説明

分注装置および分注装置における目詰まり除去方法

【課題】目詰まりを発生しやすい液体を対象とする分注作業において、簡便・低コストの構成で目詰まりを除去することができる分注装置およびこの分注装置における目詰まり除去方法を提供することを目的とする。
【解決手段】液体供給部10に貯留された液体12を分注ヘッド6のノズル部7に装着された吐出ノズルによって吐出する分注装置1において、液体供給部10から分注ヘッド6を経由して液体供給部10に戻る主流路9に主流路バルブ15およびポンプ機構16を設け、主流路バルブ15を閉にしかつ分注ヘッド6の吐出制御部8に各吐出ノズル毎に個別に設けられた個別流路バルブを開にした状態でポンプ機構16を作動させ、当該個別流路バルブが開とされた個別流路内およびこの個別流路に装着された吐出ノズル内の圧力を大気圧に対して負圧にし、この負圧によって目詰まりの原因となる物質を主流路9内に吸引して除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出ノズルによって吐出する分注装置およびこの分注装置における目詰まり除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゲノム創薬などのバイオ・メディカル研究分野では、試験対象の試料や試験の過程において使用される試薬などの各種の液体を、マイクロプレートなどの試験容器に小分けして吐出するための分注装置が用いられる。試験においては、必要に応じて定量の液体を正確に吐出することが求められるが、必要とされる液体量は微量である場合には、分注装置に使用される吐出ノズルや吐出ノズルに液体を送給する液送給流路は細径のものが用いられる。
【0003】
分注の対象となる液体には各種の性状のものが含まれ、細胞緩衝液、プローブの担体として用いられる磁性ビーズを含む懸濁液や粘度の高い粘性体など、一般の吐出しやすい液体とは異なる性状のものが吐出の対象となる場合がある。このような液体を細径の吐出ノズルを用いて吐出すると、液中の懸濁成分や高粘性体が吐出ノズルや流路内に滞留して液体の正常な流動を阻害するいわゆる「目詰まり」が発生しやすい。このため、このような用途に用いられる分注設備として、吐出ノズルの洗浄機能を備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に示す例においては、液体を吐出する吐出配管系にエアポンプを接続して吐出ノズルからエアを吐出することができるように構成し、必要時には洗浄液を容れた液槽内に吐出ノズルを浸漬した状態でエアを吐出するエアフラッシングを行うことにより、吐出ノズルの内部に残留した液体を除去するようにしている。またフラッシングに用いる流体として、洗浄液などエア以外のものを用い、吐出ノズルや流路内の目詰まりを洗浄液の流動によって除去する方法や、吐出配管系を真空回路に接続して内部を真空吸引して目詰まりを除去する方法など、各種の先行技術も存在する。さらに目詰まり発生時に吐出ノズルを分注ヘッドから取り外し、作業者が人手によって清掃する方法なども、目詰まり対策として広く一般に用いられている。
【特許文献1】特開平7−103986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示す例を含む先行技術には、以下のような難点がある。まず、エアや流体によって吐出配管系の内部をフラッシングする方法や、内部を真空吸引することにより目詰まり除去を行う方法では、いずれも吐出配管系に専用の回路を付属させる必要があり、設備構成が複雑化して機器サイズやコストの増大を招く。また吐出ノズルを取り外して清掃を行う方法では、高頻度で発生する目詰まりの都度、煩雑で手間を要する細かな作業を反復して実行する必要があり、試験作業の効率低下が避けられない。このように従来の分注装置においては、目詰まりを発生しやすい液体を対象とする分注作業において、簡便・低コストの構成で目詰まりを除去することが困難であるという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、目詰まりを発生しやすい液体を対象とする分注作業において、簡便・低コストの構成で目詰まりを除去することができる分注装置およびこの分注装置における目詰まり除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分注装置は、液体供給部に貯留された液体を分注ヘッドに装着された吐出ノズルによって吐出する分注装置であって、前記液体供給部を基点とし前記分注ヘッドを経由して前記液体供給部に戻る循環流路を形成し、前記液体供給部に貯留された前記液体中に一方の開口端部である吸引開口部が配置され、他方の開口端部である戻り開口部が前記液体供給部中の前記液体の液面よりも高い位置に配置された主流路と、前記主流路から分岐して設けられて端部にそれぞれ前記吐出ノズルが装着される複数の個別流路と、前記液体供給部内を加圧することにより前記主流路および個別流路を介して前記吐出ノズルから前記液体を吐出させる加圧装置と、前記個別流路毎に設けられてこれらの個別流路を個別に開閉する個別流路バルブと、前記主流路において前記個別流路が分岐する分岐部と前記吸引開口部との間に設けられてこの主流路を開閉する主流路バルブと、前記主流路において前記分岐部と前記戻り開口部との間に設けられてこの主流路内の前記液体を前記戻り開口部を介して前記液体供給部に戻すポンプ機構と、前記加圧装置、ポンプ機構、個別流路バルブおよび主流路バルブを制御する制御部とを備え、前記主流路バルブを閉にしかつ前記個別流路バルブを開にした状態で前記ポンプ機構を作動させることにより前記主流路内に負圧を発生させ、この負圧により当該個別流路バルブが開にされた個別流路内およびこの個別流路に装着された吐出ノズル内を液体の吐出方向と反対方向に吸引する。
【0008】
本発明の分注装置における目詰まり除去方法は、液体供給部を基点とし吐出ノズルが装着された分注ヘッドを経由して前記液体供給部に戻る循環流路を形成し、前記液体供給部に貯留された前記液体中に一方の開口端部である吸引開口部が配置され、他方の開口端部である戻り開口部が前記液体供給部内の前記液体の液面よりも高い位置に配置された主流路と、前記主流路から分岐して設けられて端部にそれぞれ前記吐出ノズルが装着される複数の個別流路と、前記液体供給部内を加圧することにより前記主流路および個別流路を介して前記吐出ノズルから前記液体を吐出させる加圧装置と、前記個別流路毎に設けられてこれらの個別流路を個別に開閉する個別流路バルブと、前記主流路において前記個別流路が分岐する分岐部と前記吸引開口部との間に設けられてこの主流路を開閉する主流路バルブと、前記主流路において前記分岐部と前記戻り開口部との間に設けられてこの主流路内の前記液体を前記戻り開口部を介して前記液体供給部に戻すポンプ機構とを備え、前記液体供給部に貯留された液体を前記吐出ノズルによって吐出する分注装置において、前記吐出ノズルおよびまたは前記個別流路に発生した目詰まりを除去する分注装置における目詰まり除去方法であって、前記主流路バルブを閉にしかつ前記個別流路バルブを開にした状態で前記ポンプ機構を作動させることにより前記主流路内に負圧を発生させ、この負圧により当該個別流路バルブが開にされた個別流路内およびこの個別流路に装着された吐出ノズル内を液体の吐出方向と反対方向に吸引して、前記目詰まりの原因となる物質を前記主流路内に吸引して除去する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、主流路バルブを閉にしかつ個別流路バルブを開にした状態でポンプ機構を作動させることにより、当該個別流路バルブが開とされた個別流路内およびこの個別流路に装着された吐出ノズル内の圧力を大気圧に対して負圧にし、この負圧によって目詰まりの原因となる物質を主流路内に吸引する方法を採用することにより、簡便・低コストの構成で目詰まりを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態の分注装置の構成説明図、図2は本発明の一実施の形態の分注装置における分注ヘッドの構成説明図、図3は本発明の一実施の形態の分注装置の制御系の構成を示すブロック図、図4は本発明の一実施の形態の分注装置による液体吐出処理を示すフロー図、図5は本発明の一実施の形態の分注装置による液体吐出処理における液体吐出状態判定のフロー図、図6
は本発明の一実施の形態の分注装置による液体吐出処理における目詰まり除去動作のフロー図である。
【0011】
まず図1を参照して分注装置1の構成を説明する。分注装置1は、ゲノム創薬などのバイオ・メディカル研究分野において、試験対象の試料や試験の過程において使用される試薬などの各種の液体を、マイクロプレートなどの試験容器に小分けして吐出するために用いられるものである。本実施の形態においては、液体供給部に貯留された液体を分注ヘッドに装着された吐出ノズルによって吐出する構成となっている。
【0012】
図1において、位置決め装置2は水平方向に可動な容器載置テーブル3を備えている。容器載置テーブル3には、試験容器であるマイクロプレート4が載置されており、マイクロプレート4には液体を収納する複数のウェル4aが設けらている。さらに容器載置テーブル3の上面には廃液回収部5が配設されている。容器載置テーブル3の上方には、分注ヘッド6がヘッド昇降機構(図示省略)によって昇降自在に配設されている。
【0013】
分注ヘッド6の下面には、複数(ここでは5個)の吐出ノズル(図2に示す吐出ノズル71〜吐出ノズル75参照)を下方に突出させた構成のノズル部7が設けられている。分注ヘッド6は、吐出ノズル71〜吐出ノズル75からの液体の吐出を個別にオンオフするための複数の個別流路バルブ(図2に示す個別流路バルブ81〜85参照)よりなる吐出制御部8を内蔵している。吐出制御部8を制御することにより、ノズル部7の各吐出ノズル71〜吐出ノズル75は所定量の液体を吐出する。
【0014】
位置決め装置2を駆動することにより、容器載置テーブル3が水平移動し(矢印a)、これによりマイクロプレート4の各ウェル4aは分注ヘッド6のノズル部7に対して位置合わせされる。この状態で分注ヘッド6を下降させることにより、ノズル部7の各吐出ノズル71〜吐出ノズル75はそれぞれのウェル4a内に位置する。この状態で各吐出ノズル71〜吐出ノズル75から液体を吐出させることにより、マイクロプレート4の各ウェル4aには所定量の液体が分注される。
【0015】
廃液回収部5は、ノズル部7から吐出される液体のうち、ウェル4a内に吐出されずに廃棄される液体を回収する。すなわち、位置決め装置2を駆動して容器載置テーブル3を移動させ、廃液回収部5を回収対象の吐出ノズル71〜吐出ノズル75に対して位置合わせし、当該吐出ノズルから液体を吐出させることにより、廃棄対象の液体を廃液回収部5によって回収することができる。
【0016】
分注ヘッド6のノズル部7から吐出される液体は、液体供給部10によって主流路9を介して供給される。主流路9は、液体供給部10を基点とし分注ヘッド6を経由して液体供給部10に戻る循環流路を形成する。液体供給部10は分注対象の液体12を貯留する液体供給ボトル11を備えており、主流路9の一方の開口端部である吸引開口部9aは、液体供給部10の液体供給ボトル11に貯留された液体12中に位置するように配置されている。また他方の開口端部である戻り開口部9bは、液体供給ボトル11内において液体12の液面12aよりも高い位置に配置されている。
【0017】
分注の対象となる液体12は、試験対象の試料や試薬であり、これらの液体12には、細胞緩衝液、プローブの担体として用いられる磁性ビーズを含む懸濁液や粘度の高い粘性体などが含まれる。このような液体は一般の液体とは異なり、経時的な粘度の増大や凝集など、性状の変化によって流路内での目詰まりが発生しやすい特性を有している。本実施の形態に示す分注装置1においては、このような目詰まりが発生しやすい特性の液体12を対象とする場合にあっても、後述する構成によって目詰まりの発生による不具合を防止するようにしている。
【0018】
液体供給部10は、液体供給ボトル11の内部を加圧するための加圧装置13を備えている。加圧装置13を作動させることにより、液体供給ボトル11内の液体12は加圧される。この加圧によって液体12は吸引開口部9aから主流路9内に押し込まれ、主流路9内を分注ヘッド6に向かって圧送される(矢印b)。主流路9内を圧送された液体12のうち、分注ヘッド6から吐出されなかった未吐出の液体12は、主流路9を経由して液体供給部10へ戻る。
【0019】
次に図2を参照して、分注ヘッド6の構成を説明する。分注ヘッド6に導入された主流路9は分注ヘッド6内において分岐部90に接続されており、分岐部90には主流路9を介して液体12が供給方向(矢印d方向)から送給される。分岐部90からは、複数の個別流路91〜個別流路95が分岐して設けられている。すなわち個別流路91〜個別流路95は、主流路9から分岐して設けられた構成となっている。個別流路91〜個別流路95の端部には、それぞれ吐出ノズル71〜吐出ノズル75が着脱自在に装着される。
【0020】
個別流路91〜個別流路95には、各個別流路毎にこれらの個別流路を個別に開閉する第1の個別流路バルブ81、第2の個別流路バルブ82、第3の個別流路バルブ83、第4の個別流路バルブ84、第5の個別流路バルブ85が設けられている。なお、以下の記述においては、これらの個別流路バルブを、個別流路バルブ#1、個別流路バルブ#2、個別流路バルブ#3、個別流路バルブ#4、個別流路バルブ#5と略記する(図3参照)。個別流路バルブ#1〜個別流路バルブ#5はいずれもソレノイドバルブによって電磁的に駆動される構造であり、高速度での開閉応答が可能となっている。
【0021】
加圧装置13によって液体供給ボトル11の内部を加圧することにより、液体12は主流路9および個別流路91〜個別流路95を介して吐出方向(矢印f方向)に送られ、吐出ノズル71〜吐出ノズル75の下端部から吐出される。吐出ノズル71〜吐出ノズル75は最小内径が0.2mm程度の細径ノズルであり、0.1μl〜50μlの範囲の微小な吐出量で液体12を吐出する。この液体吐出動作において、個別流路バルブ#1〜個別流路バルブ#5を個別に開閉制御することにより、吐出ノズル71〜吐出ノズル75からの液体12の吐出タイミングおよび吐出量を個別に制御することができる。吐出量調整は、個別流路バルブ#1〜個別流路バルブ#5の開時間と加圧装置13による加圧圧力を制御することにより行われる。なお主流路9を介して送給された液体12のうち、吐出ノズル71〜吐出ノズル75から吐出されなかった液体12は、主流路9を介して戻り方向(矢印e方向)に送られる。
【0022】
主流路9において、液体供給部10から分注ヘッド6に到る経路には、流量センサ14および主流路バルブ15が設けられている。流量センサ14は主流路9内を分注ヘッド6に向かって送給される液体12の流量を計測する。主流路バルブ15は2ポートの開閉バルブであり、主流路9において個別流路91〜個別流路95が分岐する分岐部90と吸引開口部9aとの間に設けられて、この位置において主流路9を開閉する機能を有している。主流路バルブ15を閉じることにより、液体供給部10から分注ヘッド6に到る経路が遮断される。
【0023】
主流路9が分注ヘッド6から液体供給部10へ戻る経路の途中には、ポンプ機構16が介設されている。主流路9は可撓性を有する材質より成るチューブであり、ポンプ機構16にはペリスタルポンプが用いられている。ペリスタルポンプは、チューブに一方方向のしごき作用を及ぼすことにより、このチューブの内部の液体12を分注ヘッド6から液体供給部10に向かう一定方向に送給する機能を有するものである。すなわちポンプ機構16を作動させることにより、主流路9内の液体12は液体供給部10に戻る方向に送られ(矢印c)、液体供給ボトル11内に戻される。すなわちポンプ機構16は、主流路9に
おいて分岐部90と戻り開口部9bとの間に設けられて、この主流路9内の液体12を戻り開口部9bを介して液体供給部10に戻す機能を有している。このような構成を採用することにより、液体12を主流路9内において常に循環させることができる。したがって目詰まりが発生しやすい特性の液体12を対象とする場合にあっても、液体12が主流路9内において滞留することがなく、目詰まりなど液体12の滞留に起因する不具合を防止することができる。
【0024】
次に図3を参照して、制御系の構成を説明する。流量センサ14の計測結果は制御部20にフィードバックされる。また制御部20は、吐出制御部8を構成する個別流路バルブ#1〜個別流路バルブ#5の開閉動作、主流路バルブ15の開閉動作およびポンプ機構16の動作を制御する。さらに制御部20は、位置決め装置2によるマイクロプレート4の位置決め動作、加圧装置13による液体供給ボトル11内の加圧動作を制御する。流量センサ14の計測結果に基づいて、制御部20が加圧装置13を制御することにより、主流路9を介して分注ヘッド6へ供給される液体12の流量が適正に制御される。さらに、制御部20が個別流路バルブ#1〜個別流路バルブ#2の開時間を制御することにより、吐出ノズル71〜吐出ノズル75からの液体12の吐出量が制御される。
【0025】
次に、図4を参照して、分注装置1が液体吐出プログラムを実行することにより行われる液体吐出動作について説明する。まず、ノズル内液体廃棄の要否について判断される(ST1)。ノズル内液体廃棄とは、分注の対象となるマイクロプレート4への液体の吐出に先立って、吐出ノズル71〜吐出ノズル75に存在する液体12を予め廃棄するいわゆる「捨て打ち」の実行が必要か否かを判断するものである。この判断は、分注装置1の操作を行う作業者が判断して、その旨の操作入力を制御部20に対して行うことにより行われる。
【0026】
ここで必要と判断された場合には、液体廃棄動作を実行する(ST2)。この液体廃棄動作では、位置決め装置2を駆動して廃液回収部5を各吐出ノズル71〜吐出ノズル75の下方に順次位置決めする。次いで個別流路バルブ#1〜個別流路バルブ#5を開状態にして、吐出ノズル71〜吐出ノズル75から廃棄対象の液体12を廃液回収部5内に吐出させる。また(ST1)にて不要と判断された場合には、(ST2)を実行することなく次ステップに進む。
【0027】
次ステップでは、液体12の吐出動作に先立ってポンプ機構16を停止する(ST3)。これにより、主流路9内での液体12の循環が中断される。次いで先頭ウェルを対象として容器位置決めを行う(ST4)。すなわち、容器載置テーブル3を駆動してマイクロプレート4を移動させ、先頭のウェル4aを基準として、分注ヘッド6に対してマイクロプレート4を位置決めする。これによりマイクロプレート4の複数のウェル4aは、各吐出ノズル71〜吐出ノズル75の下方に位置する。
【0028】
次いで分注ヘッド6を下降させて吐出ノズル71〜吐出ノズル75の下端部をそれぞれのウェル4a内に位置させた状態で、全ての個別流路バルブ#1〜個別流路バルブ#5を開状態にする(ST5)。これにより、吐出ノズル71〜吐出ノズル75から対象とする各ウェル4aに液体12が吐出される。このとき、流量センサ14によって流量を読み取り(ST6)、正常な液体の供給が行われていることを確認した上で、全ての個別流路バルブ#1〜個別流路バルブ#5を閉じる(ST7)。この後、分注対象となる次のウェル4aの有無が判断される(ST8)。ここで次のウェル4aありの場合には、次のウェル4aを位置決めする容器位置決めを行い(ST9)、この後(ST5)に戻って同様のステップが反復実行される。また(ST8)にて次のウェル4aなしの場合には、次ステップに進む。
【0029】
次ステップでは、実際に吐出された液体12の吐出量が正常であるか否かを判定する液体吐出状態判定が実行される(ST10)。この処理について、図5を参照して説明する。ここでは、流量センサ14によって得られた計測結果の出力値の設定値(適正値として予め設定された基準値)に対する誤差に基づいて、正常であるか否かが判定される。すなわち、出力値と設定値との差の絶対値を設定値で除し、さらにこれに100を乗じて得た%値を誤差Eとして求める(ST20)。次いで求められた誤差Eを、予め定められた許容範囲を示す許容値Tcと比較する(ST21)。ここで、誤差Eが許容値Tcを超えていなければ、正常であると判定し(ST22)、また誤差Eが許容値Tcを超えていれば、異常であると判定する(ST23)。
【0030】
そしてメインフローに戻った際には、(ST22)、(ST23)の判定結果に基づき、次の目詰まり除去動作(ST12)の要否が判断される(ST11)。すなわち、正常であれば、そのまま液体吐出動作を終了し、異常であれば、次に説明する目詰まり除去動作(ST12)を実行する。この目詰まり除去動作は、吐出ノズル71〜吐出ノズル75や個別流路91〜個別流路95内に残留する異物や液体12の凝集物などを除去することを目的として実行されるものである。以下、目詰まり除去動作の詳細について、図6を参照して説明する。
【0031】
ノズル詰まり除去動作においては、複数個の吐出ノズル71〜吐出ノズル75が個別に順次動作対象となるため、逐次実行される動作処理を特定するためのインデックスとしてカウンタ値jが設定される。まず最初に、1番目の吐出ノズル71を対象とするため、カウンタ値j=1にセットする(ST30)。この後加圧装置13による加圧を停止し(ST31)、次いで主流路バルブ15を閉じる(ST32)。そしてこの状態でポンプ機構16を駆動する(ST33)。これにより主流路9内に存在する液体12は、ポンプ機構16によって液体供給部10への戻り方向に送られる。このように一方側が閉塞された状態の主流路9内での液体12の送り動作により、主流路9のうち主流路バルブ15から主流路9を経てポンプ機構16に到る経路には、大気圧よりも低い負圧が発生する。
【0032】
目詰まり除去はこのようにして発生した負圧を利用して行われる。すなわちこの状態で個別流路バルブ#jを開状態にする(ST34)。ここではまず最初に個別流路バルブ#1が開状態となり、これにより、吐出ノズル71から個別流路91を介して分岐部90に到る流路が液体12の吐出方向(図2に示す矢印f参照)と反対方向に真空吸引される。そしてこの状態で予め目詰まり除去のための十分な吸引時間として設定された所定時間の経過を待つ(ST35)。これにより、これら流路内に残留して目詰まりを発生させていた原因となる物質、すなわち液体12内に混入した異物や液体12が凝集して高粘度となった凝固物などが分岐部90を介して主流路9側へ吸引されて、目詰まり状態が解消する。そして所定時間が経過したならば、当該個別流路バルブ#j(ここでは個別流路バルブ#1)を閉状態にする(ST36)。
【0033】
この後、残りの吐出ノズル72〜吐出ノズル75についても同様の動作処理が反復実行される。すなわち、各ノズルについて(ST34)〜(ST36)の処理を順次実行する過程において、カウント値jが吐出ノズルの数に等しい5に到達しているか否かを判断し(ST37)、カウント値jが5に到達していなければ、カウント値jに1を加えて歩進させ(ST38)、次いで(ST34)に戻り、これ以降同様の処理を反復実行する。そして(ST37)にてカウント値jが5に到達したことが確認されたならば、主流路バルブ15を開く(ST39)。これにより、主流路9において液体供給部10から分注ヘッド6へ到る経路が開状態となる。次いで加圧装置13を駆動して、液体供給ボトル11内が加圧された状態に復帰する(ST40)。これにより、液体供給部10から分注ヘッド6への液体12の供給が可能な状態となり、これ以降、図4に示する液体吐出動作が反復して実行される。
【0034】
すなわち本実施の形態に示す分注装置1においては、主流路バルブ15を閉にしかつ個別流路バルブを開にした状態でポンプ機構16を作動させることにより、主流路9内に負圧を発生させるようにしている。そしてこの負圧により当該個別流路バルブが開にされた個別流路内およびこの個別流路に装着された吐出ノズル内を液体12の吐出方向と反対方向に吸引して、目詰まりの原因となる物質を主流路9内に吸引して除去するようにしている。
【0035】
このような構成を採用することにより、従来技術と比較して以下のような優れた効果を得る。まずエアや流体によって吐出配管系の内部をフラッシングする方法や、内部を真空吸引することにより目詰まり除去を行う方法などと比較して、吐出配管系に専用の回路を付属させる必要がなく、したがって設備構成の複雑化に起因する機器サイズやコストの増大を招くことがない。また吐出ノズルを取り外して清掃を行う方法と比較して、高頻度で発生する目詰まりの都度、煩雑で手間を要する細かな作業を反復して実行することを必要とせずに、容易に目詰まり除去を行うことができる。すなわち本発明の構成により、簡便・低コストの構成で目詰まりを除去することが可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の分注装置および分注装置における目詰まりの除去方法は、目詰まりを発生しやすい液体を対象とする分注作業において、簡便・低コストの構成で目詰まりを除去することができるという効果を有し、バイオ・メディカル研究分野などにおいて用いられる分注装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態の分注装置の構成説明図
【図2】本発明の一実施の形態の分注装置における分注ヘッドの構成説明図
【図3】本発明の一実施の形態の分注装置の制御系の構成を示すブロック図
【図4】本発明の一実施の形態の分注装置による液体吐出処理を示すフロー図
【図5】本発明の一実施の形態の分注装置による液体吐出処理における液体吐出状態判定のフロー図
【図6】本発明の一実施の形態の分注装置による液体吐出処理における目詰まり除去動作のフロー図
【符号の説明】
【0038】
1 分注装置
4 マイクロプレート
4a ウェル
6 分注ヘッド
7 ノズル部
8 吐出制御部
9 主流路
9a 吸引開口部
9b 戻り開口部
10 液体供給部
11 液体供給ボトル
12 液体
13 加圧装置
14 流量センサ
15 主流路バルブ
16 ポンプ機構
71,72,73,74,75 吐出ノズル
81 第1の個別流路バルブ(個別流路バルブ#1)
82 第2の個別流路バルブ(個別流路バルブ#2)
83 第3の個別流路バルブ(個別流路バルブ#3)
84 第4の個別流路バルブ(個別流路バルブ#4)
85 第5の個別流路バルブ(個別流路バルブ#5)
91,92,93,94,95 個別流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給部に貯留された液体を分注ヘッドに装着された吐出ノズルによって吐出する分注装置であって、
前記液体供給部を基点とし前記分注ヘッドを経由して前記液体供給部に戻る循環流路を形成し、前記液体供給部に貯留された前記液体中に一方の開口端部である吸引開口部が配置され、他方の開口端部である戻り開口部が前記液体供給部中の前記液体の液面よりも高い位置に配置された主流路と、
前記主流路から分岐して設けられて端部にそれぞれ前記吐出ノズルが装着される複数の個別流路と、
前記液体供給部内を加圧することにより前記主流路および個別流路を介して前記吐出ノズルから前記液体を吐出させる加圧装置と、
前記個別流路毎に設けられてこれらの個別流路を個別に開閉する個別流路バルブと、
前記主流路において前記個別流路が分岐する分岐部と前記吸引開口部との間に設けられてこの主流路を開閉する主流路バルブと、
前記主流路において前記分岐部と前記戻り開口部との間に設けられてこの主流路内の前記液体を前記戻り開口部を介して前記液体供給部に戻すポンプ機構と、
前記加圧装置、ポンプ機構、個別流路バルブおよび主流路バルブを制御する制御部とを備え、
前記主流路バルブを閉にしかつ前記個別流路バルブを開にした状態で前記ポンプ機構を作動させることにより前記主流路内に負圧を発生させ、この負圧により当該個別流路バルブが開にされた個別流路内およびこの個別流路に装着された吐出ノズル内を液体の吐出方向と反対方向に吸引することを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記主流路は可撓性を有する材質より成るチューブであり、前記ポンプ機構は前記チューブに一方方向のしごき作用を及ぼすことによりこのチューブの内部の液体を前記一定方向に送給するペリスタルポンプであることを特徴とする請求項1記載の分注装置。
【請求項3】
液体供給部を基点とし吐出ノズルが装着された分注ヘッドを経由して前記液体供給部に戻る循環流路を形成し、前記液体供給部に貯留された前記液体中に一方の開口端部である吸引開口部が配置され、他方の開口端部である戻り開口部が前記液体供給部内の前記液体の液面よりも高い位置に配置された主流路と、前記主流路から分岐して設けられて端部にそれぞれ前記吐出ノズルが装着される複数の個別流路と、前記液体供給部内を加圧することにより前記主流路および個別流路を介して前記吐出ノズルから前記液体を吐出させる加圧装置と、前記個別流路毎に設けられてこれらの個別流路を個別に開閉する個別流路バルブと、前記主流路において前記個別流路が分岐する分岐部と前記吸引開口部との間に設けられてこの主流路を開閉する主流路バルブと、前記主流路において前記分岐部と前記戻り開口部との間に設けられてこの主流路内の前記液体を前記戻り開口部を介して前記液体供給部に戻すポンプ機構とを備え、前記液体供給部に貯留された液体を前記吐出ノズルによって吐出する分注装置において、前記吐出ノズルおよびまたは前記個別流路に発生した目詰まりを除去する分注装置における目詰まり除去方法であって、
前記主流路バルブを閉にしかつ前記個別流路バルブを開にした状態で前記ポンプ機構を作動させることにより前記主流路内に負圧を発生させ、この負圧により当該個別流路バルブが開にされた個別流路内およびこの個別流路に装着された吐出ノズル内を液体の吐出方向と反対方向に吸引して、前記目詰まりの原因となる物質を前記主流路内に吸引して除去することを特徴とする分注装置における目詰まり除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−48738(P2010−48738A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214938(P2008−214938)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】