説明

分注装置用液体容器及び分注装置

【課題】作業者が試薬ボトルを分析装置内の所定の位置に運搬・配置する際に、試薬ボトルから試薬がこぼれないようにする。
【解決手段】上方の開口部22から挿入される分注ノズル12により液体(試薬18)の吸引が行なわれる分注装置用液体容器(試薬ボトル20)において、前記開口部22の長手方向両端に、内側先端が、前記分注ノズル12の挿入方向に曲げられて、且つ、下方にのみ回動自在とされた蓋状部材26を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方の開口部から挿入される分注ノズルにより液体の吸引が行なわれる分注装置用液体容器及び分注装置に係り、特に、創薬スクリーニング分野、バイオテクノロジー、ライフサイエンス分野等で血液等の検体を試薬に反応させ、又は複数種類の試薬同士を反応させて分析を行なう際の液体の分注に用いられる分注装置に試薬ボトルとして用いるに好適な、試薬を貯留した試薬ボトルを分注装置の所定の位置に運搬・配置する際に、試薬ボトルから試薬がこぼれるのを防止することが可能な、分注装置用液体容器、及び、これを用いた分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液等の検体を試薬に反応させ、又は複数種類の試薬同士を反応させて分析を行なう分析装置には、図1に例示する如く、試薬ボトル20に貯蔵された試薬の分注を行なうための複数の分注ノズル12が1列に並んだ分注ヘッド10が設けられている。また、分注ノズル12の先端には着脱可能なノズルチップ14が装着されている。該分注ヘッド10は、試薬ボトル収容部に対して設定された吸引対象位置と、検体等を収容する容器が載置された分注ステージに対して設定された吐出対象位置との間を移動し、且つ、これら吸引対象位置及び吐出対象位置のそれぞれにおいて、それぞれの分注ノズル12は上下方向に移動できるように設けられている。
【0003】
試薬ボトル収容部は、1列に並んだ分注ノズル12と直交する方向に沿って配置されており、それぞれの試薬ボトル20は、ノズルチップ14が装着された複数の分注ノズル12が同時に試薬を吸引することができるように、1列に並んだ分注ノズル12と並行する方向が長手方向となるように開口部22が設けられている。又、各試薬ボトル20には、分析に必要となる液状の試薬が個別に貯留されている。
【0004】
試薬が貯留される試薬ボトル20は、分析装置外でそれぞれ試薬が所定量注がれ、試薬ボトル20を1本ずつ作業者が分析装置内の所定の位置に運搬・配置するか、若しくは、トレイ等に試薬ボトル20を配置し、トレイ毎一括で作業者が分析装置内の所定の位置に運搬・配置するのが一般的である。
【0005】
しかしながら、試薬が貯留された試薬ボトル20を作業者が装置の所定位置に運搬・配置する際に、試薬ボトル20の内部において、試薬の慣性力による流動によって、試薬が試薬ボトル20からこぼれ易いという問題があった。
【0006】
このような問題点を解決するべく、(1)試薬ボトル20に入れる試薬の量を減らすこと、(2)試薬ボトル20を大きくすること、(3)市販製品のように、試薬ボトル20毎に運搬時用の密閉蓋を設けること、(4)特許文献1に記載されているように、試薬ボトル20の開口部22を小さくすると共に、試薬ボトル20の内部に試薬の慣性力による流動を妨げる仕切板(バッファプレート)24を設けることが考えられる。
【0007】
【特許文献1】特開2005−17176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、(1)のように試薬ボトルに入れる試薬の量を減らすと、試薬ボトルを交換する頻度が増えてしまい、作業者の負担が増えてしまう。又、(2)のように試薬ボトルの容量を大きくすると、装置サイズが大きくなってしまう。又、(3)のように試薬ボトル毎に密閉蓋を設けると、試薬ボトルを装置内の所定の位置に配置した後、全ての試薬ボトルの蓋を取り除かなくてはならず、やはり作業者の負担が増えてしまう。又、(4)特許文献1のように開口部22を小さくすると、入口が狭くなるため、特許文献1の例ではノズルが1本しか入れられず、更に、仕切板24を設けると、ノズル位置が仕切板24により制約を受けるという問題点を有する。
【0009】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、運搬・配置の際に液体容器から液体がこぼれないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上方の開口部から挿入される分注ノズルにより液体の吸引が行なわれる分注装置用液体容器において、前記開口部の長手方向両端に、前記分注ノズルの挿入を妨害しない蓋状部材を設けることにより、前記課題を解決したものである。
【0011】
又、前記蓋状部材の内側先端を、前記分注ノズルの挿入方向に曲げることにより、波立った液体を容器内側にはね返すと共に、分注ノズルの動きを円滑にして、分注ノズルからノズルチップが外れないようにしたものである。
【0012】
又、前記蓋状部材を、下方にのみ回動自在として、液体容器をぎりぎりまで小さくできるようにしたものである。
【0013】
本発明は、又、前記の液体容器を備えたことを特徴とする分注装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分析装置外で液体が所定量注がれた液体容器を1本ずつ作業者が分析装置内の所定の位置に運搬・配置するか、若しくは、トレイ等に液体容器を配置し、トレイ毎一括で作業者が分析装置内の所定の位置に運搬・配置する際に、液体容器から液体がこぼれるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
本実施形態は、図3に示す如く、上方から挿入されるノズルチップを装着した複数の分注ノズル(図示省略)が同時に吸引できるように、上面に長方形の開口部22を持つ分注装置用の試薬ボトル20において、前記開口部22の長手方向両端部に、前記ノズルチップ14を装着した分注ノズル12の挿入を妨害しない、先端がR形状に曲げられた蓋状部材26を、図4に示す如く、下方にのみ回動自在に設けたものである。又、蓋状部材26は、復元ばね28の作用により、常に元の位置に戻るように構成されている。
【0017】
以上の構成において、試薬18が貯留された試薬ボトル20を分析装置の所定位置に運搬・配置する際に、試薬ボトル本体の内部において試薬の慣性力による流動によって、試薬18が試薬ボトル20の長手方向に波立つが、試薬ボトル20の開口部22の長手方向両端部に設けられた、先端がR形状の蓋状部材26により、波立った試薬は試薬ボトル20の内側に戻される。なお、開口部22の短辺方向の波立ちは小さく、問題となることはない。
【0018】
又、先端がR形状の蓋状部材26は、下方に回動自在に支持されているために、図4に示す如く、ノズルチップ14を装着した複数の分注ノズル12が同時に試薬を吸引するために下降した際は、蓋状部材26がノズルチップ14に押されて下側の容器内側に回動する。又、分注ノズル12が上昇する際には、蓋状部材26の先端がR形状となっているため、分注ノズル12に装着されたノズルチップ14が上昇するのを妨げることがなく、復元ばね28の作用により元の位置に戻る。
【0019】
本実施形態においては、蓋状部材26の内側先端を、分注ノズル12の挿入方向に曲げているので、試薬ボトル20内で波立った試薬18を再び下方に戻すことができると共に、分注ノズルの動作を円滑にして、分注ノズル12からノズルチップ14が外れないようにすることができる。
【0020】
又、蓋状部材26を、下方に回動自在に支持しているので、ノズルチップ14を装着した複数の分注ノズル12が同時に試薬を吸引する際に、試薬ボトル20で分注ノズル12の上下動作を妨げることはない。従って、分注ノズル12を試薬ボトル20の側壁にぎりぎりまで近付けて配置することができ、分注ノズル12との干渉を避けるために、必要以上に試薬ボトル20を大きくする必要が無い。
【0021】
なお、蓋状部材26の形状や動きは、本実施形態に限定されない。
【0022】
前記説明においては、本発明が、分注装置の試薬ボトルに適用されていたが、本発明の適用対象は、これに限定されず、分注装置用の液体容器一般に同様に適用できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の分注装置の一例の要部構成を示す斜視図
【図2】特開2005−17176号に記載された試薬ボトルを示す斜視図
【図3】本発明の実施形態の構成を示す斜視図
【図4】同じく作用を説明するための、正面から見た断面図
【符号の説明】
【0024】
10…分注ヘッド
12…分注ノズル
14…ノズルチップ
18…試薬
20…試薬ボトル
22…開口部
26…蓋状部材
28…復元ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方の開口部から挿入される分注ノズルにより液体の吸引が行なわれる分注装置用液体容器において、
前記開口部の長手方向両端に、前記分注ノズルの挿入を妨害しない蓋状部材を設けたことを特徴とする分注装置用液体容器。
【請求項2】
前記蓋状部材の内側先端が、前記分注ノズルの挿入方向に曲げられていることを特徴とする請求項1に記載の分注装置用液体容器。
【請求項3】
前記蓋状部材が、下方にのみ回動自在とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分注装置用液体容器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された分注装置用液体容器を備えたことを特徴とする分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−17242(P2007−17242A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198115(P2005−198115)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】