説明

分注装置

【課題】蓋付きの試料容器に対する分注を効率よく行うことができ、蓋に付着した試料が別の試料に混入することを防止できる分注装置を提供することを目的する。
【解決手段】試料容器8に対して相対的に移動して試料容器8に試料を吐出する分注ヘッド4に蓋捕捉部32を備える。蓋捕捉32は分注ヘッド4に対して揺動自在なアーム38とアーム38の下端部に設けられた吸着パッド39を有して成り、蓋捕捉部揺動シリンダ24によってアーム38を揺動させて、吸着パッド39に吸着して捕捉した蓋9を分注ヘッド4の側方に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創薬スクリーニング分野、バイオテクノロジー、医学分野等で試料の分注に用いられる分注装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物質の生化学反応等の試験を系統的に行う装置として、複数のウェルが格子状に配列されたマイクロタイタープレート等の試料容器に試薬や薬液等の試料を分注する分注装置が知られている。分注装置には移動自在な移動ステージに試料吐出用の複数のノズルを備えた分注ヘッドが備えられており、分注ヘッドは試料容器の上方に移動して試料容器に試料を吐出する。
【0003】
試料容器にはウェル内にごみや埃などが混入しないようにするため、着脱式の蓋が設けられることがある。このような蓋付きの試料容器に分注を行うときには、分注を始める前に試料容器から蓋を取り外す必要があり、このため分注ヘッドとは別個に設けられた移動ステージに蓋の着脱を行うための蓋着脱装置を取り付けたものが知られている。
【特許文献1】特開2005−300200号公報
【特許文献2】特開平9−281115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように分注ヘッドとは別に蓋着脱装置を設けたものでは、分注ヘッドと蓋着脱装置は互いに干渉しないように移動させる必要があるため、分注ヘッドの動作と蓋着脱装置の動作とが複雑に入り乱れてしまい、効率が悪いという問題点があった。また、蓋着脱装置が試料容器から取り外した蓋は必ずしも元の試料容器に戻されるとは限らないので、蓋に付着した試料が別の試料に混入してしまうおそれもあった。
【0005】
そこで本発明は、蓋付きの試料容器に対する分注を効率よく行うことができ、蓋に付着した試料が別の試料に混入することを防止できる分注装置を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の分注装置は、着脱自在な蓋を備えた試料容器に蓋を取り外した状態で試料を分注する分注装置であって、試料容器に対して相対的に移動して試料容器に試料を吐出する分注ヘッドと、分注ヘッドに設けられて蓋を捕捉する蓋捕捉部と、蓋捕捉部を駆動して蓋捕捉部により捕捉された蓋を分注ヘッドの側方に移動させる蓋捕捉部駆動手段とを備えた。
【0007】
請求項2に記載の分注装置は、請求項1に記載の分注装置において、蓋捕捉部は分注ヘッドに対して揺動自在なアームを有して成り、蓋捕捉部駆動手段はアームを分注ヘッドに対して揺動させて蓋捕捉部によって捕捉された蓋を分注ヘッドの側方に移動させる。
【0008】
請求項3に記載の分注装置は、請求項2に記載の分注装置において、アームは蓋捕捉部駆動手段に駆動されて分注ヘッドに対して揺動するとき、捕捉した蓋を分注ヘッドに近づけるように動作する。
【0009】
請求項4に記載の分注装置は、請求項2又は3に記載の分注装置において、蓋捕捉部はアームの下端に設けられた吸着部により蓋を吸着して捕捉する。
【0010】
請求項5に記載の分注装置は、請求項2乃至4のいずれかに記載の分注装置において、アームは分注ヘッドの両側部に一対設けられており、これら一対のアームの下端部を開閉させて試料容器を挟持させるアーム開閉手段を備えた。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分注装置では、分注ヘッドにより試料容器に試料を分注している間、分注前に蓋捕捉部によって捕捉した蓋を分注ヘッドの側方に移動(退去)させておくことができるので、分注前の蓋の取り外しから分注、そして分注後の蓋の戻しまでの一連の動作をスムーズに行うことができ、蓋付きの試料容器に対する分注を短時間に効率よく行うことができる。また、分注前に試料容器から取り外した蓋は分注後には必ず元の試料容器に戻されるので、蓋に付着した試料容器内の試料が別の試料に混入することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施の形態における分注装置の斜視図、図2は本発明の一実施の形態における試料容器及び蓋の斜視図、図3は本発明の一実施の形態における分注ヘッドの正面図、図4は本発明の一実施の形態における分注ヘッドの側面図、図5は本発明の一実施の形態における分注ヘッドの制御系を示すブロック図、図6は本発明の一実施の形態における分注ヘッドの正面図、図7及び図8は本発明の一実施の形態における分注ヘッドの側面図、図9及び図10は本発明の一実施の形態における分注ヘッドの正面図である。
【0013】
図1において、分注装置1は箱型中空のカバー部材2と、カバー部材2内に設けられたテーブル3と、テーブル3の上方を移動自在な移動ステージ(図示せず)に取り付けられた分注ヘッド4とを備えている。分注ヘッド4には試料吐出用の複数のノズル5が下方に延びており、各ノズル5には円錐形状の中空部材であるティップ6が装着されている。
【0014】
テーブル3の上面には複数の作業ステージ7が設けられている。作業ステージ7としては、分注ヘッド4から試薬や薬液等の試料が分注される試料容器(例えばマイクロタイタープレート)8を載置するための試料容器載置ステージ、ノズル或いはティップ6の先端を洗浄する洗浄ステージ10、リザーバ11等で供給される試料や試薬などを冷却する冷却ステージ、容器に入った液体を攪拌する攪拌ステージなどがある。これらの作業ステージ7は分注作業に応じたものが選択されてテーブル3に載置されている。
【0015】
カバー部材2の前面には分注装置1の外部からテーブル3にアクセスするためのアクセス開口12が設けられており、アクセス開口12はカバー部材2を上下に移動するシャッター部材13によって開閉自在になっている。アクセス開口12の下縁部分には作業ステージ7に繋がる電線や配管等をはじめとする複数のケーブル類のコネクタ14が同一方向を向くように一箇所にまとめられている。
【0016】
図2において、試料容器8には複数のウェル8aが格子状に配列されており、これらウェル8aの上方を覆うように蓋9が着脱自在に設けられている。分注ヘッド4のノズル5はこれらのウェル8aの配列に対応するように2次元に配列されている。
【0017】
図3及び図4において、分注ヘッド4の前面(図3の紙面の手前側)の上部には断面L字状の金具21が取り付けられており、この金具21の水平部21aの上面には蓋捕捉部揺動シリンダ24の本体部22の下端部が固設されている。この本体部22にはロッド部材23が挿設されており、ロッド部材23は金具21の水平部21aを貫通して下方へ突出している。本体部22とロッド部材23は蓋捕捉部揺動シリンダ24を構成している。
【0018】
ロッド部材23の下端部にはブロック部材25が取り付けられており、このブロック部
材25には分注ヘッド4の前後方向に延びた長穴溝25aが分注ヘッド4の左右方向に貫通して設けられている。
【0019】
分注ヘッド4の左右両側部にはそれぞれカムプレート26が取り付けられており、各カムプレート26には弧状のカム溝27が形成されている。各カムプレート26には分注ヘッド4の左右外方に突出した枢支ピン28が設けられており、各枢支ピン28には揺動プレート29が分注ヘッド4の前後面内(図4の紙面と平行な面内)に揺動自在に取り付けられている。
【0020】
各揺動プレート29には分注ヘッド4の前上方に向かって斜めに延びたレバー部材の下端部が固設されており、各レバー部材30の上端部はブロック部材25の長穴溝25a内を分注ヘッド4の左右方向に水平に延びた水平部材31の両端部に枢支されている。このため、蓋捕捉部揺動シリンダ24が作動してロッド部材23が本体部22に対して上下方向に移動し、これによりブロック部材25が昇降すると、左右のレバー部材30はその上端部同士を連結する水平部材31を長穴溝25a内で移動させつつ、一対の揺動プレート29を枢支ピン28まわりに揺動させる。
【0021】
各揺動プレート29には蓋捕捉部32が設けられている。各蓋捕捉部32は、揺動プレート29から下方に延びて設けられた2本の平行なガイド部材33、これら2本のレール部材31の下端部を連結する連結部材34、レール部材31に沿ってスライドするスライドプレート35、スライドプレート35の外面に設けられた支軸支持部36によって両端が支持されたアーム支軸37、アーム支軸37によって中間部が支持され、分注ヘッド4の上下方向に延びて分注ヘッド4の左右方向に揺動自在なアーム38及びアーム38の下端部に設けられた吸着パッド(吸着部)39を有している。
【0022】
図3において、スライドプレート35から内方(分注ヘッド4の中心側)へ突出して延びた第1ばね係止部41と連結部材34から内方へ突出して延びた第2ばね係止部42との間にはスライドプレート付勢ばね43が掛け渡されている。このため、各スライドプレート35はスライドプレート付勢ばね43に付勢されて連結部材34側へ移動しようとするが、各スライドプレート35から内方へ突出して延びたカムフォロア44がカム溝27内に位置しているため、スライドプレート35はそのカムフォロア44をカム溝27の内周縁に常時当接させた状態を保持する。
【0023】
各アーム38のアーム支軸37よりも上側の部分とスライドプレート35の間にはアーム付勢ばね45が掛け渡されており、このアーム付勢ばね45により、各アーム38はその下端部が外方に移動する方向(両アーム38の下端部同士の間隔が広がる方向)に常時付勢されている。
【0024】
各スライドプレート35にはアーム開閉シリンダ46がそのピストン46aを外方に向けて設けられている。各アーム開閉シリンダ46のピストン46aはアーム38の上端部に当接しており、アーム開閉シリンダ46がピストン46aを分注ヘッド4の外方に突出させていくと、アーム38はアーム付勢ばね45の付勢力に抗して揺動し、下端部を内側(分注ヘッド4の中心側)に移動させる。
【0025】
図3において、アーム38はアーム支軸37よりも下方の部分が内方に屈曲しており、下端部にはエンドキャップ47が取り付けられている。各エンドキャップ47には内方に突出した突起47aが設けられており、その下面には前述の吸着パッド39が吸着面を下に向けた状態で、分注ヘッド4の前後方向に複数個並んで設けられている(図4も参照)。
【0026】
図3において、アーム開閉シリンダ46のピストン46aの外方への突出量が最小であるときの両エンドキャップ47の突起47aの先端部同士の間隔Wmaxは試料容器8の幅Wよりも大きく(この状態をアーム38が開いた状態とする)、アーム開閉シリンダ46のピストン46aの外方への突出量が最大であるときの左右の吸着パッド39同士の間隔Wminは試料容器8の幅Wよりも小さい(この状態をアーム38が閉じた状態とする)。なお、図3において、両エンドキャップ47の間隔が最も広く描かれたアーム38はピストン46aの突出量が最小のときの状態を示すもの(図9も同じ)であり、両エンドキャップ47の間隔が最も狭く描かれたアーム38はピストン46aの突出量が最大のときの状態を示すもの(図6も同じ)である。
【0027】
各アーム38は中空のパイプ状に形成されており、その内部はエンドキャップ47から吸着パッド39に繋がる真空管路になっている。各アーム38の上端部には真空ホース接続部48を介して真空ホース49が接続されており、真空ホース49は真空源51(図5)に接続されている。真空源51と真空ホース49の間には吸着オンオフバルブ52が介装されており、この分注装置1に備えられた制御装置53から吸着オンオフバルブ52を作動させることにより、吸着パッド39の下面の吸着面に真空吸着力を発生させたり(吸着オン)、発生させた真空吸着力を解除したり(吸着オフ)することができる。
【0028】
この分注装置1において、蓋捕捉部揺動シリンダ24はその伸縮動作によって左右の蓋捕捉部32を分注ヘッド4の前後面内で揺動させる。蓋捕捉部揺動シリンダ24と空圧源54(図5)を繋ぐ図示しない空圧路にはアーム揺動バルブ55が介装されており、制御装置53からアーム揺動バルブ55のスプールを作動させ、空圧源54から蓋捕捉部揺動シリンダ24に供給されるエアの通路を切り替えることによって、蓋捕捉部揺動シリンダ24の伸縮動作を行わせることができる。
【0029】
また、この分注装置1において、アーム開閉シリンダ46は、ピストン46aの突没動作によってアーム38を分注ヘッド4の左右面内で揺動させる。アーム開閉シリンダ46と空圧源54とを繋ぐ図示しない空圧路にはアーム開閉バルブ56が介装されており、制御装置53からアーム開閉バルブ56のスプールを作動させ、空圧源54からアーム開閉シリンダ46に供給されるエアの通路を切り替えることによって、アーム開閉シリンダ46のピストン46aの突没動作を行わせることができる(図5)。
【0030】
このような構成の分注装置1では、分注ヘッド4によって試料容器8に試料を分注する前に蓋捕捉部32によって試料容器8から蓋9を取り外し、分注を行っている間には、その取り外した蓋9を分注ヘッド4の側方(後方)へ移動させておくことができる。そして、分注ヘッド4による分注が終了したら、蓋9を元の試料容器8に戻して試料容器8内に埃やごみ等が入らないようにすることができる。以下、図6、図7及び図8を用いて試料容器8から蓋9を取り外して分注ヘッド4の側方へ移動させるときの蓋捕捉部32の動作と、分注ヘッド4の側方へ移動させた蓋9を元の試料容器8に戻すときの蓋捕捉部32の動作を説明する。
【0031】
分注ヘッド4による試料容器8への試料の分注を行うには、先ず、分注ヘッド4を上面に蓋9付きの(蓋9が上面に載置された)試料容器8の直上に移動させる。そして、制御装置53からアーム開閉バルブ56の作動制御を行ってアーム開閉シリンダ46のピストン46aの突出量を最大にし、両アーム38を閉じた状態にしたうえで分注ヘッド4を下降させ、両アーム38の下端の吸着パッド39を蓋9の上面に押し付ける。そして、制御装置53から吸着オンオフバルブ52の作動制御を行い、吸着パッド39の吸着面に真空吸着力を発生させて蓋9を吸着させる。これにより蓋9は蓋捕捉部32に捕捉された状態となるので、続いて分注ヘッド4を上昇させれば、蓋9を試料容器8から取り外すことができる(図6)。
【0032】
蓋9を試料容器8から取り外したら、制御装置53からアーム揺動バルブ55の作動制御を行って蓋捕捉部揺動シリンダ24を伸長させ、水平部材31及びレバー部材30を介して揺動プレート29を枢支ピン28まわりに上方に揺動させる。これにより左右のアーム38は下方に垂下した初期姿勢(このときカムフォロア44は枢支ピン28の直下にある。図4参照)から水平姿勢になるまで枢支ピン28まわりに揺動する(図7及び図8)。これにより蓋捕捉部32に捕捉された蓋9は、分注ヘッド4の側方(後方)に移動する。
【0033】
また、このように左右のアーム38が垂下した初期姿勢から水平姿勢になるまでの間に、各アーム38を支持するスライドプレート35はそのカムフォロア44をカム溝27の内周縁に沿わせながらガイド部材33上をスライドするが、枢支ピン28からカム溝27の内周縁までの距離は、アーム38が垂下した姿勢からの揺動角が大きくなるに従って徐々に短くなるようになっているので、アーム38が初期姿勢から水平姿勢に近づくに従って、スライドプレート35は捕捉した蓋9を分注ヘッド4に近づけるようにガイド部材33上をスライド移動する。
【0034】
このようにして蓋捕捉部32によって捕捉した蓋9を分注ヘッド4の側方に移動させると、蓋9は試料の吐出口であるティップ6の下端部から退去した状態となるので、分注ヘッド4による試料容器8(各ウェル8a内)への試料の分注ができるようになる。そして、このように蓋9を分注ヘッド4の側方に退去させた状態を保持したまま、分注ヘッド4による試料容器8内への試料の分注を行う。
【0035】
分注ヘッド4による試料容器8への分注が終了したら、蓋9を分注ヘッド4の側方に移動させたときとは逆の手順によって蓋9を元の試料容器8へ戻す。これには制御装置53からアーム揺動バルブ55の作動制御を行って蓋捕捉部揺動シリンダ24を収縮させ、水平部材31及びレバー部材30を介して揺動プレート29を枢支ピン28まわりに下方に揺動させる。これにより左右のアーム38は水平の姿勢から下方に垂下する姿勢になるまで枢支ピン28まわりに揺動する。これにより蓋捕捉部32に捕捉された蓋9は分注ヘッド4の側方からティップ6の下方へ移動するので、続いて分注ヘッド4を下降させて蓋9を試料容器8に被せ、制御装置53から吸着オンオフバルブ52の作動制御を行って吸着パッド39による蓋9の真空吸着を解除すれば、蓋9を元の試料容器8に戻すことができる。このように、本実施の形態における分注装置1では、分注前の蓋9の取り外しから分注、そして分注後の蓋9の戻しまでの一連の動作をスムーズに行うことができる。
【0036】
また、この分注装置1では、左右のアーム38の開閉動作(分注ヘッド4の左右方向への揺動動作)によって、試料容器8を挟持して所望の場所へ搬送することができる。ここでは、試料容器8は必ずしも蓋9付きである必要はない。
【0037】
これには先ず、分注ヘッド4を試料容器8の直上に移動させる。そして、制御装置53からアーム開閉バルブ56の作動制御を行ってアーム開閉シリンダ46のピストン46aの突出量を最小にし、両アーム38を開いた状態にする。そして分注ヘッド4を下降させ、両アーム38の下端に取り付けられたエンドキャップ47の突起47aを試料容器8の下方に位置させる(図9)。そして、制御装置53からアーム開閉バルブ56の作動制御を行って左右のアーム開閉シリンダ46のピストン46aを分注ヘッド4の外側に突出させ、両アーム38を閉じる方向に駆動する。これにより試料容器8は両アーム38のエンドキャップ47において挟持される。また、この状態から分注ヘッド4を上昇させると、両アーム38のエンドキャップ47の突起47aは試料容器8の下面に下方から当接して掬い上げるので、両アーム38によって試料容器8を安定した状態で搬送できる状態となる。この状態から分注ヘッド4を移動させれば試料容器8を所望の場所へ搬送することが
できる。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態における分注装置1は、試料容器8に対して相対的に移動して試料容器8に試料を吐出する分注ヘッド4と、分注ヘッド4に設けられて蓋9を捕捉する蓋捕捉部32と、蓋捕捉部32を駆動して蓋捕捉部32により捕捉された蓋9を分注ヘッド4の側方に移動させる蓋捕捉部揺動シリンダ24(蓋捕捉部駆動手段)を備えており、分注ヘッド4により試料容器8に試料を分注している間、分注前に蓋捕捉部32によって捕捉した蓋9を分注ヘッド4の側方に移動(退去)させておくことができる。このため、分注前の蓋9の取り外しから分注、そして分注後の蓋9の戻しまでの一連の動作をスムーズに行うことができ、蓋9付きの試料容器8に対する分注を短時間に効率よく行うことができる。また、分注前に試料容器8から取り外した蓋9は分注後には必ず元の試料容器8に戻されるので、蓋9に付着した試料容器8内の試料が別の試料に混入することがない。
【0039】
また、本実施の形態における分注装置1では、蓋捕捉部32は分注ヘッド4に対して揺動自在なアーム38を有して成り、アーム38は蓋捕捉部揺動シリンダ24に駆動されて分注ヘッド4に対して揺動するとき、捕捉した蓋9を分注ヘッド4に近づけるように動作するので、分注ヘッド4の側方に移動させた後の蓋9の分注ヘッド4からの張り出し量を小さくすることができる。
【0040】
更に、本実施の形態における分注装置1では、アーム38は分注ヘッド4の両側部に一対設けられており、これら一対のアーム38の下端部を開閉させて試料容器8を挟持させるアーム開閉シリンダ46(アーム開閉手段)を備えているので、試料容器8に被せられた蓋9の着脱だけではなく、分注ヘッド4の移動によって試料容器8そのものの搬送を行うこともできる。
【0041】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述の実施の形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施の形態では、分注ヘッド4の両側部から垂下した2つのアーム38はその下部に設けられた吸着部(吸着パッド39)によって蓋9を吸着して捕捉する構成であったが、2つのアーム38を開閉させて蓋9を捕捉する構成としてもよい。但し、本実施の形態のように、蓋9を捕捉した後、その蓋9をアーム38の揺動によって分注ヘッド4の側方に移動させる場合には、確実な捕捉ができる吸着パッド39を用いた構成の方が好ましい。
【0042】
また、上述の実施の形態では、分注ヘッド4の両側部に一対のアーム38を垂下させてそれぞれのアーム38の下端部に吸着部(吸着パッド39)を設けた構成となっていたが、分注ヘッド4の両側部から垂下した2本のアームの下端部同士が分注ヘッド4の下方を横方向に延びる水平な連結部によって連結されており、その連結部の下面に吸着パッドが設けられた構成であってもよい。或いは、分注ヘッド4の片側から垂下した1本のアームがその下端部において水平に折れ曲がって分注ヘッド4の下方を横方向に延びる水平部を形成しており、その水平部の下面に吸着パッドが設けられた構成であってもよい。
【0043】
また、上述の実施の形態では、蓋捕捉部32が分注ヘッド4に対して揺動自在なアーム38を有しており、このアーム38を分注ヘッド4に対して揺動させることによって蓋9を分注ヘッド4の側方に移動させる構成であったが、蓋捕捉部は蓋捕捉部駆動手段に駆動されて捕捉した蓋9を分注ヘッド4の側方に移動させることができるようになっていればよく、蓋捕捉部が分注ヘッド4から水平に延びる水平部材とこの水平部材から垂下した垂直部材を有しており、垂直部材を水平部材に沿ってスライド移動させることによって蓋9を分注ヘッド4の側方に移動させる構成等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
蓋付きの試料容器に対する分注を短時間に効率よく行うことができる。また、蓋に付着した試料容器内の試料が別の試料に混入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態における分注装置の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態における試料容器及び蓋の斜視図
【図3】本発明の一実施の形態における分注ヘッドの正面図
【図4】本発明の一実施の形態における分注ヘッドの側面図
【図5】本発明の一実施の形態における分注ヘッドの制御系を示すブロック図
【図6】本発明の一実施の形態における分注ヘッドの正面図
【図7】本発明の一実施の形態における分注ヘッドの側面図
【図8】本発明の一実施の形態における分注ヘッドの側面図
【図9】本発明の一実施の形態における分注ヘッドの正面図
【図10】本発明の一実施の形態における分注ヘッドの正面図
【符号の説明】
【0046】
1 分注装置
4 分注ヘッド
8 試料容器
9 蓋
24 蓋捕捉部揺動シリンダ(蓋捕捉部駆動手段)
32 蓋捕捉部
38 アーム
39 吸着パッド(吸着部)
46 アーム開閉シリンダ(アーム開閉手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱自在な蓋を備えた試料容器に蓋を取り外した状態で試料を分注する分注装置であって、
試料容器に対して相対的に移動して試料容器に試料を吐出する分注ヘッドと、分注ヘッドに設けられて蓋を捕捉する蓋捕捉部と、蓋捕捉部を駆動して蓋捕捉部により捕捉された蓋を分注ヘッドの側方に移動させる蓋捕捉部駆動手段とを備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
蓋捕捉部は分注ヘッドに対して揺動自在なアームを有して成り、蓋捕捉部駆動手段はアームを分注ヘッドに対して揺動させて蓋捕捉部によって捕捉された蓋を分注ヘッドの側方に移動させることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
アームは蓋捕捉部駆動手段に駆動されて分注ヘッドに対して揺動するとき、捕捉した蓋を分注ヘッドに近づけるように動作することを特徴とする請求項2に記載の分注装置。
【請求項4】
蓋捕捉部はアームの下端に設けられた吸着部により蓋を吸着して捕捉することを特徴とする請求項2又は3に記載の分注装置。
【請求項5】
アームは分注ヘッドの両側部に一対設けられており、これら一対のアームの下端部を開閉させて試料容器を挟持させるアーム開閉手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−134066(P2008−134066A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318261(P2006−318261)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】