説明

分注用ノズルチップ

【課題】分注用ノズルチップどうしが筍状に二重刺しになるのを防止するとともに、液体の吸引・吐出に於ける液体の流路抵抗を少なくし、制御精度、分注精度を向上させた分注用ノズルチップを実現する。
【解決手段】ノズルチップ2の上部3の内径寸法は胴体部4の下部の外径より小さく、ノズルチップ2の二重刺しを起さない構造となっている。ノズルチップ2の胴体部4と先端開口部5の境界部分から先端開口部5はノズルチップ2の外部方向に向かって湾曲する上部曲面11が形成され、上部曲面11に続いて内部方向に向かって湾曲する下部曲面12が形成されている。上部曲面11と下部曲面12との境界部13の接線とノズルチップ2の中心軸線とのなす角度が45°から20°となるように構成されている。そして、曲面12の終了点からは先端部に向けて直線状に延びる面となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿などの検体や水、試薬などの液体の分注用ノズルチップに関する。
【背景技術】
【0002】
分注用のノズルチップは分注装置との結合し、液体を吸引・吐出する目的で使用される物で、その形状は、胴体部が円筒状で、下部先端部は円錐台形状で先細りになっているのが一般的である。
【0003】
このような形状では、ノズルチップどうしが筍状に二重刺しになる場合があり、ノズルチップの自動装填の妨げになる。これを防止するため、特許文献1に記載されているように、ストッパ部の外径を開口の内径より大としたものがある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−38966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、血液、尿等の試料の分析においては、分析精度の向上が求められており、正確な量の液体試料や試薬を吸引吐出することが必要となっている。
【0006】
上述したように、分注用のノズルチップの下部先端部は、円錐台形状で先細りとなっている。このため、流路抵抗による液体の乱れが発生し易く、これが、正確な量の液体試料等を吸引吐出することの阻害要因となると考えられる。
【0007】
従来の技術にあっては、分注用ノズルチップどうしが筍状に二重刺しになるのを防止することは可能であるが、ノズルチップの下部先端部の流路抵抗について考察し、検討したものはなかった。
【0008】
本発明の目的は、分注用ノズルチップどうしが筍状に二重刺しになるのを防止するとともに、液体の吸引・吐出に於ける液体の流路抵抗を少なくし、制御精度、分注精度を向上させた分注用ノズルチップを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の分注用ノズルチップは、分注装置が挿入される開口部を有する上端部と、上端部に結合し、液体試料・液体試薬を収容する胴体部と、胴体部に結合し、液体試料・液体試薬が吸引吐出される開口部を有する先端部とを備える。そして、上端部の内径は、胴体部の外径より小であり、先端部の内面は、胴体部との境界部から、分注用ノズルチップの外部方向に向かって湾曲する上部曲面と、この上部曲面に続いて上記分注用ノズルチップの内部方向に向かって湾曲する下部曲面とが形成されている。
【0010】
また、本発明の分注用ノズルチップは、上記上端部の内径は、上記胴体部の外径より小であり、上記先端部の内面は、少なくとも上記胴体部との境界部から、液体試料・液体試薬が吸引吐出される開口部に向かって延びる複数の整流稜が形成されている。
【0011】
また、本発明の分注用ノズルチップは、上記上端部は、上記分注装置の外径より大の内径を有するカス逃げ部と、このカス逃げ部の内径より小の内径を有し、上記分注装置が挿入され固定される勘合部とを有し、上記上端部の内径は、上記胴体部の外径より小である。
【発明の効果】
【0012】
分注用ノズルチップどうしが筍状に二重刺しになるのを防止することができるとともに、液体の吸引・吐出に於ける液体の流路抵抗を少なくし、制御精度、分注精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態であるノズルチップ2を、分注装置のノズルチップ装着部1に装着し、液体2−1を吸引した状態を示す図である。また、図2は、本発明の一実施形態であるノズルチップ2の断面図である。そして、図3は、本発明の一実施形態であるノズルチップ2の上端部の断面図である。
【0015】
図1において、本発明の一実施形態であるノズルチップ2は、分注装置ノズルチップ装着部1が挿入され、固定される上端部3と、液体を吸引、保持する胴体部4と、液体を吸引吐出する先端開口部5とを備える。
【0016】
分注装置ノズルチップ装着部1のノズルチップ2への挿入に対して、図3に示すように、上端部3は、カス逃げ部6が形成された構造となっている。
【0017】
ノズルチップ2の射出成型時に発生するプラスチックカス9は、射出成型時に使用される材料注入口8付近に付着することが多い。
【0018】
このため、分注装置ノズルチップ装着部1が上端部3に挿入される際に、このノズルチップ装着部1により削られると、勘合部7において、ノズルチップ装着部1とノズルチップ2の内面との間で挟まれる。その場合、ノズルチップ2内部の気密性が損なわれてしまうばかりか、ノズルチップ装着部1のノズルチップ2への固定性も低下することになる。
【0019】
このため、気密性、固定性を確保するため、カス逃げ部6が形成されている。このカス逃げ部6は、ノズルチップ装着部1の外径寸法より、例えば、0.2mmだけ大きい内径を有しており、ノズルチップ装着部1がカス9を勘合部7に移動させることを抑制することができる。このカス逃げ部6により、ノズルチップ装着部1とノズルチップ2との勘合性の低下を防止し、吸引・吐出時の気密性の確保が可能となる。
【0020】
図4は、本発明の一実施形態であるノズルチップ2の胴体部4の下部と先端開口部5との境界部分における内部形状構成の概念図である。
【0021】
図4において、ノズルチップ2の胴体部4と先端開口部5の境界部分から先端開口部5は、ノズルチップ2の外部方向に向かって湾曲する上部曲面11が形成され、この上部曲面11に続いて、ノズルチップ2の内部方向に湾曲する下部曲面12が形成されている。そして、上部曲面11と下部曲面12との境界部13(曲面が外部方向に向かって湾曲する形状から内部方向に向かって湾曲する形状に変化する点)の接線とノズルチップ2の中心軸線とのなす角度が45°から20°となるように構成されている。
【0022】
そして、曲面12の終了点からは、先端部に向けて直線状となっている。
【0023】
この構成により、先端開口部5の内面形状は、段差の無い曲面と直線状に延びる面から形成され、図1に示した液体2−1の吸引・吐出における液体の流れの乱れを防止する事が可能となり、分注精度の向上を図ることができる。
【0024】
ノズルチップ2の全長と先端開口部5の長さ、内径が規定されているとき、図示したように、境界部13とノズルチップ2の中心軸線とのなす角度を約45°とすれば、胴体部4の長さを最大にでき、吸引可能液体量を最大にすることができる。
【0025】
なお、曲面11、12の形状は、円弧等の2次曲線、指数関数、流線型等が適用できる。
【0026】
また、図1のノズルチップ胴体部4の内径寸法を可能な限り同一寸法(傾斜を少なくする)とすることで、図1に示した液体2−1の体積を外部より液面高さを計測することで測定可能となる。
【0027】
さらに、図1に示したノズルチップ2の上部3の内径寸法は、分注ノズルチップ胴体部4の下部の外径より小さい。これにより、分注ノズルチップ2の二重刺しを起さない構造となっている。
【0028】
図5は、ノズルチップ2の胴体部4の下部と先端開口部5の断面図である。また、図6は、胴体部4と先端開口部5の内部構造を示す断面図である。
【0029】
図1に示したノズルチップ2の内面に図5に示す整流稜15を形成する事により、図1の液体2−1の吸引・吐出に於ける液体の流れの乱れをより防止することが可能である。
【0030】
整流稜15は、胴体部4の終了部分から先端開口部5の開口端部付近まで形成されている。図示した例では、整流稜15は4つ形成され、等間隔に形成されている。そして、4つの整流稜15は、ノズルチップ2の中心軸上では、互いに接触することはない。
【0031】
また、図6の曲面接合部(胴体部4と先端開口部5との接合部)の厚み17と、3個以上から構成される整流稜15の厚み18及び分注開口部(先端開口部5の直線状部)の厚み20と整流稜15を調整することにより、図6の同一径開口部位21において、開口径を、図1の分注チップノズル先端開口部5の先端内径19と同一の寸法に近似する事により、現在検出ができなかった液体に混入した、微少の異物の検出が可能となる。
【0032】
つまり、整流稜15を形成することにより、ノズルチップ2内に混入した異物が整流稜15により留められ、吸引圧力が変動することにより、異物混入の検出が可能となる。
【0033】
図6の同一径開口部位21内の整流稜15の総断面積はノズルチップ2の断面内径面積の30%以上であることが望ましく、これを満足すれば、整流稜の数は4個に限ることはない。
【0034】
また、整流稜15の高さは、先端部5の吸引吐出用開口部の径以上とすることができる。
【0035】
以上のように、本発明の分注用ノズルチップ2は、上端部3の内径寸法を分注ノズルチップ胴体部の下部の外径寸法より小さくする事により分注ノズルチップ2の二重刺しを起さない構造であるとともに、分注胴体部4と分注開口先端部5との結合面を曲面結合とし液体の吸引・吐出時に発生する液体の流れの乱れを無くし、液体の流れを整え安定させる事が可能となる。
【0036】
また、分注装置のノズルチップ装着部1が挿入される上端部3にカス逃げ部6を設け、ノズルチップ製作時に於ける湯口部に残るカスによる密着性低下を無くすことができる。
【0037】
また、胴体部4の内径寸法をノズルチップ製作において可能な限り円筒状にし、外部より液体の液面位置を検出することで入っている液体の体積が検出可能となる。
【0038】
さらに、分注開口先端部の内面に整流稜15を設けた事により、液体の流れの乱れを整えるとともに、整流稜部15の内径を分注開口と同一寸法とすることで液体に混入している異物を吸引詰りとして検出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態であるノズルチップをノズルチップ装着部に装着した状態を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態であるノズルチップの断面図である。
【図3】本発明の一実施形態であるノズルチップの上端部の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態であるノズルチップの胴体部の下部と先端開口部との境界部分における内部形状構成の概念図である。
【図5】本発明の一実施形態であるノズルチップの胴体部の下部と先端開口部の断面図である。
【図6】胴体部と先端開口部の内部構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・分注装置チップ装着部、2・・・ノズルチップ、2−1・・・液体、3・・・ノズルチップ上端部、4・・・ノズルチップ胴体部、5・・・ノズルチップ先端開口部、6・・・カス逃げ部、7・・・勘合部、8・・・材料注入口、9・・・カス、11・・・上部曲面、12・・・下部曲面、13・・・境界部、15・・・整流稜、17、20・・・ノズルチップ厚み、19・・・先端開口径、21・・・同一径開口部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注装置により液体試料や液体試薬を分注するための分注用ノズルチップにおいて、
上記分注装置が挿入される開口部を有する上端部と、
上記上端部に結合し、液体試料・液体試薬を収容する胴体部と、
上記胴体部に結合し、液体試料・液体試薬が吸引吐出される開口部を有する先端部と、
を備え、上記上端部の内径は、上記胴体部の外径より小であり、上記先端部の内面は、上記胴体部との境界部から、上記分注用ノズルチップの外部方向に向かって湾曲する上部曲面と、この上部曲面に続いて上記分注用ノズルチップの内部方向に向かって湾曲する下部曲面とが形成されていることを特徴とする分注用ノズルチップ。
【請求項2】
分注装置により液体試料や液体試薬を分注するための分注用ノズルチップにおいて、
上記分注装置が挿入される開口部を有する上端部と、
上記上端部に結合し、液体試料・液体試薬を収容する胴体部と、
上記胴体部に結合し、液体試料・液体試薬が吸引吐出される開口部を有する先端部と、
を備え、上記上端部の内径は、上記胴体部の外径より小であり、上記先端部の内面は、少なくとも上記胴体部との境界部から、液体試料・液体試薬が吸引吐出される開口部に向かって延びる複数の整流稜が形成されていることを特徴とする分注用ノズルチップ。
【請求項3】
分注装置により液体試料や液体試薬を分注するための分注用ノズルチップにおいて、
上記分注装置が挿入される開口部を有する上端部と、
上記上端部に結合し、液体試料・液体試薬を収容する胴体部と、
上記胴体部に結合し、液体試料・液体試薬が吸引吐出される開口部を有する先端部と、
を備え、上記上端部は、上記分注装置の外径より大の内径を有するカス逃げ部と、このカス逃げ部の内径より小の内径を有し、上記分注装置が挿入され固定される勘合部とを有し、上記上端部の内径は、上記胴体部の外径より小であることを特徴とする分注用ノズルチップ。
【請求項4】
分注装置により液体試料や液体試薬を分注するための分注用ノズルチップにおいて、
上記分注装置が挿入される開口部を有する上端部と、
上記上端部に結合し、液体試料・液体試薬を収容する胴体部と、
上記胴体部に結合し、液体試料・液体試薬が吸引吐出される開口部を有する先端部と、
を備え、上記上端部は、上記分注装置の外径より大の内径を有するカス逃げ部と、このカス逃げ部の内径より小の内径を有し、上記分注装置が挿入され固定される勘合部とを有し、上記上端部の内径は、上記胴体部の外径より小であり、上記先端部の内面は、上記胴体部との境界部から、上記分注用ノズルチップの外部方向に向かって湾曲する上部曲面と、この上部曲面に続いて上記分注用ノズルチップの内部方向に向かって湾曲する下部曲面とが形成されているとともに、少なくとも上記胴体部との境界部から、液体試料・液体試薬が吸引吐出される開口部に向かって延びる複数の整流稜が形成されていることを特徴とする分注用ノズルチップ。
【請求項5】
請求項1又は4記載の分注用ノズルチップにおいて、上記先端部の上記上部曲面と下部曲面との境界部の接線と、上記分注用ノズルチップの中心軸とのなす角度は、45°以下であることを特徴とする分注用ノズルチップ。
【請求項6】
請求項1又は4記載の分注用ノズルチップにおいて、上記先端部の上記上部曲面と下部曲面は、指数関数曲線に従って形成され、上記先端部の上記上部曲面と下部曲面との境界部の接線と、上記分注用ノズルチップの中心軸とのなす角度は、45°から20°であることを特徴とする分注用ノズルチップ。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項記載の分注用ノズルチップにおいて、上記胴体部はほぼ円筒形状であることを特徴とする分注用ノズルチップ。
【請求項8】
請求項2、4、8のうちのいずれか一項記載の分注用ノズルチップにおいて、上記整流稜の高さは、上記先端部の開口部の径以上であることを特徴とする分注用ノズルチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−232829(P2008−232829A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72868(P2007−72868)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】