説明

分注装置及び分注プローブユニット

【課題】圧力や経時変化の影響を受けることなく正確な分注を行うこと。
【解決手段】両端部が開口した分注プローブ110を備え、この分注プローブ110の下方部開口を液体に浸漬させた状態で上方部開口112から負圧を作用させることにより、分注プローブ110の内部に液体を吸引するようにした分注装置において、分注プローブ110の上端部を囲繞し、かつ底部内面124aを分注プローブ110の上方部開口112よりも下方に位置させる態様で圧力容器120を設け、この圧力容器120を介して分注プローブ110にシリンジポンプ30の負圧を作用させるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料や試薬等の液体の分注を行う分注装置及び分注プローブユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液や尿等の試料を分析する自動分析設備においては、反応容器に所定量の試料と試薬とを分注する場合に分注装置が適用されている。この種の分注装置としては、分注プローブを備えたものが一般的である。分注プローブは、例えば細径の円柱状に構成された管状部材であり、その基端部が開閉弁を介してシリンジポンプに接続されている。
【0003】
上記のように構成された分注装置では、分注プローブの先端部開口を試料や試薬に浸漬させ、開閉弁を開成した状態でシリンジポンプのピストンを吸込動作させれば、分注プローブの内部に試料や試薬を吸引することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、自動分析設備において正確な分析を行うためには、試料及び試薬の分注量を如何に正確に行うかがきわめて重要となる。このため従来では、シリンジポンプの圧力を検出することにより試料や試薬の粘性を判断し、この判断結果に応じてシリンジポンプの動作を制御することが行われている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特公平2−29989号公報
【特許文献2】特公平3−40343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した分注装置では、分注プローブを試料容器と反応容器との間、並びに試薬容器と反応容器との間に移動させることが必要となる。このため、シリンジポンプから分注プローブに至る流体管路としては、可撓性を有した材質によって成形されたものを適用するのが一般的である。
【0007】
しかしながら、シリンジポンプから分注プローブに至る流体管路として可撓性を有したものを適用した分注装置にあっては、試料や試薬の粘性に応じてシリンジポンプの動作を制御したとしても、圧力による変形や経時変化を防止することができず、これらの影響により試料や試薬の分注量を正確に制御することが困難となる。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、圧力や経時変化の影響を受けることなく正確な分注を行うことのできる分注装置及び分注プローブユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る分注装置は、両端部が開口した分注プローブを備え、この分注プローブの下方部開口を液体に浸漬させた状態で上方部開口から負圧を作用させることにより、前記分注プローブの内部に液体を吸引するようにした分注装置において、分注プローブの上端部を囲繞し、かつ底部内面を前記分注プローブの上方部開口よりも下方に位置させる態様で圧力容器を設け、この圧力容器を介して前記分注プローブに負圧を作用させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る分注装置は、上述した請求項1において、前記分注プローブの上方部開口が前記圧力容器の底部内面以下に占位可能となる態様で前記圧力容器に対して前記分注プローブを移動可能に設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に係る分注装置は、上述した請求項1において、前記圧力容器に対して前記分注プローブを着脱可能に設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4に係る分注装置は、上述した請求項2または請求項3において、前記圧力容器に洗浄水を供給する洗浄水供給手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5に係る分注装置は、上述した請求項1において、前記分注プローブの上方部開口から前記圧力容器に液体が溢れたことを検出する液体検出手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項6に係る分注装置は、上述した請求項5において、前記液体検出手段は、前記圧力容器の内部において前記分注プローブの上方部開口よりも下方となる位置に配設した一対の電極を備え、これら電極間の電気抵抗値の変化に基づいて液体が溢れたか否かを検出するものであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項7に係る分注プローブユニットは、一端部開口を液体に浸漬させた状態で他端部開口から負圧が作用された場合に、内部に液体を吸引する分注プローブを備えた分注プローブユニットにおいて、分注プローブの他端部を囲繞し、かつ内面から前記分注プローブの他端部が内部に突出する態様で圧力容器を設けたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項8に係る分注プローブユニットは、上述した請求項7において、前記圧力容器の内部に突出した分注プローブの他端部開口が前記圧力容器の内面以下に占位可能となる態様で前記圧力容器に対して分注プローブを移動可能に設けたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項9に係る分注プローブユニットは、上述した請求項7において、前記圧力容器に対して前記分注プローブを着脱可能に設けたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項10に係る分注プローブユニットは、上述した請求項7において、前記分注プローブの他端部開口を上方に向けて配置した場合に、この他端部開口から圧力容器に液体が溢れたことを検出する液体検出手段を設けたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項11に係る分注プローブユニットは、上述した請求項10において、前記液体検出手段は、前記圧力容器の内部において分注プローブの他端部開口よりも内面に近接した部位に一対の電極を備え、これら電極間の電気抵抗値の変化に基づいて液体が溢れたか否かを検出するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、分注プローブの上方部開口から液体が溢れるまで圧力容器を介して負圧を作用させれば、分注プローブに至る流体管路として可撓性を有したものを適用した場合であっても、圧力による変形や経時変化の有無に関わらず、常に分注プローブの内部に一定量の液体を吸引することが可能となる。このため、試料や試薬を正確に分注することが可能となり、自動分析設備において正確な分析を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1及び図2は、本発明の実施の形態である分注装置及び分注プローブユニットを示したものである。ここで例示する分注プローブユニット100は、自動分析設備において試料や試薬等の液体の分注を行う場合に適用するもので、分注プローブ110及び圧力容器120を備えている。
【0023】
分注プローブ110は、ガラス等、比較的硬質で圧力が加わった場合にも容易に変形することない材質によって成形したもので、横断面が一様な円形の管状に形成してある。本実施の形態では、図2に示すように、外径寸法dが同一で、互いに長さの異なる複数種類の分注プローブ110(a,b,c,d,e)が用意してある。これら複数の分注プローブ110(a,b,c,d,e)は、それぞれの内部容積が自動分析設備で必要となる複数の分注量と等しくなるように構成してある。また、複数の分注プローブ110(a,b,c,d,e)には、個々の一端面112から互いにほぼ同一となる外周面にそれぞれ突起111が設けてある。
【0024】
圧力容器120は、分注プローブ110よりも十分に大きな横断面積を有した中空部材であり、配管取付孔121及びプローブ挿通孔122を有している。配管取付孔121は、圧力容器120の一端壁において内部と外部とを連通する開口である。この配管取付孔121の開口周縁部となる部位には、流体管路10を装着するための円筒状の配管取付部123が突設してある。プローブ挿通孔122は、圧力容器120の他端壁において内部と外部とを連通する開口であり、上述した分注プローブ110を嵌合挿通することのできる内径に形成してある。
【0025】
この圧力容器120には、その内部に底座部材124及び一対の電極125が設けてある。底座部材124は、ゴム等の弾性材料によって成形し、圧力容器120の内部に嵌着可能となる横断面積を有したもので、プローブ挿通孔122を形成した他端壁内面に密着する態様で配設してある。この底座部材124には、プローブ挿通孔122に対応する部位にプローブ装着孔126が貫設してある。プローブ装着孔126は、分注プローブ110の外径dよりもわずかに小さい内径に構成したもので、分注プローブ110を挿入した場合に外周面に密着し、分注プローブ110との間に水密性を確保することが可能である。図1に明示するように、圧力容器120のプローブ挿通孔122に分注プローブ110の一端部を装着し、かつ圧力容器120の他端壁外表面と突起111との間に予め設定した間隙を確保した状態にある場合、分注プローブ110の一端面112が圧力容器120の内部において底座部材124の内表面124aよりもさらに内方に向けて距離aだけ突出するように、それぞれの寸法が設定してある。
【0026】
一対の電極125は、個々の先端部を底座部材124の内表面124aから距離b(<a)だけ確保した位置に配置し、かつ互いに離隔する態様で配設してある。これら一対の電極125間には、図2に示すように、抵抗値検出部130が設けてある。抵抗値検出部130は、一対の電極125間の電気抵抗値を検出し、その検出結果を後述する分注制御部140に与えるものである。
【0027】
一方、上記圧力容器120には、配管取付部123に三方バルブ20を備えた流体管路10が装着してある。三方バルブ20の一方にはシリンジポンプ30が接続してあり、また、三方バルブ20の他方には洗浄用ポンプ40が接続してある。洗浄用ポンプ40は、洗浄液槽50に貯留した洗浄液Sを供給するためのものである。
【0028】
図3は、上述した分注装置の制御系を示す機能ブロック図である。図3に示す分注制御部140は、予めメモリ141に格納したプログラムやデータに従って、さらには抵抗値検出部130からの検出結果に応じてプローブ駆動部142、シリンジ駆動部143、ポンプ駆動部144、バルブ駆動部145を統括的に制御することにより、自動分析設備において分注装置に所望の分注動作を行わせるものである。
【0029】
プローブ駆動部142は、分注制御部140から与えられた駆動信号に応じて圧力容器120を上下方向及び水平方向に沿って移動させ、圧力容器120のプローブ挿通孔122に挿通させた分注プローブ110を所望の位置、例えば試料容器位置P1、反応容器位置P2及び洗浄位置P3に移動させるものである。シリンジ駆動部143は、分注制御部140から与えられた駆動信号に応じてシリンジポンプ30のピストン31を動作させるものである。ポンプ駆動部144は、分注制御部140から与えられた駆動信号に応じて洗浄用ポンプ40を駆動するものである。バルブ駆動部145は、分注制御部140から与えられた駆動信号に応じて三方バルブ20を切り替え動作させるものである。
【0030】
図4−1〜図4−4は、上述した分注装置の動作を順に示す概念図である。以下、これらの図を適宜参照しながら、分注制御部140の制御内容について説明し、併せて本発明の分注装置及び分注プローブユニットの特徴部分について詳述する。
【0031】
まず、上記分注装置では、必要となる分注量に応じて分注プローブ110が選択され、選択された分注プローブ110が圧力容器120のプローブ挿通孔122に装着されることになる。この場合、上述したように、一端面が底座部材124の内表面124aよりも距離aだけ突出するように分注プローブ110が装着され、かつ分注プローブ110が圧力容器120の他端面から鉛直下方に延在する態様で配置される。
【0032】
この状態において、例えば自動分析設備から試料の分注指令が与えられると、分注制御部140は、プローブ駆動部142を介して分注プローブ110を試料容器位置P1に移動させ、図4−1に示すように、その下端部を試料容器60の試料Tに浸漬させる一方、シリンジ駆動部143を介してシリンジポンプ30のピストン31を動作させることにより、圧力容器120を介して分注プローブ110に負圧を作用させる。さらに、分注制御部140は、抵抗値検出部130を介して一対の電極125の間の電気抵抗値の変化を監視する。
【0033】
図4−1に示す状態において、分注プローブ110の内部に負圧が作用すると、試料容器60の試料Tが順次分注プローブ110に吸引され、その後、図4−2に示すように、分注プローブ110の内部容積を超えて吸引された試料Tが圧力容器120の内部に溢れ出ることになる。圧力容器120の内部に溢れた試料Tが底座部材124の内表面124aから高さbまで貯留されると、一対の電極125の間の電気抵抗値が小さくなり、抵抗値検出部130によってこれが検出されることになる。
【0034】
抵抗値検出部130からの検出結果により、一対の電極125の間の電気抵抗値が小さくなったことを確認した分注制御部140は、シリンジ駆動部143を介してシリンジポンプ30を直ちに停止する。この結果、分注装置は、分注プローブ110の内部が試料Tで満たされる一方、圧力容器120の内部には分注プローブ110の上方部開口112よりも下位に試料Tが貯留された状態となる。
【0035】
シリンジポンプ30を停止させた分注制御部140は、プローブ駆動部142を介して分注プローブ110を反応容器位置P2に移動させ、図4−3に示すように、その下端部を反応容器70の内部に向けた後、シリンジ駆動部143を介してシリンジポンプ30のピストン31を動作させることにより、圧力容器120を介して分注プローブ110に空気圧を加える。この結果、試料容器60から吸引した試料Tが反応容器70に注出されることになる。この場合、予めシリンジポンプ30の内部に空気を吸引しておき、試料Tを注出する際にこの空気を含めれば、試料Tが勢いよく吐出されることになり、分注プローブ110に試料Tが残留する事態を防止することができる。この方法は、分注量が微量であるほど有効である。
【0036】
ここで、上記分注装置によれば、分注プローブ110の上方部開口112が圧力容器120に貯留された試料Tの液面よりも上方に位置しているため、シリンジポンプ30の動作量に関わらず、反応容器70に注出されるのは、分注プローブ110を満たしていた試料Tのみであり、分注プローブ110から溢れ出て圧力容器120に貯留された試料Tはそのまま圧力容器120の内部に留まることになる。つまり、分注プローブ110の内部容積に等しい試料Tのみが反応容器70に注出されることになる。しかも、分注プローブ110から注出される試料Tの量は、その内部容積によって決定されるものであり、シリンジポンプ30との間を接続する流体管路10が如何に変形しようとも何ら影響を受けることがない。従って、流体管路10として可撓性を有したものを適用した場合であっても、圧力による変形や経時変化の有無に関わらず、常に分注プローブ110の内部に一定量の液体を吸引し、これを反応容器70に分注することが可能となり、自動分析設備において正確な分析を行うことができるようになる。
【0037】
反応容器70への試料Tの分注を終了した分注制御部140は、プローブ駆動部142を介して分注プローブ110を洗浄位置P3へ移動させ、まず、図示せぬ引掛棒に突起111を係合させることにより、圧力容器120から分注プローブ110を抜去する動作を行う。その後、分注制御部140は、図4−4に示すように、ポンプ駆動部144を介して洗浄用ポンプ40を駆動し、洗浄液槽50に貯留された洗浄液Sを圧力容器120の内部に供給する。この結果、圧力容器120の内部において試料Tが接触した部分を洗浄し、洗浄後の洗浄液Sを洗浄容器80に排出することができるようになる。圧力容器120から抜去した分注プローブ110は、そのまま廃棄しても良いし、別途洗浄して再使用しても構わない。
【0038】
以下、上述した動作を繰り返し行うことにより、自動分析設備において試料容器60の試料Tを反応容器70に正確に分注することが可能となる。分注量を変更する場合には、変更後の分注量に等しい内部容積を有した分注プローブ110を圧力容器120に付け替えれば良い。
【0039】
以上説明したように、上記分注装置によれば、分注プローブ110の上方部開口112から試料Tが溢れるまで圧力容器120を介して負圧を作用させれば、分注プローブ110に至る流体管路10として可撓性を有したものを適用した場合であっても、圧力による変形や経時変化の有無に関わらず、常に分注プローブ110の内部に一定量の液体を吸引することが可能となる。このため、試料T等の液体を正確に分注することが可能となり、自動分析設備において正確な分析を行うことができるようになる。この場合、シリンジポンプ30の駆動に関しては、ピストン31の移動量にシビアな制御を要求されることもなく、単に分注プローブ110の上方部開口112から試料Tが溢れるまで負圧を作用させるだけで良いため、例えば駆動時間でシリンジポンプ30を制御することさえ可能である。
【0040】
尚、上述した実施の形態では、圧力容器120に対して分注プローブ110を着脱可能に配設し、圧力容器120を洗浄する場合に分注プローブ110を取り外すようにしているが、必ずしも着脱させる必要はなく、圧力容器を洗浄する場合に分注プローブの上方部開口が圧力容器の底部内面以下に移動できれば十分である。
【0041】
図5〜図7は、実施の形態で示した分注プローブユニット100の変形例を示したものである。この変形例の分注プローブユニット100′では、圧力容器120′に凸部127を設ける一方、分注プローブ110にカップ部材115を付設してある。凸部127は、圧力容器120′の他端部外周面に設けた一条の円環状部分である。カップ部材115は、圧力容器120′の他端部外周に装着することのできる大きさに形成した有底の円筒状部材であり、底壁の中央部に分注プローブ110′が固定してある。このカップ部材115には、2つの凹溝116,117が設けてある。2つの凹溝116,117は、それぞれ圧力容器120′の凸部127を収容することのできる円環状凹部であり、分注プローブ110′の軸心に沿う態様でカップ部材115に互いに並設してある。図からも明らかなように、カップ部材115の下方に形成した凹溝117に圧力容器120′の凸部127を合致させた場合には、分注プローブ110′の一端面112が圧力容器120′の内部において底座部材124の内表面124aよりもさらに内方に向けて距離aだけ突出する一方、カップ部材115の上方に形成した凹溝116に凸部127を合致させた場合には、図7に示すように、分注プローブ110′の一端面112が底座部材124の内表面124a以下となるようにそれぞれの寸法が設定してある。
【0042】
尚、この変形例においても分注プローブ110′は、ガラス等、比較的硬質で圧力が加わった場合にも容易に変形することない材質によって成形してある。また、外径寸法dが同一で、互いに長さの異なる複数種類の分注プローブ110′が用意してあるのも、上述した実施の形態と同様である。その他、実施の形態と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略している。
【0043】
この変形例においても、まず、必要となる分注量に応じて分注プローブ110′が選択され、選択された分注プローブ110′が圧力容器120′のプローブ挿通孔122に装着されることになる。この場合、図5に示すように、分注プローブ110′の一端面112が底座部材124の内表面124aよりも距離aだけ突出するようにカップ部材115の下方に形成した凹溝117に圧力容器120′の凸部127を合致させる態様で分注プローブ110′が装着され、かつ分注プローブ110′が圧力容器120′の他端面から鉛直下方に延在する態様で配置される。
【0044】
この状態においては、変形例の分注プローブユニット100′が上述した実施の形態と同様の構成となるため、図4−1〜図4−3と同様の動作を行うことにより、試料容器60からの試料Tの吸引、反応容器70への試料Tの注出を正確に行うことが可能となる。
【0045】
一方、反応容器70への試料Tの分注を終了した後においては、プローブ駆動部142を介して分注プローブ110′を洗浄位置P3へ移動させ、この状態から図示せぬ引掛棒に突起111を係合させることにより、図7に示すように、カップ部材115の上方に形成した凹溝116に圧力容器120′の凸部127が合致するように分注プローブ110′をスライドさせる動作を行う。この状態からポンプ駆動部144を介して洗浄用ポンプ40を駆動し、洗浄液槽50に貯留された洗浄液Sを圧力容器120′の内部に供給すれば、圧力容器120′の内部において試料Tが接触した部分、並びに分注プローブ110′において試料Tが接触した部分を洗浄することができるようになり、これら圧力容器120′及び分注プローブ110′を繰り返し使用した場合にも、コンタミネーションの問題を招来する虞れがなくなる。
【0046】
この変形例においても、分注プローブ110′の上方部開口112から試料Tが溢れるまで圧力容器120′を介して負圧を作用させれば、分注プローブ110′に至る流体管路10として可撓性を有したものを適用した場合であっても、圧力による変形や経時変化の有無に関わらず、常に分注プローブ110′の内部に一定量の液体を吸引することが可能となる。このため、試料T等の液体を正確に分注することが可能となり、自動分析設備において正確な分析を行うことができるようになる。この場合、シリンジポンプ30の駆動に関しては、ピストン31の移動量にシビアな制御を要求されることもなく、単に分注プローブ110′の上方部開口112から試料Tが溢れるまで負圧を作用させるだけで良いため、例えば駆動時間でシリンジポンプ30を制御することさえ可能である。
【0047】
尚、上述した実施の形態及び変形例では、試料Tを分注するものを例示しているが、検体や試薬等、その他の液体を分注するものにももちろん適用することが可能である。
【0048】
また、上述した実施の形態及び変形例では、分注プローブ110,110′の上方部開口112から圧力容器120,120′に液体が溢れたことを検出するようにしているため、無駄になる試料Tを可及的に低減することができるが、必ずしも液体を検出する手段を設ける必要はない。また、液体検出手段を設ける場合に上述した実施の形態及び変形例では、一対の電極125の間の電気抵抗値が変化した場合に分注プローブ110,110′の上方部開口112から圧力容器120,120′に液体が溢れたことを検出するようにしているが、本発明ではこれに限定されず、例えば光学センサや静電センサを適用して液体が溢れることを検出するように構成することも可能である。また、液体を検出するための光学センサや静電センサは必ずしも圧力容器120′の内部に設ける必要はない。
【0049】
さらに、上述した実施の形態及び変形例では、圧力容器120,120′の内部に底座部材124を設け、この底座部材124の内表面124aを底部内面として分注プローブ110,110′の上方部開口112の位置を規定するようにしているが、必ずしも底座部材124を設ける必要はない。この場合には、圧力容器120,120′の底部内面を基準として分注プローブ110,110′の上方部開口112の位置を規定すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態である分注装置を示す概念図である。
【図2】図1に示した分注装置に適用する分注プローブユニットの分解断面図である。
【図3】図1に示した分注装置の制御系を示す機能ブロック図である。
【図4−1】図1に示した分注装置の動作を示す概念図である。
【図4−2】図1に示した分注装置の動作を示す概念図である。
【図4−3】図1に示した分注装置の動作を示す概念図である。
【図4−4】図1に示した分注装置の動作を示す概念図である。
【図5】図1に示した分注装置の変形例を示す概念図である。
【図6】図5に示した分注装置に適用する分注プローブユニットの分解断面図である。
【図7】図5に示した分注装置の動作を示す概念図である。
【符号の説明】
【0051】
10 流体管路
20 三方バルブ
30 シリンジポンプ
31 ピストン
40 洗浄用ポンプ
50 洗浄液槽
60 試料容器
70 反応容器
80 洗浄容器
100,100′ 分注プローブユニット
110,110′ 分注プローブ
111 突起
112 一端面
112 上方部開口
115 カップ部材
116,117 凹溝
120,120′ 圧力容器
121 配管取付孔
122 プローブ挿通孔
123 配管取付部
124 底座部材
124a 底座部材の内表面
125 電極
126 プローブ装着孔
127 凸部
130 抵抗値検出部
140 分注制御部
141 メモリ
142 プローブ駆動部
143 シリンジ駆動部
144 ポンプ駆動部
145 バルブ駆動部
T 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部が開口した分注プローブを備え、この分注プローブの下方部開口を液体に浸漬させた状態で上方部開口から負圧を作用させることにより、前記分注プローブの内部に液体を吸引するようにした分注装置において、
分注プローブの上端部を囲繞し、かつ底部内面を前記分注プローブの上方部開口よりも下方に位置させる態様で圧力容器を設け、この圧力容器を介して前記分注プローブに負圧を作用させることを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記分注プローブの上方部開口が前記圧力容器の底部内面以下に占位可能となる態様で前記圧力容器に対して前記分注プローブを移動可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記圧力容器に対して前記分注プローブを着脱可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項4】
前記圧力容器に洗浄水を供給する洗浄水供給手段を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の分注装置。
【請求項5】
前記分注プローブの上方部開口から前記圧力容器に液体が溢れたことを検出する液体検出手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項6】
前記液体検出手段は、前記圧力容器の内部において前記分注プローブの上方部開口よりも下方となる位置に配設した一対の電極を備え、これら電極間の電気抵抗値の変化に基づいて液体が溢れたか否かを検出するものであることを特徴とする請求項5に記載の分注装置。
【請求項7】
一端部開口を液体に浸漬させた状態で他端部開口から負圧が作用された場合に、内部に液体を吸引する分注プローブを備えた分注プローブユニットにおいて、
分注プローブの他端部を囲繞し、かつ内面から前記分注プローブの他端部が内部に突出する態様で圧力容器を設けたことを特徴とする分注プローブユニット。
【請求項8】
前記圧力容器の内部に突出した分注プローブの他端部開口が前記圧力容器の内面以下に占位可能となる態様で前記圧力容器に対して分注プローブを移動可能に設けたことを特徴とする請求項7に記載の分注プローブユニット。
【請求項9】
前記圧力容器に対して前記分注プローブを着脱可能に設けたことを特徴とする請求項7に記載の分注プローブユニット。
【請求項10】
前記分注プローブの他端部開口を上方に向けて配置した場合に、この他端部開口から圧力容器に液体が溢れたことを検出する液体検出手段を設けたことを特徴とする請求項7に記載の分注プローブユニット。
【請求項11】
前記液体検出手段は、前記圧力容器の内部において分注プローブの他端部開口よりも内面に近接した部位に一対の電極を備え、これら電極間の電気抵抗値の変化に基づいて液体が溢れたか否かを検出するものであることを特徴とする請求項10に記載の分注プローブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−278887(P2007−278887A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106472(P2006−106472)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】