開口から容易に離脱させることができる。なお、図3(d)では、離脱した第1液体L1が液滴を形成している例を示している。
【0076】
1.2.7.変形実施形態
上記第1実施形態では、1つの第1容器10から、1つの第2容器30へ第1液体L1を分注する分注方法を説明した。しかし、第1実施形態の分注方法は、1つの第1容器10から、複数の第2容器30へ第1液体L1を分注する変形実施が可能である。以下では、1つの第1容器10から、2つの第2容器30へ第1液体L1を分注する方法を説明する。
【0077】
本変形実施形態の分注方法は、第1吸引工程と、第2吸引工程と、第3吸引工程と、第1吐出工程と、第2吐出工程と、第3吐出工程とを含む。各工程は、上記第1実施形態で述べたと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0078】
本変形実施形態の分注方法では、図1に示したフローチャートのAで示す工程(第2吸引工程および第3吸引工程)が複数回行われ、最後の第3吸引工程の後、Bで示す工程(第1吐出工程、第2吐出工程および第3吐出工程)が複数回行われる。
【0079】
上記第1実施形態において、第3吸引工程が終了した後、再度、第2吸引工程および第3吸引工程を行うと、2回目の第3吸引工程が終了したときに、管20内には、一端側から第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2の順に液柱が形成され、この状態で管20を移動させることができる。
【0080】
そして1番目の第2容器30に対して、第1吐出工程、第2吐出工程および第3吐出工程を行うことによって、1番目の第2容器30に2回目の第2吸引工程で吸引した第1液体L1を分注することができる。このときの第3吸引工程において、第2液体L2の一部を管20内に残存させれば、上記第1実施形態において、第3吸引工程が終了した状態と同様の状態を形成することができる。そして、管20を2番目の第2容器30に移動させ、第1吐出工程、第2吐出工程および第3吐出工程を行うことによって、2番目の第2容器30に1回目の第2吸引工程で吸引した第1液体L1を分注することができる。
【0081】
このようにすれば、例えば、本実施形態の分注方法を分注装置等に採用した場合に、管20を第1容器10と第2容器30との間で移動させる回数を減らすことができる。すなわち、管20を移動させる工程を削減できるので、分注作業の所要時間の短縮を図ることができる。また、液体の吸引・吐出を、ポンプを用いて行う場合には、吸引および吐出の切り替えに時間がかかる場合があり、そのような場合にも、本変形実施形態では、切り替えの回数を減らすことができるため、分注作業の所要時間の短縮を図ることができる。
【0082】
1.3.作用効果
本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1は、第1容器10に収容された状態、並びに各吸引工程および各吐出工程において、第2液体L2によって封じられた状態であるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1は、第1容器10から第2容器30に分注される際には、第2液体L2に接する状態で取り扱われるので大気等に接触しにくい。そのため、第1液体L1から構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体L1へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体L1の溶媒および溶質の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0083】
また、本実施形態の分注方法によれば、第2吐出工程(ステップS22)で、第1液体L1が、第2液体L2中に吐出される。そのため、第2吐出工程において、管内または管の一端付近に第1液体L1が残存しにくい。したがって精度よく第1液体L1を第1容器10から第2容器30へと分注することができる。
【0084】
2.第2実施形態
本発明に係る分注方法の第2実施形態を述べる。図4は、本実施形態の分注方法を示すフローチャートである。図5は、本実施形態の分注方法の工程の一部を説明する模式図である。図5(a)は、本実施形態に係る第4吸引工程の準備状態を模式的に示し、図5(b)は、本実施形態に係る第4吸引工程を模式的に示し、図5(c)は、本実施形態に係る第5吸引工程を模式的に示し、図5(d)は、本実施形態に係る第5吸引工程を経た後の管の状態を模式的に示している。
【0085】
2.1.構成
本実施形態の分注方法は、第1液体L1および第2液体L2が収容された第1容器10、並びに、第2液体L2および第3液体L3が収容された第3容器12から、管20を用いて第1液体L1および第3液体L3を第2容器20に分注する分注方法である。
【0086】
本実施形態における第1液体L1、第2液体L2、第1容器10、管20は、第1実施形態で述べたと同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。
【0087】
2.1.1.第3液体
第3液体L3は、第2液体L2と混和しない液体である。また、第3液体L3は、第2液体L2より比重が大きい液体である。第3液体L3は、このような性質を有するため、図5に示すように、第3容器12内に第3液体L3および第2液体L2が共存する場合には、第3液体L3と第2液体L2の間に(相分離)界面I32が形成され、界面I32の下側(第3容器12の底側)に第3液体L3が位置し、界面I32の上側(第3容器12の開口側)に第2液体L2が位置することになる。また、第3液体L3は、表面張力を有し、第3液体L3の体積が小さければ、第2液体L2中で液滴を形成することができる。
【0088】
第3液体L3は、水性、油性のいずれであってもよい。例えば、第3液体L3が水性である場合には、第2液体L2は、油性であることができ、また、その逆であってもよい。第3液体L3は、例えば、PCRの反応液を調製するための溶液であってもよい。第3液体L3を用いて調製される溶液がPCRの反応液である場合には、第3液体L3は、核酸(標的核酸)または反応に必要な試薬のうち少なくとも一種を含む溶液であることができる。この場合などは、第2容器30に残りの一部の試薬をあらかじめ収容しておいてもよい。また、第3液体L3としては、例えば、大気中の酸素によって酸化されやすい物質や、大気中の水等の分子と反応しやすい物質の溶液であってもよい。
【0089】
2.1.2.第3容器
第3容器12は、第1実施形態で述べた第1容器10と実質的に同様である。第3容器12は、本実施形態の分注方法によって分注される第3液体L3が収容される容器である。本実施形態の分注方法では、第3容器12には、第2液体L2も収容される。第3容器12の形状は、第3液体L3および第2液体L2が収容されたときに、第3容器12内に第3液体L3と第2液体L2との間の界面I32が形成され、第3液体L3が大気に接触しないようにできるかぎり任意である。第3容器12は、例えば、試験管、バイアル、生化学の分野で一般に使用される容器などであることができる。第3容器12の材質は、第1容器10と同様である。
【0090】
2.2.分注方法
本実施形態の分注方法は、第1吸引工程と、第2吸引工程と、第3吸引工程と、第4吸引工程と、第5吸引工程と、第4吐出工程と、第5吐出工程と、第6吐出工程と、第7吐出工程と、第2吐出工程と、第3吐出工程と、を含む。
【0091】
本実施形態における第1吸引工程、第2吸引工程、第3吸引工程、第2吐出工程と、第3吐出工程は、第2吐出工程が第7吐出工程に連続して行われる以外は、第1実施形態で述べたと同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。本実施形態の分注方法は、第1実施形態と同様にして第1吸引工程から第3吸引工程(ステップS13)が行われ、その後、以下の工程が行われる。
【0092】
図5(a)は、本実施形態の分注方法において、第3吸引工程(ステップS13)を経た後の管20の状態を示している。図5(a)に示すように、第3吸引工程を経た後の管20では、一端側から第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2の順に液柱が形成され、この状態で管20を移動させることができる。
【0093】
2.2.1.第4吸引工程
第4吸引工程(ステップS14)は、第3吸引工程(ステップS13)の後で行われる。第4吸引工程と第3吸引工程との間には、例えば、管20の一端を第3容器12内に移動させるなどの、他の工程が行われてもよい。
【0094】
第4吸引工程では、第3容器12において管20の一端が第3液体L3と第2液体L2との界面I32より下の位置で、第3液体L3を管20の一端側から管20内に吸引する。第4吸引工程で界面I32より下の位置に配置される一端は、第3吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。第4吸引工程で吸引される第3液体L3の体積は特に限定されない。
【0095】
図5(b)は、第4吸引工程において、第3容器12内に収容された第3液体L3を管20の一端側から吸引した様子を模式的に表している。第4吸引工程を経ると、管20の一端側に、第2液体L2の液柱に対して第1液体L1の液柱とは反対側に第3液体L3の液柱が形成される。
【0096】
2.2.2.第5吸引工程
第5吸引工程(ステップS15)は、第4吸引工程(ステップS14)に連続して行われる。第5吸引工程では、第3容器12において管20の一端が界面I32より上の位置で、第2液体L2を管20の一端側から管20内に吸引する。第5吸引工程で界面I32より上の位置に配置される一端は、第4吸引工程で第3液体L3を吸引した一端である。
【0097】
第5吸引工程で吸引される第2液体L2の体積は特に限定されない。第4吐出工程で、第2容器30にあらかじめ第2液体L2が収容されていない場合には、第5吸引工程で吸引された第2液体L2の体積は、当該第2液体L2が第4吐出工程で吐出された際に管20の一端の開口を浸す程度よりも大きいことが好ましい。
【0098】
図5(c)は、第5吸引工程において、第3容器12内に収容された第2液体L2を管20の一端側から吸引した様子を模式的に表している。第5吸引工程を経ると、管20の一端側に、第3液体L3の液柱の下に第2液体L2の液柱が形成される。図5(d)は、第5吸引工程を経た後の管20の状態を示している。図5(d)に示すように、第5吸引工程を経た後の管20では、一端側から第2液体L2、第3液体L3、第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2の順に液柱が形成され、この状態で管20を移動させることができる。
【0099】
2.2.3.第4吐出工程
第4吐出工程(ステップS24)は、第5吸引工程(ステップS15)の後で行われる。第5吸引工程と第4吐出工程との間には、少なくとも第3容器12から管20を第2容器30に移動させる工程が行われる。第5吸引工程と第4吐出工程との間には、他の工程が行われてもよい。
【0100】
第4吐出工程では、第5吸引工程(ステップS15)で管20内に吸引された第2液体L2を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第4吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第5吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0101】
第4吐出工程では、第2容器30に第2液体L2が吐出されるが、吐出された第2液体L2に管20の一端の開口が浸されるように行われる。第4吐出工程において、管20の一端の開口が浸されることにより、第5吐出工程で吐出される第3液体L3を大気に接触させないようにすることができる。また、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第5吐出工程で吐出される第3液体L3を管20から吐出させやすくすることができる。
【0102】
第4吐出工程で吐出される第2液体L2を収容する第2容器30には、あらかじめ第2液体L2が収容されていてもよい。このようにすれば、第4吐出工程の前後で第2液体L2に管20の一端の開口を浸しやすく、第5吐出工程で吐出される第3液体L3をさらに大気に接触させにくくすることができる。また、第2容器30にあらかじめ第2液体L2が収容されていると、第5吐出工程で吐出される第3液体L3を管20からさらに吐出させやすくすることができる。
【0103】
2.2.4.第5吐出工程
第5吐出工程(ステップS25)は、第4吐出工程(ステップS24)に連続して行われる。第5吐出工程では、第4吸引工程(ステップS14)で管20内に吸引された第3液体L3を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第5吐出工程で第3液体L3が吐出される一端は、第4吐出工程で第3液体L3を吐出した一端である。
【0104】
第5吐出工程は、第2液体L2に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第5吐出工程で吐出される第3液体L3を大気に接触させないようにすることができる。また、第2吐出工程と同様に、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第5吐出工程で吐出される第3液体L3を管20から吐出させやすくなっている。
【0105】
2.2.5.第6吐出工程
第6吐出工程(ステップS26)は、第5吐出工程(ステップS25)に連続して行われる。第6吐出工程では、第3吸引工程(ステップS13)で管20内に吸引された第2液体L2の一部を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第6吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第3吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0106】
第6吐出工程は、第2液体L2に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第6吐出工程で吐出される第2液体L2が、第2容器30中の第2液体L2と合一し、第5吐出工程で吐出された第3液体L3を管20から離脱させることができる。
【0107】
第6吐出工程で吐出される第2液体L2は、第3吸引工程で管20内に吸引された第2液体L2の一部である。これにより、第6吐出工程が終了した後、管20は、一端側から第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2の順に液柱が形成され、この状態で管20を移動させることができる。
【0108】
2.2.6.第7吐出工程
第7吐出工程(ステップS27)は、第6吐出工程(ステップS26)の後で行われる。第6吐出工程と第7吐出工程との間には、管20を他の第2容器30に移動させる工程が行われてもよい。第7吐出工程は、第6吐出工程を行った第2容器30と同一の第2容器30に対して行われてもよいし、第6吐出工程を行った第2容器30とは異なる第2容器30に対して行われてもよい。
【0109】
第7吐出工程が、第6吐出工程を行った第2容器30と同一の第2容器30に対して行われる場合には、当該第2容器30内で、第1液体L1と第3液体L3とを混合することができる。また、第7吐出工程が、第6吐出工程を行った第2容器30とは異なる第2容器30に対して行われる場合には、各第2容器30に、第1液体L1と第3液体L3とをそれぞれ分注することができる。
【0110】
第7吐出工程では、第3吸引工程(ステップS13)で管20内に吸引され、第6吐出工程で管20内に残された第2液体L2の一部を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第7吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第3吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0111】
第7吐出工程では、第2容器30に第2液体L2が吐出されるが、吐出された第2液体L2に管20の一端の開口が浸されるように行われる。第7吐出工程において、管20の一端の開口が浸されることにより、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を大気に接触させないようにすることができる。また、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を管20から吐出させやすくすることができる。
【0112】
第7吐出工程で吐出される第2液体L2を収容する第2容器30には、あらかじめ第2液体L2が収容されていてもよい。このようにすれば、第7吐出工程の前後で第2液体L2に管20の一端の開口を浸しやすく、第2吐出工程で吐出される第1液体L1をさらに大気に接触させにくくすることができる。また、第2容器30にあらかじめ第2液体L2が収容されていると、第2吐出工程で吐出される第1液体L1を管20からさらに吐出させやすくすることができる。
【0113】
本実施形態の分注方法では、第7吐出工程の後、第1実施形態で述べたと同様に、第2吐出工程と、第3吐出工程とが行われる。
【0114】
2.3.作用効果
本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1および第3液体L3は、第1容器10および第3容器12に収容された状態、並びに各吸引工程および各吐出工程において、第2液体L2によって封じられた状態にあるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1および第3液体L3は、分注される際には、第2液体L2に接する状態で取り扱われるので大気等に接触しにくい。そのため、第1液体L1および第3液体L3からそれらの構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体L1または第3液体L3へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体L1および第3液体L3の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0115】
また本実施形態の分注方法によれば、第5吐出工程(ステップS25)で、第3液体L3が第2液体L2中に吐出され、第2吐出工程(ステップS22)で、第1液体L1が第2液体L2中に吐出される。そのため、第5吐出工程および第2吐出工程において、管20内または管20の一端付近に第3液体L3および第1液体L1が残存しにくい。したがって精度よく第1液体L1および第3液体L3を第2容器30へと分注することができる。
【0116】
さらに、本実施形態の分注方法によれば、第3液体L3および第1液体L1は第2液体L2によって包埋されて取り扱われるので、第3液体L3および第1液体L1が互いに混合しにくい。そのため、1つの管20を用いて複数種の液体を分注することができる。したがって、第1実施形態の変形実施形態と同様に、本実施形態においても、複数種の液体を複数の第2容器30にそれぞれ分注することや、複数種の液体を1つの第2容器30に分注することができる。
【0117】
3.第3実施形態
本発明に係る分注方法の第3実施形態を述べる。図6は、分注方法を示すフローチャートである。図7および図8は、それぞれ本実施形態の分注方法の工程の一部を説明する模式図である。図7(a)は、本実施形態に係る第5吸引工程を模式的に示し、図7(b)および図7(c)は、本実施形態に係る混合工程を模式的に示し、図7(d)および図7(e)は、本実施形態に係る混合工程を経た後の状態を模式的に示している。図8(a)は、本実施形態に係る第8吐出工程を模式的に示し、図8(b)は、本実施形態に係る第10吐出工程を模式的に示している。
【0118】
3.1.構成
本実施形態の分注方法は、第1液体L1および第2液体L2が収容された第1容器10、および、第2液体L2および第3液体L3が収容された第3容器12から、一端が開放され他端側に液溜22が接続された管20を用いて、第1液体L1および第3液体L3を第2容器30に分注する分注方法である。
【0119】
本実施形態における第1液体L1、第2液体L2、第3液体L3、第1容器10、第3容器12、管20は、第1実施形態または第2実施形態で述べたと同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。本実施形態では、管20の他端側に液溜22が接続される。
【0120】
3.1.1.液溜
液溜22は、管20の他端側に接続される。液溜22は、管20の内径よりも大きい内径を有する容室である。液溜22は、管20と一体であっても、管20に着脱可能であってもよい。管20に液溜22が接続されても、液溜22の管20とは異なる位置にポンプ等を接続することで、管20は他端側から液溜22を介して液体を吸引することができる。液溜22の形状は、管20の他端側から管20内の液体が液溜22に吸引された際に液体がプラグを形成しない形状であれば特に限定されない。
【0121】
液溜22から管20へ液体を送液する場合は、液溜22内で液体のプラグが形成されないため、液溜22内の液体は、管20から液溜22に吸引された順番とは独立に、比重の大きい順番で送液される。液溜22内を吸引、加圧する手段は、管20で説明した手段と同様である。また、液溜22の材質は、管20の材質と同様である。
【0122】
さらに、液溜22は、少なくとも内壁が疎水性を有することが好ましい。液溜22の少なくとも内壁が疎水性を有すると、分注する液体が水性である場合に、該液体が液溜22に付着しにくい。
【0123】
3.2.分注方法
本実施形態の分注方法は、第1吸引工程と、第2吸引工程と、第3吸引工程と、第4吸引工程と、第5吸引工程と、混合工程と、第8吐出工程と、第9吐出工程と、第10吐出工程と、を含む。
【0124】
本実施形態における第1吸引工程、第2吸引工程、第3吸引工程、第4吸引工程、第5吸引工程は、第1実施形態および第2実施形態で述べたと同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。本実施形態の分注方法は、第2実施形態と同様に第5吸引工程(ステップS15)まで行われ、その後、以下の工程が行われる。
【0125】
図7(a)は、本実施形態の分注方法において、第5吸引工程(ステップS15)を経た後の管20が第3容器12に配置された状態を示している。図7(a)に示すように、第5吸引工程を経た後の管20では、一端側から第2液体L2、第3液体L3、第2液体L2、第1液体L1、第2液体L2の順に液柱が形成されている。
【0126】
3.2.1.混合工程
混合工程(ステップS30)は、第5吸引工程(ステップ15)中または第5吸引工程(ステップ15)の後で行われる。図7(b)ないし(d)の例は、混合工程が第5吸引工程中に行われる様子を表している。図7(e)は、混合工程が、第5吸引工程を終えた後、管20を大気中に移動してから行われた後の様子を表している。
【0127】
混合工程では、管20内に第5吸引工程で吸引された第2液体L2の少なくとも一部が残るように、液溜22に管20内の各液体(第1吸引工程で吸引された第2液体L2、第2吸引工程で吸引された第1液体L1、第3吸引工程で吸引された第2液体L2、および第4吸引工程で吸引された第3液体、並びに、必要に応じて、第5吸引工程で吸引された第2液体の一部)を吸引する。そして、第2吸引工程で管20内に吸引された第1液体L1、および第4吸引工程で管20内に吸引された第3液体L3を、液溜22内で混合させて第4液体L4とする。かつ、第1吸引工程で吸引された第2液体L2、第3吸引工程で吸引された第2液体L2、および、場合によっては第5吸引工程で吸引された第2液体L2を混合させる。
【0128】
本明細書において、「A工程がB工程中に行われる」との表現は、B工程においてA工程が行われることを指す。したがって本実施形態の混合工程が第5吸引工程中に行われる場合は、混合工程が第5吸引工程において第2液体を管内に吸引しながら行われる場合のことを指す。またなお、本実施形態の混合工程が第5吸引工程の後に行われる場合は、混合工程が気体または他の液体を管内に吸引しながら行われる場合のことを指す。
【0129】
図7(b)に示すように、液溜22内に、第1吸引工程で吸引された第2液体L2および第2吸引工程で吸引された第1液体L1が導入されると、第1液体L1のプラグ形状が解けて、液溜22内に第1液体L1の液滴が形成される。続いて、図7(c)に示すようにさらに吸引すると、液溜22内に、第3吸引工程で吸引された第2液体L2および第4吸引工程で吸引された第3液体L3が導入される。液溜22に導入された第2液体L2同士は合一するので、第2液体L2よりも比重が大きい第1液体L1の液滴と第3液体L3とが液溜22内において接触する。そして、図7(d)に示すように、第1液体L1および第3液体L3との混合液体である第4液体L4の液滴が液溜22内に形成される。この状態においても、液溜22内では、第4液体L4のほうが第2液体L2よりも比重が大きいため、第4液体L4は、第2液体L2に包埋されて大気に接触しにくい。なお、混合は液溜22の管20に接続されている側を下にして行うことが好ましい。これにより、液溜22に空気が存在しても、第1液体L1、第3液体L3、および第4液体L4をさらに空気に触れにくくできる。
【0130】
第4液体L4は、第1液体L1および第3液体L3との混合液体である。例えば、第1液体L1がPCRにおける増幅対象の核酸の水溶液であり、第2液体L2がPCRにおける反応に必要な試薬であれば、第4液体L4はPCRの反応液である。
【0131】
混合工程を経ると、液溜22内に第4液体L4の液滴と第2液体L2が存在し、管20内には、第5吸引工程で吸引された第2液体L2の液柱が存在する状態となる。そして、この状態で管20を移動させることができる。
【0132】
3.2.2.第8吐出工程
第8吐出工程(ステップS28)は、混合工程(ステップS30)の後に行われる。第8吐出工程では、第5吸引工程(ステップS15)で管20内に吸引された第2液体L2のうち、混合工程を経て管20内に残された第2液体L2を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。混合工程と第8吐出工程との間には、他の工程が行われてもよい。第8吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第5吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0133】
第8吐出工程は、第2容器30に第2液体L2が吐出されるが、吐出された第2液体L2に管20の一端の開口が浸されるように行われる。第8吐出工程において、管20の一端の開口が浸されることにより、第9吐出工程で吐出される第4液体L4を大気に接触させにくくすることができる。また、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第9吐出工程で吐出される第4液体L4を管20から吐出させやすくすることができる。
【0134】
第8吐出工程で吐出される第2液体L2を収容する第2容器30には、あらかじめ第2液体L2が収容されていてもよい。このようにすれば、第8吐出工程の前後で第2液体L2に管20の一端の開口を浸しやすく、第9吐出工程で吐出される第4液体L4をさらに大気に接触させにくくすることができる。また、第2容器30にあらかじめ第2液体L2が収容されていると、第9吐出工程で吐出される第4液体L4を管20からさらに吐出させやすくすることができる。
【0135】
図8(a)は、第8吐出工程で管20が、第2容器30内に配置された状態を示している。なお、図8(a)は、第2容器30内にあらかじめ第2液体L2が収容されている状態を示している。
【0136】
3.2.3.第9吐出工程
第9吐出工程(ステップS29)は、第8吐出工程(ステップS28)に連続して行われる。第9吐出工程では、混合工程(ステップS30)で液溜22内に形成された第4液体L4を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第9吐出工程で第4液体L4が吐出される一端は、管20の液溜22が接続されていない一端である。
【0137】
第9吐出工程は、第2容器30内の第2液体L2に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第9吐出工程で吐出される第4液体L4を大気に接触させないようにすることができる。また、第2吐出工程と同様に、第2液体L2に管20の一端の開口が浸されることにより、第9吐出工程で吐出される第4液体L4を管20から吐出させやすくなっている。
【0138】
3.2.4.第10吐出工程
第10吐出工程(ステップS210)は、第9吐出工程(ステップS29)に連続して行われる。第10吐出工程では、混合工程(ステップS30)で混合された第2液体L2の少なくとも一部を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第10吐出工程で第2液体L2が吐出される一端は、第1吸引工程で第2液体L2を吸引した一端である。
【0139】
第10吐出工程は、第2液体L2に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第10吐出工程で吐出される第2液体L2が、第2容器30中の第2液体L2と合一し、第9吐出工程で吐出された第4液体L4を管20から離脱させることができる。第10吐出工程で吐出される第2液体L2は、混合工程で混合された第2液体L2の一部であっても全部であってもよい。
【0140】
図8(b)は、第10吐出工程が終了し、第10吐出工程で第2液体L2の一部が吐出された状態を示しており、管20内に第2液体L2の液柱が残存し、第4液体L4が管20から離脱した状態を示している。第10吐出工程では、第2容器30中の第2液体L2に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第4液体L4が大気に接触することが抑制される。また、第10吐出工程は、第2容器30中の第2液体L2に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第10吐出工程によって、図示のように、管20内の第2液体L2の液柱と第2容器30内の第2液体L2とを連続させることができる。そのため、第4液体L4を管20の一端の開口から容易に離脱させることができる。なお、図8(b)では、離脱した第4液体L4が液滴を形成している例を示している。
【0141】
3.3.作用効果
本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1および第3液体L3を確実に混合することができる。すなわち、本実施形態の分注方法によれば、混合工程において第1液体L1および第3液体L3の液滴を、液溜22中で合一させて第4液体L4の液滴を形成できるので、第1液体L1および第3液体L3を第2容器30にそれぞれ吐出した後に第2容器30内で両者の液滴を合一させる場合に比べて、第1液体L1と第3液体L3とを接触させやすいので、より確実に第1液体L1および第3液体L3を混合することができる。
【0142】
また、本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1、第3液体L3および第4液体L4は、第1容器10および第3容器12に収容された状態、並びに各吸引工程、混合工程および各吐出工程において、第2液体L2によって封じられるので、一貫して気相に接触しにくい。すなわち、本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1、第3液体L3および第4液体L4は、分注される際には、第2液体に接する状態で取り扱われるので大気等に接触しにくい。そのため、第1液体L1、第3液体L3または第4液体L4からそれらの構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体L1、第3液体L3または第4液体L4へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体L1、第3液体L3および第4液体L4の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0143】
また、本実施形態の分注方法によれば、第9吐出工程で、第4液体L4が第2液体L2中に吐出される。そのため、第9吐出工程において、管20内または管20の一端付近に第4液体L4が残存しにくい。したがって精度よく第4液体L4を第2容器30へと分注することができる。
【0144】
4.第4実施形態
本発明に係る分注方法の第4実施形態を述べる。図9は、本実施形態に係る分注方法を示すフローチャートである。図10は、本実施形態の分注方法の工程の一部を説明する模式図である。図10(a)は、本実施形態で用いる第2容器を模式的に示し、図10(b)は、本実施形態に係る第1吐出工程を模式的に示し、図10(c)は、本実施形態に係る第11吐出工程を経た後の状態を模式的に示している。
【0145】
4.1.構成
本実施形態の分注方法は、第1液体L1および第2液体L2が収容された第1容器10から、管20を用いて第1液体L1を、第5液体L5が収容された第2容器30に分注する分注方法である。
【0146】
本実施形態における第1液体L1、第2液体L2、第1容器10、管20は、第1実施形態または第2実施形態で述べたと同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。本実施形態では、第2容器30にあらかじめ第5液体L5が収容されている。
【0147】
4.1.1.第5液体
第5液体L5は、第1液体L1と混和しない液体である。また、第5液体L5は、第1液体L1よりも比重が小さい液体である。第5液体L5としては、第2液体L2と混和する液体が使用される。第5液体L5は、第2液体L2と同様に、第1液体L1が水性である場合には油性であることができる。第1液体L1がPCRの反応液である場合には、第5液体L5は、オイルであることができる。このようなオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーン系オイル、パラフィン系オイルおよびミネラルオイル並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0148】
4.2.分注方法
本実施形態の分注方法は、第6吸引工程と、第2吸引工程と、第3吸引工程と、第1吐出工程と、第2吐出工程と、第11吐出工程と、を含む。
【0149】
本実施形態における第2吸引工程、第3吸引工程、第1吐出工程、第2吐出工程は、第2吸引工程が第6吸引工程の後で行われる以外は、第1実施形態で述べたと同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。図10(a)は、第2容器30に第5液体L5が収容された状態を示す。
【0150】
4.2.1.第6吸引工程
第6吸引工程(ステップS16)では、第2液体L2または第5液体L5を管20の一端側から管20内に吸引する。第6吸引工程で第2液体L2が吸引される場合は、第1容器10内に収容された第2液体L2であっても、他の容器に収容された第2液体L2であってもよい。第6吸引工程で第5液体L5が吸引される場合は、第2容器30内に収容された第5液体L5であっても、他の容器に収容された第5液体L5であってもよい。第6吸引工程で吸引される第2液体L2または第5液体L5の体積は特に限定されないが、第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20内の気体の影響を受けない程度の体積で吸引されることが好ましい。
【0151】
第6吸引工程は、管20の内壁に第2液体L2または第5液体L5を接触させて、第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20の内壁に付着しにくくし、および第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20内で移動しやすくする。第6吸引工程を行うことにより、第2吸引工程で吸引される第1液体L1が管20内の気体と接触しにくくすることができる。
【0152】
第6吸引工程を経ると、管20の一端側に、第2液体L2の液柱が形成される。そして、本実施形態では、第6吸引工程(ステップS16)の後で第2吸引工程(ステップS12)が行われ、第1実施形態で述べたと同様に、第3吸引工程(ステップS13)、第1吐出工程(ステップS21)、第2吐出工程(ステップS22)の順で各工程が行われる。第2吐出工程を経ると、管20内に第2液体L2または第5液体L5の液柱が残存し、第1液体L1が管20から出て、第1液体L1が管20の一端に接触している状態となる(図3(c)参照)。
【0153】
なお、本実施形態では、第2容器30内には、あらかじめ第5液体L5が収容されているが、第1吐出工程を経ると第5液体L5と第2液体L2が混合される。したがって、第11吐出工程においては第2容器30内には、第5液体L5および第2液体L2の混合液体が収容されている。
【0154】
4.2.2.第11吐出工程
第11吐出工程(ステップS211)は、第2吐出工程(ステップS22)に連続して行われる。第11吐出工程では、第6吸引工程(ステップS16)で管20内に吸引された第2液体L2または第5液体L5の少なくとも一部を、管20の一端側から第2容器30に吐出する。第11吐出工程で第2液体L2または第5液体が吐出される一端は、第6吸引工程で第2液体L2または第5液体L5を吸引した一端である。
【0155】
第11吐出工程は、第2容器30内の第5液体L5および第2液体L2の混合液体に管20の一端の開口が浸された状態で行われる。これにより、第11吐出工程で吐出される第2液体L2または第5液体L5が、第2容器30中の第5液体L5および第2液体L2の混合液体と合一し、第2吐出工程で吐出された第1液体L1を管20から離脱させることができる。
【0156】
第11吐出工程で吐出される第2液体L2または第5液体L5は、第6吸引工程で管20内に吸引された第2液体L2または第5液体L5の一部でも全部でもよい。
【0157】
図10(c)は、第11吐出工程が終了し、第11吐出工程で第5液体L5の一部が吐出された状態を示しており、管20内に第5液体L5の液柱が残存し、第1液体L1が管20から離脱した状態を示している。第11吐出工程では、第2容器30中の第5液体L5および第2液体L2の混合液体に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第1液体L1が大気に接触しにくい。また、第11吐出工程は、第2容器30中の第5液体L5および第2液体L2の混合液体に管20の一端の開口が浸されて行われるため、第11吐出工程によって、図示のように、管20内の第5液体L5の液柱と第2容器30内の第5液体L5および第2液体L2の混合液体とを連続させることができる。そのため、第1液体L1を管20の一端の開口から容易に離脱させることができる。なお、図10(c)では、離脱した第1液体L1が液滴を形成している例を示している。
【0158】
4.3.作用効果
本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1は、第1容器10に収容された状態、並びに各吸引工程および各吐出工程において、第2液体L2または第5液体L5によって封じられた状態であるので、気相(大気等)に接触しにくい。すなわち、本実施形態の分注方法によれば、第1液体L1は、第1容器10から第2容器30に分注される際には、第2液体L2または第5液体L5に接する状態で取り扱われ大気等に接触しにくい。そのため、第1液体L1から構成成分が気相に蒸発することや、気相から第1液体L1へ水などの他の物質が混入することが抑制される。これにより、第1液体L1の溶媒および溶質の濃度の変動が小さく抑えられ、正確な分注を行うことができる。
【0159】
また、本実施形態の分注方法によれば、第2吐出工程で、第1液体L1が、第5液体L5および第2液体L2の混合液体中に吐出される。そのため、第2吐出工程において、管20内または管20の一端付近に第1液体L1が残存しにくい。したがって精度よく第1液体L1を第1容器10から第2容器30へと分注することができる。
【0160】
5.その他の実施形態
上述の各実施形態において、第2液体L2および第5液体L5の少なくとも一方に導電性を有してもよい。
【0161】
第2液体L2または第5液体L5に導電性を付与する方法としては、添加剤を添加することが挙げられる。このような添加剤としては、カルビノール変性オイルやトリメチルシロキシケイ酸とシクロペンタシロキサンの混合物等がある。添加剤の好ましい添加量としては、第2液体L2または第5液体L5の電気抵抗率が、1012[Ω・m]以下となる程度である。この場合の添加剤の添加量は3%以下である。
【0162】
第2液体L2および第5液体L5の少なくとも一方が導電性を有すると、第1液体L1、第3液体L3、第4液体L4、管20、第1容器10、第3容器12、および第2容器30が帯電しにくくなるので、より安定した分注方法とすることができる。
【0163】
特に、各実施形態において、ナノリットルの規模の液体を扱う場合には、第2液体L2および第5液体L5の少なくとも一方が帯電していると、各種の不具合が生じる可能性が高くなる。不具合としては、具体的には、各工程における吸引、吐出動作の際、および管20の移動の際に、液体が管20から離脱しにくかったり、液体が容器から飛び出したりすることが挙げられる。しかし、第2液体L2および第5液体L5の少なくとも一方に導電性を付与すれば、このような不具合を生じにくくすることができる。
【0164】
上記第4実施形態において、第5液体L5に導電性を付与すれば、第1液体L1および第2液体L2の少なくとも一方が帯電した場合に、各吐出工程において、管20の先端付近で第1液体L1および第2液体L2の少なくとも一方が、第5液体L5との間の静電的な引力または斥力によって、予期せぬ挙動を示すことを抑制することができる。そのため、より確実に第1液体L1を第1容器10から第2容器30へと分注することができる。
【0165】
上記第1実施形態ないし第4実施形態において、第2液体L2に導電性を付与すれば、各液体が帯電した場合に、各吐出工程において、管20の先端付近で少なくとも第1液体L1が、第2容器30またはその内容物との間の静電的な引力または斥力によって、予期せぬ挙動を示すことを抑制することができる。そのためより確実に第1液体L1を第2容器30へと分注することができる。
【0166】
なお、本発明の分注方法は、上述の各実施形態、変形実施形態、およびその他の実施形態のそれぞれの一部または全部の工程を互いに適宜組み合わせてもよいことは容易に理解されるであろう。
【0167】
6.分注装置
上記各実施形態の分注方法は、作業者が行ってもよいが、以下に説明する分注装置を用いて行うことができる。以下に分注装置100を例示する。図11は、分注装置100を模式的に示す図である。分注装置100は、管20、支持体50、ポンプ60、ステージ70、移動機構80および制御手段90を有する。
【0168】
管20は、上記実施形態で述べた管20であり、一端が支持体50から下方に向かって突出するように、支持体50に支持されている。管20の他端側には、ポンプ60が接続されている。
【0169】
支持体50は、管20を支持する。支持体50は、例えば、管20を取り替えることのできる機構を有してもよい。支持体50は、移動機構80によって移動されることができる。
【0170】
ポンプ60は、管20内を他端側から吸引することと、管20内に他端側から圧力を印加することとができる。ポンプ60の吸引および加圧の動作は、制御手段90によって制御されることができる。
【0171】
ステージ70は、該ステージ70上に容器等を載置することができる。図11の例では、第1容器10および第2容器30がステージ70上に載置されている。ステージ70は、移動機構80によって移動されることができる。
【0172】
移動機構80は、支持体50およびステージ70の相対的な位置関係を変化させる機構である。図示の例では、移動機構80は、支持体50およびステージ70の両者に設けられているが、いずれか一方に設けられてもよい。移動機構80は、支持体50およびステージ70の相対的な位置関係を変化させて、管20を各容器間で移動させること、および各容器内の管20の一端の位置を変化させることができる。
【0173】
制御手段90は、ポンプ60および移動機構80の動作を制御することができる。制御手段90は、例えば、電子計算機(パーソナルコンピューター等)で構成することができる。制御手段90は、上述した分注方法に従ってポンプ60および移動機構80の動作を制御するプログラムを備えることができる。
【0174】
以上のような構成により、分注装置100によれば、上記実施形態の分注方法を行うことができ、例えば、第1容器10から第2容器30へ第1液体L1を分注することができる。
【0175】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0176】
10…第1容器、12…第3容器、20…管、22…液溜、30…第2容器、50…支持体、60…ポンプ、70…ステージ、80…移動機構、90…制御手段、100…分注装置、L1…第1液体、L2…第2液体、L3…第3液体、L4…第4液体、L5…第5液体、I12,I32…界面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器から、管を用いて前記第1液体を第2容器に分注する分注方法であって、
前記第2液体を前記管の一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、
前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、
前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記第2容器における前記第2液体中に吐出する第2吐出工程と、
前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第3吐出工程と、
を含む、分注方法。
【請求項2】
第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器、並びに、前記第2液体および前記第2液体と混和せず前記第2液体よりも比重の大きい第3液体が収容された第3容器から、管を用いて前記第1液体および前記第3液体を第2容器に分注する分注方法であって、
前記第2液体を前記管の一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、
前記第3容器に収容された前記第3液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第4吸引工程と、
前記第3容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第5吸引工程と、
前記第5吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、
前記第4吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第3液体を前記第2容器に吐出する第2吐出工程と、
前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の一部を前記第2容器に吐出する第3吐出工程と、
前記第3吐出工程で管の内部に残された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第4吐出工程と、
前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記第2容器に吐出する第5吐出工程と、
前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第6吐出工程と、
を含む、分注方法。
【請求項3】
第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器、および、前記第2液体および前記第2液体と混和せず前記第2液体よりも比重の大きい第3液体が収容された第3容器から、一端が開放され他端に液溜が接続された管を用いて、前記第1液体および前記第3液体を第2容器に分注する分注方法であって、
前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、
前記第3容器に収容された前記第3液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第4吸引工程と、
前記第3容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第5吸引工程と、
前記管の内部に前記第5吸引工程で吸引された前記第2液体の少なくとも一部が残るように、前記液溜に前記管の内部の各液体を吸引して、前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体、および前記第4吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第3液体を、前記液溜内で混合させて第4液体とし、かつ、前記第1吸引工程、前記第3吸引工程、および前記第5吸引工程で吸引された前記第2液体を混合させる混合工程と、
前記管の内部に残された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、
前記第4液体を前記第2容器に吐出する第2吐出工程と、
前記混合工程で混合された前記第2液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第3吐出工程と、
を含む、分注方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記第2容器にはあらかじめ前記第2液体が収容されている、分注方法。
【請求項5】
第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器から、管を用いて前記第1液体を、前記第1液体と混和せず前記第2液体と混和する第3液体が収容された第2容器に管を用いて前記第1液体を分注する分注方法であって、
前記第2液体または前記第3液体を前記管の一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、
前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、
前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記第2容器に吐出する第2吐出工程と、
前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体または前記第3液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第11吐出工程と、
を含む、分注方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記第3液体は、導電性を有する、分注方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記第2液体は、導電性を有する、分注方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
前記管は、少なくとも内壁が疎水性を有する、分注方法。
【請求項1】
第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器から、管を用いて前記第1液体を第2容器に分注する分注方法であって、
前記第2液体を前記管の一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、
前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、
前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記第2容器における前記第2液体中に吐出する第2吐出工程と、
前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第3吐出工程と、
を含む、分注方法。
【請求項2】
第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器、並びに、前記第2液体および前記第2液体と混和せず前記第2液体よりも比重の大きい第3液体が収容された第3容器から、管を用いて前記第1液体および前記第3液体を第2容器に分注する分注方法であって、
前記第2液体を前記管の一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、
前記第3容器に収容された前記第3液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第4吸引工程と、
前記第3容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第5吸引工程と、
前記第5吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、
前記第4吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第3液体を前記第2容器に吐出する第2吐出工程と、
前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の一部を前記第2容器に吐出する第3吐出工程と、
前記第3吐出工程で管の内部に残された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第4吐出工程と、
前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記第2容器に吐出する第5吐出工程と、
前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第6吐出工程と、
を含む、分注方法。
【請求項3】
第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器、および、前記第2液体および前記第2液体と混和せず前記第2液体よりも比重の大きい第3液体が収容された第3容器から、一端が開放され他端に液溜が接続された管を用いて、前記第1液体および前記第3液体を第2容器に分注する分注方法であって、
前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、
前記第3容器に収容された前記第3液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第4吸引工程と、
前記第3容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第5吸引工程と、
前記管の内部に前記第5吸引工程で吸引された前記第2液体の少なくとも一部が残るように、前記液溜に前記管の内部の各液体を吸引して、前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体、および前記第4吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第3液体を、前記液溜内で混合させて第4液体とし、かつ、前記第1吸引工程、前記第3吸引工程、および前記第5吸引工程で吸引された前記第2液体を混合させる混合工程と、
前記管の内部に残された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、
前記第4液体を前記第2容器に吐出する第2吐出工程と、
前記混合工程で混合された前記第2液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第3吐出工程と、
を含む、分注方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記第2容器にはあらかじめ前記第2液体が収容されている、分注方法。
【請求項5】
第1液体および前記第1液体と混和せず前記第1液体よりも比重の小さい第2液体が収容された第1容器から、管を用いて前記第1液体を、前記第1液体と混和せず前記第2液体と混和する第3液体が収容された第2容器に管を用いて前記第1液体を分注する分注方法であって、
前記第2液体または前記第3液体を前記管の一端から前記管の内部に吸引する第1吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第1液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第2吸引工程と、
前記第1容器に収容された前記第2液体を前記管の前記一端から前記管の内部に吸引する第3吸引工程と、
前記第3吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体を前記第2容器に吐出する第1吐出工程と、
前記第2吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第1液体を前記第2容器に吐出する第2吐出工程と、
前記第1吸引工程で前記管の内部に吸引された前記第2液体または前記第3液体の少なくとも一部を前記第2容器に吐出する第11吐出工程と、
を含む、分注方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記第3液体は、導電性を有する、分注方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記第2液体は、導電性を有する、分注方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
前記管は、少なくとも内壁が疎水性を有する、分注方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−7579(P2013−7579A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138674(P2011−138674)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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