説明

分注装置、自動分析装置および分注不良確認方法

【課題】液面誤検知による空吸引やプローブ目詰まりによる分注不良を確認して、誤分析を回避しうる分注装置、自動分析装置および分注不良確認方法を提供する。
【解決手段】分注装置、自動分析装置および分注不良確認方法。分注装置は、分注プローブ50を用いて検体容器22または試薬容器42から分析に要する液体およびダミー液体の合計量を吸引し、分注制御部109の制御の元で前記容器上でダミー液体を吐出させて、電圧検出回路113により吐出時の分注プローブ50と電極4a間の静電容量変化を検知して、液体吐出判定部106により前記静電容量変化に基づき分注プローブ50が液体を吐出したか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体または試薬を分注する分注装置、前記分注装置を備えた自動分析装置および分注不良確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体と試薬とを反応させることによってその検体の成分を分析する自動分析装置において、検体または試薬分注の際、確実に吸引するとともに検体または試薬中へのプローブの挿入を最小として検体間または試薬間のキャリーオーバーを防止するために、プローブ自身またはプローブの近傍に設けられる電極と、検体または試薬容器と一体にまたは近傍に配設される電極との間の静電容量の変化を検出する静電容量式の液面検知機構が採用されている。
【0003】
このような静電容量式の液面検知機構において、液体容器に帯電した静電気により液面を誤検知することがあり、これを防止するために液体容器の帯電を除電する機構を設ける液面検知機構が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、液面検知機構とは別に、分注プローブが接続される配管に配管圧力測定機構を設けることにより検体または試薬の液体吸引状態を圧力により確認して、圧力変化によって分注異常を検出する技術も開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−271319号公報
【特許文献2】特開2007−285888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の液面検知機構は、検体または試薬の容器帯電を除電できるため液面誤検知による空吸引などの分注不良は低減できるものの、異物の吸引等により分注プローブが目詰まりした場合などにも分注不良は発生し、プローブ目詰まりによる分注不良の発見、解消という問題を有していた。
【0007】
また、特許文献2に記載の液面検知機構では、空吸引やプローブ目詰まりによる分注不良を確認することはできるものの、圧力検知機構を搭載する必要があり、コストやスペースの点で問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液面誤検知による空吸引やプローブ目詰まりによる分注不良をも確認して、誤分析を回避しうる分注装置、自動分析装置および分注不良確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注装置は、導電性を有し容器に収容された液体を吸引または吐出する分注プローブと、前記容器と一体にまたは前記容器の近傍に配設される電極と、を備え、前記分注プローブと前記電極との間の静電容量の変化に基づいて前記液体の液面を検知する液面検知機構を備える分注装置であって、前記分注プローブを用いて前記容器から分析に必要な液体とダミー液体の合計量を吸引し、その後前記容器上で前記ダミー液体を吐出するよう制御する分注制御手段と、前記分注制御手段による前記ダミー液体を吐出時の前記分注プローブと前記電極との間の静電容量変化を検知する検知手段と、前記検知手段が検知した静電容量変化に基づき、前記分注プローブが液体を吐出したか否かを判定する液体吐出判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の分注装置は、上記発明において、前記検知手段は、前記液面検知機構であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の分注装置は、上記発明において、前記検知手段により検知された静電容量変化に基づき、ダミー液体を吐出時の前記分注プローブと前記電極との間の静電容量変化時間を測定する測定手段と、を備え、前記液体吐出判定手段は、前記測定手段が測定した静電容量変化時間に基づき、前記分注プローブが所定量の液体を吐出したか否かを判定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の自動分析装置は、検体と試薬を反応容器で反応させ、反応液の光学的特性をもとに前記反応液の分析を行う自動分析装置であって、上記のいずれか一つに記載の分注装置を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の自動分析装置の分注不良確認方法は、容器に収容された検体および試薬を反応容器に分注し、分注された検体及び試薬を反応容器内で攪拌して反応させ、反応液の光学的特性をもとに前記反応液を分析する自動分析装置の分注不良確認方法であって、前記容器内の液体の液面を静電容量変化に基づき検知する液面検知ステップと、前記容器内の液体を、分注プローブを用いて分析に必要な液体とダミー液体の合計量を吸引する吸引ステップと、前記分注プローブにより前記容器上で前記ダミー液体を吐出するダミー液体吐出ステップと、前記ダミー液体吐出ステップにおいて、前記ダミー液体の吐出時の前記分注プローブと電極との間の静電容量変化を検知する検知ステップと、前記検知ステップにて検知された静電容量変化に基づき、前記分注プローブが液体を吐出したか否かを判定する液体吐出判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の自動分析装置の分注不良確認方法は、上記発明において、前記検知ステップにおいて検知された静電容量変化に基づき、前記ダミー液体の吐出時の前記分注プローブと前記電極との間の静電容量変化時間を測定する測定ステップと、を含み、前記液体吐出判定ステップは、前記測定ステップにより測定した静電容量変化時間に基づき、前記分注プローブが所定量の液体を吐出したか否かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る分注装置、自動分析装置および分注不良確認方法によれば、分注プローブを用いて検体または試薬容器から分析に必要な液体とダミー液体の合計量を吸引し、前記容器上で前記ダミー液体を吐出時の前記分注プローブと前記電極との間の静電容量変化を検知し、前記静電容量変化に基づき前記分注プローブが液体吐出したか否かを判定することにより、液面誤検知による空吸引やプローブ目詰まりによる分注不良を確認して、誤分析を回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。なお、本明細書の記載により本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明にかかる自動分析装置を示す概略構成図である。図1に示すように、自動分析装置1は、検体と試薬との間の反応物を通過する光を測定する測定機構9と、測定機構9を含む分析装置1全体の制御を行なうとともに、測定機構9における測定結果の分析を行なう制御機構10とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の分析を自動的に行なう。
【0018】
まず、測定機構9について説明する。測定機構9は、大別して検体テーブル2と、反応テーブル3と、試薬テーブル4と、検体分注装置5と、試薬分注装置7と、分注プローブ洗浄装置6および8とを備えている。
【0019】
検体テーブル2は、円盤状のテーブルを有し、該テーブルの周方向に沿って等間隔で複数配置された収納部21を備えている。各収納部21には、検体を収容した検体容器22が着脱自在に収納される。検体容器22は、上方に向けて開口する開口部22aを有している。また、検体テーブル2は、検体テーブル2の中心を通る鉛直線を回転軸として検体テーブル駆動部(図示せず)によって図1に矢印で示す方向に回転する。検体テーブル2が回転すると検体容器22は、検体分注装置5によって検体が吸引される検体吸引位置に搬送される。
【0020】
なお、検体容器22には、収容された検体の種類や分析項目に関する検体情報を有する識別ラベル(図示せず)が貼り付けてある。一方、検体テーブル2は、検体容器22の識別ラベルの情報を読み取る読取部23を備えている。
【0021】
反応テーブル3は、円環状のテーブルを有し、該テーブルの周方向に沿って等間隔で複数配置された収納部31を備えている。各収納部31には、検体と試薬を収容する透明な反応容器32が上方に向けて開口した形態で着脱自在に収納される。また、反応テーブル3は、反応テーブル3の中心を通る鉛直線を回転軸として反応テーブル駆動部(図示せず)によって図1に矢印で示す方向に回転する。反応テーブル3が回転すると反応容器32は、検体分注装置5によって検体が吐出される検体吐出位置や、試薬分注装置7によって試薬が吐出される試薬吐出位置に搬送される。反応テーブル3の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽とがそれぞれ設けられている。恒温槽は、反応容器32に分注される検体と試薬の反応を促進させる温度に加温調整される。
【0022】
測光装置33は、光源33aおよび受光部33bを有している。光源33aは、所定波長の分析光を出射し、受光部33bは、光源33aから出射されて、反応容器32に収容された検体と試薬が反応した反応液を透過した光束を測定する。測光装置33は、前記光源33aと受光部33bが反応テーブル3の収納部31を挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。なお、反応テーブル3は、測定後の反応液を反応容器32から排出し、該反応容器32を洗浄する反応容器洗浄機構34、および反応容器32に分注された検体と試薬との攪拌を行い、反応を促進させる攪拌部35を備えている。
【0023】
試薬テーブル4は、円盤状のテーブルを有し、該テーブルの周方向に沿って等間隔で複数配置された収納部41を備えている。各収納部41には、試薬を収容した試薬容器42が着脱自在に収納される。試薬容器42は、上方に向いて開口する開口部42aを有している。また、試薬テーブル4は、試薬テーブル4の中心を通る鉛直線を回転軸として試薬テーブル駆動部(図示せず)によって図1に矢印で示す方向に回転する。試薬テーブル4が回転すると試薬容器42は、試薬分注装置7によって試薬が吸引される試薬吸引位置に搬送される。試薬テーブル4の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、試薬テーブル4の下方には、保冷槽が設けられている。このため、試薬テーブル4内に試薬容器42が収納され、蓋が閉じられたときに、保冷槽により試薬容器42内に収容された試薬を一定の温度状態に保ち、試薬容器42内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0024】
なお、試薬容器42には、収容された試薬の種類や収容量に関する試薬情報を有する識別ラベル(図示せず)が貼り付けてある。一方、試薬テーブル4は、試薬容器42の識別ラベルの情報を読み取る読取部43を備えている。
【0025】
検体分注装置5は、検体の吸引および吐出を行なう分注プローブが先端部に取り付けられ、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。検体分注装置5は、検体テーブル2と反応テーブル3との間に設けられ、検体テーブル2によって所定位置に搬送された検体容器22内の検体を分注プローブによって吸引し、アームを旋回させ、反応テーブル3によって所定位置に搬送された反応容器32に分注して検体を所定タイミングで反応テーブル3上の反応容器32内に移送する。
【0026】
試薬分注装置7は、試薬の吸引および吐出を行なう分注プローブが先端部に取り付けられ、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。試薬分注装置7は、試薬テーブル4と反応テーブル3との間に設けられ、試薬テーブル4によって所定位置に搬送された試薬容器42内の試薬を分注プローブによって吸引し、アームを旋回させ、反応テーブル3によって所定位置に搬送された反応容器32に分注して試薬を所定タイミングで反応テーブル3上の反応容器32内に移送する。
【0027】
図2に検体分注装置5(試薬分注装置7も同様である)の概略構成図を示す。検体分注装置5は、図2に示すように分注プローブ50を有している。分注プローブ50は、ステンレスなどによって棒管状に形成されたもので、先端側はテーパー形状をとる。分注プローブ50は、先端を下方に向けて上方の基端がアーム51の先端に取り付けてある。アーム51は、水平配置され、その基端が支軸52の上端に固定してある。支軸52は、鉛直配置されており、プローブ移送部53によって鉛直軸Oを中心として回転する。支軸52が回転すると、アーム51が水平方向に旋回して、分注プローブ50を水平方向に移動させる。また、支軸52は、プローブ移送部53によって鉛直軸Oに沿って昇降する。支軸52が昇降すると、アーム51が鉛直方向に昇降して、分注プローブ50を鉛直(上下)方向であって分注プローブ50の長手方向に昇降させる。
【0028】
分注プローブ50の基端には、チューブ54aの一端が接続される。このチューブ54aの他端は、シリンジ55に接続される。シリンジ55は、チューブ54aの他端が接続された筒状のシリンダー55aと、シリンダー55aの内壁面に摺動しながらシリンダー55a内を進退可能に設けられたプランジャー55bとを有する。プランジャー55bは、プランジャー駆動部56に接続される。プランジャー駆動部56は、例えばリニアモーターを用いて構成され、シリンダー55aに対するプランジャー55bの進退移動を行うものである。シリンジ55のシリンダー55aには、チューブ54bの一端が接続される。このチューブ54bの他端は、押し出し液L1を収容するタンク57に接続される。また、チューブ54bの途中には、電磁弁58およびポンプ59が接続される。なお、押し出し液L1としては、蒸留水や脱気水などの非圧縮性流体が適用される。この押し出し液L1は、分注プローブ50の内部の洗浄を行う洗浄水としても適用される。
【0029】
検体分注装置5は、ポンプ59を駆動し、電磁弁58を開状態にすることでタンク57に収容されている押し出し液L1が、チューブ54bを経てシリンジ55のシリンダー55a内に充填され、さらにシリンダー55aからチューブ54aを経て分注プローブ50の先端まで満たされる。このように押し出し液L1が分注プローブ50の先端まで満たされた状態で、電磁弁58を閉状態にし、ポンプ59を止めておく。そして、検体や試薬の吸引を行う場合、プランジャー駆動部56を駆動してプランジャー55bをシリンダー55aに対して後退移動させることにより、押し出し液L1を介して分注プローブ50の先端部に吸引圧が印可され、この吸引圧によって検体や試薬が吸引される。一方、検体や試薬の吐出を行う場合には、プランジャー駆動部56を駆動してプランジャー55bをシリンダー55aに対して進出移動させることにより、押し出し液L1を介して分注プローブ50の先端部に吐出圧が印加され、この吐出圧によって検体や試薬が吐出される。
【0030】
なお、検体分注装置5(試薬分注装置7)は、分注プローブで分注する検体(試薬)の液面を検知する液面検知機構11を備えており、図3を参照して静電容量式の液面検知機構について説明する。図3は、静電容量式の液面検知機構11の概略構成図である。図3に示すように、液面検知機構11は、発振回路111、微分回路112及び電圧検出回路113を備えている。
【0031】
発振回路111は、交流信号を発振し、微分回路112に入力する。微分回路112は、図3に示すように、抵抗112a、112b、コンデンサ112c、112d及びオペアンプ112eを有し、発振回路111が発振する交流信号の周波数によって入力感度が高くなるように調整されている。微分回路112の+側入力端は、リード線11aを介して分注プローブ50に接続されており、分注プローブ50と筐体アースである電極4aとの間に静電容量が発生し、この静電容量はコンデンサ112dと並列に生じることになる。そのため、分注プローブ50と筐体アースである電極4aとの間の静電容量の変化により微分回路112の出力電圧Voutが変化する。電圧検出回路113は、この出力電圧Voutを検出し、この値に応じて分注プローブ50の下端が検体容器22内に存在する液体の液面に接したか否か、従って液面を検知する。電圧検出回路113が検出したこの出力電圧信号は、制御部101へ出力され、検体容器22に収容される検体の液面高が検知される。
【0032】
この場合、分注プローブ50が液体の液面に非接触状態の静電容量値により発振回路111の周波数で入力感度が高くなるように調節された微分回路112は、接触状態の静電容量値では感度が低下する。従って、電圧検出回路113は、出力電圧Voutの変化により液面を検知する。
【0033】
また、液面検知機構11は、検体容器22上で分注プローブ50から検体ダミー吐出を行なう際の、分注プローブ50による検体吐出の可否を判断するための静電容量の検知にも使用される。分注制御部109は、分注プローブ50を用いて検体容器22から分析に必要な検体とダミー検体の合計量を吸引し、その後検体容器22上でダミー検体を吐出するよう制御する。ダミー検体が分注プローブ50から吐出されたときから、検体容器22内の検体液面に到達し、ダミー検体の吐出が終了するまでの出力電圧信号を電圧検出回路113により検出する。電圧検出回路113が検出した出力信号は、制御部101へ出力され、液体吐出判定部106が当該出力電圧信号に基づきダミー検体が吐出されたか否かを判定する。ダミー検体が吐出されたと判定された場合は、ダミー検体とともに吸引された検体は所定量吸引され、吐出も行なわれると判断され、ダミー検体が吐出されないと判定された場合は、ダミー検体とともに吸引された検体は所定量吸引されていないか、または吐出されないと判断され、分注異常である旨の警告が出される。
【0034】
分注プローブ洗浄装置6は、検体テーブル2と反応テーブル3との間であって、検体分注装置5における分注プローブ50の水平移動の軌跡の途中位置に設けられ、次の検体の分注を行なうために、検体を反応容器32に吐出した後分注プローブ50を洗浄する。分注プローブ洗浄装置8は、試薬テーブル4と反応テーブル3との間であって、試薬分注装置7における分注プローブ50の水平移動の軌跡の途中位置に設けられ、次の試薬の分注を行なうために、試薬を反応容器32に吐出した後分注プローブ50を洗浄する。
【0035】
つぎに、制御機構10について説明する。図1に示すように、制御機構10は、制御部101、入力部102、分析部103、記憶部104、出力部105および送受信部107を備える。制御機構10が備える各部は、制御部101に電気的に接続されている。分析部103は、制御部101を介して測光装置33に接続され、受光部33bが受光した光量に基づいて検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部101に出力する。入力部102は、制御部101へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。入力部102はタッチパネルによって実現するようにしてもよい。
【0036】
記憶部104は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部104は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
【0037】
出力部105は、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、制御部101の制御のもと、分析に関する諸情報を出力する。出力部105は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。送受信部107は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する。
【0038】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転する反応テーブル3によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器32に、試薬分注装置7が試薬容器42から吸引した試薬を吐出し、試薬が吐出された反応容器32は、反応テーブル3によって周方向に沿って搬送され、検体分注装置5によって検体テーブル2に保持された検体容器22から検体が分注され、測光装置33により検体と試薬が反応した反応液を透過した光束が測定される。
【0039】
次に、実施の形態1にかかる分注プローブの分注不良の確認方法について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。先ず、プローブ移送部53により分注する検体を収容した検体容器22上に分注プローブ50を搬送し、検体容器22内に分注プローブ50を降下する(ステップS100)。その後、分注プローブ50が液面を検知したか否かを判断する(ステップS101)。分注プローブ50が検体容器22内に降下すると、分注プローブ50は検体液面に接触し、分注プローブ50が備える液面検知機構は、かかる液面接触による静電容量の変化により液面を検知することになる。ここで、分注プローブ50が液面を検知しない場合(ステップS101、No)、ステップS100に移行し、分注プローブ50がプローブ移送部53によりさらに降下される。一方、分注プローブ50が液面を検知すると(ステップS101、Yes)、検体を吸引するために、分注プローブ50は所定量降下され(ステップS102)、プランジャー駆動部56の負圧により分注プローブ50から検体を吸引する(ステップS103)。検体の吸引量は、分析に要する量に加え、分注プローブ50が検体を吸引したか否かを確認する検体ダミー吐出に用いるダミーを加えた分吸引される。
【0040】
検体吸引後、分注プローブ50をプローブ移送部53の駆動により検体液面から数ミリ程度離れるよう上昇させる(ステップS104)。上昇後、分注制御部109の制御のもと、分注プローブ50からダミー検体を吐出させ(ステップS105)、ダミー検体を吐出時の分注プローブ50と筐体アースである電極4a間の静電容量を液面検知機構11により検知し、検知した静電容量変化に基づき、ダミー検体が分注プローブ50から吐出されたか否かを液体吐出判定部106が判定する(ステップS106)。ここで、図5に示す実施の形態1の分注不良の確認方法の動作図、図6に示す分注プローブのダミー検体吐出時の分注プローブの拡大図、および図7に示すダミー検体吐出時の静電容量の変化図を参照して、液体吐出判定部106によるダミー検体吐出の判定方法についてさらに説明する。まず、図5(a)に示すように、検体容器22内に分注プローブ50を降下させて、分注プローブ50のプローブ先端が検体液面と接触した際の静電容量を液面検知機構11により検出し、静電容量変化に基づき液面を検知する。その後、図5(b)に示すように、検体容器22内の分注プローブ50を所定量さらに降下させて検体を吸引する。検体吸引後、図5(c)に示すように、分注プローブ50を検体容器22内の検体液面から数ミリ程度はなれるように上昇させて、図5(d)に示すようにダミー検体を吐出する。分注プローブ50と検体液面との距離は、ダミー検体吐出量や検体の粘度等を考慮して設定する。分注プローブ50と検体液面の距離が近接したほうがダミー検体吐出量を少なくできるが、検体の粘度が高い場合に、ダミー検体の吐出前に検体とプローブが繋がってしまう液絡の状態となるおそれがあるため、液絡が発生しない距離とするものとする。
【0041】
図6は、分注プローブのダミー検体吐出時(図5(d))の拡大図であり、分注制御部109がプランジャー駆動部56にダミー検体吐出の信号を発すると、図6(b)に示すように分注プローブ50の先端からダミー検体が吐出し始め、その後、図6(c)に示すように、吐出されたダミー検体で分注プローブ50と検体(検体容器22)が液絡状態となる。図6(c)のように吐出されたダミー検体で分注プローブ50と検体容器22が液絡状態となると、分注プローブ50と電極4a間の静電容量が大きく変化する。図7は、ダミー検体吐出時の静電容量の変化図である。図7に示すように、ダミー検体が吐出されると吐出とともに出力電圧が低下し、吐出されたダミー検体で分注プローブ50と検体容器22が液絡状態となるt1時に最低出力−△Vとなる。かかる最低出力値について予め閾値を設定し、記憶部104に記憶させることにより、液体吐出判定部106が設定された閾値と最低出力値の比較によりダミー検体が吐出されたか否かを判定する。前記閾値は、液面検知機構11の液面検知の際の閾値と同じでもよいが、別の値を設定してもよい。
【0042】
液体吐出判定部106による判定の結果、ダミー検体が吐出されたと判定された場合は(ステップS106、Yes)、ステップS103で行なった分析に必要な検体が所定量吸引され、その後の検体の吐出も正常に行なわれるものと判断され、分注プローブ50を反応テーブル3に搬送の後、反応テーブル3に収容された反応容器32に検体を吐出する(ステップS107)。また、ダミー検体が吐出されないと判定された場合は(ステップS106、No)、ステップS103で行なった検体が所定量吸引されないか、または吐出も正常に行なわれないと判断して、分注異常の警告が出される(ステップS108)。
【0043】
(実施の形態2)
実施の形態1は、検体容器22上でダミー検体吐出時の静電容量変化を検出し、当該変化が閾値以上の場合はダミー検体が吐出されたと判定し、先の検体吸引も正常であると判断するのに対し、実施の形態2では、ダミー検体吐出時の静電容量の変化時間を静電容量変化時間測定部108により測定して、変化時間が所定範囲内である場合にダミー検体が所定量吐出されたと判定して、検体吸引が正常であると判断する点で異なる。実施の形態1では、所定量のダミー検体が吐出されずに静電容量の変化時間が短い場合であっても、閾値以上の電圧が出力されると分注が正常であると判定されるが、実施の形態2では、静電容量の変化時間に基づいてダミー検体吐出が正常に行なわれたか否かを判定するので、検体吸引量が設定量より少なく、ダミー検体吐出量も少ない場合や、検体吸引は正常に行なわれたが、検体中の異物により分注プローブ50が目詰まりして所定量のダミー検体が吐出されない場合でも分注異常であることを判定できるので好ましい。
【0044】
実施の形態2について、図7に示すダミー検体吐出時の静電容量の変化図、図8に示す静電容量式の液面検知機構11Aの概略構成図、および図9に示す分注プローブの分注不良の確認方法のフローチャートを参照して説明する。図8に示すように、実施の形態2の液面検知機構11Aは、制御部101A内に静電容量変化時間測定部108を備える。前記静電容量変化時間測定部108が、図7に示すダミー検体吐出時の静電容量の変化図の静電容量変化時間、即ち△t(t2-t1)を測定し、かかる静電容量変化時間について予め所定範囲を設定して、記憶部104に記憶させることにより、液体吐出判定部106Aが設定された所定範囲と変化時間△tの対比によりダミー検体が所定量吐出されたか否かを判定する。静電容量変化時間の所定範囲は、ダミー検体の吐出量に応じて設定する。
【0045】
図9に示すように、先ず、プローブ移送部53により分注する検体を収容した検体容器22上に分注プローブ50を搬送し、検体容器22内に分注プローブ50を降下する(ステップS200)。その後、分注プローブ50が液面を検知したか否かを判断する(ステップS201)。分注プローブ50が検体容器22内に降下すると、分注プローブ50は検体液面に接触し、分注プローブ50が備える液面検知機構11Aは、かかる液面接触による静電容量の変化により液面を検知することになる。ここで、分注プローブ50が液面を検知しない場合(ステップS201、No)、ステップS200に移行し、分注プローブ50がプローブ駆動手段により降下される。一方、分注プローブ50が液面を検知すると(ステップS201、Yes)、検体を吸引するために、分注プローブ50は所定量降下され(ステップS202)、プランジャー駆動部56の負圧により分注プローブ50から検体を吸引する(ステップS203)。検体の吸引量は、分析に要する量に加え、分注プローブ50が検体を吸引したか否かを確認する検体ダミー吐出に用いるダミー検体量を加えた分吸引する。
【0046】
検体吸引後、分注プローブ50をプローブ移送部53の駆動により検体液面から数ミリ程度離れるよう上昇させる(ステップS204)。上昇後、分注プローブ50からダミー検体を吐出させ(ステップS205)、吐出後の分注プローブ50と電極4a間の静電容量を検出し、ダミー検体が分注プローブ50から所定量吐出されたか否かを判定する(ステップS206)。静電容量変化時間測定部108は、静電容量の変化△Vが閾値以上である時間△tを測定し、液体吐出判定部106Aは、△tがダミー検体吐出量に応じて設定された静電容量変化時間の所定範囲内であるか否かを判定する。液体吐出判定部106Aによる判定の結果、ダミー検体が所定量吐出されたと判定された場合は(ステップS206、Yes)、ステップS203で行なった検体も所定量吸引され、吐出も正常に行なわれると判断され、分注プローブ50を反応テーブル3に搬送し、反応テーブル3に収容された反応容器32に検体を吐出する(ステップS207)。また、ダミー検体が所定量吐出されないと判定された場合は(ステップS206、No)、ステップS203で行なった検体は所定量吸引されず、吐出も正常に行なわれないと判断して、分注異常の警告が出される(ステップS208)。
【0047】
実施の形態1および2では検体分注について説明したが、試薬分注についても同様にして空吸引やプローブ目詰まりによる分注不良を確認できる。
【0048】
このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す自動分析装置で使用される検体分注装置の概略構成図である。
【図3】図2に示す検体分注装置で使用される液面検知機構の概略構成図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる分注不良の確認方法のフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる分注不良を確認する動作図である。
【図6】本発明の実施の形態1にかかる分注プローブのダミー検体吐出時の分注プローブの拡大図である。
【図7】本発明の実施の形態1にかかるダミー検体吐出時の静電容量の変化図である。
【図8】本発明の実施の形態2にかかる検体分注装置で使用される液面検知機構の概略構成図である。
【図9】本発明の実施の形態2にかかる分注不良の確認方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 自動分析装置
2 検体テーブル
21、31、41 収納部
22 検体容器
22a、42a 開口部
23、43 読取部
3 反応テーブル
32 反応容器
33 測光装置
33a 光源
33b 受光部
34 反応容器洗浄機構
35 攪拌部
4 試薬テーブル
4a 電極
42 試薬容器
5 検体分注装置
7 試薬分注装置
50 分注プローブ
51 アーム
52 支軸
53 プローブ移送部
54a、54b チューブ
55 シリンジ
55a シリンダー
55b プランジャー
56 プランジャー駆動部
57 タンク
58 電磁弁
59 ポンプ
6、8 分注プローブ洗浄装置
9 測定機構
10 制御機構
101、101A 制御部
102 入力部
103 分析部
104 記憶部
105 出力部
106、106A 液体吐出判定部
107 送受信部
108 静電容量変化時間測定部
109 分注制御部
11、11A 液面検知機構
111 発振回路
112 微分回路
113 電圧検出回路
L1 押し出し液
O 鉛直軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有し容器に収容された液体を吸引または吐出する分注プローブと、前記容器と一体にまたは前記容器の近傍に配設される電極と、を備え、前記分注プローブと前記電極との間の静電容量の変化に基づいて前記液体の液面を検知する液面検知機構を備える分注装置であって、
前記分注プローブを用いて前記容器から分析に必要な液体とダミー液体の合計量を吸引し、その後前記容器上で前記ダミー液体を吐出するよう制御する分注制御手段と、
前記分注制御手段による前記ダミー液体を吐出時の前記分注プローブと前記電極との間の静電容量変化を検知する検知手段と、
前記検知手段が検知した静電容量変化に基づき、前記分注プローブが液体を吐出したか否かを判定する液体吐出判定手段と、
を備えることを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記検知手段は、前記液面検知機構であることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記検知手段により検知された静電容量変化に基づき、前記ダミー液体を吐出時の前記分注プローブと前記電極との間の静電容量変化時間を測定する測定手段と、
を備え、前記液体吐出判定手段は、前記測定手段が測定した静電容量変化時間に基づき、前記分注プローブが所定量の液体を吐出したか否かを判定することを特徴とする請求項1または2に記載の分注装置。
【請求項4】
検体と試薬を反応容器で反応させ、反応液の光学的特性をもとに前記反応液の分析を行う自動分析装置であって、
請求項1〜3のいずれか一つに記載の分注装置を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
容器に収容された検体および試薬を反応容器に分注し、分注された検体及び試薬を反応容器内で攪拌して反応させ、反応液の光学的特性をもとに前記反応液を分析する自動分析装置の分注不良確認方法であって、
前記容器内の液体の液面を静電容量変化に基づき検知する液面検知ステップと、
前記容器内の液体を、分注プローブを用いて分析に要する液体量とダミー液体の合計量を吸引する吸引ステップと、
前記分注プローブにより前記容器上で前記ダミー液体を吐出するダミー液体吐出ステップと、
前記ダミー液体吐出ステップにおいて、前記ダミー液体の吐出時の前記分注プローブと電極との間の静電容量変化を検知する検知ステップと、
前記検知ステップにて検知された静電容量変化に基づき、前記分注プローブが液体を吐出したか否かを判定する液体吐出判定ステップと、
を含むことを特徴とする自動分析装置の分注不良確認方法。
【請求項6】
前記検知ステップにおいて検知された静電容量変化に基づき、前記ダミー液体の吐出時の前記分注プローブと前記電極との間の静電容量変化時間を測定する測定ステップと、
を含み、前記液体吐出判定ステップは、前記測定ステップにより測定した静電容量変化時間に基づき、前記分注プローブが所定量の液体を吐出したか否かを判定することを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置の分注不良確認方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−71766(P2010−71766A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238522(P2008−238522)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】