説明

分注装置および吸引ノズル位置制御方法

【課題】分注装置において、ノズルチップ先端と分注対象物との相対距離を高精度に制御する。
【解決手段】先端にノズルチップ2が着脱可能な吸引ノズル31と、吸引ノズル31を移動させる移動手段と、吸引ノズル31へ吸引・吐出圧を供給する吸引吐出ポンプ32と、吸引ノズル32内の圧力を測定する圧力センサ35と、移動手段や吸引吐出ポンプ32の作動量を制御する制御部30とを備えてなる分注手段15において、吸引ノズル31に装着されたノズルチップ2の先端から空気を吐出させた状態で、吸引ノズル31を乾式分析素子1表面に対して接近させ、吸引ノズル31内の圧力が、ノズルチップ2の先端と乾式分析素子1表面との所定の相対距離Lに対応した圧力となったことを検知した時点から、当該時点における吸引ノズル31の移動速度に基づく時間の経過後に、吸引ノズル31の移動を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注対象物に対して検体等の液体を分注する分注装置およびこの分注装置における吸引ノズル位置制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
定量分析等においては、検体等の液体を吸引ノズルの先端に装着したノズルチップ内に吸引収容し、分析素子、混合カップ、スライド、ガラス等に所定量だけ吐出点着することが行われる。例えば、検体、参照液を乾式分析素子に所定量ずつ連続的に点着するか、希釈のために検体を混合カップに所定量吐出して分注することが行われている。このような測定においては、液体を規定されている所定量だけ正確に吐出点着することが測定精度を高める点で重要である。
【0003】
また、特に検査対象となる検体が高価な薬品であったり、血液や尿等の生体サンプルである場合には、測定に使用する検体量を数10μl程度に抑えて、使用する検体量を少なくする方が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−254983号公報
【特許文献2】特開2000−074929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように微小量の試料液を乾式分析素子に対して常に一定量供給するため、分注装置においては、分注ノズルに装着されたノズルチップの先端から極微量の試料液を吐出させて先端に極小径の液滴を作り、この液滴を乾式分析素子に点着することで、乾式分析素子に対して試料液の供給を行っている。
【0006】
この場合、ノズルチップ先端と乾式分析素子表面との相対距離を高精度に制御しないと試料液供給量を制御することができず、最悪の場合にはノズルチップ先端が乾式分析素子表面に当接して乾式分析素子を傷つけてしまったり、逆に乾式分析素子に試料液が供給されないまま測定に回されてしまうことになる。
【0007】
ディスポーザブルであるノズルチップの形状精度はそれ程高くなく、さらに、吸引ノズルに装着されたノズルチップや乾式分析素子は各々装置内で移動するため、試料供給位置において両者ともに位置ずれが起こって、分注を行う毎に両者の位置関係が僅かではあるが変化するおそれがある。
【0008】
従って、上記のようにノズルチップ先端と乾式分析素子表面との相対距離を高精度に制御するためには、両者間の相対距離を正確に測定する必要があるが、レーザー変位計等のような高精度のセンサは非常に高価であり、装置のコストが大きく上昇するため採用することが難しい。
【0009】
そのため、特許文献1,2においては、分注装置がもともと備えている圧力センサを利用して、吸引ノズルに装着されたノズルチップの先端から空気を吐出させた状態で、吸引ノズルを試料液の液面に対して接近させ、ノズルチップの先端が液面に接触して空気に流出が止まり吸引ノズル内の圧力が上昇したことを検知した時点で、吸引ノズルの移動を停止させるようにして、試料液の液面を高精度に検出する方法が開示されているが、乾式分析素子に試料液を供給するときのように、ノズルチップを分注対象物に対して接触させることができない場合には、特許文献1,2において開示されている方法をそのまま用いることはできない。
【0010】
本発明はかかる点に鑑み、ノズルチップ先端と分注対象物との相対距離を高精度に制御することが可能な分注装置およびこの分注装置における吸引ノズル位置制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の分注装置は、先端にノズルチップが着脱可能な吸引ノズルと、吸引ノズルを移動させる移動手段と、移動手段によって移動される吸引ノズルの移動速度を検知する速度検知手段と、吸引ノズルへ吸引・吐出圧を供給する吸引吐出ポンプと、吸引ノズル内の圧力を測定する圧力測定手段と、移動手段や吸引吐出ポンプの作動量を制御する制御手段とを備えてなる分注装置であって、制御手段が、吸引ノズルに装着されたノズルチップの先端から空気を吸入もしくは吐出させた状態で、吸引ノズルを分注対象物に対して接近させ、吸引ノズル内の圧力が、ノズルチップの先端と分注対象物との所定の相対距離L(ただしL≠0)に対応した圧力となったことを検知した時点から、当該時点における吸引ノズルの移動速度に基づく時間の経過後に、吸引ノズルの移動を停止させるように、移動手段および吸引吐出ポンプの作動量を制御するものであることを特徴とする。
【0012】
本発明の吸引ノズル位置制御方法は、先端にノズルチップが着脱可能な吸引ノズルに装着されたノズルチップの先端から空気を吸入もしくは吐出させた状態で、吸引ノズルを分注対象物に対して接近させ、吸引ノズル内の圧力が、ノズルチップの先端と分注対象物との所定の相対距離L(ただしL≠0)に対応した圧力となったことを検知した時点から、当該時点における吸引ノズルの移動速度に基づく時間の経過後に、吸引ノズルの移動を停止させることを特徴とする。
【0013】
上記分注装置および吸引ノズル位置制御方法において、「所定の相対距離L」とは、吸引ノズルに装着されたノズルチップの先端から空気を吸入もしくは吐出させた状態で吸引ノズルを分注対象物に対して接近させた際に、ノズルチップを分注対象物に対して接触させない範囲で、かつ吸引ノズル内の圧力変化によりノズルチップ先端と分注対象物表面との相対距離を検知できる距離である。上記の方法で相対距離Lに対応した圧力を検知する場合、ノズルチップの先端と分注対象物との相対距離がある程度近くないと、圧力値において相対距離を検出可能な変化が生じない。従って、相対距離Lは、1mm以下とすることが好ましい。なお、Lが0となってはノズルチップが分注対象物に対して接触してしまうため、L≠0が条件となる。
【0014】
また、「吸引ノズル内の圧力が、ノズルチップの先端と分注対象物との所定の相対距離L(ただしL≠0)に対応した圧力となったことを検知した時点から、当該時点における吸引ノズルの移動速度に基づく時間の経過後に、吸引ノズルの移動を停止させる」とは、相対距離Lと当該時点における吸引ノズルの移動速度に基づき、ノズルチップの先端が分注対象物に接触しない時間以内に吸引ノズルの移動を停止させることを意味する。
【0015】
また、吸引ノズル内の圧力が相対距離Lに対応した圧力となったことを検知する方法としては、吸引ノズルに装着されたノズルチップの先端から空気を吸入もしくは吐出させた状態で吸引ノズルを分注対象物に対して接近させた際に、吸引ノズル内の圧力が所定の閾値を超えたことを検出して上記検知を行ってもよいし、圧力変化の勾配が所定の傾き以上となったことを検出して上記検知を行ってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の分注装置および吸引ノズル位置制御方法によれば、先端にノズルチップが着脱可能な吸引ノズルに装着されたノズルチップの先端から空気を吸入もしくは吐出させた状態で、吸引ノズルを分注対象物に対して接近させ、吸引ノズル内の圧力が、ノズルチップの先端と分注対象物との所定の相対距離L(ただしL≠0)に対応した圧力となったことを検知した時点から、当該時点における吸引ノズルの移動速度に基づく時間の経過後に、吸引ノズルの移動を停止させるようにしたことにより、ノズルチップを分注対象物に対して接触させない場合であっても、分注装置がもともと備えている圧力測定手段を利用して、ノズルチップ先端と分注対象物との相対距離を安価でかつ高精度に制御することが可能となる。
【0017】
上記の方法で相対距離Lに対応した圧力を検知する場合、ノズルチップの先端と分注対象物との相対距離がある程度近くないと、圧力値において相対距離を検出可能な変化が生じない。従って、相対距離Lは、1mm以下とすることにより、確実に両者の相対距離が近接したことを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態における分注装置を備えた生化学分析装置の概略構成図
【図2】上記生化学分析装置の分注手段(分注装置)の概略構成図
【図3】上記生化学分析装置の吸引ノズル付近の拡大図
【図4】ノズルチップ先端と分注対象物との相対距離制御時の吸引ノズル内の圧力変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態における分注装置を備えた生化学分析装置について図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態における分注装置を備えた生化学分析装置の概略構成図、図2は上記生化学分析装置の分注手段(分注装置)の概略構成図、図3は 上記生化学分析装置の吸引ノズル付近の拡大図、図4はノズルチップ先端と分注対象物との相対距離制御時の吸引ノズル内の圧力変化を示すグラフである。
【0020】
生化学分析装置10は、未使用の略正方形状または矩形状の乾式分析素子1を積層収容したカートリッジ20を複数個貯蔵している乾式分析素子供給装置11(サプライヤ)と、上記乾式分析素子供給装置11の側方に配設され試料液が点着された乾式分析素子1を所定時間恒温保持するインキュベータ12と、乾式分析素子供給装置11からインキュベータ12に乾式分析素子1を吸盤70により吸着しつつ搬送するフイルム搬送手段13と、例えば血清,尿等の複数の試料液を収容する試料液収容手段14(サンプラ)と、フイルム搬送手段13によってインキュベータ12に搬送するまでの間に、試料液収容手段14から吸引した試料液を乾式分析素子1に点着する分注手段(分注装置)15と、インキュベータ12の下方に配設された測光手段16(光学的測光手段)とを備えている。
【0021】
なお、この生化学分析装置10の分注手段15以外の詳細については、本願出願人が既に開示している特開平7−35746号(EP 0 634 657A)公報等に記載されている。この生化学分析装置10の分注手段15の詳細については後述する。
【0022】
上記乾式分析素子1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリスチレン等の有機ポリマーシート等のプラスチックシートからなる光透過性の支持層上に、反応層を塗布または接着等により積層し、さらにこの上に展開層をラミネート法等により積層した乾式分析素子(チップ)である。
【0023】
反応層は、ゼラチン等の親水性ポリマバインダまたは濾紙、布、微多孔性ポリマーシートなどの多孔性層の中にアナライトに選択的に反応する検出試薬および発色反応に必要な試薬(化学分析試薬または免疫分析試薬)成分が含まれる少なくとも1つの層で構成されている。
【0024】
展開層は、外部との間でコスレに強い材料例えばポリエステル等の合成繊維からなる織物布地や編み物布地、天然繊維と合成繊維との混紡による織物布地、編み物布地、不織布等もしくは紙から構成されて保護層として機能するとともに、この展開層上に点着された試料液を反応層上に一様に供給し得るように展延する。
【0025】
分注手段15は、吸引ノズル31と、この吸引ノズル31の先端に着脱交換可能に装着され液体を収容するピペット状のノズルチップ2とを備える。吸引ノズル31の中心部には軸方向に貫通して先端部に開口するエア通路31aを有し、このエア通路31aには吸引吐出ポンプ32からのエア回路34が接続される。
【0026】
吸引吐出ポンプ32はシリンジポンプ等の脈動変化の少ない負圧および正圧を生成するものが使用され、ポンプ駆動部(モーター)33によって駆動される。図示のシリンジポンプによる吸引吐出ポンプ32の場合、ポンプ駆動部33におけるモーターの正転または逆転駆動に応じてピストン部材32aを移動させて負圧(吸引圧)および正圧(吐出圧)を発生させるものであり、その圧力はエア回路34によって吸引ノズル31内部のエア通路31aを介してノズルチップ2の内部に導入される。
【0027】
また、上記吸引ノズル31は、不図示の昇降機構および旋回機構等の移動手段によって上下動および横移動可能に取り付けられて作動が制御される。また、上記吸引ノズル31の上下動の速度は不図示の速度検知手段によって検知される。
【0028】
前記ノズルチップ2は全体としてピペット状であり、下端に液体を吸引・吐出する先端開口2aを有し、この開口2aにつながる容積部分に液体を収容する。上部は吸引ノズル31の先端に密に嵌合されるもので、吸引ノズル31の下降移動によって、その先端部が挿入され、その嵌合力によりノズルチップ2が吸引ノズル31に装着保持され、エア通路31aの圧力がノズルチップ2内に導入され、吸引圧によりノズルチップ2内に液体を吸引し、吐出圧によりノズルチップ2内の液体を吐出する。使用後のノズルチップ2は、嵌合を外して廃却される。
【0029】
吸引吐出ポンプ32の作動は、制御部30からポンプ駆動部33へ送出される駆動信号によって制御される。
【0030】
この制御部30には、吸引ノズル31内の圧力(正確には吸引ノズル31と連通するエア回路34内の圧力)を測定する圧力センサ35からの圧力信号が入力される。また、制御部30には、速度検知手段から吸引ノズル31の移動速度を示す信号が入力される。
【0031】
次に、上記制御部30によるノズルチップ2先端と乾式分析素子1との相対距離制御について説明する。
【0032】
ディスポーザブルであるノズルチップ2の形状精度はそれ程高くなく、さらに、吸引ノズル31に装着されたノズルチップ2や乾式分析素子1は各々装置内で移動するため、試料供給位置において両者ともに位置ずれが起こりやすく、分注を行う毎に両者の位置関係が僅かではあるが変化するおそれがある。従って、分注毎に分注開始時におけるノズルチップ2先端と乾式分析素子1との相対位置関係を反映させた相対距離制御を行わないと、高精度の相対距離制御を行うことができない。
【0033】
そこで、ノズルチップ2先端と乾式分析素子1表面との相対距離Lに対応した圧力となったことを圧力センサ35が検知した時点で、吸引ノズル31の移動を停止することが考えられる。しかし、圧力が特定の値となってから吸引ノズル31の移動停止の指示が出され、吸引ノズル31が停止されるまでには多少の時間がかかる。そのため、吸引ノズル31の移動速度や、吸引ノズル31と乾式分析素子1との距離によっては、上記のように吸引ノズル31の移動を停止しても、停止までの間に吸引ノズル31が移動して吸引ノズル31と乾式分析素子1とが接触する可能性がある。
【0034】
そのため、本実施の形態においては、図3に示すように吸引ノズル31に装着されたノズルチップ2の先端から空気を吐出させた状態で、吸引ノズル31を乾式分析素子1に対して接近(図中上方から下方に向けて移動)させ、吸引ノズル31内の圧力が、ノズルチップ2先端と乾式分析素子1表面との相対距離Lに対応した圧力となったことを圧力センサ35が検知した時点で吸引ノズル31の減速を開始し、当該時点での吸引ノズルの移動速度に応じた時間内に停止する制御を行う。
【0035】
ここで、相対距離制御時の吸引ノズル内の圧力変化について説明する。図4はノズルチップ先端と分注対象物との相対距離制御時の吸引ノズル内の圧力変化を示すグラフである。グラフの縦軸は圧力を示しており、上に行くほど高い圧力を示している。グラフの横軸はノズルチップ先端の乾式分析素子表面からの高さ(相対距離)を示しており、右に行くほど低い高さを示している。
【0036】
ノズルチップ2の先端から空気を吐出させた状態で、吸引ノズル31を乾式分析素子1に対して接近させた場合、吸引ノズル31内の圧力値は吐出開始からしばらくの間は変動がないが、乾式分析素子1の表面に近接すると圧力値が上昇しだし、ノズルチップ2先端が乾式分析素子1表面に完全に接触(グラフ中で高さ0の位置)すると、圧力値が急激に上昇(飽和)する。
【0037】
圧力値が上昇しだしてからノズルチップ2先端が乾式分析素子1表面に完全に接触するまでの間の圧力値は、ノズルチップ2先端と乾式分析素子1表面との相対距離(高さ)に対応した値となるため、所定の相対距離Lとなったときの圧力値を予め取得しておいて、その圧力値を閾値として設定する。
【0038】
上記の方法で相対距離Lに対応した圧力を検知する場合、ノズルチップ2先端と乾式分析素子1表面との相対距離がある程度近くないと、圧力値において相対距離を検出可能な変化が生じない。従って、相対距離Lは、1mm以下とすることにより、確実に両者の相対距離が近接したことを検知することができる。ただし、あまり近すぎると、圧力値の変化が急激過ぎて正確な制御が困難となるので、本実施の形態においては、相対距離Lは0.5mmに設定している。
【0039】
これにより、ノズルチップ2の先端から空気を吐出させた状態で吸引ノズル31を乾式分析素子1に対して接近させた際に、吸引ノズル31内の圧力値が上記の閾値を超えた時点でノズルチップ先端と乾式分析素子表面との相対距離が0.5mmであることが正確に検知できる。この時点での吸引ノズル31の下降速度をVとすると、例えば、時間T=0.5/V以内に吸引ノズル31の移動を停止することにより、ノズルチップ2先端と乾式分析素子1表面とを接触させることなく、相対距離を0.5mm以下にすることが可能となる。なお、厳密には、吸引ノズル31の下降速度の減速に伴いVは減少していくため、ノズルチップ2先端と乾式分析素子1表面との相対距離を正確に計算するにはVの変化を考慮して吸引ノズル31の移動距離の計算が必要となる。しかし、Vは増加することはないため、遅くとも時間T=L/V以内に吸引ノズル31を停止すれば、ノズルチップ2先端と乾式分析素子1表面との接触を無くすことができる。
【0040】
制御部30は、吸引ノズル31が停止した位置を記憶した後、吸引ノズル31を試料液収容手段14の試料液ポッド5上部に移動させて試料液5aを吸引し、再度吸引ノズル31を乾式分析素子1上に移動させて、上記の記憶位置まで吸引ノズル31を下降させる。
【0041】
この状態で、試料液5aを乾式分析素子1に点着することにより、微小量の試料液5aを乾式分析素子1に対して常に一定量供給することが可能となる。
【0042】
上述の通り、試料液5aが供給された乾式分析素子1は、インキュベータ12によりインキュベーションが行なわれ、このインキュベータ12の下方に配設された測光手段16により測定される。この測光手段16は、乾式分析素子1と試料液との呈色反応による光学濃度を測定するための測光ヘッドを有する。この測光ヘッドは所定波長の光を含む測定光Lを光透過性の支持層を透過し反応層に照射して、乾式分析素子1において散乱・反射した拡散反射光を光検出素子で検出するものであり、測光ヘッドには光源からの光が入射され、測光ヘッド内で該光が反応層に照射される。
【0043】
乾式分析素子1において散乱・反射した拡散反射光は、反応層中で生成された色素量に応じた光情報(具体的には光量)を担持しており、この光情報を担持した拡散反射光が測光ヘッドの光検出素子に入射して光電変換され、アンプを介して不図示の物質濃度決定部に送出される。
【0044】
物質濃度決定部では、入力された電気信号のレベルに基づき反応層中で生成された色素の光学濃度を判定し、次に、光学濃度−物質濃度(または活性)の変換関数である検量線を用い、試料液中の所定の生化学物質の物質濃度を特定するための演算処理を実施する。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0046】
例えば、吸引ノズル内の圧力が相対距離Lに対応した圧力となったことを検知する方法としては、上記のように吸引ノズル内の圧力が所定の閾値を超えたことを検出して検知する方法に限らず、圧力変化の勾配が所定の傾き以上となったことを検出して検知する方法としてもよい。
【0047】
また、相対距離制御時においては、ノズルチップ2の先端から空気を吸入させた状態で吸引ノズル31を乾式分析素子1に対して接近させるようにしてもよい。
【0048】
また、上記以外にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行なってもよいのは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 乾式分析素子
2 ノズルチップ
5 試料液ポッド
5a 試料液
10 生化学分析装置
11 乾式分析素子供給装置
12 インキュベータ
13 乾式分析素子搬送手段
14 試料液収容手段
15 分注手段
16 測定手段
20 乾式分析素子を積層収容したカートリッジ
30 制御部
31 吸引ノズル
32 吸引吐出ポンプ
33 ポンプ駆動部
34 エア回路
35 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にノズルチップが着脱可能な吸引ノズルと、
該吸引ノズルを移動させる移動手段と、
該移動手段によって移動される前記吸引ノズルの移動速度を検知する速度検知手段と、
前記吸引ノズルへ吸引・吐出圧を供給する吸引吐出ポンプと、
前記吸引ノズル内の圧力を測定する圧力測定手段と、
前記移動手段や前記吸引吐出ポンプの作動量を制御する制御手段とを備えてなる分注装置であって、
前記制御手段が、前記吸引ノズルに装着された前記ノズルチップの先端から空気を吸入もしくは吐出させた状態で、前記吸引ノズルを分注対象物に対して接近させ、前記吸引ノズル内の圧力が、前記ノズルチップの先端と前記分注対象物との所定の相対距離L(ただしL≠0)に対応した圧力となったことを検知した時点から、当該時点における前記吸引ノズルの移動速度に基づく時間の経過後に、前記吸引ノズルの移動を停止させるように、前記移動手段および前記吸引吐出ポンプの作動量を制御するものであることを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記相対距離Lが、1mm以下であることを特徴とする請求項1記載の分注装置。
【請求項3】
先端にノズルチップが着脱可能な吸引ノズルに装着された前記ノズルチップの先端から空気を吸入もしくは吐出させた状態で、前記吸引ノズルを分注対象物に対して接近させ、
前記吸引ノズル内の圧力が、前記ノズルチップの先端と前記分注対象物との所定の相対距離L(ただしL≠0)に対応した圧力となったことを検知した時点から、当該時点における前記吸引ノズルの移動速度に基づく時間の経過後に、前記吸引ノズルの移動を停止させることを特徴とする吸引ノズル位置制御方法。
【請求項4】
前記相対距離Lが、1mm以下であることを特徴とする請求項3記載の吸引ノズル位置制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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