説明

分注装置、分注装置の分注プローブ洗浄方法及び自動分析装置

【課題】移動速度を速めることなく、分注プローブの移動時間を短縮することが可能な分注装置、分注装置の分注プローブ洗浄方法及び自動分析装置を提供すること。
【解決手段】回動、かつ、昇降され、試薬及び検体を含む液体試料を分注する分注プローブと、分注後の前記分注プローブを洗浄する洗浄槽とを備えた分注装置5、分注装置の分注プローブ洗浄方法及び自動分析装置。分注装置5は、分注プローブ5cの回動に伴って分注プローブを洗浄槽64へ接近させ、洗浄槽の位置で分注プローブ下端が洗浄槽内に配置されて洗浄された後、分注プローブと洗浄槽とを離れさせ、分注プローブ下端が洗浄槽外へ移動されるように分注プローブと洗浄槽との相対位置を制御する分注制御部51を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注プローブの吐出位置から洗浄槽の間の移動時間及び洗浄槽から吸引位置の間の移動時間を短縮する分注装置、分注装置の分注プローブ洗浄方法及び自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、分注プローブによって検体や試薬を分注する分注装置を備えている(例えば、特許文献1参照)。分注装置は、吸引位置、吐出位置及び洗浄槽の間を所定順序で分注プローブを移動させることによって検体等を分注しており、上下方向に移動させる昇降と、水平方向に移動させる回動とによって分注プローブを移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−224583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動分析装置は、検体の処理数を増加させる必要から高速処理の要求が高まっている。この場合、自動分析装置は、装置構成上、検体と試薬の反応時間や分注プローブの洗浄時間等を必須の時間として確保する必要があることから、検体分析時における分注プローブの移動に要する時間の短縮が求められるようになった。この場合、分注プローブの移動速度を速めようとすると、駆動手段が大型化するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、移動速度を速めることなく、分注プローブの移動時間を短縮することが可能な分注装置、分注装置の分注プローブ洗浄方法及び自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注装置は、回動、かつ、昇降され、試薬及び検体を含む液体試料を分注する分注プローブと、分注後の前記分注プローブを洗浄する洗浄槽とを備えた分注装置であって、前記分注プローブの回動に伴って前記分注プローブと前記洗浄槽とを接近させ、前記洗浄槽の位置で前記分注プローブ下端が前記洗浄槽内に配置されて洗浄された後、前記分注プローブと前記洗浄槽とを離れさせ、前記分注プローブ下端が前記洗浄槽外へ移動されるように前記分注プローブと前記洗浄槽との相対位置を制御する分注制御手段を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記分注プローブの回動と連動して回動し、外周に昇降用のガイド溝が形成された回動部材を備え、前記洗浄槽は、前記ガイド溝に係合し、前記回動部材の回動に伴って当該洗浄槽を昇降させる係合部材と、前記洗浄槽の昇降を案内するガイド部材とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記洗浄槽は、前記分注プローブの回動方向に沿って円弧状に成形され、前記分注プローブ回動方向の両側壁には前記分注プローブの当該洗浄槽への導入と導出を案内する凹部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注装置の分注プローブ洗浄方法は、回動、かつ、昇降され、試薬及び検体を含む液体試料を分注する分注プローブと、分注後の前記分注プローブを洗浄する洗浄槽とを備えた分注装置の分注プローブ洗浄方法であって、前記分注プローブの回動に伴って前記分注プローブと前記洗浄槽とを接近させ、前記洗浄槽の位置で前記分注プローブ下端を前記洗浄槽内へ導入させる導入工程と、前記分注プローブ下端の被洗浄部分を前記洗浄槽内の洗浄水中に保持して洗浄する洗浄工程と、前記分注プローブの更なる回動に伴って前記分注プローブと前記洗浄槽とを離れさせ、前記分注プローブ下端を前記洗浄槽外へ導出させる導出工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の分注装置の分注プローブ洗浄方法は、上記の発明において、前記導入工程は、前記分注プローブの回動に伴って前記洗浄槽を上昇させ、前記導出工程は、前記分注プローブの回動に伴って前記洗浄槽を下降させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の分注装置の分注プローブ洗浄方法は、上記の発明において、前記洗浄槽は、前記分注プローブの回動方向に沿って円弧状に成形され、前記分注プローブ回動方向の両側壁には前記分注プローブの当該洗浄槽への導入と導出を案内する凹部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、試薬と検体とが反応した反応液の光学的特性をもとに前記検体を分析する自動分析装置であって、前記分注装置を備え、当該分注装置によって前記試薬及び前記検体を反応容器へ分注し、前記試薬と前記検体の反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回動駆動手段による分注プローブの回動の制御によって分注プローブの移動と洗浄を実行させるので、移動速度を速めることなく、分注プローブの移動時間を短縮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の分注装置を搭載した自動分析装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の分注装置の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の分注装置の断面正面図である。
【図4】図4は、分注装置の回動部材の要部を示す斜視図である。
【図5】図5は、洗浄の際に昇降する洗浄槽に対する分注プローブの相対的な移動軌跡を示す図である。
【図6】図6は、洗浄槽が最下降位置へ移動した分注装置の断面正面図である。
【図7】図7は、本発明の分注装置の分注プローブ洗浄方法を説明する図であり、分注プローブの水平方向への回動に伴う、分注プローブと洗浄槽との配置の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の分注装置、分注装置の分注プローブ洗浄方法及び自動分析装置にかかる実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の分注装置を搭載した自動分析装置の一例を示す概略構成図である。図2は、本発明の分注装置の構成を示す斜視図である。図3は、本発明の分注装置の断面正面図である。
【0016】
自動分析装置1は、図1に示すように、筺体2に検体テーブル3、検体分注装置5、キュベットホイール7、測光装置9、洗浄装置10、撹拌装置11、試薬分注装置12、試薬テーブル13及び読取装置16等が設けられている。
【0017】
検体テーブル3は、駆動手段によって図1に示す矢印方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0018】
検体分注装置5は、キュベットホイール7に保持された反応容器8に検体を分注する分注装置であり、分注制御部51による制御のもとに、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次反応容器8に分注し、分注後の分注プローブ5cを洗浄する。分注制御部51は、ECU等の電子制御手段が使用されている。検体分注装置5は、図2及び図3に示すように、支柱5a、アーム5b、分注プローブ5c及びナット5dを有する他、液面検知手段(図示せず)と筐体2内に配置される分注筐体50を備えている。ここで、図2及び図3は、分注プローブ5cが洗浄位置へ移動され、上昇した洗浄槽64内に下端が配置されている状態を示しており、分注プローブ5cが回動する際の最上昇位置を示している。
【0019】
支柱5aは、ナット5dに上下動自在に挿通されてナット5dと共に軸周りに回転するボールスプラインを構成するスプライン軸であり、分注筐体50に設けた昇降モータ52によって上下方向に昇降されると共に、分注筐体50に設けた回動モータ56によって水平面内を軸廻りに回動される。アーム5bは、支柱5aに支持され、分注プローブ5cは、アーム5bに支持されている。
【0020】
分注プローブ5cは、検体を分注した後、洗浄槽64へ移動され、内外を洗浄水によって洗浄される。ナット5dは、下端がベアリング50fを介して分注筐体50に支持され、中間上部は支持テーブル58の支持板58aにベアリング58bを介して支持されている。また、ナット5dは、上端に伝達部材61のプーリ61aが取り付けられ、ベアリング50fとベアリング58bとの間には伝達部材57のプーリ57cが取り付けられている。
【0021】
分注筐体50は、図2及び図3に示すように、ベース50aに側板50b,50cが設けられると共に、側板50b,50c間に支持板50dが掛け渡されており、上部に天板50eが設けられている。分注筐体50は、検体分注装置5を支持すると共に、昇降モータ52、回動モータ56、伝達部材57、支持テーブル58、伝達部材61、支持テーブル62及び洗浄槽64が設置されている。
【0022】
昇降モータ52は、分注プローブ5cを昇降させる昇降駆動手段であり、図2及び図3に示すように、分注筐体50の支持板50d下面に取り付けられ、支持板50dから上方へ延出した回転軸52aにボールねじ53のねじ軸53aがカプラ52bによって連結されている。ボールねじ53は、ナット53bが昇降部材54に保持されている。ここで、昇降モータ52は、分注プローブ5cの分注動作時と洗浄動作時とでは、分注プローブ5cが異なる高さを回動するように分注制御部51によって制御される。即ち、検体テーブル3の検体容器4から吸引した検体をキュベットホイール7の反応容器8へ吐出するために分注プローブ5cを回動する際には、昇降する洗浄槽64を避けるように、最高位置で分注プローブ5cを回動させる。一方、キュベットホイール7の位置から洗浄槽64を通って検体テーブル3の位置へ戻るために分注プローブ5cを回動する際は、途中で分注プローブ5c下端が洗浄槽64内に配置されて洗浄水で洗浄されるように最高位置よりも低い位置で分注プローブ5cを回動させる。
【0023】
昇降部材54は、図2及び図3に示すように、一端側にボールねじ53が取り付けられ、他端側をガイドシャフト55がスライド自在に上下に貫通している。また、昇降部材54は、ベアリング54aを介して支柱5aの下端を支持している。ガイドシャフト55は、ボールねじ53のねじ軸53aの回動によるナット53bを保持した昇降部材54の上下動を案内する。従って、昇降モータ52を駆動してねじ軸53aを回動させると、昇降部材54は、図3に矢印で示すように、ねじ軸53a及びガイドシャフト55に沿って上下方向へ移動する。このとき、支柱5aは、ナット5dと共にボールスプラインを構成している。このため、昇降部材54の上下方向への移動に伴って支柱5aがナット5dの位置を変更させることなく、ナット5dに対して上下方向へ移動する。
【0024】
回動モータ56は、分注プローブ5cを回動させる回動駆動手段であり、図2及び図3に示すように、分注筐体50の天板50e一側下面に取り付けられ、天板50eから上方へ延出した回動軸56aにプーリ57aが取り付けられている。伝達部材57は、ナット5dを介して回動モータ56の回動を支柱5aへ伝達するもので、プーリ57aとプーリ57cとの間に巻き掛けたベルト57bを有している。
【0025】
支持テーブル58は、図2及び図3に示すように、ナット5dの中間上部を支持するテーブルであり、天板50eに立設した4本の柱58cの上に支持板58aが設置されている。伝達部材61は、回動モータ56から支柱5aへ伝達された回動を回動部材63へ伝達するもので、プーリ61aとの間に巻き掛けたベルト61bを有している。従って、回動モータ56を駆動して、ベルト57bを介して回動軸56aの回動をナット5dへ伝達すると、ナット5dと共に支柱5aが回動し、分注プローブ5cが検体テーブル3とキュベットホイール7との間を回動する。
【0026】
支持テーブル62は、図2及び図3に示すように、回動部材63の上端を支持するテーブルであり、天板50eに立設した2本の柱62aの上に支持板62bが設置されている。
【0027】
回動部材63は、図3及び図4に示すように、円柱状の本体63aの側面に、係合ロッド64eの先端が係合するガイド溝63bが設けられている。回動部材63は、下端に小径部63cが形成され、上部には巻掛部63dを介して小径部63eが形成されている。回動部材63は、下端の小径部63cがベアリング50gを介して天板50eに支持され、上端の小径部63eがベアリング62cを介して支持テーブル62の支持板62bに支持されている。ガイド溝63bは、本体63aの側面に上に凸、かつ、最上位置を中心として左右対称に形成されている。巻掛部63dには、ベルト61bが巻き掛けられている。
【0028】
このとき、回動部材63は、係合ロッド64eの先端がガイド溝63bの最上部に係合するタイミングにおいて、分注プローブ5cが回動方向に沿った洗浄槽64の中央に位置するように予め配置が調整される。この結果、分注プローブ5cが検体容器4から検体を吸引して上昇した後、回動を開始した際、洗浄槽64の位置においては、分注プローブ5cの回動に伴う洗浄槽64の上昇によって、洗浄槽64に対して、分注プローブ5cの下端は、図5に示すような軌跡を描いて移動する。これは、試薬分注装置12においても同様である。
【0029】
洗浄槽64は、図2及び図3に示すように、天板50e上の回動部材63と隣接する位置に配置され、本体64aが分注プローブ5cの回動方向に沿って円弧状に成形されている。本体64aは、分注プローブ5c回動方向の両側壁に分注プローブ5cを通過させる凹部64bが形成されている。また、本体64aは、回動部材63と対向する反対側の側壁に洗浄水の注水管64cが接続されると共に、底面の中央に排水管64dが接続されている。このとき、注水管64cから洗浄槽64への洗浄水の注水と、排水管64dからの洗浄水の排出は、分注制御部51が制御する。更に、本体64aは、回動部材63と対向する側壁下部側に先端がガイド溝63bに係合する係合ロッド64eが取り付けられている。そして、洗浄槽64は、本体64a下面の排水管64dを挟む両側にガイドシャフト64fが設けられている。各ガイドシャフト64fは、分注筐体50の天板50eをスライド自在に貫通しており、洗浄槽64の上下動を案内する。
【0030】
なお、液面検知手段は、検体分注の際に、検体容器4に収容された検体の液面を分注プローブ5cと検体容器4近傍に配置した電極との間の静電容量の変化によって検知する。
【0031】
キュベットホイール7は、検体テーブル3とは異なる駆動手段によって図1に示す矢印方向に回転され、外周には周方向に沿って反応容器8を配置する複数の凹部7aが等間隔で設けられている。キュベットホイール7は、各凹部7aの半径方向両側に測定光が通過する開口が形成されている。キュベットホイール7は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転し、四周期で反時計方向に凹部7aの1個分回転する。キュベットホイール7の外周には、測光装置9、洗浄装置10及び撹拌装置11が配置されている。
【0032】
反応容器8は、容量が数μL〜数十μLと微量なキュベットであり、測光装置9の光源から出射された分析光に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。
【0033】
測光装置9は、図1に示すように、キュベットホイール7の外周近傍に配置され、反応容器8に保持された液体を分析する分析光を出射する光源と、液体を透過した分析光を分光して受光する受光器とを有している。測光装置9は、前記光源と受光器がキュベットホイール7の凹部7aを挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。
【0034】
洗浄装置10は、反応容器8から液体や洗浄液を排出する排出手段と、洗浄液の分注手段とを有している。洗浄装置10は、測光終了後の反応容器8から測光後の液体を排出した後、洗浄液を分注する。洗浄装置10は、洗浄液の分注と排出の動作を複数回繰り返すことにより、反応容器8の内部を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器8は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0035】
撹拌装置11は、反応容器8に分注された検体や試薬を、例えば、撹拌棒によって撹拌する。但し、撹拌装置11は、反応容器8に保持された液体を非接触で撹拌する必要がある場合には、反応容器8に表面弾性波素子を取り付け、表面弾性波素子が発生する音波によって撹拌してもよい。
【0036】
試薬分注装置12は、キュベットホイール7に保持された複数の反応容器8に試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬を順次反応容器8に分注する。試薬分注装置12は、支柱、アーム12b、分注プローブ及びナットを有する他、液面検知手段(図示せず)と筐体2内に配置される分注筐体50を備えており、検体分注装置5と同様に構成されている。このため、以下の説明において必要な場合、検体分注装置5と同一の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0037】
試薬テーブル13は、検体テーブル3及びキュベットホイール7とは異なる駆動手段によって図1に示す矢印方向に回転され、扇形に成形された収納室13aが周方向に沿って複数設けられている。収納室13aのそれぞれには、試薬容器14が着脱自在に収納される。複数の試薬容器14は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を記録したバーコードラベル等の情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。
【0038】
ここで、試薬を分注した分注プローブは、キュベットホイール7と試薬テーブル13との間に配置される試薬分注装置12の洗浄槽64に移動され、洗浄水によって内外を洗浄される。
【0039】
読取装置16は、試薬テーブル13の外周には、試薬容器14に貼付した前記情報記録媒体に記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部17へ出力する。
【0040】
制御部17は、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用され、検体テーブル3、検体分注装置5、キュベットホイール7、測光装置9、洗浄装置10、撹拌装置11、試薬分注装置12、試薬テーブル13、読取装置16、入力部18及び出力部19等と接続されている。制御部17は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記情報記録媒体から読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設定範囲外の場合、分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。制御部17は、図1に示すように、分析部17aを有している。
【0041】
分析部17aは、ホストコンピュータから入力される検体や試薬の識別番号、分析項目、再検の要否等、分析に関連する情報を記憶する。また、分析部17aは、測光装置9が測光した光量に基づいて求められるキュベットC内の検体と試薬の反応液の吸光度(光学的特性)から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を記憶する。
【0042】
入力部18は、制御部17へ検体数や検査項目等の入力操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。
【0043】
出力部19は、分析結果を含む分析内容や警報等を表示する部分であり、例えば、ディスプレイパネル等が使用される。ここで、出力部19は、警報等を音声によって告知するスピーカを使用してもよい。
【0044】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転するキュベットホイール7によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器8に試薬分注装置12が試薬容器14から試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器8は、キュベットホイール7によって周方向に沿って搬送され、検体分注装置5によって検体テーブル3に保持された複数の検体容器4から検体が順次分注される。
【0045】
そして、検体が分注された反応容器8は、キュベットホイール7によって撹拌装置11へ搬送され、分注された試薬と検体が順次撹拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液を保持した反応容器8は、キュベットホイール7が再び回転したときに測光装置9を通過し、光源から出射された分析光が透過する。このとき、反応容器8を透過した分析光は、受光部で測光され、吸光度をもとに制御部17によって成分濃度等が分析される。また、分析が終了した反応容器8は、洗浄装置10によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0046】
このとき、検体分注装置5は、係合ロッド64eの先端がガイド溝63bの最上部に係合するタイミングにおいて、分注プローブ5cが回動方向に沿った洗浄槽64の中央に位置するように予め回動部材63の配置が調整されている。このため、検体分注装置5は、昇降モータ52を駆動してボールねじ53によって昇降部材54を上昇させ、検体容器4内の検体を吸引した分注プローブ5cを、最上昇位置へ移動させる。このとき、係合ロッド64eの先端は、ガイド溝63bの最下部に係合しているので、洗浄槽64は、図6に示すように、最下降位置へ移動している。
【0047】
そして、検体分注装置5は、分注制御部51の制御のもとに、回動モータ56を駆動して、ベルト57bを介して回動軸56aの回動をナット5dへ伝達する。すると、検体分注装置5は、ナット5dと共に支柱5aが回動し、分注プローブ5cが洗浄槽64へ接近する水平方向へ回動を開始すると共に、ナット5dとの間にベルト61bが巻き掛けられている回動部材63が連動して回動する。回動部材63の回動により、洗浄槽64が図6に示す位置から上昇を開始し、図7(1)に示すように、分注プローブ5c下端の被洗浄部分を凹部64bから洗浄槽64内へ導入する(導入工程)。
【0048】
このとき、洗浄槽64には、分注制御部51の制御のもとに、注水管64cから洗浄水が注水される。また、分注プローブ5cは、図7に一点鎖線で示すように、水平方向へ移動するだけであり、洗浄槽64が分注プローブ5cの回動と連動して昇降する。
【0049】
そして、回動部材63が更に回動すると、図7(2)に示すように、分注プローブ5c下端の被洗浄部分が洗浄槽64内の洗浄水W中に保持されて洗浄される(洗浄工程)。このとき、分注プローブ5cは、残余の検体を押出水と共に吐出し、内外が水洗浄水によって洗浄される。また、洗浄槽64は、最上昇位置に保持される。ここで、洗浄工程においては、分注プローブ5cは、洗浄槽64内を回動させながら洗浄してもよいし、一端停止させ、停止した状態で洗浄してもよい。
【0050】
次いで、分注プローブ5cが洗浄槽64から離れる水平方向へ回動するのに伴って回動部材63が更に回動すると、洗浄槽64が最上昇位置から下降を開始し、図7(3)に示すように、分注プローブ5c下端の被洗浄部分が洗浄槽64外へ導出される(導出工程)。
【0051】
このように、検体分注装置5は、回動モータ56による分注プローブ5cの回動の制御によって分注プローブ5cの移動と洗浄を実行させるため、分注プローブ5cを洗浄する際、昇降モータ52による分注プローブ5cの昇降動作が不要となる。このため、本発明によれば、分注プローブ5cの洗浄槽64への下降や上昇に要する時間が不要となるので、移動速度を速めることなく、分注プローブ5cの分注プローブの吐出位置から洗浄槽64の間及び洗浄槽64から吸引位置の間の移動時間を短縮することができる。従って、本発明によれば、分注プローブ5cの昇降時間を洗浄時間に繰り入れることにより、分注プローブ5cの洗浄能力を向上させることができる。
【0052】
尚、上記実施の形態は、分注プローブ5cを洗浄する際、分注プローブ5cを位置方向へ回動させ、この回動と連動して洗浄槽64を昇降させることによって分注プローブ5cを洗浄するようにした。しかし、自動分析装置1は、分注プローブ5cを洗浄する際、回動モータ56による分注プローブ5cの回動と昇降モータ52による分注プローブ5cの昇降とを分注制御部51によって同時に実行させることによって分注プローブ5cと洗浄槽64との相対位置を制御してもよい。このようにすると、洗浄槽64を昇降させる必要がなく、伝達部材61、支持テーブル62及び回動部材63が不要になる。
【0053】
また、自動分析装置1は、試薬テーブル13が1つの場合について説明したが、試薬テーブル13は複数であってもよい。また、自動分析装置1は、検体容器4を検体テーブル3にセットして検体テーブル3によって検体吸引位置まで搬送したが、検体容器4をラックにセットし、検体容器4をラックによって検体吸引位置まで搬送するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明の分注装置、分注装置の分注プローブ洗浄方法及び自動分析装置は、移動速度を速めることなく、分注プローブの移動時間を短縮するのに有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 自動分析装置
2 筺体
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注装置
5a 支柱
5b アーム
5c 分注プローブ
5d ナット
50 分注筐体
51 分注制御部
52 昇降モータ
53 ボールねじ
54 昇降部材
55 ガイドシャフト
56 回動モータ
57 伝達部材
58 支持テーブル
61 伝達部材
62 支持テーブル
63 回動部材
64 洗浄槽
7 キュベットホイール
8 反応容器
9 測光装置
10 洗浄装置
11 撹拌装置
12 試薬分注装置
13 試薬テーブル
14 試薬容器
16 読取装置
17 制御部
18 入力部
19 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動、かつ、昇降され、試薬及び検体を含む液体試料を分注する分注プローブと、分注後の前記分注プローブを洗浄する洗浄槽とを備えた分注装置であって、
前記分注プローブの回動に伴って前記分注プローブと前記洗浄槽とを接近させ、前記洗浄槽の位置で前記分注プローブ下端が前記洗浄槽内に配置されて洗浄された後、前記分注プローブと前記洗浄槽とを離れさせ、前記分注プローブ下端が前記洗浄槽外へ移動されるように前記分注プローブと前記洗浄槽との相対位置を制御する分注制御手段を備えることを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記分注プローブの回動と連動して回動し、外周に昇降用のガイド溝が形成された回動部材を備え、
前記洗浄槽は、前記ガイド溝に係合し、前記回動部材の回動に伴って当該洗浄槽を昇降させる係合部材と、前記洗浄槽の昇降を案内するガイド部材とを有することを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記洗浄槽は、前記分注プローブの回動方向に沿って円弧状に成形され、前記分注プローブ回動方向の両側壁には前記分注プローブの当該洗浄槽への導入と導出を案内する凹部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の分注装置。
【請求項4】
回動、かつ、昇降され、試薬及び検体を含む液体試料を分注する分注プローブと、分注後の前記分注プローブを洗浄する洗浄槽とを備えた分注装置の分注プローブ洗浄方法であって、
前記分注プローブの回動に伴って前記分注プローブと前記洗浄槽とを接近させ、前記洗浄槽の位置で前記分注プローブ下端を前記洗浄槽内へ導入させる導入工程と、
前記分注プローブ下端の被洗浄部分を前記洗浄槽内の洗浄水中に保持して洗浄する洗浄工程と、
前記分注プローブの更なる回動に伴って前記分注プローブと前記洗浄槽とを離れさせ、前記分注プローブ下端を前記洗浄槽外へ導出させる導出工程と、
を含むことを特徴とする分注装置の分注プローブ洗浄方法。
【請求項5】
前記導入工程は、前記分注プローブの回動に伴って前記洗浄槽を上昇させ、
前記導出工程は、前記分注プローブの回動に伴って前記洗浄槽を下降させることを特徴とする請求項4に記載の分注装置の分注プローブ洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄槽は、前記分注プローブの回動方向に沿って円弧状に成形され、前記分注プローブ回動方向の両側壁には前記分注プローブの当該洗浄槽への導入と導出を案内する凹部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の分注装置の分注プローブ洗浄方法。
【請求項7】
試薬と検体とが反応した反応液の光学的特性をもとに前記検体を分析する自動分析装置であって、
請求項1〜3のいずれか一つに記載の分注装置を備え、当該分注装置によって前記試薬及び前記検体を反応容器へ分注し、前記試薬と前記検体の反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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