説明

分級装置および分級方法

【課題】分級精度の向上を図ることができる分級装置および分級方法を提供すること。
【解決手段】分級装置1は、分級室8と、分級室8に粒子を導入する粒子収容室7と、複数(3つ)の回収管3と、複数(2つ)の仕切板4とを備え、仕切板4は、各回収管3の間に配置され、通過位置と閉鎖位置とに回動可能であり、粒子の分級工程において、通過位置に位置し、粒子の回収工程において、閉鎖位置に位置することにより、回収管3が回収する粒子の分級精度の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分級装置および分級方法、詳しくは、分散媒中に分散している粒子を分級する分級装置、および、その分級装置を用いた分級方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分散媒中に分散している粒子を分級する、いわゆる湿式の分級装置が知られている。
【0003】
このような分級装置としては、直立する筒状の分級筒と、分級筒の下端に設けられ、水などの分級液を流入させるための流入管と、分級筒の上端に上下方向に移動可能に設けられ、分級された粒子を回収するための回収管とを備える分級装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
そして、そのような分級装置では、分級筒の内部空間に分級対象の粒子を仕込んだ後、流入管から上方に向けて分級液を供給して粒子を分級し、その後、回収管により分級液とともに分級された粒子を回収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−15429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の分級装置では、回収管により分級液とともに粒子を回収するときに、分級液が流動してしまい、分級されていた粒子が混合される場合がある。そのため、所望する粒径分布を有する粒子を回収できず、十分な分級精度が得られない場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、分級精度の向上を図ることができる分級装置および分級方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の分級装置は、粒子が分散媒中に分散している分散系中の粒子を、前記分散媒に対する前記粒子の粒子径の違いによる移動速度差を利用して分級する湿式の分級装置であって、前記分散媒を収容し、前記分散媒中において前記粒子を移動させることにより分級する分級室と、前記分級室に設けられ、前記分級室に前記粒子を導入するための導入部と、前記分級室における前記導入部よりも前記粒子の移動方向下流側に、前記粒子の移動方向に間隔を隔てて設けられ、前記粒子を回収するための複数の回収部材と、前記粒子の移動方向において複数の前記回収部材の間のうち、少なくとも1つの前記回収部材の間に設けられ、前記分級室の内部空間を前記粒子の移動方向と直交する方向に仕切る仕切部材とを備え、前記仕切部材は、前記分級室の内部空間において前記粒子の通過を許容する通過位置と、前記分級室の内部空間において前記粒子の通過を規制する閉鎖位置とに移動可能であることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の分級方法は、上記の分級装置を用いた分級方法であって、前記仕切部材を前記通過位置に位置させる準備工程と、前記分散媒が収容された前記分級室に、前記粒子を前記導入部から導入する粒子導入工程と、前記分級室に導入された前記粒子を、前記分散媒に対する前記粒子の粒子径の違いによる移動速度差を利用して分級する分級工程と、前記分級工程後、前記仕切部材を前記閉鎖位置に位置させる閉鎖工程と、前記閉鎖工程後、複数の前記回収管のうち、前記粒子の移動方向最上流側の前記回収管から順次、前記回収管を前記回収位置に回動して、分級された前記粒子を回収する回収工程とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の分級装置では、仕切部材は、分級室の内部空間において粒子の通過を許容する通過位置と、分級室の内部空間において粒子の通過を規制する閉鎖位置とに移動可能である。
【0011】
そのため、分級室において粒子が分級された後、仕切部材を閉鎖位置に位置させることにより、各回収管は、仕切られた内部空間に分散する粒子のみを回収することができる。
【0012】
よって、回収管が分散媒とともに粒子を回収しても、分級されている粒子の混合を抑制することができる。
【0013】
したがって、本発明の分級装置およびその分級装置を用いる分級方法は、分級精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の分級装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す分級装置を示す側断面図である。
【図3】図1に示す仕切板の通過位置を説明するための平断面図である。
【図4】図1に示す仕切板の閉鎖位置を説明するための平断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態(仕切板が平面視略ハート型の態様)における、通過位置を説明するための平断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態(仕切板が平面視略ハート型の態様)における、閉鎖位置を説明するための平断面図である。
【図7】実施例および比較例の粗大粒子累積頻度を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.分級装置の全体構成
図1に示すように、分級装置1は、湿式の分級装置であり、分級筒2と、外筒部材5と、複数の回収部材の一例としての複数(3つ)の回収管3とを備えている。
1.分級筒
分級筒2は、略円筒形状に形成され、その一方側端面が閉鎖され、他方側端面が開放されている。分級筒2は、その内径が、例えば、100〜500mm、その軸線方向長さが、例えば、1000〜3000mmである。
【0016】
なお、以下の説明において、分級筒2の閉鎖される端面側(図1における紙面下側)を下側とし、分級筒2の開放される端面側(図1における紙面上側)を上側とする。すなわち、分級筒2の軸線方向を上下方向とする。
【0017】
分級筒2は、粒子投入弁6とを備え、粒子投入弁6により粒子収容室7(後述)と分級室8(後述)とに仕切られている。
(1)粒子投入弁
粒子投入弁6は、略円板形状に形成されており、その直径は、分級筒2の内径と略同径である。
【0018】
また、粒子投入弁6は、回転軸(図示せず)に保持されている。
【0019】
回転軸(図示せず)は、粒子投入弁6を径方向に貫通して、その両端部が粒子投入弁6の径方向外方に突出している。
【0020】
そして、粒子投入弁6の径方向外方に突出する回転軸(図示せず)の両端部が、分級筒2の上側途中部に形成され、径方向に対向する1対の貫通穴(図示せず)に、それぞれ相対回転可能に挿通されることにより、粒子投入弁6は分級筒2に支持されている。
【0021】
また、粒子投入弁6の回転軸(図示せず)の一端部は、さらに、分級筒2を貫通し、その一端部には、側面視略L字状のレバー9が固定されている。
【0022】
そして、粒子投入弁6は、レバー9の回転軸(図示せず)を支点とする回動にともない、粒子を粒子収容室7(後述)の内部空間に収容する収容位置と、粒子を分級室8(後述)の内部空間に投入する投入位置とに回動可能である。
【0023】
詳しくは、収容位置では、分級筒2の内周面と粒子投入弁6の外周端面とが接触し、粒子収容室7と分級室8とが、粒子投入弁6によって仕切られる。
【0024】
一方、投入位置では、粒子投入弁6が回転軸(図示せず)を回転中心として傾き、粒子投入弁6の外周端面と分級筒2の内周面との間に空間が形成される。
(2)粒子収容室および分級室
粒子収容室7は、分級筒2における粒子投入弁6よりも上側部分であり、具体的には、粒子投入弁6が収容位置にあるときの、粒子投入弁6の上面、その上面よりも上側の分級筒2の内周面から形成され、それらに区画される内部空間を有する。
【0025】
分級室8は、分級筒2における粒子投入弁6よりも下側部分であり、具体的には、粒子投入弁6が収容位置にあるときの、粒子投入弁6の下面、その下面よりも下側の分級筒2の内周面から形成され、それらに区画される内部に空間を有する。
【0026】
分級室8を形成する分級筒2には、回収管3(後述)を挿通するための、複数(3つ)の第1挿通穴10と、仕切板4(後述)の回動を許容するための、複数(2つ)のスリット11とが形成されている。
【0027】
各第1挿通穴10は、分級筒2の径方向から見て略円形状をなし、上下方向に互いに間隔を隔てて形成され、分級室8の内部空間と連通されている。
【0028】
各第1挿通穴10の上下方向における間隔は、例えば、100〜500mmである。
【0029】
また、各第1挿通穴10は、その直径が、対応する各回収管3(後述)の外径と略同径である。
【0030】
各スリット11は、分級筒2の軸線方向と直交する方向に、分級筒2の周方向に沿って形成されている。また、各スリット11は、上下方向において各第1挿通穴10の間に、それぞれ1つずつ形成され、分級室8の内部空間と連通されている。
【0031】
各スリット11は、その幅が、仕切板4(後述)の厚みと略同じ長さである。
【0032】
すなわち、分級室8(分級筒2)は、各スリット11により、複数(3つ)の部分に分割されている。
【0033】
分級室8は、第1網目状部材の一例としての第1メッシュ部材15と、第2網目状部材の一例としての第2メッシュ部材16とを備えている。
【0034】
第1メッシュ部材15は、網目状の略円板形状に形成され、その直径は、分級筒2の内径と略同径である。
【0035】
第1メッシュ部材15は、上下方向においてすべての第1挿通穴10を挟むように1対設けられ、それぞれ分級室8の径方向に沿って配置されている。
【0036】
詳しくは、上側の第1メッシュ部材15は、粒子投入弁6が投入位置にあるとき、粒子投入弁6の最も下側に位置する外周端面と、上下方向に間隔を隔てて対向するように配置されている。また、下側の第1メッシュ部材15は、上下方向において、各第1挿通穴10のうち最も下側の第1挿通穴10と、分級筒2の下端面との間に配置されている。
【0037】
また、第1メッシュ部材15は、分級対象の粒子を通過させることができ、その目開きは、例えば、200〜500μmである。
【0038】
第2メッシュ部材16は、網目状の略円板形状に形成され、その直径は、分級筒2の内径と略同径である。
【0039】
第2メッシュ部材16は、上下方向において1対の第1メッシュ部材15の間に、分級室8の径方向に沿って配置されている。
【0040】
詳しくは、第2メッシュ部材16は、上側の第1メッシュ部材15と、3つの第1挿通穴10のうち、最も上側の第1挿通穴10との間に配置されている。第2メッシュ部材16は、適宜複数設けることができる。
【0041】
また、第2メッシュ部材16は、分級対象の粒子を通過させることができ、その目開きは、例えば、200〜500μmである。
【0042】
2.外筒部材
外筒部材5は、略円筒形状に形成され、その一方側端面が閉鎖され、他方側端面が開放されており、一方側端面が下側、他方側端面が上側となるように、その軸線方向が上下方向に沿って配置されている。
【0043】
外筒部材5は、その内部空間において、分級筒2を収容でき、かつ、仕切板4(後述)が、通過位置と閉鎖位置とに回動可能であり、その内径は、例えば、200〜1500mm、その軸線方向長さが、例えば、1000〜3000mmである。
【0044】
外筒部材5には、仕切板支持軸12と、仕切板支持軸12に支持される複数(2つ)の仕切板4とが設けられている。
【0045】
仕切板支持軸12は、平面視において外筒部材5の略中心に配置され、外筒部材5の閉鎖端面に相対回転可能に設けられ、外筒部材5の軸線方向と平行するように、上方に向かって延びるように形成されている。また、仕切板支持軸12の遊端部は、外筒部材5から上方に向かって突出している。
【0046】
仕切板4は、図3および図4に示すように、略円板形状に形成され、その直径は、外筒部材5の内径よりもやや小径である。
【0047】
また、仕切板4には、分級室8の内部空間の断面積に相当する部分が開口される開口部分27と、分級室8の内部空間の断面積に相当する部分が閉鎖される閉鎖部分28とが区画されている。
【0048】
詳しくは、開口部分27は、仕切板4の中心を避けるように配置され、仕切板4を厚み方向に貫通する略円形状に形成され、その直径は、分級筒2の外径と略同径である。詳しくは、開口部分27は、その直径が、仕切板4の半径よりも小さく形成されており、仕切板4の中心から半径方向に延びる直線が、開口部分27の中心を通過するように配置されている。
【0049】
また、閉鎖部分28は、仕切板4における開口部分27以外の部分から形成されている。
【0050】
そして、図1および図2に示すように、複数(2つ)の仕切板4は、その中心に仕切板支持軸12が、仕切板支持軸12の軸線方向と各仕切板4の径方向とが直交するように挿通され、仕切板支持軸12に相対回転不能に支持されている。このとき、各仕切板4は、上下方向に間隔を隔てて配置されている。また、各仕切板4の外周端面と外筒部材5の内周面とは、外筒部材5の径方向に間隔を隔てて対向する。
【0051】
また、外筒部材5には、分級筒2を内部空間に収容したときに、分級筒2に形成される第1挿通穴10と、外筒部材5の径方向に対向する位置に、第2挿通穴22が形成されている。
【0052】
第2挿通穴22は、外筒部材5の径方向から見て略円形状をなし、上下方向に互いに間隔を隔てて形成され、外筒部材5の内部空間と連通されている。
【0053】
また、各第2挿通穴22は、その直径が、対応する各回収管3の外径と略同径である。
【0054】
さらに、外筒部材5には、分級筒2を内部空間に収容したときに、分級筒2のレバー9と、外筒部材5の径方向に対向する位置に、上方に向かって開口する略U字状の切欠(図示せず)が形成されている。
3.回収管
複数(3つ)の回収管3は、図1に示すように、略円筒形状に形成されている。
【0055】
回収管3の一方側端面は、図2に示すように、分級室8の内部空間の粒子(後述)を回収するための流入口18として形成され、その他方側端面は、回収管3に回収された粒子(後述)を流出する流出口19として形成されている。
【0056】
回収管3は、その直径が、例えば、5〜30mm、その軸線方向長さが、例えば、60〜600mmである。
【0057】
また、回収管3は、一方側端面(流入口18)から軸線方向途中部までが、外筒部材5の内部空間に挿入される挿入部分13として形成され、その軸線方向途中部から他端側端面(流出口19)までが、外筒部材5から径方向外方に突出する突出部分14として形成されている。
【0058】
突出部分14は、突出部分14の内部空間を開閉するバルブ20を備えている。
4.分級装置の組み立て
次に、分級装置1の組み立てを説明する。
【0059】
分級装置1を組み立てるには、図1に示すように、まず、外筒部材5の内部空間に分級筒2を収容する。分級筒2を外筒部材5の内部空間に収容するには、複数(2つ)のスリット11により分割された分級筒2の部分(最上位の部分を除く)が、順次開口部分27に挿通されるように、分級筒2を仕切板支持軸12に沿って、外筒部材5の内部空間へ挿入する。
【0060】
このとき、分級室8に形成された各第1挿通穴10と、外筒部材5に形成された各第2挿通穴22とが、外筒部材5の径方向に間隔を隔てて対向し、かつ、分級室8に形成された各スリット11に、各仕切板4が位置するように、分級筒2を外筒部材5の内部空間において配置する。また、分級筒2のレバー9は、外筒部材5に形成された略U字状の切欠(図示せず)に、上方から挿入され、外筒部材5から外方に突出する。
【0061】
次いで、各回収管3の挿入部分13を、外筒部材5の各第2挿通穴22、および、分級筒2の各第1挿通穴10に挿通し、挿入部分13の流入口18が分級室8の内部空間に位置するように挿入する。これによって、分割された分級筒2の各部分は、各回収管3を介して、外筒部材5に相対移動不能に支持される。また、各回収管3は、外筒部材5および分級室8に相対回転不能に固定される。
【0062】
詳しくは、3つの回収管3のうち最も上側の回収管3は、上下方向において、粒子投入弁6と、2つの仕切板4のうち上側の仕切板4との間に挟まれるように配置される。
【0063】
また、3つの回収管3のうち中側の回収管3は、上下方向において、2つの仕切板4のうち上側の仕切板4と、下側の仕切板4との間に挟まれるように配置される。
【0064】
また、3つの回収管3のうち下側の回収管3は、上下方向において、2つの仕切板4のうち下側の仕切板4と、分級筒2の閉鎖端面との間に挟まれるように配置される。
【0065】
また、各回収管3の突出部分14には、ポンプ(図示せず)が連結されており、ポンプ(図示せず)の駆動による吸引力により、回収管3の内部空間の分散媒17(後述)を吸引することができる。
【0066】
これにより、外筒部材5の内部空間に分級筒2が収容される。
【0067】
このとき、各仕切板4は、その厚みと各スリット11の幅とが略同じ長さであるので、仕切板支持軸12を回転させることにより、分級室8に形成される各スリット11を通過するように、上下方向と直交する水平方向に回動可能である。これによって、開口部分27は、仕切板支持軸12を回転中心として周方向に移動する。
【0068】
詳しくは、各仕切板4は、分級室8の内部空間と開口部分27とが上下方向において重なる通過位置と、分級室8の内部空間と閉鎖部分28とが上下方向において重なる閉鎖位置とに回動可能である。
【0069】
また、各回収管3の突出部分14のバルブ20を閉鎖する。
【0070】
次いで、分級室8に分散媒17を供給する。
【0071】
分散媒17としては、例えば、水が挙げられる。
【0072】
分級室8に分散媒17を供給するには、レバー9を回動させて粒子投入弁6を投入位置に位置させて、分級筒2の上方から、分散媒17を分級室8に供給する。
【0073】
これによって、分散媒17が粒子収容室7を通過し、分級室8に充填される。
【0074】
そして、分級室8が分散媒17で満たされた後、レバー9を回動させて粒子投入弁6を収容位置に位置させる。このとき、分散媒17は、その液面が粒子投入弁6の上面よりも上側に位置することが好ましい。
【0075】
また、外筒部材5にも分散媒17を供給する。
【0076】
外筒部材5に分散媒17を供給するには、外筒部材5の上方から、分散媒17をその内部空間に供給する。詳しくは、外筒部材5の内部空間において、分散媒17の液面が、複数(2つ)のスリット11のうち、上側のスリット11よりも上方に位置するまで、外筒部材5に分散媒17を供給する。
【0077】
以上によって、分級装置1の組み立てが完了する。
4.粒子の分級
次に、粒子の分級について説明する。
【0078】
粒子を分級するには、まず、粒子収容室7の内部空間に粒子を収容する。
【0079】
粒子としては、例えば、公知の製造方法により製造されるトナー粒子が挙げられる。
【0080】
粒子収容室7の内部空間にトナー粒子を収容するには、例えば、トナー粒子が水などの溶媒中に分散するトナー粒子懸濁液を調製し、トナー粒子懸濁液を分級筒2の上方から粒子収容室7に導入する。
【0081】
トナー粒子懸濁液のトナー粒子混合割合は、例えば、5〜20質量%、好ましくは、8〜15質量%である。
【0082】
次いで、図3に示すように、仕切板支持軸12を回転させることにより、各仕切板4を回動させて、通過位置に位置させる(準備工程)。
【0083】
そして、レバー9を回動させて、粒子投入弁6を収容位置から投入位置に回動させる(図1参照)。そうすると、粒子収容室7に収容されていたトナー粒子懸濁液が、粒子投入弁6の外周端面と分級筒2の内周面との間の空間から、分級室8の内部空間に導入される(粒子導入工程)。このとき、上側の第1メッシュ部材15および第2メッシュ部材16により、分散媒17の対流の発生が抑制される。
【0084】
分級室8に導入されたトナー粒子は、分散媒17中に分散されるとともに、重力により上方から下方に向けて移動(沈降)する(分級工程)。このとき、トナー粒子は、所定時間が経過すると、分散媒17に対するトナー粒子の粒子径の違いによる移動速度差によって分級される。
【0085】
詳しくは、トナー粒子は、分級室8の内部空間において、相対的に粒子径の小さなトナー粒子が上側に位置し、相対的に粒子径の大きなトナー粒子が下側に位置するように分級される。
【0086】
このとき、第1メッシュ部材15および第2メッシュ部材16により、分級工程における分散媒17の対流の発生が抑制される。
【0087】
次いで、図4に示すように、仕切板支持軸12を回転させることにより、各仕切板4を回動させて閉鎖位置に位置させる(閉鎖工程)。これにより、分級室8の内部空間が、複数(3つ)の空間に区画されるように、上下方向(粒子の移動方向)と直交する方向に仕切られる。
【0088】
そして、閉鎖工程後、3つの回収管3のうち、最も上側(粒子の移動方向最上流側)の回収管3から順次、分級されたトナー粒子を回収する(回収工程)。
【0089】
詳しくは、3つの回収管3のうち、上側の回収管3の回収管3の突出部分14のバルブ20を開放する。
【0090】
そして、突出部分14に連結されるポンプ(図示せず)を駆動させて、その吸引力により、相対的に小さな粒径分布を有するトナー粒子を含有する分散媒17が、挿入部分13の流入口18に取り込まれ、回収管3の内部空間を通過して、流出口19から流出される。
【0091】
これにより、相対的に小さな粒径分布を有するトナー粒子を回収することができる。
【0092】
その後、突出部分14のバルブ20を閉鎖して、流出口19からの流出を停止する。
【0093】
次いで、3つの回収管3のうち、中側の回収管3の突出部分14のバルブ20を開放する。
【0094】
そして、突出部分14に連結されるポンプ(図示せず)の吸引力により、上側の回収管3が回収したトナー粒子よりも、相対的に大きな粒径分布を有するトナー粒子を含有する分散媒17が、挿入部分13の流入口18に取り込まれ、回収管3の内部空間を通過して、流出口19から流出される。
【0095】
これにより、上側の回収管3が回収したトナー粒子よりも、相対的に大きな粒径分布を有するトナー粒子を回収することができる。
【0096】
その後、突出部分14のバルブ20を閉鎖して、流出口19からの流出を停止する。
【0097】
次いで、3つの回収管3のうち、下側の回収管3の突出部分14のバルブ20を開放する。
【0098】
そして、突出部分14に連結されるポンプ(図示せず)の吸引力により、中側の回収管3が回収したトナー粒子よりも、相対的に大きな粒径分布を有するトナー粒子を含有する分散媒17が、挿入部分13の流入口18に取り込まれ、回収管3の内部空間を通過して、流出口19から流出される。
【0099】
これにより、中側の回収管3が回収したトナー粒子よりも、相対的に大きな粒径分布を有するトナー粒子を回収することができる。
【0100】
その後、突出部分14のバルブ20を閉鎖して、流出口19からの流出を停止し、ポンプ(図示せず)の駆動を停止する。
【0101】
なお、各回収管3の流出口19から流出される分散媒17の流出速度は、例えば、50〜500mL/sである。
【0102】
以上によって、各回収管3により、それぞれ粒径分布の異なるトナー粒子を回収することができ、トナー粒子を各粒径分布毎に分級することができる。
4.作用効果
(1)
分級装置1において、仕切板4は、複数(3つ)の回収管3の上下方向における間に配置され、分級室8の内部空間と開口部分27とが上下方向に重なる通過位置と、分級室8の内部空間と閉鎖部分28とが上下方向に重なる閉鎖位置とに回動可能である。
【0103】
そのため、分級工程において、各仕切板4を通過位置に位置させて、粒子を分級した後に、各仕切板4を閉鎖位置に位置させて、各回収管3の流入口18から、各仕切板4に仕切られた分級室8の内部空間に分散する粒子を回収することができる。
【0104】
その結果、各回収管3が、分散媒17とともに粒子を回収しても、分級室8における分級された粒子の混合を抑制することができる。
【0105】
したがって、分級装置1では、所望する粒径分布を有する粒子を得ることができ、分級精度の向上を図ることができる。
(2)
分級室8は、上下方向において、複数(3つ)の回収管3を挟むように設けられる1対の第1メッシュ部材15、および、1対の第1メッシュ部材15の間に設けられる第2メッシュ部材16を備えている。
【0106】
そのため、粒子導入工程および分級工程における、分級室8の内部空間における分散媒17の対流の発生を効果的に抑制することができる。
(3)
また、分級装置1では、分散媒17を収容する外筒部材5を備え、外筒部材5の内部空間に、分級筒2および複数(2つ)の仕切板4が収容されている。そして、各仕切板4は、外筒部材5の内部空間において、通過位置と閉鎖位置とに回動可能である。
【0107】
これによって、分級筒2の分級室8に形成される各スリット11が液封され、分散媒17が分級装置1の外部に漏れ出すことを、簡易な構成により防止することができる。
5.変形例
(1)
図5は、本発明の他の実施形態(仕切板が平面視略ハート型の態様)における、通過位置を説明するための平断面図である。図6は、本発明の他の実施形態(仕切板が平面視略ハート型の態様)における、閉鎖位置を説明するための平断面図である。
【0108】
図5および図6において、図1〜図4に示す各部に対応する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0109】
図3および図4に示す実施形態の分級装置1が備える仕切板4は、略円板形状に形成され、開口部分27以外の部分が、閉鎖部分28として区画されている。
【0110】
これに対して、仕切板4は、開口部分27および閉鎖部分28を確保することができれば、その形状は特に限定されない。
【0111】
例えば、他の実施形態(仕切板が平面視略ハート型の態様)の分級装置1が備える仕切板4は、2つの小半円部分30と、それらと連続する1つの大半円部分31とからなる、平面視略ハート型に形成されている。また、2つの小半円部分30の間には、仕切板支持軸12が挿通されている。
【0112】
そして、2つの小半円部分30のうち一方の小半円部分30と、それに連続する大半円部分31とには、開口部分27が形成されている。
【0113】
また、仕切板支持軸12を点対称とする、開口部分27の対称位置、すなわち、2つの小半円部分30のうち他方の小半円部分30と、それに連続する大半円部分31とは、閉鎖部分28として区画されている。
(2)
また、上記した実施形態および他の実施形態では、外筒部材5を備え、外筒部材5に分散媒17を収容することにより、分級筒2の分級室8に形成される各スリット11が液封されている。
【0114】
これに対して、外筒部材5を備えず、分級室8に形成される各スリット11に、仕切板4が通過できる程度の弾性を有するシール部材を設けて水密に形成することもできる。
【0115】
このとき、各仕切板4は、開口部分27が形成されず、各スリット11に対して、上下方向と直交する水平方向に進退自在に設けられる。詳しくは、各仕切板4は、分級室8から離間する方向に退避する通過位置と、分級室8の内部空間に挿入される閉鎖位置とに移動可能である。
【0116】
また、上記した実施形態および他の実施形態では、分級対象として、公知の製造方法で製造されたトナー粒子を分級したが、これに限定されず、例えば、ガラス粒子、合成樹脂粒子などを分級することができる。
【0117】
また、上記した実施形態および他の実施形態では、分級工程において、分級室8に導入されたトナー粒子を、重力により上方から下方に向けて移動(沈降)させたが、これに限定されず、例えば、遠心分離機などによる遠心力により、トナー粒子の移動を促進させることもできる。
【実施例】
【0118】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
(1)分級装置の作製
内径がΦ100mm、軸線方向長さが1600mmの分級筒2と、内径がΦ250mm、軸線方向長さが1600mmの外筒部材5と、内径がΦ10mmの回収管3と、目開きが380μmの1対の第1メッシュ部材15、および、目開きが380μmの4枚の第2メッシュ部材16とを用意した。
【0119】
外筒部材5は、仕切板支持軸12と、仕切板支持軸12に相対回転不能に支持される2つの仕切板4を備えている。
【0120】
各仕切板4は、略円板形状をなし、上下方向において、3つの第2挿通穴22の間にそれぞれ1つずつ配置されている。
【0121】
分級装置1を作製するために、まず、分級筒2に、1対の第1メッシュ部材15と、4枚の第2メッシュ部材16とを取り付けた。
【0122】
具体的には、下側の第1メッシュ部材15を、上下方向において分級筒2の下端面から160mm上方に取り付けた。そして、上下方向において下側の第1メッシュ部材15からそれぞれ上方に20mmの間隔を隔てて2枚の第2メッシュ部材16を取り付けた。
【0123】
次いで、上側の第1メッシュ部材15を、上下方向において分級筒2の貫通穴(粒子投入弁6を支持する回転軸を挿通するための貫通穴)から70mm下方に取り付けるとともに、上側の第1メッシュ部材15からそれぞれ下方に20mmの間隔を隔てて2枚の第2メッシュ部材16を取り付けた。
【0124】
次いで、分級筒2の貫通穴(粒子投入弁6を保持する回転軸を挿通するための貫通穴)に、粒子投入弁6を貫通する回転軸(図示せず)の両端部をそれぞれ挿通させて、分級筒2に粒子投入弁6を支持させた。粒子投入弁6が収容位置にあるとき、粒子投入弁6の下面と上側の第1メッシュ部材15との上下方向における間隔が70mmであった。
【0125】
これによって、粒子収容室7と分級室8とが粒子投入弁6によって仕切られた。
【0126】
次いで、分級筒2を、外筒部材5の内部空間に収容した。
【0127】
詳しくは、分級室8に形成された各第1挿通穴10と、外筒部材5に形成された各第2挿通穴22とが、外筒部材5の径方向に間隔を隔てて対向し、かつ、分級室8に形成された各スリット11に、各仕切板4が位置するように、分級筒2を外筒部材5の内部空間において配置した。
【0128】
次いで、3つの回収管3を、それぞれ上下方向に互いに200mmの間隔を隔てて、外筒部材5および分級室8に取り付けた。このとき、3つの回収管3のうち、最も上側の回収管3と、粒子投入弁6の下面(収容位置)との上下方向における間隔が400mmであった。これにより、分級筒2が、各回収管3を介して、外筒部材5に移動不能に固定された。
【0129】
次いで、粒子投入弁6を投入位置に位置させて、分級筒2の上方から、分級筒2の分級室8(粒子投入弁6よりも下方の内部空間)に分散媒17としての蒸留水を充填し、粒子投入弁6を収容位置に位置させた。
【0130】
また、外筒部材5の内部空間にも、外筒部材5の上方から蒸留水を供給した。詳しくは、蒸留水の液面が、2つのスリット11のうち、上側に位置するスリット11よりも上方に位置するまで、蒸留水を供給した。
【0131】
以上によって、分級装置1を作製した。
(2)トナー粒子の分級
回収管3の各突出部分14にポンプ(図示せず)を連結した。
【0132】
次いで、図3に示すように、仕切板支持軸12を回転させ、各仕切板4を通過位置に位置させた(準備工程)。
【0133】
一方、トナー粒子懸濁液700g(固形成分10質量%)を調製した。
【0134】
具体的には、蒸留水630gに、トナー粒子70g(数平均粒子径Dn;6.46μm、体積平均粒子径Dv;8.33μm、Dv/Dn;1,29、粗大粒子累積頻度;1.58体積%)を分散させて調製した。
【0135】
なお、粗大粒子累積頻度は、トナー粒子全量に対する、体積平均粒子径よりも1.8倍以上の粒子径を有するトナー粒子の体積割合である。
【0136】
次いで、トナー粒子懸濁液700gを、分級筒2の粒子収容室7に充填した。
【0137】
次いで、粒子投入弁6を静かに収容位置から投入位置に移動させて、トナー粒子懸濁液を分級室8に導入して(粒子導入工程)、外気温が変化しない条件下で20時間静置した(分級工程)。
【0138】
次いで、図4に示すように、仕切板支持軸12を回転させ、各仕切板4を回動させて閉鎖位置に位置させた(閉鎖工程)。
【0139】
その後、3つの回収管3のうち、最も上側の回収管3から順次、ポンプ(図示せず)の駆動による吸引力により分級されたトナー粒子を回収した(回収工程)。
【0140】
回収管3の各流出口19から流出する、トナー粒子を含有する蒸留水の流出速度は、約100mL/sであった。
【0141】
各回収管3から得られたトナー粒子の粒子分布をコールターカウンタ マルチサイザ−III(アパチャ径100μm)で測定した。
【0142】
3つの回収管3のうち、最も上側の回収管3が回収したトナー粒子の測定結果を表1に、中側の回収管3が回収したトナー粒子の測定結果を表2に、下側の回収管3が回収したトナー粒子の測定結果を表3に、それぞれ示す。
【0143】
また、図7に、各回収管3が回収したトナー粒子における粗大粒子累積頻度(体積%)を示す。
[比較例1]
分級筒2が、仕切板4を備えなかった点以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子を回収し、トナー粒子の粒子分布を測定した。その結果を実施例1と同様に、表1〜3に示す。
【0144】
また、図7に、各回収管3が回収したトナー粒子における粗大粒子累積頻度(体積%)を示す。
【0145】
【表1】

【0146】
【表2】

【0147】
【表3】

【0148】
(3)考察
図7より、分級装置1が仕切板4を備え、各仕切板4が、分級工程において通過位置に、回収工程において閉鎖位置に位置する場合において、各回収管3が回収するトナー粒子の粗大粒子累積頻度を低減することができた。
【符号の説明】
【0149】
1 分級装置
3 回収管
4 仕切板
5 外筒部材
7 粒子収容室
8 分級室
15 第1メッシュ部材
16 第2メッシュ部材
27 開口部分
28 閉鎖部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が分散媒中に分散している分散系中の粒子を、前記分散媒に対する前記粒子の粒子径の違いによる移動速度差を利用して分級する湿式の分級装置であって、
前記分散媒を収容し、前記分散媒中において前記粒子を移動させることにより分級する分級室と、
前記分級室に設けられ、前記分級室に前記粒子を導入するための導入部と、
前記分級室における前記導入部よりも前記粒子の移動方向下流側に、前記粒子の移動方向に間隔を隔てて設けられ、前記粒子を回収するための複数の回収部材と、
前記粒子の移動方向において複数の前記回収部材の間のうち、少なくとも1つの前記回収部材の間に設けられ、前記分級室の内部空間を前記粒子の移動方向と直交する方向に仕切る仕切部材とを備え、
前記仕切部材は、前記分級室の内部空間において前記粒子の通過を許容する通過位置と、前記分級室の内部空間において前記粒子の通過を規制する閉鎖位置とに移動可能であることを特徴とする、分級装置。
【請求項2】
前記仕切部材には、
前記粒子の移動方向と直交する方向における前記分級室の内部空間の断面積に相当する部分が少なくとも開口される開口部分と、
前記断面積に相当する部分が少なくとも閉鎖される閉鎖部分とが形成され、
前記仕切部材が前記通過位置にあるとき、前記開口部分が、前記粒子の移動方向において前記分級室の内部空間と重なるように位置し、
前記仕切部材が前記閉鎖位置にあるとき、前記閉鎖部分が、前記粒子の移動方向において前記分級室の内部空間と重なるように位置することを特徴とする、請求項1に記載の分級装置。
【請求項3】
前記分級室は、前記導入部よりも前記粒子の移動方向下流側、かつ、前記粒子の移動方向において複数の前記回収部材を挟むように1対設けられ、前記粒子が通過可能な第1網目状部材を備えることを特徴としている、請求項1または2に記載の分級装置。
【請求項4】
前記分級室は、前記粒子の移動方向において1対の前記第1網目状部材の間に設けられ、前記粒子が通過可能な第2網目状部材を備えることを特徴としている、請求項3に記載の分級装置。
【請求項5】
さらに、前記分散媒を収容する外筒部材を備え、
前記分級室と前記仕切部材とは、前記外筒部材の内部空間に配置され、
前記仕切部材は、前記外筒部材の内部空間において、前記通過位置と前記閉鎖位置とに移動可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分級装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の分級装置を用いた分級方法であって、
前記仕切部材を前記通過位置に位置させる準備工程と、
前記分散媒が収容された前記分級室に、前記粒子を前記導入部から導入する粒子導入工程と、
前記分級室に導入された前記粒子を、前記分散媒に対する前記粒子の粒子径の違いによる移動速度差を利用して分級する分級工程と、
前記分級工程後、前記仕切部材を前記閉鎖位置に位置させる閉鎖工程と、
前記閉鎖工程後、複数の前記回収部のうち、前記粒子の移動方向最上流側の前記回収部から順次、分級された前記粒子を回収する回収工程とを備えることを特徴とする、分級方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−206003(P2012−206003A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72672(P2011−72672)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】