説明

分級方法および分級装置

【課題】
セラミックスや樹脂等の粒状物質に含まれる微細粒子の除去を、複雑・高価な装置を必要とせずに安価に行うことができる分級方法および分級装置を提供する。
【解決手段】
分級対象粒子をバッフルを有する筒状篩に加え、液媒体を満たした液槽中に前記筒状篩を挿入し、攪拌機で前記筒状篩内を攪拌することによって微細粒子を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスや樹脂等の粒状物質を湿式で分級するための分級方法および分級装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉砕または合成により製造されたセラミックスや樹脂等の粒状物質は、広い粒子径分布を有している。微細な粒子が混在していると、セラミックスや樹脂を利用するプロセスにおいて、微細粒子によるフィルターの閉塞等の問題を生ずる。微細粒子を除去する方法としては、一般的に篩が使用されるが、乾式では、静電気等により微細な粒子が凝集して分離効率が低下する。そこで、湿式で振動篩を行う方法が知られているが、多量の水を必要とし、排出水の処理に多大な費用が掛かる。特許文献1及び2に開示されている分級方法では、特殊な湿式分級装置を必要とし、大量の処理を行えない問題があった。この問題を解決するために、特許文献3では、筒状篩に分散液を通過させる装置及び方法が開示されているが、この方法は装置が複雑かつ高価であり、ポンプにより循環させるため強度の弱いものは破壊されてしまうといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−296121号公報
【特許文献2】特開2009−291669号公報
【特許文献3】特開2007−245042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、セラミックスや樹脂等の粒状物質に含まれる微細粒子の除去を、複雑・高価な装置を必要とせずに安価に行うことができる分級方法および分級装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の分級方法は、分級対象粒子をバッフルを有する筒状篩に加え、液媒体を満たした液槽中に前記筒状篩を挿入し、攪拌機で前記筒状篩内を攪拌することによって微細粒子を除去することを特徴とする。
また、本発明の分級装置は、液槽と、該液槽中に挿入するバッフルを有する筒状篩と、該筒状篩内を攪拌する攪拌機とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の分級方法および分級装置によれば、セラミックスや樹脂等の粒状物質に含まれる微細粒子の除去を、複雑・高価な装置を必要とせずに安価かつ効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の分級装置の例である。
【図2】本発明の分級装置の筒状篩と液槽底部との間隔の取り方を示す図である。
【図3】本発明の分級方法により微粒子の除去を行った例の処理時間と粒子除去率の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1((a)は上面図、(b)は側面図)は、本発明の分級装置の例の概要を示したものである。
【0009】
内部にバッフル4を有する筒状篩1に分級対象粒子を充填し、これを図1に示されるように液媒体を満たした液槽2の中に挿入し、攪拌機で前記筒状篩内を攪拌することによって、篩内の粒子を流動化し、微細粒子を篩の外の液槽2へと通過させるようにして分級を行う。
【0010】
本発明の分級方法における分級の機構は、以下のようなものであると考えられる。
【0011】
バッフル4が設置された筒状篩1の内部で攪拌機の攪拌翼3が回転すると、筒状篩1の中に軸流及びバッフル4により形成された上下循環流が発生する。また、液槽2には、筒状篩1の側面から下部への穏やかな流れが形成される。分級対象粒子は、筒状篩1の中の流れに乗り、篩壁面に到達し、篩の目開き以下の粒子は通過して液槽側に出て行く。そして、通過した小さな粒子は液槽2に形成された穏やかな流れに乗って、液槽下部に移動する。液槽下部では液流れが遅いため、粒子は沈降分離される。粒子が分離した液は、筒状篩1の下部から再び筒状篩1の中に戻る。一方、大きな粒子は慣性力が大きいため篩外側への流れに乗らず、バッフル4に衝突して筒状篩1の内部を循環する。また、篩に到達しても液流速が遅いため、篩の目に強く固定されることが無く、簡単なブラッシングあるいは穏やかな振動によって除去することができる。このように、本発明の分級方法によれば、篩の目詰まりが起き難く、効率的な分離を行うことができる。
【0012】
上述のような本発明の分級方法を実施するにあたっては、筒状篩1の径が大きすぎると篩単位表面積あたりの処理スラリー量が多くなり、分離の効率が低下する。また、筒状篩1の長さを大きくするとスラリーの均一分散が難しくなる。筒状篩1の直径は200〜500mmが好適であり、また長さは直径に対して1〜2倍程度が好適である。
【0013】
筒状篩1と液槽2の内壁との間隔は、筒状篩外部に形成される穏やかな下降流が液槽内壁で乱されないように100mm以上とするのが好ましい。しかし、間隔を不必要に大きくすると液槽2を大きくしなければならず、間隔は100〜300mmが好適である。また、筒状篩1と液槽2の底部との間隔は、筒状篩外部に形成された穏やかな下降流を乱さず、かつ、筒状篩下部に形成される上昇流により沈降した粒子が巻き上げられないようにするために、図2に示すように、筒状篩1を液槽2の底部まで下方に伸ばした架空円筒の側面積Aが、水平方向断面における筒状篩1と液槽2との間のリング状断面積Bの1.5倍以上となるようにするのが好ましい。しかし、間隔を不必要に大きくすると液槽2を大きくしなければならず、上記面積比は1.5〜3倍が好適である。
【0014】
筒状篩1に設置するバッフル4の形状は、平板、円柱、三角柱の何れでもよいが、平板が好適に用いられる。枚数は2〜8枚で筒状篩1の内側に均等に設置するのが効果的である。バッフル4の幅は、筒状篩1の直径の1/20以上、好ましくは1/10である。バッフルの長さは筒状篩1の全長と同じにすることができるが、液面より下側にバッフルが設けられていればよい。
【0015】
液槽2は、円筒型、角型等の何れでもよいが、筒状篩1の外部に形成される液流れを乱さない形状であることがあることが好ましく、バッフル等の突起物のない円筒状のものが好適に用いられる。
【0016】
攪拌翼3は、プロペラ翼、タービン翼、パドル翼等のいずれでもよいが、特に低攪拌速度で大きな上下循環流が得られ、均一な分散が行えることから、パドル翼が好ましく、さらに図1に示すようなボトムパドル翼とサイドパドル翼とを組み合わせたものが円周方向への液流れを増加させることができ、より好ましい。攪拌速度は、分級対象粒子のスラリーが均一になる速度以上とする必要がある。攪拌速度が小さく、スラリーが不均一であると、分級に長時間を要する。また、攪拌速度を必要以上に大きくすると、気泡を巻き込み篩での分級効率を低下させる。
【0017】
なお、本発明の分級方法の分級対象粒子は、セラミックスや樹脂等の粒状物質が挙げられるが、これらに限られずあらゆる粒状物質を対象とすることができる。本発明の分級方法によって分級可能な分級対象粒子の粒径は、攪拌により筒状篩中で均一化が可能であり、且つ液槽に形成される液流速で分離できる粒径であり、粒子密度、液密度等により異なるが、およそ10μm〜1000μmの範囲である。
【0018】
本発明の分級方法に用いる液媒体は、水が一般的であるが、必要に応じて水以外の液媒体を用いることもできる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の分級方法及び分級装置を、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
実施例
4−ビニルピリジンとジビニルベンゼンとのコポリマーを懸濁重合により合成した。得られた樹脂ビーズの粒径をレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した結果、粒径200μm未満の粒子が約3vol%含まれていた(平均粒径400μm)。この樹脂ビーズの分級処理を図1に示す装置を用いて以下のようにおこなった。
【0021】
樹脂ビーズ10Lを、幅30mm、長さ500mmの平板状バッフル4枚を均等に配置した300mmΦ×500mmHの円筒状篩(目開き:358μm)に入れ、これを水100Lを入れた液槽(500mmΦ×700H)に浸漬し、図1に示すような翼径115mm、ボトムパドル高さ50mm、サイドパドル幅15mm、全長235mmの攪拌翼を用いて120rpmで篩内部を攪拌して分級処理を行った。なお、円筒状篩は、液槽の側壁から100mm、底部から200mmの間隔をあけた位置に設置した。
【0022】
処理時間と粒径200μm未満の粒子の除去率の関係を図3に示した。処理時間40分で粒径200μm未満の粒子をほぼ100%除去することができた。
【0023】
比較例1
実施例において、円筒状篩にバッフルを設けない以外は同様にして分級処理を行い、処理時間と粒径200μm未満の粒子の除去率の関係を図3に示した。
【0024】
比較例2
実施例の樹脂10Lを1500mmΦの振動篩上に載せ、水をスプレーしながら分級を行った。これを2回繰返した結果、粒径200μm未満の粒子の除去率は87.5%であった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の分級方法および分級装置によれば、セラミックスや樹脂等の粒状物質に含まれる微細粒子の除去を、複雑・高価な装置を必要とせずに安価かつ効率的に行うことができ、セラミックスや樹脂等の粒子を利用するプロセスにおいて、微細粒子によるフィルターの閉塞等の問題を防止することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 筒状篩
2 液槽
3 攪拌翼
4 バッフル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分級対象粒子をバッフルを有する筒状篩に加え、液媒体を満たした液槽中に前記筒状篩を挿入し、攪拌機で前記筒状篩内を攪拌することによって微細粒子を除去することを特徴とする分級方法。
【請求項2】
前記分級対象粒子がセラミックスまたは樹脂の粒状物質であることを特徴とする請求項1に記載の分級方法。
【請求項3】
前記液媒体が水であることを特徴とする請求項1または2に記載の分級方法。
【請求項4】
液槽と、該液槽中に挿入するバッフルを有する筒状篩と、該筒状篩内を攪拌する攪拌機とからなることを特徴とする分級装置。
【請求項5】
前記筒状篩は、直径が200〜500mmであり、長さが該直径の1〜2倍であることを特徴とする請求項4に記載の分級装置。
【請求項6】
前記筒状篩を前記液槽中に挿入した際の該筒状篩と該液槽の内壁との間隔が100〜300mmであることを特徴とする請求項4または5に記載の分級装置。
【請求項7】
前記筒状篩を前記液槽の底部まで下方に伸ばした架空円筒の側面積が、水平方向断面における前記筒状篩と前記液槽との間のリング状断面積の1.5〜3倍であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の分級装置。
【請求項8】
前記バッフルが2〜8枚であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の分級装置。
【請求項9】
前記バッフルが前記筒状篩の内側に均等に設置されていることを特徴とする請求項8に記載の分級装置。
【請求項10】
前記攪拌機がパドル翼で攪拌を行うものであることを特徴とする請求項4〜9のいずれか一項に記載の分級装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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