説明

分注機における分注用チップ取外し機構

【課題】本発明は、1個のみの駆動モータを用いて分注動作とディスポーザブルチップの取り外し動作の両方を行うことを目的とする。
【解決手段】本発明による分注機における分注用チップ取外し機構は、チップ取外し用プレート(14)に形成された保持孔(70)の孔径は、ディスポーザブルチップ(17)の外径よりも小であり、このチップ取外し用プレート(14)が各ガイドシャフト(50,51)によって押されることにより、このチップ取外し用プレート(14)を押し下げることにより、ディスポーザブルチップ(17)が各ノズル(18)から取り外される構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注機における分注用チップ取外し機構に関し、特に、1個のみの駆動モータを用いて分注動作とディスポーザブルチップの取り外し動作の両方を行うための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の分注機としては、例えば、特許文献1等に開示されている機構を挙げることができる。
すなわち、図4及び図5において符号1で示されるものはケース体であり、このケース体1の天板2にはユニット昇降用モータ3が設けられ、この天板2の中央位置には、前記ユニット昇降用モータ3からプーリ4、5及びタイミングベルト6を介して回転駆動されるボールネジ7が設けられている。
【0003】
前記ケース体1内には、前記ボールネジ7及びユニット昇降用ガイド8を介して昇降自在な分注ユニット9が配設され、この分注ユニット9は、分注用ピストン10を有するピストン保持体11と、前記分注用ピストン10と組合せられる各シリンダ(図示せず)を内設したシリンダブロック12と、前記シリンダブロック12を直動ガイドするためのガイド13と、前記シリンダブロック12の側部及び下方位置でかつコ字型に形成されたチップ取外し用プレート14と、前記分注ユニット9のフレーム9Aの下部側部15と前記チップ取外し用プレート14との間に設けられ、前記チップ取外し用プレート14を常時天板2側に付勢するためのスプリング16と、前記チップ取外し用プレート14に設けられディスポーザブルチップ17を着脱自在に有するノズル18と、前記フレーム9Aの支持板19に設けられた分注用ピストン駆動用モータ20と、前記支持板19及びシリンダブロック12の軸受体21によって回転自在に支持され、かつ前記ピストン保持体11と螺合する分注用ボールネジ22と、前記分注用ピストン駆動用モータ20と前記分注用ボールネジ22とを連結するための一対の連結プーリ23、24及びタイミングベルト25と、から構成されている。
【0004】
前記チップ取外し用プレート14の両側位置には、固定配置のチップ取外し用ソレノイド30、31が配設され、各チップ取外し用ソレノイド30、31のプローブ30a、31aが出没自在に構成されている。
【0005】
前述の構成において、図示しない制御部を介してユニット昇降用モータ3の駆動により、ボールネジ7を介して分注ユニット9の昇降が行われ、前記分注用ピストン駆動用モータ20の駆動によってピストン保持体11を介して分注用ピストン10の昇降が行われ、各ディスポーザブルチップ17からの吸引及び吐出を行うことができる。
【0006】
次に、前記各ディスポーザブルチップ17をノズル18から取り外す場合、前記制御部からの外部指令により、前記チップ取外し用ソレノイド31の各プローブ30a、31aを図4のように各々突出させると、前記チップ取外し用プレート14と係合する状態となり、この状態で、分注ユニット9と共にチップ取外し用プレート14を上昇させると、チップ取外し用プレート14が各プローブ30a、31aと当接する。
【0007】
前述の状態で、さらに、分注ユニット9と共にチップ取外し用プレート14を上昇させようとすると、チップ取外し用プレート14は、前記スプリング16のばね力に抗して前記ノズル18及びディスポーザブルチップ17に対して相対的に下降し、その結果、ディスポーザブルチップ17はチップ取外し用プレート14によってノズル18から下方へ押し下げられ、ノズル18から外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−194671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の分注機は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、分注機として、2個の駆動モータと2個のアクチュエータを必要とし、構造の複雑化、大型化、コストアップ及びメンテナンスの困難化等となっていた。
また、ディスポーザブルチップの取り外しのためには、最低でも1個の駆動モータと1個のアクチュエータを必要としていた。
また、チップ取外し用ソレノイドの取り付け位置は、固定された所定の位置となり、水平及び上下方向とも決まった位置でしかディスポーザブルチップの取り外しができず、装置の設計変更等に大きい制約となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による分注機における分注用チップ取外し機構は、断面コ字型をなし一対の側板及び天板で形成されるケース体と、前記天板に設けられ1個のみの駆動モータにより駆動されるボールネジと、前記ボールネジに螺合して昇降するピストン保持体と、前記ピストン保持体に設けられた複数の分注用ピストンと、前記ケース体の下部内に設けられ前記各分注用ピストンと係合する複数のシリンダを有するシリンダブロックと、前記天板及びピストン保持体の側部を貫通すると共に前記シリンダブロックの両側を貫通する複数のガイドシャフトと、前記天板の上面に設けられ前記各ガイドシャフトを前記天板の外側へ向けて常時付勢するためのスプリングと、前記各ガイドシャフトに固定され前記ピストン保持体とシリンダブロックとの間に位置する係合片と、前記各ガイドシャフトの下部に設けられたチップ取外し用プレートと、前記チップ取外し用プレートに形成された複数の保持孔内に保持され前記各シリンダに接続されたノズルと、前記各ノズルの下端に着脱自在に設けられたディスポーザブルチップと、を備え、前記保持孔の孔径は、前記ディスポーザブルチップの外径よりも小であり、前記分注用ピストン降下による分注動作後に前記チップ取外し用プレートが前記ノズルと共にさらに降下することにより、前記保持孔の孔縁が前記ディスポーザブルチップの開口縁を押し、前記各ディスポーザブルチップを前記ノズルから取り外す構成であり、また、前記天板から作動自在に突出する突出軸部の頂部には鍔部が設けられ、前記突出軸部の外周に設けられた前記スプリングは、前記鍔部と天板との間に位置している構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明による分注機構における分注用チップ取外し用機構は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、断面コ字型をなし一対の側板及び天板で形成されるケース体と、前記天板に設けられ1個のみの駆動モータにより駆動されるボールネジと、前記ボールネジに螺合して昇降するピストン保持体と、前記ピストン保持体に設けられた複数の分注用ピストンと、前記ケース体の下部内に設けられ前記各分注用ピストンと係合する複数のシリンダを有するシリンダブロックと、前記天板及びピストン保持体の側部を貫通すると共に前記シリンダブロックの両側を貫通する複数のガイドシャフトと、前記天板の上面に設けられ前記各ガイドシャフトを前記天板の外側へ向けて常時付勢するためのスプリングと、前記各ガイドシャフトに固定され前記ピストン保持体とシリンダブロックとの間に位置する係合片と、前記各ガイドシャフトの下部に設けられたチップ取外し用プレートと、前記チップ取外し用プレートに形成された複数の保持孔内に保持され前記各シリンダに接続されたノズルと、前記各ノズルの下端に着脱自在に設けられたディスポーザブルチップと、を備え、前記保持孔の孔径は、前記ディスポーザブルチップの外径よりも小であり、前記分注用ピストン降下による分注動作後に前記チップ取外し用プレートが前記ノズルと共にさらに降下することにより、前記保持孔の孔縁が前記ディスポーザブルチップの開口縁を押し、前記ディスポーザブルチップを前記ノズルから除去することにより、1個のみの駆動モータにより、分注動作とディスポーザブルチップの取り外し動作を兼ねて行うことができ、小型化、簡略化、メンテナンスの容易化等に寄与できる。
また、前記天板から作動自在に突出する突出軸部の頂部には鍔部が設けられ、前記突出軸部の外周に設けられた前記スプリングは、前記鍔部と天板との間に位置していることにより、ガイドシャフト及びチップ取外し用プレートに対する付勢を極めて容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による分注機における分注用チップ取外し機構を示す正面断面図である。
【図2】図1の動作開始を示す正面図である。
【図3】図2のディスポーザブルチップを取り外した状態を示す正面断面図である。
【図4】従来の分注機の構造を示す構成図である。
【図5】図4の一部断面付き左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、1個のみの駆動モータを用いて分注動作とディスポーザブルチップの取り外し動作の両方を行うようにした分注機における分注用チップ取外し機構を提供することを目的とする。
【実施例】
【0014】
以下、図面と共に本発明による分注機における分注用チップ取外し機構の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1は、本発明における分注用機9を示す断面構成図で、分注時で分注用ピストン10及びピストン保持体11が最も上昇している上昇端に位置している状態を示している。
【0015】
図1において、符号1で示されるものはケース体であり、このケース体1は、天板2及び一対の側板1Aからなり、全体形状が下部開放型の箱型で構成されている。
前記天板2上には、第1、第2タイミングプーリ40、41が第1、第2軸42、43を介して回転自在に設けられ、各タイミングプーリ40、41はタイミングベルト44を介して互いに連動するように構成されている。
【0016】
前記第1軸42にはサポートユニット45を介してボールネジ46に接続され、このボールネジ46は、前記ケース体1内でガイド47を介して昇降自在に設けられたピストン保持体11のボールネジナット部11Aに螺合し、このピストン保持体11には複数の分注用ピストン10が所定間隔で設けられている。
【0017】
前記第2軸43には、1個のみの駆動モータ20が接続され、この駆動モータ20により前記各タイミングプーリ40、41及びタイミングベルト44を介して前記ボールネジ46を駆動することにより、前記各分注用ピストン10の昇降を行うことができるように構成されている。
【0018】
前記ピストン保持体11の下方位置には、前記分注用ピストン10が出入り自在に係合する複数のシリンダ12Aが設けられたシリンダブロック12が固定されている。
【0019】
前記天板2及びピストン保持体11並びにシリンダブロック12の両側位置を貫通した各ガイドシャフト50、51の上端の突出軸部50a、51aの頂部52、53には、鍔部54、55が設けられ、天板2の上面2Aと前記鍔部54、55との間の突出軸部50a、51aの外周位置にはスプリング16が介装されている。
従って、前記各ガイドシャフト50、51は、前記スプリング16のバネ力によって常時上方へ付勢されている。
【0020】
前記シリンダブロック12の下面には、ノズル18を有するノズル抑え60がブッシュ61を介して固定されており、このノズル抑え60の下面には前記各ガイドシャフト50、51の下端にボルト62、63を介して固定されたチップ取外し用プレート14が配設されている。
【0021】
前記チップ取外し用プレート14に形成された各保持孔70には、前記各ノズル18が貫通し、この各ノズル18の下端にはディスポーザブルチップ17が着脱自在に設けられている。
前記保持孔70の孔径は、前記ディスポーザブルチップ17の外径よりも小となるように構成されている。尚、前記ピストン保持体11の上面には、ピストン保持体11の補強用としてL型の連結板11Dが設けられている。
【0022】
次に、動作について説明する。まず、図1の状態は、各分注用ピストン10が最も上昇した状態で、各シリンダ12A内に検体である液体が所定量吸引された状態である。
【0023】
前述の状態で、駆動モータ20を駆動すると、各タイミングプーリ40、41及びタイミングベルト44を介してボールネジ46が回転し、ピストン保持体11を介して各分注用ピストン10が降下し、各シリンダ12A内の液体が各ディスポーザブルチップ17を介して分析装置等の受け体(図示せず)に分注される。
尚、この時の各分注用ピストン10の移動ストロークは、分注エリアAであり、図2の位置となる。
【0024】
次に、図2の状態における各分注用ピストン10の位置は、原点位置であり、この状態で、さらに、駆動モータ20を駆動すると、図2のチップ取外し用エリアB分だけピストン保持体11及び分注用ピストン10が降下し、前記ピストン保持体11の各側部11B、11Cが図12のように、各ガイドシャフト50、51に固定されピストン保持体11にシリンダブロック12の間に位置する各係合片80、81に当接する。
【0025】
前述の状態で、さらに、駆動モータ20を駆動すると、ピストン保持体11は各係合片80、81と当接しているため、各ガイドシャフト50、51が下方へ押され、図3で示されるように、前記チップ取外し用プレート14が前記シリンダブロック12の下端から離れる。
【0026】
前述の動作において、前記チップ取外し用プレート14の各保持孔70の孔径が、前記ディスポーザブルチップの外径よりも小であるため、この保持孔70の孔縁(図示せず)が前記ディスポーザブルチップ17の開口縁17aを下方へ押し、ディスポーザブルチップ17が前記ノズル18から取り外される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明による分注機における分注用チップ取外し機構は、DNA等の試液に限らず、一般の薬品及び食品等の特性試験の液体の分注にも適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 ケース体
1A 側板
2 天板
2A 上面
9 分注機
10 分注用ピストン
11 ピストン保持体
11A ボールネジナット部
11B、11C 側部
12 シリンダブロック
12A シリンダ
17 ディスポーザブルチップ
18 ノズル
20 駆動モータ
40 第1タイミングプーリ
41 第2タイミングプーリ
42、43 第1、第2軸
44 タイミングベルト
45 サポートユニット
46 ボールネジ
50、51 ガイドシャフト
50a、51a 突出軸部
52、53 頂部
54、55 鍔部
60 ノズル抑え
61 ブッシュ
62、63 ボルト
70 保持孔
80、81 係合片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面コ字型をなし一対の側板(1A)及び天板(2)で形成されるケース体(1)と、前記天板(2)に設けられ1個のみの駆動モータ(20)により駆動されるボールネジ(46)と、前記ボールネジ(46)に螺合して昇降するピストン保持体(11)と、前記ピストン保持体(11)に設けられた複数の分注用ピストン(10)と、前記ケース体(1)の下部内に設けられ前記各分注用ピストン(10)と係合する複数のシリンダ(12A)を有するシリンダブロック(12)と、前記天板(2)及びピストン保持体(11)の側部(11B,11C)を貫通すると共に前記シリンダブロック(12)の両側を貫通する複数のガイドシャフト(50,51)と、前記天板(2)の上面(2A)に設けられ前記各ガイドシャフト(50,51)を前記天板(2)の外側へ向けて常時付勢するためのスプリング(16)と、前記各ガイドシャフト(50,51)に固定され前記ピストン保持体(11)とシリンダブロック(12)との間に位置する係合片(80,81)と、前記各ガイドシャフト(50,51)の下部に設けられたチップ取外し用プレート(14)と、前記チップ取外し用プレート(14)に形成された複数の保持孔(70)内に保持され前記各シリンダ(12A)に接続されたノズル(18)と、前記各ノズル(18)の下端に着脱自在に設けられたディスポーザブルチップ(17)と、を備え、
前記保持孔(70)の孔径は、前記ディスポーザブルチップ(17)の外径よりも小であり、前記分注用ピストン(10)降下による分注動作後に前記チップ取外し用プレート(14)が前記ノズル(18)と共にさらに降下することにより、前記保持孔(70)の孔縁が前記ディスポーザブルチップ(17)の開口縁(17a)を押し、前記各ディスポーザブルチップ(17)を前記ノズル(18)から取り外すことを特徴とする分注機における分注用チップ取外し機構。
【請求項2】
前記天板(2)から作動自在に突出する突出軸部(50a,51a)の頂部(52,53)には鍔部(54,55)が設けられ、前記突出軸部(50a,51a)の外周に設けられた前記スプリング(16)は、前記鍔部(54,55)と天板(2)との間に位置していることを特徴とする請求項1記載の分注機における分注用チップ取外し機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate