説明

分注装置および分注装置における磁性粒子の制御方法

【課題】磁性粒子の捕集・分散を伴う分注操作を、多チャンネルで効率よく実行することができる分注装置およびこの分注装置における磁性粒子の制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の分注ティップ3aが2次元配列で装着された分注ヘッド3によって磁性粒子を含有する液体を対象として液体の吸引・と出を行う分注装置において、分注ティップ3a内で磁性粒子を磁力により捕集するために用いられる磁性粒子制御板9を、分注ティップ3aの2次元配列に対応した複数の開口部9bが形成された板部材9aに、複数の分注ティップ3aのそれぞれに磁力を相対向する2方向から作用させる棒状マグネット15を配置した構成とする。これにより、磁性粒子の捕集・分散を伴う分注操作を、多チャンネルで効率よく実行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子を含有する液体を対象とする分注装置およびこの分注装置における磁性粒子の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゲノム創薬などのバイオ・メディカル研究分野においては、核酸や蛋白質などのプローブの担体として磁性粒子を用いた検査法が多用されている。この検査法においては、磁性粒子の試薬との反応や洗浄を反復して行う必要があり、これらの操作に際しては、試薬との反応のためには磁性粒子を液中に均一に分散させなければならず、また洗浄後においては磁性粒子が散逸しないように捕集した状態で洗浄液の排出を行う必要がある。
【0003】
このような操作を極力効率的に行うため、従来より,上述の磁性粒子の捕集・分散を分注装置によって行う方法が知られている(特許文献1,2参照)。特許文献1に示す例では、ピペットチップ等の吸引・吐出系に磁力体を配設し、磁力体の磁力によってピペットチップの内面に磁性粒子を吸着保持して捕集し、磁力体をピペットチップから離脱させて磁力の影響をなくすことにより、捕集された状態の磁性粒子を分散させるようにしている。また特許文献2に示す例では、列状に配列された複数のピペットチップを供えた分注ユニットにおいて、各ピペットチップに磁石部を個別に接離自在に配設し、同様にピペットチップ内において磁性粒子の捕集・分散を行うようにしている。
【特許文献1】特開平8−62224号公報
【特許文献2】国際公開第97/44671号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年生化学分野ではハイスループットがますます要求されるようになっており、上述の磁性粒子の捕集・分散を伴う分注操作においても、処理時間の短縮のために多チャンネル化が求められている。しかしながら、特許文献1,2に示す例においては,いずれも磁性粒子に磁力を作用させるための磁性体をピペットチップの側方に配置して接離させる構成であることから、ウェルが高密度の格子配列で配列された多チャンネル用のマイクロプレートを対象として、複数のピペットチップを高密度で配列したマルチ型の分注装置には適用が困難であった。
【0005】
そこで本発明は、磁性粒子の捕集・分散を伴う分注操作を、多チャンネルで効率よく実行することができる分注装置およびこの分注装置における磁性粒子の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分注装置は、磁性粒子を含有する液体を対象としてこの液体の吸引・吐出を伴う作業を行う分注装置であって、前記液体の吸引・吐出を行う使い捨て型の分注ティップが2次元配列で装着される分注ヘッドと、前記分注ヘッドを水平移動および昇降移動させる分注ヘッド移動機構と、前記分注ヘッドによる前記作業の対象となるマイクロプレートが載置される作業ステージ、前記分注ヘッドがアクセスしてティップ着脱動作を行うことにより既装着の分注ティップを新たな分注ティップと交換するティップ着脱ステージ、前記分注ティップ内の前記液体に含有される磁性粒子を磁力により捕集するために用いられる磁性粒子制御板が載置される磁性粒子制御板載置ステージとを備え、前記磁性粒子制御板は、前記2次元配列に対応した複数の開口部が形成され、複数の前記分注ティップを前記複数の開口部に一括して挿通させることにより前記分注ヘッドに装着される板部材と、
前記板部材に設けられこの板部材が前記分注ヘッドに装着された状態で複数の前記分注ティップのそれぞれに接近して前記磁力を少なくとも相対向する2方向から作用させる磁性体とを有し、前記分注ヘッドに、前記板部材を保持することにより前記磁性粒子制御板を着脱自在に装着する制御板装着部を設けた。
【0007】
本発明の分注装置における磁性粒子の制御方法は、磁性粒子を含有する液体の吸引・吐出を行う使い捨て型の分注ティップが2次元配列で装着される分注ヘッドを備えた分注装置において、前記液体内の前記磁性粒子を磁性粒子制御板によって捕集し分散させる分注装置における磁性粒子の制御方法であって、前記磁性粒子制御板は、前記2次元配列に対応した複数の開口部が形成され、複数の前記分注ティップを前記複数の開口部に一括して挿通させることにより前記分注ヘッドに装着される板部材と、前記板部材に設けられこの板部材が前記分注ヘッドに装着された状態で複数の前記分注ティップのそれぞれに前記磁力を少なくとも相対向する2方向から作用させる磁性体とを有し、前記磁性粒子制御板を前記分注ヘッドに装着して前記磁性体を前記分注ティップに接近させることにより、前記分注ティップに吸引された前記液体内の磁性粒子を磁力により捕集し、前記磁性体を前記分注ティップから離隔させることにより、前記捕集された磁性粒子を分散させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の分注ティップが2次元配列で装着された分注ヘッドを有する分注装置において、分注ティップ内の液体に含有される磁性粒子を磁力により捕集するために用いられる磁性粒子制御板を、分注ティップの2次元配列に対応した複数の開口部が形成された板部材に複数の分注ティップのそれぞれに磁力を少なくとも相対向する2方向から作用させる磁性体を配置した構成とすることにより、磁性粒子の捕集・分散を伴う分注操作を、多チャンネルで効率よく実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態の分注装置の部分正面図、図2は本発明の一実施の形態の分注装置の分注ヘッドの部分正面図、図3(a)は本発明の一実施の形態の分注装置に設けられた磁性粒子制御板載置ステージの正面図、図3(b)、図4は本発明の一実施の形態の分注装置に用いられる磁性粒子制御板の斜視図、図5、図6,図7,図8、図9は本発明の一実施の形態の分注装置における磁性粒子の制御方法を示す動作説明図、図10は本発明の一実施の形態の分注装置の分注ヘッドの部分正面図である。
【0010】
まず図1を参照して分注装置1の構成を説明する。分注装置1は、蛋白質や核酸などのプローブの担体として用いられる磁性粒子を含有する液体を対象として、この液体の吸引・吐出を伴う作業を行う機能を有するものである。図1において、基台2の上面は分注ヘッド3によって各種の操作を行うための作業エリア2aとなっている。分注ヘッド3の下部には、液体の吸引・吐出を行う使い捨て型の分注ティップが2次元配列で装着される。分注装置1は分注ヘッド移動機構4を備えており、分注ヘッド移動機構4は分注ヘッド3を所定の作業エリア2a内で水平移動および昇降移動させる。
【0011】
作業エリア2aには以下に説明する作業ステージ5、ティップ着脱ステージ6、磁性粒子制御板載置ステージ7が設けられている。作業ステージ5にはプレート載置部5aが設けられており、プレート載置部5aには分注ヘッド3による作業の対象となるマイクロプレート8が載置される。プレート載置部5aに載置されたマイクロプレート8のウェル8aには、磁性粒子21が含有された液体20が収容されている。
【0012】
ティップ着脱ステージ6には、複数の分注ティップ3aを所定の2次元配列で保持するティップラック6aが載置されている。分注ヘッド3がティップ着脱ステージ6にアクセ
スしてティップ着脱動作を行うことにより、既装着の分注ティップ3aを新たな分注ティップ3aと交換することができる。そして磁性粒子制御板載置ステージ7には、分注ティップ3a内の液体20に含有される磁性粒子21を磁力により捕集するために用いられる磁性粒子制御板9が載置される。
【0013】
次に図2を参照して、分注ヘッド3の構造を説明する。分注ヘッド3は液体の吸引・吐出を行うポンプ機能を内蔵した本体部10を備えており、本体部10の下面側から複数のノズル軸11が所定の2次元配列で下方に突設されている。分注ヘッド3をティップ着脱ステージ6上に移動させてティップ交換動作を行わせることにより、複数のノズル軸11に分注ティップ3aが一括して装着される。
【0014】
本体部10の下面側には、複数のノズル軸11が挿通するティップ取外し板12が昇降軸12aによって保持されており、本体部10に内蔵された昇降機構(図示省略)を駆動することにより、ティップ取外し板12は昇降する。分注ティップ3aが各ノズル軸11に装着された状態でティップ取外し板12を下降させることにより、分注ティップ3aは一括してティップ取外し板12によって押し下げられ、これにより分注ティップ3aはノズル軸11から離脱し、文注ヘッド3から取り外される。すなわち、昇降機構によって昇降する昇降軸12aおよびティップ取外し板12は、複数の分注ティップ3aを一括して分注ヘッド3から取り外すティップ取外し機構を構成する。
【0015】
本体部10の両側部には、下方に延出した昇降部材13aを昇降させる昇降機構13が設けられており、昇降部材13aの下端部には磁性体である制御板吸着マグネット14が固着されている。分注ヘッド3を磁性粒子制御板載置ステージ7の上方に移動させ、本体部10を下降させて制御板吸着マグネット14の吸着面14aを載置部材7aに載置された磁性粒子制御板9の上面に当接させることにより、磁性粒子制御板9を制御板吸着マグネット14に磁力によって吸着することができる。制御板吸着マグネット14は、板部材9aを保持することにより磁性粒子制御板9を着脱自在に装着する制御板装着部となっており、本実施の形態においては、金属製の板部材9aを磁力により保持する磁性体を備えた構成が採用されている。なお磁力を用いずに、板部材9aを機械的に把持することにより保持する方式を用いてもよい。
【0016】
次に図3、図4を参照して、磁性粒子制御板載置ステージ7および磁性粒子制御板9について説明する。図3(a)に示すように、磁性粒子制御板載置ステージ7は板状の磁性粒子制御板9を下面側から支持する載置部材7aを備えており、載置部材7aは磁性粒子制御板9を上方の力に抗して係止する係止機構(図示省略)を備えている。分注ヘッド3を磁性粒子制御板載置ステージ7に対して下降させて磁性粒子制御板9の上面に制御板吸着マグネット14を当接させ、この係止機構を解除した状態で、分注ヘッド3を上昇させることにより、磁性粒子制御板9は分注ヘッド3に装着される。
【0017】
そして磁性粒子制御板9の分注ヘッド3からの取り外しは、次のようにして行われる。まず磁性粒子制御板9が装着された分注ヘッド3を磁性粒子制御板載置ステージ7に対して下降させて、磁性粒子制御板9を載置部材7a上に載置する。次いで係止機構を作動させて磁性粒子制御板9が載置部材7aによって係止された状態で、分注ヘッド3を上昇させることにより、磁性粒子制御板9を制御板吸着マグネット14から離脱させる。これにより、磁性粒子制御板9は分注ヘッド3から取り外される。なお、本実施の形態では、作業エリア2a内に磁性粒子制御板載置ステージ7を配置しているが、作業エリア2aの外に磁性粒子制御板載置ステージ7を配置しておき、磁性体粒子制御板9を分注ヘッド3に対して着脱するときに、作業エリア2a内へ磁性粒子制御板載置ステージ7を移動させるように構成することもできる。
【0018】
図3(b)に示すように磁性粒子制御板9は、本体部10の下面全体をカバーする形状の板部材9aを主体にしている。板部材9aには、分注ヘッド3における分注ティップ3aの2次元配列に対応して、複数の開口部9bがX方向のピッチpx、Y方向の長さLyで形成されている。ピッチpxは、分注ティップ3aの2次元配列におけるX方向の配列ピッチに対応しており、長さLyは分注ティップ3aのY方向の配列長さに対応している。
【0019】
両側端の開口部9bの外側および各開口部9bの間には、棒状マグネット15がY方向に設けられている。磁性粒子制御板9を分注ヘッド3に装着する際には、分注ティップ3aを各開口部9bに挿通させる。すなわち磁性粒子制御板9は、板部材9aおよび棒状マグネット15より成り、板部材9aには分注ティップ3aの2次元配列に対応した複数の開口部9bが形成され、複数の分注ティップ3aを複数の開口部9bに一括して挿通させることにより、磁性粒子制御板9は分注ヘッド3に装着される。
【0020】
磁性粒子制御板9が分注ヘッド3に装着された状態で、昇降機構13を駆動することにより板部材9aは上昇し、棒状マグネット15は分注ティップ3aに接近する。これにより各分注ティップ3aの外側面を挟んで2つの棒状マグネット15が位置し、分注ティップ3aには相対向する2方向から棒状マグネット15の磁力が作用する。この磁力の作用により、分注ティップ3a内に存在する液体20中の磁性粒子21は、分注ティップ3aの内側面に捕集される。
【0021】
すなわち磁性体である棒状マグネット15は、板部材9aに設けられこの板部材9aが分注ヘッド3に装着された状態で、複数の分注ティップ3aのそれぞれに接近し、磁性粒子21を捕集するための磁力を相対向する2方向から作用させる。そして図3(b)に示す例では、磁性体は複数の棒状の磁石であり、分注ティップ3aの2次元配列における分注ティップ3aの列方向に沿って設けられている。
【0022】
なお、このような機能を有する磁性粒子制御板9の構成としては、図3に示す例には限られず、例えば図4(a)、(b)に示すような構成としてもよい。すなわち図4(a)に示す磁性粒子制御板9Aのように、図3に示す磁性粒子制御板9において用いられていた棒状マグネット15の替りに、塊状(ここでは方形ブロック形状)の方形マグネット15Aを、分注ティップ3aの2次元配列におけるY方向の配列ピッチpyに合わせて配置する構成を採用してもよい。この例では、磁性体は複数の塊状の磁石であり、分注ティップ3aの2次元配列における各分注ティップ3aに対応した位置に設けられている。
【0023】
また図4(b)に示す磁性粒子制御板9Bのように、板部材9aの替りに板状マグネット19を用い、板状マグネット19に分注ティップ3aの2次元配列における配列ピッチpx、pyで開口部19aを設ける構成でもよい。この例では磁性体は板状の磁石であってこの磁石が図3(b)に示す例における板部材9aを兼ね、分注ティップ3aの2次元配列における各分注ティップ3aに対応した位置に開口部19aが設けられている。
【0024】
いずれの例でも磁性粒子制御板9と同様に、分注ティップ3aを複数の開口部に一括して挿通させることができる。そして磁性粒子制御板9,9A、9Bが分注ヘッド3に装着された状態において、複数の分注ティップ3aのそれぞれに磁力を少なくとも相反する2方向から作用させることができ、磁性粒子制御板9Bを用いる場合には、分注ティップ3aの全周方向から磁力を作用させることができる。このように、磁性粒子制御板に設けられる磁性体の種類や磁気の強さを適切に選択することにより、以下に説明する磁性粒子21の捕集において捕集力の強さなどの特性を、対象とする磁性粒子21や捕集目的に応じて適切に設定することができる。
【0025】
次に分注装置1において液体20内の磁性粒子21を磁性粒子制御板9によって捕集し分散させる分注装置における磁性粒子の制御方法について、図5〜図9を参照して説明する。まず図1において、分注ヘッド3を作業ステージ5に位置させて、分注ティップ3aによってマイクロプレート8のウェル8a内の液体、すなわち磁性粒子21を含有する液体20を吸引する。この後、図5に示すように、分注ヘッド3を移動させて磁性粒子制御板9が載置された磁性粒子制御板載置ステージ7の上方に位置させ、各分注ティップ3aを磁性粒子制御板9の開口部9bに位置合わせする。このとき、制御板吸着マグネット14は昇降機構13によって下降した位置にある。
【0026】
次いで分注ヘッド3を昇降させることにより、制御板吸着マグネット14の吸着面14aを磁性粒子制御板9の板部材9aの上面に当接させ、図6に示すように、磁性粒子制御板9を制御板吸着マグネット14によって吸着して保持する。これにより磁性粒子制御板9が分注ヘッド3に装着され、この状態では分注ティップ3aの先端部が開口部9b内に位置している。
【0027】
この後、図7に示すように、昇降機構13を駆動して制御板吸着マグネット14に保持された磁性粒子制御板9を上昇させて、棒状マグネット15が分注ティップ3aに接近させる。このとき、板部材9a上の棒状マグネット15が分注ティップ3aのテーパ状の外周面に干渉することなく最も近接する位置まで上昇させる。なお、開口部9bの断面形状を分注ティップ3aのテーパ形状に倣う形状とすることにより、棒状マグネット15を分注ティップ3aに極力近接させることができる。
【0028】
図8は、この状態における分注ティップ3a内の磁性粒子21の挙動を示している。分注ティップ3a内には磁性粒子21を含有する液体20が吸引されており、磁性粒子21には両側に配置された2つの棒状マグネット15の磁力が作用する。これにより、磁性粒子21は棒状マグネット15に向う方向、すなわち分注ティップ3aの相対向する2方向に吸磁され、分注ティップ3aの内周面に吸着された状態で捕集される。すなわち、ここでは磁性粒子制御板9を分注ヘッド3に装着して、棒状マグネット15を分注ティップ3aに接近させることにより、分注ティップ3aに吸引された液体20内の磁性粒子21を磁力により捕集する。
【0029】
そしてこの状態で液体20を分注ティップ3aから吐出させることにより、磁性粒子21が含有された液体20から、分注ティップ3a内に捕集された磁性粒子21を残して液体成分のみを分離することができる。このとき、磁性粒子21は分注ティップ3a内で少なくとも2方向に吸磁されていることから、従来の1方向のみに吸磁する方法と比較して広い吸磁面積で捕集されている。したがって、液体20内に含有される磁性粒子21を広い吸磁面積に分散させて吸着することができ、強い吸着力で磁性粒子21を安定して捕集することができる。これにより、分注ティップ3aの内周面に磁性粒子21が過大な吸着厚さで堆積して不安定な捕集状態となることが無く、したがって吐出動作によって液体20とともに流失する磁性粒子21の量を極力低減させることができる。
【0030】
この後、洗浄液によって磁性粒子21を洗浄する目的や試薬と反応させる目的などのために、新たな液体を分注ティップ3a内に吸引して磁性粒子21と接触させる操作が行われる。すなわち、図8に示すように磁性粒子21が捕集された状態で新たな液体を吸引した後、図9に示すように、磁性粒子制御板9を下降させて、棒状マグネット15を分注ティップ3aから離隔させる。これにより、分注ティップ3a内の磁性粒子21には棒状マグネット15の磁力の作用が及ばなくなり、捕集された状態の磁性粒子21は分注ティップ3a内において液体20中に分散する。すなわちここでは、棒状マグネット15を分注ティップ3aから離隔させることにより、捕集された磁性粒子21を分散させる。
【0031】
このように本実施の形態では、複数の分注ティップ3aが2次元配列で装着された分注ヘッド3を有する分注装置において、分注ティップ3a内の液体20に含有される磁性粒子21を磁力により捕集するために用いられる磁性粒子制御板9を、分注ティップ3aの2次元配列に対応した複数の開口部9bが形成された板部材9aに、複数の分注ティップ3aのそれぞれに少なくとも相対向する2方向から作用させる棒状マグネット15を配置した構成を用いている。
【0032】
これにより、磁性粒子21の捕集・分散を伴う分注操作を、ウェルが高密度の格子配列で配列された多チャンネル用のマイクロプレートを対象として効率よく実行することが可能となっている。そしてこのような磁性粒子21の捕集・分散を必要としない液体を対象とする場合には、図10に示すように、粒子制御板9を装着しない状態で分注ヘッド3を通常通り使用することができる。このとき、ティップ取外し板12によるノズル軸11からの分注ティップ3aの離脱動作を阻害することがなく、分注装置の汎用性が確保されている。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の分注装置および分注装置における磁性粒子の制御方法は、磁性粒子の捕集・分散を伴う分注操作を、多チャンネルで効率よく実行することができるという効果を有し、バイオ・メディカル研究分野において磁性粒子を含有する液体を対象とする分注装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態の分注装置の部分正面図
【図2】本発明の一実施の形態の分注装置の分注ヘッドの部分正面図
【図3】(a)本発明の一実施の形態の分注装置に設けられた磁性粒子制御板載置ステージの正面図(b)本発明の一実施の形態の分注装置に用いられる磁性粒子制御板の斜視図
【図4】本発明の一実施の形態の分注装置に用いられる磁性粒子制御板の斜視図
【図5】本発明の一実施の形態の分注装置における磁性粒子の制御方法を示す動作説明図
【図6】本発明の一実施の形態の分注装置における磁性粒子の制御方法を示す動作説明図
【図7】本発明の一実施の形態の分注装置における磁性粒子の制御方法を示す動作説明図
【図8】本発明の一実施の形態の分注装置における磁性粒子の制御方法を示す動作説明図
【図9】本発明の一実施の形態の分注装置における磁性粒子の制御方法を示す動作説明図
【図10】本発明の一実施の形態の分注装置の分注ヘッドの部分正面図
【符号の説明】
【0035】
1 分注装置
2a 作業エリア
3 分注ヘッド
3a 分注ティップ
4 分注ヘッド移動機構
5 作業ステージ
6 ティップ着脱ステージ
7 磁性粒子制御板載置ステージ
8 マイクロプレート
8a ウェル
9,9A,9B 磁性粒子制御板
9a 板部材
9b 開口部
12 ティップ取外し板
13 昇降機構
14 制御板吸着マグネット
15 棒状マグネット
15A 方形マグネット
19 板状マグネット
20 液体
21 磁性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子を含有する液体を対象としてこの液体の吸引・吐出を伴う作業を行う分注装置であって、
前記液体の吸引・吐出を行う使い捨て型の分注ティップが2次元配列で装着される分注ヘッドと、前記分注ヘッドを水平移動および昇降移動させる分注ヘッド移動機構と、
前記分注ヘッドによる前記作業の対象となるマイクロプレートが載置される作業ステージ、前記分注ヘッドがアクセスしてティップ着脱動作を行うことにより既装着の分注ティップを新たな分注ティップと交換するティップ着脱ステージ、前記分注ティップ内の前記液体に含有される磁性粒子を磁力により捕集するために用いられる磁性粒子制御板が載置される磁性粒子制御板載置ステージとを備え、
前記磁性粒子制御板は、前記2次元配列に対応した複数の開口部が形成され、複数の前記分注ティップを前記複数の開口部に一括して挿通させることにより前記分注ヘッドに装着される板部材と、前記板部材に設けられこの板部材が前記分注ヘッドに装着された状態で複数の前記分注ティップのそれぞれに接近して前記磁力を少なくとも相対向する2方向から作用させる磁性体とを有し、
前記分注ヘッドに、前記板部材を保持することにより前記磁性粒子制御板を着脱自在に装着する制御板装着部を設けたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記磁性体は複数の棒状の磁石であり、前記2次元配列における分注ティップの列方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1記載の分注装置。
【請求項3】
前記磁性体は複数の塊状の磁石であり、前記2次元配列における各分注ティップに対応した位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の分注装置。
【請求項4】
前記磁性体は板状の磁石であってこの磁石が前記板部材を兼ね、前記磁石の前記2次元配列における各分注ティップの位置に対応した位置に前記開口部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の分注装置。
【請求項5】
前記制御板装着部は、金属製の前記板部材を磁力により保持する磁性体を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の分注装置。
【請求項6】
前記分注ヘッドは、前記複数の分注ティップを一括して前記分注ヘッドから取り外すティップ取外し機構を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の分注装置。
【請求項7】
磁性粒子を含有する液体の吸引・吐出を行う使い捨て型の分注ティップが2次元配列で装着される分注ヘッドを備えた分注装置において、前記液体内の前記磁性粒子を磁性粒子制御板によって捕集し分散させる分注装置における磁性粒子の制御方法であって、
前記磁性粒子制御板は、前記2次元配列に対応した複数の開口部が形成され、複数の前記分注ティップを前記複数の開口部に一括して挿通させることにより前記分注ヘッドに装着される板部材と、前記板部材に設けられこの板部材が前記分注ヘッドに装着された状態で複数の前記分注ティップのそれぞれに前記磁力を少なくとも相対向する2方向から作用させる磁性体とを有し、
前記磁性粒子制御板を前記分注ヘッドに装着して前記磁性体を前記分注ティップに接近させることにより、前記分注ティップに吸引された前記液体内の磁性粒子を磁力により捕集し、
前記磁性体を前記分注ティップから離隔させることにより、前記捕集された磁性粒子を分散させることを特徴とする分注装置における磁性粒子の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−175708(P2008−175708A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9751(P2007−9751)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度地域新生コンソーシアム研究開発事業「磁気ビーズを用いたプロテインアクティブアレイの開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】