説明

分注装置

【課題】装置構成を簡素にして装置の軽量化を達成した分注装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る分注装置は、所定の遊び代を有するように支持されたヘッドフレーム14と、ヘッドフレームに支持され多数のノズル20を有する分注ヘッド16と、各ノズル20の先端と嵌合し合う多数のチップ24が配置されたチップケース24を設置する分注テーブル26と、ヘッドフレーム14を水平方向へ移動して各ノズルの先端と各チップとが上下に対向し合う嵌合待機位置Wとする位置決め移動手段と、嵌合待機位置Wにある各ノズルの先端と各チップとを接近させて浅く嵌合させる予備嵌合状態にするヘッドフレーム昇降機構32と、予備嵌合状態の時、遊び代の範囲内においてヘッドフレーム14を介して分注ヘッド16に下向きの付勢力を与えて各ノズルの先端と各チップとをさらに深く嵌合させるチップ嵌合付勢手段40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床検査センター、製薬会社、病院等で使用される分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に臨床検査センター等で用いられる分注装置は、一度に多数の分注が行えるように分注ヘッドには、例えば、横9列、縦11列というように縦・横に整列した多数のノズルを有する。各ノズルには、ノズル先端に交換可能なチップが装着されている。
【0003】
チップは、前記分注ヘッドの各ノズルと対応する数のチップとなっていて、縦・横に整列してチップケースにセットされ分注テーブルに設置される。
【0004】
分注ヘッドは、例えば、水平方向へのスライド移動と上下動が可能となっている。したがって、分注ノズル(分注ヘッドに装着されたノズル)の先端全部にチップを装着するには、分注ヘッドのスライド移動により分注ヘッドの各ノズルの先端とチップケースの各チップとが上下に対向し合う位置に位置決めした後、分注ヘッドを下降し、各ノズルの先端を各チップに挿入する。挿入完了後、再び上昇させることで各ノズルの先端全部にチップが装着される手段となっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−212310
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
分注装置は前記した如く、縦・横に整列した多数の各ノズル全部に対して同時にチップを装着するところから、1つでもチップの装着ミスが起きないようにしている。具体的には、分注ヘッドを下降させるにあたって各ノズルの先端が所定の深さまで確実にチップ内に挿入されるよう分注ヘッドには約300kgfの強い付勢力が働くようになっている。
【0007】
このため、分注ヘッドを支持する支持部材を始めとして各フレームを肉厚にする等の対応策によって支持剛性を高めた構造を採用している。この結果、装置全体の重量増加となる問題をかかえると共にコスト高となる要因ともなっている。
【0008】
そこで、本発明にあたっては、装置全体の軽量化を図りながら、しかも、縦・横に整列した各ノズル全部に対して装着ミスを起こすことなく確実にチップの装着が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、本体支持フレームに所定の遊び代を有して支持されたヘッドフレームと、前記ヘッドフレームに支持され、少なくとも縦、横に整列した多数のノズルを有する分注ヘッドと、前記各ノズルの先端と嵌合し合う多数のチップが縦・横に整列して配置されたチップケースを設置する分注テーブルと、前記ヘッドフレーム又は前記分注テーブルのいずれか一方を水平方向へ移動して各ノズルの先端と各チップとが上下に対向し合う嵌合待機位置とする位置決め移動手段と、前記位置決め移動手段によって位置決めされた嵌合待機位置にある各ノズルの先端と各チップとを接近させて浅く嵌合し合う予備嵌合状態と元の嵌合待機位置へ復帰させるヘッドフレーム昇降手段と、前記各ノズルの先端と各チップとが浅く嵌合し合う予備嵌合状態の時、遊び代の領域内において前記ヘッドフレームを介して前記分注ヘッドに下向きの付勢力を与え予備嵌合状態にある各ノズルの先端と各チップとをさらに深く嵌合させるチップ嵌合付勢手段とを備え、前記チップ嵌合付勢手段による付勢力は前記チップケースを設置した前記分注テーブルで受け止めるようにすることを特徴とする。
【0010】
請求項1に係る発明では、検体を収容した多数のチップをチップケースに配列しておくとともに、各チップに嵌合させる多数のノズルを分注ヘッドに取り付けておく。そして、位置決め移動手段により、ヘッドフレーム又は分注テーブルのいずれか一方を水平方向へ移動して各ノズルの先端と各チップとが上下に対向し合う嵌合待機位置にする。
【0011】
そして、ヘッドフレーム昇降手段により、嵌合待機位置にある各ノズルの先端と各チップとを接近させて浅く嵌合させる予備嵌合状態にする。
【0012】
さらに、この予備嵌合状態で、チップ嵌合付勢手段により、遊び代の領域内(範囲内)においてヘッドフレームを介して分注ヘッドに下向きの付勢力を与える。チップ嵌合付勢手段による付勢力はチップケースを設置した分注テーブルで受け止められるので、各ノズルの先端と各チップとをさらに深く嵌合させることができる。
【0013】
すなわち、各ノズルと各チップと完全嵌合状態とする大きな付勢力は、遊び代によってヘッドフレームを支持する本体支持フレームに何等影響を与えることがなくなるため、その本体支持フレームを始めとして各フレーム等を含む全体構造の薄肉化が可能となり軽量化が図れる。同時にチップ嵌合付勢手段による付勢力によって縦・横に整列した多数の各ノズル全部に対して装着ミスを起こすことなく確実にチップを装着することができる。
【0014】
請求項2に係る発明は、本体支持フレームに所定の遊び代を有して支持されたヘッドフレームと、前記ヘッドフレームに支持され、少なくとも縦、横に整列した多数のノズルを有する分注ヘッドと、前記各ノズルの先端と嵌合し合う多数のチップが縦・横に整列して配置されたチップケースを設置する分注テーブルと、前記ヘッドフレーム又は前記分注テーブルのいずれか一方を水平方向へ移動して各ノズルの先端と各チップとが上下に対向し合う嵌合待機位置とする位置決め移動手段と、前記位置決め移動手段によって位置決めされた嵌合待機位置にある各ノズルの先端と各チップとを接近させて浅く嵌合し合う予備嵌合状態と元の嵌合待機位置へ復帰させるヘッドフレーム昇降手段と、前記分注テーブルにスライド自在に設けられ前記各ノズルの先端と各チップとが浅く嵌合し合う予備嵌合状態の時、スライド移動して前記ヘッドフレーム両側の係止部とそれぞれ係合し合う一対のヘッドフレーム拘束保持部材と、前記ヘッドフレーム拘束保持部材によるヘッドフレームの拘束時に前記チップケースに上向きの付勢力を与え予備嵌合状態にある各ノズルの先端と各チップとをさらに深く嵌合させるチップ嵌合付勢手段とを備え、前記チップ嵌合付勢手段による付勢力は前記ヘッドフレーム拘束保持部材で受け止められるようにすることを特徴とする。
【0015】
請求項2に係る発明では、縦・横に整列した多数の各ノズルと各チップとを完全嵌合状態にするにあたって、ヘッドフレームを下降させるのではなく分注テーブルを上昇させることによって行うことができる。
【0016】
なお、請求項1に係る発明では、前記チップ嵌合付勢手段は、前記チップケースを挟んで前記分注テーブルに対向配置された一対の本体部と、前記一対の本体部を前記ヘッドフレームの両側に位置する作動位置と前記ヘッドフレームから離れた非作動位置とにスライド自在に移動させる本体移動部と、前記本体部に設けられると共に作動位置へのスライド移動時に、前記ヘッドフレーム両端のフレーム係止部とそれぞれ係合し合う本体係合部と、前記フレーム係止部と前記本体係合部との係合時に前記本体部を下降させて予備嵌合状態にある各ノズルの先端と各チップとがさらに深く嵌合するよう前記ヘッドフレームを介して前記分注ヘッドに下向きの付勢力を与える本体昇降部とで構成されていることが好ましい。
【0017】
これにより、分注ヘッドを有するヘッドフレームに対して両サイドからバランスのとれた均一な付勢力を与えることが可能となり、確実なチップ装着が行えるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、チップ嵌合付勢手段によって、ヘッドフレームを支持する本体支持フレームに何等影響を与えることなく各ノズルと各チップとの完全嵌合状態とする付勢力を与えることが可能となり、装置全体の軽量化を図ることができる。しかも、縦・横に整列した多数の各ノズルと各チップとを装着ミスを起こすことなく確実に装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る分注装置の全体斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る分注装置で、(A)は分注ヘッドを斜め下方から見た斜視図、(B)は分注ヘッドの吸引部にノズルを取り付けることを示す側面断面図である。
【図3】第1実施形態で、分注テーブルにチップケースを配置したことを示す斜視図である。
【図4】第1実施形態のヘッドフレームを示す斜視図である。
【図5】第1実施形態で、(A)はヘッドフレームが本体支持フレームに対して自重により下降していることを示す部分斜視図、(B)は予備嵌合状態によりヘッドフレームが本体支持フレームに対して浮き上がっていることを示す部分斜視図である。
【図6】第1実施形態で、(A)は本体移動部の構成を示す斜視図、(B)は支持板が皿バネで支えられていることを示す斜視図である。
【図7】第1実施形態の本体昇降部を示す斜視図である。
【図8】図8(A)から(D)は、第1実施形態でチップとノズルとを嵌合させる手順を示す模式的な側面図である。
【図9】第1実施形態で、(A)はチップとノズルとの予備嵌合状態を示す側面断面図、(B)はチップとノズルとの完全嵌合状態を示す側面断面図である。
【図10】図10(A)から(D)は、第2実施形態でチップとノズルとを嵌合させる手順を示す模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。なお、第2実施形態では、すでに説明したものと同様の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0021】
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態に係る分注装置10は、本体支持フレーム12と、本体支持フレーム12に支えられたヘッドフレーム14と、を有する。図2(A)に示すように、ヘッドフレーム14には分注ヘッド16が水平方向に挿入されて着脱自在に支えられている。図2(B)に示すように、この分注ヘッド16には、下面側にやや突き出た吸引部18が、縦、横に整列して配設されている。この吸引部18の中央には吸引口18Mが開口している。また、各吸引部18にはそれぞれノズル20が着脱自在に取り付けられている。
【0022】
また、分注装置10は、図3に示すように、各ノズル20の先端と嵌合し合う多数のチップ24が縦・横に整列して配置されたチップケース26を設置する分注テーブル28を備えている。隣り合うチップ24の縦・横の間隔は、隣り合うノズル20の縦・横の間隔に合わせて設定されている。
【0023】
そして、分注装置10は、本体支持フレーム12を水平移動させることによりヘッドフレーム14を水平方向へ移動して各ノズル20の先端と各チップ24とが上下に対向し合う嵌合待機位置Wとする位置決め移動手段30と、ヘッドフレーム14を昇降動させるヘッドフレーム昇降機構32とを備えている。
【0024】
位置決め移動手段30は、所定の分注テーブル28に配置されたチップケース26の真上にヘッドフレーム14を位置させる位置決め移動制御部34と、位置決め移動制御部34からの指令に従って本体支持フレーム12を水平方向に移動させる位置決め移動機構36と、を有する。
【0025】
そして、ヘッドフレーム昇降機構32によって、位置決め移動手段30で位置決めされた嵌合待機位置Wにある各ノズル20の先端20Tと各チップ24とを接近させて浅く嵌合させる予備嵌合状態Pにすること(図8(C)、図9(A)参照)と、各ノズル20を元の嵌合待機位置Wへ復帰させること(図9(B)参照)とが行われる。
【0026】
さらに、分注装置10はチップ嵌合付勢手段40を備えている。このチップ嵌合付勢手段40は、各ノズル20の先端20Tと各チップ24とが浅く嵌合し合う予備嵌合状態Pの時、遊び代d(図5参照。詳細は後述)の領域内(範囲内)においてヘッドフレーム14を介して分注ヘッド16に下向きの付勢力を与え予備嵌合状態Pにある各ノズル20の先端20Tと各チップ24とをさらに深く嵌合させるために設けられている。チップ嵌合付勢手段40による付勢力はチップケース26を設置した分注テーブル28で受け止めるようになっている。
【0027】
(チップ嵌合付勢手段)
図6(A)に示すように、チップ嵌合付勢手段40は、チップケース26を挟んで分注テーブル28に対向配置された一対の本体部42と、一対の本体部42をヘッドフレーム14の移動方向の直交方向両側に位置する作動位置とヘッドフレーム14から離れた非作動位置とにスライド自在に移動させる本体移動部44と、一対の本体部42の上端部にそれぞれ設けられると共に作動位置へのスライド移動時に、ヘッドフレーム両端のフレーム係止部14S(図4、図8参照)とそれぞれ係合し合う本体係合部46と、フレーム係止部14Sと本体係合部46との係合時に一対の本体部42を下降させて予備嵌合状態Pにある各ノズル20の先端20Tと各チップ24とがさらに深く嵌合するようヘッドフレーム14を介して分注ヘッド16に下向きの付勢力を与える本体昇降部48と、で構成されている。本実施形態では、フレーム係止部14Sは、本体支持フレーム12のスライド方向と直交するヘッドフレーム外側方向に向けて水平に延びだしており、鍔状に形成されている。また、本体移動部44は、シャフト50に沿って本体昇降部48を水平方向に移動させる構成になっている。
【0028】
一対の本体部42の上部には、何れも、2本のアーム部52が延びだしており、アーム部52の上端に上記の本体係合部46が形成されている。ここで、本体係合部46は、内側に、すなわち、一対の本体部42が互いに向かい合う側にフック状に延び出す形状とされている。
【0029】
図7に示すように、本体昇降部48は、分注テーブル28を下面側から支える支持板56と、支持板56の下方に支持板56と平行に対向配置されたベース板58と、支持板56とベース板58とにネジで固定されて支持板56とベース板58との間隔を一定に維持する側板60と、を備えている。図6(B)に示すように、支持板56は、略均等に配置された複数(例えば6つ)の皿バネ62で支えられており、各ノズル20が各チップ24に上方から押圧されることによってチップケース26に上方からの押圧力が作用しても、支持板56がチップケース26を下方から均等な力で支えるようになっている。
【0030】
また、本体昇降部48は、上下方向に延びるボールネジ64を備えている。このボールネジ64は、上端部で支持板56に回動自在に支えられ、下端部がベース板58を貫通している。そして、ボールネジ64の下端部にはプーリ66が取り付けられており、プーリ66に掛けられたベルトがモータで回転されることによってボールネジ64が回転するようになっている。そして、本体昇降部48は、支持板56とベース板58とに両端部が支えられている2本のガイド棒68を備えている。ボールネジ64およびガイド棒68は互いに平行に上下方向に配置されている。
【0031】
また、本体昇降部48には、一対の本体部42の下端部同士にネジ結合などで連結されている作動板70が設けられている。作動板70は支持板56およびベース板58に平行にされている。そして、作動板70には、ボールネジ64を挿通させるとともにボールネジ64にネジ係合している雌ネジ部72が設けられており、ボールネジ64の回転(正転、反転)によってボールネジ64に対して、作動板70が支持板56に平行な状態で上昇あるいは下降するように、つまり支持板56に対して本体係合部46が上昇あるいは下降するようになっている。
【0032】
また、作動板70には、ガイド棒68を挿通させる被挿通部71が設けられており、被挿通部71によって作動板70がガイド棒68に沿ってスムーズに上昇あるいは下降するようになっている。
【0033】
更に、本体昇降部48には、2本のアーム部52の中央からそれぞれ上方に延びだしているチップケース係止部74が設けられている。このチップケース係止部74の上端には、互いに内側に向けて延びだす押さえ部76が形成されている。この押さえ部76は、分注ヘッド16を上方に引き上げてノズル20とチップ24との嵌合状態を解除する際にチップケース26の上面側に当接してチップケース26の上昇移動を規制するようになっている。
【0034】
(遊び代)
ここで、遊び代dについて説明する。図4、図5に示すように、ヘッドフレーム14には、水平方向に配置された水平板80と、水平板80に固定されて水平板80から上方に延びる3本の支持軸部82と、が設けられている。各支持軸部82は、本体支持フレーム12に設けられた水平な規制板84を貫通しており、支持軸部82の上部に係止用のナット86が取り付けられている。なお、ナット86の設定位置については、上下方向に位置変更が可能であってもよい。ヘッドフレーム14には、本体支持フレーム12を貫通してヘッドフレーム14を上下方向に案内する案内機構が設けられており、支持軸部82およびナット86は、ヘッドフレーム14の上下方向移動の距離を規制するために設けられている。
【0035】
チップ24にノズル20が当接していないときでは、図5(A)に示すように、ヘッドフレーム14の自重によりナット86が規制板84に当接することで、ヘッドフレーム14の下方位置が規定されている。ヘッドフレーム14の上下方向移動可能距離である遊び代dは、支持軸部82の下端に設けられた支持軸部固定部材88の上端とナット86の下端との間隔dである。
【0036】
チップ24にノズル20が当接し、チップ24とノズル20との浅い嵌合が生じると、ノズル20がチップ24を介して上方に受ける力により、ヘッドフレーム14が上昇し、図5(B)に示すように、ナット86が規制板84よりも上に移動する。
【0037】
なお、支持軸部82を規制板84に直接に固定して支持軸固定部材88を設けない構成にすることも可能である。
【0038】
(作用、効果)
以下、本実施形態の作用、効果について説明する。本実施形態では、まず、図8(A)に示すように、分注ヘッド16の下面側の各吸引部18にノズル20を取り付けておく。すなわち、ノズル20が分注ヘッド16の下面側に配列される。また、検体(例えば血液)を収容したチップ24をチップケース26に配列し、このチップケース26を分注テーブル28に載せておく。
【0039】
そして、図8(B)に示すように、位置決め移動手段30により、本体支持フレーム12を移動させることでヘッドフレーム14を移動させて、分注ヘッド16をチップケース26の真上に位置させる。
【0040】
そして、ヘッドフレーム昇降機構32により本体支持フレーム12を下降させることでヘッドフレーム14を下降させる。この結果、分注ヘッド16の各ノズル20の先端が各チップ24に浅く嵌合した予備嵌合状態Pになる(図8(C)および図9(A)参照)。また、各ノズル20が各チップ24から支持力(上方への抵抗力)を受けることで、ヘッドフレーム14が本体支持フレーム12に対してやや上方へ相対移動する。このため、図5(B)に示すように、ナット86が水平板80から上方に移動している。なお、上方への移動距離は遊び代dの範囲内となる。
【0041】
この状態で、一対の本体部42を移動させて、チップケース26が載置されている分注テーブル28の真横(作動位置)に位置させて移動を停止させる。この結果、図8(C)に示すように、一対の本体部42を構成するアーム部52の本体係合部46がフレーム係止部14Sの真上に位置し、本体係合部46とフレーム係止部14Sとが上下方向に係合した状態となる。
【0042】
この状態で、ボールネジ64を回転させて一対の本体部42を下降させることで、本体係合部46からフレーム係止部14Sを下降させる押圧力Uと、分注テーブル28からの抗力Lとを発生させる。この結果、図8(D)および図9(B)に示すように、分注ヘッド16がチップケース26に対して下降して各ノズル20の先端が各チップ24内に更に深く入る。すなわち、予備嵌合状態Pにあったチップ24とノズル20とが完全嵌合状態Qとなる。
【0043】
つまり、各ノズル20と各チップ24と完全嵌合状態Qとする大きな付勢力は、遊び代dによってヘッドフレーム14を支持する本体支持フレーム12に何等影響を与えることがなくなるため、その本体支持フレーム12を始めとして各フレーム等を含む全体構造の薄肉化が可能となり軽量化が図れる。同時にチップ嵌合付勢手段40による付勢力によって縦・横に整列した多数の各ノズル全部に対して装着ミスを起こすことなく確実にチップを装着することができる。位置決め移動機構36は、高い位置精度でヘッドフレーム14の位置決めを行う必要があるため、これらのことは装置構造の簡素化、軽量化に多大な効果をもたらす。
【0044】
また、チップ嵌合付勢手段40が、作動板70、一対の本体部42、本体昇降部48、本体移動部44、本体係合部46、および、本体昇降部48で構成されており、チップ嵌合付勢手段40の構造が簡素にされており、しかも、分注ヘッド16を支えるヘッドフレーム14に対して両サイドからバランスのとれた均一な付勢力を与えることが可能となり、確実なチップ装着が行えるようになる。
【0045】
なお、本実施形態では、ノズル20とチップ24とを完全嵌合状態Qにする際、予備嵌合状態Pにしておき一対の本体部42を水平方向に移動させて本体係合部46とフレーム係止部14Sとを係合させた上で一対の本体部42を下降させることで説明したが、一対の本体部42を下降させる際に本体係合部46の下側にフレーム係止部14Sが位置している限り、本体係合部46とフレーム係止部14Sとで隙間が生じていても、ノズル20とチップ24とを完全嵌合状態Qにする上で支障はない。
【0046】
また、本実施形態では、位置決め移動機構36が、本体支持フレーム12を水平移動させることによりヘッドフレーム14を移動させる機構であるとして説明したが、本体支持フレーム12を水平移動させずに分注テーブル28を水平移動させる機構であってもよい。
【0047】
[第2実施形態]
図10(A)〜(D)に示すように、本実施形態に係る分注装置110には、第1実施形態の分注装置10に比べ、一対のヘッドフレーム拘束保持部材142が設けられている。この一対のヘッドフレーム拘束保持部材142は、第1実施形態と同様、チップケース26が載置される分注テーブル28に対して水平方向にスライド自在に設けられており、各ノズル20の先端と各チップ24とが浅く嵌合し合う予備嵌合状態Pの時、第1実施形態と同様に水平方向にスライド移動してヘッドフレーム両側のフレーム係止部14Sとそれぞれ係合し合う形状にされている。すなわち、一対のヘッドフレーム拘束保持部材142は第1実施形態で説明した一対の本体部42と基本的に同形状であり、本体係合部46と同様の本体係合部146を上端部に有するが、ヘッドフレーム14を下降させるものではなく、ヘッドフレーム14が上昇することを拘束するものである。
【0048】
また、分注装置110には、第1実施形態のチップ嵌合付勢手段40に代えてチップ嵌合付勢手段140が設けられている。このチップ嵌合付勢手段140には、分注テーブル28を昇降動させる分注テーブル昇降部144が設けられている。これにより、ヘッドフレーム拘束保持部材142によるヘッドフレーム14の拘束時にチップケース26に上向きの付勢力を与え予備嵌合状態Pにある各ノズル20の先端と各チップ24とをさらに深く嵌合させて完全嵌合状態Qとすることが可能になっている。分注テーブル昇降部144には、例えばボールネジ148が設けられており、ボールネジ148の回転(正転、反転)によって分注テーブル28が昇降動するようになっている。
【0049】
本実施形態では、第1実施形態と同様、図10(A)に示すように、分注ヘッド16の下面側の各吸引部18(図2(B)参照)にノズル20を取り付ける。また、検体(例えば血液)を収容したチップ24をチップケース26に配列し、このチップケース26を分注テーブル28に載せておく。
【0050】
そして、図10(B)に示すように、ヘッドフレーム14を移動させて分注ヘッド16をチップケース26の真上に位置させる。
【0051】
そして、ヘッドフレーム昇降機構32により本体支持フレーム12(何れも図1参照)を下降させることでヘッドフレーム14を下降させる。この結果、分注ヘッド16の各ノズル20の先端が各チップ24に浅く嵌合した予備嵌合状態Pになる(図10(C)および図9(A)参照)。
【0052】
この状態で、一対のヘッドフレーム拘束保持部材142を水平方向にスライド移動させて、チップケース26が載置されている分注テーブル28の真横(作動位置)に位置させて移動を停止させる。この結果、ヘッドフレーム拘束保持部材142の本体係合部146がフレーム係止部14Sの真上に位置し、本体係合部46とフレーム係止部14Sとが上下方向に係合した状態となる。
【0053】
この状態でボールネジ148を回転させて分注テーブル28を上昇させると、チップ嵌合付勢手段140による上方への押圧力(上昇力)Uはヘッドフレーム拘束保持部材142で抗力Lとして受け止められる。この結果、図10(D)および図9(B)に示すように、各ノズル20の先端が各チップ24内に更に深く入る。すなわち、予備嵌合状態Pにあったチップ24とノズル20とが完全嵌合状態Qとなる。
【0054】
このように、本実施形態により、縦・横に整列した多数の各ノズル20と各チップ24とを完全嵌合状態Qにするにあたって、ヘッドフレーム14を下降させるのではなく分注テーブル28を上昇させることによって行うことができる。
【0055】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【符号の説明】
【0056】
10 分注装置
12 本体支持フレーム
14 ヘッドフレーム
14S フレーム係止部(係止部)
16 分注ヘッド
20 ノズル
24 チップ
26 チップケース
28 分注テーブル
30 位置決め移動手段
32 ヘッドフレーム昇降機構
40 チップ嵌合付勢手段
42 一対の本体部
44 本体移動部
46 本体係合部
48 本体昇降部
110 分注装置
140 チップ嵌合付勢手段
142 一対のヘッドフレーム拘束保持部材
d 遊び代

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体支持フレームに所定の遊び代を有して支持されたヘッドフレームと、
前記ヘッドフレームに支持され、少なくとも縦、横に整列した多数のノズルを有する分注ヘッドと、
前記各ノズルの先端と嵌合し合う多数のチップが縦・横に整列して配置されたチップケースを設置する分注テーブルと、
前記ヘッドフレーム又は前記分注テーブルのいずれか一方を水平方向へ移動して各ノズルの先端と各チップとが上下に対向し合う嵌合待機位置とする位置決め移動手段と、
前記位置決め移動手段によって位置決めされた嵌合待機位置にある各ノズルの先端と各チップとを接近させて浅く嵌合し合う予備嵌合状態と元の嵌合待機位置へ復帰させるヘッドフレーム昇降手段と、
前記各ノズルの先端と各チップとが浅く嵌合し合う予備嵌合状態の時、遊び代の領域内において前記ヘッドフレームを介して前記分注ヘッドに下向きの付勢力を与え予備嵌合状態にある各ノズルの先端と各チップとをさらに深く嵌合させるチップ嵌合付勢手段とを備え、
前記チップ嵌合付勢手段による付勢力は前記チップケースを設置した前記分注テーブルで受け止めるようにすることを特徴とする分注装置。
【請求項2】
本体支持フレームに所定の遊び代を有して支持されたヘッドフレームと、
前記ヘッドフレームに支持され、少なくとも縦、横に整列した多数のノズルを有する分注ヘッドと、
前記各ノズルの先端と嵌合し合う多数のチップが縦・横に整列して配置されたチップケースを設置する分注テーブルと、
前記ヘッドフレーム又は前記分注テーブルのいずれか一方を水平方向へ移動して各ノズルの先端と各チップとが上下に対向し合う嵌合待機位置とする位置決め移動手段と、
前記位置決め移動手段によって位置決めされた嵌合待機位置にある各ノズルの先端と各チップとを接近させて浅く嵌合し合う予備嵌合状態と元の嵌合待機位置へ復帰させるヘッドフレーム昇降手段と、
前記分注テーブルにスライド自在に設けられ前記各ノズルの先端と各チップとが浅く嵌合し合う予備嵌合状態の時、スライド移動して前記ヘッドフレーム両側の係止部とそれぞれ係合し合う一対のヘッドフレーム拘束保持部材と、
前記ヘッドフレーム拘束保持部材によるヘッドフレームの拘束時に前記チップケースに上向きの付勢力を与え予備嵌合状態にある各ノズルの先端と各チップとをさらに深く嵌合させるチップ嵌合付勢手段とを備え、
前記チップ嵌合付勢手段による付勢力は前記ヘッドフレーム拘束保持部材で受け止められるようにすることを特徴とする分注装置。
【請求項3】
前記チップ嵌合付勢手段は、前記チップケースを挟んで前記分注テーブルに対向配置された一対の本体部と、
前記一対の本体部を前記ヘッドフレームの両側に位置する作動位置と前記ヘッドフレームから離れた非作動位置とにスライド自在に移動させる本体移動部と、
前記本体部に設けられると共に作動位置へのスライド移動時に、前記ヘッドフレーム両端のフレーム係止部とそれぞれ係合し合う本体係合部と、
前記フレーム係止部と前記本体係合部との係合時に前記本体部を下降させて予備嵌合状態にある各ノズルの先端と各チップとがさらに深く嵌合するよう前記ヘッドフレームを介して前記分注ヘッドに下向きの付勢力を与える本体昇降部とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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