説明

分注装置および自動分析装置

【課題】ディスポーザブル方式のチップを用いて試料の分注を行う際に生じる異常をリアルタイムで適確に検出し、キャリーオーバーやコンタミネーションの発生を防止するとともに分注精度の低下を防止する分注装置および当該分注装置を備えた自動分析装置を提供する。
【解決手段】導電性を有する細管状のプローブと、前記プローブの長手方向の一方の端部に着脱自在に取り付けられ、絶縁性を有するチップと、前記プローブを移送するプローブ移送手段と、前記チップの先端で吸引または吐出すべき液体と前記プローブとの接触を電気的に検知する接触検知手段と、前記プローブ移送手段による前記プローブの移送中に前記接触検知手段が前記プローブと前記液体との接触を検知した場合、前記プローブ移送手段の駆動を停止する制御を行う制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の分注を行う分注装置および当該分注装置を備えて試料の分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料と試薬とを反応させることによって試料の分析を行う自動分析装置では、試料や試薬の高精度な分注技術が必要とされる。特に、試料の免疫学的な分析を行う場合には、キャリーオーバやコンタミネーション等の問題を回避するため、試料分注用のプローブの先端に対して着脱自在なチップを装着し、異なる試料を分注するたびにチップの取り替えを行うディスポーザブル方式を採用することが多い。
【0003】
従来、ディスポーザブル方式を採用した試料分注機構において、分注動作後にプローブがチップを保持しているか否かを判定するための技術として、カメラや光学センサ等の検知手段を用いてプローブ先端のチップ保持の有無を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。この技術では、チップをプローブに装着して試料を分注した後、そのプローブを検知手段によって検知可能な場所まで移送し、プローブ先端のチップの有無を判定する。
【0004】
【特許文献1】特開2001−59848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、試料を吸引するためにプローブを試料に対して近づけているとき、チップが正しく装着されているか否かを判定することができなかった。このため、チップが何らかの理由でプローブから脱落し、プローブが試料と直接接触して試料を吸引した場合であっても、チップの脱落を分注後まで検知することができなかった。その結果、チップの脱落を分注後に認識したオペレータがメインテナンスを行う際、オペレータ自身が試料によって汚染されてしまう恐れがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ディスポーザブル方式のチップを用いて試料の分注を行う際に生じる異常をリアルタイムで適確に検出し、キャリーオーバーやコンタミネーションの発生を防止することができる分注装置および当該分注装置を備えた自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の発明は、容器に収容された液体を吸引し、この吸引した液体を所定の位置で吐出する分注装置であって、導電性を有する細管状のプローブと、前記プローブの長手方向の一方の端部に着脱自在に取り付けられ、絶縁性を有するチップと、前記プローブを移送するプローブ移送手段と、前記チップの先端で吸引または吐出すべき液体と前記プローブとの接触を電気的に検知する接触検知手段と、前記プローブ移送手段による前記プローブの移送中に前記接触検知手段が前記プローブと前記液体との接触を検知した場合、前記プローブ移送手段の駆動を停止する制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明における「液体」には、血液や体液などのように微量の固体成分を含有する液体も含まれる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記接触検知手段は、前記チップの先端で液体を吸引する液体吸引位置の近傍に設けられる電極と、前記電極と前記プローブとの間の静電容量を検出する静電容量検出手段と、前記静電容量検出手段で検出した静電容量を用いて前記プローブと前記液体との接触の有無を判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記判定手段は、前記静電容量検出手段で検出した静電容量に対応する信号を所定の増幅率で増幅する増幅回路と、前記増幅回路の出力を基準値と比較し、前記出力が前記基準値に達したとき所定の判定信号を前記制御手段へ出力する比較回路と、を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、試料と試薬とを反応させることによって前記試料の分析を行う自動分析装置であって、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分注装置を、前記試料を分注する試料分注手段として備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る分注装置および自動分析装置によれば、導電性を有する細管状のプローブと、前記プローブの長手方向の一方の端部に着脱自在に取り付けられ、絶縁性を有するチップと、前記プローブを移送するプローブ移送手段と、前記チップの先端で吸引または吐出すべき液体と前記プローブとの接触を電気的に検知する接触検知手段と、前記プローブ移送手段による前記プローブの移送中に前記接触検知手段が前記プローブと前記液体との接触を検知した場合、前記プローブ移送手段の駆動を停止する制御を行う制御手段と、を備えたことにより、ディスポーザブル方式のチップを用いて試料の分注を行う際に生じる異常をリアルタイムで適確に検出し、キャリーオーバーやコンタミネーションの発生を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る分注装置の構成を模式的に示す図である。同図に示す分注装置1は、試料容器2に収容された血液や体液などの液体である試料Spの分注を行う装置である。なお、ここでいう「液体」には、微量の固体成分を含有する液体も含まれる。
【0014】
分注装置1は、金属等の導電性材料から成る細管状のプローブ11と、プローブ11の先端に着脱自在に装着され、プラスチック等の絶縁性材料から成るチップ12と、プローブ11に鉛直方向の昇降動作や水平方向の回転動作を行わせることによってプローブ11を移送するプローブ移送部13と、を備える。
【0015】
また、分注装置1は、試料Spとプローブ11との接触を電気的に検知する接触検知部14と、分注装置1の分注動作を制御するためにCPU(Central Processing Unit)等を用いて実現される制御部15と、を備える。
【0016】
接触検知部14は、試料容器2の近傍(チップ12の先端で試料Spを吸引する際の試料吸引位置の近傍)に設けられた電極16と、プローブ11と電極16との間の静電容量を検出する静電容量検出部17と、静電容量検出部17から出力される信号に基づいてプローブ11と試料Spとの接触の有無を判定する判定部18と、を有する。
【0017】
静電容量検出部17は、静電容量方式を適用した従来の液面検知装置における静電容量検出部と同様の構成を有しており、所定の周波数の交流信号を発振して印加する発振回路と、プローブ11から出力される信号を増幅する増幅回路と、増幅回路の出力を整流する整流回路と、整流回路の出力を平滑化する平滑回路とを具備する(図示せず)。なお、静電容量検出部17にフィルタ等をさらに設けることによってノイズの低減を図る構成としてもよい。
【0018】
判定部18は、静電容量検出部17からの出力を所定の増幅率で増幅する増幅回路181と、増幅回路181の出力を基準値と比較し、その基準値に達したときに所定の判定信号(デジタル信号)を出力する比較回路182とを含む。本実施の形態において、判定部18は、プローブ11が移動する際にプローブ11からのチップ12の脱落を検知する機能を有している。
【0019】
引き続き、分注装置1の構成を説明する。分注装置1は、2種類のシリンジ19および20を備える。このうち、シリンジ19は、シリンダ19aおよびピストン19bから成り、プローブ移送部13がプローブ11を移送するのにあわせてチップ12の先端から外部へエアーを押し出す機能を有する。ピストン19bはピストン駆動部21に接続され、制御部15の制御のもと、シリンダ19aの内部を図1で上方へ摺動させる。この結果、シリンダ19a内部のエアー圧力を、電磁弁22、チューブT1、電磁弁23およびチューブT2の順に経由してプローブ11へと伝達し、エアーをチップ12の先端から外部へ押し出す。
【0020】
他方、シリンジ20は、シリンダ20aおよびピストン20bから成り、チップ12の先端で試料Spを吸引または吐出する圧力をチップ12に伝達する機能を有する。ピストン20bはピストン駆動部24に接続され、制御部15の制御のもと、シリンダ20aの内部を図1で上下に摺動させることにより、シリンダ20a内部のエアー圧力を、電磁弁25、チューブT3、電磁弁23およびチューブT2の順に経由してプローブ11へと伝達し、チップ12の先端における試料Spの吐出圧または吸引圧を発生する。本実施の形態においては、試料Spの分注量は微量(数マイクロリットル〜数十マイクロリットル程度)である。したがって、シリンダ20aの容積はシリンダ19aの容積よりも顕著に小さい。
【0021】
図1からも明らかなように、電磁弁22、23、および25は三方弁である。電磁弁22においてチューブT1と接続されていない弁、および電磁弁25においてチューブT3と接続されていない弁は、エアーを外部から吸引したり外部へ吐出したりすることができる。なお、図1では配線を省略しているが、電磁弁22、23および25の各弁の開閉動作も制御部15の制御に基づいて行われることは勿論である。
【0022】
さらに、分注装置1の構成の説明を続ける。分注装置1は、チューブT2に接続されてプローブ11に加わるエア圧力の変化に基づいて液面を検知する液面検知部26を備える。この液面検知部26は、プローブ11に加わるエアー圧力の変化を検出し、この検出結果に対応する電気信号(アナログ信号)を生成する圧力センサ27と、圧力センサ27からの出力に対して増幅、A/D変換等の信号処理を施し、この信号処理の結果に基づいた液面検知信号を制御部15へ送出する信号処理部28と、を備える。
【0023】
また、分注装置1は、分注動作に関わる各種情報を出力する出力部29を備える。出力部29は、液晶、プラズマ、有機EL、CRT等のディスプレイ装置によって実現される。なお、出力部29として、音声や警報音によって各種情報を発生するスピーカを設けてもよい。
【0024】
次に、以上の構成を有する分注装置1の動作を説明する。以後、判定部18の比較回路182で比較する基準値をTh1とする。
【0025】
図2は、以上の構成を有する分注装置1の動作の概要を示すフローチャートである。まず、チップ12をプローブ11に装着し(ステップS1)、プローブ移送部13によりプローブ11を試料吸引位置まで下降させる動作を開始する(ステップS2)。
【0026】
プローブ11を下降させている最中、比較回路182では、増幅回路181から出力された出力信号の大きさP1(静電容量検出部17の出力を所定の増幅率で増幅したもの)と基準値Th1との比較を行う。図3は、プローブ11の下降開始からの時間t(横軸)と出力信号の大きさP1(縦軸)との関係を示す図である。同図に示す曲線L1は、プローブ11が移動を開始した時点では出力が一定であるが、時間が経過すると急激に立ち上がる。このままプローブを移動しつづけると、静電容量はやがて一定値に到達する(図3の破線部を参照)。これは、プローブ11の先端にチップ12が装着されていない状態で下降途中にプローブ11の先端が液面に接触したことを意味する。
【0027】
判定部18による判定の結果、出力信号の大きさP1が基準値Th1に達したとき(ステップS3でYes)、判定部18は、プローブ11と試料Spとが接触していることを意味する判定信号を制御部15へ送出する。
【0028】
制御部15では、判定部18から判定信号を受信すると、プローブ移送部13に対してプローブ11の下降を停止する制御信号を送出し、プローブ11の下降を停止させる(ステップS4)。
【0029】
その後、出力部29は、制御部15からの制御信号に応じて、チップ12が脱落した状態であることを報知するエラー情報を出力する(ステップS5)。このエラー情報として、例えば画面上でエラーの内容(「チップ脱落」等)を表示出力してもよいし、音声や警報等によってエラーの内容を出力してもよい。なお、このステップS5の後、停止したプローブ11をプローブ移送部13によって自動的に上昇させるような制御を行うようにしてもよい。
【0030】
エラー情報の報知を受けたオペレータは、該当するプローブ11に対して洗浄等のメンテナンス処理を施すことができる。その際のメインテナンス処理は、プローブ11が試料Spの液面にごくわずかに触れただけなので、簡単な処理で済む。
【0031】
ステップS3で出力信号の大きさP1が基準値Th1を超えない場合(ステップS3でNo)、プローブ11は下降し続ける。その後、液面検知部26によって液面が検知され(ステップS6でYes)、信号処理部28から出力された液面検知信号を受信した制御部15は、プローブ11の下降を停止する制御信号をプローブ移送部13に送出し、プローブ11の下降を停止させ(ステップS7)、シリンジ20を用いて試料Spの吸引を行う(ステップS8)。この吸引を行う際には、制御部15の制御のもと、チューブT2とチューブT3とが連通するように電磁弁23の開閉状態を変更し、ピストン20bを駆動する。なお、液面検知部26が液面を検知しない間(ステップS6でNo)は、ステップS3に戻って上述した処理を繰り返す。
【0032】
以上説明した本実施の形態に係る分注装置1によれば、プローブ11と試料容器2の近傍に設けられた電極16との間の静電容量の変化を判定部18によって検出することにより、キャリーオーバやコンタミネーションの発生を防止することができる。
【0033】
なお、本実施の形態においては、接触検知部14は、試料Spとプローブ11との接触を電気的に接触することができれば如何なる構成を有していてもよく、必ずしもプローブ11と電極16との静電容量を検出する構成を有する必要はない。例えば、2本のプローブの一方から電流を流してもう一方のプローブで受ける導通方式を採用してもよい。
【0034】
本実施の形態に係る分注装置1は、試料と試薬とを反応させることによって試料の分析を行う自動分析装置に適用することができる。以下、分注装置1を用いて自動分析装置を構成した場合について説明する。
【0035】
図4は、本実施の形態に係る自動分析装置要部の構成を模式的に示す図である。同図に示す自動分析装置100は、試料および試薬を反応容器にそれぞれ分注し、その反応容器内の液体に対する光学的な測定を行う測定機構101と、この測定機構101の駆動制御を行うとともに測定機構101における測定結果の分析を行う制御分析機構201とを有し、これら二つの機構が連携することによって複数の試料の免疫学的な分析を自動的かつ連続的に行う装置である。以後、自動分析装置100が不均一系反応を用いた免疫学的な測定を行うものとして説明する。
【0036】
最初に、自動分析装置100の測定機構101について説明する。測定機構101は、試料Spを収容する試料容器2が搭載された複数のラック121を収納して順次移送する試料移送部102と、試料Spとの抗原抗体反応に適用する担体試薬を収容する担体試薬容器3を保持する担体試薬容器保持部103と、各種液体試薬を収容する液体試薬容器4を保持する液体試薬容器保持部104と、試料と試薬とを反応させる反応容器5を保持する反応容器保持部105と、を備える。
【0037】
担体試薬容器保持部103は、担体試薬容器3を保持するホイールと、このホイールの底面中心に取り付けられ、その中心を通る鉛直線を回転軸としてホイールを回転させる駆動手段とを有する。液体試薬容器保持部104および反応容器保持部105も担体試薬容器保持部103と同様、ホイールおよびこのホイールを回転させる駆動手段をそれぞれ有する。
【0038】
各容器保持部内は一定の温度に保たれている。例えば、液体試薬容器保持部104は、試薬の劣化や変性を抑制するために室温よりも低温に設定され、反応容器保持部105内は、人間の体温と同程度の温度に設定される。
【0039】
また、測定機構101は、試料移送部102上の試料容器2に収容されている試料Spを反応容器保持部105で保持する反応容器5に分注する試料分注部106と、担体試薬容器保持部103上の担体試薬容器3に収容されている担体試薬を反応容器5に分注する担体試薬分注部107と、液体試薬容器保持部104上の液体試薬容器4に収容されている液体試薬を反応容器5に分注する液体試薬分注部108と、反応容器5を反応容器保持部105に設置したり反応容器保持部105から取り除いたりするために反応容器5を移送する反応容器移送部109と、を備える。
【0040】
試料容器2には、その内部に収容する試料を識別する識別情報をバーコードまたは2次元コード等の情報コードにコード化して記録した情報コード記録媒体が貼付されている(図示せず)。同様に、担体試薬容器3および液体試薬容器4にも、内部に収容する試薬を識別する識別情報を情報コードにコード化して記録した情報コード記録媒体がそれぞれ貼付されている(図示せず)。このため、測定機構101は、試料容器2に貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR1、担体試薬容器3に貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR2、および液体試薬容器4に貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR3を備える。
【0041】
試料分注部106は、本実施の形態に係る分注装置1によって実現される。この試料分注部106の動作線上には、未使用のチップ12を保持するチップ格納部116と、使用済みのチップ12をプローブ11から取り外して廃棄するチップ廃棄部126とが設けられている。試料分注部106のプローブ11に対してチップ12を装着する際には、チップ格納部116内の所定のチップ装着位置でプローブ11を下降させることによってチップ12を装着する。他方、チップ廃棄部126でチップ12をプローブから脱却する際には、例えばスリット状の切り欠きを有する治具をチップ廃棄部126に設けておき、このスリット部分にプローブ11を挿入した後、プローブ11を上昇させることによって使用済のチップ12を取り外し、廃棄ボックスへ自動的に落下させる構成とすればよい。
【0042】
担体試薬分注部107および液体試薬分注部108は、試料分注部106とほぼ同様の構成を有する。本実施の形態においては、担体試薬分注部107および液体試薬分注部108でプローブの先端にチップを装着することは想定していないが、試料分注部106と同様、分注するたびにプローブの先端に新たなチップを装着するような構成とすることも可能である。
【0043】
反応容器移送部109の動作線上には、未使用の反応容器5を保持する反応容器格納部119と、使用後の反応容器5を廃棄する反応容器廃棄部129とが設けられている。反応容器移送部109は、反応容器5の内部に液体がある場合であってもその液体をこぼすことなく移送できるものであれば如何なる構成を有していてもよい。
【0044】
引き続き測定機構101の構成を説明する。測定機構101は、担体試薬のB/F洗浄を行うB/F洗浄部110と、反応容器5の内部に収容された液体を攪拌する攪拌棒を有する攪拌部111と、反応容器5内の反応液から発光する光を検出する測光部112と、を備える。
【0045】
B/F洗浄部110は、生理食塩水等のB/F洗浄液を反応容器5に対して吐出する吐出用ノズルと、B/F洗浄後のB/F洗浄液を反応容器5から吸引して廃棄する吸引用ノズルとを有する。
【0046】
測光部112は、微弱な光を検出可能な光電子増倍管を有する。なお、反応液から発生する蛍光を測定する場合には、測光部112として励起光を照射するための光源を設ければよい。
【0047】
以上の構成を有する測定機構101において、1回の回転動作で反応容器保持部105が回転する角度は予め定められており、その回転によって試料Spや各種試薬の分注等を同時多発的に行うことができるような構成となるように、全ての構成要素が配置されている。この意味で、図4はあくまでも測定機構101の構成要素を模式的に示すものに過ぎない。すなわち、測定機構101の構成要素間の相互の位置関係は、反応容器保持部105のホイールの回転態様等の条件に応じて定められるべき設計的事項である。
【0048】
続いて、自動分析装置100の制御分析機構201の構成を説明する。制御分析機構201は、測定機構101における測定結果に基づいて試料Spの分析データを生成するデータ生成部202と、試料Spの分析に必要な情報および自動分析装置100の動作指示信号の入力を受ける入力部203と、分析結果を含む情報を出力する出力部204と、分析結果を含む情報を記憶する記憶部205と、自動分析装置100の制御を行う制御部206と、を備える。
【0049】
制御部206は、記憶部205が記憶するプログラムをメモリから読み出すことによって自動分析装置100の各種動作の制御などを行う。このため、制御部206は、試料分注部106として適用される分注装置1の制御部15の機能を兼備している。また、出力部204は、分注装置1の出力部29の機能を兼備している。
【0050】
以上の構成を有する制御分析機構201が測光部112から測定結果を受信すると、データ生成部202が測光部112から送られてきた測定結果に基づいて反応容器5内の反応液の発光量を算出する。また、データ生成部202では、前述した反応液の発光量の算出結果に加えて標準検体から得られる検量線や分析パラメータなどの情報を参照することによってその反応液の成分を定量的に求め、試料Spの分析データを生成する。このようにして得られた分析データは、出力部204から出力される一方、記憶部205に格納して記憶される。
【0051】
なお、分注装置1を自動分析装置100の試料分注部106として適用する場合には、エラー情報として、例えば出力部204で表示する分析結果の一覧表の中にリマーク情報を加えておき、どの段階で異常を検知したのかを明確に表示するようにしてもよい。
【0052】
以上の構成を有する自動分析装置100における分析処理の概要を説明する。ここでは、一例として、不均一系反応の一例である酵素免疫測定法(EIA)のうち、特に2ステップのサンドイッチ法(非競合法)を用いることによって試料Sp中の所定の抗原の濃度を測定する場合を説明する。まず、試料Sp中の所定の抗原に特異的に結合する抗体によって感作された固相担体を含む担体試薬を担体試薬分注部107によって反応容器5に分注後、その反応容器5に対して試料Spを試料分注部106によって分注し、攪拌部111で担体試薬と試料とを混合し、1回目の免疫反応(抗原抗体反応)を行わせる。
【0053】
上述した1回目の免疫反応の後、B/F洗浄部110にてB/F反応液のB/F洗浄を行い、抗体と特異的に結合せずに遊離している試料Sp(抗原を含む)や抗体を固相担体から分離除去する。続いて、B/F洗浄後の反応液に対し、標識物質である酵素(第1試薬)を液体試薬分注部108によって過剰に加えることにより、2回目の免疫反応を行わせる。この2回目の免疫反応後にもB/F洗浄部110にて反応液のB/F洗浄を行い、余剰して遊離している標識物質等を固相担体から分離除去する。
【0054】
その後、2回目のB/F洗浄後の反応液に対し、標識物質である酵素が活性を発現する発色基質(第2試薬)を液体試薬分注部108によって分注することにより、反応液中の標識物質との間で発色反応を行わせ、この発色反応によって発色した光量を測光部112で光学的に測定する。
【0055】
データ生成部202では、測光部112における測定によって得られたデータと抗原の濃度が既知の標準検体から得られたデータ(検量線)との比較演算を行うことにより、分析対象の抗原の試料Sp中の濃度を定量的に求めることによって分析データを生成する。
【0056】
なお、免疫測定法としては、以上説明した2ステップのサンドイッチ法の代わりに1ステップのサンドイッチ法(競合法)を適用することも可能である。
【0057】
また、酵素免疫測定法以外の不均一系反応を用いた免疫測定法として、例えば蛍光物質を標識物質とする蛍光免疫測定法(FIA)、放射性同位体を標識物質とする放射性免疫測定法(RIA)、化学発光基質を標識物質とする化学酵素免疫測定法(CLIA)、およびスピン試薬を標識物質とするスピン試薬免疫測定法(SIA)などを適用することもできる。
【0058】
さらに、自動分析装置100を用いて均一系反応を用いた試料の免疫学的な分析を行うことも可能である。この場合には、上述した不均一系反応の場合のように反応液のB/F洗浄を行う必要はない。
【0059】
以上説明した本実施の形態に係る自動分析装置100によれば、試料分注部106として本実施の形態に係る分注装置1を適用することにより、チップ12のプローブ11への装着の不具合や試料Spのプローブ11への付着等の異常をリアルタイムで検知することができるので、キャリーオーバやコンタミネーションの発生を防止することができる。この結果、オペレータが自動分析装置100のメインテナンスをする際の作業の負荷を軽減することも可能となる。
【0060】
以上説明した本発明の一実施の形態に係る分注装置および自動分析装置によれば、導電性を有する細管状のプローブと、前記プローブの長手方向の一方の端部に着脱自在に取り付けられ、絶縁性を有するチップと、前記プローブを移送するプローブ移送手段と、前記チップの先端で吸引または吐出すべき液体と前記プローブとの接触を電気的に検知する接触検知手段と、前記プローブ移送手段による前記プローブの移送中に前記接触検知手段が前記プローブと前記液体との接触を検知した場合、前記プローブ移送手段の駆動を停止する制御を行う制御手段と、を備えたことにより、ディスポーザブル方式のチップを用いて試料の分注を行う際に生じる異常をリアルタイムで適確に検出し、キャリーオーバーやコンタミネーションの発生を防止するとともに分注精度の低下を防止することが可能となる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、カメラや光学センサのように高価であるとともに配置のためのスペースを必要とする検知手段が不要であるため、装置の実装に要するコストを抑えるとともに、装置の小型化、省スペース化を容易に実現することが可能となる。
【0062】
ここまで、本発明を実施するための最良の形態を詳述してきたが、本発明は上記一実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、本発明に係る分注装置(および自動分析装置の試料分注部)において試料の分注をする際には、シリンジおよびチューブにイオン交換水等の非圧縮性流体から成る洗浄液を充填し、この洗浄液を介してシリンジからチップ先端に吐出圧や吸引圧を伝達するような構成とすることも可能である。
【0063】
また、本発明に係る分注装置を、試料の生化学的な分析を行う自動分析装置に適用することも可能である。この場合には、白色光を発生する光源と、この光源から発生した白色光のうち反応容器を透過してきた光を所定の周波数成分に分光する分光光学系と、この分光光学系で分光された成分ごとの光を受光する受光素子とを用いることによって測光部を構成する。この自動分析装置の制御分析機構では、測光部での測定結果に基づいて試料と試薬の反応液の吸光度を算出し、この算出した吸光度を用いて試料の分析データを生成する。
【0064】
このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施の形態に係る分注装置の概略構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る分注装置の動作の概要を示すフローチャートである。
【図3】チップが脱落した状態でプローブが下降するときのある判定部内の増幅回路からの出力信号の大きさと時間との関係を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置要部の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 分注装置
2 試料容器
3 担体試薬容器
4 液体試薬容器
5 反応容器
11 プローブ
12 チップ
13 プローブ移送部(プローブ移送手段)
14 接触検知部(接触検知手段)
15、206 制御部(制御手段)
16 電極
17 静電容量検出部(静電容量検出手段)
18 判定部(判定手段)
19、20 シリンジ
19a、20a シリンダ
19b、20b ピストン
21、24 ピストン駆動部
22、23、25 電磁弁
26 液面検知部
27 圧力センサ
28 信号処理部
29、204 出力部
100 自動分析装置
101 測定機構
102 試料移送部
103 担体試薬容器保持部
104 液体試薬容器保持部
105 反応容器保持部
106 試料分注部
107 担体試薬分注部
108 液体試薬分注部
109 反応容器移送部
110 B/F洗浄部
111 攪拌部
112 測光部
116 チップ格納部
119 反応容器格納部
121 ラック
126 チップ廃棄部
129 反応容器廃棄部
181 増幅回路
182 比較回路
201 制御分析機構
202 データ生成部
203 入力部
205 記憶部
CR1、CR2、CR3 情報コード読取部
Sp 試料
T1、T2、T3 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された液体を吸引し、この吸引した液体を所定の位置で吐出する分注装置であって、
導電性を有する細管状のプローブと、
前記プローブの長手方向の一方の端部に着脱自在に取り付けられ、絶縁性を有するチップと、
前記プローブを移送するプローブ移送手段と、
前記チップの先端で吸引または吐出すべき液体と前記プローブとの接触を電気的に検知する接触検知手段と、
前記プローブ移送手段による前記プローブの移送中に前記接触検知手段が前記プローブと前記液体との接触を検知した場合、前記プローブ移送手段の駆動を停止する制御を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記接触検知手段は、
前記チップの先端で液体を吸引する液体吸引位置の近傍に設けられる電極と、
前記電極と前記プローブとの間の静電容量を検出する静電容量検出手段と、
前記静電容量検出手段で検出した静電容量を用いて前記プローブと前記液体との接触の有無を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載の分注装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記静電容量検出手段で検出した静電容量に対応する信号を所定の増幅率で増幅する増幅回路と、
前記増幅回路の出力を基準値と比較し、前記出力が前記基準値に達したとき所定の判定信号を前記制御手段へ出力する比較回路と、
を含むことを特徴とする請求項2記載の分注装置。
【請求項4】
試料と試薬とを反応させることによって前記試料の分析を行う自動分析装置であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の分注装置を、前記試料を分注する試料分注手段として備えたこと特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−322394(P2007−322394A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156554(P2006−156554)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】