説明

分注装置

【課題】複数の分岐管の吐出量を個別に調整することができる分注装置を提供する。
【解決手段】上流側から供給された液体を下流側に送る送液管3と、送液管3の下流側で分岐する複数の分岐管5と、複数の分岐管5にそれぞれ設けられた複数のバルブ6を備えた分注装置に、複数のバルブ6のそれぞれに対応して複数のタイマーを設け、それぞれのタイマーに設定された開時間に基づいて対応するバルブ6の開閉動作を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分岐管から液体を吐出する分注装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液状の試料をウェルに分注する分注装置は、上流の液体供給源から供給された液体を下流に送る送液管と、送液管の下流で分岐する複数の分岐管を備え、液体供給源から送液管に供給された試料を、送液管から分岐した複数の分岐管によってウェルに吐出する形態のものが一般的である(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平5−126690号公報
【特許文献2】特開平7−103986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの分注装置では、各ウェルに分注される試料が等量であることが要求されるので、各分岐管からは同量の試料が吐出されなければならない。従来は分岐管や分岐管の先端に設けられるノズルの加工精度や組立精度を高めることで、各分岐後の流量を均等にする対応がとられてきた。しかし、精度の向上には限界があり、また精度の高い分岐管やノズルであっても経時的に磨耗や目詰まり等の劣化が進行するので、長時間にわたって吐出量を均等に保つのは難しい。
【0004】
そこで本発明は、複数の分岐管の吐出量を個別に調整することができる分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の分注装置は、上流の液体供給源から供給された液体を下流に送る送液管と、前記送液管の下流で分岐する複数の分岐管と、前記複数の分岐管にそれぞれ設けられた複数のバルブ、を備え、前記液体供給源から前記送液管に供給された液体を前記複数の分岐管から吐出する分注装置であって、前記複数のバルブのそれぞれに対応して設けられた複数のタイマーに設定された開時間に基づいて前記複数のバルブの開閉動作を制御するバルブ動作制御部を備えた。
【0006】
請求項2に記載の分注装置は、請求項1に記載の分注装置であって、前記複数の分岐管からの吐出量をそれぞれ増減するための補正値を入力する入力手段をさらに備え、前記バルブ動作制御部が、前記補正値とバルブの開時間の相関データに基づいて前記複数のタイマーに設定された開時間を更新する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数のバルブのそれぞれに対応して設けられた複数のタイマーに設定された開時間に基づいて各バルブの開閉動作を制御することで、複数の分岐管から同量の液体が吐出されるように調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。最初に、図1を参照して分注装置について説明する。容器1に収納された試料等の液体は、加圧ポンプ2によって送液管3に供給され、マニホールド4で複数の分岐管5(ここでは5本の分岐管を例示)に分給される。分岐管5に分給された試料の流量は各分岐管5のバルブ6の開閉によって調整し、流量調整された試料が分岐管5の端部の図示しないノズルから図示しないウェル等に吐
出される。流量センサ7は検出した流量に応じた電気信号を発信し、増幅器8を経て制御装置9に入力する。バルブコントローラ10は各バルブ6をそれぞれ独立して開閉させる。
【0009】
次に、図2を参照して制御装置について説明する。制御装置は制御部20と表示部21と操作・入力部22で構成されている。さらに制御部20は、処理演算部23とプログラム記憶部24とデータ記憶部25と流量読み取り部26とバルブ駆動部27で構成されている。プログラム記憶部24には、分注装置に特定の動作を実行させるための制御プログラムとして、通常運転プログラム30と試し吐出プログラム31と吐出設定プログラム32が予め記憶されている。データ記憶部25には、吐出量−時間テーブル33が予め記憶されるとともに書き換え可能な補正データ34が記憶されている。流量読み取り部26は、増幅器8から入力された電気信号に基づいて送液管3を流れた液体の量を読み取る。バルブ駆動部27には、個々のバルブ6の開時間を設定するタイマーTM1〜TM5が設けられており、バルブ駆動部27は、タイマーTM1〜TM5に設定された時間だけ各バルブ6を開くようにバルブコントローラ10の駆動を制御することで各バルブ6の開閉動作を制御する。
【0010】
通常運転プログラム30は、操作・入力部22から通常運転を実施したい旨の入力があったときに起動し、分注装置に容器1内の試料を各ノズルから分注する通常動作を実行させる。試し吐出プログラム31は、操作・入力部22から試し吐出を実施したい旨の入力があったときに起動し、最初に表示部21に条件設定画面を表示する。表示部21は例えばタッチ入力式液晶パネルを用いることができ、初期画面としてこれらのプログラムの選択ボタン表示しておくことで、任意のプログラムを画面上で入力することができる。また、操作・入力部22として画面上でカーソルを移動させるマウスやキーボードを用いることができる。
【0011】
図3に表示部21に表示される条件設定画面を示す。画面右上の吐出量入力ウィンドウ40には1本のノズルから吐出されるべき量をキーボードを用いて数値入力する。試し吐出ボタン41をタッチすると、分注装置において試し吐出プログラム31に基づいて試し吐出動作が実行され、各ノズルの実測吐出量がノズル番号に対応して吐出量表示ウィンドウ42に表示される。吐出量表示ウィンドウ42の右隣の補正値入力ウィンドウ43には、吐出量を補正したい量を増減ボタン44によって入力する。例えば、吐出量入力ウィンドウ40に入力した設定吐出量が300(ml)であった場合に、1番ノズルからの実測吐出量が吐出量表示ウィンドウ42に296(ml)と表示されたときは、補正値は+4(ml)となり、2番ノズルからの実測吐出量が吐出量表示ウィンドウ42に307(ml)と表示されたときは、補正値は−7(ml)となる。5番ノズルまで補正値を入力し、補正値記憶ボタン45をタッチすると、補正データ34への記憶、または既に記憶されたデータの更新が行われる。補正データ34は、図4に示すように、ノズル番号に対応する補正値h1〜h5が記憶される。補正値h1〜h5は当初は全てゼロに設定されており、補正値入力ウィンドウ43に入力される補正値が変更されると、変更された補正値に更新される。
【0012】
吐出設定ボタン46をタッチすると、吐出設定プログラム32が起動し、吐出量−時間テーブル33と補正データ34に基づいてタイマーTM1〜TM5に設定された各バルブ6の開時間を更新する。吐出量−時間テーブル33は、図5に示すように、吐出量VL1〜と時間t1〜が互いに関連付けられており、補正値として入力された吐出量と、この吐出量を確保するために必要なバルブの開時間の相関を規定したデータとなっている。吐出量VL1〜と時間t1〜の関係は分注装置に固有のものであるので、吐出量−時間テーブル33は分注装置の試運転等による実測データに基づいて予め作成されるものである。
【0013】
1番ノズルの補正値は+4であるので、バルブ駆動部27は、吐出量VL4に対応する時間t4を吐出量−時間テーブル33から読み取り、タイマーTM1に設定された開時間をt300からt300+t4に更新する。2番ノズルについても同様であり、吐出量VL7に対応する時間t7を吐出量−時間テーブル33から読み取り、タイマーTM2に設定された開時間をt300からt300−t7に更新する。全てのタイマーTM1〜TM5について開時間を更新した後に終了ボタン47をタッチすると、更新後の開時間がタイマーTM1〜TM5に設定される。次回の分注からは更新された開時間に基づいて各ノズル6の開閉動作の制御が行われ、各ノズルから同一の吐出量で試料の吐出が行われる。
【0014】
以上の構成において、バルブ駆動部27は吐出設定プログラム32に従って複数のバルブ6のそれぞれに対応して設けられた複数のタイマーTM1〜TM5に開時間を設定し、設定された開時間に基づいて複数のバルブ6の開閉動作を制御するバルブ動作制御部として機能する。また、操作・入力部22は、複数の分岐管5からの吐出量をそれぞれ増減するための補正値を入力する入力手段として機能する。
【0015】
最後に、図6を参照して試し吐出動作について説明する。本実施の形態の分注装置には5本のノズルが備わっているので、1番ノズルから5番ノズルまで順番に吐出を行い、各ノズルの吐出量をノズル番号毎に吐出量表示ウィンドウ42に表示する。具体的には、処理演算部23が最初にノズル番号カウンタをi=1に設定し(ST1)、バルブ駆動部27によって1番ノズルのバルブを設定吐出量VL300に対応する時間t300だけ開き、他のノズルのバルブは全て閉じた状態で1番ノズルより吐出を行う(ST2)。この吐出における送液管3の流量を流量読み取り部26によって読み取り(ST3)、処理演算部23が読み取り値にバルブの開時間t300を乗じて1番ノズルの実測吐出量を算出する(ST4)。この後、ノズル番号カウンタに1を加え(ST5)、2番ノズル以降、5番ノズルに至るまで全ノズルについて実測吐出量の算出が完了すると、吐出量表示ウィンドウ42に全ノズルについて実測吐出量を表示する(ST6)。
【0016】
この試し吐出動作によって全ノズルについて実測吐出量を把握することができるので、設定吐出量に対して実測吐出量に許容値を超えるばらつきがある場合には、ノズル毎に補正値を入力することで各バルブ6の開時間を個別に変更し、吐出量を全てのノズル間で同一に較正することができる。試し吐出動作は任意のタイミングで行うことが可能であるが、分注装置に備えられた複数のノズルのうち何れかを新たなノズルに交換した場合に行えば効果的であり、またノズル交換時に限らず、同じノズルを長時間にわたって使用している場合に定期的に行うことで、経時的に進行する磨耗や目詰まり等の劣化による吐出量の変動を補正し、吐出量を一定に保つことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明によれば、複数のバルブのそれぞれに対応して設けられた複数のタイマーに設定された開時間に基づいて各バルブの開閉動作を制御することで、複数の分岐管から同量の液体が吐出されるように調整することができるという利点があり、ウェルに吐出される試料の量を厳密に管理することが要求される分注装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の分注装置の全体構成図
【図2】本発明の実施の形態の分注装置の制御構成図
【図3】本発明の実施の形態の分注装置において試し吐出プログラムを起動したときの表示画面を示した図
【図4】本発明の実施の形態の分注装置に記憶された補正データを示す図
【図5】本発明の実施の形態の分注装置に記憶された吐出量−時間テーブルを示す図
【図6】本発明の実施の形態の分注装置における試し吐出動作のフローチャート
【符号の説明】
【0019】
1 容器
2 加圧ポンプ
3 送液管
5 分岐管
6 バルブ
27 バルブ駆動部
33 吐出量−時間テーブル
TM1〜TM5 タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流の液体供給源から供給された液体を下流に送る送液管と、前記送液管の下流で分岐する複数の分岐管と、前記複数の分岐管にそれぞれ設けられた複数のバルブ、を備え、前記液体供給源から前記送液管に供給された液体を前記複数の分岐管から吐出する分注装置であって、
前記複数のバルブのそれぞれに対応して設けられた複数のタイマーに設定された開時間に基づいて前記複数のバルブの開閉動作を制御するバルブ動作制御部を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記複数の分岐管からの吐出量をそれぞれ増減するための補正値を入力する入力手段をさらに備え、
前記バルブ動作制御部が、前記補正値とバルブの開時間の相関データに基づいて前記複数のタイマーに設定された開時間を更新することを特徴とする請求項1に記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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