説明

分注装置、検体検査システム、分注方法、検体検査方法、分注プログラム、検体検査プログラム

【課題】試料のセットや操作など、煩わしい手間を省くことができるとともに、測定忘れや測定タイミングの誤実施などのエラーを回避すること。
【解決手段】分注モジュール130は、分注部320と、仕分部350と、試料保存庫370と、試料容器保持部372と、試料容器移載ユニット374と、制御部とを備える。試料保存庫370は、分析モジュール140を校正するための標準試料と、分析モジュール140を統計学的品質管理するための精度管理用試料とを収容する。試料容器保持部372および試料容器移載ユニット374は、試料保存庫370に収容される試料をそれぞれ検体採取位置321に移送する。制御部は、各試料の移送のタイミングを制御する。分注部320は、試料を採取して小分けする。仕分部350は、分注部320によって小分けされた試料を分析モジュール140に向けて発送するための仕分けをおこなう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、患者検体を分注する分注装置、当該分注装置に用いられる分注方法、当該分注装置を備えた検体検査システム、当該検体検査システムに用いられる検体検査方法、分注プログラム、および検体検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、臨床検査では分析装置を備えた検体検査システムを用いて患者検体に含まれる被検物質を化学的に定量することがおこなわれている。分析装置は、分析精度を保証するために、標準試料を用いた分析装置の校正と、精度管理用試料を用いた測定結果に基づく統計学的品質管理などを実施するようにしたものが知られている(たとえば、下記特許文献1参照。)。統計学的品質管理としては、XMean−R管理法が多用されている。
【0003】
XMean−R管理法は、この統計管理単位内にランダムに、つまり「真に無作為で」複数個の精度管理用試料を測定し、その結果を統計学的に比較評価することにより、当該管理単位内の測定結果が必要な精度を保有しているかどうかを統計学的に証明するものである。具体的には、たとえば、XMean−R管理法による管理では、統計管理単位としての測定検体集団を定義し、その測定検定集団の患者検体を測定する間に、精度管理用試料を無作為のもとでランダムに挿入し、当該精度管理用試料の測定をおこなうことが必須となる。精度管理用試料の測定回数は、設計に基づくものであり、検査項目毎の管理の内容や手法により異なる。測定検体集団(統計管理単位)は、数量単位(たとえば、連続する1000検体)や、時間単位(たとえば、9時から18時までといった時間単位、1日といった日単位、1週間といった週単位など)などである。
【0004】
一方、分析装置を校正するための標準試料の測定は、設定された所定の間隔でおこなわれる。標準試料の測定タイミングは、検査項目毎の管理の内容や手法の設計により異なり、具体的には、たとえば、電源投入時、試薬交換時、測定検体集団の始点、さらには、リアルタイムで継続されている精度管理により測定異常が検出された直後、などが挙げられる。
【0005】
上記の標準試料や精度管理用試料は、専用容器や試験管などに収容され、分析装置内部に設けられたディスク形試料容器保持部やラック形試料容器保持部の所定の位置に配置されている。これらの標準試料や精度管理用試料は、患者検体容器保持部に患者検体と混在して配置される場合もある。そして、これら標準試料や精度管理用試料は、測定の都度、採取され、反応容器に分取されて反応試薬と混合され、被検物質が定量される。
【0006】
【特許文献1】特開平8−35970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したXMean−R管理法を用いた分析装置では、無作為でランダムな精度管理用試料の挿入作業自体が非常に煩雑で精細な作業となることから、実際には、ほとんどの場合において、その測定間隔がおおよそ一定で作為的な間隔で挿入されているのが現状である。このため、従来の分析装置では、精度管理が不完全なものが多く、たとえば事故発生の際に、分析精度保証の根拠とはならないといった不具合がある。
【0008】
また、分析装置を複数備えた場合には、各分析装置内に標準試料や精度管理用試料が収納されているため、システム全体として大型化するだけでなく、各分析装置に用いられる標準試料および精度管理用試料の状態がそれぞれ微妙に異なるため、それぞれの分析精度が異なってしまうといった問題がある。
【0009】
また、分析装置に保管される標準試料や精度管理用試料は、保存状態によっては蒸発などにより、僅かずつながら濃縮するおそれもある。したがって、これらの標準試料や精度管理用試料を取り替えずに長期間使用すると分析精度が低下するため、操作者が手作業にて適切な時期に新しいものと交換しなければならず、手間がかかるといった問題があった。
【0010】
このように、従来の技術においては、分析装置の校正を行うための標準試料の挿入、および精度管理用試料の挿入は、適切な時期におこなうことが困難であり、十分な精度管理がおこなわれていないのが現状である。特に、24時間の連続稼働をおこなう分析装置や、複数の分析装置を備えた大型の検体検査システムにおいては、このような不具合が顕著になるといった問題があった。
【0011】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、分析装置に対する精度管理用試料のセットや、精度管理用試料の測定をおこなうために分析装置に対しておこなう操作など、煩わしい手間を省くことができ、測定忘れや測定タイミングの誤実施などのエラーを回避することができるとともに、効率的に統計学的品質管理をおこなうことができる分注装置、検体検査システム、分注方法、検体検査方法、分注プログラム、および検体検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる分注装置は、所定の分注位置にて患者検体を採取して小分けする分注手段と、前記分注手段によって小分けされた前記患者検体を、当該患者検体を分析する所定の分析装置に向けて発送するための仕分けをおこなう仕分手段と、を備えた分注装置において、前記分析装置を校正するための標準試料と、前記分析装置を統計学的品質管理するための精度管理用試料とを収容する収容部と、前記収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料をそれぞれ前記分注位置に移送する移送手段と、前記移送手段による前記標準試料の移送のタイミングおよび前記精度管理用試料の移送のタイミングをそれぞれ制御する制御手段と、を備え、前記分注手段は、前記移送手段によって移送された前記標準試料および前記精度管理用試料を前記分注位置にて採取して小分けし、前記仕分手段は、前記分注手段によって小分けされた前記標準試料および前記精度管理用試料を前記分析装置に向けて発送するための仕分けをおこなうことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる分注装置は、上記に記載の発明において、前記制御手段は、前記移送手段による前記標準試料の移送のタイミングを予め設定される所定のタイミングに制御し、前記移送手段による前記精度管理用試料の移送のタイミングを統計管理単位内でランダマイズしたタイミングに制御することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる分注装置は、上記に記載の発明において、前記制御手段は、前記分注位置へ分注順に搬送される患者検体に前記精度管理用試料を割り込ませる制御をおこなうことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる分注装置は、上記に記載の発明において、前記制御手段は、前記統計管理単位の始点、前記標準試料の交換時、前記精度管理用試料の交換時、装置の起動時、または統計学的品質管理によって測定異常が検出された直後に、前記移送手段に対して前記標準試料を移送させる制御をおこなうことを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる分注装置は、上記に記載の発明において、前記収容部は、所定の温度を保った状態で、前記標準試料および前記精度管理用試料を収容することを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる分注装置は、上記に記載の発明において、前記収容部は、前記標準試料および前記精度管理用試料を交換または補充するための挿入口を備えることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる分注装置は、上記に記載の発明において、前記収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料の試料容器には、栓が装着され、前記移送手段は、前記収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料をそれぞれ前記分注位置に移送する際に、前記栓を開栓する試料開栓手段を備えることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる分注装置は、上記に記載の発明において、前記収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料の試料容器には、前記各標準試料および前記各精度管理用試料を識別するための識別表示が施され、前記識別表示を読み取る読取手段をさらに備え、前記制御手段は、前記読取手段によって読み取られた前記識別表示に基づいて、前記標準試料および前記精度管理用試料を選択するとともに、選択した前記標準試料および前記精度管理用試料を前記移送手段に移送させるように制御することを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる分注装置は、上記に記載の発明において、前記分注手段は、前記患者検体または試料を吸引および吐出するノズルと、前記ノズルの先端に着脱自在に取り付けられるノズルチップと、前記ノズルチップを脱着する脱着手段とを備えることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる分注装置は、搬送手段を介して搬送された患者検体を分注し、分注後の前記患者検体を後段の分析装置に発送するために再度前記搬送手段に送り出す分注装置において、前記分析装置を校正するための標準試料と、前記分析装置を統計学的品質管理するための精度管理用試料とを収容する収容部と、前記標準試料を前記搬送手段に送り出すタイミングを予め設定される所定のタイミングに制御し、前記精度管理用試料を前記搬送手段に送り出すタイミングを統計管理単位内でランダマイズしたタイミングに制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる分注方法は、所定の分注位置にて患者検体を採取して小分けする分注工程と、前記分注工程によって小分けされた前記患者検体を、当該患者検体を分析する所定の分析装置に向けて発送するための仕分けをおこなう仕分工程と、を含む分注方法において、前記分析装置を校正するための標準試料と、前記分析装置を統計学的品質管理するための精度管理用試料とを収容する収容部から、前記標準試料および前記精度管理用試料をそれぞれ前記分注位置に移送する移送工程と、前記移送工程による前記標準試料の移送のタイミングおよび前記精度管理用試料の移送のタイミングをそれぞれ制御する制御工程と、を含み、前記分注工程は、前記移送工程によって移送された前記標準試料および前記精度管理用試料を前記分注位置にて採取して小分けし、前記仕分工程は、前記分注工程によって小分けされた前記標準試料および前記精度管理用試料を前記分析装置に向けて発送するための仕分けをおこなうことを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる分注方法は、上記に記載の発明において、前記制御工程は、前記移送工程による前記標準試料の移送のタイミングを予め設定される所定のタイミングに制御し、前記移送工程による前記精度管理用試料の移送のタイミングを統計管理単位内でランダマイズしたタイミングに制御することを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる分注方法は、上記に記載の発明において、前記制御工程は、前記分注位置へ分注順に搬送される患者検体に前記精度管理用試料を割り込ませる制御をおこなうことを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる分注方法は、上記に記載の発明において、前記制御工程は、前記統計管理単位の始点、前記標準試料の交換時、前記精度管理用試料の交換時、装置の起動時、または統計学的品質管理によって測定異常が検出された直後に、前記移送工程にて前記標準試料を移送させる制御をおこなうことを特徴とする。
【0026】
また、この発明にかかる分注方法は、上記に記載の発明において、前記収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料の試料容器には、栓が装着され、前記移送工程は、前記収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料をそれぞれ前記分注位置に移送する際に、前記栓を開栓する試料開栓工程を含むことを特徴とする。
【0027】
また、この発明にかかる分注方法は、上記に記載の発明において、収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料の試料容器には、前記標準試料および前記精度管理用試料に関する情報を識別するためのバーコードが表示され、前記バーコードを読み取る読取工程をさらに含み、前記制御工程は、前記読取工程によって読み取られた前記バーコードに基づいて、前記標準試料および精度管理用試料を選択するとともに、選択した前記標準試料および前記精度管理用試料を、前記移送工程にて移送させるように制御することを特徴とする。
【0028】
また、この発明にかかる分注方法は、搬送手段を介して搬送された患者検体を分注し、分注後の前記患者検体を後段の分析装置に発送するために再度前記搬送手段に送り出す分注装置の分注方法において、前記分析装置を校正するための標準試料と、前記分析装置を統計学的品質管理するための精度管理用試料とを収容する収容部から、前記標準試料を前記搬送手段に送り出すタイミングを予め設定される所定のタイミングに制御し、前記精度管理用試料を前記搬送手段に送り出すタイミングを統計管理単位内でランダマイズしたタイミングに制御する制御工程を含むことを特徴とする。
【0029】
また、この発明にかかる分注プログラムは、上記に記載の分注方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0030】
また、この発明にかかる検体検査システムは、患者検体を投入する投入手段と、前記投入手段にて投入された前記患者検体を分注する分注手段と、前記分注手段によって分注された前記患者検体を分析する分析手段と、前記分析手段によって分析された前記患者検体を回収する回収手段と、前記各手段に前記患者検体を搬送する搬送手段と、を備えた検体検査システムにおいて、前記分注手段は、前記分析手段を校正するための標準試料と、前記分析手段を統計学的品質管理するための精度管理用試料とを収容し、前記標準試料を所定のタイミングにて分注するとともに、前記精度管理用試料をランダマイズしたタイミングにて分注し、前記分析手段は、前記分注手段によって分注された前記標準試料を用いて校正をおこなうとともに、前記分注手段によって分注された前記精度管理用試料を用いて統計学的品質管理をおこなうことを特徴とする。
【0031】
また、この発明にかかる検体検査方法は、上記に記載の発明において、患者検体を投入する投入工程と、前記投入工程にて投入された前記患者検体を分注する分注工程と、前記分注工程によって分注された前記患者検体を分析する分析工程と、前記分析工程によって分析された前記患者検体を回収する回収工程と、を含む検体検査方法において、前記分注工程は、分析装置を校正するための標準試料を所定のタイミングにて分注するとともに、前記分析装置を統計学的品質管理するための精度管理用試料をランダマイズしたタイミングにて分注し、前記分析工程は、前記分注工程にて分注された前記標準試料を用いて校正をおこなうとともに、前記分注工程にて分注された前記精度管理用試料を用いて統計学的品質管理をおこなうことを特徴とする。
【0032】
また、この発明にかかる検体検査プログラムは、上記に記載の検体検査方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明にかかる分注装置、および検体検査システムによれば、分析装置に対する標準試料および精度管理用試料のセットや、精度管理用試料の測定をおこなうための分析装置に対する操作など、煩わしい手間を省くことができ、測定忘れや測定タイミングの誤実施などのエラーを回避することができるとともに、効率的に統計学的品質管理をおこなうことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる分注装置、検体検査システム、分注方法、検体検査方法、分注プログラム、検体検査プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0035】
(検体検査システム100の全体構成)
図1は、本発明の分注装置を備えた検体検査システムの全体構成を示す説明図である。図1に示す例では、検体検査システム100は、患者検体が投入される投入モジュール110と、患者検体の栓を開栓する検体開栓モジュール120と、患者検体を分注することにより親検体から子検体を作成する分注モジュール(分注装置)130と、分注された患者検体を分析する分析モジュール(分析装置)140と、分注モジュール130にて分注後の親検体と、分析モジュール140にて分析後の子検体とを回収する回収モジュール150と、投入モジュール110〜回収モジュール150までの各モジュール間で順次患者検体を図中矢印方向に搬送する搬送モジュール160と、搬送モジュール160がおこなう患者検体の搬送の機能の一部であり、分析モジュール140の前段に設けられて分析前の患者検体を一時保管するバッファモジュール170と、を備えている。投入モジュール110〜バッファモジュール170の各部は、PC180により全体が統括制御されている。親検体および子検体は、採血管等の容器単位で各部に搬送されるようになっている。
【0036】
投入モジュール110には、たとえば、複数の患者検体を容器単位で収容するラックを単位として投入され、このラックから患者検体の容器が取り出され搬送モジュール160に渡される。検体開栓モジュール120は、容器に装着されるシール栓やゴム栓などを開栓する。
【0037】
分注モジュール130は、搬送された患者検体を採取して小分けすることにより子検体を作成する。また、分注モジュール130は、詳細については後述するが、分析モジュール140を校正するための標準試料と、分析モジュール140を統計学的品質管理するための精度管理用試料とを収容する収容部131を備えている。分析モジュール140は、n台(図示の例では3台)設けられている。複数の分析モジュール140を設けることにより、並行して多数の患者検体の測定をおこなったり、分析モジュール140毎に異なる分析等がおこなえる。
【0038】
回収モジュール150は、親検体と子検体とを仕分けして回収する。バッファモジュール170は、患者検体の容器を無端状に周回させる構成であり、特定の患者検体を搬送モジュール160との接続箇所に位置させる制御により患者検体の追い越しがおこなえる。また、バッファモジュール170は、初検バッファと再検バッファの機能を有する。初検バッファは、接続されている分析モジュール130が患者検体によりふさがっているときに、投入モジュール110、検体開栓モジュール120、分注モジュール130を停止させないよう、患者検体を一時待機させるものである。図1において、ライン171が初検バッファに相当する。また、再検バッファは、分析モジュール130により患者検体の再検の有無が判定されるまで、当該患者検体を一時待機させるものである。図1において、ライン172が再検バッファに相当する。これにより、優先度の高い患者検体が通常の優先度の低い患者検体よりも先に分析モジュール140に搬送され、分析されるようになっている。また、図1に示すように、投入モジュール110と回収モジュール150とを隣接配置させることにより、患者検体の投入および回収の作業性を向上した構成となっている。
【0039】
上述した構成に限らず、患者検体を遠心分離させる遠心分離モジュールを設けたり、バッファモジュール170を複数台設ける場合もある。また、図1に示す例では、各部が直線状に配置されているが、設置箇所の大きさや形状に合わせてL字型、コ字型、ロ字型等、各種の設置形態がある。また、搬送モジュール160を独立した構成としたが、各部にそれぞれ搬送部を備えるようにし、各モジュール全体で搬送系を形成するようにした構成としてもよい。
【0040】
(検体検査システム100におけるPC180のハードウェア構成)
つぎに、図2を用いて、本実施の形態にかかる検体検査システム100におけるPC180のハードウェア構成について説明する。図2は、本実施の形態にかかる検体検査システムにおけるPCのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0041】
図2において、PC180は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、HDD(ハードディスクドライブ)204と、HD(ハードディスク)205と、FDD(フレキシブルディスクドライブ)206と、FD(フレキシブルディスク)207と、ディスプレイ208と、I/F(インタフェース)209と、キーボード210と、マウス211とを備えている。また、各構成部は、バス212によってそれぞれ接続されている。
【0042】
CPU201は、検体検査システム100の全体の制御を司る。ROM202は、ブートプログラムなどのプログラムを記憶している。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。HDD204は、CPU201の制御にしたがって、HD205に対するデータのリード/ライトを制御する。HD205は、HDD204の制御によって書き込まれたデータを記憶する。
【0043】
FDD206は、CPU201の制御にしたがって、FD207に対するデータのリード/ライトを制御する。FD207は、FDD206の制御によって書き込まれたデータを記憶したり、FD207に記憶されたデータをPC180に読み取らせたりする。また、着脱可能な記録媒体としては、FD207のほか、CD−ROM(CD−R、CD−RW)、MO、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリカードなどであってもよい。
【0044】
ディスプレイ208は、カーソル、アイコン、またはツールボックスをはじめ、文書、画像、機能情報などのデータを表示する。このディスプレイ208は、たとえば、CRT、TFT液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどを採用することができる。
【0045】
I/F209は、投入モジュール110〜バッファモジュール170の各モジュールを接続する。キーボード210は、文字、数字、各種指示などの入力のためのキーを備え、データの入力をおこなう。また、タッチパネル式の入力パッドやテンキーなどであってもよい。マウス211は、カーソルの移動や範囲選択、またはウィンドウの移動やサイズの変更などをおこなう。
【0046】
(分注モジュール130の構成)
つぎに、図3および図4を用いて、本実施の形態にかかる分注モジュール130の構成について説明する。図3は、分注モジュールの構成を示す説明図である。図4は、分注モジュールの要部の構成を示す説明図である。
【0047】
以下、図3を基に説明する。図3において、分注モジュール130は、患者検体である親検体314を供給する親容器供給部310と、親検体314を小分けして子検体327を作成する分注部320と、親容器316を回収する親容器回収部330と、子容器341を供給する子容器供給部340と、子検体327を搬送して仕分けする仕分部350と、試料を収容する収容部131としての試料保存庫370とを備えている。
【0048】
親容器供給部310は、親容器供給ユニット311と、親容器搬送ユニット315とを備えている。親容器供給ユニット311は、スクローラ313を備え、親検体314が架設される親容器ラック312をスクローラ313によって親容器搬送ユニット315へ順次供給する。親容器搬送ユニット315は、図示外のフィーダを備え、当該フィーダによって、親容器ラック312を分注部320(X方向)へ送り出す。
【0049】
分注部320は、分注ユニット322を備え、親検体314を小分けして子検体327を作成する。分注ユニット322は、詳細については後述するが、図示外の分注ノズルと、分注アーム325とを備えている。分注ユニット322は、分注ノズルによって、検体採取位置321に位置する親検体314を一定量採取するとともに、図4に示すように、分注アーム325の支軸326を支点とした矢印401方向への回動により、ターンテーブル323上の分注位置324に位置する子容器341に対して採取した患者検体を吐出するものである。
【0050】
親容器回収部330は、図示外のプッシュバーと、親容器回収ユニット331とを備えている。親容器回収ユニット331は、親検体314を載置する親容器回収トレー332を備えている。親容器回収部330は、プッシュバーによって、分注操作の終了した親容器ラック312を、親容器回収ユニット331にセットされた親容器回収トレー332に回収する。
【0051】
子容器供給部340は、子容器供給ユニット342と、子容器移載ユニット344とを備えている。子容器供給ユニット342は、子容器341を整列させるとともに、子容器供給位置343へ供給する。以下、図4を基に、説明する。子容器移載ユニット344は、子容器341を把持することが可能な把持部346と、供給アーム347とを備えており、供給アーム347が支軸348を支点として矢印402方向に回動することにより、子容器供給位置343に位置する子容器341をターンテーブル323上の移載位置345に移載する。
【0052】
また、ターンテーブル323は、駆動モータ等によって回転自在になっている。ターンテーブル323が矢印403方向に所定量回転することにより、ターンテーブル323上の移載位置345に位置する子容器341は、分注位置324へ送られ、分注ユニット322によって採取された患者検体が分注されるようになっている。
【0053】
仕分部350は、子容器移載ユニット351を備え、分注された子容器341を仕分けする。子容器移載ユニット351は、スライド機構352と、アーム353と、子容器341を把持することが可能な把持部354とを備えている。スライド機構352は、アーム353を、矢印404方向、および矢印405方向に移動させることができる。
【0054】
ターンテーブル323の分注位置324にある子容器341は、患者検体が分注された後に、ターンテーブル323が矢印403方向に所定量回転することにより、子容器取出位置355へ移動する。そして、子容器移載ユニット351は、スライド機構352により矢印404方向に移動可能であり、子容器取出位置355に位置する子容器341を、一次仕分けエリア356に格納された空ラック357に移載する。このとき、子容器移載ユニット351は、矢印405方向に移動し、子容器341を、測定する項目や使用する分析モジュール140などによって予め決められた空ラック357に移載する。
【0055】
以下、図3を基に、説明する。仕分部350は、さらに、空ラック供給ユニット359と、空ラック移載ユニット360と、子容器仕分けユニット361とを備えている。空ラック供給ユニット359は、子容器341を架設するための空ラック357を、予め空ラック供給トレー362に載せてセットし、スクローラ363を用いて空ラック移載ユニット360へ供給する。空ラック移載ユニット360は、空ラック357を一次仕分けエリア356に配置する。
【0056】
子容器仕分けユニット361は、一次仕分けエリア356にて、子容器341が一杯に架設されたラック、または予め決められた数量の子容器341が架設されたラックを、取り出し、二次仕分けエリア364,365の、測定する項目や使用する分析モジュール140などによって予め決められた区画の所定の位置に格納する。この区画は、二次仕分けエリア364,365内で複数に設定することも可能であり、つまり、一つの区画に複数のラックを格納するように設定することも可能である。また、一次仕分けエリア356の、子容器仕分けユニット361によってラックが取り出された位置には、空ラック移載ユニット360によって次の空ラック357が補充されるようになっている。
【0057】
なお、分注モジュール130は、親容器316および子容器341にはバーコードラベルが貼付されており、図示外のバーコードリーダによって読み取られたバーコードラベルの識別情報と、各容器の搬送順に基づく位置情報とにより、どの位置にどの容器が位置しているのかを把握できるようになっている。
【0058】
試料保存庫370は、低温状態に維持されており、標準試料および精度管理用試料の試料を収容する。試料保存庫370内には、複数の収容部材370aが収容されている。標準試料および精度管理用試料を収容した試料容器371は、試料保存庫370内の周回ベルト380に固定された試料容器保持部372に保持され、周回するようになっている。試料容器保持部372は、ディスク形、ラック形であってもよい。また、試料保存庫370には、試料容器移載ユニット374が配置されている。試料容器移載ユニット374は、アーム375を備えており、アーム375によって、親容器搬送ユニット315の検体採取位置321の近傍の移載位置376に位置する所定の試料容器371を、図4の矢印406に示すように、検体採取位置321に供給するようになっている。
【0059】
また、試料保存庫370は、たとえば、開閉可能な図示外の挿入口が設けられ、分注モジュール130の操作者が標準試料や精度管理用試料容器を試料セット位置373にセットすることにより、試料を随時交換、または補充することができるようになっている。また、試料保存庫370内には、バーコードリーダ377と、試料容器取込ユニット378とが配置されている。バーコードリーダ377は、挿入口から挿入され、試料セット位置373に位置する試料容器371に貼付されたバーコードラベルを読み取る。試料容器取込ユニット378は、アーム379を備えており、操作者によって挿入口から試料容器371が挿入されると、アーム379によって試料容器371を試料セット位置373から試料容器保持部372に移動させるようになっている。
【0060】
また、試料容器保持部372には、固定の番号や記号を付されており、バーコードリーダ377にて読み取られた識別情報により、どの位置にどの標準試料又は精度管理用試料が保持されているかを常時把握できるようになっている。なお、バーコードリーダ377は、分注モジュール130に組み込んだ固定式のものに限らず、たとえば、操作者がハンディ・バーコードリーダを使用してバーコードを読み取らせた上で、挿入口から試料セット位置373にセットするようにしてもよい。
【0061】
(分注部320および試料保存庫370の詳細な構成)
つぎに、図5を用いて、本実施の形態にかかる分注部320および試料保存庫370の詳細な構成について説明する。図5は、分注部および試料保存庫を示す斜視図である。
【0062】
図5において、分注部320の分注ユニット322は、ケース501と、分注アーム510と、駆動モータ520と、駆動伝達手段530と、吸入吐出手段540とを備えて構成される。ケース501は、矩形状に形成され、上部には分注アーム510と、駆動モータ520とが設けられ、内部には駆動伝達手段530を設けられている。
【0063】
分注アーム510は、分注アームシャフト511と、アーム512とによって構成されている。分注アームシャフト511は、ケース501の上部に回動自在に立設された棒状であり、駆動伝達手段530を介して、駆動モータ520に接続されている。分注アームシャフト511は、アーム512を軸支しており、駆動モータの駆動に基づいて、アーム512とともに回動するようになっている。また、分注アームシャフト511は、図示を省略するコンピュータに制御された駆動機構(たとえば、モータ、油圧シリンダなど)の駆動によって昇降する。
【0064】
アーム512は、棒状であり、一端が分注アームシャフト511に軸支されており、分注アームシャフト511とともに回動する。アーム512は、他端に分注ノズル543を設けている。アーム512は、駆動モータ520の駆動により、分注アームシャフト511とともに回動することによって、アーム512の先端の分注ノズル543が検体採取位置321(吸入位置)と、分注位置324(吐出位置)との間を往復移動する。
【0065】
また、アーム512は、図示を省略するコンピュータに制御された駆動機構の駆動により、分注アームシャフト511とともに昇降することによって、アーム512の先端に把持された分注ノズル543を昇降させることができる。たとえば、検体採取位置321に位置する親容器316から患者検体または試料を吸入するため、分注ノズル543が所定の検体採取位置321に位置しているときに、アーム512を分注アームシャフト511とともに降下させることによって、分注ノズル543の先端を親容器316に注入されている患者検体または試料へ挿入させることができる。
【0066】
駆動モータ520は、駆動伝達手段530を介して分注アーム510を回動させるため、図示を省略するコンピュータの制御によって駆動するモータ(直流モータまたは交流モータ)である。駆動伝達手段530は、駆動軸531と、駆動プーリ532と、駆動ベルト533とによって構成されており、駆動モータ520の駆動力を分注アーム510へ伝達する。
【0067】
吸入吐出手段540は、シリンジポンプユニット541と、シリンジポンプパイプ542と、分注ノズル543とによって構成される。シリンジポンプユニット541は、図示を省略するコンピュータの制御によって、患者検体または試料を吸入するための圧力(負圧)および患者検体または試料を吐出するための圧力(正圧)を生成する。
【0068】
シリンジポンプユニット541によって生成された圧力(負圧および正圧)は、シリンジポンプパイプ542を介して分注ノズル543に伝わる。たとえば、分注ノズル543の先端が親容器316に挿入されているときに、シリンジポンプユニット541により圧力(負圧)を生成すると、分注ノズル543の先端から親容器316に注入されている患者検体または試料を吸入することができる。
【0069】
反対に、患者検体または試料が吸入された分注ノズル543の先端が子容器341へ挿入されているときに、シリンジポンプユニット541により圧力(正圧)を生成することによって、分注ノズル543の先端から子容器341に対して、患者検体または試料を吐出することができる。分注ノズル543は、詳細については後述するが、先端にノズルチップ544が着脱自在に取り付けられており、吸入した患者検体または試料を、このノズルチップ544内に収容するようになっている。
【0070】
また、試料保存庫370は、底面部550と、底面部550を囲む図示外の壁面と、図示外の天板部とを備えた収容空間である。また、検体採取位置321側の壁面には、試料容器移載ユニット374により、標準試料または精度管理用試料が取り出される際に開放される開閉自在の供給口が設けられている。
【0071】
試料保存庫370は、試料容器371に注入された標準試料および精度管理用試料を収容する。試料容器371には栓560が装着されており、試料容器371の内部の試料が揮発することを防止できるようになっている。試料容器371は、試料保存庫370内の周回ベルト380に固定された試料容器保持部372に保持され、矢印570方向に周回するようになっている。
【0072】
また、上述したように、試料容器移載ユニット374は、移動自在なアーム375と、このアーム375を移動させる図示外の移動機構とを備え、試料容器保持部372に保持される試料容器371が移載位置376に位置すると、アーム375および移動機構により、移載位置376に位置する所定の試料容器371を持ち上げ、検体採取位置321に供給するようになっている。検体採取位置321に供給された試料は、親検体314と同様に、分注ユニット322によって分注されることにより、子容器341に注入されるようになっている。
【0073】
また、試料容器移載ユニット374の近傍には、図示しない試料開栓部が配置され、検体採取位置321に供給される前に、試料の栓が開栓されるようになっている。また、試料容器取込ユニット378は、移動自在なアーム379と図示外の移動機構を備え、操作者によって挿入口から試料容器371が挿入され、試料セット位置373に裁置されると、アーム379および移動機構により、試料容器371を持ち上げ、試料セット位置373から試料容器保持部372に移動させるようになっている。
【0074】
(ノズルチップ544の構成)
つぎに、図6を用いて、本実施の形態にかかるノズルチップ544の構成について説明する。図6は、本実施の形態にかかるノズルチップの構成を示す斜視図である。図6に示すように、分注ノズル543は、シリンジポンプパイプ542に接続されている。この分注ノズル543は、たとえば、円筒形状や、先端543bに向けて細くなる円錐形状に形成されている。ノズルチップ544は、一端544aおよび他端544bが同じ開口径を有している。このノズルチップ544は、樹脂により成形され、たとえば、長さ10cm、内径φ2〜8mm程度、肉厚0.1mmを有しており、0.5〜1cc程度の収容量を有する。このノズルチップ544は、所定の長さを有する円筒部材を10cm単位でカットするだけで容易に形成されるものである。
【0075】
ノズルチップ544は、一端544aを分注ノズル543の先端543bに下方から所定の長さを挿入することにより、装着される。逆に、分注ノズル543に対してノズルチップ544を下方に引っ張って取り外せるようになっている。また、他端544bは、患者検体または試料の吸入口および吐出口として機能する。なお、一端544aおよび他端544bは、説明の便宜上記載したものであり、ノズルチップ544全体は均一な内径であるため、入れ替わることがあり、入れ替わっても同様に機能する。
【0076】
ノズルチップ544は、アーム512の回動方向上に設けられた不図示のノズルチップ供給部から供給され、不図示のノズルチップ排出部に排出される。ノズルチップ供給部は、ノズルチップ544が図6に示すように立設した状態で保持された状態で、アーム512が下方へ移動することにより、分注ノズル543にノズルチップを装着する。同様に、ノズルチップ排出部は、分注ノズル543からノズルチップ544を取り外し、排出(廃棄)する。このような構成に限らず、ノズルチップ供給部内にノズルチップ排出部を設け、古いノズルチップ544を排出後、直ちに新たなノズルチップ544を供給(交換)する構成としてもよい。
【0077】
(分注モジュール130の機能的構成)
つぎに、本実施の形態にかかる分注モジュール130の機能的構成について説明する。図7は、本実施の形態にかかる分注モジュールの機能的構成を示す説明図である。
【0078】
図7において、バーコードリーダ377は、試料容器371に貼付されたバーコードラベルを読み取る。記録部705は、バーコードリーダ377によって読み取られた識別情報と、試料容器保持部372に付されている固定の番号や記号などの位置情報とを関連づけて記録する。したがって、試料容器保持部372のどの位置にどの標準試料又は精度管理用試料が保持されているかを常時把握できるようになっている。
【0079】
制御部701は、温度制御部702と、タイミング制御部703と、取込制御部704とを備えている。温度制御部702は、試料保存庫370の温度を、予め設定される温度、たとえば、5〜10℃程度に管理する。タイミング制御部703は、試料容器371の移送のタイミングを制御する。ここで、上述したように、記録部705には、バーコードリーダ377にて読み取られた識別情報と試料容器保持部372の位置情報とが関連づけられて記録されている。タイミング制御部703は、記録部705に記録された識別情報および位置情報に基づいて、移送させる試料容器371を選択するとともに、試料容器保持部372(周回ベルト380)の周回させるタイミングおよび移動させる距離を制御する。
【0080】
なお、この場合、記録部705には、バーコードリーダ377にて読み取られた識別情報により、各試料の保存開始日時や、試料ごとに異なる試料の有効期間などの情報も記録されている。したがって、記録部705に記録されているこれら期間に関する情報を基に、試料の保存期間についても管理されており、期限切れの試料が取り出されないようになっている。
【0081】
タイミング制御部703による標準試料の移送のタイミングは、電源投入時や検体交換時のほか、測定検体集団内の始点や、精度管理試料の測定に異常がある場合など、所定のタイミングであり、予め記録部705に記録されるタイミングである。一方、タイミング制御部703による精度管理用試料の移送のタイミングは、測定検体集団内でランダマイズされたタイミングである。さらに、タイミング制御部703は、試料開栓部720に対して、試料に装着された栓を開栓させる制御をおこなう。また、タイミング制御部703は、試料容器移載ユニット374に対して、所定の試料を検体採取位置321に移動させる制御をおこなう。このタイミング制御部703は、試料容器保持部372、試料開栓部720、試料容器移載ユニット374の順にシーケンス的に制御する。
【0082】
取込制御部704は、挿入口から試料が挿入された際に、試料容器取込ユニット378に対して、挿入口から投入された試料を、試料容器保持部372の所定の位置に取り込ませる制御をおこなう。なお、この場合、たとえば、挿入口から挿入された試料を検知するセンサなどを配置しておき、取込制御部704は、当該センサが試料を検知した際に試料容器取込ユニット378に対する制御をおこなう。
【0083】
また、制御部701は、脱着手段としての、ノズルチップ供給部710と、ノズルチップ排出部711とを制御する。ノズルチップ544の交換するタイミングは、検体交換時、試料交換時などの所定のタイミングである。さらに、制御部701は、仕分部350の各ユニットを制御し、仕分部350に対して、各種容器を所定の分析モジュール140に発送するための仕分けをおこなわせる。
【0084】
上述した構成は、分注モジュール130が制御部701を備え、PC180による制御とともに、制御部701による制御をおこなう構成であるが、このような構成に限らず、制御部701をPC180に具備させ、つまり、PC180によって一元的に統括制御する構成としてもよい。
【0085】
(検体検査システム100の検体検査処理の一例)
つぎに、図8を用いて、本実施の形態にかかる検体検査システム100がおこなう検体検査処理の一例について説明する。図8は、本実施の形態にかかる検体検査システムの検体検査処理の一例を示すフローチャートである。
【0086】
図8において、検体検査システム100は、PC180が検査開始の入力を受け付けるまで待機状態にあり(ステップS801:Noのループ)、検査開始の入力を受け付けると(ステップS801:Yes)、投入モジュール110では、患者検体が投入される(ステップS802)。そして、検体開栓モジュール120にて患者検体を開栓する(ステップS803)。
【0087】
このあと、分注モジュール130にて患者検体または試料を分注する(ステップS804)。これにより、患者検体または試料が子容器341に小分けされる。そして、バッファモジュール170を介して、優先度に応じて分析モジュール140へ患者検体または試料を送出する(ステップS805)。なお、バッファモジュール170は、必要に応じて患者検体または試料を一時保管する。このあと、分析モジュール140にて患者検体の分析または試料の測定をおこなう(ステップS806)。試料の測定は、標準試料による測定に基づく分析モジュール140の構成、または、精度管理用試料の測定に基づく品質確認である。そして、回収モジュール150にて親容器316および子容器341の容器を回収し(ステップS807)、一連の処理を終了する。
【0088】
(分注モジュール130がおこなう分注処理の一例)
つぎに、図9を用いて、本実施の形態にかかる分注モジュール130がおこなう分注処理の一例について説明する。図9は、本実施の形態にかかる分注モジュールがおこなう分注処理の一例を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、図8に示したフローチャートのステップS804において、適宜おこなわれる処理である。以下の説明においては、精度管理用試料を分注する処理について説明する。
【0089】
図9において、分注モジュール130は、親容器供給部310により患者検体を供給する(ステップS901)(図5参照)。そして、制御部701が精度管理用試料を移送するタイミングであるか否かを判断する(ステップS902)。精度管理用試料を移送するタイミングは、上述したように、測定検体集団内でランダマイズされたタイミングである。
【0090】
ステップS902において、精度管理用試料を移送するタイミングであると判断した場合(ステップS902:Yes)、識別情報および位置情報に基づいて、移送させる精度管理用試料(試料容器371)を選択し(ステップS903)、試料容器保持部372(周回ベルト380)を移載位置376に移動させる(ステップS904)。そして、試料開栓部720が精度管理用試料を開栓する(ステップS905)。このあと、試料容器移載ユニット374が試料を検体採取位置321に移載し、分注順に搬送される患者検体に精度管理用試料を割り込ませる(ステップS906)。患者検体に精度管理用試料を割り込ませる点について、詳細は後述する。このとき、患者検体の分注操作中であり、つまり、患者検体が検体採取位置321に位置する場合には、当該患者検体を一時的に退避させ、精度管理用試料の分注操作が終了した後に元の位置に復帰して患者検体の分注操作を再開する。
【0091】
そして、分注部320が精度管理用試料を小分けする(ステップS907)。この場合、検体採取位置321に供給された試料容器371内の精度管理用試料は、患者検体と同様に、分注ユニット322によって一定量採取され、ターンテーブル323上の分注位置324にある子容器341に分注される。このあと、仕分部350が精度管理用試料を仕分し(ステップS908)、一連の処理を終了する。
【0092】
なお、ステップS906において、分注した試料の仕分けは、患者検体の場合と同様に、所定の試料が分注された子容器341を、ターンテーブル323の子容器取出位置355から子容器移載ユニット351によって一次仕分けエリア356に格納された空ラック357に移載されることによっておこなわれる(図3参照)。この段階で、標準試料又は精度管理用試料が分注された子容器341は、測定する項目や使用する分析モジュール140などによって予め決められた空ラック357の、予め設定された所定のタイミング、またはランダマイズされたタイミングに相当する位置に架設される。一次仕分けエリア356で子容器341が架設されたラックは、患者検体の場合と同様に、二次仕分けエリア364,365の予め決められた区画に格納される。
【0093】
一方、ステップS902において、試料を移送するタイミングではないと判断した場合(ステップS902:No)、患者検体を小分けする(ステップS909)。そして、小分けした患者検体を仕分けし(ステップS910)、一連の処理を終了する。
【0094】
標準試料の通常の分注処理については、標準試料を移送するタイミングが電源投入時や測定検体集団内の始点など予め設定される所定のタイミングとなり、ステップS906における患者検体に精度管理用試料を割り込ませる処理がおこなわれない点以外は、上述した処理と同様の処理となる。
【0095】
また、分注ユニット322において、分注終了後のノズルチップ544は、ノズルチップ排出部711により、分注ノズル543から取り外され、廃棄される。そして、ノズルチップ供給部710により、新たなノズルチップ544が供給され、分注ノズル543に取り付けられる。
【0096】
このように、ステップS907およびステップS908における精度管理用試料に対する分注ユニット322の動作と、ステップS909およびステップS910における患者検体に対する分注ユニット322の動作とは、同様の動作である。したがって、新たな機構等を設けることなく、従来から用いられている分注ユニット322によって、精度管理用試料および標準試料を小分けすることができる。
【0097】
以上の処理によって、二次仕分けエリア364,365の予め決められた区画に格納された所定の数量のラック366,367には、測定する項目や使用する分析モジュール140などによって仕分けされた患者検体(子検体)の一群が架設されており、それらの間には、予め設定された所定のタイミングに相当する位置に標準試料、またはランダマイズされたタイミングに相当する位置に精度管理用試料が配置される。
【0098】
(分析モジュール140がおこなう分析処理の一例)
つぎに、図10を用いて、本実施の形態にかかる分析モジュール140がおこなう分析処理の一例について説明する。図10は、本実施の形態にかかる分析モジュールがおこなう分析処理の一例を示すフローチャートである。以下の説明においては、便宜上、分析モジュール140を主体とし、つまり、分析モジュール140が制御部を備えた構成とし、当該制御部の制御に基づく処理として説明する。
【0099】
図10において、分析モジュール140は、分析モジュール140に搬送される子容器341(各患者検体、標準試料、または精度管理用試料)に付与される識別情報を取得する(ステップS1001)。そして、識別情報を基に、子容器341内の注入物が患者検体か否かを判断する(ステップS1002)。ステップS1002において、患者検体ではないと判断した場合(ステップS1002:No)、子容器341内の注入物が標準試料か否かを判断する(ステップS1003)。
【0100】
ステップS1003において、子容器341内の注入物が標準試料ではないと判断した場合(ステップS1003:No)、子容器341内の注入物が精度管理用試料であるものと判断し、精度管理用試料を測定する(ステップS1004)。精度管理用試料の測定により、品質確認がおこなわれる。このあと、結果をPCへ送信し(ステップS1005)、一連の処理を終了する。一方、ステップS1002において、子容器341内の注入物が患者検体である判断した場合(ステップS1002:Yes)、患者検体の分析をおこない(ステップS1006)、ステップS1005の処理に移行する。
【0101】
また、ステップS1003において、子容器341内の注入物が標準試料であると判断した場合(ステップS1003:Yes)、標準試料を測定し(ステップS1007)、ステップS1005の処理に移行する。標準試料の測定により、校正がおこなわれる。なお、上述した処理は、分析モジュール140が制御部を具備した構成とし、当該制御部の制御に基づく処理として説明したが、PC180の制御に基づく処理であっても同様である。
【0102】
(精度管理用試料の測定結果に基づくPC180の処理の一例)
つぎに、図11を用いて、本実施の形態にかかる検体検査システム100における精度管理用試料の測定結果に基づくPC180の処理の一例について説明する。図11は、本実施の形態にかかる検体検査システムにおける精度管理用試料の測定結果に基づくPCの処理の一例を示すフローチャートである。
【0103】
図11において、PC180は、精度管理用試料の測定結果を取得する(ステップS1101)。そして、精度管理用試料の測定結果が適正値であるか否かを判断する(ステップS1102)。ステップS1102において、精度管理用試料の測定結果が適正値ではないと判断した場合(ステップS1102:No)、たとえば、再度、精度管理用試料の測定をおこなわせる(ステップS1103)。ステップS1103の精度管理用試料の測定のやり直しにあたっては、PC180の設定に応じて、そのまま精度管理用試料の再測定がおこなわれる場合や、先に、標準試料による校正がおこなわれる場合がある。先に、標準試料による校正がおこなわれる場合は、分注順に搬送される患者検体に標準試料を割り込ませ、分析モジュール140の校正をおこなった後に、同様に、精度管理用試料を割り込ませ、精度管理用試料の測定がおこなわれる。
【0104】
そして、精度管理用試料の測定結果が適正値であるか否かを判断する(ステップS1104)。ステップS1104において、精度管理用試料の測定結果が適正値ではないと判断した場合(ステップS1104:No)、ディスプレイ208により、精度管理用試料の測定値について信頼性不適の通知をおこなう(ステップS1105)。そして、当該分析モジュール140での患者検体の分析を中止させ(ステップS1106)、一連の処理を終了する。なお、他の分析モジュール140(たとえば、図1の分析モジュール2〜n)のうち、代用できる分析モジュール140にて、患者検体の分析をおこなうようにしてもよい。
【0105】
一方、ステップS1102において、精度管理用試料の測定結果が適正値であると判断した場合(ステップS1102:Yes)、一連の処理を終了する。また、ステップS1104において、精度管理用試料の測定結果が適正値であると判断した場合(ステップS1104:Yes)、一連の処理を終了する。なお、ステップS1104において、精度管理用試料の測定結果が適正値であると判断した場合(ステップS1104:Yes)、たとえば、測定検体集団の管理単位を縮小させる処理をおこなってもよい。
【0106】
測定検体集団の管理単位を縮小するとは、たとえば、管理単位が1000検体であった場合に管理単位を500検体にしたり、管理単位が9時間であった場合に管理単位を5時間にしたりすることである。これは、精度管理用試料の測定結果が適正値でない場合、測定検体集団の分析結果自体に信頼性がなくなるためであり、特に、測定検体集団の管理単位が大きいと、その分、分析結果に信頼性のない検体数が多くなってしまうということに基づく。したがって、測定検体集団の管理単位を縮小する処理は、次回に精度管理用試料の測定をおこなった際、測定結果が不適になった場合の、無効になる分析結果の数をできるだけ抑えるための処理である。また、測定検体集団の管理単位を縮小する処理以外にも、測定検体集団の管理単位を縮小させるとともに、たとえば、精度管理用試料の測定回数を増加させる処理をおこなうようにしても、短いスパンで品質確認をおこなうことができる。
【0107】
また、このように精度管理用試料の測定に適正な値が得られない場合が想定されるほか、標準試料による校正においても適正な値を得ることができない場合が想定できる。このような場合、アラームなどで操作者に通知するとともに、分析を中止する。そして、使用した標準試料に劣化などがなく適正であるならば、分析モジュール140の消耗品の交換や修理など必要な処置が講じられた後に再度校正をおこなう。また、分析を中止する対処のほかにも、代用できる他の分析モジュール140にて、患者検体の分析をおこなうこともできる。
【0108】
(精度管理用試料の患者検体への割り込みの一例)
つぎに、図12を用いて、本実施の形態にかかる検体検査システム100における精度管理用試料の患者検体への割り込みの一例について説明する。図12は、本実施の形態にかかる検体検査システムにおける精度管理用試料の患者検体への割り込みの一例を示す説明図である。
【0109】
図12において、たとえば、測定検体集団1200を1000検体とすると、分注順に搬送される患者検体の識別情報および位置情報に基づく各患者検体1201(1202,1203…)が搬送方向(X方向)に向けて1000個分並んでいる。PCに記録されるデータについても、同様に1000個分並んでいる。このように並んでいる測定検体集団1200のランダマイズされた位置(タイミング)、たとえば、患者検体1202と患者検体1203との間の位置に制御管理用試料の割込位置1210が決定されると、患者検体1203以降の患者検体1204が一検体分ずつ、後ろにシフトする。そして、割込位置1210に精度管理用試料1220を割り込ませる。
【0110】
また、標準試料の場合は、たとえば、標準試料の測定が測定検体集団の始点でおこなわれる場合では、測定検体集団の先頭、つまり、患者検体1201の前に配置される。また、精度管理用試料の測定結果が適正値ではない場合の精度管理用試料の再測定においては、たとえば、精度管理用試料1220の後ろに、標準試料、さらに、その後ろに、再測定用の精度管理用試料が並べられる。なお、PCに記録されるデータについても、同様に、割り込みがおこなわれる。
【0111】
上述したように、本実施の形態にかかる分注モジュール130は、標準試料および精度管理用試料を収容する試料保存庫370を備えるようにし、試料保存庫370に収容される各試料の移送のタイミングを制御して、標準試料および精度管理用試料をそれぞれ分注し、分注された試料を分析モジュール140に向けて発送するための仕分けをおこなうようにした。このような構成によれば、分析モジュール140に対する標準試料および精度管理用試料のセットや、精度管理用試料の測定をおこなうための分析モジュール140に対する操作など、煩わしい手間を省くことができ、測定忘れや測定タイミングの誤実施などのエラーを回避することができるとともに、効率的に統計学的品質管理をおこなうことができる。特に、24時間の連続可動をおこなう分析モジュール140や、複数の分析モジュール140を備えた大型の検体検査システム100においては、夜間における煩わしい手間や、各分析モジュール140に対する煩わしい手間を省くことができるので、効果的である。
【0112】
また、本実施の形態にかかる分注モジュール130は、標準試料の移送のタイミングを所定のタイミングに制御し、かつ、精度管理用試料の移送のタイミングを測定検体集団内でランダマイズしたタイミングに制御するタイミング制御部703を備えるようにした。このような構成によれば、標準試料または精度管理用試料を適切な時期に移送させることができ、分析モジュール140の統計学的品質管理の適正なものにし、検査データの信頼性を向上させることができる。
【0113】
また、本実施の形態にかかる分注モジュール130は、タイミング制御部703が患者検体に対して精度管理用試料を割り込ませる制御をおこなうようにした。本構成は、精度管理用試料を移送させた際の、患者検体への精度管理用試料の挿入を具現化したものである。このような構成によれば、精度管理用試料を任意の位置に挿入することができ、分析モジュール140の統計学的品質管理の適正なものにし、検査データの信頼性を向上することができる。
【0114】
また、本実施の形態にかかる分注モジュール130は、タイミング制御部703が測定検体集団の始点、前記標準試料の交換時、前記精度管理用試料の交換時、装置の起動時、または統計学的品質管理によって測定異常が検出された直後に、標準試料を移送させる制御をおこなうようにした。このような構成によれば、適切な時期に校正をおこなうことができ、通常の精度管理用試料の測定を適正におこなわせることができる。特に、このような構成において、精度管理用試料の測定結果が適正値ではない場合の精度管理用試料の再測定では、患者検体に対してランダマイズされたタイミングで割り込みをおこなった精度管理用試料1220の後ろに、標準試料が並べられる。したがって、このような構成によれば、通常の精度管理用試料の測定を適正におこなわせることができることは勿論、精度管理用試料を用いた再測定においても、ランダマイズされたタイミングで移送された精度管理用試料に付随して、標準試料を移送させることができ、校正によって精度管理用試料の再測定を適正におこなわせることができる。
【0115】
また、本実施の形態にかかる分注モジュール130は、試料保存庫370は、標準試料および精度管理用試料を交換または補充するための挿入口を備えるようにした。このような構成によれば、利用者は、随時、簡単に試料を交換または補充することができる。したがって、分析モジュール140に対して試料を交換または補充する必要はなく、分注モジュール130の挿入口のみにて、試料の交換または補充することができ、一元的に試料を管理することに有効である。
【0116】
また、本実施の形態にかかる分注モジュール130は、試料保存庫370は、温度制御部702により所定の温度が保たれた状態で、標準試料および精度管理用試料を収容するようにした。このような構成によれば、試料の劣化を防止できる。したがって、精度管理の信頼性を向上させるばかりでなく、検査データの信頼性を大きく向上させることができる。
【0117】
また、本実施の形態にかかる分注モジュール130は、試料保存庫370に収容される標準試料および精度管理用試料の試料容器に栓を装着するようにし、各試料を検体採取位置321に移送する前段階で、栓を開栓する試料開栓部を備えるようにした。このような構成によれば、試料の劣化を防止できる。したがって、精度管理の信頼性を向上させるばかりでなく、検査データの信頼性についての証拠能力を大きく向上させることができる。
【0118】
また、本実施の形態にかかる分注モジュール130は、試料容器371には、各標準試料および各精度管理用試料を識別するためのバーコードラベルが表示され、当該バーコードラベルを読み取るバーコードリーダ377を備えるようにし、制御部701がバーコードリーダ377によって読み取られたバーコードに基づいて、標準試料および精度管理用試料を選択するとともに、選択した試料を移送させるように制御するようにした。このような構成によれば、試料の保存期間等を管理することができるので、有効期間の過ぎた試料が分析に供されることなく、検査データの信頼性を向上させることができる。
【0119】
また、本実施の形態にかかる分注モジュール130は、分注ユニット322において、患者検体または試料を吸引および吐出する分注ノズル543と、分注ノズル543の先端に着脱自在に取り付けられるノズルチップ544と、ノズルチップ544を脱着するノズルチップ供給部710およびノズルチップ排出部711とを備えるようにした。このような構成によれば、分注ノズル543に、微量な患者検体や反応試薬、または分注ノズル543を洗浄する際に残留した微量な洗剤などが付着することなく、分注ノズル543の劣化を防止できる。また、ノズルチップ544は、使い捨てタイプであるため、清潔に保たれ、元の標準試料や精度管理用試料の劣化を防止できるとともに、分析モジュール140の分析精度を高めることができる。
【0120】
また、本実施の形態にかかる検体検査システム100は、分注モジュール130が、標準試料および精度管理用試料を収容し、標準試料を所定のタイミングにて分注するとともに、精度管理用試料をランダマイズされたタイミングにて分注し、分析モジュール140が、分注モジュール130にて分注された標準試料を用いて校正をおこなうとともに、分注モジュール130によって分注された精度管理用試料を用いて統計学的品質管理をおこなうようにした。このような構成によれば、分析モジュール140に対する標準試料および精度管理用試料のセットや、精度管理用試料の測定をおこなうための分析モジュール140に対する操作など、煩わしい手間を省くことができるとともに、測定忘れや測定タイミングの誤実施などのエラーを回避することができる。
【0121】
また、標準試料または精度管理用試料を適切な時期に移送することができ、分析モジュール140の統計学的品質管理を適正なものにし、検査データの信頼性を向上することができる。特に、複数の分析モジュール140を備えている場合には、それぞれの分析モジュール140で標準試料や精度管理用試料をセットする手間や、測定のための操作をおこなう手間を省くことができるので、より効果的である。また、PC180にて予め分析モジュール140の標準試料や精度管理用試料の測定間隔を設定しておけば、標準試料や精度管理用試料を設定した測定間隔で分注し、当該試料を分析モジュール140へ供給することができる。複数の分析モジュール140を備えている場合にも同様に、それぞれの分析モジュール140に対して、設定した間隔で標準試料や精度管理用試料を供給することができる。
【0122】
以上説明したように、分注装置、検体検査システム、分注方法、および分注プログラムによれば、分析モジュール140に対する標準試料および精度管理用試料のセットや、精度管理用試料の測定をおこなうための分析モジュール140に対する操作など、煩わしい手間を省くことができ、測定忘れや測定タイミングの誤実施などのエラーを回避することができるとともに、効率的に統計学的品質管理をおこなうことができる。
【0123】
なお、本実施の形態で説明した分注にかかる方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上のように、本発明にかかる分注装置、検体検査システム、分注方法、検体検査方法、分注プログラム、および検体検査プログラムは病院や臨床検査機関などでおこなわれる臨床検査の自動分析に有用であり、特に、標準試料による校正がおこなわれ、精度管理用試料の測定結果に基づく統計学的品質管理がおこなわれる分析装置に併用される分注装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の分注装置を備えた検体検査システムの全体構成を示す説明図である。
【図2】本実施の形態にかかる検体検査システムにおけるPCのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】分注モジュールの構成を示す説明図である。
【図4】分注モジュールの要部の構成を示す説明図である。
【図5】分注部および試料保存庫を示す斜視図である。
【図6】本実施の形態にかかるノズルチップの構成を示す斜視図である。
【図7】本実施の形態にかかる分注モジュールの機能的構成を示す説明図である。
【図8】本実施の形態にかかる検体検査システムの検体検査処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】本実施の形態にかかる分注モジュールがおこなう分注処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】本実施の形態にかかる分析モジュールがおこなう分析処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】本実施の形態にかかる検体検査システムにおける精度管理用試料の測定結果に基づくPCの処理の一例を示すフローチャートである。
【図12】本実施の形態にかかる検体検査システムにおける精度管理用試料の患者検体への割り込みの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0126】
100 検体検査システム
110 投入モジュール
120 検体開栓モジュール
130 分注モジュール
140 分析モジュール
150 回収モジュール
160 搬送モジュール
170 バッファモジュール
180 PC
310 親容器供給部
314 親検体
316 親容器
320 分注部
322 分注ユニット
327 子検体
330 親容器回収部
340 子容器供給部
341 子容器
350 仕分部
370 試料保存庫
374 試料容器移載ユニット
377 バーコードリーダ
543 分注ノズル
544 ノズルチップ
701 制御部
702 温度制御部
703 タイミング制御部
704 取込制御部
710 ノズルチップ供給部
711 ノズルチップ排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の分注位置にて患者検体を採取して小分けする分注手段と、
前記分注手段によって小分けされた前記患者検体を、当該患者検体を分析する所定の分析装置に向けて発送するための仕分けをおこなう仕分手段と、
を備えた分注装置において、
前記分析装置を校正するための標準試料と、前記分析装置を統計学的品質管理するための精度管理用試料とを収容する収容部と、
前記収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料をそれぞれ前記分注位置に移送する移送手段と、
前記移送手段による前記標準試料の移送のタイミングおよび前記精度管理用試料の移送のタイミングをそれぞれ制御する制御手段と、
を備え、
前記分注手段は、前記移送手段によって移送された前記標準試料および前記精度管理用試料を前記分注位置にて採取して小分けし、
前記仕分手段は、前記分注手段によって小分けされた前記標準試料および前記精度管理用試料を前記分析装置に向けて発送するための仕分けをおこなうことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記移送手段による前記標準試料の移送のタイミングを予め設定される所定のタイミングに制御し、前記移送手段による前記精度管理用試料の移送のタイミングを統計管理単位内でランダマイズしたタイミングに制御することを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記分注位置へ分注順に搬送される患者検体に前記精度管理用試料を割り込ませる制御をおこなうことを特徴とする請求項2に記載の分注装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記統計管理単位の始点、前記標準試料の交換時、前記精度管理用試料の交換時、装置の起動時、または統計学的品質管理によって測定異常が検出された直後に、前記移送手段に対して前記標準試料を移送させる制御をおこなうことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の分注装置。
【請求項5】
前記収容部は、所定の温度を保った状態で、前記標準試料および前記精度管理用試料を収容することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の分注装置。
【請求項6】
前記収容部は、前記標準試料および前記精度管理用試料を交換または補充するための挿入口を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の分注装置。
【請求項7】
前記収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料の試料容器には、栓が装着され、
前記移送手段は、前記収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料をそれぞれ前記分注位置に移送する際に、前記栓を開栓する試料開栓手段を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の分注装置。
【請求項8】
前記収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料の試料容器には、前記各標準試料および前記各精度管理用試料を識別するための識別表示が施され、
前記識別表示を読み取る読取手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記読取手段によって読み取られた前記識別表示に基づいて、前記標準試料および前記精度管理用試料を選択するとともに、選択した前記標準試料および前記精度管理用試料を前記移送手段に移送させるように制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の分注装置。
【請求項9】
前記分注手段は、前記患者検体または試料を吸引および吐出するノズルと、前記ノズルの先端に着脱自在に取り付けられるノズルチップと、前記ノズルチップを脱着する脱着手段とを備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の分注装置。
【請求項10】
搬送手段を介して搬送された患者検体を分注し、分注後の前記患者検体を後段の分析装置に発送するために再度前記搬送手段に送り出す分注装置において、
前記分析装置を校正するための標準試料と、前記分析装置を統計学的品質管理するための精度管理用試料とを収容する収容部と、
前記標準試料を前記搬送手段に送り出すタイミングを予め設定される所定のタイミングに制御し、前記精度管理用試料を前記搬送手段に送り出すタイミングを統計管理単位内でランダマイズしたタイミングに制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項11】
所定の分注位置にて患者検体を採取して小分けする分注工程と、
前記分注工程によって小分けされた前記患者検体を、当該患者検体を分析する所定の分析装置に向けて発送するための仕分けをおこなう仕分工程と、
を含む分注方法において、
前記分析装置を校正するための標準試料と、前記分析装置を統計学的品質管理するための精度管理用試料とを収容する収容部から、前記標準試料および前記精度管理用試料をそれぞれ前記分注位置に移送する移送工程と、
前記移送工程による前記標準試料の移送のタイミングおよび前記精度管理用試料の移送のタイミングをそれぞれ制御する制御工程と、
を含み、
前記分注工程は、前記移送工程によって移送された前記標準試料および前記精度管理用試料を前記分注位置にて採取して小分けし、
前記仕分工程は、前記分注工程によって小分けされた前記標準試料および前記精度管理用試料を前記分析装置に向けて発送するための仕分けをおこなうことを特徴とする分注方法。
【請求項12】
前記制御工程は、前記移送工程による前記標準試料の移送のタイミングを予め設定される所定のタイミングに制御し、前記移送工程による前記精度管理用試料の移送のタイミングを統計管理単位内でランダマイズしたタイミングに制御することを特徴とする請求項11に記載の分注方法。
【請求項13】
前記制御工程は、前記分注位置へ分注順に搬送される患者検体に前記精度管理用試料を割り込ませる制御をおこなうことを特徴とする請求項12に記載の分注方法。
【請求項14】
前記制御工程は、前記統計管理単位の始点、前記標準試料の交換時、前記精度管理用試料の交換時、装置の起動時、または統計学的品質管理によって測定異常が検出された直後に、前記移送工程にて前記標準試料を移送させる制御をおこなうことを特徴とする請求項11〜13のいずれか一つに記載の分注方法。
【請求項15】
前記収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料の試料容器には、栓が装着され、
前記移送工程は、前記収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料をそれぞれ前記分注位置に移送する際に、前記栓を開栓する試料開栓工程を含むことを特徴とする請求項11〜14のいずれか一つに記載の分注方法。
【請求項16】
収容部に収容される前記標準試料および前記精度管理用試料の試料容器には、前記標準試料および前記精度管理用試料に関する情報を識別するためのバーコードが表示され、
前記バーコードを読み取る読取工程をさらに含み、
前記制御工程は、前記読取工程によって読み取られた前記バーコードに基づいて、前記標準試料および精度管理用試料を選択するとともに、選択した前記標準試料および前記精度管理用試料を、前記移送工程にて移送させるように制御することを特徴とする請求項11または15のいずれか一つに記載の分注方法。
【請求項17】
搬送手段を介して搬送された患者検体を分注し、分注後の前記患者検体を後段の分析装置に発送するために再度前記搬送手段に送り出す分注装置の分注方法において、
前記分析装置を校正するための標準試料と、前記分析装置を統計学的品質管理するための精度管理用試料とを収容する収容部から、前記標準試料を前記搬送手段に送り出すタイミングを予め設定される所定のタイミングに制御し、前記精度管理用試料を前記搬送手段に送り出すタイミングを統計管理単位内でランダマイズしたタイミングに制御する制御工程を含むことを特徴とする分注方法。
【請求項18】
請求項11〜17のいずれか一つに記載の分注方法をコンピュータに実行させることを特徴とする分注プログラム。
【請求項19】
患者検体を投入する投入手段と、
前記投入手段にて投入された前記患者検体を分注する分注手段と、
前記分注手段によって分注された前記患者検体を分析する分析手段と、
前記分析手段によって分析された前記患者検体を回収する回収手段と、
前記各手段に前記患者検体を搬送する搬送手段と、
を備えた検体検査システムにおいて、
前記分注手段は、前記分析手段を校正するための標準試料と、前記分析手段を統計学的品質管理するための精度管理用試料とを収容し、前記標準試料を所定のタイミングにて分注するとともに、前記精度管理用試料をランダマイズしたタイミングにて分注し、
前記分析手段は、前記分注手段によって分注された前記標準試料を用いて校正をおこなうとともに、前記分注手段によって分注された前記精度管理用試料を用いて統計学的品質管理をおこなうことを特徴とする検体検査システム。
【請求項20】
患者検体を投入する投入工程と、
前記投入工程にて投入された前記患者検体を分注する分注工程と、
前記分注工程によって分注された前記患者検体を分析する分析工程と、
前記分析工程によって分析された前記患者検体を回収する回収工程と、
を含む検体検査方法において、
前記分注工程は、分析装置を校正するための標準試料を所定のタイミングにて分注するとともに、前記分析装置を統計学的品質管理するための精度管理用試料をランダマイズしたタイミングにて分注し、
前記分析工程は、前記分注工程にて分注された前記標準試料を用いて校正をおこなうとともに、前記分注工程にて分注された前記精度管理用試料を用いて統計学的品質管理をおこなうことを特徴とする検体検査方法。
【請求項21】
請求項20に記載の検体検査方法をコンピュータに実行させることを特徴とする検体検査プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−8558(P2009−8558A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170791(P2007−170791)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(591258484)株式会社エイアンドティー (23)
【Fターム(参考)】