説明

分注装置

【課題】簡易な構成で確実に分注動作ができる分注装置を提供すること。
【解決手段】分注液体15を保持し、その容積によって分注液体15の体積を計量する吐出ノズル13を有する吐出チップ10と、吐出チップ10を覆う吐出チャンバ9と、を具備し、吐出チップ10と吐出チャンバ9とによって形成された空間を加圧し、吐出ノズル13が保持する分注液体15を吐出して分注する分注装置100において、空間内の気体の相対湿度を所定の値に近づける冷却素子23を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の微量の液体を分注する分注装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吐出チップに生体検査に用いられる分注液体を保持させ、この吐出チップを吐出チャンバによって密閉して加圧し、吐出チップが保持する分注液体を吐出する分注装置が知られている(特許文献1)。また、特許文献2には分注液体を貯留するリザーバと、分注液体を吐出する吐出ノズルと、リザーバと吐出ノズルとを結ぶ細い流路とを有する吐出チップが記載されており、こちらも同様に吐出チップに圧力を加えることによって液体を吐出するものである。この流路は細いため、リザーバに分注液体が充填されると毛細管現象によって吐出ノズルに分注液体が流入する。
【0003】
【特許文献1】特表2000−500567号公報
【特許文献2】独国特許発明第10102152号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液体が微量である場合、吐出チャンバによって吐出チップを密閉された後、分注液体が蒸発して凝固し、この凝固物によって流路、あるいは吐出ノズルの吐出口が閉塞し、分注動作を確実に行うことができない場合が生じるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で所望量の分注動作を確実に行うことができる分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる分注装置は、液体を保持し、その容積によって前記液体の体積を計量する吐出ノズルを有する吐出チップと、前記吐出チップを覆う吐出チャンバと、を具備し、前記吐出チップと前記吐出チャンバとによって形成された空間を加圧し、前記吐出ノズルが保持する前記液体を吐出して分注する分注装置において、前記空間内の気体の相対湿度を所定の値に近づける相対湿度調整手段を有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2にかかる分注装置は、上記の発明において、前記所定の値は、80%以上であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3にかかる分注装置は、上記の発明において、前記相対湿度調整手段は、前記空間内の気体を冷却する冷却手段であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4にかかる分注装置は、上記の発明において、前記冷却手段は、前記気体と接触する部材を冷却することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5にかかる分注装置は、上記の発明において、前記相対湿度調整手段は、前記空間を加圧する気体を加湿する加湿手段であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6にかかる分注装置は、上記の発明において、前記気体の湿度を検出する湿度検出手段をさらに有すること特徴とする。
【0012】
また、請求項7にかかる分注装置は、上記の発明において、前記吐出チップは、前記吐出ノズルと接続された流路を通じて毛細管力により当該吐出ノズルに導入される前記液体を保持するリザーバをさらに有し、前記リザーバ及び前記吐出ノズル及び前記流路に保持された前記液体は、前記空間内の気体と接触することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8にかかる分注装置は、上記の発明において、前記液体は、血液、血液の抽出成分、唾液、リンパ液等の体液、もしくはこれらの体液から抽出される液体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる分注装置は、分注液体を保持する吐出チップに分注液体を充填した後、吐出チャンバ内の相対湿度を所定の値に近づけるようにしているので、分注液体の蒸発を抑制するとともに、分注液体の凝固を防止して流路および吐出ノズルの閉塞を防止することができ、結果として分注動作を精度良くかつ確実に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる分注装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態1にかかる分注装置100の概要構成を示すブロック図である。図1に示すように、この分注装置100は、分注液体15を保持するとともに吐出を行なう吐出チップ10と、吐出チップ10を密閉する吐出チャンバ9と、吐出チャンバ9に接続されたペルチェ素子等によって実現される冷却素子23と、冷却素子23を駆動する冷却素子駆動部22と、吐出チップ10と吐出チャンバ9とによって形成される空間に気体を送出して加圧し、分注液体15を吐出させるポンプ4と、ポンプ4から送出された気体を吐出チャンバ9内に導入する配管7cと、配管7cに取付けられ、分注液体15の吐出のタイミングを制御するバルブ8aと、バルブ8aの開閉の駆動を行なうバルブ駆動部3Bと、吐出チャンバ9内の相対湿度を検出する相対湿度計16aと、冷却素子駆動部22とバルブ駆動部3Bとを制御する制御部2Bとを有する。冷却素子23は、吐出チャンバ9を冷却することによって、吐出チャンバ9と吐出チップ10とで形成された空間を冷却している。この制御部2Bは、冷却素子駆動部22を介して冷却素子23を制御し、バルブ駆動部3Bを介してバルブ8aの開閉を制御する。ポンプ4は、前段にバッファタンク(図示せず)備え、分注液体15を吐出させるに足る圧力の気体を送出している。
【0017】
ここで、この分注装置100の分注動作について説明する。図2は、この分注装置100の制御部2Bの動作手順を示すフローチャートである。図2に示すように、まず、制御部2Bは、相対湿度計16aから測定信号S1を入力し、冷却素子駆動部22に制御信号S6を出力し、冷却素子駆動部22は、駆動信号S11によって冷却素子23を駆動冷却する(ステップS501)。測定信号S6により吐出チャンバ9内の相対湿度が所定の値以上で有るか否かを判断し(ステップS502)、吐出チャンバ9内の相対湿度が所定の値以上で有る場合(ステップS502,Yes)、吐出指示を待つ。吐出指示の有無を判断し(ステップS503)、吐出指示が有る場合(ステップS503,Yes)、バルブ8aを「開」にし、分注液体15を吐出させる(ステップS504)。その後、バルブ8aを「閉」にし(ステップS505)、吐出終了指示の有無を判断する(ステップS506)。吐出終了指示が有る場合(ステップS506,Yes)、制御動作を終了する。一方、吐出指示が無い場合(ステップS506,No)は、再び冷却素子22の駆動(ステップS501)に戻り上記動作を繰返す。尚、ここで相対湿度の所定の値以上とは、相対湿度80%以上であって100%近傍であることが好ましい。
【0018】
この実施の形態1では、吐出チャンバ9内の蒸気量を可変せず、温度を可変することによって、吐出チャンバ9内の相対湿度を所定の値以上に保つようにした。つまり、相対湿度は、空気中に含まれる水蒸気量によって定義され、冷却すると環境中の飽和水蒸気量は減少するが、水蒸気量は変化しないため仮想的に湿度を下げることができる。冷却素子23は、即応性が高いため、加湿された気体を送出するのに比して、対応時間の縮小が行なえるとともに装置の小型化および簡素化が図れる。また、加湿された気体を作成することに比して気体を冷却する方が簡易である。
【0019】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。実施の形態1では、吐出チャンバと吐出チップとによって形成される空間を冷却し、この空間の相対湿度を所定の値以上に保つようにしていたが、この実施の形態2では、この空間に加湿された気体を導入することによって、相対湿度を所定の値以上に保つようにしている。
【0020】
図3は、この発明の実施の形態2にかかる分注装置1の概要構成を示すブロック図である。図3に示すように、この分注装置1は、分注液体15を保持するとともに吐出を行なう吐出チップ10と、吐出チップ10を密閉する吐出チャンバ9と、気体を送出するポンプ4と、気体を加湿する液体6を充填した容器5と、ポンプ4から送出された気体を液体6中に導入する配管7aと、液体6をくぐり加湿された容器5内の気体を吐出チャンバ9に導入する配管7cと、吐出チャンバ9内の気体を開放する配管7dと、分注液体15の吐出タイミングを制御するバルブ8bと、容器5内の圧力を測定する圧力計21と、吐出チャンバ9内の気体の相対湿度を測定する相対湿度計16aと、ポンプ4を駆動制御するポンプ駆動部20と、バルブ8bを駆動するバルブ駆動部3と、バルブ駆動部3とポンプ駆動部20とを制御する制御部2とを有する。吐出チップ10は、分注液体15を充填するリザーバ11と、分注液体15を保持するとともに分注液体15を吐出する吐出口14を備える吐出ノズル13と、吐出ノズル13とリザーバ11とを接続する流路12とを有する。分注装置1は、ポンプ4、液体6を充填した容器5、配管7a,7cを使って、加湿された気体を吐出チャンバ9と吐出チップ10とによって形成された空間内へ導入させることによって、空間内の気体の相対湿度を所定の値に近づけている。
【0021】
図6は、リザーバ11、流路12、および吐出口14を有する吐出ノズル13の接続関係を示す斜視図である。図6に示すように、リザーバ11は、分注液体15を貯留し、分注吐出を複数回分行なえる容積を有し、吐出ノズル13は、分注吐出を1回行なう容積を有する。つまり、分注液体15は吐出ノズル13の容積によって所定の体積が計量される。また、リザーバ11と吐出ノズル13とは流路12によって接続され、吐出ノズル13から分注液体15が吐出されるとリザーバ11に保持された分注液体15は、毛細管力を利用して流路12を移動して吐出ノズル13に供給される。
【0022】
つぎに、この分注装置1の分注動作について説明する。図4は、この分注装置1の制御部2の動作手順を示すフローチャートである。図4に示すように、まず、制御部2は、制御信号S6をポンプ駆動部20に出力し、ポンプ駆動部20の駆動制御を開始させる(ステップS101)。その後、分注液体15の吐出指示が有るか否かを判断する(ステップS102)。吐出指示が有る場合(ステップS102,Yes)、バルブ駆動部3に制御信号S5を出力し、バルブ駆動部3は、バルブ8bに駆動信号S4を出力し、バルブ8bを「閉」にし(ステップS103)、吐出チャンバ9内の空間を加圧することによって分注液体15を吐出させる(ステップS104)。吐出終了後、バルブ8bを「開」に戻し(ステップS105)、吐出終了指示を待つ(ステップS106)。
【0023】
(実施の形態3)
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。上述の実施の形態2では、バブラ(容器5および液体6)を用いて加湿した気体を吐出チャンバと吐出チップによって形成される空間に導入するようにしていたが、この実施の形態3では、バブラを加熱して気体の加湿を促進するようにしている。
【0024】
図5は、この発明の実施の形態3にかかる分注装置1Aの概要構成を示すブロック図である。図5に示すように、この分注装置1Aは、分注液体15を保持するとともに吐出を行なう吐出チップ10と、吐出チップ10を密閉する吐出チャンバ9と、気体を送出するポンプ4と、気体を加湿する液体6を充填した容器5と、ポンプ4から送出された気体を液体6中に導入する配管7aと、液体6をくぐり加湿された容器5内の気体を吐出チャンバ9に導入する配管7cと、吐出チャンバ9内の気体を開放する配管7dと、分注液体15の吐出タイミングを制御するバルブ8a,8bと、容器5内の気体の相対湿度を測定する相対湿度計16bと、容器5内の圧力を測定する圧力計21と、容器5を加熱するヒータ17と、吐出チャンバ9内の気体の相対湿度を測定する相対湿度計16aと、ヒータ17を駆動制御するヒータ駆動部19と、ポンプ4を駆動制御するポンプ駆動部20と、バルブ8a,8bを駆動するバルブ駆動部3と、バルブ駆動部3とポンプ駆動部20とヒータ駆動部19を制御する制御部2とを有する。吐出チップ10は、分注液体15を充填するリザーバ11と、分注液体15を保持するとともに分注液体15を吐出する吐出口14を備える吐出ノズル13と、吐出ノズル13とリザーバ11とを接続する流路12とを有する。
【0025】
分注装置1Aは、ポンプ4、液体6を充填した容器5、配管7a,7cを使って、加湿された気体を吐出チャンバ9と吐出チップ10とによって形成された空間内へ導入することによって、この空間内の気体の相対湿度を所定の値以上に近づけている。
【0026】
つぎに、この分注装置1Aの分注動作について説明する。図7は、この分注装置1Aの制御部2の動作手順を示すフローチャートである。図7に示すように、まず、制御部2は、制御信号S6をポンプ駆動部20に出力し、ポンプ駆動部20の駆動制御を開始させるとともに制御信号S7をヒータ駆動部19に出力し、ヒータ駆動部19の駆動制御を開始させる(ステップS1011)。その後、分注液体15の吐出指示が有るか否かを判断する(ステップS102)。吐出指示が有る場合(ステップS102,Yes)、バルブ駆動部3に制御信号S5を出力し、バルブ駆動部3は、バルブ8bに駆動信号S4を出力し、バルブ8bを「閉」にする(ステップS103)。その後、バルブ8aに駆動信号S3を出力し、バルブ8aを「開」にして吐出チャンバ9内の空間を加圧することによって、分注液体15を吐出させる(ステップS1041)。吐出終了後、バルブ8bを「開」に戻し(ステップS105)、吐出終了指示を待つ(ステップS106)。
【0027】
一方、吐出指示が無い場合(ステップS102,No)、バルブ8bを「開」にした後、バルブ8aを「開」にし(ステップS107)、加湿された気体を吐出チャンバ9内に導入し、吐出チャンバ9内の相対湿度を高める。制御部2は、相対湿度計16aから測定信号S1を入力し、吐出チャンバ9内の相対湿度が所定の値以上であるか否かを判断する(ステップS108)。吐出チャンバ9内の相対湿度が所定の値以上である場合(ステップS108,Yes)、バルブ8aを「閉」にした後、バルブ8bを「閉」にする(ステップS109)。吐出チャンバ9内の相対湿度が所定の値以上に保たれることによって、分注液体15の蒸発が抑制される。なお、吐出チャンバ9内の相対湿度が所定の値以上になった場合(ステップS108,Yes)、バルブ8a,8bを「開」のままにしてポンプ4bから送出された気体をフローさせてもよい。このとき、吐出チャンバ9にかかる圧力は分注液体15の吐出が行なわれない程度となっている。そのため、例えばバルブ8b(配管7d)はバルブ8a(配管7c)よりも太くなっていれば良い。また、制御部2は、吐出指示をいつでも受け付け、吐出チャンバ9内の相対湿度が所定の値以上になっていない場合(ステップS108,No)でも、吐出動作(ステップS1041)に移行するようにしてもよい。
【0028】
図8は、ポンプ駆動部20の動作手順を示すフローチャートである。図8に示すように、ポンプ駆動部20は、制御部2から制御信号S6により駆動指示を入力すると(ステップS201,Yes)、圧力計21から測定信号S10を入力し、容器5内の圧力測定を行なう(ステップS202)。その後、駆動信号S8をポンプ4に出力し、ポンプ4を駆動する(ステップS203)。この時、容器5内の圧力P0が所定の圧力P0thを超えているか否かを確認する(ステップS204)ことによって、気体が逆流しないようにする。容器5内圧力P0が所定の圧力P0thを超えている場合(ステップS204,Yes)、制御信号S6による吐出終了指示の有無を判断し(ステップS205)、吐出終了指示がある場合(ステップS205,Yes)、ポンプ4の駆動制御を終了する。
【0029】
一方、容器5内圧力P0が所定の圧力P0thを超えていない場合(ステップ204,No)、ポンプ4の出力を調節し(ステップS206)、容器5内圧力P0が所定の圧力P0thを超えるようにする。
【0030】
図9は、ヒータ駆動部19の動作手順を示すフローチャートである。図9に示すように、ヒータ駆動部19は、制御部2から制御信号S7により駆動指示を入力すると(ステップS301,Yes)、相対湿度計16bから測定信号S11を入力し、容器5内の相対湿度の測定を行ない(ステップS302)、容器5内の相対湿度が所定の値以上で有るか否かを判断する(ステップS303)。容器5内の相対湿度が所定の値以上で有る場合(ステップS303,Yes)、制御信号S7により吐出終了の指示の有無を判断し(ステップS304)、吐出終了の指示が有る場合(ステップS304,Yes)、ヒータ17の駆動制御を終了する。
【0031】
一方、容器5内の相対湿度が所定の値以上でない場合(ステップS303,No)、ヒータ17を駆動加熱し(ステップS305)、容器5内の液体6を加熱し、容器5内の相対湿度を増加させる。
【0032】
上述の制御部2、ポンプ駆動部20、およびヒータ駆動部19の動作によって、吐出チップ10の分注液体15の蒸発が抑制される。そこで、この分注液体15の蒸発抑制について説明する。図10−1は、吐出チップ10と吐出チャンバ9とが分離された状態を示す断面模式図である。図10−1に示すように、吐出チャンバ9の開閉機構等(図示せず)によって、吐出チップ10を露出させ、分注液体15の供給機構等(図示せず)によって、リザーバ11に分注液体15を充填するとともに流路12を介して吐出ノズル13に分注液体15を保持させる。分注液体15が充填された後、吐出チャンバ9によって、吐出チップ10を密閉する。
【0033】
図10−2は、吐出チップ10が吐出チャンバ9によって密閉された状態を示す断面模式図である。吐出チップ10は、吐出チャンバ9によって密閉された後、配管7cから加湿された気体が導入され、吐出チャンバ9内の相対湿度は所定の値以上となる。
【0034】
すなわち、分注液体15中の水分の蒸発と吐出チャンバ9内の水蒸気の液化とが平衡状態となり、分注液体15の蒸発が抑制されるとともに濃度の変化が防止される。この結果、流路12および吐出ノズル13付近における分注液体15の析出物の発生がなくなり、析出物による閉塞が防止され、分注液体15の吐出動作が確実に行なえる。なお、容器5とバルブ8aとの間にポンプを増設し、ポンプ4の負荷を軽減するとともに効率良く加湿された気体を吐出チャンバ9内に送出するようにしてもよい。
【0035】
この実施の形態3では、ヒータ17を用いることで吐出チャンバ9によって吐出チップ10を密閉した後、吐出チャンバ9内の相対湿度を所定の値以上に保つ能力を高め、分注液体15の蒸発を抑制するとともに分注液体15の析出物による流路12および吐出ノズル13における閉塞を防止することによって、確実に分注動作が連続して行なえる。
【0036】
(実施の形態4)
つぎに、この発明にかかる実施の形態4について説明する。実施の形態1では、吐出チャンバ内の温度を冷却することによって吐出チャンバ内の相対湿度を所定の値以上に保つようにしていた。また、実施の形態2では、吐出チャンバに加湿された気体を導入し、吐出チャンバ内の相対湿度を所定の値以上に保つようにしていた。また、実施の形態3では、吐出チャンバに送出する気体の加湿を促進させるため、バブラを加熱していた。この実施の形態4では、吐出チャンバ内に加湿された気体を導入するとともに吐出チップの温度を冷却し、確実に吐出チャンバ内の相対湿度を所定の値以上に保つようにしている。
【0037】
図11は、この発明の実施の形態4にかかる分注装置200の概要構成を示すブロック図である。図11に示すように、この分注装置200は、図5に示した分注装置200の制御部2を制御部2Cに代え、冷却部24と、冷却部24を循環する冷却媒体である冷媒25と、冷媒25を循環駆動する冷媒駆動部26とを有する。その他の構成は、実施の形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0038】
つぎに、この分注装置200の分注動作について説明する。図12は、この分注装置200の制御部2Cが行なう動作手順を示すフローチャートである。図12に示すように、ポンプ駆動部3およびヒータ駆動部19を駆動させてからの動作手順(ステップS601〜S609)は、図7に示した動作手順(ステップS1011〜S109)に対応する。吐出チャンバ9内の相対湿度が所定の値以上で無い場合(ステップS608,No)、制御部2Cは、制御信号S12を冷媒駆動部26に出力し、冷媒25を循環させ、冷却部24を介して吐出チップ10を冷却し(ステップS610)、吐出チャンバ9内の相対湿度を所定の値以上に保つ。
【0039】
この実施の形態4では、吐出チャンバ9内に加湿された気体を導入するバブラと吐出チップ10を冷却する冷媒25とを備え、確実に吐出チャンバ9内の相対湿度を所定の値以上にするようにしている。なお、この実施の形態4では、加湿された気体を導入後、吐出チャンバ9内を冷却していたが、この手順を逆にしてもよいし、同時に行なうようにしてもよい。また、容器5内の液体6を加熱するヒータ17を設けるようにしていたが、ヒータ17を設けなくてもよい。また、吐出チップ10と吐出チャンバ9とが分離された状態(図10−1)で、あらかじめ吐出チップ10を冷却しておいても良い。また、冷媒25として液体、あるいは気体を用いてもよい。
【0040】
この実施の形態4では、空間内の気体と接触する吐出チップ10を冷却するようにしているため、吐出チップ10に充填されている分注液体15が直接冷却され、分注液体15の蒸発の抑制効果が極めて大きい。もちろん、気体の加湿等を同時に行なわず、吐出チップ10の冷却のみを行なった場合でも、分注液体15の蒸発抑制の効果はある。
【0041】
(実施の形態5)
つぎに実施の形態5について説明する。上述の実施の形態1〜5では、吐出チャンバに湿った気体を導入し、吐出チャンバ内の気体温度を冷却し、あるいは吐出チップを冷却し、分注液体からの蒸発を抑制するようにしていたが、この実施の形態4では、分注液体が蒸発する空間を狭くし、蒸発を抑制するようにしている。
【0042】
図13は、この実施の形態5にかかる分注装置300の概要構成を示すブロック図である。図13に示すように、この分注装置300は、図5に示した分注装置1から容器5、液体6、ヒータ17、相対湿度計16a,16b、圧力計21、ヒータ駆動部19を取り去り、吐出チャンバ9を吐出チャンバ9aに代え、制御部2を制御部2Dに代え、ポンプ駆動部20をポンプ駆動部20Dに代えている。また、吐出チャンバ9aは、薄く柔軟性のある樹脂材等によって実現される膜部材9bを有し、この膜部材9bによって吐出チャンバ9a内が仕切られている。
【0043】
この膜部材9bと吐出チップ10とによって形成される空間は、極めて微小であるため、吐出チャンバ9aによって密閉された後、分注液体15が蒸発する蒸発量は、微小となる。したがって、たとえ膜部材9bと吐出チップ10とによって形成された空間が乾いていても蒸発量が制限される。この結果、分注液体15の析出が抑制され、析出物による閉塞が防止できる。分注液体15を吐出する場合には、バルブ8bを「閉」にするとともにバルブ8aを「開」にすると、膜部材9bが変形し、膜部材9bと吐出チップ10とによって形成される空間を加圧し、分注液体15を吐出させる。
【0044】
この実施の形態5では、吐出チップ10と膜部材9bとによって形成される空間を微小にして分注液体の蒸発量を抑制し、分注液体15の析出による閉塞を防止できる。
【0045】
(変形例1)
つぎに実施の形態5の変形例1について説明する。上述の実施の形態1〜5では、吐出チャンバに気体を導入して加圧し、分注液体を吐出させるようにしていたが、この実施の形態5の変形例1では、吐出チャンバを変形シート部材で覆い、この変形シート部材を変形させることによって分注液体を吐出させている。
【0046】
図14は、この実施の形態5の変形例1にかかる吐出チップ10cと吐出チャンバ9dと変形シート部材9cとの接続関係を示す分解斜視図である。図14に示すように、吐出チップ10cは、リザーバ11、流路12、吐出ノズル13を有し、吐出チャンバ9dは、リザーバ11、流路12、吐出ノズル13とによって形成される形状に対応した形状の孔を有する。この変形シート部材9cを変形させることによって、吐出ノズル13内の分注液体を吐出するものである。
【0047】
この実施の形態5の変形例1では、分注液体15が蒸発する空間を微小にし、分注液体15の蒸発を抑制するとともに変形シート部材9cを変形させることによって、分注液体を吐出することができるので、装置の構成が簡素化する。
【0048】
(変形例2)
つぎに実施の形態5の変形例2について説明する。実施の形態5では、吐出チップが1つの吐出ノズルを有していたが、この変形例では、複数の吐出ノズルが吐出チップにアレイ状に配置され、一度の操作で同時に複数の分注吐出が行なえるようにしている。
【0049】
図15は、この実施の形態5の変形例2にかかる吐出チップ10dと吐出チャンバ9fと変形シート部材9eとを示す分解斜視図である。図15に示すように、吐出チップ10dは、アレイ状に複数の吐出ノズル13、流路12、リザーバ11を有している。吐出チャンバ9fは、吐出チップ10dに配置された各吐出ノズル位置に対応した位置に矩形状の空間を有し、変形シート部材9eによって全体が被覆されている。
【0050】
分注液体15を分注吐出する場合、分注吐出したい所望の位置に対応した位置の変形シート部材9eを加圧すると、同時に複数の分注吐出ができる。なお、この変形例では、吐出チャンバ9fは、矩形状の空間を有していたが、この空間の形状は、矩形状に限る必要はない。以上、実施の形態1〜5では、リザーバ11、吐出ノズル13、流路12を有する吐出チップ10を用いた分注装置について説明してきたが、リザーバ、流路を持たず吐出ノズルの容積によって計量した液体を吐出する吐出チップを用いても同様の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の実施の形態1にかかる分注装置の概要構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1にかかる制御部が行なう制御動作の手順を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2にかかる分注装置の概要構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2にかかる制御部が行なう制御動作の手順を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態3にかかる分注装置の概要構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態3にかかる吐出ノズル、流路、およびリザーバの外観を示す斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態3にかかる制御部が行なう制御動作の手順を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態3にかかるポンプ駆動部が行なう駆動制御の手順を示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態3にかかるヒータ駆動部が行なう駆動制御の手順を示すフローチャートである。
【図10−1】この発明の実施の形態3にかかる吐出チャンバと吐出チップとが分離した状態を示す模式図である。
【図10−2】この発明の実施の形態3にかかる吐出チャンバによって吐出チップが密閉された状態を示す模式図である。
【図11】この発明の実施の形態4にかかる分注装置の概要構成を示すブロック図である。
【図12】この発明の実施の形態4にかかる制御部が行なう制御動作の手順を示すフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態5にかかる分注装置の概要構成を示すブロック図である。
【図14】この発明の実施の形態5の変形例1にかかる吐出チャンバ、吐出チップ、変形シート部材の分解斜視図である。
【図15】この発明の実施の形態5の変形例2にかかる吐出チャンバ、吐出チップ、変形シート部材の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1,1A,100,200,300 分注装置
2,2A,2B,2C 制御部
3,3B バルブ駆動部
4,4a ポンプ
5 容器
6 液体
7a,7c,7d 配管
8a,8b バルブ
9,9A,9B,9a,9d 吐出チャンバ
9b 膜部材
9e 変形シート部材
10,10c,10d 吐出チップ
11 リザーバ
12 流路
13 吐出ノズル
14 吐出口
15 分注液体
16a,16b 相対湿度計
17 ヒータ
19 ヒータ駆動部
20,20A ポンプ駆動部
21 圧力計
22 冷却素子駆動部
23 冷却素子
24 冷却部
25 冷媒
26 冷媒駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を保持し、その容積によって前記液体の体積を計量する吐出ノズルを有する吐出チップと、前記吐出チップを覆う吐出チャンバと、を具備し、
前記吐出チップと前記吐出チャンバとによって形成された空間を加圧し、前記吐出ノズルが保持する前記液体を吐出して分注する分注装置において、
前記空間内の気体の相対湿度を所定の値に近づける相対湿度調整手段を有することを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記所定の値は、80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記相対湿度調整手段は、前記空間内の気体を冷却する冷却手段であることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項4】
前記冷却手段は、前記気体と接触する部材を冷却することを特徴とする請求項3に記載の分注装置。
【請求項5】
前記相対湿度調整手段は、前記空間を加圧する気体を加湿する加湿手段であることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項6】
前記気体の湿度を検出する湿度検出手段をさらに有すること特徴とする請求項5に記載の分注装置。
【請求項7】
前記吐出チップは、前記吐出ノズルと接続された流路を通じて毛細管力により当該吐出ノズルに導入される前記液体を保持するリザーバをさらに有し、
前記リザーバ及び前記吐出ノズル及び前記流路に保持された前記液体は、前記空間内の気体と接触することを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項8】
前記液体は、血液、血液の抽出成分、唾液、リンパ液等の体液、もしくはこれらの体液から抽出される液体であることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−78650(P2007−78650A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270685(P2005−270685)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】