説明

分注装置、分析装置および吐出チップ

【課題】吐出ノズルごとに実際に吐出される量を正確に把握可能な分注装置、分析装置および吐出チップを提供すること。
【解決手段】所定量の液体を保持し、液体を外部へ吐出する吐出量を決定する吐出ノズル142と、吐出ノズル142に接続されるとともに液体を外部へ吐出する際の流路となる吐出口143と、吐出口143から液体を外部へ吐出するための圧力を液体に加える加圧機構12と、外部へ吐出される液体の吐出量に関する情報を保持するICタグ15と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の液体を微量分注する分注装置、分析装置および吐出チップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体に関する分析を行なうため、nL〜μL単位の微小の量の検体を吐出し、吐出した検体に試薬を分注し、検体と試薬との混合液の吸光度を測定し、この測定結果をもとに検体の分析を行う分析装置が知られている。一般に分析装置は、検体である液体を吐出する分注装置を備えている。分注装置の構成として、特許文献1および特許文献2には、液体を吐出する吐出ノズルを有する分注チップを備え、該吐出ノズルに保持された液体に圧力を加えて所定の量の液体を吐出する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特表2000−500567号公報
【特許文献2】独国特許発明第10102152号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記チップを利用して吐出される液体の量は、吐出ノズルの容積に左右される。一般に吐出チップは、金型を用いた射出成型によって形成されるが、この金型自体の加工精度、あるいは加工工程の諸条件によって吐出ノズルの容積がばらつく場合がある。このため、実際に吐出ノズルから吐出される液体の量は、設計上の量と異なるため、実際に吐出される量を正確に把握することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、吐出ノズルごとに実際に吐出される量を正確に把握可能な分注装置、分析装置および吐出チップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる分注装置は、所定量の液体を保持し、当該液体を外部へ吐出する吐出量を決定する吐出ノズルと、前記吐出ノズルに接続されるとともに前記液体を外部へ吐出する際の流路となる吐出口と、前記吐出口から前記液体を外部へ吐出するための圧力を当該液体に加える加圧機構と、外部へ吐出される前記液体の吐出量に関する情報を保持する情報記憶部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2にかかる分注装置は、上記の発明において、前記吐出ノズルによって決定される前記吐出量は、当該吐出ノズルの容積に基づいて決定されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3にかかる分注装置は、上記の発明において、前記吐出ノズルを複数有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4にかかる分注装置は、上記の発明において、前記情報記憶部は、複数の前記吐出ノズルごとに前記吐出量に関する情報を保持することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5にかかる分注装置は、上記の発明において、前記情報記憶部が保持する前記吐出量に関する情報は、前記吐出ノズルの個体差に応じた情報であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6にかかる分注装置は、上記の発明において、前記個体差に応じた情報とは、前記吐出ノズルの容積のばらつきの情報であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7にかかる分注装置は、上記の発明において、前記吐出ノズルの容積のばらつきの情報は、外部へ吐出される前記液体の量である実効分注量であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8にかかる分注装置は、上記の発明において、前記吐出ノズルの容積のばらつきの情報は、前記吐出ノズルの製造ロットもしくは前記吐出ノズルを製造する際に利用した金型の番号に対応することを特徴とする。
【0014】
また、請求項9にかかる分注装置は、上記の発明において、前記情報記憶部は、ICタグ、光学的に読み取り可能なコード、または肉眼で可視可能な文字もしくは記号を含むことを特徴とする。
【0015】
また、請求項10にかかる分注装置は、上記の発明において、前記吐出ノズルと接続されるとともに前記液体を保持するリザーバをさらに有し、前記リザーバに保持された前記液体は、毛細管力を利用して前記吐出ノズルに導入されることを特徴とする。
【0016】
また、請求項11にかかる分注装置は、上記の発明において、前記液体は、生体試料であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項12にかかる分析装置は、上記の発明において、所定量の液体を保持し、当該液体を外部へ吐出する吐出量を決定する吐出ノズルと、前記吐出ノズルに接続されるとともに前記液体を外部へ吐出する際の流路となる吐出口と、前記吐出口から前記液体を外部へ吐出するための圧力を当該液体に加える加圧機構と、外部へ吐出される前記液体の吐出量に関する情報を保持する情報記憶部と、前記情報記憶部に保持された前記吐出量に関する情報を読み取る読取部と、前記読取部で読み取った前記吐出量に関する情報を処理する情報処理部と、を有することを特徴とする。
【0018】
また、請求項13にかかる分析装置は、上記の発明において、前記吐出量に関する情報に応じて補正を加える補正手段をさらに有することを特徴とする。
【0019】
また、請求項14にかかる分析装置は、上記の発明において、前記補正手段は、前記吐出量に関する情報と対応付けられた補正のための情報を有することを特徴とする。
【0020】
また、請求項15にかかる分析装置は、上記の発明において、前記補正手段は、外部へ吐出された後の前記液体に加える試薬の量を調整することを特徴とする。
【0021】
また、請求項16にかかる分析装置は、上記の発明において、前記補正手段は、外部へ吐出された後の前記液体の分析データを補正することを特徴とする。
【0022】
また、請求項17にかかる吐出チップは、上記の発明において、所定量の液体を保持し、当該液体を外部へ吐出する吐出量を決定する吐出ノズルと、前記吐出ノズルに接続されるとともに前記液体を外部へ吐出する際の流路となる吐出口と、前記液体に圧力が印加されることにより前記吐出口から外部へ吐出される前記液体の吐出量に関する情報を保持する情報記憶部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる分注装置、分析装置および吐出チップは、吐出チップが有する吐出ノズルが実際に吐出する実質吐出量をICタグ等の記憶媒体に記憶させているので、吐出ノズルごとの実質吐出量を正確に把握することが出来るという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる分注装置、分析装置および吐出チップの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかる分析装置1の概要構成を示すブロック図である。図1に示すように、この分析装置1は、被分析対象である検体を微小量吐出し、吐出した検体に試薬を分注し、検体と試薬との混合液に対して吸光度測定を行う作業テーブル2と、作業テーブル2が行う作業を制御するとともに検体の吸光度を演算する制御部3とを有する。ここで、検体とは、血液、血液の抽出成分、唾液、リンパ液等の体液もしくはそれらから抽出される液体である生体試料をさし、試薬とは、検体と反応するまたは検体を希釈する液体をさしている。
【0026】
作業テーブル2は、検体を吐出チップ14に分注する分注機構16と、検体をキュベット11に吐出する吐出チップ14と、検体が吐出されたキュベット11に試薬を分注する分注機構6とを有する。図3に示すように、吐出チップ14は、検体を貯留するリザーバ140、検体を吐出する吐出ノズル142、リザーバ140と吐出ノズル142とを接続する流路141、を有する。
【0027】
さらに作業テーブル2は、血液、尿等の液体である検体を収容する検体容器19と、検体容器19を保持する検体ラック18と、分注機構16に取付けられた分注アーム160と、分注アーム160が有するノズルを洗浄し、前回の検体履歴を除去する洗浄部17と、吐出チップ14を固定するとともに回転し、検体が吐出チップ14に分注される位置と吐出チップ14がキュベット11に検体を吐出する位置で停止する台座20と、吐出チップ14を加圧し、キュベット11へ検体を吐出させる加圧機構12とを有している。吐出チップ14には、吐出チップ14が検体を吐出する量に関する情報である吐出ノズル情報を記憶する記憶媒体であるICタグ15が埋め込まれている。さらに作業テーブル2は、ICタグ15が記憶する情報を読取るリーダ13と、キュベット11を保持するとともに回転し、キュベット11を検体の吐出位置、試薬の分注位置、また検体と試薬との混合液に対する吸光度の測定位置でそれぞれ停止させるホルダ10と、試薬容器5を保持する保冷庫4と、吸光度測定のため、検体と試薬とが混合された混合液に光を照射する光源部8と、キュベット11を透過した透過光を受光する受光部9とを有する。
【0028】
制御部3は、リーダ13が読取った吐出ノズル情報を入力処理する読取情報処理部30と、読取情報処理部30が入力した吐出ノズル情報をもとに補正を加えるために検体に分注する試薬の量を演算する試薬分注量演算部31と、作業テーブル2の受光部9が受光した光強度をもとに吸光度を演算する吸光度演算部32と、リーダ13の駆動を制御するリーダ駆動制御部33とを有する。
【0029】
ここで、吐出チップ14の吐出動作について説明する。図2は、台座20に固定された吐出チップ14を示す平面図である。図2に示すように、4つの吐出チップ14はそれぞれ2本のボルト143a,143bによって台座20に固定されている。吐出チップ14片側の角は、削り取られ、台座20は、この片側に対応した位置に突起を有し、吐出チップ14が裏返しに取付けられることを防止する。もちろん角が必ずしも削り取れている必要はない。台座20は、分注アーム160が吐出チップ14に検体を分注する位置で停止し、分注アーム160は、検体容器19から検体を吸引し、吐出チップ14に所定の量の検体を分注する。その後、台座20は反時計方向に1/4回転し、吐出チップ14がキュベット11に所定の微小の量の検体を吐出する位置で停止する。
【0030】
吐出チップ14が微小の量の検体を吐出する位置で停止すると、加圧機構12は下降して、吐出チップ14に装着される。加圧機構12は、吐出チップ14に保持された液体を加圧し、吐出チップ14からキュベット11に検体を吐出させる。その後、リーダ13は、リーダ駆動制御部33の制御のもと駆動し、ICタグ15が記憶する吐出ノズル情報を読み取る。
【0031】
図3は、吐出チップ14の詳細と吐出チップ14が台座20に固定される状態を示す斜視図である。この吐出チップ14は、3つの吐出ノズル142を有するとともに各吐出チップ14の側面にはICタグ15が埋め込まれている。このICタグ15は、吐出チップ14が有する各吐出ノズル142それぞれの吐出ノズル情報を記憶する。この吐出ノズル情報としては、吐出ノズル142の個体差に応じた情報が記憶されている。尚、個体差に応じた情報とは、吐出ノズル142ごとの容積のばらつきの情報であって、例えば、図7に示すように、吐出チップ14を識別する「吐出チップNo」、吐出チップ14の製造に用いた金型を示す「製造金型No」、製造ロットを示す「製造ロットNo」、また、吐出ノズル142の設計上の容量である「表記吐出量」、実際に液体を用いて計量された「実質吐出量」が記憶されている。もちろんICタグ15が記憶する情報は上記すべてを必ず含んでいる必要は無く、どれか一つで構わない。吐出チップ14は、位置づれが起きないように2本のボルト143a,143bによって台座20に固定されている。
【0032】
吐出ノズル142は、キュベット11の配列に合致するように配置されているため、3つの吐出ノズル142は、同時に3つのキュベット11に対応する(同時に3つのキュベット上に配置可能である)。
【0033】
図4は、加圧機構12が装着された吐出チップ14を示す断面図である。図4に示すように、加圧機構12は、吐出チップ14に加圧された気体を導入する気体導入管120と気体導入のタイミングを制御する開閉バルブ121と吐出チップ14に導入された加圧気体を均等に印加するフィルタ122と吐出チップ14との密着を行うOリング123とを有する。一方、吐出チップ14は、加圧機構12の開閉バルブ121によって加圧気体がパルス状に導入されると、吐出ノズル142が保持する検体を吐出口143から吐出する。尚、フィルタ122が無くても、液体の吐出は可能である。
【0034】
図5は、吐出チップ14の詳細な外観を示す斜視図である。図5に示すように、リザーバ140と流路141と吐出ノズル142と吐出口143とは一体化されている。吐出ノズル142に満たされた検体が加圧されて吐出口143から吐出され、吐出ノズル142が空になると、検体は毛細管現象によってリザーバ140から流路141を介して吐出ノズル142に供給され、吐出ノズル142は、再び検体によって満たされる。つまり、吐出チップ14は、吐出ノズル142の容積分の検体を吐出して、常に所定の量の検体を吐出する。
【0035】
図6は、分析装置1の分注処理の動作手順を示すフローチャートである。まず、制御部3は、吐出チップ14が検体の吐出位置に在るか否かを判断する(ステップS101)。吐出チップ14が吐出位置にある場合(ステップS101,Yes)、キュベット11へ検体を吐出させる(ステップ102)。その後、リーダ駆動制御部33は、リーダ13を駆動し、ICタグ15の記憶内容を読取る(ステップS103)。リーダ13は、読取った吐出ノズル情報を読取情報処理部30に送出する。読取情報処理部30は、吐出ノズル情報から吐出ノズル142の設計上の量である表記吐出量と実際に液体を用いて計量した実質吐出量とを入力する。そして、読取情報処理部30は、吐出を行った吐出ノズル142の実質吐出量Lが今回必要な吐出量に対して所定の許容範囲内(L0≦L≦L1)であるか否かを判断する(ステップS104)。実質吐出量Lが許容範囲内である場合(ステップS104,Yes)、制御部3は、分注機構6を制御し、キュベット11に対して所定の量の試薬を分注する(ステップS105)。一方、実質吐出量Lが許容範囲内(L0≦L≦L1)にない場合(ステップS104,No)、試薬分注量演算部31は、検体と試薬との液量比が許容範囲内となる試薬の分注量を演算する(ステップS106)。その後、制御部3は、分注機構6を駆動制御し、この検体が吐出されたキュベット11に対して試薬分注量演算部31が演算して量が調整された試薬を分注する(ステップS107)。なお、ステップS102とステップS103の順序は入れ替え可能である。また、同時に行ってもかまわない。
【0036】
図8は、この分析装置1が所望の液量比の混合液によって吸光度の測定ができることを示す模式図である。たとえば、検体30nLを吐出し、試薬3μLに対する液量比1.0%の混合液を測定する場合であって、吐出ノズル142の実質吐出量27nLである場合を仮定する。読取情報処理部30は、ICタグ15を介してこの吐出ノズル142が27nLの検体を吐出したことを検知し、27nLが許容範囲外であると判断する。そこで、試薬分注量演算部31は、液量比1.0%にする試薬の分注量2.7μLを算出する。制御部3は、分注機構6を制御し、検体が27nL吐出されたキュベット11に対し、試薬を2.7μL分注する。結果、このキュベット11の試薬に対する検体の液量比1.0%となり、所望の液量比1.0%の混合液に対して吸光度の測定が行える。すなわち、制御部3は、吐出ノズル142が実際に吐出する検体量を検知することによって、加える試薬量を演算し、演算した試薬を分注することによって、所望の液量比の混合液を作成できる。検体に比べ試薬のほうが必要量が多いので、試薬量の調整は検体量の調整に比べ容易である。
【0037】
この実施の形態1では、吐出チップ14に実質吐出量を記憶したICタグ15を取り付けたので、たとえ吐出チップ14が実際に吐出する量が、吐出チップ14の製造上の設計値とは異なっていても、吐出チップ14から実際に吐出される量を正確に把握することが出来る。さらに、吐出チップ14から検体を吐出させる際、吐出ノズル142が実際に吐出する実質吐出量を記憶したICタグ15をリーダ13が読取り、この実質吐出量をもとに分注する試薬量を演算、調整するので、所望の液量比の混合液の吸光度測定を行うことができ、高精度の分析が行える。
【0038】
なお、この実施の形態1では、ICタグ15を吐出チップ14の側面に配置していたが、側面以外の場所に配置してもよい。また、吐出チップ14は、3つの吐出ノズル142を有していたが、3つに限定するものではない。
【0039】
また、ICタグ15が吐出ノズル情報を記憶していたが、ICタグ15に代えて光学的読取り可能なコード、または磁気テープ等が吐出ノズル情報を記憶し、これに対応し、リーダ13を光学的読取り装置、磁気ヘッドに代えるようにしてもよい。また、記憶媒体として肉眼で可視可能な「文字」、「記号」等を吐出チップ14に印字し、CCDカメラ等によってこれらを映し出し、可視できるようにしてもよい。実施の形態1では、検体をキュベット11に分注した後で試薬をキュベット11に分注していたが、試薬を分注した後に検体をキュベット11に分注することも可能である。この場合には、予めICタグから吐出ノズル情報を読み取っておき、その情報から演算した試薬量をキュベット11へ分注した後で、検体をキュベット11へ分注すればよい。
【0040】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。実施の形態1では、検体を先に吐出させた後に吐出量に対応した試薬を分注していたが、この実施の形態2では、試薬を先に分注した後に検体を吐出し、測定結果を補正するようにしている。
【0041】
図9は、この実施の形態2にかかる分析装置1Aの概要構成を示すブロック図である。図9に示すように、この分析装置1Aは、実施の形態1で示した制御部3を制御部3Aに代えている。制御部3Aは、試薬分注量演算部31を補正部34に代え、補正部34は、テーブル340を有する。テーブル340には、吐出ノズル情報と対応付けられた補正のための情報が記載されている。その他の構成は、実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0042】
この分析装置1Aは、ホルダ10が上面から見て反時計回りに移動し、分注機構6が所定の量の試薬をキュベット11に分注後、吐出チップ14がこのキュベット11に検体を吐出するようにしている。先に試薬を分注し、量を調整した検体を後から吐出する場合、検体の吐出量が微量であるため調整が難しく、所望の液量比の混合液にして吸光度の測定を行うことが難しい。
【0043】
そこで、一旦、所定の液量比となっていない混合液に対して吸光度測定を行った後、制御部3Aは、リーダ13を介して検知した実質吐出量をもとにこの測定結果が所定の液量比で行った測定結果となるような補正を行う。
【0044】
図10は、この分析装置1Aの一連の動作を示すフローチャートである。図10に示すように、まず、分注機構6は、キュベット11に所定の量の試薬を分注する(ステップS201)。その後、制御部3Aは、吐出チップ14が吐出位置に在るか否かを判断し(ステップS202)、吐出チップ14が吐出位置に在れば(ステップS202,Yes)、このキュベット11に検体を吐出させ(ステップS203)、ICタグ15が記憶する吐出ノズル情報を読取る(ステップS204)。その後、この試薬と検体との混合液に対する吸光度の測定を行い、吸光度の演算を行う(ステップS205)。読取処理部30は、リーダ13を介して実質吐出量Lを入力し、実質吐出量Lが許容範囲内(L0≦L≦L1)にあるか否かを判断する(ステップS206)。実質吐出量Lが許容範囲内(L0≦L≦L1)である場合(ステップS206,Yes)、制御部3Aは、吸光度演算部32が演算した演算結果をそのまま吸光度の結果とする。一方、実質吐出量Lが許容範囲内(L0≦L≦L1)にない場合(ステップS206,No)、補正部34は、テーブル340に記載されている実質吐出量Lに対応した補正係数を演算結果に乗算し、測定結果の補正を行う(ステップS207)。
【0045】
図11は、このテーブル340に記載されている内容の例示である。図11に示すように、表記吐出量に対して実質吐出量とともに液量比と補正係数とが記載されている。また、この例示は、表記吐出量30nLの内容を示しているが、異なる表記吐出量に対応できるようにしている。
【0046】
図12は、この分析装置1Aが、試薬と検体との混合液が所望の液量比でない場合でも測定結果に対して補正を行うことによって、所望の液量比で行った測定結果と一致させることができることを示す模式図である。図12に示すように、たとえば、試薬と検体との所望の液量比1.0%であった場合、試薬3μLを分注した後、表記吐出量30nLであって実質吐出量27nLの検体が吐出されたとする。この場合、試薬と検体との液量比0.9%となる。吸光度演算部32は、液量比0.9%の混合液に対して吸光度の演算を行う。検体の吐出量27nLが許容範囲外であった場合、補正部34は、テーブル340から実質吐出量27nL、液量比0.9%に対応する補正係数1.3を読出し、測定結果に1.3を乗算する。結果、試薬と検体との液量比0.9%に対して測定を行った場合でも、液量比1.0%に対して測定した結果と一致させることができる。
【0047】
この実施の形態2では、先に試薬を分注し、その後検体を吐出した場合であっても分析結果を補正することによって、正確な分析結果を取得することができる。なお、この実施の形態2では、補正部34がテーブル340を有していたが、補正を行う都度、補正係数を演算するようにしてもよい。また、補正部34は、補正係数を分析結果に乗算するようにしていたが、他の方法を用いて演算結果を補正してもよい。
【0048】
上述した実施の形態1では、吐出ノズル142が実際に吐出する吐出量を検知することによって、所望の液量比の混合液を作成でき、高精度の分析が行える。また、実施の形態2の様に分析結果に補正を加えることによっても所望の液量比の混合液に対して行った吸光度測定と同じ分析結果を得ることができる。
【0049】
なお、この実施の形態1では、制御部3が試薬分注量演算部31を有し、実施の形態2では、制御部3Aが補正部34を有していたが、制御部がこの双方が行えるように試薬分注量演算部31と補正部34との双方を有するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の実施の形態1にかかる分析装置の概要構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1にかかる台座と吐出チップの上面を示す平面図である。
【図3】この発明の実施の形態1にかかる吐出チップの取付け状況を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1にかかる加圧機構の断面を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1にかかる吐出チップの詳細を示す斜視図である。
【図6】この発明の実施の形態1にかかる分析装置の分注動作を示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態1にかかるICタグが記憶する内容を示す模式図である。
【図8】この発明の実施の形態1にかかる分析装置の動作を示す模式図である。
【図9】この発明の実施の形態2にかかる分析装置の概要構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態2にかかる分析装置の分注動作を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態2にかかるテーブルの内容を示す模式図である。
【図12】この発明の実施の形態2にかかる分析装置の動作を示す模式図である。
【符号の説明】
【0051】
1,1A 分析装置
2 作業テーブル
3,3A 制御部
4 保冷庫
5 試薬容器
6,16 分注機構
7,160 分注アーム
8 光源部
9 受光部
10 ホルダ
11 キュベット
12 加圧機構
13 リーダ
14 吐出チップ
15 ICタグ
17 洗浄部
18 検体ラック
19 検体容器
20 台座
30 読取情報処理部
31 試薬分注量演算部
32 吸光度演算部
33 リーダ駆動部
34 補正部
140 リザーバ
141 流路
142 吐出ノズル
143 吐出口
340 テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の液体を保持し、当該液体を外部へ吐出する吐出量を決定する吐出ノズルと、
前記吐出ノズルに接続されるとともに前記液体を外部へ吐出する際の流路となる吐出口と、
前記吐出口から前記液体を外部へ吐出するための圧力を当該液体に加える加圧機構と、
外部へ吐出される前記液体の吐出量に関する情報を保持する情報記憶部と、
を有することを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記吐出ノズルによって決定される前記吐出量は、当該吐出ノズルの容積に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記吐出ノズルを複数有することを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項4】
前記情報記憶部は、複数の前記吐出ノズルごとに前記吐出量に関する情報を保持することを特徴とする請求項3に記載の分注装置。
【請求項5】
前記情報記憶部が保持する前記吐出量に関する情報は、前記吐出ノズルの個体差に応じた情報であることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項6】
前記個体差に応じた情報とは、前記吐出ノズルの容積のばらつきの情報であることを特徴とする請求項5に記載の分注装置。
【請求項7】
前記吐出ノズルの容積のばらつきの情報は、外部へ吐出される前記液体の量である実効分注量であることを特徴とする請求項6に記載の分注装置。
【請求項8】
前記吐出ノズルの容積のばらつきの情報は、前記吐出ノズルの製造ロットもしくは前記吐出ノズルを製造する際に利用した金型の番号に対応することを特徴とする請求項6に記載の分注装置。
【請求項9】
前記情報記憶部は、ICタグ、光学的に読み取り可能なコード、または肉眼で可視可能な文字もしくは記号を含むことを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項10】
前記吐出ノズルと接続されるとともに前記液体を保持するリザーバをさらに有し、
前記リザーバに保持された前記液体は、毛細管力を利用して前記吐出ノズルに導入されることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項11】
前記液体は、生体試料であることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項12】
所定量の液体を保持し、当該液体を外部へ吐出する吐出量を決定する吐出ノズルと、
前記吐出ノズルに接続されるとともに前記液体を外部へ吐出する際の流路となる吐出口と、
前記吐出口から前記液体を外部へ吐出するための圧力を当該液体に加える加圧機構と、
外部へ吐出される前記液体の吐出量に関する情報を保持する情報記憶部と、
前記情報記憶部に保持された前記吐出量に関する情報を読み取る読取部と、
前記読取部で読み取った前記吐出量に関する情報を処理する情報処理部と、
を有することを特徴とする分析装置。
【請求項13】
前記吐出量に関する情報に応じて補正を加える補正手段をさらに有することを特徴とする請求項12に記載の分析装置。
【請求項14】
前記補正手段は、前記吐出量に関する情報と対応付けられた補正のための情報を有することを特徴とする請求項13に記載の分析装置。
【請求項15】
前記補正手段は、外部へ吐出された後の前記液体に加える試薬の量を調整することを特徴とする請求項13に記載の分析装置。
【請求項16】
前記補正手段は、外部へ吐出された後の前記液体の分析データを補正することを特徴とする請求項13に記載の分析装置。
【請求項17】
所定量の液体を保持し、当該液体を外部へ吐出する吐出量を決定する吐出ノズルと、
前記吐出ノズルに接続されるとともに前記液体を外部へ吐出する際の流路となる吐出口と、
前記液体に圧力が印加されることにより前記吐出口から外部へ吐出される前記液体の吐出量に関する情報を保持する情報記憶部と、
を有することを特徴とする吐出チップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−170973(P2007−170973A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368655(P2005−368655)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】