説明

分注装置

【課題】複数のプローブを用いて液体試料を分注する際に、プローブの液面接触を誤検知せずに、実際に液体試料に接触したプローブの液面接触を検知できること。
【解決手段】液体試料を吸引または吐出する複数のプローブ2a〜2dと、複数のプローブ2a〜2dの各プローブに印加する交流電圧を発生する交流発生部7と、プローブ2a〜2dの各プローブに対する交流電圧の印加を切り替える切替部8と、液面検知部9a〜9dと、制御部12と、を備える。制御部12は、各プローブに対する交流電圧の印加を時分割で順次切り替える制御を切替部8に対して行うとともに、この制御に同期して、かかる交流電圧を印加したプローブと液体試料との液面接触を検知する制御を液面検知部9a〜9dに対して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のプローブを用いて血液または体液等の液体試料を分注する分注装置に関し、特に、プローブの静電容量の変化に基づいてプローブと液体試料との液面接触を検知する液面検知機能を有する分注装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、試薬を用いて血液または体液等の検体を生化学的または免疫学的に分析する自動分析装置が提案されている。このような自動分析装置は、正確な分析結果を得るために、検体または試薬等の液体試料を正確に採取して容器に分注する分注装置を備えている。この分注装置は、液体試料を分注する場合、液体試料を吸引または吐出するプローブと容器内の液体試料との接触を検知し、この試料液面からのプローブの潜り込み量を一定に制御する。かかるプローブの潜り込み量の制御によって、分注装置は、必要量の液体試料を吸引する前にプローブが液体試料から離れること等を防止でき、必要量の液体試料を確実に分注することができる。このような分注装置として、プローブの静電容量の変化に基づいてプローブと液体試料との液面接触を検知する静電容量方式の液面検知機能を有するものがある(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−57096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の分注装置は、複数のプローブを用いて複数の容器から液体試料をそれぞれ採取する機能を備えれば、一度の分注動作で複数の容器に液体試料をそれぞれ分注できる。この場合、かかる従来の分注装置は、複数のプローブのうちの液体試料に接触したプローブによって出力された検知信号をもとに上述した静電容量の変化を検出し、かかる静電容量の変化に基づいて、このプローブの液面接触を検知する。
【0005】
しかしながら、従来の分注装置は、かかる複数のプローブの液面接触を検知する際、実際に液面接触したプローブと液面接触していない近傍のプローブとの間で上述した検知信号が干渉する場合が多いので、この液面接触していない近傍のプローブを液面接触したものと誤って認識する(すなわち誤検知する)虞があるという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、複数のプローブを用いて液体試料を分注する際に、プローブの液面接触を誤検知せずに、実際に液体試料に接触したプローブの液面接触を検知できる分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる分注装置は、液体試料を吸引または吐出する複数のプローブの各プローブに交流電圧を印加し、該各プローブの静電容量の変化をもとに該各プローブと前記液体試料との液面接触をそれぞれ検知し、前記複数のプローブを用いて前記液体試料を分注する分注装置において、前記複数のプローブの各プローブに対する前記交流電圧の印加を切り替える切替手段と、前記交流電圧の印加を時分割で順次切り替える制御を行うとともに、該制御に同期して、前記交流電圧を印加したプローブの前記液面接触を検知する制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2にかかる分注装置は、上記発明において、前記交流電圧を印加するプローブは、前記複数のプローブのうちのいずれか一つであることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3にかかる分注装置は、上記発明において、前記交流電圧を印加するプローブは、前記複数のプローブのうちの互いに所定の距離以上離れたプローブ群であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4にかかる分注装置は、上記発明において、前記制御手段は、前記交流電圧を印加したプローブの液面接触を検知する液面検知処理を有効にするとともに、前記交流電圧を印加したプローブ以外の残りのプローブの液面接触を検知する液面検知処理を無効にする制御を行うことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5にかかる分注装置は、上記発明において、前記交流電圧は、前記複数のプローブの間で一定の周波数帯域の正弦波電圧であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、複数のプローブを用いて液体試料を分注する際に、液体試料に非接触のプローブを液面接触したものと誤検知せずに、実際に液体試料に接触したプローブの液面接触を確実に検知できる分注装置を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明にかかる分注装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態である分注装置の一構成例を模式的に示すブロック図である。図1に示すように、この分注装置1は、血液や体液等の検体または試薬等の液体試料を吸引・吐出する複数のプローブ2a〜2dと、プローブ2a〜2dをそれぞれ上昇または下降するための駆動部4a〜4dと、液体試料を容器に分注するためにプローブ2a〜2dおよび駆動部4a〜4dの駆動制御を行う分注制御部6とを有する。また、分注装置1は、所定の交流電圧を出力する交流発生部7と、かかる交流電圧をプローブ2a〜2dのうちの処理対象のプローブに印加するための切替部8と、プローブ2a〜2dと液体試料との液面接触をそれぞれ検知するための液面検知部9aと、入力部10と、記憶部11と、かかる分注装置1の各構成部の駆動制御を行う制御部12とを有する。さらに、分注装置1は、たとえば検体容器101a〜101dを収納するラック113の近傍に電極板114を有する。
【0015】
プローブ2a〜2dは、液体試料を吸引または吐出するための管路が内部に形成された導体プローブであり、駆動部4a〜4dにそれぞれ保持される。プローブ2a〜2dは、たとえば互いに近傍に配置され、図1に示すようなラック113に密に収納された検体容器101a〜101d内の各検体を同時に吸引して採取できる。
【0016】
駆動部4a〜4dは、プローブ2a〜2dをそれぞれ保持し、液体試料を分注する場合にプローブ2a〜2dを上昇または下降する駆動を行う。具体的には、駆動部4a〜4dは、たとえば検体容器101a〜101d内の各検体を採取する場合、検体容器101a〜101dに向けてプローブ2a〜2dをそれぞれ下降する駆動を行い、各検体を採取した後、この検体を吸引したプローブ2a〜2dを上昇する駆動を行う。
【0017】
分注制御部6は、液体試料を容器に分注するためにプローブ2a〜2dおよび駆動部4a〜4dの駆動制御を行う。具体的には、分注制御部6は、プローブ2a〜2dによる液体試料の吸引動作および吐出動作と、駆動部4a〜4dによるプローブ2a〜2dの上昇駆動および下降駆動とを制御し、液体試料を容器に分注する。この場合、分注制御部6は、駆動部4a〜4dに対し、かかるプローブ2a〜2dの上昇駆動および下降駆動を個別に制御する。これによって、分注制御部6は、プローブ2a〜2dのそれぞれを個別または同時に上昇または下降させることができる。また、分注制御部6は、プローブ2a〜2dにそれぞれ連通する管路5a〜5dを有し、かかる管路5a〜5dを介してプローブ2a〜2d内の圧力をそれぞれ調整し、プローブ2a〜2dによる液体試料の吸引動作および吐出動作を制御する。分注制御部6は、かかるプローブ2a〜2dの吸引・吐出制御および駆動部4a〜4dの駆動制御を行うことによって、たとえば検体容器101a〜101d内の各検体を採取し、採取した各検体を他の試験容器にそれぞれ分注する。
【0018】
交流発生部7は、交流電圧たとえば所定の周波数帯域の正弦波電圧を発生する。この場合、交流発生部7は、このような交流電圧として電圧信号S1を切替部8に出力する。なお、交流発生部7は、所定のパルス波形を有するパルス電圧を電圧信号S1として出力してもよい。
【0019】
切替部8は、プローブ2a〜2dの各プローブに対する交流電圧の印加を切り替えるためのものである。具体的には、切替部8は、プローブ2a〜2dと交流発生部7との電気的な接続を順次切り替え、プローブ2a〜2dに対する交流電圧のオンオフをそれぞれ切り替える。切替部8は、このように交流電圧のオンオフ切替動作を行い、たとえば交流発生部7から出力された電圧信号S1をプローブ2a〜2dのいずれかに入力する。
【0020】
液面検知部9a〜9dは、プローブ2a〜2dのうちの処理対象のプローブについて、プローブと液体試料との液面接触を静電容量方式で検知する液面検知処理を行うためのものである。なお、この処理対象のプローブとは、液面検知処理を行うために電圧信号S1が入力されたプローブであり、たとえばプローブ2a〜2dが互いに近傍に位置する場合、かかるプローブ2a〜2dのうちのいずれか一つである。
【0021】
液面検知部9aは、プローブ2aの静電容量の変化を検出し、かかる静電容量の変化に基づいてプローブ2aと液体試料との液面接触を検知する。これと同様に、液面検知部9b〜9dは、プローブ2b〜2dの各静電容量の変化に基づいてプローブ2b〜2dと液体試料との液面接触をそれぞれ検知する。この場合、液面検知部9a〜9dは、プローブ2a〜2dのいずれかに印加される交流電圧の周波数帯域が各プローブ間で一定なので、かかるプローブの液面接触の検知感度が各プローブ間でほぼ一定である。このことは、液面検知部9a〜9dによる各液面検知処理の結果のばらつきを抑制できる。
【0022】
ここで、電極板114は、たとえばアースに接続され、プローブ2a〜2dが上昇および下降の原点に位置する場合、かかるプローブ2a〜2dから距離d0の位置に配置される。かかる電極板114とプローブ2a〜2dとは、それぞれ静電容量C1〜C4のコンデンサを形成する。また、プローブ2a〜2dは、上述した駆動部4a〜4dによる下降駆動または上昇駆動によって、たとえば図1に示すように、距離d0を縮めるように検体容器101a〜101dに向けて下降し、または距離d0の位置に復帰するように検体容器101a〜101dから上昇する。この場合、プローブ2a〜2dの各静電容量C1〜C4は、このようなプローブ2a〜2dの移動(すなわち距離d0の変化)に伴って変化する。具体的には、静電容量C1〜C4は、かかるプローブ2a〜2dの下降(すなわち距離d0の減少)に伴ってそれぞれ増加し、特に、プローブ2a〜2dが液体試料たとえば検体容器101a〜101d内の検体にそれぞれ液面接触した場合に急激に増加する。
【0023】
液面検知部9a〜9dは、このようなプローブ2a〜2dの各静電容量の変化に基づいてプローブ2a〜2dの各液面接触を検知する。具体的には、プローブ2a〜2dは、上述した電圧信号S1が入力された場合、各静電容量C1〜C4に対応する検知信号Sa〜Sdをそれぞれ出力する。液面検知部9a〜9dは、かかる検知信号Sa〜Sdをそれぞれ受信し、受信した検知信号Sa〜Sdをもとに静電容量C1〜C4の変化をそれぞれ検出する。液面検知部9a〜9dは、制御部12によって予め設定された液面検知処理の閾値を用い、かかる静電容量C1〜C4の変化に基づいてプローブ2a〜2dの液面接触をそれぞれ検知する。この場合、液面検知部9aは、たとえば検知信号Saに基づく電圧値が液面検知処理の閾値を超えた場合にプローブ2aと液体試料との液面接触を検知する。これと同様に、液面検知部9b〜9dは、検知信号Sb〜Sdと液面検知処理の閾値とをもとにプローブ2b〜2dの液面接触をそれぞれ検知する。液面検知部9a〜9dは、かかる液面検知処理の結果を制御部12に出力する。
【0024】
入力部10は、キーボードまたはマウスを用いて実現され、制御部12に指示する情報、液面検知部9a〜9dによる液面検知処理の処理条件、および切替部8によるオンオフ切替動作の動作条件等を制御部12に入力する。この場合、入力部10は、この液面検知処理の処理条件として、たとえば上述した液面検知処理の閾値を入力する。また、入力部10は、このオンオフ切替動作の動作条件として、たとえばプローブ2a〜2dに対する電圧信号S1の入力(すなわち上述した交流電圧の印加)を順次切り替える時間間隔を決定する切替時間情報を入力する。
【0025】
記憶部11は、制御部12によって書込指示された情報を蓄積し、制御部12によって読み出し指示された蓄積情報を制御部15に出力する。この場合、記憶部11は、入力部10によって入力された情報たとえば液面検知処理の処理条件およびオンオフ切替動作の動作条件を記憶する。また、記憶部11は、液面検知部9a〜9dによる液面検知処理の結果を記憶する。
【0026】
制御部12は、分注装置1の構成部たとえば分注制御部6、切替部8、液面検知部9a〜9d、入力部10、および記憶部11の各動作および情報の入出力を制御する。この場合、制御部12は、たとえば切替時間情報をもとに切替部8のオンオフ切替動作の時間間隔を決定し、かかる時間毎にオンオフ切替動作を遅延して順次実行する制御を切替部8に対して行う。このようにオンオフ切替動作を制御することによって、制御部12は、プローブ2a〜2dに対する交流電圧の印加を時分割で順次切り替えるように切替部8を動作制御できる。
【0027】
また、制御部12は、入力部10によって入力された液面検知処理の閾値を液面検知部9a〜9dに通知し、その後、上述したオンオフ切替動作の制御に同期して液面検知部9a〜9dによる液面検知処理の動作を制御する。具体的には、制御部12は、プローブ2a〜2dのうちの処理対象のプローブの液面検知処理を有効にするとともに、この処理対象のプローブ以外の残りのプローブの液面検知処理を無効にするように、液面検知部9a〜9dの処理動作を制御する。この場合、制御部12は、有効にした液面検知処理の処理対象のプローブと電圧信号S1が入力されたプローブとが確実に整合するように、上述したオンオフ切替動作の制御に同期して液面検知部9a〜9dの各液面検知処理の有効または無効を順次切り替える。
【0028】
つぎに、時分割でオンオフ切替動作を順次実行する制御と、これに同期して処理対象のプローブの液面検知処理を順次実行する制御とについて詳細に説明する。図2は、時分割でオンオフ切替動作を順次実行する制御を説明するための模式図である。なお、図2では、上述した電圧信号S1として電圧振幅V(すなわち電圧値V)の正弦波電圧を例示している。
【0029】
図2に示すように、制御部12は、入力部10によって入力された切替時間情報をもとに、オンオフ切替動作を時分割で順次実行する場合の時間間隔Mを決定し、この時間間隔M毎に遅延してオンオフ切替動作を順次実行する制御を切替部8に対して行う。具体的には、制御部12は、切替部8に対し、たとえば時間間隔Mを空けた時間t0と時間t1と時間t2と時間t3とにおいてオンオフ切替動作を順次実行する制御を行う。
【0030】
かかるオンオフ切替動作の制御によって、切替部8は、プローブ2a〜2dのうちの2つ以上に電圧信号S1を同時に印加しないように、プローブ2a〜2dと交流発生部7との電気的な接続を時分割で順次切り替える。具体的には、切替部8は、時間t0から時間t1までの時間間隔Mにおいてプローブ2aと交流発生部7とを電気的に接続し、時間t1から時間t2までの時間間隔Mにおいてプローブ2bと交流発生部7とを電気的に接続し、時間t2から時間t3までの時間間隔Mにおいてプローブ2cと交流発生部7とを電気的に接続し、時間t3から時間t4までの時間間隔Mにおいてプローブ2dと交流発生部7とを電気的に接続する。かかる切替部8は、時間t0〜t4においてプローブ2a〜2dのいずれか一つに電圧信号S1を入力する。
【0031】
なお、制御部12は、時間t4以降において、上述した時間t0〜t4の場合と同様にオンオフ切替動作を制御する。これによって、切替部8は、時間t4以降においても、時間間隔M毎に遅延してオンオフ切替動作を行い、プローブ2a〜2dに対する電圧信号S1の入力すなわち交流電圧の印加を時分割で順次切り替える。
【0032】
一方、制御部12は、上述したように、かかるオンオフ切替動作の制御に同期して液面検知部9a〜9dの液面検知処理を有効または無効にする動作制御を行う。この場合、制御部12は、処理対象のプローブの液面接触を検知するための液面検知部(液面検知部9a〜9dのいずれか)による液面検知処理を有効にし、これと同時に、他の液面検知部による液面検知処理を無効にする制御を行う。このように液面検知処理を有効または無効にする制御を行って、制御部12は、上述したオンオフ切替動作に同期して液面検知部9a〜9dのいずれかに液面検知処理が行われる処理対象のプローブを順次切り替える。具体的には、制御部12は、たとえばプローブ2aが処理対象のプローブである場合、かかるプローブ2aの液面接触を検知するための液面検知部9aによる液面検知処理を有効にし、これと同時に、他の液面検知部9b〜9dによる液面検知処理を無効にする制御を行う。このような液面検知処理の動作制御は、他のプローブ2b〜2dのいずれかが処理対象のプローブである場合も、上述したプローブ2aの場合とほぼ同様に行われる。
【0033】
このような液面検知処理の動作制御において、制御部12は、上述したように、有効にした液面検知処理の処理対象のプローブと電圧信号S1が入力されたプローブとを確実に一致させる。すなわち、制御部12は、たとえば図2に示す時間t0から時間t1までの時間間隔Mにおいて、プローブ2aの液面接触を検知するための液面検知部9aの液面検知処理を有効にするとともに、他の液面検知部9b〜9dの液面検知処理を無効にし、時間t1から時間t2までの時間間隔Mにおいて、プローブ2bの液面接触を検知するための液面検知部9bの液面検知処理を有効にするとともに、他の液面検知部9a,9c,9dの液面検知処理を無効にする。また、制御部12は、時間t2から時間t3までの時間間隔Mにおいて、プローブ2cの液面接触を検知するための液面検知部9cの液面検知処理を有効にするとともに、他の液面検知部9a,9b,9dの液面検知処理を無効にし、時間t3から時間t4までの時間間隔Mにおいて、プローブ2dの液面接触を検知するための液面検知部9dの液面検知処理を有効にするとともに、他の液面検知部9a〜9cの液面検知処理を無効にする。
【0034】
かかる制御部12による液面検知処理の動作制御によって、液面検知部9a〜9dは、互いに近傍に位置するプローブ2a〜2dのうちの2つ以上について同時に液面検知処理を行うことがなく、プローブ2a〜2dのいずれかである処理対象のプローブについて液面検知処理を行うようになる。図3は、処理対象のプローブの液面接触を検知する動作を説明するための模式図である。図3に示すように、たとえばプローブ2a,2bは、上述した静電容量C1,C2をそれぞれ増加させつつ検体容器101a,101bに向けてそれぞれ下降するとともに、電極板114から距離d1に位置する。この距離d1の位置において、プローブ2aは、検体容器101a内の検体に液面接触し、プローブ2bは、検体容器101b内の検体に接触していない。この状態において、プローブ2aの静電容量C1は、この検体との液面接触に起因して急激に増加する。
【0035】
ここで、制御部12は、上述したオンオフ切替動作を制御して電圧信号S1をプローブ2aに入力した場合、このオンオフ切替動作の制御に同期して液面検知部9aの液面検知処理を有効にし、これと同時に、液面検知部9b〜9dの液面検知処理を無効にする。この場合、プローブ2aは、上述した処理対象のプローブであり、入力された電圧信号S1に対応して検知信号Saを液面検知部9aに出力する。液面検知部9aは、かかる制御部12の動作制御によって液面検知処理が有効になっているので、この検知信号Saをもとに液面検知処理を行い、プローブ2aの液面接触を検知する。
【0036】
これと同時に、プローブ2a,2bは、図3に示すように、互いに近傍に位置するのでコンデンサを形成し、この検知信号Saは、かかるプローブ2bに受信される。このため、検知信号Saは、かかるプローブ2bを介して液面検知部9bにも出力される。しかし、液面検知部9bは、上述したように、制御部12によって液面検知処理が無効になっているので、かかる検知信号Saを用いて液面検知処理を行うことがなく、液面接触していないプローブ2bの液面接触を誤検知することがない。
【0037】
このように制御部12がオンオフ切替動作および液面検知処理の制御を同期して行うことによって、液面検知部9a〜9dは、実際には液面接触していないプローブの液面接触を誤検知せずに、処理対象のプローブ(すなわち電圧信号S1が入力されたプローブ2a〜2dのいずれか)の液面検知処理を確実に行うことができる。
【0038】
かかる制御部12は、互いに近傍に位置するプローブ2a〜2dについての各液面検知処理の結果を確実に取得でき、この取得した液面検知処理の結果を用いて分注制御部6の動作を制御する。具体的には、制御部12は、かかる取得した液面検知処理の結果をもとに処理対象のプローブが液面接触したものと認識した場合、分注制御部6に対し、この処理対象のプローブの液面からの潜り込み量を一定にする下降駆動または上昇駆動を行うように指示する。これによって、分注制御部6は、プローブ2a〜2dのうちの液面接触したプローブの上昇駆動または下降駆動を制御し、かかるプローブの液面からの潜り込み量を一定に制御できる。
【0039】
このようにプローブの潜り込み量を一定にすることによって、分注制御部6は、必要量の液体試料を吸引する前にプローブが液体試料から離れること等を防止でき、必要量の液体試料を確実に分注することができる。これと同時に、分注制御部6は、プローブ2a〜2dにおける液体試料との接触範囲をそれぞれ一定にできるので、分注動作を行った際の液体試料間のコンタミネーションを抑制できる。
【0040】
つぎに、この発明の実施の形態である分注装置1の適用例について説明する。かかる分注装置1は、上述したように試薬または検体等の液体試料の分注動作を確実に行うことができ、必要量の液体試料を正確に分注する必要がある自動分析装置に好適な分注装置である。図4は、かかる分注装置1を適用した自動分析装置の一構成例を模式的に示す模式図である。この自動分析装置100は、試薬を用いて検体を生化学的または免疫学的に分析するものであり、図4に示すように、分注装置1,109、搬送テーブル104、撹拌部105、分析部106、洗浄部107、および試薬テーブル108を有する。
【0041】
この分注装置1は、上述した駆動部4a〜4dを内蔵したアーム3を有する。かかるアーム3は、搬送テーブル104とラック113との間で反復回転する。分注装置1は、アーム3をラック113側に回転駆動し、上述したようにプローブ2a〜2dを用いて検体容器101a〜101d内の各検体を採取する。その後、分注装置1は、搬送テーブル104上の試験容器102a〜102d側にアーム3を回転駆動し、このようにプローブ2a〜2dを用いて採取した検体を試験容器102a〜102dにそれぞれ分注する。この場合、分注装置1は、上述したように、試験容器102a〜102d内に必要量の検体を確実に分注できる。
【0042】
搬送テーブル104は、たとえば試験容器102a〜102dが搬送方向に沿って4列に配置され、各列の試験容器102a〜102dを所定方向に回転して搬送する。この場合、たとえば検体が分注された試験容器102a〜102dは、撹拌部105、分析部106、および洗浄部107の順序で順次搬送される。
【0043】
試薬テーブル108および分注装置109は、搬送テーブル104の近傍に配置される。試薬テーブル108は、検体に混入する試薬を入れた試薬容器103を複数有し、かかる試薬容器103を回転して分注装置109の近傍に順次搬送する。分注装置109は、プローブ2a〜2dと同様のプローブ111を保持したアーム110を有し、上述した分注装置1とほぼ同様の分注動作を行う。かかる分注装置109は、アーム110とプローブ111とを用いて試薬容器103内の試薬を採取し、撹拌部105に搬送される前の試験容器102a〜102dに試薬を分注する。このように検体と試薬とを混入した試験容器102a〜102dは、撹拌部105に搬送される。
【0044】
撹拌部105は、試験容器102a〜102d内の液体試料をそれぞれ撹拌する。このような撹拌処理によって、試験容器102a〜102d内の検体および試薬は、一様に混ざり合う。その後、かかる撹拌処理が行われた試験容器102a〜102dは、分析部106に搬送される。
【0045】
分析部106は、たとえば所定の波長帯域の光を用い、かかる試験容器102a〜102d内の液体試料の成分等を分析する。分析部106は、かかる液体試料の分析結果を自動分析装置1のデータ記憶部(図示せず)またはホストコンピュータ(図示せず)等に送信する。これによって、かかる液体試料についての必要な分析結果を取得することができる。その後、かかる分析処理が行われた試験容器102a〜102dは、洗浄部107に搬送される。
【0046】
洗浄部107は、上述した分析部106による分析処理が行われた試験容器102a〜102d内の液体試料(すなわち試薬と検体との混合液)を排出し、かかる試験容器102a〜102dを洗浄する。その後、かかる洗浄処理が行われた試験容器102a〜102dは、分注装置1の近傍に再度搬送され、再利用される。なお、かかる検体の検査内容によっては、1回の分析処理が行われた後に使用済みの試験容器102a〜102dを廃棄してもよい。
【0047】
このように分注装置1を適用した自動分析装置100は、必要量の液体試料を正確に分注して正確な分析結果を取得することができる。したがって、この自動分析装置100は、かかる分注装置1を液体試料の分注機構に適用することによって、生化学的または免疫学的に検体を分析する自動分析装置として好適なものになる。
【0048】
なお、この発明の実施の形態では、プローブ2a〜2dが互いに近傍に配置され、上述した液面検知処理が行われる処理対象のプローブをかかるプローブ2a〜2dのいずれか一つに順次切り替えていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、分注装置1に設けた複数のプローブの中に互いに所定の距離以上離れたプローブ群が存在する場合、かかるプローブ群を処理対象のプローブとして順次切り替えるとともに、切り替えた各処理対象のプローブについて並行して液面検知処理を行ってもよい。この場合、制御部12は、プローブ4a〜4dのうちの互いに所定の距離以上離れたプローブ群に交流電圧を同時に印加するように切替部8のオンオフ切替動作を制御し、これに同期して、このように交流電圧が印加された複数のプローブについて並行して液面検知処理を行うように液面検知部9a〜9dの処理動作を制御する。ここで、かかるプローブ群の各プローブは、互いに所定の距離以上離れて配置されているので、上述した分注動作を行う場合に各プローブ間で上述した検知信号を互いに受信しない。
【0049】
図5は、複数のプローブに同時に交流電圧を印加する場合のオンオフ切替動作の制御を説明するための模式図である。たとえばプローブ2a〜2dのうちのプローブ2a,2cが互いに所定の距離以上離れて配置され、プローブ2b,2dが互いに所定の距離以上離れて配置されていれば、制御部12は、図5に示すように、かかるプローブ2a,2cまたはプローブ2b,2dに同時に交流電圧が印加されるように切替部8のオンオフ切替動作を制御する。この場合、切替部8は、プローブ2a,2cまたはプローブ2b,2dに同時に交流電圧を印加するように、プローブ2a〜2dに対する交流電圧の印加を時分割で順次切り替える。具体的には、切替部8は、たとえば、時間t0〜t1の時間間隔Mにおいてプローブ2a,2cに電圧信号S1を同時に入力するようにオンオフ切替動作を行い、時間t1〜t2の時間間隔Mにおいてプローブ2b,2dに電圧信号S1を同時に入力するようにオンオフ切替動作を行う。その後、切替部8は、時間t2以降において、かかる時間t0〜t2の各時間間隔Mの場合と同様のオンオフ切替動作を順次繰り返す。
【0050】
かかるオンオフ切替動作に同期して、制御部12は、交流電圧が印加された複数のプローブすなわち処理対象のプローブについて液面検知処理を有効にし、残りのプローブについて液面検知処理を無効にする制御を液面検知部9a〜9dに対して行う。具体的には、制御部12は、たとえば、時間t0〜t1の時間間隔Mにおいて液面検知部9a,9cの液面検知処理を有効にするとともに他の液面検知部9b,9dの液面検知処理を無効にし、交流電圧が印加されたプローブ2a,2cの液面接触を並行して検知できるようにする。また、制御部12は、時間t1〜t2の時間間隔Mにおいて液面検知部9b,9dの液面検知処理を有効にするとともに他の液面検知部9a,9cの液面検知処理を無効にし、交流電圧が印加されたプローブ2b,2dの液面接触を並行して検知できるようにする。制御部12は、時間t2以降においても、かかる時間t0〜t2の各時間間隔Mの場合と同様に液面検知部9a〜9dの動作制御を繰り返す。
【0051】
このように切替部8と液面検知部9a〜9dとを動作制御することによって、制御部12は、分注装置1の全プローブの液面検知処理を繰り返すまでに費やす時間を短縮できる。これによって、分注装置1は、より多くのプローブ(たとえば5つ以上)を備えた場合であっても、全プローブの液面検知処理を繰り返すまでの経過時間を少数たとえば2〜4つのプローブを備えた場合と同程度に抑えることができ、液面接触の誤検知を起こさずに上述した分注動作を円滑に行うことができる。
【0052】
なお、この発明の実施の形態では、液体試料を吸引または吐出するためのプローブを4つ備えた場合を例示したが、この発明はこれに限定されるものではなく、かかるプローブを複数備えた分注装置であってもよい。
【0053】
また、この発明の実施の形態では、プローブ毎に液面検知部をそれぞれ設けていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、複数のプローブの各液面接触をプローブ毎にそれぞれ検知する液面検知部を1以上設ければよい。この場合、かかる液面検知部は、交流電圧が印加された処理対象のプローブの液面検知処理のみを行うように、制御部12によって動作制御される。
【0054】
さらに、この発明の実施の形態では、検体を生化学的または免疫学的に分析する自動分析装置に対し、この検体を分注する分注装置として適用した場合を例示していたが、この発明はこれに限定されるものではなく、試薬等の液体試料を分注する分注装置として自動分析装置に適用してもよい。
【0055】
また、この発明の実施の形態では、複数のプローブに対して一定の切替順序で交流電圧の印加を順次切り替えていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、かかる複数のプローブに対する交流電圧印加の切替順序は所望の順序であってもよい。この場合、たとえば、分注装置に設けた複数のプローブのうち、分注動作において上昇または下降するプローブに対して優先的に交流電圧を印加するように各プローブに対する交流電圧の印加を時分割で順次切り替えてもよい。
【0056】
以上、説明したように、この発明の実施の形態では、液体試料を吸引または吐出する複数のプローブの各プローブに対する交流電圧の印加を時分割で順次切り替え、かかる交流電圧の印加の切替動作に同期して、このように交流電圧を印加したプローブと液体試料との液面接触を順次検知するように構成した。このため、液体試料を分注する複数のプローブの各液面接触をそれぞれ検知する際に、液面検知処理の処理対象のプローブを時分割で順次切り替え、かかる処理対象のプローブによって出力される検知信号とその近傍に位置する残りのプローブの検知信号との干渉を防止でき、これによって、液体試料に非接触のプローブを液面接触したものと誤検知せずに、実際に液体試料に接触したプローブの液面接触を確実に検知できる分注装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の実施の形態である分注装置の一構成例を模式的に示すブロック図である。
【図2】時分割でオンオフ切替動作を順次実行する制御を説明するための模式図である。
【図3】プローブの液面接触を検知する動作を説明するための模式図である。
【図4】この発明にかかる分注装置を適用した自動分析装置の一構成例を模式的に示す模式図である。
【図5】複数のプローブに同時に交流電圧を印加する場合のオンオフ切替動作の制御を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0058】
1,109 分注装置
2a〜2d,111 プローブ
3,110 アーム
4a〜4d 駆動部
5a〜5c 管路
6 分注制御部
7 交流発生部
8 切替部
9a〜9d 液面検知部
10 入力部
11 記憶部
12 制御部
100 自動分析装置
101a〜101d 検体容器
102a〜102d 試験容器
103 試薬容器
104 搬送テーブル
105 撹拌部
106 分析部
107 洗浄部
108 試薬テーブル
113 ラック
114 電極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料を吸引または吐出する複数のプローブの各プローブに交流電圧を印加し、該各プローブの静電容量の変化をもとに該各プローブと前記液体試料との液面接触をそれぞれ検知し、前記複数のプローブを用いて前記液体試料を分注する分注装置において、
前記複数のプローブの各プローブに対する前記交流電圧の印加を切り替える切替手段と、
前記交流電圧の印加を時分割で順次切り替える制御を行うとともに、該制御に同期して、前記交流電圧を印加したプローブの前記液面接触を検知する制御を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記交流電圧を印加するプローブは、前記複数のプローブのうちのいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記交流電圧を印加するプローブは、前記複数のプローブのうちの互いに所定の距離以上離れたプローブ群であることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記交流電圧を印加したプローブの液面接触を検知する液面検知処理を有効にするとともに、前記交流電圧を印加したプローブ以外の残りのプローブの液面接触を検知する液面検知処理を無効にする制御を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の分注装置。
【請求項5】
前記交流電圧は、前記複数のプローブの間で一定の周波数帯域の正弦波電圧であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−322286(P2007−322286A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153918(P2006−153918)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】