説明

分注装置及び分注方法

【課題】比重や運動粘性係数を予め個々に測定しなくとも、数μL以下の微小量の液体試料を正確に分注することが可能な分注装置及び分注方法を提供すること。
【解決手段】配管14によって接続された分注ノズル2とシリンジポンプ6とを備え、シリンジポンプによって分注ノズルから液体試料を配管内に空気層を介して吸引し、吸引した液体試料を所定量吐出して分注を行う分注装置1及び分注方法。分注装置1は、分注ノズル2とシリンジポンプ6との間の分注ノズル近傍に配置される弁3と、分注ノズルから空気層を介して液体試料を吸引する吸引時に弁を開弁し、液体試料の吸引終了時に弁を閉弁し、分注ノズルとシリンジポンプとの間の空気層をシリンジポンプを作動させて圧縮した後、圧縮した空気層の圧力を直接作用させて液体試料を分注ノズルから所定量吐出させるように弁を開弁させる制御回路10とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を分注する分注装置及び分注方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分注装置は、単独で、或いは分析装置に組み込んで使用され、例えば、血清等の検体や試薬等を含む液体試料を反応容器に分注する。この種の分注装置は、シリンジポンプを駆動して分注ノズルから洗浄液を満たした配管内に空気層を介して液体試料を吸引し、吐出することによって分注を行っている。この場合、従来の分注装置は、シリンジポンプのピストンの移動量によって分注量を制御し、ピストンの移動に伴う圧力変化を空気層を介して間接的に液体試料に伝えることで吸引と吐出を行っている。このため、従来の分注装置は、数μL以下の微小量の液体試料を分注しようとすると、ピストンの移動量が僅かなことからピストンの移動に伴う圧力増加分が空気層に吸収され、圧力損失が生じてしまう。しかも、従来の分注装置は、圧力損失による吐出圧力の低下により、分注ノズルの吐出口における表面張力の影響が大きくなって液体試料がノズル先端に付着してしまう結果、正確な量の液体試料を分注できなくなるという問題があった。このため、液体試料がノズル先端に付着してしまう問題を解決する分注装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−264341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された分注装置は、分注ノズルの吐出口における吐出圧力が表面張力を上回るように、吐出口や配管の直径、液体試料の比重或いは運動粘性係数などを含む係数等、流体力学上の要素を規定している。この場合、分注装置におけるこれら流体力学上の要素のうち、試薬の比重や運動粘性係数等は、予め測定しておくことができる。しかし、血清等の検体は、比重や運動粘性係数が検体毎に広範囲に変化するうえ、予め個々に測定したのでは測定作業が煩雑を極めてしまう。このため、特許文献1の分注装置は、数μL以下の微小量の液体試料を正確に分注することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、比重や運動粘性係数を予め個々に測定しなくとも、数μL以下の微小量の液体試料を正確に分注することが可能な分注装置及び分注方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る分注装置は、配管によって接続された分注ノズルとシリンジポンプとを備え、前記シリンジポンプによって前記分注ノズルから液体試料を配管内に空気層を介して吸引し、吸引した液体試料を所定量吐出して分注を行う分注装置において、前記分注ノズルと前記シリンジポンプとの間の前記分注ノズル近傍に配置される弁と、前記分注ノズルから前記空気層を介して液体試料を吸引する吸引時に前記弁を開弁し、前記液体試料の吸引終了時に前記弁を閉弁し、前記分注ノズルと前記シリンジポンプとの間の空気層を前記シリンジポンプを作動させて圧縮した後、圧縮した前記空気層の圧力を直接作用させて前記液体試料を前記分注ノズルから所定量吐出させるように前記弁を開弁させる制御手段と、を設けたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る分注装置は、上記の発明において、前記圧縮される空気層の量は、前記分注ノズルから吐出する前記液体試料の吐出量以上であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る分注装置は、上記の発明において、さらに、圧縮される前記空気層の温度を一定に保持する温度制御装置を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る分注装置は、上記の発明において、さらに、圧縮される前記空気層の圧力を検出する圧力センサを設け、前記制御手段は、前記圧力センサが検出した前記空気層の圧力をもとに前記弁の開閉タイミングを制御することを特徴とする。
【0010】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項5に係る分注方法は、空気層を介して液体試料を吸引し、吸引した液体試料を所定量吐出して分注を行う分注方法であって、前記空気層を圧縮し、圧縮した前記空気層の圧力を直接作用させて前記液体試料を所定量吐出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる分注装置及び分注方法は、圧縮した空気層の圧力を直接作用させて液体試料を分注ノズルから吐出させるので、液体試料の比重や運動粘性係数を予め個々に測定しなくともよいうえ、圧力損失の発生が抑えられる。また、分注ノズルは、圧力損失による吐出圧力の低下に起因した吐出口における表面張力の影響の増大が抑制されるため、液体試料がノズル先端に付着することがなくなり、数μL以下の微小量の液体試料であっても分注量が正確になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の分注装置及び分注方法にかかる実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の分注方法を実行する実施の形態1の分注装置の構成を示すブロック図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る分注方法を分注ノズル及び配管へ空気層を介して液体試料を吸引し、吐出する各過程に従って模式的に説明する説明図である。
【0013】
分注装置1は、図1に示すように、分注ノズル2、弁3、三方弁5、シリンジポンプ6、洗浄水タンク8及び制御回路10を備えており、単独で使用される他、分析装置に組み込んで使用される。
【0014】
分注ノズル2は、駆動手段によって移動されて検体容器や試薬容器が配置された検体分注位置や試薬分注位置へ移動され、吸引した検体や試薬を反応容器が配置された吐出位置へ移動される。また、分注ノズル2は、検体や試薬を反応容器に吐出した後は、洗浄位置へ移動されて洗浄液によって洗浄される。
【0015】
弁3は、分注ノズル2とシリンジポンプ6との間の分注ノズル2近傍に配置され、配管14によって三方弁5及び洗浄水タンク8と接続されている。三方弁5は、配管14によってシリンジポンプ6と接続されている。シリンジポンプ6は、分注ノズル2に検体や試薬を含む液体試料を吸引し、吸引した液体試料を検体容器位置、試薬容器位置、検体分注位置或いは試薬分注位置等に吐出するポンプであり、ポンプ駆動部7によってピストン6aが往復動される。
【0016】
洗浄水タンク8は、脱気した洗浄水Wcを貯留している。洗浄水Wcは、シリンジポンプ6によって吸い上げられた後、三方弁5を切り替えることにより、弁3側へ圧送される。
【0017】
制御回路10は、弁3の開閉タイミングを制御すると共に、三方弁5及びポンプ駆動部7の作動を制御するもので、電子制御装置(ECU)等が使用される。
【0018】
以上のように構成される分注装置1は、以下に説明する分注方法によって検体や試薬を含む液体試料を分注する。但し、実施の形態1を含め以下に説明する各実施の形態においては、説明を簡単にするため、検体を分注する場合に限定して説明する。
【0019】
先ず、弁3を閉じた状態で分注ノズル2を洗浄位置へ移動した後、制御回路10による制御の下に、シリンジポンプ6と洗浄水タンク8とが接続されるように三方弁5を切り替える。
【0020】
次に、制御回路10の制御の下、ポンプ駆動部7によってシリンジポンプ6のピストン6aを駆動し、洗浄水タンク8内の洗浄水Wcを配管14からシリンジポンプ6内に吸引する。次いで、制御回路10の制御の下に、分注ノズル2と三方弁5とが接続されるように三方弁5を切り替え、弁3を開く。
【0021】
その後、制御回路10の制御の下、ポンプ駆動部7によってシリンジポンプ6のピストン6aを駆動し、洗浄水タンク8からシリンジポンプ6内に吸引した洗浄水Wcを三方弁5及び弁3を経由して分注ノズル2から吐出する。これにより、分注ノズル2を洗浄すると共に、分注ノズル2と配管14内を洗浄水Wcで満たす(図2(1)参照)。ここで、図2において、点線は弁3の開弁を、実線は弁3の閉弁を、それぞれ示しており、以下の図面においても同様とする。
【0022】
次に、分注ノズル2を検体容器位置へ移動し、制御回路10の制御の下、分注予定の検体の分注量(1目盛り)の6倍(6目盛り)の空気を吸引する(図2(2)参照)。このとき、弁3は、開弁状態にある。次いで、制御回路10の制御の下、分注ノズル2の下端を検体容器中に所定量挿入し、分注量分(1目盛り)の検体Lsを分注ノズル2に吸引し、洗浄水Wcと検体Lsとの間に空気層Laを形成する(図2(3)参照)。
【0023】
その後、制御回路10の制御の下、弁3を閉弁し、分注ノズル2を検体分注位置へ移動させる。そして、制御回路10の制御の下、ポンプ駆動部7によってシリンジポンプ6を駆動し、弁3とシリンジポンプ6との間の分注量を超える量(4目盛り分)の空気層Laを分注量(1目盛り分)まで圧縮する(図2(4)参照)。
【0024】
次に、制御回路10の制御の下、弁3を開弁し、圧縮した空気層Laの圧力を直接作用させて検体Lsを分注ノズル2から液滴として反応容器等へ吐出させる(図2(5)参照)。このとき、弁3とシリンジポンプ6との間の空気層Laは、分注量を超える量(4目盛り分)が分注量(1目盛り分)まで圧縮され、空気層Laの圧力が直接検体Lsに作用するので、圧力増加分が空気層Laに吸収されることはなく、検体Lsの表面張力の影響が大きくなることはない。このため、分注ノズル2に吸引された分注量(1目盛り分)の検体Lsは、分注ノズル2に付着することなく残らず分注ノズル2から吐出される。
【0025】
分注装置1は、以下、同様の作動を繰り返すことにより、検体容器位置と検体分注位置との間を往復しながら検体を反応容器等へ分注する。
【0026】
従って、分注装置1は、上述の分注方法によって液体試料を分注するので、液体試料の比重や運動粘性係数を予め個々に測定しなくとも、数μL以下の微小量の液体試料を正確に、しかも簡易に分注することができる。
【0027】
(実施の形態2)
次に、本発明の分注方法にかかる実施の形態2について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1の分注方法は、吸引した液体試料を1回で分注する場合について説明したが、実施の形態2の分注方法は、吸引した液体試料を複数回に分けて分注する場合について説明する。ここで、実施の形態2の分注方法は、実施の形態1の分注装置1を使用するので、分注装置1と同一の構成要素には同一の符号を使用している。図3は、本発明の実施の形態2に係る分注方法を分注ノズル及び配管へ空気層を介して液体試料を吸引し、吐出する各過程に従って模式的に説明する説明図である。
【0028】
先ず、弁3を閉じた状態で分注ノズル2を洗浄位置へ移動した後、制御回路10による制御の下に、シリンジポンプ6と洗浄水タンク8とが接続されるように三方弁5を切り替える。
【0029】
次に、制御回路10の制御の下、ポンプ駆動部7によってシリンジポンプ6のピストン6aを駆動し、洗浄水タンク8内の洗浄水Wcを配管14からシリンジポンプ6内に吸引する。次いで、制御回路10の制御の下に、分注ノズル2と三方弁5とが接続されるように三方弁5を切り替え、弁3を開く。
【0030】
その後、制御回路10の制御の下、ポンプ駆動部7によってシリンジポンプ6のピストン6aを駆動し、洗浄水タンク8からシリンジポンプ6内に吸引した洗浄水Wcを三方弁5及び弁3を経由して分注ノズル2から吐出する。これにより、分注ノズル2を洗浄すると共に、分注ノズル2と配管14内を洗浄水Wcで満たす(図3(1)参照)。
【0031】
次に、分注ノズル2を検体容器位置へ移動し、制御回路10の制御の下、分注予定の検体の分注量(1目盛り)の4倍(4目盛り)の空気を吸引する(図3(2)参照)。このとき、弁3は、開弁状態にある。次いで、制御回路10の制御の下、分注ノズル2の下端を検体容器中に所定量挿入し、分注量の2倍(2目盛り)の検体Lsを分注ノズル2に吸引し、洗浄水Wcと検体Lsとの間に空気層Laを形成する(図3(3)参照)。
【0032】
その後、制御回路10の制御の下、弁3を閉弁し、分注ノズル2を検体分注位置へ移動させる。そして、制御回路10の制御の下、ポンプ駆動部7によってシリンジポンプ6を駆動し、弁3とシリンジポンプ6との間の3目盛り分の空気層Laを分注量の1目盛り分だけ圧縮し、元の体積の2/3とする(図3(4)参照)。
【0033】
次に、制御回路10の制御の下、弁3を開弁し、圧縮した空気層Laの圧力を直接作用させて検体Lsを分注ノズル2から液滴として吐出させる(図3(5)参照)。このとき、弁3とシリンジポンプ6との間の空気層Laは、分注量の1目盛り分だけ圧縮され、この1目盛り分に相当する空気層Laの圧力が直接検体Lsに作用するので、圧力増加分が空気層Laに吸収されることはなく、検体Lsの表面張力の影響が大きくなることはない。このため、分注ノズル2に吸引された2目盛り分の検体Lsは、半分の1目盛り分の検体Lsが分注ノズル2に付着することなく残らず吐出される。
【0034】
次いで、制御回路10の制御の下、ポンプ駆動部7によってシリンジポンプ6を駆動し、弁3とシリンジポンプ6との間の2目盛り分の空気層Laを分注量の1目盛り分まで半分に圧縮する(図3(6)参照)。その後、制御回路10の制御の下、弁3を開弁し、圧縮した空気層Laの圧力を直接作用させて検体Lsを分注ノズル2から液滴として吐出させる(図3(7)参照)。このとき、弁3とシリンジポンプ6との間の空気層Laは、分注量の1目盛り分だけ半分に圧縮され、この1目盛り分に相当する空気層Laの圧力が直接検体Lsに作用するので、圧力増加分が空気層Laに吸収されることはなく、検体Lsの表面張力の影響が大きくなることはない。このため、分注ノズル2に残る1目盛り分の検体Lsは、分注ノズル2に付着することなく残らず吐出される。
【0035】
従って、分注装置1は、上述の分注方法によって液体試料を分注するので、液体試料の比重や運動粘性係数を予め個々に測定しなくとも、数μL以下の微小量の液体試料を正確に、しかも簡易に分注することができる。また、空気層Laは、少なくとも分注量の1目盛り分だけ圧縮されていれば、分注量分の液体試料を残らず吐出することができる。
【0036】
(実施の形態3)
次に、本発明の分注装置及び分注方法にかかる実施の形態3について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1の分注装置及び分注方法は、弁とシリンジポンプの間の空気層を温度管理することなく圧縮した。これに対して、実施の形態3の分注装置及び分注方法は、弁とシリンジポンプの間の空気層を温度管理して圧縮している。ここで、実施の形態3の分注装置は、実施の形態1の分注装置1と同一の構成要素には同一の符号を使用している。図4は、本発明の分注方法を実行する実施の形態3の分注装置の構成を示すブロック図である。図5は、本発明の実施の形態3に係る分注方法を分注ノズル及び配管へ空気層を介して液体試料を吸引し、吐出する各過程に従って模式的に説明する説明図である。
【0037】
実施の形態3の分注装置20は、実施の形態1の分注装置1に関して、弁3と三方弁5を接続する配管14の弁3側に圧力センサ4を設けると共に、圧力センサ4が検出した空気層Laの圧力情報を記憶する記憶回路11を制御回路10に設け、圧力センサ4の近傍に温度制御装置15を設置したものである。
【0038】
圧力センサ4は、シリンジポンプ6によって圧縮される空気層Laの圧力を検出する。記憶回路11は、圧力センサ4が検出した圧力情報を記憶する。制御回路10は、記憶回路11が記憶した空気層Laの圧力情報をもとに弁3の開閉を制御する。また、温度制御装置15は、配管14内で圧縮される空気層Laの温度を一定に保持するもので、断熱圧縮によって発生する圧縮熱を冷却することにより空気層Laの温度を一定に保持するペルチェ素子等の冷却手段が使用される。
【0039】
以上のように構成される分注装置20は、以下に説明する分注方法によって検体を分注する。先ず、温度説明装置15を起動し、弁3を閉じた状態で分注ノズル2を洗浄位置へ移動した後、制御回路10による制御の下に、シリンジポンプ6と洗浄水タンク8とが接続されるように三方弁5を切り替える。
【0040】
次に、制御回路10の制御の下、ポンプ駆動部7によってシリンジポンプ6のピストン6aを駆動し、洗浄水タンク8内の洗浄水Wcを配管14からシリンジポンプ6内に吸引する。次いで、制御回路10の制御の下に、分注ノズル2と三方弁5とが接続されるように三方弁5を切り替え、弁3を開く。
【0041】
その後、制御回路10の制御の下、ポンプ駆動部7によってシリンジポンプ6のピストン6aを駆動し、洗浄水タンク8からシリンジポンプ6内に吸引した洗浄水Wcを三方弁5及び弁3を経由して分注ノズル2から吐出する。これにより、分注ノズル2を洗浄すると共に、分注ノズル2と配管14内を洗浄水Wcで満たす(図5(1)参照)。
【0042】
次に、分注ノズル2を検体容器位置へ移動し、制御回路10の制御の下、分注予定の検体の分注量(1目盛り)の6倍(6目盛り)の空気を吸引する(図5(2)参照)。このとき、弁3は、開弁状態にある。次いで、制御回路10の制御の下、分注ノズル2の下端を検体容器中に所定量挿入し、分注量の2倍(2目盛り)の検体Lsを分注ノズル2に吸引し、洗浄水Wcと検体Lsとの間に空気層Laを形成する(図5(3)参照)。
【0043】
その後、制御回路10の制御の下、弁3を閉弁し、分注ノズル2を第一の検体分注位置へ移動させる。そして、制御回路10の制御の下、ポンプ駆動部7によってシリンジポンプ6を駆動し、弁3とシリンジポンプ6との間の5目盛り分の空気層Laを分注量の2目盛り分迄圧縮し、元の体積の2/5とする(図5(4)参照)。このとき、弁3とシリンジポンプ6との間の空気層Laは、圧力センサ4によって圧力がモニタされ、モニタした圧力情報は、記憶回路11に記憶される。従って、このときモニタされた空気層Laの圧力を、例えばP0とする。
【0044】
次に、制御回路10の制御の下、弁3を開弁し、圧縮した空気層Laの圧力を直接作用させて1目盛り分の検体Lsを分注ノズル2から液滴として吐出させる(図5(5)参照)。このとき、圧縮した空気層Laは、図4に示すように、温度制御装置15によって温度が一定に保持されている。このため、ボイルの法則により空気層Laの圧力と体積の積は一定で、3目盛り×P0=k(一定)となる。従って、1目盛り分の検体Lsを吐出して4目盛り分となった空気層Laの圧力P1は、4目盛り×P1=k(一定)より、P1=3/4×P0になる。従って、制御回路10は、圧力センサ4によってモニタされる圧力が3/4×P0になったら弁3を閉弁し、1回目の分注を終了させる。
【0045】
次いで、分注ノズル2を第二の検体分注位置へ移動し、制御回路10の制御の下、ポンプ駆動部7によってシリンジポンプ6を駆動し、圧力がP0に戻る迄、空気層Laを圧縮する(図5(6)参照)。このとき、制御回路10は、圧力センサ4から出力される圧力情報によって空気層Laの圧力をモニタする。
【0046】
その後、制御回路10の制御の下、弁3を開弁し、圧縮した空気層Laの圧力を直接作用させて検体Lsを分注ノズル2から液滴として吐出させる(図5(7)参照)。このとき、弁3とシリンジポンプ6との間の空気層Laは、圧縮分に相当する空気層Laの圧力P0が直接検体Lsに作用するので、圧力増加分が空気層Laに吸収されることはなく、検体Lsの表面張力の影響が大きくなることはない。このため、分注ノズル2に吸引された2目盛り分の検体Lsは、第一及び第二の検体分注位置において、1目盛り分の吐出毎に分注ノズル2に付着することなく残らず吐出される。
【0047】
従って、上述の分注方法によって液体試料を分注するので、液体試料の比重や運動粘性係数を予め個々に測定しなくとも、数μL以下の微小量の液体試料を正確に分注することができる。また、空気層Laは、少なくとも分注量の1目盛り分だけ圧縮されていれば、分注量分の液体試料を残らず吐出することができる。
【0048】
ここで、実施の形態3の分注方法は、検体Lsを吐出する際の空気層Laの圧力がP0と一定であるので、分注量の再現性が向上する。但し、分注量の再現性よりも、分注処理の速度を優先する場合には、空気層を圧縮させず、シリンジポンプ6によって空気層を圧縮させる圧力以上の圧力をシリンジポンプ6に発生させて液体試料を吐出させてもよい。
【0049】
また、実施の形態3の分注装置20は、圧力センサ4によってモニタした空気層Laの圧力に基づいて分注量を制御するので、液体試料の粘性の相違による影響を受けないので、高精度な分注を実現することができる。また、分注装置20は、空気層Laを圧縮した圧力によって液体試料を勢いよく吐出するので、吐出圧が液体試料の表面張力よりも大きく、吐出した液体試料の一部が分注ノズル2の先端に付着することがなく、正確な量の液体試料を分注することができる。
【0050】
更に、分注装置20は、予め圧力センサ4によってモニタした正確な量の液体試料を分注する際の空気層Laの正常な圧力変化データを記憶回路11に記憶させておき、実際に液体試料を分注する際に測定した空気層Laの圧力変化と比較することにより、分注異常を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の分注方法を実行する実施の形態1の分注装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1に係る分注方法を分注ノズル及び配管へ空気層を介して液体試料を吸引し、吐出する各過程に従って模式的に説明する説明図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る分注方法を分注ノズル及び配管へ空気層を介して液体試料を吸引し、吐出する各過程に従って模式的に説明する説明図である。
【図4】本発明の分注方法を実行する実施の形態3の分注装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る分注方法を分注ノズル及び配管へ空気層を介して液体試料を吸引し、吐出する各過程に従って模式的に説明する説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1,20 分注装置
2 分注ノズル
3 弁
4 圧力センサ
5 三方弁
6 シリンジポンプ
7 ポンプ駆動部
8 洗浄水タンク
10 制御回路
14 配管
15 温度制御装置
La 空気層
Ls 検体
Wc 洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管によって接続された分注ノズルとシリンジポンプとを備え、前記シリンジポンプによって前記分注ノズルから液体試料を配管内に空気層を介して吸引し、吸引した液体試料を所定量吐出して分注を行う分注装置において、
前記分注ノズルと前記シリンジポンプとの間の前記分注ノズル近傍に配置される弁と、
前記分注ノズルから前記空気層を介して液体試料を吸引する吸引時に前記弁を開弁し、前記液体試料の吸引終了時に前記弁を閉弁し、前記分注ノズルと前記シリンジポンプとの間の空気層を前記シリンジポンプを作動させて圧縮した後、圧縮した前記空気層の圧力を直接作用させて前記液体試料を前記分注ノズルから所定量吐出させるように前記弁を開弁させる制御手段と、
を設けたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記圧縮される空気層の量は、前記分注ノズルから吐出する前記液体試料の吐出量以上であることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
さらに、圧縮される前記空気層の温度を一定に保持する温度制御装置を設けたことを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項4】
さらに、圧縮される前記空気層の圧力を検出する圧力センサを設け、
前記制御手段は、前記圧力センサが検出した前記空気層の圧力をもとに前記弁の開閉タイミングを制御することを特徴とする請求項3に記載の分注装置。
【請求項5】
空気層を介して液体試料を吸引し、吸引した液体試料を所定量吐出して分注を行う分注方法であって、
前記空気層を圧縮し、圧縮した前記空気層の圧力を直接作用させて前記液体試料を所定量吐出させることを特徴とする分注方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−278835(P2007−278835A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105302(P2006−105302)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】