説明

分注装置

【課題】分注装置において、液面検出が必要な時にだけノズルと電極とが一体化されるようにする。
【解決手段】アーム30にはノズル34が設けられ、アーム32には電極36が設けられている。アーム30にはフック40が形成され、アーム30の運動によりフック40が有する溝の中にアーム32が差し込まれると、2つのアーム30,32が連結状態となる。その状態でアーム30を下方へ駆動すると、アーム32も一緒に運動して液面検出が実行される。吐出ポジションCでは、アーム30を単独で位置決めでき、ノズル34だけを吐出先容器内に差し込むことが可能である。吐出ポジションCから時計回り方向にアーム30を運動させると、途中でアーム30とアーム32との連結状態が形成され、その状態で必要に応じて洗浄ポジションBにおいてノズルユニット38の洗浄が実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分注装置に関し、特に、液面検出電極を備えた分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分注装置は、ノズルを用いて液体を分注(吸引、吐出)する装置である。分注対象となる液体は試薬、試料等である。このような分注装置は、分析に先立って検体を前処理する検体前処理装置として構成され、あるいは、分析システムの中に組み込まれる。後者の分析システムにおいては、試薬を分注する分注装置(分注機構)、試料を分注する分注装置(分注機構)、等が利用される。試薬分注と試料分注とでノズルが兼用されることもあるが、通常、それらは別々の機構によって分注される。試薬として、免疫反応用の試薬、免疫反応後の光学的測定用の試薬、等があげられる。分注装置において、ノズルと分注ポンプとの間には配管(チューブ)が設けられ、その配管内には洗浄液が充填される。その洗浄液が圧力伝達媒体として機能する。配管内にエアを入れて、それを圧力伝達媒体として利用する分注装置も知られている。
【0003】
特許文献1に開示された分注装置においては、金属製のノズルとそれに併設された電極棒とが利用されている。それらの部材からなるノズルユニットは電気的にみて一対の電極を構成し、それらが一体となって下方へ運動する。その際、両者間の抵抗値変化から液面接触が検知される。従来においては、一般に、ノズルに対して絶縁部材を介して電極が固定的に設けられており、つまりノズルと電極が一体化されたものとしてノズルユニットが構成されている。なお、ノズルと電極のそれぞれの先端レベルは通常揃っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−350453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような一体化により、あるいは、別体化されていれば当然に、ノズルユニットが太くなる。あるいは、その規模が大きくなる。このため、それを受け入れる容器の開口サイズの小型化が困難となっている。液面検出を行う必要がない場合であっても(例えば吐出時)、ノズルユニットが差し込めるように、対象容器の開口を大きくしておかなければならない。
【0006】
少量の試薬を用いた処理が要請され、反応容器の小型化が進む中で、今後、反応容器に対してノズルユニットを差し込めなくなる事態が予想される。あるいは、ノズルユニットのサイズによって反応容器の最小サイズが規定されてしまったり高精度の位置決めが必要になったりする問題が生じ得る。なお、一対の電極を用いるのではなく静電容量や光学的センサを用いて液面検出を行うことも可能ではあるが、簡便さ、確実性等の関連から一対の電極を利用した液面検出を行うのが望ましい。
【0007】
本発明の目的は、液面検出用電極をノズルと一体化することによる問題あるいは液面検出用電極とノズルとを常に一緒に運動させることによる問題を解消することにある。本発明の他の目的は、液面検出を行わない場合には容器への挿入部分をスリム化できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る分注装置は、液体の吸引及び吐出を行う導電性を有するノズルと、吸引位置と吐出位置との間でノズルを搬送するノズル搬送機構と、前記ノズルと協働して液面検出を行うための電極と、前記ノズルの搬送経路上に設けられ、液面検出前に前記ノズルと前記電極とを連結状態にしてノズルユニットを構成し、液面検出後に前記連結状態を解消して前記ノズル単体での移動を可能にする連結機構と、を含むことを特徴とするものである。
【0009】
上記構成によれば、連結機構によって、液面検出前にノズルと電極とが連結状態となり、つまり両者が一体化されて液面検出のために両者が所定の位置関係となる。これにより従来同様に2つの電極間に流れる信号に基づいて液面検出を行える。望ましくは、連結状態ではノズルと電極とが一定の隙間をもって平行に揃う。両者が絶縁部材を介して間接的に接触してもよい。但し、両者を離間すれば絶縁部材を不要にできる。その場合、ノズルユニットの物量を削減できる。望ましくは、連結状態ではノズル先端レベルと電極先端レベルとが揃えられる。一方、液面検出後においては、ノズルと電極との連結状態が解消され、つまり、両者が別体化される。ノズルを単体で搬送することができるから、搬送対象の物量を削減できる。特に、ノズル単体での容器挿入を行えるので、小型容器へノズルを挿入できる。あるいは、ノズルの高精度な位置決めが要求されなくなる。望ましくは、吐出前に非連結状態、つまりノズル単体状態が形成される。液面検出後における搬送途中の早い段階で単体状態が形成されるように構成するのが望ましい。但し、少なくとも吐出前に単体状態が形成されれば小型の吐出容器へのノズル挿入が可能となる。連結機構として、機械的な係合構造を採用するのが望ましい。すなわち、対象容器へノズルを近付ける際にノズルと電極との間で自然に連結状態が形成され、対象容器からノズルを遠ざける際にそのような連結状態が自然に解除されるように構成するのが望ましい。もちろん、電気的制御を利用して連結状態の形成及び解除を制御することも可能である。
【0010】
望ましくは、前記連結機構は、前記ノズル側に設けられた第1係合部と、前記電極側に設けられた第2係合部と、を含み、ノズル搬送過程における前記第1係合部材と前記第2係合部材との係合により前記連結状態が形成され、前記連結状態では前記ノズル搬送機構の搬送力が前記電極側にも伝達される。この構成によれば、2つの係合部材の係合により連結状態つまり一体的搬送状態が構成される。機械的な連結によれば一連の搬送過程において簡易かつ確実に連結状態を形成できる。望ましくは、連結状態において、少なくとも下方への運動力がノズル側(ノズルを含む駆動体)から電極側(電極を含む従動体)へ伝達される。更に、水平方向への運動力が伝達されてもよい。上方への運動力が更に伝達されてもよいが、そのような復帰力をバネ等の付勢部材によって生じさせるようにしてもよい。その場合には搬送機構による搬送力の一部が付勢部材に蓄積されることになる。
【0011】
望ましくは、前記第1係合部は前記ノズルを保持したノズル保持部材の一部分として構成され、前記第2係合部は前記電極を保持した電極保持部材の一部分として構成される。この構成によれば、ノズルと一緒に運動する部分に第1係合部を設けることができ、電極と一緒に運動する部分に第2係合部を設けることができる。ノズル搬送力が第1係合部及び第2係合部を経由して電極に伝達される。
【0012】
望ましくは、吸引時に前記連結状態で吸引が実行され、その後の吐出時に前記非連結状態で吐出が実行され、更にその後の洗浄時に前記連結状態で洗浄が実行される。洗浄時にも連結状態が形成されるならば、ノズル洗浄時に電極の洗浄も一緒に行える。連結状態の形成により電極を搬送するための機構を別途設けなくてもよくなる。また、ノズル運動と電極運動とを同期させる制御が不要となる。
【0013】
望ましくは、前記ノズルが吸引ポジションから洗浄ポジションを経由して吐出ポジションへ移動する際に前記電極が前記洗浄ポジションに取り残され、前記ノズルが前記吐出ポジションから前記洗浄ポジションへ移動した時に前記連結状態が再度形成される。この構成によれば、ノズルの運動過程において電極を洗浄ポジションに自然に位置決めできる。そして、ノズル洗浄時にノズルと一緒に電極が洗浄される。
【0014】
望ましくは、前記連結状態において前記電極に対して原点位置へ復帰する付勢力を与える付勢手段と、前記原点位置に復帰した前記電極を制止するストッパ手段と、を含む。付勢手段は望ましくはバネである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液面検出を行う場合その他必要な場合にノズルと電極とを一体化させることができ、それ以外の場合においてはノズルを単体で移動させることが可能となる。吐出時に液面検出をしなくてもよいなら吐出先容器の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る分注装置の全体構成を示す概念図である。
【図2】他の実施形態に係る分注装置の要部構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1には、本発明に係る分注装置の全体構成が示されている。この分注装置は、分析システムの一部として組み込まれているものである。もちろん、単体で利用される分注装置に本発明を適用することも可能である。
【0019】
図1において、分注装置は分注機構10、ターンテーブル12、ターンテーブル14等を備えている。ターンテーブル12には円周方向に沿って複数の容器16が設けられている。各容器16は図1に示す例において試薬を収容した容器である。ターンテーブル12は回転機構20によって駆動されるものである。一方、ターンテーブル14は回転機構24により駆動され、図1に示す例において円周方向に整列した複数の容器18を備えている。各容器18はこの例において反応容器であり、すなわちサンプルに対して試薬による試薬処理を行うための容器である。試薬としては、免疫反応用の試薬、光学的測定を行うための試薬等が挙げられる。ターンテーブル12において複数の容器16内には互いに異なる試薬が入れられている。図1に示す例では、複数の容器16および容器18が回転駆動されているが、それらが固定的に配置されていてもよい。図1に示す構成は例示に過ぎない。
【0020】
図1に示すAは、吸引ポジションを示しており、Bは洗浄ポジションを示しており、Cは吐出ポジションを示している。本実施形態においては、吸引ポジションAにおいて、試薬の吸引時に液面検出が実施される。一方、吐出ポジションCにおいては、液面検出は行われておらず、後に説明するように、ノズル単体を利用した試薬吐出が実施されている。吸引ポジションAおよび洗浄ポジションBにおいては、後に説明するように、ノズル34と電極36とが一体化されたつまり両者が連結された状態で、それらが一緒に下降運動を行う。
【0021】
上述した分注機構10について以下に詳述する。分注機構10は、回転軸を構成する垂直方向に伸びたシャフト26を有している。シャフト26は駆動機構28によって保持されており、駆動機構28はシャフト26を回転駆動しまた上下方向に駆動する。シャフト26の上端部には二つのアーム30,32が連結されている。アーム30はノズル34を備えた主アームであり、アーム32は電極36を備えた副アームである。二つのアーム30,32の一方端側にシャフト26が連結されており、それらのアーム30,32の他方端側にノズル34及び電極36が連結されている。シャフト26に対してアーム30は固定的に連結されており、シャフト26が回転するとアーム30も回転運動を行う。一方、アーム32はシャフト26に対して回転方向については自由運動可能となっている。但し、図示されていないバネの作用により、アーム32に対しては上方から見て反時計回り方向に常に付勢力が与えられている。アーム32が反時計回り方向に回転した場合、洗浄ポジションBの上方に設けられたストッパによりアーム32の回転運動は停止され、それ以上アーム32は回転運動を行えない。垂直方向についてはアーム32がシャフト26に対して上下方向に自由運動可能となっている。但し、図示されていないバネの作用がアーム32に及んでおり、アーム32に対しては常に上方への付勢力が及んでいる。シャフト26の上端までアーム32が到達すると、図示されていないストッパの作用によってアーム32の上方への運動は規制される。ちなみに、アーム32の上方へのスライド運動及び反時計回り方向への回転運動において、速度を調整するためにダンピング機構等を設けるようにしてもよい。
【0022】
アーム30はアーム32と同様にシャフト26の上端部から外方向へ伸長した棒状の部材であり、その中間部分には第1係合部としてのフック40が形成されている。そのフック40はアーム30の一端部側から立ち上がった起立部分40Aとその起立部分の上端部から時計回り方向に突出した突出部分40Bとにより構成されている。アーム30の上面と突出部分40の下面との間に溝が形成され、図1に示されるように、その溝の中にアーム32が差し込まれた状態を形成可能である。差し込まれる部分が第2係合部に相当する。上記のような連結状態が洗浄ポジションB(の上方)において生じたならば、アーム30の時計回り方向の回転駆動力がアーム32に伝達され、2つのアーム30,32は両者一体化された状態となって時計回り方向へ回転運動を行うことになる。その場合、上述した起立部分40Aの側面がアーム32の側面に当たることになり、面当たり関係によってアーム30からアーム32にへ水平方向の押圧力が伝達される。一方、吸引ポジションAの上方に2つのアーム30,32が位置した場合、アーム30を下方へ運動させると、突出部分40Bの下面がアーム32の上面を下方に押し込むことになるので、そのような面当たり関係によりアーム30の下方への運動力がアーム32に伝達されることになる。すなわち2つのアーム30,32が両者一体となって下方へ運動する。
【0023】
上述したようにアーム32に対しては反時計回り方向にバネによる付勢力が与えられており、また、上方に別のバネによる付勢力が与えられているので、アーム30の吸引ポジションAへのアプローチによりアーム30に対してアーム32が密着した一体化状態となる。もっとも、アーム30を上方へ引き上げる過程およびアーム30を反時計回り方向へ回転させる過程において、アーム32に対してダンピング機構によるダンパ作用が働いた場合には、その速度がゆっくりとなり、両者の連結状態は解消されることになる。但し、そのようなダンピング作用が弱ければ、上昇運動及び反時計回り方向の回転運動のいずれにおいても連結状態が維持され、洗浄ポジションBに至って連結状態が解消されることになる。すなわちアーム30が洗浄ポジションBに取り残され、その後においてはアーム30が単独で反時計回り方向へ運動を行う。
【0024】
上述したように、アーム30の先端側にはノズル34が設けられている。このノズル34は液体の吸引及び吐出を行うための部材であり、その内部は中空である。ノズル34は導電性を持った金属により構成されている。ノズル34は図示されていない配管(チューブ)を介して分注ポンプ等39に接続されている。配管内には洗浄液が満たされており、その洗浄液を圧力伝達媒体として液体の吸引力及び吐出力が発揮される。アーム32の先端部には上述した電極36が設けられている。この電極36は下方に伸長した金属部材からなる。連結状態においてノズル34と電極36は互いに平行に近接した状態となる。但し、両者の間には隙間が存在しており、両者間の絶縁性が確保されている。連結状態において、ノズル34の先端レベルと電極36の先端レベルは一致している。ノズル34と電極36は連結状態において一体的なものとみなすことができ、それらはノズルユニット38を構成する。従来において、ノズルユニット38はそれを構成する2つの部材が分離しないものであったが、本実施形態においてはそれらの部材を必要に応じて分離させて、単体での運動を行わせることが可能である。
【0025】
液面検出部42は、ノズル34及び電極36に対して電気的に接続されており、それらの間における抵抗値等を観測することにより、液面を検出するものである。具体的には、ノズルユニット38が吸引ポジションAにおいて上方から下方に引き下ろされ、その過程において液面検出部42において電気信号の変化が観測される。ノズル34及び電極36の両者の先端が液面に達した場合、抵抗値の変化が生じるためつまり電流が流れるため、それが液面検出部42において検知されその時点での高さをもって液面レベルであると判定される。その判定結果を示す信号が制御部44に送られ、液面レベルに応じたノズルユニット38の高さ制御が実施される。すなわち、吸引時においてはノズルユニット38の下端部分があまり深く液面内に差し込まれないように制御する必要があり、その場合においては上述した液面レベルが基準とされる。試薬の吸引に伴って液面レベルは下降し、その下降に追従してノズルユニット38が下方に引き下げられる。一般には、ノズルユニット38の下端部分が所定量だけ常に液面下に位置するように追従下降制御が実施される。
【0026】
洗浄ポジションBには洗浄槽18が設けられている。洗浄槽18には洗浄機構22から洗浄液が導入され、その洗浄液の液中にノズルユニットの先端部分つまり試薬に触れた部分を差し込むことにより洗浄を実行することができる。その場合においては、ノズルユニットを所定の高さに位置決めした上で分注ポンプ等39から洗浄液をノズル内に流し込んでノズルの洗浄を行うようにしてもよい。洗浄槽18の内部にノズルユニットの外面に洗浄液を吹き付ける機構を設け、そのような機構によってノズルユニットの外面を洗浄するようにしてもよい。上記のように、本実施形態においては、電極を備えたアーム32に対して独立した搬送駆動機構は設けられておらず、アーム30を搬送する機構の搬送力が必要に応じてアーム32にも与えられている。ちなみに、分注機構10に含まれるノズル搬送機構は、図1に示す構成例において、駆動機構28、シャフト26及びアーム30からなる。
【0027】
図1に示した分注装置の動作例を以下に説明する。
【0028】
現在、図1において実線で示すように吸引ポジションAの上方に2つのアーム30,32が位置していると仮定する。アーム30が下方に引き下ろされ、それとともに一体的にアーム32も下方に運動する。すなわちノズルユニット38が一定速度をもって下方に引き下ろされる。上述した液面検出が実施され、液面レベルに応じた高さにノズルユニット38の先端部が位置決められ、これによって試薬の吸引が実施される。その後ノズルユニット38が上方に引き上げられる。すなわち再び図1に実線で示す状態となる。
【0029】
その後、S1で示すようにアーム30が反時計回り方向に回転運動すると、それに伴ってアーム32も反時計回り方向に回転運動を行う。アーム32の回転運動は洗浄ポジションBの上方で終了し、そこにアーム32は取り残されることになる。その直前状態が図1において一点鎖線で示されている。S2で示されるようにアーム30だけが反時計回り方向への回転を継続して行い、その結果、破線で示すように、アーム30が吐出ポジションCに位置決められる。その後アーム30が下方に引き下ろされ、ノズルによって試薬が対象容器内に吐出される。吐出後においてアーム30が上方に引き上げられる。
【0030】
次にS3に示されるように、アーム30が時計回り方向に回転運動を行う。すると、その途中においてアーム30に設けられたフック40にアーム32が引っ掛かることになり、両者の連結状態が形成される。その状態が図1において一点鎖線で示されている。その後、S4で示すように必要に応じてノズルユニットが洗浄される。S5に示すように、アーム30をさらに回転運動させると、2つのアームが連結された状態のまま2つのアームが吸引ポジションAの上方に位置決められる。そして上述した各工程が繰り返し実行される。
【0031】
図1に示した実施形態によれば、アーム30用の駆動機構を設ければアーム30の運動に伴って必要に応じてアーム32も一体的に運動することになり、アーム32について独立した駆動源を設ける必要が無くなる。本実施形態においては、アーム32に対して上方への付勢力及び反時計回り方向への付勢力を与える2つのバネが設けられていたため、アーム30に対してアーム32を密着させることが可能であり、両者の連結状態を強固なものにできるという利点が得られる。また、ノズル搬送機構によって生じた搬送力がそれらのバネに蓄積されることになるので、原点位置(洗浄ポジションBの上方)へのアーム32の復帰時においては2つのバネの作用によりその動きを実現することが可能である。すなわちそのような復帰運動の際においてはノズル搬送機構から搬送力をアーム32へ与える必要はない。上述したように必要に応じてダンピング機構を設ければ、原点位置への復帰運動の際に2つのアームを分離状態にすることも可能である。例えばアーム32の動作速度を遅くして上昇端あるいは回転端で生じる衝撃力をやわらげることにより液滴の飛散といった問題を防止することが可能である。
【0032】
上記実施形態においては、吐出時においてノズル単体での容器挿入を行うことができるから容器が小さくてもノズルを差し込むことが可能になる。従ってノズルユニットを差し込まなければならないという観点から吐出容器の開口サイズを定める必要が無くなるのでその小型化を促進できるという利点が得られる。上述した実施形態においては試薬を収容する容器及び反応容器のいずれも円形の容器であったが、それらが矩形の容器であってもよい。各容器はマイクロチャンネルのウェルであってもよく、また試験管等であってもよい。
【0033】
上述した実施形態においては、ノズル及び電極が回転運動をするものであったが、それらが直線運動する機構を採用するようにしてもよい。例えばX−Y−Z搬送機構等を利用することも可能である。
【0034】
図2は他の実施形態に係る分注装置の要部構成が示されている。駆動機構56はシャフト52を保持し、駆動機構56によってシャフト52の上下方向の位置及び回転方向の位置が定められる。シャフト52の上端部には水平方向に伸長したアーム54が取り付けられている。アーム54の先端部にはノズル58が取り付けられている。吸引ポジションの近傍には昇降機構68が設けられている。この昇降機構68において、軸部材70の下端部70A及び上端部70Bは肥大しており、それらの間にバネ74が設けられている。バネ74の上端部と肥大した上端部70Bとの間には垂直方向に運動可能なプレート72が差し込まれている。プレート72は軸本体を挿通させる開口を有している。また、その先端部には電極60が設けられている。ノズル58と電極60とによってノズルユニット62が構成されている。
【0035】
アーム54の先端部は第1係合部54Aを構成しており、プレート72の先端部は第2係合部72Aを構成している。すなわち両者が上下に重ねられた状態においては、アーム54の下方への運動力が第1係合部54Aから第2係合部72Aに与えられ、すなわちプレート72に下方への運動力が伝達される。すると、プレート72の下方運動と共に電極60が下方へ運動する。すなわちノズル58と電極60とが一体化された状態が形成され、ノズルユニット62がそれら全体として下方へ運動する。これによって62Aで示すように液面検出が実施される。ちなみに符号64は吸引対象容器を示している。Aは吸引ポジションを示している。プレート72の下方への運動力が消失してそれが上方へ運動すると、バネ74に蓄積された力が作用し、それによってプレート72が上方へ突き上げられる。すなわちプレート72の上方端までノズル58と電極60とが一体関係をもって一緒に運動する。プレート72の上昇端移行に際しては、アーム54が上昇するとノズル58と電極60との間の連結関係が解消され、ノズル58だけが上方へ運動することになる。アーム54の上昇端到達後にアーム54を旋回させて、ノズルを吐出ポジションに位置決めたうえで、アーム54を下方に引き下ろして吐出工程が実施される。符号66は吐出先の容器を示しており、符号58Aは吐出時におけるノズルを示している。Bは吐出ポジションを示している。以上のような実施形態においても必要に応じてノズルと電極との一体化を行え、また必要に応じてノズル単体での搬送を行うことが可能である。また、ノズルだけを吐出先容器に差し込むことが可能であるから、吐出先容器のサイズの小型化を図れるという利点がある。また、上述した実施形態と同様に、電極の復帰運動がバネの作用によって実現されているため、電極側に独立した搬送機構を設ける必要がないという利点が得られる。また、そのようなバネによって強固な連結状態を形成できるので、ノズル58と電極60の先端部の位置決めを的確に行えるという利点が得られる。
【符号の説明】
【0036】
10 分注機構、12,14 ターンテーブル、16 吸引先容器、18 吐出先容器、18 洗浄槽、30,32 アーム、34 ノズル、36 電極、40 フック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の吸引及び吐出を行う導電性を有するノズルと、
吸引位置と吐出位置との間でノズルを搬送するノズル搬送機構と、
前記ノズルと協働して液面検出を行うための電極と、
前記ノズルの搬送経路上に設けられ、液面検出前に前記ノズルと前記電極とを連結状態にしてノズルユニットを構成し、液面検出後に前記連結状態を解消して前記ノズル単体での移動を可能にする連結機構と、
を含むことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記連結機構は、
前記ノズル側に設けられた第1係合部と、
前記電極側に設けられた第2係合部と、
を含み、
ノズル搬送過程における前記第1係合部材と前記第2係合部材との係合により前記連結状態が形成され、前記連結状態では前記ノズル搬送機構の搬送力が前記電極側にも伝達される、
ことを特徴とする分注装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記第1係合部は前記ノズルを保持したノズル保持部材の一部分として構成され、
前記第2係合部は前記電極を保持した電極保持部材の一部分として構成された、
ことを特徴とする分注装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置において、
吸引時に前記連結状態で吸引が実行され、その後の吐出時に前記非連結状態で吐出が実行され、更にその後の洗浄時に前記連結状態で洗浄が実行される、
ことを特徴とする分注装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記ノズルが吸引ポジションから洗浄ポジションを経由して吐出ポジションへ移動する際に前記電極が前記洗浄ポジションに取り残され、
前記ノズルが前記吐出ポジションから前記洗浄ポジションへ移動した時に前記連結状態が再度形成される、
ことを特徴とする分注装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置において、
前記連結状態において前記電極に対して原点位置へ復帰する付勢力を与える付勢手段と、
前記原点位置に復帰した前記電極を制止するストッパ手段と、
を含むことを特徴とする分注装置。

【図1】
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【図2】
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