説明

分繊巻取方法

【課題】 マルチフィラメントの仮撚糸条を巻回した給糸パッケージから、それぞれの糸条を分繊してモノフィラメント仮撚糸を製造する際に、解舒張力の変動を最小限に抑えて給糸パッケージの大径時から小径に至るまで安定した所定の糸張力を維持しながら解除して分繊して巻き取ることが可能な分繊巻取方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 マルチフィラメント状の仮撚糸条Yを無撚状態で解舒すると共にその解舒速度を、正規の解舒速度よりも低速状態から徐々に速度を上げていく加速区間TAと、一定の正規の解舒速度で解舒する等速区間TBと、正規の解舒速度から徐々に速度を下げていく減速区間TCとに変化する構成とし、前記加速区間と前記減速区間の割合を1:2とする時間配分を予め設定しておく構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチフィラメント仮撚糸からそれぞれのモノフィラメント仮撚糸に分繊して巻き取る分繊巻取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糸条を構成するフィラメントには種々の太さのフィラメントがあり、一本が1〜30デニール前後のフィラメントを多数本束ねて一本のマルチフィラメント糸条を構成したものが多数である。また、数十デニールから数百デニールの太い一本のフィラメントで一本の糸条を構成するモノフィラメントと称する糸条もある。
【0003】
また、糸条に捲縮性を付与するために仮撚加工を行うが、通常は、多数本のフィラメントからなるマルチフィラメント糸条を巻回した大径のパッケージを用いて、延伸仮撚機等にて仮撚加工を行う。
【0004】
そのために、マルチフィラメント糸条からなる仮撚糸(以後マルチフィラメント仮撚糸と称する)は容易に製造することができる。しかし、モノフィラメント糸条の仮撚糸(以後モノフィラメント仮撚糸と称する)を製造する際には、モノフィラメント一本一本を仮撚加工するか、マルチフィラメント状の仮撚糸を一本一本に分離分繊するかして得ることになる。
【0005】
また、従来、マルチフィラメント糸パッケージから単糸フィラメントまたは、前記マルチフィラメント糸より単糸数の少ないマルチフィラメント糸に分割して巻き取る分繊糸の製造方法が公開されている。(例えば、特許文献1参照)
【0006】
前記分繊糸の製造方法では、給糸パッケージを回転しながら該パッケージも接線方向に糸条を引き出す所謂転がり取りによって解舒を行っている。一般に、給糸パッケージから、転がり取りしながら糸条を引き出して解舒する際には、給糸パッケージを積極回転させて低い糸張力で解舒する積極駆動方式と、引き出す糸条の張力により給糸パッケージを回転させる消極駆動方式とがある。
【0007】
しかし、マルチフィラメント状の仮撚糸を一本一本に分離分繊することは、例え転がり取りであっても容易ではなく、糸条が捲縮性を有しているために、糸条同士が絡まりやすく、分離するために所定の糸張力が必要である。また、糸条同士の絡まり程度によって糸張力に変動が生じるために、一定の高速での自動巻取操業は困難である。特に、消極駆動方式においては、給糸パッケージの大きさにより糸張力が大きく変動するために、その解舒速度の調整が困難である。
【特許文献1】 特開平6−116807号公報(第1−5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
給糸パッケージを転がしながら解舒する際には、給糸パッケージの大きさ(直径)により、該給糸パッケージから糸条を引き出す際の解舒張力が変動する。特に解舒開始時の給糸パッケージが大きい時、もしくは、解舒終了時の給糸パッケージが小さくなった時には、その解舒張力が増大する。
【0009】
また、糸張力が高い状態で解舒を行うと、パッケージ端面から糸条を引き出す際に、該糸条がパッケージ端面から落ちてしまい(綾落ち状態)、その後の解舒が出来ずに糸切れする場合がある。
【0010】
そのために、大径の給糸パッケージから糸条を引き出して分繊巻取を行う際には、解舒が促進されるにつれて小さくなるパッケージ径に応じた糸張力に維持することが必要であり、そのために、パッケージ径に応じた解舒速度と分繊巻取速度に調整することが必要となる。
【0011】
さらに、糸条が捲縮性を有しているマルチフィラメント状の仮撚糸を一本一本に分離分繊する際には、より注意して分繊巻取を行うことが必要であり、さらに精度よく解舒速度と分繊巻取速度を調整することが肝要となる。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決するために、マルチフィラメントの仮撚糸条を巻回した給糸パッケージから、それぞれの糸条を分繊してモノフィラメント仮撚糸を製造する際に、解舒張力の変動を最小限に抑えて給糸パッケージの大径時から小径時に至るまで安定した所定の糸張力を維持しながら解舒して分繊巻取を行うことを可能とする分繊巻取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明においては、マルチフィラメントの仮撚糸条を巻回した給糸パッケージから前記糸条を接線方向に引き出して解舒し、解舒される前記糸条を分繊してそれぞれのモノフィラメント仮撚糸に巻き取る分繊巻取方法において、前記モノフィラメント仮撚糸を巻き取る巻取速度を変えることで前記解舒の速度を変化する構成とすると共に、前記巻取速度を、正規の巻取速度よりも低速状態から徐々に速度を上げていく加速区間と、一定の正規の巻取速度で巻き取る等速区間と、正規の巻取速度から徐々に速度を下げていく減速区間とに変化し、それぞれの巻取速度とそれぞれの区間の時間とを予め設定しておく構成としたことを特徴とする。
【0014】
そのために、大径の給糸パッケージから糸条を引き出す解舒開始時には低速で解舒し、徐々に増速しながら正規の解除速度を維持した後で、給糸パッケージが小径となると徐々に減速していく構成に予め設定しているので、安定した張力で糸条を解舒することができ、さらに糸条の分繊が確実に行えて、モノフィラメント仮撚糸を安定して容易に製造することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明においては、前記加速区間と前記減速区間の割合が1:2であって、低速状態から定速の正規の解舒速度までは速く到達し、正規の解除速度から減速していく減速区間は長くすると共に、前記加速区間と前記減速区間との合計を前記等速区間よりも長くしていることを特徴とする。
【0016】
そのために、給糸パッケージが大径の時には、低速状態から解舒し始めると共に、短時間で増速させるので、生産効率を悪化させない。また、給糸パッケージが小径となると、徐々にゆっくり減速するので、急激な張力変動が生じず、糸切れが発生しない。さらに、全体の巻取時間の半分以上の時間を速度調整時間としているので、糸切れが少なく、所定量のモノフィラメント仮撚糸の巻玉(巻取パッケージ)を高効率で得ることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明においては、解舒される前記糸条がそれぞれのモノフィラメント糸に分繊される分繊点を検知する検知手段を備えると共に、前記検知手段からの検知信号により前記巻取速度を制御する構成としたことを特徴とする。
【0018】
そのために、解舒速度を上記加速区間と低速区間と減速区間との3区間に分別するだけでなく、さらに糸条の分繊程度に応じて細かく制御することができ、さらに安定した解舒と分繊巻取を行うことができるので、糸切れの生じない分繊巻取となり、モノフィラメント仮撚糸の巻玉(巻取パッケージ)を高効率で得ることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明においては、前記検知手段が、前記糸条の進行方向の前後に配設される第一光電センサと第二光電センサとから構成されると共に、前記第一光電センサが前記分繊点を検知していない場合には、予め定められている巻取速度を維持し、前記第一光電センサが前記分繊点を検知した際には、予め定められている巻取速度を低下する制御モードに入り、前記第二光電センサがさらに前記分繊点を検知した際には、さらに巻取速度を低下することを特徴とする。
【0020】
そのために、糸条の分繊の程度に応じた解舒速度と巻取速度に精度よく調整することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明においては、前記第二光電センサが前記分繊点を検知し巻取速度を低下した後、予め設定される所定の時間経過しても、前記第二光電センサが前記分繊点を検知している場合には、巻取を停止する構成としたことを特徴とする。
【0022】
そのために、所定の時間低速で解舒して分繊しようとして依然として分繊の程度が改善されない、分繊が困難な糸条を自動的に検知して巻取を停止することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、マルチフィラメントの仮撚糸条を分繊してモノフィラメント仮撚糸を製造する分繊巻取方法において、解舒張力の変動を最小限に抑える解舒速度に予め設定しておくと共に、糸条の分繊の程度を検知しながら巻き取る構成としているので、解舒の際に糸切れを生じることなく、給糸パッケージの最後まで解舒して分繊された各モノフィラメント仮撚糸を容易に製造することができる。そのために、所定糸長さのモノフィラメント仮撚糸が巻回された巻玉(巻取パッケージ)を得る満玉率を高効率とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
解舒張力の変動を最小限に抑えて給糸パッケージの大径時から小径時に至るまで安定した所定の糸張力を維持しながら解舒して分繊巻取を行うことを可能とする分繊巻取方法を得るという目的を、マルチフィラメント状の仮撚糸条を無撚状態で解舒すると共にその解舒速度を、正規の解舒速度よりも低速状態から徐々に速度を上げていく加速区間と、一定の正規の解舒速度で解舒する等速区間と、正規の解舒速度から徐々に速度を下げていく減速区間とに変化する構成とし、前記加速区間と前記減速区間の割合を1:2とする時間配分を予め設定しておく構成とすることで実現した。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の一実施例を図1ないし図4に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る分繊巻取方法のチャート図を示している。
【0026】
図1に示すように、分繊巻取開始時には、定速状態から徐々に解舒速度を上げていく加速区間としている。これは、分繊巻取開始時の給糸パッケージの径が大きいために、解舒する糸条を引取る際の糸張力が大きくなり、ある程度低速で引き取ることが必要だからである。
【0027】
また所定長さ解舒して給糸パッケージの径が小さくなると、糸条を引き取る速度を上げることができるので、給糸パッケージの径の減少と共に徐々に解舒速度を増加していくことができる。
【0028】
給糸パッケージの径が所定範囲まで小さくなると、解舒速度を一定の高速状態に維持しながら解舒して巻き取っていくことができる。
【0029】
さらに解舒が進んで給糸パッケージの径が所定の径まで小さくなると、解舒されながら回転する給糸パッケージの回転が段々速くなり、糸からみや糸もつれが生じ易くなって、糸切れが増加する。
【0030】
そのために、給糸パッケージの径が所定の径まで小さくなると、段々解舒速度を減速していく減速区間を設けて、解舒中の糸条が絡まないようにしている。
【0031】
本実施例においては、解舒速度を600m/分まで増加する加速区間TAと、一定の解舒速度600m/分の等速区間TBと、600m/分から150m/分まで減速する減速区間TCとを備える分繊巻取方法とした。
【0032】
前記加速区間TAは、給糸パッケージが停止状態から徐々に回転されていく、速度が0m/分から300m/分まで急速(例えば1分で)に増加する初期区間TAaと、速度300m/分から600m/分まで徐々に増速する加速区間TAbを備えている。
【0033】
実際に糸量12kgが巻回された給糸パッケージを最高速度600m/分で解舒しながら分繊巻取を行ったところ、前記加速区間TAを3時間とし、前記減速区間TCを6時間とすることで、糸切れを生じることなく最後まで分繊巻取を行うことができた。
【0034】
つまり、前記加速区間TAを3時間、等速区間TBを7時間、減速区間TCを6時間とし、全体の分繊巻取時間TTが16時間で、前記糸量12kgの給糸パッケージを分繊して巻き取ることができた。本実施例においては、全部で16時間の分繊巻取時間のうち、高速で巻き取る等速区間TBがその半分以下の7時間であって、残りの9時間が速度変更区間である、解舒速度を変化させる加速区間と減速区間となった。
【0035】
上記のそれぞれの解舒速度とその区間の時間長さの設定は、糸条を実際に解除して糸切れが生じない解舒速度とその区間長さを実験的に求めたものであり、図1のチャート図に示す分繊巻取方法によれば、糸切れを生じることなく、マルチフィラメント仮撚糸を分繊してモノフィラメント仮撚糸を安定して得ることができる。
【0036】
図2は、その時の巻取速度の変遷を示す実施例であり、糸量12kgの給糸パッケージ(パッケージ径450mm)を16時間かけて分繊しながら巻き取った時の、各時間毎の解舒速度とパッケージに残っている糸量を示している。つまり、この図からも、分繊巻取開始時と終了時には、それぞれ巻取速度を変化させる調整区間である、加速区間と減速区間とが必要であることがわかる。さらに、それらの合計は、一定の高速度で分繊巻取を行う等速区間以上の時間を掛けていることがわかる。
【0037】
上記のような解舒と巻取速度の制御を行うことで、給糸パッケージから解舒する際の糸張力を180〜190gの範囲内とすることができた。図2から明らかなように、上記のような加速区間TAと、等速区間TBと、減速区間TCとを予め所定の変化割合に設定することで、解舒される糸条の糸張力を所定の範囲内に抑えることができ、分繊巻取開始時の大径状態から、分繊巻取終了時の小径状態まで連続して糸切れすることなく分繊巻取を続行することができる。
【0038】
この分繊巻取方法が採用される分繊巻取装置の一例を図3に示す。
【0039】
図3に示すように分繊巻取装置1は、多数のモノフィラメントを束ねて一本の糸条Yとし、該糸条Yが巻回された給糸パッケージPを回転自在に保持する解舒部10と、引き出される糸条Yが鉛直方向上方に向けて走行し、そこから水平方向に走行しながら分繊される分繊部20と、それぞれのモノフィラメントを巻き取る巻取装置を備える巻取部30と、該巻取装置の巻取速度を設定し制御可能な制御装置40とを備えている。
【0040】
前記巻取部30は、分繊されたそれぞれのモノフィラメントをそれぞれ巻き取り、巻取パッケージPWを製造する巻取装置30a、30b、30c・・・を複数個配設している。本実施例では、片側に6ユニットの巻取装置を2列合計12ユニットの巻取装置を配設している。このユニット数はモノフィラメント数に対応した数量であり、増減可能な構成である。つまり、モノフィラメントが複数本同時に巻かれてマルチフィラメント状の糸条Yを解舒して、それぞれのモノフィラメントYa、Yb、Yc・・・に分繊して巻き取り、それぞれの巻取パッケージPWを得る装置である。
【0041】
また、それぞれの巻取装置30a、30b、30c・・・に装着される巻取ボビン33を回転駆動するための、駆動モータ31と駆動ベルト32とを備えており、全ての巻取装置を一斉駆動して巻取を行う構成としている。
【0042】
駆動モータ31の駆動開始により、全ての巻取装置が一斉に駆動され、糸条Yが給糸パッケージPから引き出される。そして、この糸条Yの糸張力によって、前記給糸パッケージPが回転されて、糸条Yが解舒されていく構成であり、所謂消極回転式の解舒装置としている。そのために、糸条Yが給糸パッケージPから引き出される速度、所謂解舒速度は巻取装置による巻取速度と同一となる。
【0043】
解舒部10において回転自在な給糸軸11に装着された給糸パッケージPから接線方向に引き出される糸条Yは、ガイドパイプ12に掛け回されて、再度給糸パッケージPの外周に掛け回され、次に、糸ガイド13を通り、張力調整装置14を経由して、糸速検出ローラ15に一回転巻回されて分繊ガイド21を備える分繊部20へ導かれる。
【0044】
前記張力調整装置14は糸条Yに付勢力を付与する張力調整バネを備えて、常時一定の糸張力値とする張力維持装置である。また、ここに糸張力を検出するセンサ(不図示)を設けて、常時監視する構成としている。
【0045】
糸速検出ローラ15は、糸条Yを巻回しているので、糸速度に対応した回転数で回転するローラである。そのために、該回転数により糸速度を検出することができ、得られる糸速度の信号を前記制御装置40へ送信し、該制御装置40により、巻取装置の回転速度を制御して、巻取速度を所定の範囲に維持する構成としている。
【0046】
分繊ガイド21に導かれた糸条Yは、分繊ガイド21で分繊され、上記の巻取部30にてそれぞれのモノフィラメントYa、Yb、Yc・・・に分繊して巻き取る構成である。前記巻取部30は、糸ガイドを装着して巻取ボビンの軸方向に沿って上下に往復移動するトラバースバーを備える巻取装置から構成されるがここでは詳述しない。また、この巻取装置としては、巻取ボビンを水平に支持して回転して糸条を巻き取る構成としてもよく、特に限定されるものではない。
【0047】
給糸パッケージPは、重量のある大きな径をしたパッケージであるので、解舒開始時には低速で引っ張らないと糸張力が高くなり過ぎる。そのために、始めは低速で巻取を開始し、徐々に増速していくことが肝要である。
【0048】
巻取が進むと、それぞれの巻取ボビン33に巻回される巻取パッケージPWの径が大きくなるので、巻取速度が増加する。そのために、巻取速度を一定に維持するためには、巻取ボビン33の回転数を徐々に減少させていくことが必要であり、この巻取速度の制御を、前記糸速検出ローラ15により検出される糸速度から前記駆動モータ31の回転速度を制御することで行っている。
【0049】
これらの分繊巻取速度は予め制御装置40に設定しておく構成であり、給糸パッケージPを装着した後で、糸条Yを引き出して、それぞれのモノフィラメントYa、Yb、Yc・・・に分繊して、それぞれの巻取装置30a、30b、30c・・・に装着される巻取ボビン33に糸掛けし、巻取開始ボタンを押す。すると、加速区間TAと、等速区間TBと、減速区間TCとの予め設定される巻取速度にて自動的に巻取を開始する。これらの各区間の時間や巻取速度は予め制御装置40に設定しておく値であるが、分繊点を検知する検知手段22を別に装着して、糸条の分繊の程度を検知して巻取速度を変化させることもできる。さらに、前記分繊点の検知による制御範囲限界を超えた場合や糸切れを生じた場合には、アラームを発したり、機台を停止する等の制御を行うこともできる。
【0050】
検知手段22は図4に示すように、糸条Yの進行方向の上流側に配設される第一光電センサ22Aと、下流側に配設される第二光電センサ22Bとから構成されている。
【0051】
図4(a)には、分繊ガイド21部において分繊されている良好な分繊状態を示している。この状態では、第一光電センサ22Aにおいても、マルチフィラメント状に一本にまとまった糸条Yではなく、一本一本に細かく分繊された糸を検出しているので、分繊点を検出していない状態である。
【0052】
図4(b)には、分繊状態が悪化し、分繊点が前記第一光電センサ22A部にまで下がってきたところを示している。この状態では、前記第一光電センサ22Aが、マルチフィラメント状に一本にまとまった状態である分繊点BAを検出する。そのために、前記第一光電センサ22Aが前記分繊点BAを検出すると、巻取速度を低下して分繊を促進する制御を行うとよい。
【0053】
前記第一光電センサ22Aが前記分繊点BAを検出し、巻取速度を低下した後で分繊状態が改善されると、前記分繊点BAが再び分繊ガイド21部にまで上昇するので、前記第一光電センサ22Aが分繊点BAを検出しなくなる。そのために、再度巻取速度を予め定められた巻取速度まで増速することができる。
【0054】
図4(c)には、分繊状態がさらに悪化し、分繊点が前記第二光電センサ22B部にまで下がってきたところを示している。この状態では、前記第二光電センサ22Bが、マルチフィラメント状に一本にまとまった状態である分繊点BBを検出する。そのために、前記第二光電センサ22Bが前記分繊点BBを検出すると、巻取速度をさらに低下して分繊をさらに促進する制御を行うことができる。
【0055】
前記第二光電センサ22Bが前記分繊点BBを検出し、巻取速度をさらに低下して分繊状態が改善されると、分繊点が徐々に上昇していく。その後で前記第一光電センサ22Aが分繊点を検知しなくなった後で、巻取速度を徐々に増加していく制御を行い、予め定められた巻取速度に達しその速度を維持することになる。
【0056】
もちろん、巻取速度を変化させている間に再度第一光電センサ22Aや第二光電センサ22Bが再び分繊点を検知すると、上記で説明した制御モードに戻る構成としている。
【0057】
これらの、巻取速度の維持や変更のモードは予め制御装置40に設定しており、糸条の種類や太さ等により適当な制御モードに変更して設定しておく構成である。
【0058】
上記したように、本発明によれば、マルチフィラメントの仮撚糸条を巻回した給糸パッケージから、それぞれの糸条を分繊してモノフィラメント仮撚糸を製造する分繊巻取方法において、解舒張力の変動を最小限に抑える解舒速度に予め設定しておくと共に、糸条の分繊の程度を検知しながら巻き取る構成としているので、解舒の際に糸切れを生じることなく、給糸パッケージの最後まで解舒して分繊された各モノフィラメント仮撚糸を容易に製造することができる。そのために、所定糸長さのモノフィラメント仮撚糸が巻回された巻玉(巻取パッケージ)を得る満玉率を高効率とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る分繊巻取方法のチャート図である。
【図2】本発明に係わる分繊巻取方法の巻取速度の変遷を示す図である。
【図3】分繊巻取装置の一例を示す全体正面図である。
【図4】分繊状態を示し、(a)には分繊ガイド部に分繊点がある場合を示し、(b)は分繊点が第一光電センサ22A部に位置している場合を示し、(c)には、分繊点が第二光電センサ22B部に位置している場合を示している。
【符号の説明】
【0060】
1 分繊機
10 解舒部
20 分繊部
21 分繊ガイド
22 (分繊点)検出手段
22A 第一光電センサ
22B 第二光電センサ
30 巻取部
30a、30b・・巻取装置
40 制御装置
P パッケージ
TA 加速区間
TB 等速区間
TC 減速区間
Y 糸条
Ya、Yb、Yc・・ モノフィラメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィラメントの仮撚糸条を巻回した給糸パッケージから前記糸条を接線方向に引き出して解舒し、解舒される前記糸条を分繊してそれぞれのモノフィラメント仮撚糸に巻き取る分繊巻取方法において、
前記モノフィラメント仮撚糸を巻き取る巻取速度を変えることで前記解舒の速度を変化する構成とすると共に、
前記巻取速度を、正規の巻取速度よりも低速状態から徐々に速度を上げていく加速区間と、一定の正規の巻取速度で巻き取る等速区間と、正規の巻取速度から徐々に速度を下げていく減速区間とに変化し、
それぞれの巻取速度とそれぞれの区間の時間とを予め設定しておく構成としたことを特徴とする分繊巻取方法。
【請求項2】
前記加速区間と前記減速区間の割合が1:2であって、低速状態から定速の正規の解舒速度までは速く到達し、正規の解除速度から減速していく減速区間は長くすると共に、前記加速区間と前記減速区間との合計を前記等速区間よりも長くしていることを特徴とする請求項1に記載の分繊巻取方法。
【請求項3】
解舒される前記糸条がそれぞれのモノフィラメント糸に分繊される分繊点を検知する検知手段を備えると共に、前記検知手段からの検知信号により前記巻取速度を制御する構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の分繊巻取方法。
【請求項4】
前記検知手段が、前記糸条の進行方向の前後に配設される第一光電センサと第二光電センサとから構成されると共に、前記第一光電センサが前記分繊点を検知していない場合には、予め定められている巻取速度を維持し、前記第一光電センサが前記分繊点を検知した際には、予め定められている巻取速度を低下する制御モードに入り、前記第二光電センサがさらに前記分繊点を検知した際には、さらに巻取速度を低下することを特徴とする請求項3に記載の分繊巻取方法。
【請求項5】
前記第二光電センサが前記分繊点を検知し巻取速度を低下した後、予め設定される所定の時間経過しても、前記第二光電センサが前記分繊点を検知している場合には、巻取を停止する構成としたことを特徴とする請求項3に記載の分繊巻取方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−9228(P2006−9228A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217988(P2004−217988)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(501425326)
【出願人】(398024686)山越株式会社 (6)
【Fターム(参考)】