説明

分注装置および分注方法

【課題】 検体の泡立ちを抑制し、かつ分注に要する時間を短縮することが可能な分注装置および分注方法を提供すること。
【解決手段】 分注装置101は、液体を保持する保持空間を有するチップ320が着脱可能に取り付けられる本体310、を具備するノズル300と、ノズル300を移動させるノズル駆動部380と、上記保持空間に液体を導入し、かつ上記保持空間に液体を保持する、吸引ポンプ390と、チップ320を本体310に対して着脱させる、着脱手段と、ノズル駆動部380、吸引ポンプ390、および上記着脱手段を制御する制御手段と、を備えており、上記制御手段は、吸引ポンプ390によって、上記保持空間に液体を導入し、この液体を上記保持空間に保持させた状態で、ノズル駆動部380によってチップ320を試験管820に挿入し、かつ上記着脱手段によって上記液体を保持したチップ320を本体310から離脱させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置および分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、検体として尿を対象とした分析を行う場合、ハルンカップと称される紙製コップに尿を採取し、このハルンカップ内の尿をいくつかの試験管に小分けする、分注作業が行われる。図19は、従来の分注装置の一例を示している(たとえば、特許文献1参照)。同図に示された分注装置900は、分注ノズル91、洗浄ポット92を備えている。検体95が蓄えられたハルンカップ93が分注装置900にセットされると、分注ノズル91の先端がハルンカップ93の検体95に浸漬される。たとえば図示しない吸引ポンプによって吸引ノズル91に負圧を発生させることにより、所定量の検体95を分注ノズル91内に吸引し、これを保持する。次いで、検体95を保持した分注ノズル91の先端を試験管94に進入させる。そして、上記吸引ポンプによる正圧付与、あるいは大気開放により、分注ノズル91内の検体95を試験管94へと移す。これにより、ある試験管94への分注作業が完了する。次の試験管94への分注を行う際には、これに先立って、ノズル91を洗浄ポット92において洗浄する。これは、異なる検体95が混じってしまうことを防止するためである。
【0003】
分注装置900による分注作業においては、まず、分注ノズル91から試験管94に検体95を吐出するため、試験管94内において検体95が激しく流動する。この流動に伴い、検体95に泡立ちが発生しやすい。検体95の泡立ちは、検体95の分析を阻害したり、分析結果を誤らせたりするおそれがある。また、ある試験管94への分注を行うたびに、ノズル91を洗浄する必要がある。この洗浄時間は、分注に要する時間を長引かせる要因となる。分注時間が長いと、分注以降の分析などの処理が待たされるおそれがあり、迅速な分析を達成できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−142235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、検体の泡立ちを抑制し、かつ分注に要する時間を短縮することが可能な分注装置および分注方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供される分注装置は、液体を保持する保持空間を有するチップが着脱可能に取り付けられる本体、を具備するノズルと、上記ノズルを移動させるノズル移動手段と、上記保持空間に液体を導入し、かつ上記保持空間に液体を保持する、導入保持手段と、上記チップを上記本体に対して着脱させる、着脱手段と、上記ノズル移動手段、上記導入保持手段、および上記着脱手段を制御する制御手段と、を備えており、上記制御手段は、上記導入保持手段によって、上記保持空間に液体を導入し、この液体を上記保持空間に保持させた状態で、上記ノズル移動手段によって上記チップを分注容器に挿入し、かつ上記着脱手段によって上記液体を保持した上記チップを上記本体から離脱させる。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記本体は、上記チップに進入する進入嵌合部を有し、上記チップは、進入してくる上記進入嵌合部と嵌合する収容嵌合部を有する。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記チップが上記分注容器に挿入された状態において、上記収容嵌合部は、上記分注容器から突出している。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記進入嵌合部の一部または全体が、上記チップの上記収容嵌合部を構成する材質よりも可撓性に富む材質からなる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記着脱手段は、上記分注容器に挿入された上記チップの上記収容嵌合部の端縁に接することにより、上記チップが上記分注容器から離脱することを規制する、チップ押さえ部を含む。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記分注容器は、円筒形状とされた円筒部、およびこの円筒部一端に繋がっており、この円筒部から離間するほど断面寸法が小となるくびれ部、を有しており、上記チップは、上記分注容器の上記円筒部の内面に沿う外面を有する内挿円筒部、および上記分注容器の上記くびれ部の内面に沿う内挿くびれ部、を有している。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記分注容器は、内面の長手方向端である底面部を有しており、上記チップは、その先端に上記底面部に沿った形状とされた吸引口を有する。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記液体は、尿である。
【0014】
本発明の第2の側面によって提供される分注方法は、液体を保持する保持空間を有するチップを本体に取り付けることによって構成されたノズルを用い、上記保持空間に液体を導入し、この液体を上記保持空間内に保持する工程と、上記保持空間に液体を保持した上記ノズルの上記チップを分注容器に挿入する工程と、上記本体から上記チップを離脱させることにより、液体を保持した上記チップを上記分注容器に残存させる工程と、を備える。
【0015】
このような構成によれば、上記分注容器内において上記液体には、流動がほとんど発生しない。これにより、上記液体が不当に泡立ってしまうことを回避することが可能である。これは、たとえば、上記分注容器に分注した上記液体を対象とした分析を適切に行うことができるという利点がある。
【0016】
また、上記分注容器に上記チップを残存させるため、次の上記分注容器に対して分注を行うときには、別の新しい上記チップを用いる。このため、上記ノズルを洗浄する必要が無い。したがって、分注に要する時間を短縮することが可能である。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る分注装置の一例を示す概略全体斜視図である。
【図2】図1の分注装置の機能ブロック図である。
【図3】図1の分注装置による分注方法に用いられる試験管の一例を示す断面図である。
【図4】図1の分注装置の分注ノズルの本体の一例を示す要部拡大断面図である。
【図5】図1の分注装置の分注ノズルのチップの一例を示す断面図である。
【図6】図1の分注装置による分注方法における初期状態を示す断面図である。
【図7】図1の分注装置による分注方法における本体とチップの結合を示す断面図である。
【図8】図1の分注装置による分注において、チップを検体に浸漬させた状態を示す断面図である。
【図9】図1の分注装置による分注における検体導入を示す断面図である。
【図10】図1の分注装置による分注における検体保持を示す断面図である。
【図11】図1の分注装置による分注において、チップを試験管に挿入した状態を示す断面図である。
【図12】図1の分注装置による分注において、本体からチップを離脱させた状態を示す断面図である。
【図13】図1の分注装置による分注において試験管にチップが残存した状態を示す断面図である。
【図14】図1の分注装置に用いられる試験管の一変形例を示す斜視図である。
【図15】図13に示す試験管を用いた試験管装填工程を示す斜視図である。
【図16】図1の分注装置に用いられる試験管の他の変形例を示す斜視図である。
【図17】図1の分注装置に用いられる試験管の他の変形例を示す斜視図である。
【図18】図1の分注装置に用いられる試験管の他の変形例を示す斜視図である。
【図19】従来の分注装置の一例を示す概略全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1および図2は、本発明に係る分注装置の一例を示している。本実施形態の分注装置101は、ハルンカップ搬送部210、試験管装填部220、試験管搬送部290、ノズル300、ノズル駆動部380、吸引ポンプ390を備えている。分注装置101は、ハルンカップ810に採取された尿などの検体890を分注容器の一例である試験管820に分注する装置である。分注装置101は、この分注工程を行う専用装置として構成されているが、本発明はこれに限定されず、分注機能と検体の分析機能とを備えた分析装置として構成されていてもよい。また、尿をはじめとする生体由来の検体890は、本発明において分注される液体の一例である。本発明に係る分注装置および分注方法は、様々な液体の分注に用いることができる。
【0021】
ハルンカップ搬送部210は、ハルンカップ810を適所に搬送するものであり、ハルンカップ搬送路211および廃棄ピット212を備えている。ハルンカップ搬送路211は、たとえばベルトコンベアによって構成されており、上流側に置かれたハルンカップ810を位置P3に搬送し、かつ位置P3において停止させる。また、分注を終えたハルンカップ810を、廃棄ピット212へと搬送する。廃棄ピット212は、使用済みのハルンカップ810を貯めておくスペースである。
【0022】
試験管装填部220は、所定数の試験管820を試験管ラック850に装填する機能を果たす。また、試験管装填部220は、図示しないラベル貼付手段によって試験管820にラベル840が貼り付けられる。ラベル840には、たとえば検体890を採取した患者に関する情報や日時情報などが記録されたバーコードが印字されている。上記ラベル貼付手段としては、複数の白地のラベル840を具備するラベルロールからたとえば押し付けロールなどを用いて個々のラベル840を試験管820に貼り付ける既知の構成を用いればよい。
【0023】
図3は、分注装置101が扱う試験管820を示している。試験管820は、検体890としての尿を保持し、尿を対象とした分析に適した構成とされている。具体的構造の一例としては、試験管820は、円筒部821、くびれ部822、および底面部823を有しており、たとえば透明なガラスからなる。試験管820の全長は、たとえば105mm程度である。円筒部821は、内径がたとえば14〜15mm程度、厚さが0.7mm程度の円筒形状部分である。くびれ部822は、円筒部821の一端に繋がっており、先端に向かって断面寸法が徐々に小となっている部分である。底面部823は、試験管820の内面のうちもっとも内方に位置する部位であり、たとえば直径が5〜6mm程度の円形である。なお、試験管820は、スピッツと称される場合がある。また、本発明で言う分注容器は、試験管やスピッツに限定されず、分注される液体を収容する容器であればよい。
【0024】
図1および図2に示すように、試験管搬送部290は、所定数の試験管820が装填された試験管ラック850を適所に搬送するものであり、たとえば、試験管搬送路291を具備している。試験管搬送路291は、たとえばベルトコンベアであり、試験管装填部220によって所定数の試験管820が試験管ラック850に装填される位置P0から分注工程が行われる位置P2、さらに分注を終えた試験管820を試験管ラック850ごと下流側へと搬送する。
【0025】
位置P2付近には、チップ押さえ部292が設けられている。チップ押さえ部292は、図示しないモータもしくはシリンダなどのアクチュエータによって駆動されることにより、位置P2にある試験管820に挿入されたチップ320が図中上方に移動することを規制する状態と、この試験管820およびチップ320から退避した状態と、を取りうる。本実施形態においては、チップ押さえ部292は、略U字状とされている。
【0026】
ノズル300は、分注装置101の分注工程において、ハルンカップ810から試験管820へと検体890を分注する際に、検体890を導入および保持するものであり、本体310およびチップ320からなる。
【0027】
図4に示すように、本体310は、全体として細長の筒状であり、吸引孔312が形成されている。吸引孔312は、検体890を導入し、または保持するための圧力を伝達するための孔である。本実施形態の本体310には、進入嵌合部311が形成されている。進入嵌合部311は、先端に向かうほど断面寸法が若干小となるテーパ筒形状とされており、たとえばゴム製である。進入嵌合部311の外形は、もっとも先端においてたとえば12mm程度である。なお、進入嵌合部311は、後述するチップ320の収容嵌合部321を構成する材質よりも可撓性に富む材質によって形成されていればよい。収容嵌合部部321が樹脂あるいはガラスによって形成されている場合に、ゴムはこのような材質よりも可撓性に富む材質の一例に相当する。また、進入嵌合部311は、その全体がゴムによって形成されている必要はなく、収容嵌合部321と接する部位、あるいは収容嵌合部321に挿入されることによって変形することが好ましい部位、などを部分的にゴムによって形成してもよい。
【0028】
図5に示すように、チップ320は、収容嵌合部321、内挿円筒部322、内挿くびれ部323、保持空間324、および吸引口325を有している。収容嵌合部321は、チップ320の一端に形成されており、本体310の進入嵌合部311と嵌合する部位である。収容嵌合部321の内径は、図中上端において13mm程度である。内挿円筒部322は、外径がたとえば14〜15mm程度とされており、その外面が試験管820の円筒部821の内面に沿う形状およびサイズとされている。内挿くびれ部323は、内挿円筒部322の図中下端に繋がっており、図中下方に向かって断面寸法が徐々に小となった部位である。内挿くびれ部323は、その外面が試験管820のくびれ部822の内面に沿う形状およびサイズとされている。吸引口325は、内挿くびれ部323の図中下端に位置する開口である。本実施形態においては、吸引口325の内径が3mm程度とされており、チップ320の下端の外形が4〜5mm程度とされている。保持空間324は、チップ320の内部空間であり、検体890を保持するための空間である。チップ320は、たとえば透明な樹脂あるいはガラスなどからなる。
【0029】
分注装置101においては、本体310は、破損などの場合を除き交換されることなく多数の分注に用いられる。一方、1つのチップ320は、1回の分注にのみ用いられる。したがって、分注装置101による分注を行う際には、想定される分注回数に応じた個数のチップ320が用意される。
【0030】
図1および図2に示すようにノズル駆動部380は、ノズル300を所定の方向や位置に移動させるための駆動機構であり、アーム381および図示しないサーボモータなどの駆動源からなる。アーム381は、ノズル300の本体310を支持しており、上記サーボモータによって移動させられる。ノズル駆動部380は、本発明でいうノズル移動手段の一例である。
【0031】
吸引ポンプ390は、ノズル300への検体890の導入を実現するための負圧を発生するためのものであり、本発明でいう導入保持手段の一例に相当する。吸引ポンプ390は、たとえばホース391を介してノズル300の吸引孔312に接続されている。ノズル300のチップ320の保持空間324に検体890を導入した後に、この状態で検体890を保持する手段として、上記導入保持手段は、たとえば図示しないバルブを吸引ポンプ390からノズル300に至る経路に設置してもよい。あるいは、吸引ポンプ390が、上記バルブの機能を果たす構成であってもよい。
【0032】
CPU400は、本発明でいう制御手段を構成するものであり、分注装置101の各部の動作を制御する。CPU400には、分注装置101の各部を制御するための制御プログラムや種々の設定値などを記憶するためのメモリ401が接続されている。
【0033】
次に、分注装置101による分注方法について、以下に説明する。以下の分注方法においては、たとえばメモリ401に格納された制御プログラムをCPU400が実行することにより、分注装置101の各部がCPU400によって制御される。
【0034】
図1に示すように、検体890を蓄えたハルンカップ810が、ハルンカップ搬送路211によって、位置P3に搬送される。試験管装填部220において試験管ラック850に装填された所定数の試験管820は、試験管搬送路291によってそのいずれかが位置P2に位置するように搬送される。あらかじめ用意された複数のチップ320は、配列された状態で待機位置に置かれている。これらのチップ320のうち列の先頭にあるものは、位置P2付近に設定された位置P1に配置されている。図6に示すように、ノズル駆動部380によって本体310が位置P1に配置されたチップ320の直上に移動させられる。
【0035】
次いで、図7に示すように、ノズル駆動部380によって本体310が下降する。これにより、本体310の進入嵌合部311がチップ320の収容嵌合部321に進入する。そして、進入嵌合部311と収容嵌合部321とが嵌合する。これにより、本体310とチップ320とが一体となり、ノズル300が構成される。このとき、本体310の吸引孔312とチップ320の保持空間324とが挿通する。
【0036】
次いで、図8に示すように、ノズル駆動部380によってノズル300を移動させ、チップ320の先端寄り部分を位置P3のハルンカップ810に蓄えられた検体890に浸漬させる。次いで、図1に示した吸引ポンプ390によって負圧を発生させることにより、図9に示すように、チップ320の吸引口325から保持空間324内に所定量の検体890を導入する。次いで、吸引ポンプ390からの負圧発生を停止し、たとえば図示しないバルブによって本体310の吸引孔312およびチップ320の保持空間324の気圧変動を阻止する。これにより、保持空間324内に検体890が保持される。
【0037】
次いで、図10に示すように、保持空間324に検体890を保持したノズル300をノズル駆動部380によってハルンカップ810から退避させ、位置P2にある試験管820の直上に位置させる。そして、図11に示すように、ノズル300を下降させることにより、チップ320を試験管820内に挿入する。なお、本発明で言う挿入とは、本実施形態を例に説明すると、少なくともチップ320の一部を試験管820内に入り込んだ状態とする動作を指す。好ましくは、内挿くびれ部323の全てが試験管820に入り込んだ状態とする動作を指す。さらに好ましくは、チップ320の吸引口325を試験管820のくびれ部822または底面部823付近まで到達させる動作を指す。
【0038】
次いで、図12に示すように、チップ押さえ部292が位置P2の試験管820に挿入されたチップ320の直上に移動する。このとき、U字状とされたチップ押さえ部292の2つの先端部分がチップ320の上端と接するか、ごく近い位置に置かれる。これにより、チップ320の上方への移動が規制される。そして、ノズル駆動部380によって本体310を上昇させることにより、本体310からチップ320が離脱する格好となる。これにより、保持した検体890とともにチップ320が試験管820に残存する。なお、図11および図12を参照した説明から理解されるとおり、ノズル駆動部380およびチップ押さえ部292は、本発明でいう着脱手段を構成している。
【0039】
図13は、検体890とともにチップ320が残存した試験管820を示している。図11以降に示した状態においては、チップ320の内挿円筒部322が試験管820の円筒部821に内挿されており、チップ320の内挿くびれ部323が試験管820のくびれ部822に内挿されている。内挿円筒部322と円筒部821、内挿くびれ部323とくびれ部822は、互いの大部分同士が触れ合った状態、あるいは互いが損傷しない程度の接触圧をもって嵌合した状態にある。また、チップ320の吸引口325は、試験管820の底面部823に沿っている。チップ320の収容嵌合部321は、試験管820から突出している。
【0040】
この後は、図1に示す位置P1に次のチップ320が配置され、位置P2に次に分注される試験管820が配置される。そして、図6〜図12の分注工程を繰り返す。また、あるハルンカップ810を用いて所定回数の分注を終えると、このハルンカップ810は、廃棄ピット212に廃棄される。次いで、次の検体890が蓄えられたハルンカップ810が位置P3に配置される。そして、所定回数の分注工程を繰り返す。
【0041】
次に、分注装置101の作用について説明する。
【0042】
本実施形態によれば、図11および図12に示すように、検体890を保持した状態のチップ320を試験管820に挿入し、チップ320を試験管820内に残存させる。このため、検体890には、流動がほとんど発生しない。これにより、検体890が不当に泡立ってしまうことを回避することが可能である。これは、試験管820に分注した検体890を対象とした分析を適切に行うことができるという利点がある。
【0043】
また、試験管820にチップ320を残存させるため、次の試験管820に対して分注を行うときには、別の新しいチップ320を用いる。このため、図19に示した例とは異なり、ノズル300を洗浄する必要が無い。したがって、分注に要する時間を短縮することが可能である。
【0044】
ノズル300の本体310の進入嵌合部311とチップ320の収容嵌合部321とを嵌合させることによりノズル300を構成することにより、本体310をチップ320に挿入する動作のみによって、本体310とチップ320を一体化することが可能である。これは、分注に要する時間の短縮に適している。進入嵌合部311をゴム製とすることにより、進入嵌合部311と収容嵌合部321とをより確実に嵌合させることができる。チップ押さえ部292によってチップ320の上端を押さえる構成とすることにより、チップ320と本体310とを容易に分離することができる。
【0045】
収容嵌合部321が試験管820から突出する構成により、収容嵌合部321が試験管820内に進入することによって試験管820に拡径する力が作用することを回避することができる。この拡径する力は、試験管820を破損するおそれがあるため、試験管820を保護することができる。
【0046】
チップ320の内挿円筒部322および内挿くびれ部323を試験管820の円筒部821およびくびれ部822の内面に沿った形状とすることにより、チップ320を試験管820にほとんど隙間なく挿入することができる。これにより、チップ320に保持された検体890の体積が、試験管820の容積に対して不当に少なくなってしまうことを回避することができる。チップ320の吸引口325を試験管820の底面部823に沿った形状とすることにより、チップ320を試験管820の奥方まで隙間なく挿入することができる。
【0047】
図13〜図18は、分注装置101および試験管820の変形例を示している。これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0048】
図14は、試験管820の一変形例を示している。本変形例の試験管820は、異形ヘッド830を有している。異形ヘッド830は、円筒部821の開口側端に形成されており、円筒部821の開口を囲むリング状とされている。異形ヘッド830の外形寸法は、円筒部821よりも大である。異形ヘッド830は、周方向に不均一な形状とされており、試験管820を周方向において幾何的に不均一な構成とするための部位である。本変形例においては、異形ヘッド830には1対の側面831が形成されている。1対の側面831は、互いに反対方向を向いており、互いに平行とされている。異形ヘッド830は、円筒部821、くびれ部822、および底面部823と同じ材質によって一体成型されてもよいし、円筒部821、くびれ部822、および底面部823とは別体として形成されたものが円筒部821に取り付けられる構成であってもよい。
【0049】
図15は、本変形例の試験管820を用いた場合の、試験管装填部220の変形例を示している。本変形例においては、試験管装填部220は、固定治具221およびスロープ222を備えている。図示されたように、あらかじめ用意された複数の試験管820のうち先頭に位置するものが、固定治具221にセットされる。固定治具221は、試験管820の異形ヘッド830の1対の側面831に対して若干の隙間を有して嵌合する1対の内向き側面を有している。この1対の内向き側面に1対の側面831を嵌めこむようにして、試験管820を固定治具221にセットする。
【0050】
固定治具221にセットされた試験管820は、その周方向位置が固定されている。この試験管820に、ラベル840を貼り付ける。そして、図示しない駆動手段によって固定治具221にセットされていた試験管820をスロープ222へと送り出す。
【0051】
スロープ222は、1対の内向き側面を有する断面Uの字状とされており、試験管820がスムーズに滑り落ちる材質および角度とされている。固定治具221から送り出された試験管820は、1対の側面831がスロープの上記1対の内向き側面に沿う姿勢で、スロープ222内を滑り落ちる。スロープ222の下方には、試験管ラック850がセットされている。この試験管ラック850は、先述した位置P0にある。スロープ222を滑り落ちてきた試験管820は、位置P0の試験管ラック850に装填される。次の試験管820の装填に備えて、試験管ラック850は、試験管820の1本分に相当する距離だけシフトされる。以上の工程を繰り返すことにより、試験管装填部220において所定数の試験管820が試験管ラック850に装填される。
【0052】
このような変形例によれば、試験管820に貼り付けられたラベル840の試験管ラック850に対する向きが一定となるように、試験管820を試験管ラック850に装填することができる。これにより、分注の後の分析において、ラベル840の読み取りを適切に行うことができる。
【0053】
なお、試験管装填部220の変形例としては、スロープ222を備える構成に代えて、たとえば固定治具221と類似した形状の保持ヘッドを有する試験管ハンドリング機構を備える構成としてもよい。上記保持ヘッドによって試験管820の異形ヘッド830を保持した状態で、ラベル840を貼り付ける。このラベル840が貼り付けられた試験管820を、上記保持ヘッドによって保持したまま、上記試験管ハンドリング機構により試験管ラック850に装填する。このような変形例によっても、分注の後の分析において、ラベル840の読み取りを適切に行うことができる。
【0054】
図16は、試験管820の他の変形例を示している。本変形例の試験管820においては、異形ヘッド830に切り込み832が形成されている。切り込み832は、異形ヘッド830の外周面から径方向内方に凹むくさび状である。
【0055】
図17は、試験管820の他の変形例を示している。本変形例の試験管820においては、異形ヘッド830に突起833が形成されている。突起833は、異形ヘッド830の外周面から径方向に突出している。
【0056】
図18は、試験管820の他の変形例を示している。本変形例の試験管820においては、異形ヘッド830に方形部834が形成されている。方形部834は、異形ヘッド830の一部が矩形状とされた部位である。
【0057】
本発明に係る分注装置および分注方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る分注装置および分注方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0058】
101 分注装置
210 ハルンカップ搬送部
211 ハルンカップ搬送路
212 廃棄ピット
220 試験管装填部
221 固定治具
222 スロープ
290 試験管搬送部
291 試験管搬送路
292 チップ押さえ部
300 ノズル
310 本体
311 進入嵌合部
312 吸引孔
320 チップ
321 収容嵌合部
322 内挿円筒部
323 内挿くびれ部
324 保持空間
325 吸引口
380 ノズル駆動部(ノズル移動手段)
381 アーム
390 吸引ポンプ
391 ホース
400 CPU
401 メモリ
810 ハルンカップ
820 試験管(分注容器)
821 円筒部
822 くびれ部
823 底面部
830 異形ヘッド
831 側面
832 切り込み
833 突起
834 方形部
840 ラベル
850 試験管ラック
890 検体(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を保持する保持空間を有するチップが着脱可能に取り付けられる本体、を具備するノズルと、
上記ノズルを移動させるノズル移動手段と、
上記保持空間に液体を導入し、かつ上記保持空間に液体を保持する、導入保持手段と、
上記チップを上記本体に対して着脱させる、着脱手段と、
上記ノズル移動手段、上記導入保持手段、および上記着脱手段を制御する制御手段と、を備えており、
上記制御手段は、上記導入保持手段によって、上記保持空間に液体を導入し、この液体を上記保持空間に保持させた状態で、上記ノズル移動手段によって上記チップを分注容器に挿入し、かつ上記着脱手段によって上記液体を保持した上記チップを上記本体から離脱させる、分注装置。
【請求項2】
上記本体は、上記チップに進入する進入嵌合部を有し、
上記チップは、進入してくる上記進入嵌合部と嵌合する収容嵌合部を有する、請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
上記チップが上記分注容器に挿入された状態において、上記収容嵌合部は、上記分注容器から突出している、請求項2に記載の分注装置。
【請求項4】
上記進入嵌合部の一部または全体が、上記チップの上記収容嵌合部を構成する材質よりも可撓性に富む材質からなる、請求項2または3に記載の分注装置。
【請求項5】
上記着脱手段は、上記分注容器に挿入された上記チップの上記収容嵌合部の端縁に接することにより、上記チップが上記分注容器から離脱することを規制する、チップ押さえ部を含む、請求項2ないし4のいずれかに記載の分注装置。
【請求項6】
上記分注容器は、円筒形状とされた円筒部、およびこの円筒部一端に繋がっており、この円筒部から離間するほど断面寸法が小となるくびれ部、を有しており、
上記チップは、上記分注容器の上記円筒部の内面に沿う外面を有する内挿円筒部、および上記分注容器の上記くびれ部の内面に沿う内挿くびれ部、を有している、請求項1ないし5のいずれかに記載の分注装置。
【請求項7】
上記分注容器は、内面の長手方向端である底面部を有しており、
上記チップは、その先端に上記底面部に沿った形状とされた吸引口を有する、請求項6に記載の分注装置。
【請求項8】
上記液体は、尿である、請求項1ないし7のいずれかに記載の分注装置。
【請求項9】
液体を保持する保持空間を有するチップを本体に取り付けることによって構成されたノズルを用い、
上記保持空間に液体を導入し、この液体を上記保持空間内に保持する工程と、
上記保持空間に液体を保持した上記ノズルの上記チップを分注容器に挿入する工程と、
上記本体から上記チップを離脱させることにより、液体を保持した上記チップを上記分注容器に残存させる工程と、を備える、分注方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−24651(P2013−24651A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157963(P2011−157963)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】