説明

分注装置

【課題】目詰まりを発生しやすい液体を対象とする分注作業において、小型・コンパクトで使い勝手に優れた分注装置を提供することを目的とする。
【解決手段】吐出ノズル11を列状に配列したノズル列が下面に設けられた分注ヘッドによって液体を吐出して分注する分注装置において、吐出ノズル11を超音波洗浄によって洗浄するノズル洗浄部10を、洗浄液を貯留する液貯留槽14と、この液貯留槽14の上部を覆ってこの液貯留槽14よりも大きな平面サイズで設けられ、ノズル列が上下方向に挿通可能な開口サイズで形成された開口部15bを有し、この開口部15bを介して液貯留槽14から溢れた洗浄液を一時的に収容するオーバーフロー槽15とで構成する。これにより、ノズル洗浄に必要な機能の占有面積を削減することができ、小型・コンパクトで使い勝手に優れた分注装置を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に設けられた液体収納用の凹部内に吐出ノズルによって液体を吐出して分注する分注装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゲノム創薬などのバイオ・メディカル研究分野では、試験対象の試料や試験の過程において使用される試薬などの各種の液体を、マイクロプレートなどの試験容器に小分けして吐出するための分注装置が用いられる。試験においては、必要に応じて定量の液体を正確に吐出することが求められるが、必要とされる液体量は微量である場合には、分注装置に使用される吐出ノズルとして細径のものが用いられる。このような細径の吐出ノズルを用いて吐出すると、液体が吐出ノズル内に滞留して液体の正常な流動を阻害するいわゆる「目詰まり」が発生しやすい。このため、このような用途に用いられる分注設備として、吐出ノズルを洗浄するノズル洗浄機能を備えたものが知られている(特許文献1参照)。この特許文献に示す例では、サンプリングノズルによって検査対象の液体を吸引して反応容器に吐出する分注工程において、洗浄液を貯留する洗浄プールと洗浄後の液を排出するための廃液槽とを用いてサンプリングノズルの洗浄を行うようにしている。
【特許文献1】特開昭62−228954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に示す例を含む先行技術には、小型・コンパクトで使用勝手に優れた設備を追求する上で、以下のような難点がある。すなわち上述の先行技術例においては、洗浄プールと廃液槽とを独立して設けていることから、ノズル洗浄機能を実現するための設備構成において小型化・コンパクト化には限界があり、目詰まりを発生しやすい液体を対象とする分注作業において、小型・コンパクトで使い勝手に優れた設備を実現することが困難であった。
【0004】
そこで本発明は、目詰まりを発生しやすい液体を対象とする分注作業において、小型・コンパクトで使い勝手に優れた分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の分注装置は、容器に設けられた液体収納用の凹部内に吐出ノズルによって液体を吐出して分注する分注装置であって、複数の前記吐出ノズルを列状に配列したノズル列が下面に設けられた分注ヘッドと、前記容器が載置される容器載置部と、前記ノズル列の複数の吐出ノズルを洗浄液によって洗浄するノズル洗浄部と、前記容器載置部および前記ノズル洗浄部を前記分注ヘッドに対して水平方向に相対移動させる移動手段と、前記移動手段および前記ノズル洗浄部を制御する制御部と、前記制御部による前記移動手段の目標移動位置を記憶する記憶部とを備え、前記ノズル洗浄部は、前記洗浄液を貯留する液貯留槽と、前記液貯留槽に洗浄液を供給する洗浄液供給管と、前記液貯留槽の上部を覆って前記液貯留槽よりも大きな平面サイズで設けられ、前記ノズル列が上下方向に挿通可能な開口サイズで形成された開口部を有しこの開口部を介して前記液貯留槽から溢れた前記洗浄液および前記吐出ノズルから排出される液体を一時的に収容するオーバーフロー槽と、前記オーバーフロー槽から前記洗浄液および前記液体を排出する排液管と、前記液貯留槽の底面から前記洗浄液に超音波振動を付与する振動付与手段とを有し、前記目標移動位置は、前記複数の吐出ノズルを前記洗浄液に浸漬させて前記超音波振動により洗浄するために前記ノズル列を前記開口部内に位置させるための洗浄作業位置と、前記複数の吐出ノズル内の液体を前記オーバーフロー槽内に排出するために前記ノズル列を前記オーバーフロー
槽の上方に位置させるための排液作業位置とを含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吐出ノズルを列状に配列したノズル列が下面に設けられた分注ヘッドによって液体を吐出して分注する分注装置において、吐出ノズルを洗浄液によって洗浄するノズル洗浄部を、洗浄液を貯留する液貯留槽と、この洗浄槽の上部を覆ってこの液貯留槽よりも大きな平面サイズで設けられ、ノズル列が上下方向に挿通可能な開口サイズで形成された開口部を有し、この開口部を介して液貯留槽から溢れた洗浄液を一時的に収容するオーバーフロー槽とで構成することにより、ノズル洗浄に必要な機能の占有面積を削減することができ、目詰まりを発生しやすい液体を対象とする分注作業において、小型・コンパクトで使い勝手に優れた分注装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態の分注装置の斜視図、図2は本発明の一実施の形態の分注装置における分注機構の斜視図、図3は本発明の一実施の形態の分注装置におけるノズル洗浄部の構成説明図、図4は本発明の一実施の形態の分注装置におけるノズル洗浄部の断面図、図5は本発明の一実施の形態の分注装置の制御系の構成を示すブロック図、図6,図7,図8は本発明の一実施の形態の分注装置の動作説明図である。
【0008】
まず図1を参照して分注装置100の構成を説明する。分注装置100は、ゲノム創薬などのバイオ・メディカル研究分野において、試験対象の試料や試験の過程において使用される試薬などの各種の液体を、マイクロプレートなどの容器に設けられた液体収納用の凹部に吐出して分注するために用いられるものである。
【0009】
図1において、基台1の上面は分注作業を行うための作業ステージ1aとなっている。基台1の上部にはカバー天井部2が設けられており、作業ステージ1aの上方には周囲を閉囲された作業ブース2aが形成される。作業ブース2a内には液体を吐出する1対の分注ヘッド3A,3Bが配設されており、分注ヘッド3A,3Bの下方の作業ステージ1aの中央には、XYテーブル5の上方に移動台6を配置した構成の作業部4が配設されている。作業部4および分注ヘッド3A、分注ヘッド3Bは分注機構を構成する。
【0010】
この分注機構について、図2を参照して説明する。図2に示すように、XYテーブル5はX軸テーブル5Xの上にY軸テーブル5Yを積層した構成のXYテーブルであり、Y軸テーブル5Yの上面には移動台6が結合されている。移動台6には、プレート載置部7、液滴除去部9およびノズル洗浄部10が配設されている。XYテーブル5を駆動することにより、プレート載置部7、液滴除去部9およびノズル洗浄部10は一体的にX方向、Y方向に水平移動する。プレート載置部7には、試験用の液体の容器であるマイクロプレート8が載置され、マイクロプレート8には液体収納用の凹部であるウェル8aが格子配列で複数設けられている。プレート載置部7は、容器であるマイクロプレート8が載置される容器載置部となっている。したがって移動テーブルであるXYテーブル5は、容器載置部であるプレート載置部7およびノズル洗浄部10が設けられた移動台6を水平方向に駆動することにより、プレート載置部7およびノズル洗浄部10を分注ヘッド3A,3Bに対して水平方向に相対移動させる移動手段となっている。
【0011】
分注ヘッド3A,3Bは同一構成であり、それぞれの下面には複数の吐出ノズル11を列状に配列したノズル列11Lがそれぞれ1列ずつ設けられている。ノズル列11Lにおける吐出ノズル11の配列ピッチは、マイクロプレート8におけるウェル8aのピッチと一致している。分注ヘッド3A,3Bには、液体供給管12を介して液体供給機構(図示省略)から試験用の液体が供給される(矢印b)。また分注ヘッド3A,3Bは、分注ヘ
ッド駆動部13によって昇降自在に構成されており、分注ヘッド駆動部13を駆動することにより、分注ヘッド3A,3Bは個別に昇降する(矢印c)。
【0012】
XYテーブル5を駆動してプレート載置部7を分注ヘッド3Aまたは分注ヘッド3Bの下方まで水平移動させ、当該分注ヘッドのノズル列11Lにマイクロプレート8の複数のウェル列のうち分注対象となるウェル列に合わせた状態で、当該ヘッドを下降させることにより、ノズル列11Lの各吐出ノズル11の先端部はウェル8a内に下降する。そしてこの状態で液体供給管12から液体を供給することにより、吐出ノズル11から液体がウェル8a内に吐出される。
【0013】
このように、分注ヘッド3A,3Bによって液体をマイクロプレート8に分注する作業を継続して実行する過程では、各吐出ノズル11について液滴付着や目詰まりなどの不具合が発生する場合がある。液滴付着は、分注ヘッド3A,分注ヘッド3Bに内蔵された液吐出機構によって吐出された液体の全量が完全に吐出ノズル11の吐出口から落下せず、一部が液滴となって吐出ノズル11の下端部に付着した状態となる現象である。このような液滴付着が生じたまま分注操作を実行すると、実際にウェル8aに対して供給される液体の量がばらつき、分注精度を低下させることとなる。また目詰まりは、液体が吐出ノズル11内に滞留して液体の正常な流動を阻害する現象であり、分注操作において吐出不良の原因となる。
【0014】
このような不具合の発生を防止するため、本実施の形態においては、移動台6に液滴除去部9およびノズル洗浄部10をプレート載置部7と併せて備えるようにしている。液滴除去部9は吐出ノズル11の下端部に付着した液滴を除去する機能を有するものであり、分注操作を終了した後の分注ヘッド3A,3Bに対して液滴除去部9をアクセスさせて液滴除去動作を行わせることにより、液滴付着による分注精度のばらつきを抑えることができる。液滴除去部9には、ノズル列11Lにおける吐出ノズル11の配列ピッチに合わせて複数の吸引口9aが列状に形成されている。吸引口9aは吸引管(図10に示す吸引管24参照)に接続されており、各吐出ノズル11の下端部に液滴が付着した状態のノズル列11Lに吸引口9aの列位置を合わせた状態で、分注ヘッド3A,3Bを下降させることにより、付着した液滴を吸引口9aによって吸引除去することができる。
【0015】
ノズル洗浄部10は、1つのノズル列11Lを構成する複数の吐出ノズル11の下端部を一括して洗浄液によって洗浄して、吐出ノズル11の吐出口の内部や外面に滞留・付着する液体を除去する機能を有している。図3を参照して、ノズル洗浄部10の構成を説明する。図3(a)に示すように、ノズル洗浄部10は、液貯留槽14の上部をオーバーフロー槽15によって覆い、液貯留槽14の底面14cに振動子16を装着した構成となっている。液貯留槽14は上面が開放された直方体形状の箱形容器であり、貯留部14a内に洗浄液を貯留する。液貯留槽14の底部には貯留部14a内に洗浄液を供給する洗浄液供給管14bが設けられており、さらに洗浄液供給管14bは洗浄液供給部17に接続されている。
【0016】
オーバーフロー槽15は、平底型の矩形状容器の中央部に、上下に挿通する細長形状の開口部15bを設けた構造となっている。ここで開口部15bの長手方向の寸法Aは、ノズル列11Lの列方向寸法よりも大きく設定され、ノズル列11Lを開口部15bを上下に挿通させることが可能となっている。そして開口部15bの周囲には、開口部15bを取り巻く環状の液収容部15aが形成され、オーバーフロー槽15の一方のコーナ部には液収容部15aと連通する排液管15cが下方に延出して設けられている。
【0017】
図3(b)に示すように、オーバーフロー槽15を液貯留槽14の上側から被せて一体化することにより、貯留部14aの上面の開放面は開口部15bの範囲を除いてオーバー
フロー槽15の底面によって塞がれた状態となる。この状態で、洗浄液供給部17を作動させて洗浄液供給管14bを介して洗浄液を液貯留槽14に供給する(矢印c)ことにより、貯留部14a内が洗浄液で満たされる。さらに洗浄液を継続して供給すると、洗浄液は開口部15bを介して液収容部15aに溢出する(矢印d)。そして溢出した洗浄液は液収容部15aに一時的に収容され、その後排液管15cを介して流下して排出される。なお液収容部15aには、分注ヘッド3A、分注ヘッド3Bの各吐出ノズル11内に残留する不用の液体が排出され、この液体も洗浄液と同様に排液管15cを介して排出される。すなわち、排液管15cはオーバーフロー槽15から洗浄液および吐出ノズル11から排出される不用の液体を排出する機能を有している。
【0018】
排液管15cには流量検出センサ18が装着されており、流量検出センサ18は排液管15cの内部を流下する液体の流量を検出する機能を有している。本実施の形態においては、排液管15c内を液体が流下していることが流量検出センサ18によって検出されている状態においてのみ、振動子16を作動させて超音波振動を付与するようにしている。
【0019】
図4は、図3(b)に示すノズル洗浄部10の断面を示している。ここで液貯留槽14の幅寸法B1は、振動子16の装着が可能な最小寸法に設定される。そして、オーバーフロー槽15の幅寸法B2は幅寸法B1よりも大きく設定され、オーバーフロー槽15の方が液貯留槽14よりも大きな平面サイズで設けられている。したがってオーバーフロー槽15を液貯留槽14の上側から被せて一体化した状態では、オーバーフロー槽15が液貯留槽14の上部を覆い、両端部が部分的に液貯留槽14から張り出した形状となる。
【0020】
開口部15bの幅寸法B3は、ノズル列11Lを構成する吐出ノズル11が上下に挿通するのに十分な大きさに設定される。すなわち上記構成のオーバーフロー槽15は、液貯留槽14の上部を覆って液貯留槽14よりも大きな平面サイズで設けられ、ノズル列11Lが上下方向に挿通可能な開口サイズで形成された開口部15bを有し、この開口部15bを介して液貯留槽14から溢れた洗浄液および吐出ノズル11から排出される液体を一時的に収容する機能を有する。
【0021】
液貯留槽14の底面14cに装着された振動子16は超音波発振器19によって駆動され、これにより貯留部14a内を満たして開口部15bから溢出する洗浄液には、底面14cから超音波振動が付与される。振動子16および超音波発振器19は、液貯留槽14の底面から洗浄液に超音波振動を付与する振動付与手段を構成する。この超音波振動の付与において、開口部15bの内部は振動子16によって貯留部14a内の洗浄液中に誘起される定在波振動の腹の位置に相当しており、貯留部14a内に洗浄対象の吐出ノズル11の下端部を位置させることにより、最も良好な洗浄効果が得られるようになっている。
【0022】
液貯留槽14およびオーバーフロー槽15を上記構成とすることにより、吐出ノズル11の洗浄のために必要とされるノズル洗浄機能の占有面積の削減が実現されている。すなわち分注装置においては、吐出ノズル11から精度よく適正に液体を吐出するために、吐出ノズル11を洗浄するノズル洗浄部10と併せて、吐出ノズル11から排出される不用な液体を回収するための液回収部を必要とする。従来構成の分注装置においては、ノズル洗浄のための洗浄槽と別個に液回収部を設けて並列配置する構成が採用されていたため、ノズル洗浄機能をコンパクト化することができなかった。
【0023】
これに対し本実施の形態に示す構成では、振動子16を装着するために必要な最小の平面サイズを有する液貯留槽14の上部に、前述構成のオーバーフロー槽15を一体化した構成を採用している。この構成において、ノズル列11Lを挿通させるための開口部15bの幅方向の寸法は、単に1列のノズル11が通過できるサイズで十分であることから、周囲に形成される液収容部15aの容量を極力大きく確保することが可能となっている。
これにより、オーバーフロー槽15を、吐出ノズル11から排出される不用な液体を回収する液回収部として機能させることができ、小形・コンパクトで使い勝手に優れた分注装置が実現されている。
【0024】
次に図5を参照して、制御系の構成を説明する。図5において、制御部20は制御・演算装置であり、XYテーブル5、分注ヘッド駆動部13、液滴除去部9、超音波発振器19、洗浄液供給部17の各部を制御する。制御部20がXYテーブル5を制御することにより、マイクロプレート8や、液滴除去部9やノズル洗浄部10のうち作業対象となる部分が分注ヘッド3A,3Bに対して位置決めされる。制御部20が分注ヘッド駆動部13を制御することにより、分注ヘッド3A,3Bに所定の動作を行わせる。制御部20が流量検出センサ18を制御することにより、振動子16を駆動して貯留部14a内の洗浄液に超音波振動が付与される。
【0025】
この制御処理においては、制御部20は流量検出センサ18の検出結果に基づいて液滴除去部9を制御する。すなわち流量検出センサ18が排液管15c内の液体の流れを検出しない場合には、液貯留槽14が洗浄液で満たされていないおそれ有りと判断して、制御部20は振動子16による超音波振動の付与が停止するように超音波発振器19を制御する。これにより液貯留槽14が空の状態で振動子16を駆動する空運転を防止して、液貯留槽14や振動子16の破損などの装置トラブルを防止することができる。そして制御部20が洗浄液供給部17を制御することにより、液貯留槽14に対して洗浄液が供給される。
【0026】
制御部20は記憶部21を備えており、記憶部21は、XYテーブル5によって移動台6を分注ヘッド3A,3Bに対して位置決めする際の複数の目標移動位置を示す位置決めパラメータを記憶する。これらの目標移動位置には、洗浄作業位置P1、排液作業位置P2および液滴除去位置P3が含まれ、これらの位置決めパラメータに基づいて制御部20によってXYテーブル5を制御することにより、移動台6に設けられた液滴除去部9、ノズル洗浄部10が水平移動し、分注ヘッド3Aもしくは分注ヘッド3Bに対して液滴除去部9、ノズル洗浄部10を相対的に位置決めすることができる。各位置決めパラメータには分注ヘッド3A用と分注ヘッド3B用が準備されている。図5において各位置決めパラメータの末尾に“A”とあるものは分注ヘッド3A用であり、“B” とあるものは分注ヘッド3B用である。
【0027】
図6を参照して、洗浄作業位置P1について説明する。洗浄作業位置P1に対応する位置決めパラメータに基づいて、制御部20がXYテーブル5を駆動することにより、ノズル洗浄部10は、洗浄対象となる分注ヘッド3Aもしくは分注ヘッド3Bの吐出ノズル11を洗浄するための位置に位置決めされる。次いで分注ヘッド3A,3Bを下降させると、図6に示すように、洗浄対象部位である吐出ノズル11の下端部は、オーバーフロー槽15の中央の開口部15b内に位置する。このとき、液貯留槽14内の洗浄液22には振動子16によって超音波振動が付与されており、この超音波振動の洗浄力により吐出ノズル11の下端部が洗浄される。すなわち洗浄作業位置P1は、分注ヘッド3A,3Bに備えられた複数の吐出ノズル11を洗浄液22に浸漬させて超音波振動により洗浄するための目標移動位置である。
【0028】
図7を参照して、排液作業位置P2について説明する。排液作業位置P2に対応する位置決めパラメータに基づいて制御部20を制御してXYテーブル5を駆動することにより、ノズル洗浄部10は、排液対象となる分注ヘッド3A,3Bの吐出ノズル11から不用の液体を液収容部15aに排出するための位置に位置決めされる。次いで図7に示すように、分注ヘッド3A,3Bに液体吐出動作を行わせることにより、吐出ノズル11からは不用の液体23が排出され、液収容部15a内に落下回収される。すなわち排液作業位置
P2は、分注ヘッド3A,3Bに備えられた複数の吐出ノズル11内の液体をオーバーフロー槽15の液収容部15a内に排出するために、ノズル列11Lをオーバーフロー槽15の上方に位置させるための目標移動位置である。
【0029】
図8を参照して、液滴除去位置P3について説明する。液滴除去位置P3に対応する位置決めパラメータに基づいて制御部20を制御してXYテーブル5を駆動することにより、液滴除去部9は、液滴除去対象となる分注ヘッド3A,3Bの吐出ノズル11は、液滴除去部9によって下端部から液滴を除去するための位置に位置決めされる。次いで図8に示すように、分注ヘッド3A,3Bを下降させる(矢印f)ことにより、ノズル列11Lを構成するそれぞれの吐出ノズル11が液滴除去部9に設けられた吸引口9aに対して接近する。そしてこの状態で、吸引口9aと連通した吸引管24から吸引排気することにより(矢印g)、吐出ノズル11の下端部に付着した不用の液体23が吸引口9aから吸引されて除去される。すなわち液滴除去位置P3は、分注ヘッド3A,3Bに備えられたノズル列11Lを液滴除去部9に位置させるための目標移動位置である。
【0030】
上記説明したように、本発明は、吐出ノズル11を列状に配列したノズル列11Lが下面に設けられた分注ヘッド3A,3Bによって液体を吐出して分注する分注装置において、吐出ノズル11を洗浄液によって洗浄するノズル洗浄部10を、洗浄液を貯留する液貯留槽14と、この液貯留槽14の上部を覆ってこの液貯留槽14よりも大きな平面サイズで設けられ、ノズル列11Lが上下方向に挿通可能な開口サイズで形成された開口部15bを有し、この開口部15bを介して液貯留槽14から溢れた洗浄液を一時的に収容するオーバーフロー槽15とで構成したものである。これにより、目詰まりを発生しやすい液体を対象とする分注作業において、小型・コンパクトで使い勝手に優れた分注装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の分注装置は、目詰まりを発生しやすい液体を対象とする分注作業において、小型・コンパクトで使い勝手に優れるという効果を有し、バイオ・メディカル研究分野などにおいて用いられる分注装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態の分注装置の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態の分注装置における分注機構の斜視図
【図3】本発明の一実施の形態の分注装置におけるノズル洗浄部の構成説明図
【図4】本発明の一実施の形態の分注装置におけるノズル洗浄部の断面図
【図5】本発明の一実施の形態の分注装置の制御系の構成を示すブロック図
【図6】本発明の一実施の形態の分注装置の動作説明図
【図7】本発明の一実施の形態の分注装置の動作説明図
【図8】本発明の一実施の形態の分注装置の動作説明図
【符号の説明】
【0033】
3A,3B 分注ヘッド
4 作業部
5 XYテーブル
6 移動台
7 プレート載置部
8 マイクロプレート
9 液滴除去部
10 ノズル洗浄部
11 吐出ノズル
11L ノズル列
14 液貯留槽
15 オーバーフロー槽
15a 液収容部
15b 開口部
15c 排液管
16 振動子
18 流量検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に設けられた液体収納用の凹部内に吐出ノズルによって液体を吐出して分注する分注装置であって、
複数の前記吐出ノズルを列状に配列したノズル列が下面に設けられた分注ヘッドと、前記容器が載置される容器載置部と、前記ノズル列の複数の吐出ノズルを洗浄液によって洗浄するノズル洗浄部と、前記容器載置部および前記ノズル洗浄部を前記分注ヘッドに対して水平方向に相対移動させる移動手段と、前記移動手段および前記ノズル洗浄部を制御する制御部と、前記制御部による前記移動手段の目標移動位置を記憶する記憶部とを備え、
前記ノズル洗浄部は、前記洗浄液を貯留する液貯留槽と、前記液貯留槽に洗浄液を供給する洗浄液供給管と、前記液貯留槽の上部を覆って前記液貯留槽よりも大きな平面サイズで設けられ、前記ノズル列が上下方向に挿通可能な開口サイズで形成された開口部を有しこの開口部を介して前記液貯留槽から溢れた前記洗浄液および前記吐出ノズルから排出される液体を一時的に収容するオーバーフロー槽と、前記オーバーフロー槽から前記洗浄液および前記液体を排出する排液管と、前記液貯留槽の底面から前記洗浄液に超音波振動を付与する振動付与手段とを有し、
前記目標移動位置は、前記複数の吐出ノズルを前記洗浄液に浸漬させて前記超音波振動により洗浄するために前記ノズル列を前記開口部内に位置させるための洗浄作業位置と、
前記複数の吐出ノズル内の液体を前記オーバーフロー槽内に排出するために前記ノズル列を前記オーバーフロー槽の上方に位置させるための排液作業位置とを含むことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記容器載置部および前記ノズル洗浄部が設けられた移動台を水平方向に駆動することにより前記容器および前記オーバーフロー槽を前記分注ヘッドに対して相対移動させる移動テーブルであることを特徴とする請求項1記載の分注装置。
【請求項3】
前記複数の吐出ノズルに付着した前記液体の液滴を除去する液滴除去部を前記移動台に備え、前記目標移動位置は、前記ノズル列を前記液滴除去部に位置させるための液滴除去位置をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の分注装置。
【請求項4】
前記排液管から排出される液体の有無を検知する液検知手段を備え、前記制御部は、前記液検知手段の検出結果に基づいて前記振動付与手段の動作を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−164448(P2010−164448A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7398(P2009−7398)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】