説明

分注用装置

【課題】主たる目的は、例えば核酸抽出用装置において、核酸抽出された試料を、次工程で用いられるPCR増幅用装置や核酸計測用装置で用いるための試料容器に分注することによって、核酸抽出試料の次工程への試料容器への分注作業を削減するとともに、消耗品である精製品収納容器を削減することである。
【解決手段】第2の検体容器の形状および分取量を設定する手段として操作パネル上に設定画面を設け、設定された内容を制御用計算機に記憶しておき、検体を第2の検体容器に分取する際に、記憶されている検体容器の形状および分取量によって分離ノズルの吐出位置(高さ)や分注量を制御する。また第2の検体容器の形状および分取量を設定する代替的手段としてこれらの情報をバーコードとしてコード化し、検小容器の一部に貼付けし、バーコードリーダを用いることによって読み取る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生物試料に含まれる核酸を共存物質から分離して取り出すのに適した分注用装置に関する。
【0002】
【従来の技術】分子生物学の進歩によって、遺伝子に関する数々の技術が開発され、また、それらの技術により多くの疾患性の遺伝子が分離され、同定された。その結果、医療の分野でも、診断、或いは、検査法に分子生物学的な技術法が取り入れられ、従来不可能であった診断が可能となったり、検査日数の大幅短縮が達成されつつある。
【0003】このような進歩は、核酸増幅法、特に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法と称される、polymerase chain reaction)の実用化によるところが大きい。PCR法は、溶液中の核酸を配列特異的に増幅することが可能なため、例えば、血清中に極微量しか存在しないウイルスを、そのウイルスの遺伝子である核酸を増幅し検出することにより、間接的に証明できる。
【0004】しかし、このPCR法を臨床の場で日常検査に使用した際に、いくつかの問題点が存在する。その中でも特に、前処理における核酸の抽出、抽出工程が精度維持のために重要である。核酸の抽出に関しては、いくつかの手法が提案されている。
【0005】特開平2−289596 号公報は、カオトロピック物質の存在下で核酸と結合することが可能なシリカ粒子を、核酸結合用固相として使用することを教示している。この特開平2−289596 号公報には、シリカ粒子の懸濁液とカオトロピック物質としてのグアニジチオシアネート緩衝液とが入った反応容器に、核酸を含む試料を加えて混合し、核酸がシリカ粒子に結合された複合体を遠心分離した後、上清を廃棄し、残った複合体に洗浄液を加えてボルテックスミキサーを使用して洗浄し、再沈澱した複合体をエタノール水溶液で洗浄した後アセトンで洗浄し、アセトンを除去して乾燥した複合体に溶離用緩衝液を加えて核酸を溶離して回収する抽出方法が記載されている。
【0006】また、特開平8−320274 号公報は、単一検体のために多数の容器と分注チプを用いてDNAを単離する方法を教示している。
【0007】この特開平8−320274 号公報には、次の点が記載されている。
【0008】すなわち、移動機構によって移動されるピペットノズルに第1チップを装着し、その第1チップ内に検体を吸引する。次いで、第1チップの下端に血球の殻を取るフィルタを嵌合し、該フィルタを通して第1チップ内の検体を第1容器へ吐出する。その後、ピペットノズルからフィルタ及び第1チップを取り外し、ピペットノズルの下端に第2チップを装着し、第1容器内の検体を第2チップ内に吸引する。
【0009】次いで、第2チップの下端にDNAを捕獲するためのシリカメンブランフィルタを嵌合し、第2チップ内の検体をシリカメンブランを通して第2容器へ吐出することによりシリカメンブランでDNAを捕獲すると共に爽雑物を第2容器に吐出する。その後、ピペットノズルを洗浄液が収容された第3容器まで移送し、DNAを捕獲したシリカメンブランフィルタを第2チップから取り外して、第3容器の洗浄液中に浸漬する。
【0010】次いで、第2チップを取り外したピペットノズルに第3チップを装着し、第3チップ下端に第3容器内のシリカメンブランフィルタを嵌合し、第3チップ内に洗浄液とDNAの混合液を吸引した後、その混合液を第4容器内に吐出する。
【0011】さらに、特開平7−250681 号公報は、ガラスパウダー層を2枚のガラス繊維フィルタとメンブランフィルタで挟んだ四重構造の濾過部材を有するカートリッジ容器を用いてDNA抽出液を抽出する方法を教示している。
【0012】この特開平7−250681 号公報では、調製されたDNA含有培養液を前処理しトラップフィルタに形質転換体を集菌し、溶菌用試薬を添加してプラスミドDNAを細胞外に溶出させたものを抽出用試料とする。
【0013】抽出工程では、カートリッジ容器に抽出用試薬とカオトロピックイオン生成用試薬(ヨウ化ナトリウム)を添加し、カートリッジ容器に真空減圧又は遠心分離処理を施しカートリッジ容器のガラスパウダー層にプラスミドDNAを吸着させる。
【0014】次いで、カートリッジ容器に洗浄用緩衝液を添加して真空減圧又は遠心分離処理により洗浄し、その後、カートリッジ容器に溶出用緩衝液を添加して真空減圧又は遠心分離操作を施し、プラスミドDNAのみを溶出する。
【0015】これらの核酸の抽出方法に関する公知例では、核酸の抽出工程において用いられるべき装置の操作性については考慮されていなかった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は核酸抽出された試料を、次工程で用いられるPCR増幅用装置や核酸計測用装置で用いるための試料容器に分注することによって、核酸抽出試料の次工程への試料容器への分注作業を削減するとともに、消耗品である精製品収納容器を削減することである。
【0017】また異なる試料容器を用いるPCR増幅用装置を所有する操作者に対して、1台の核酸抽出用装置から各々のPCR増幅用装置の専用容器に直接精製された核酸を分注する装置を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】精製品容器の形状および分取量を設定する手段として操作パネル上に設定画面を設け、設定された内容を制御用計算機に記憶しておき、精製品を精製品容器に分取する際に記憶されている精製品容器の形状および分取量によって分離ノズルの精製品吐出位置(高さ)や吐出量を制御する。
【0019】また精製品容器の形状および分取量を設定する代替的手段としてこれらの情報をバーコードとしてコード化し、精製品容器の一部に貼付けし、バーコードリーダを用いることによって読み取る。
【0020】
【発明の実施の形態】核酸含有試料としては、全血,血清,喀痰,尿等の生体試料や培養細胞,培養細菌等の生物学的な試料、あるいは、電気泳動後のゲルに保持された状態の核酸,DNA増幅酵素等の反応産物や素抽出状態の核酸を含む物質等を対象とすることができる。
【0021】なお、ここでの核酸とは、2本鎖,1本鎖、あるいは部分的に2本鎖もしくは1本鎖構造を有するデオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)を含む。
【0022】シリカ含有の固相への核酸の結合を促進する物質としては、核酸の吸収ピークがある260nmの波長付近の吸収が少ない物質が好ましい。なぜなら、核酸の純度や量の検定には、分光光度計により260nmの吸収を測定することが多いからである。
【0023】また、チオシアン酸を含む物質は、酸と反応すると致死性のガスを発生するため取り扱い上好ましくない。
【0024】本発明の望ましい実施例では、これらの点を考慮し、カオトロピック剤として塩酸グアニジン(GuHCl)を用いる。塩酸グアニジンの使用時の最終濃度は、4〜6mol /lであることが望ましい。
【0025】核酸捕捉用チップに内蔵されるシリカ含有固相としては、ガラス粒子,シリカ粒子,石英濾紙,石英ウール、あるいは、それら破砕物,ケイソウ土など、酸化ケイ素を含有する物質であれば使用することができるが、チップ外へ固相が出ないようにするために、チップ先端部の内径を小さくし、且つ、固相をチップ先端部内径よりも大きな外径を持たせる、或いは、チップ内の先端部付近に、固相の外径より孔径の小さい保持材を設置するなどにより、チップ内に試料を吸入したときに試料が固相に大きな接触面積で接触されるように、固相がチップ内に保持される。
【0026】核酸を固相から溶離する工程は、洗浄工程後の固相に対して低塩濃度の水溶液、或いは、水を混合することにより達成される。この操作により核酸は固相から水相へと移行するため、その水相を精製品用容器に回収することで抽出済みの核酸水溶液が得られる。
【0027】以下、本発明に基づく一実施例である核酸抽出用装置の構成を、図1〜図13を参照して説明する。
【0028】図1は核酸抽出用装置の概略外観図、図2および図3は一実施例の装置の平面図、図3はその外観図、図4は電気系および計算機制御系のブロックダイヤグラム、図5は試薬パックの例、図6は分注器の系統図、図7は検体ラック、図8および図9は精製品ラックおよびチューブ、図10は分離チップラック、図11は分離チップの例、図12および図13は分離ノズルに分離チップを装着,取り外しする動作の説明図である。
【0029】図1は核酸抽出用装置の概略外観図である。
【0030】装置1は卓上形の核酸抽出用装置であり、試薬や純水,分離チップなどの消耗品,精製品収納チューブ,検体チューブを装置内に設定してから一括で処理するが、これは一般的に核酸抽出や次工程のPCR増幅に要する時間が長く、まだ核酸を利用した検査件数がそれほど多くないため纏まった数の検体が集まってから核酸抽出処理が行われることを想定しているためである。
【0031】本体1にはハンディタイプのバーコードリーダ14が接続されていて、検体ラック,試薬パック,精製品ラックに表示されている情報を読み取ることによって操作者による入力操作を容易にしているが、それぞれの情報を読み取るための専用の固定式バーコードリーダを設置しても良い。
【0032】また検体ラック,試薬パック,精製品ラックに表示されている情報が文字やラックや試薬パックの一部の形状や色などでエンコードされている場合にはバーコードリーダの代わりに、形状認識や文字読み取り手段を設けても良い。
【0033】装置本体1の正面の右上部に設置されている操作パネル2は液晶タッチパネルからなり、装置状態や抽出処理の進行状況を表示したり、画面上の表示されているボタンなどを指で押して操作することによって抽出処理のためのパラメータを設定することができる。操作パネルは操作者が立った姿勢からでも扱いやすいように、斜め上方に向けて使用することもできる。
【0034】装置1の正面上部には純水タンク4と試薬パック5−1および5−2が収納されていて、核酸の抽出処理を行う際にリニアスライダーに設置された分注ノズル6を通して検体ラック10上の検体に分注される。
【0035】図2は抽出部の上面図である。
【0036】分注ノズル6が設置された分注ノズルホルダ6Aと分離ノズル7が設置された分離ノズルホルダ7Aはリニアスライダーバー3に接続されていて、リニアスライダーバー3が水平方向に駆動されると分注ノズルホルダおよび分離ノズルホルダも平行移動する。
【0037】分注ノズルホルダ6Aはリニアスライダーバー3上を縦方向に移動する駆動機構を持ち、各分注ノズル6は上下方向の駆動機構を持っている。これによって検体ラック上の任意の位置に移動して試薬を分注することができる。
【0038】また分離ノズルホルダ7Aはリニアスライダーバー3に固定されているが、分離ノズル7の位置を検体ラック,精製品ラックおよび分離チップラックの穴に合わせてあるため、リニアスライダーバー3と上下方向の駆動機構によって検体の吸引吐出,分離チップの装着および精製品の分注を行うことができる。以下、装置1の正面に向かって水平方向をX軸,縦方向(奥行き方向)をY軸,上下方向をZ軸とする。
【0039】図3は核酸抽出部の分注機構部を除いた時の上面図である。
【0040】核酸を抽出する血清などの検体は検体ラック10に予め決められた量だけ分注されていて、検体ラックのその位置において分注ノズル6から分注される試薬と分離チップラック11に設置された分離チップ25によって核酸の抽出処理が行われ、最終的に精製された核酸は精製品ラック12に設置されている精製品チューブに分注される。
【0041】また核酸抽出の工程において検体の細胞膜などの不要物や用済みの試薬が混合した不要液は廃液口8より廃棄され、1回の抽出処理に使用された分離チップはチップ廃棄口9より廃棄される。検体ラック10,分離チップラック11,精製品ラック12は消耗品トレー13の内部に設置され、抽出時に用いられる消耗品の設置および用済み品の回収は消耗品トレー13を引き出すことによって行う。これによって操作者は装置の機構部が動作する空間に手を入れる必要がなくなるため、ノズル先端に誤って接触するなどの危険性を低減し、また操作者の腕から出される塵埃などによって消耗品トレー13内部が汚染されることを防いでいる。
【0042】消耗品トレー上の配置は、左端から精製品ラック12,2つの分離チップラック11,検体ラック10,廃液口8,チップ廃棄口9の順序で配列されている。検体ラック10および精製品ラック12が6行8列の検体および精製品を保持し、分離チップは、2つの6行4列の分離チップラック11上に設置されていて、ほぼ同じ行間隔が有るのは6連ノズルによる同時分離処理を行うためである。
【0043】精製品容器をチップ廃棄口および廃液口から最も遠い位置に配置するのは、廃液およびチップ廃棄の際に廃液中に存在している拡散が霧状に飛散することによる精製品のコンタミを防止するためである。また同様の理由によって分離チップをチップ廃棄口や廃液口から遠い位置に配置している。
【0044】検体容器が廃液口の隣に配置されているのは、核酸抽出の化学反応を伴う工程が検体容器上で行われるため、廃棄口との距離を近づけることによって分注機構および分離機構を装備したリニアスライダーの移動距離を短縮することによって核酸抽出に要する時間を短縮するためである。また検体容器と廃液口を隣接させることによって分注ノズルあるいは分離ノズルからの液ダレによる汚染の危険性を小さくする効果がある。
【0045】図4は制御系の構成を表すブロック図である。
【0046】制御用計算機30は装置本体1の内部に組み込まれており、本装置を制御するための制御プログラム38を実行して、制御用計算機30に接続されているバーコードリーダー14,操作パネル2および機構制御部31を通して操作者からの入力やセンサ36やI/Oからの信号を取得し、シリンジ33,分注ノズルホルダ6A,リニアスライダー3などを駆動したり、操作パネルの表示を更新したりする。
【0047】図5は界面活性剤(R1),結合促進剤(R2),洗浄剤(R3),溶離液(R4)からなる試薬パックである。
【0048】試薬パックの側面あるいは任意の位置にバーコード15が貼付けされており、そこに各試薬の成分情報,吸引量,攪拌回数,使用順序からなる制御情報が表示されている。制御情報には使用する検体量や精製品ラックに分注する際の分注量を表示しても良い。
【0049】図6は2つの試薬パックを切り替えるための分注機構の系統図を示している。分注ノズル6はR1からR4に対応した4本があるが、すべて同じ機構によって制御されるため、以下R1の分注ノズル6−1に着目して説明する。
【0050】シリンジ33−1は試薬パック5−1,5−2または純水タンク4から試薬または純水を吸上げて分注する。試薬と純水の切り替えは電磁弁37−2によって切り替え、試薬パックの切り替えは電磁弁37−3によって行う。純水と試薬の切り替え、あるいは試薬パックの切り替えを行う際はR1からR4の電磁弁の切り替えを同時に行う必要がある。
【0051】図7は検体ラック10である。
【0052】検体は検体チューブ(図示せず)に充填されて検体ラック10の穴に挿入された状態で消耗品トレー13に架設される。検体ラック10には6行8列の48検体を設置することができ、分離チップを用いた核酸と担体との結合,廃棄物の洗浄,担体からの核酸溶離は1列に含まれる6検体を多連分離ノズル7を用いて同時処理する。
【0053】図8は精製品ラックの1例であり、現在標準的に使用されているPCR装置用の試料ラックである。
【0054】ラックの高さ,上面の形状、試料穴の大きさおよび間隔は一定であるが、充填する精製品の量によって穴の深さが異なるラックが数種類使われていて、試料穴の直径は7mm、間隔は9.0mm の精製品ラックが用いられることが多い。精製品ラックはその穴に精製品を分注するチューブを架設したり、1枚のプレート上に試料を保持するための凹みを持つマイクロプレートであってもよい。
【0055】図9は精製品チューブであり、図8で示した精製品ラックの代替品であり、次のPCR工程ではこの精製品チューブは2組12本を用いて6本組のそれぞれ互いの両端を接続して円形に丸めて装置が使われることが多い。この場合、チューブ間隔は9.4mm 間隔でチューブ間を軟性のジョイントで結合しており、本実施例で用いる時には精製品ラック上の9.4mm 間隔の穴に精製品チューブを挿し込んで使用する。
【0056】図8に示すPCR用精製品容器と図9に示すAMPLICOR用精製品チューブは間隔が0.4mm の差があり、1列を考えると2.0mm(0.4×5)の差となるため、分離ノズル7の間隔をどちらか一方に合わせてしまうと、もう一方では合わなくなってしまう。そのため分離ノズル7の間隔をそれらの中間の9.2mm とし、その中心を3番目と4番目の検体位置に合わせることにより、PCR用精製品容器とAMPLICOR用精製品チューブの両方に対応することができる。
【0057】図10は分離チップラック11、図11には分離チップ25を示す。
【0058】1つのチップラック11は6行4列の分離チップを保持することができ、2個までの分離チップラック25を架設して抽出処理を実行することができる。分離チップ25の上部は外周が大きくなっていて、そこが分離チップラック11の穴に掛かって保持される。その内部は円筒形になっていて、分離ノズル7の方から核酸を含む試料に汚物が混入するのを防ぐためにフィルタ26を詰めている。
【0059】フィルタ26の下方には実際に核酸を捕捉するための担体27が詰められていて、結合促進剤が存在する場合に核酸をその表面に吸着し、溶離液のもとでは捕捉された核酸はその表面から溶離する。担体27の材料としては、シリカを原料とした粒子を固めて用いても良い。
【0060】分離チップ25を分離ノズル7に装着する動作を図15によって説明する。
【0061】リニアスライダーバー3を水平移動して分離ノズル7を分離チップラック11のチップ装着位置まで移動し、そこから分離ノズル7を下降してその先端を分離チップ25の内部に押し付ける。分離ノズル7の外径と分離チップ25の上部内径は等しく設定されいるため分離チップ25は分離ノズル7の先端に固定されることに成る。
【0062】用済みとなった分離チップ25を廃棄する動作を図16によって説明する。
【0063】まず分離ノズル7をチップ廃棄口9まで移動し、分離チップ25がその内部に完全に収まるまで下降させる。廃棄口9は図2に示すようにその右側に分離チップ25の外周よりも小さく、分離ノズル7の外周よりも小さい半円形の切れ込み部があるため、分離チップ25の上端部がその切れ込みに掛かるように分離ノズル7を移動してから上昇させる。これによって使用済みとなった分離チップ25は廃棄トレー(図示せず)に収納される。
【0064】続いて図14および図15を用いて本実施例で示した装置の操作フローを説明する。
【0065】装置電源(図示せず)を投入すると(S−1)、制御用計算機30は制御用プログラム38をローディングしてそれを起動する。制御用プログラム38は初期処理(S−2)を実行して、バーコードリーダ14,操作パネル2,機構制御部31を利用可能な状態に遷移させる。
【0066】以下、操作パネル2の核酸抽出画面から操作者が入力した命令を受け付けて(S−4)、それに応じた処理を繰り返し実行する(S−3)。
【0067】制御要求には核酸抽出要求や各種のメンテナンス要求および終了要求などがあり、それに応じて分岐をする(S−5)。
【0068】核酸抽出要求が入力されると、ステップS−6に分岐して操作者はまず消耗品トレー13を引き出して検体ラック10,分離チップラック11,精製品ラック12を架設する。続いて操作者からの核酸抽出の開始命令が入力されると、後述の核酸抽出処理が実行され(S−7)、完了したら精製品を回収する(S−8)。使用済みの廃液や分離チップ25は廃棄物として装置本体1内の廃棄物トレー(図示せず)の中に保持されているため、それらの回収を行う(S−9)。核酸抽出処理が終了するとステップS−5に戻って次の制御命令を受け付ける。
【0069】ステップS−5にてメンテナンス要求が入力された場合、メニュー画面(図示せず)が表示されて、その中の項目が選択されると(S−10)それに応じた処理(S−11)が実行される。メニュー項目には精製品容器の形状や精製品の分注量設定が含まれているが、それについては後述する。
【0070】ステップS−5にて終了要求が入力された場合、すなわち核酸抽出画面118の「SHUTDOWN」ボタン115が押された場合には終了処理を実行し、装置の電源を遮断できる状態にして制御プログラム38は終了する。
【0071】核酸抽出処理を図14のフローチャートを用いて説明する。
【0072】ステップS−30では分離ノズルホルダ6Aには6本の分離ノズル6が設置されていて、検体ラック10上の列に対応する6検体の抽出が同時に実行される。このためフローは列について同様の処理を繰り返して実行するが、処理中の列の番号をNとする。
【0073】次にステップS−31で検体ラック10上の列Nの各検体に対して、試料中に含まれる核酸とその他の組織を分離するための界面活性剤(R1)、および分離された核酸と分離チップ25の中の担体27との結合を促進する結合促進剤(R2)を分注する。この時、界面活性剤(R1)と結合促進剤(R2)の分注ノズルを各検体の上方に移動するため、リニアスライダーバー3によって水平方向に駆動し、分注ノズルホルダ6Aに設置されているステッピングモータによって奥行き方向の位置を調整する。
【0074】分注ノズル6を検体の真上に移動させたら、分注ノズル6の先端を検体に近づけてから界面活性剤(R1)あるいは結合促進剤(R2)を分注するが、これは検体汚染の原因となる飛沫の発生を抑制するためである。
【0075】ステップS−32では先述したように分離チップ25を分離ノズル7に装着する。
【0076】ステップS−33ではステップS−32で装着した分離チップ25を列Nの検体の上まで移動して、下降しその先端を検体中に浸して吸引して検体の液量を確認する。すなわち検体量が不足している場合には核酸抽出が適切に行われない可能性があるため、エラーとしてログ情報を残す。
【0077】ステップS−34では検体を分離チップ25の内部に吸引したり、検体ラック10に吐出して戻すことによって検体と界面活性剤(R1),結合促進剤(R2)の混合液の攪拌を行う。混合液内の検体は核酸とそれ以外の組織に分解されているため、分離チップ25中の担体27を通過する際に結合促進剤(R2)の働きによって核酸のみが担体27を構成するシリカ粒子に吸着することになる。混合液の攪拌は6検体分を同時に行う。
【0078】ステップS−35では検体と界面活性剤(R1),結合促進剤(R2)の混合液のうち、核酸以外の組織物と試薬を廃棄する。混合液の全量を分離チップ25中に吸い込んでから、分離ノズル7を上昇させ、廃液口8の上方に移動するまでスライダーバー3を駆動する。廃液の飛沫を抑制するため分離ノズルを廃液口内部まで下降してから分離チップ25内の混合液を全量吐出する。
【0079】ステップS−36では界面活性剤(R1)や結合促進剤(R2)と同様の方法によって洗浄液(R3)を列Nの検体に分注する。ステップS−35で検体は界面活性剤(R1),結合促進剤(R2)とともに廃棄されているので検体ラックの列Nには洗浄液(R3)のみが存在している。
【0080】ステップS−37ではステップS−34と同様の操作を行う。これはステップS−35によって核酸が分離チップ25内の担体27に捕捉された状態になっているが、それ以外の共存物も担体に若干残存しているため、洗浄液(R3)によってこれらの残存している共存物を洗浄するために行うものである。
【0081】ステップS−38ではステップS−35と同様の操作を行う。これによって分離チップ25内の担体27には核酸のみが捕捉された状態となる。
【0082】ステップS−39ではステップS−36と同様の操作によって溶離液(R4)を検体ラック10の列Nの検体に分注する。
【0083】ステップS−40ではステップS−37と同様の操作を行う。これによって分離チップ25内の担体27に捕捉されていた核酸は遊離され、担体27を構成するシリカ粒子の間隙を溶離液との混合液として流動可能となる。
【0084】ステップS−41ではあらかじめ設定されていた量の混合液を分離チップ25内に分取してから、分離ノズル7を精製品ラック12の列N上方に移動し、飛沫を押えるために精製品ラック12の近傍まで下降させてから吐出する。
【0085】ステップS−42では前述の手順によって用済みとなった分離チップ25を廃棄する。
【0086】次に精製品容器形状の設定および精製品の分注量の設定について述べる。精製品容器形状の設定および精製品の分注量の設定は本実施例の中ではメンテナンス処理として位置付けられている。
【0087】図14の操作フローのステップS−5においてメンテナンス処理の要求を受けるとメンテナンスメニュー画面(図示せず)を表示して(S−10)、各種のメンテナンス処理(S−11)を実行する。メンテナンスメニュー画面の選択項目の中には核酸抽出のパラメータ設定を選択するボタンが設けられており、それを押下すると図16に示す抽出パラメータ表示画面が開かれる。
【0088】抽出パラメータには界面活性剤(R1),結合促進剤(R2),洗浄液(R3),溶離液(R4)などの試薬や空気,検体の吸引量(VOL1〜VOL4,VOL_AIR,VOLSMPL)や検体との攪拌回数(STIR1〜STIR4,S_AIR)があるが、これらは検体や試薬の種類によって最適値が異なるため、これらのパラメータの値の組を抽出パターンとして登録し、識別番号を指定することによって抽出パラメータを切り替えることが可能になる。
【0089】抽出パラメータ表示画面60に表示されている抽出パターンの識別番号はテキストボックス60に表示されており、表示中の抽出パターンが実際の核酸抽出処理にも参照される。
【0090】表示中の抽出パターンは数値変更ボタン61によって変更することができ、逆三角ボタン(▽)を押すと識別番号が1だけ減少し、三角ボタン(△)を押すと増加する。表示されているパラメータを変更する時には「CHANGE PARAMETER」ボタンを押すことによって図1717に示す変更項目選択画面65に切り替える。
【0091】変更項目選択画面65には値を変更するための項目を選択するために、試薬の吸引量(使用量)を選択する「R1〜R4,AIR」ボタン66−1,試薬の攪拌回数を選択する「R1〜R4,AIR」ボタン66−2,検体の分注量を選択するための「SAMPLE」ボタン67,精製品の分注量を選択するためのISOLATORボタン68および精製品容器を選択するための「CUP DEPTHボタン69が配置されている。
【0092】吸引量,分注量,攪拌回数を設定する場合には図19に示すパラメータ設定画面70が表示され、数値変更ボタン72によって数値を変更し、その値が数値テキストボックス71に表示される。変更された値をパラメータとして取り込む場合にはOKボタン73,取り消す場合にはCANCELボタン74が押される。また精製品の容器形状を指定する場合には図20に示す精製品容器設定画面50が表示される。
【0093】本実施例では12本の試料チューブを9.4mm 間隔で円形状に配置するCOBASAMPLICOR装置用の容器選択ボタン51と標準的に用いられている9.0mm 間隔で精製品を保持するPCR装置用の容器選択ボタン52−1〜52−5が選択可能である。
【0094】PCR容器は図20に示すように深さの異なる容器が広く使われているが、精製品の分注時に飛沫の発生を抑えるために容器の底部に近づけて分注することが望ましい。
【0095】精製品容器の形状や分注量を指定するための代替案として、精製品容器に精製品収納部の深さや液量をコード化したバーコードを貼付けし、バーコードリーダ14によってそれらの情報を取り込む方法もある。
【0096】
【発明の効果】本発明によれば核酸抽出を行った精製品を、次工程で用いるPCR装置などの試料容器に分注する必要がなくなる。これにより次工程におけるPCR増幅などの結果が安定し、核酸に対する検査の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】核酸抽出用装置の概略外観図である。
【図2】本発明の一実施例である核酸抽出用装置の平面図である。
【図3】本発明の一実施例である核酸抽出用装置の平面図である。
【図4】電気系の構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図5】試薬パックを示す図である。
【図6】分注器の系統図である。
【図7】検体容器を示す図である。
【図8】精製品容器(標準PCR)を示す図である。
【図9】精製品容器(Amplicor対応)を示す図である。
【図10】分離チップラックを示す図である。
【図11】分離チップを示す図である。
【図12】分離チップの取り付け動作を説明する図である。
【図13】分離チップの取り外し動作を説明する図である。
【図14】操作フローを示す図である。
【図15】抽出処理のフローチャートである。
【図16】抽出パラメータ表示画面を示す図である。
【図17】変更する抽出パラメータ選択画面を示す図である。
【図18】抽出パラメータ変更画面を示す図である。
【図19】精製品容器形状設定画面を示す図である。
【符号の説明】
1…核酸抽出装置本体、2…操作パネル、3…リニアスライダーバー、4…純水タンク、5(5−1,5−2)…試薬パック、5−1…試薬ボトル、5−2…ジョイント、6…分注ノズル、6A,34…分注ノズルホルダ、7…分離ノズル、7A…分離ノズルホルダ、8…廃液口、9…チップ廃棄口、10…検体ラック、11…分離チップラック、12…精製品ラック、13…消耗品トレー、14…バーコードリーダ、15…試薬バーコード、25…分離チップ、26…フィルタ、27…担体、30…制御用計算機、31…機構制御部、32…ステッピングモータ、33…シリンジ、36(36−1〜36−4)…電磁弁、37…センサ、38…分岐ジョイント、50…精製品容器設定画面、51…COBAS AMPLICOR用の選択ボタン、52−1〜52−5…標準PCR容器の選択ボタン、60…抽出パラメータ表示画面、61…抽出パラメータ番号テキストボックス、62…抽出パターン変更ボタン、63…パラメータ変更画面を呼び出すボタン、65…変更するパラメータの選択画面、66−1,66−2…試薬の吸引量,攪拌回数変更の選択ボタン、67…検体吸引量の選択ボタン、68…精製品吐出量の選択ボタン、69…精製品容器深さの選択ボタン、70…パラメータ設定画面、71…設定値テキストボックス、72…数値変更ボタン、73…設定値確定ボタン、74…設定値取り消しボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】分注ノズルと分注ノズルホルダと該分注ノズルホルダを水平方向に移動させる機構と上下に移動させる機構とを持ち、第1の検体容器に充填されている検体を第2の検体容器に分注する装置において、第2の検体容器の形状に関する情報を取得する手段を有し、第2の検体容器の形状により分注時の分注ノズルの種類を切り替えることを特徴とした分注用装置。
【請求項2】請求項1の分注用装置において、ディスプレイ装置と情報入力手段を有し、該ディスプレイ装置上に第2の検体容器の形状に関する情報を表示し、情報入力手段によって選択することによって第2の検体容器の形状に関する情報を取得することを特徴とした分注用装置。
【請求項3】請求項1の分注用装置において、第2の検体容器に付与された形状情報を取得する手段を有することを特徴とした分注用装置。
【請求項4】請求項3の分注用装置において、第2の検体容器に付与された検体の分注量を取得する手段を有し、該分注量だけを第2の検体容器に分注することを特徴とした分注用装置。
【請求項5】請求項1の分注用装置において、配列状に検体を保持する容器を第2の検体容器とし、第2の検体容器として検体の配列間隔の異なる容器を架設可能である時に、第2の検体容器の検体の配列間隔の最大値以下かつ最小値以上の分注ノズルを有することを特徴とした分注用装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図11】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図12】
image rotate


【図13】
image rotate


【図14】
image rotate


【図16】
image rotate


【図17】
image rotate


【図15】
image rotate


【図18】
image rotate


【図19】
image rotate


【公開番号】特開2000−266764(P2000−266764A)
【公開日】平成12年9月29日(2000.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−73140
【出願日】平成11年3月18日(1999.3.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】