説明

分解処理架橋澱粉を配合した揚げ物用ミックス粉および揚げ物用食品

【課題】吸油量が少なく、食感に優れた揚げ物が得られる揚げ物用ミックス粉及びそれを用いた揚げ物食品を提供する。
【解決手段】沈降積が0.4〜2.1mlである架橋澱粉に、油脂類または無機塩と油脂類を添加混合し加熱分解した分解処理架橋澱粉が配合された揚げ物用ミックス粉を用いる。前記分解処理架橋澱粉は無水換算12質量%濃度・30℃で測定した加熱粘度が50〜10000mPa・sであることが好ましい。また、前記分解処理架橋澱粉が10〜50質量%配合されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸油量が少なく、食感に優れた揚げ物が得られる揚げ物用衣材、これを配合したミックス粉およびこれを用いた揚げ物用食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、揚げ物用ミックス粉としては、グルテンの少ない薄力小麦粉を主体として用い、これに衣材として澱粉、膨張剤、蛋白質、乳化剤、色素、調味料などを必要に応じて配合したものが使用されている。
近年、メタボリック・シンドロームと呼ばれるように、肥満からくるさまざまな成人病に罹患する可能性が高く、問題視されている。
高脂肪含量の食品は高カロリーであり、肥満の原因の一つとなる。そのため、低脂肪含量の食品が求められる。
一方、市販されている天ぷらなどの揚げ物は比較的吸油量が多く、そのため揚げ物の吸油量を少なくするための試みがなされている。
吸油量を少なくすることができるミックス粉の例として、特定の保水力に調整した熱処理小麦粉にアルギン酸プロピレングリコールエステルを混合する技術がある(特許文献1)。具材にまぶすことによって吸油量を少なくする吸油抑制剤の例として、アルギン酸エステルを含有する吸油抑制剤を使用すること(特許文献2)、揚げ物用調理油脂組成物の例として、食用油脂に有機酸モノグリセリドおよびポリグリセリン脂肪酸エステルを溶解すること(特許文献3)などが知られている。しかしながら、これらの技術を用いても吸油量の減少が不十分であったり、吸油量を十分に抑えようとするとフライ食品の食感が満足いくものでなくなるという問題があった。
【0003】
また、揚げ物の吸油量を少なくする試みではないが、澱粉に油脂類または油脂類とタンパク質を添加混合して加熱処理する技術に油脂加工澱粉(油脂処理澱粉、油脂コーティング澱粉とも言われる)として知られているものがある。これは揚げ物用の衣材として用いると具材と衣の結着性を高め、優れた食感も得られるという技術である(特許文献4、5)。この油脂加工澱粉を揚げ物用衣材として用いると、具材と衣の結着性が改善され、適度な硬さとソフト感のある食感は得られたものの、吸油量の減少や油っこさの改善という効果は得られないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−22245号公報
【特許文献2】特開2002−209531号公報
【特許文献3】特開平9−74999号公報
【特許文献4】特開2004−113236号公報
【特許文献5】特開2002−218920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、吸油量が少なく、油っこさがなく、サクサク感および口溶けの良好な揚げ物が得られる揚げ物用衣材を開発し、これを配合したミックス粉およびこれを用いたフライ食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定範囲の沈降積を有する架橋澱粉を加熱分解したもの(本発明においてこれを分解処理架橋澱粉という)を揚げ物用ミックス粉として使用することで、吸油量が少なく、油っこさがなく、サクサク感および口溶けの良好な揚げ物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明は、沈降積が0.4ml以上、2.1ml以下(以後、0.4〜2.1mlと表記する)である架橋澱粉に油脂類または油脂類と無機塩を添加混合後、加熱分解させた分解処理架橋澱粉を揚げ物用衣材として用いることであり、前記揚げ物用衣材が配合された揚げ物用ミックス粉であり、さらには前記揚げ物用ミックス粉を用いた揚げ物食品である。
また、好ましくは前記分解処理架橋澱粉の無水換算12質量%(以後、「質量%」を「%」という)濃度で測定した加熱粘度が、測定温度30℃で50mPa・s以上、10000mPa・s以下(以後、50〜10000mPa・sと表記する)である分解処理架橋澱粉を配合した揚げ物用ミックス粉である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の揚げ物用ミックス粉を使用した揚げ物食品は吸油量が少なく、食感に油っこさがなく、サクサク感があり口溶けの良い食感を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の架橋澱粉を作成するための澱粉としては、特に限定されないが、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、小麦澱粉、粳米澱粉、もち米澱粉などが挙げられる。
本発明の架橋澱粉とは、原料澱粉に架橋剤を使用して処理し、化学的に架橋させた澱粉であり、架橋剤としては、トリメタリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、オキシ塩化リン、エピクロルヒドリンなどが挙げられる。
本発明に使用される分解処理する前の架橋澱粉の架橋処理の程度は、沈降積として検知でき、その値が0.4〜2.1mlの条件を満たすものであり、好ましくは0.7〜1.5mlの条件を満たすものである。又この条件を満たす限り、架橋処理と他のエーテル化、エステル化、可溶性化などの加工を組み合わせたものを原料として加熱分解処理を行ない、本発明と同様の効果を発揮するものは、本発明に包含する。
架橋澱粉の沈降積が0.4ml未満だと、架橋澱粉の膨潤が過度に抑制され、食感にサクサク感がなくてひきが強くなり好ましくないだけでなく、製造に多量の薬品を必要とするため高コストとなるデメリットがある。
また、沈降積が2.1mlを超えると、架橋度合いが弱く、吸油量の減少に充分な効果が発揮されない。
【0009】
(沈降積)
本発明における沈降積とは、架橋澱粉の膨潤抑制の度合を測定する方法で、その測定法を以下に述べる。
試料澱粉を無水換算150mg精秤し、試験管に移す。その中へ後述する試験用液15ml正確に加え、よく振とう分散させ、直ちに沸騰水浴中に入れ5分間加熱する。その後、急冷して室温まで冷却した後、再度振とう均一化して10mlメスシリンダーに10ml移し、20℃で18時間静置した際に沈降した部分の容積を沈降積(ml)とする。
試験用液の調製方法:塩化亜鉛300g,塩化アンモニウム780g,イオン交換水1875gを加温溶解後冷却し、19ボーメ(15℃)に合わせる。この液10mlを取り、ブロムフェノールブルー液を2滴加え、0.1N−HClで呈色が紫から黄色に変わる点を終点として滴定して塩酸度(塩酸度=HClのファクター×滴定に要したml数)を求める。塩酸度が3.9±0.1になるようにアンモニア水、塩酸を用いて調整する。調整後、再度塩酸度を確認して、最後にろ過して用いる。
【0010】
本発明における油脂類とは、エゴマ油、シソ油、大豆油、綿実油、コーン油、ナタネ油、サフラワー油、オリーブ油、椿油、胡麻油、米糠油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などの植物油脂、および牛脂、ラード、バター(乳脂肪)などの動物性油脂が挙げられる。
油脂類を混合して加熱する事で澱粉の分解が促進され、より温和な加熱条件で澱粉の分解処理を行なうことが出来る。
また、油脂類を混合して加熱する事で、澱粉の表面に油脂が吸着され、得られた澱粉は、冷水に分散させた時でも沈澱する事なく、クリーム状のなめらかな粘性を示す。そのため、バッター液として使用した場合に加水量を増やす事が出来、バッター液の歩留まり向上につながる。
【0011】
これらの油脂類の架橋澱粉に対する添加量は、好ましくは0.01%以上、1.0%以下であり、より好ましくは0.03%以上、0.5%以下である。0.01%未満であると澱粉を分解するのに十分な効果が発揮されず好ましくない。1.0%を超えると得られた澱粉が分解し過ぎるために吸油量が増えてしまう。また、得られた澱粉に油脂類由来の特有なにおいが出てしまい好ましくない。
【0012】
本発明における無機塩とは、硫酸カルシウム・硫酸ナトリウムなどの硫酸塩、酢酸ナトリウムなどの酢酸塩、炭酸カルシウム・炭酸ナトリウム・炭酸水素ナトリウム・炭酸カリウムなどの炭酸塩、リン酸ナトリウム・リン酸カリウム・リン酸水素ナトリウム・リン酸水素カリウムなどのリン酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物、塩化ナトリウム・塩化カリウム・塩化カルシウムなどの塩化物、などが挙げられるが、食品に使用する際に残存後の味等を考えた時に、炭酸塩や塩化物が好ましい。
無機塩を混合して加熱する事で澱粉の分解が促進され、油脂類のみを添加・混合した場合より、より温和な加熱条件や短時間で澱粉の分解処理を行なうことが出来る。
【0013】
これらの無機塩類の架橋澱粉に対する添加量は、0.1%以上、5%以下である事が好ましい。0.1%未満であると澱粉を分解するのに十分な効果が発揮されないため、無機塩を添加・混合する意義が乏しい。また、5%を超えると得られた澱粉が好ましい範囲を超えて分解するなど、製造上の問題点が生じたり、最終製品の味に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくない。
【0014】
(加熱粘度)
本発明における加熱粘度の測定方法を示す。(1)澱粉無水換算12%濃度の脱イオン水分散液を調製し、沸騰浴中で攪拌しながら85℃到達まで加熱する。(2)その後攪拌を止め85℃以上で10分間放置する。(3)加熱終了後、冷水浴中で攪拌しながら30℃まで冷却し、蒸発した水分を補正した後、B型粘度計を用いて、30rpmで測定した値を加熱粘度とする。
【0015】
本発明における澱粉の加熱分解とは、加熱によって澱粉のグルコシド結合を切断することであり、分解を促進する目的で油脂類、または油脂類と無機塩を添加・混合して加熱した分解処理である。加熱の方法は特に限定されず公知の方法で行うことができる。例えば、棚式乾燥機での加熱や焙焼デキストリンの製造に用いられるロースター、ロータリーキルン、流動床焙焼機などが挙げられる。
【0016】
ここで、本発明の分解処理架橋澱粉は揚げ物用ミックス粉に使用するのであるから、使用されるときには一定の水分の存在下で加熱されるものである。そのため、加熱粘度は分解処理架橋澱粉が食品中に使用されたときの状態を表す指標のひとつとなり、一定の粘度範囲を外れた分解処理架橋澱粉を揚げ物用ミックス粉に使用すると、食感が悪くなったり、吸油量が減少しないという問題が生じる。
【0017】
本発明に係る架橋澱粉は沈降積が0.4〜2.1mlである。この範囲は架橋澱粉としては比較的強い架橋度を示すものであるため、これらを分解処理した場合、分解初期には加熱粘度が上昇する。これは、分解により架橋澱粉の膨潤抑制効果が弱められるためである。さらに分解を進めていくと澱粉の分子量が低下するため、加熱粘度は再び低下していく。ただし、加熱分解時にどの程度まで粘度が上昇するか、どのくらいの速度で分解するかは原料となる澱粉、架橋の程度によって様々である。例えば、架橋澱粉の原料がタピオカ澱粉である場合と馬鈴薯澱粉である場合を比較すると、同程度の架橋をした試料を同様の加熱分解処理した場合でも馬鈴薯澱粉を原料とした場合の方が加熱粘度は高くなる。
【0018】
そこで、発明者らは吸油量の減少、油っこさがなくサクサクとした食感となる加熱粘度の適した範囲を決めるべく、種々の澱粉を用いて試験した結果、本発明の分解処理架橋澱粉の加熱粘度は食感と吸油量の点から澱粉無水換算濃度12%、測定温度30℃で50〜10000mPa・sの範囲が好ましいことを見出した。
加熱粘度が50mPa・s未満になる原因としては、架橋度が非常に強い場合と、分解が進み過ぎた場合が考えられる。架橋度が非常に強い場合には、架橋澱粉の膨潤が過度に抑制され、ミックス粉に配合されている小麦粉の食感が強くなるために、食感にサクサク感がなくてひきが強くなり好ましくなく、分解が進み過ぎた場合には、吸油量が増加してしまう。一方、10000mPa・sを超える原因としては、架橋度が弱い場合が考えられ、架橋度が弱い場合には、吸油量が減少しない上に、サクサク感がなくなり、食感が悪くなる。
【0019】
なお、従来油脂加工澱粉として知られている澱粉も架橋澱粉に油脂を混合して加熱処理することによって得られる点で、本発明の分解処理架橋澱粉と類似の製造方法で製造されたものであるといえる。しかし、特開2004−113236号公報(特許文献4)の段落番号〔0014〕および特開2002−218920号公報(特許文献5)の段落番号〔0006〕に記載されているように、油脂加工澱粉は加熱処理時に過度に分解したり、澱粉の部分糊化や損傷がおこらないように製造されている。そのため、本発明の分解処理架橋澱粉に適した粘度範囲を外れたものとなり、本発明の目的である吸油量の減少および油っこさがなくサクサクとした食感という効果を得ることができない。
【0020】
本発明の分解処理架橋澱粉は揚げ物用衣材として用いることができるが、これを単独で用いると硬い食感の揚げ物食品となってしまうため、その他の成分を配合した揚げ物用ミックス粉とするのが好ましい。揚げ物用ミックス粉は、唐揚げ、天ぷら、豚カツ、牛カツ、ミンチカツ、チキンカツ、クリームコロッケ、フリッター、魚介類のフライなどで、打ち粉、まぶし粉またはバッター液として用いることが出来る。本発明のミックス粉には、必要に応じて本発明に係る分解処理架橋澱粉に、通常揚げ物食品に用いられる材料を併用することが出来る。具体例としては、穀粉(小麦粉、コーンフラワー、米粉、α化穀粉など)、未変性澱粉(コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉など)、加工澱粉(油脂加工澱粉、次亜塩素酸塩処理澱粉、酸処理澱粉、α化澱粉、乾熱処理澱粉、湿熱処理澱粉、架橋澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化架橋澱粉、エーテル化架橋澱粉など)、糖質(単糖、二糖類、オリゴ糖、澱粉分解物、還元澱粉分解物など)、天然ガム類(グァーガム、キサンタンガム、タマリンド種子ガム、カラギーナンなど)、膨張剤(ベーキングパウダー、重炭酸ソーダなど)、蛋白質(大豆蛋白、乳蛋白、卵白、卵黄、カゼインなど)、油脂類(大豆油、マーガリンなど)、乳化剤(レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、シュガーエステルなど)、色素(β−カロチン、エンチイエローなど)、調味料(みりん、醤油、食塩、グルタミン酸ソーダ、核酸系調味料など)が挙げられる。
【0021】
本発明において、分解処理架橋澱粉をミックス粉に配合する配合量としては、好ましくは10%以上、50%以下である。配合量が10%未満だとサクサク感が弱くなり吸油率も高くなる。配合量が50%を超えると食感が硬すぎて口溶けが悪くなり吸油率も高くなる。
【実施例】
【0022】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
〔実施例1〕
水1200質量部(以後、「質量部」を「部」という)に、硫酸ソーダ300部、苛性ソーダ10部を加えて溶解し、攪拌下、原料タピオカ澱粉1000部を添加して調整したスラリーを7点用意し、トリメタリン酸ソーダを0.1〜10部の範囲で、添加量を変えて加え、40℃にて15時間反応した。その後、中和、水洗、脱水、乾燥、精粉して架橋澱粉C1〜C7を得た。C1〜C7および未変性タピオカ澱粉の沈降積を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
〔実施例2〕
実施例1で得られた架橋澱粉C1〜C7と未変性のタピオカ澱粉を用いて、澱粉1000部に対し、エゴマ油3部を添加混合後、水分が10%以下になるまで50℃で風乾し、精粉した。その後、加熱分解処理としてエアバスで150℃、6時間加熱して、タピオカ分解処理架橋澱粉HDS1〜8を得た。
HDS1〜8の加熱粘度を表2に示す。また、参考として実施例1で得られた加熱処理を行なっていないC5について、加熱粘度を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
<試験例1>
(揚げ玉の作成)
薄力小麦粉80部に、実施例2で得られたHDS1〜8およびC5を20部混合し、調整後のバッター液の粘度が、測定温度10℃で2500±500mPa・sになるようにバッター液を調製するため、HDS1〜8混合サンプルは水130部を、C5混合サンプルは水120部を加えてバッター液を作った。この液を口径7.5mmの注射器に入れ、175℃の大豆・菜種白絞油(以下、植物油とする)に投入して45秒フライし揚げ玉FB1〜8およびFBC5を得た。また、対照として薄力小麦粉100部に水130部を加えて得られたバッター液で作成した揚げ玉FBFも調製した。以下、得られた揚げ玉を用いて、吸油量を測定し、吸油率と減少率を求めた。試験例1の吸油率の測定結果を表3に示す。なお測定方法は以下の通りである。
【0027】
<吸油率の測定方法>
三角フラスコに揚げ玉を10g精秤(W1)し、ジエチルエーテル150mlを添加した、スターラーで30分間攪拌した後に、揚げ玉を取り除くために、エーテル抽出液をろ過した。その後、ジエチルエーテルを蒸発させるために、抽出液を70℃で2時間加熱し、残存した油の質量(W2)を精秤した。
吸油率は以下の式で求めた。
吸油率=(W2/W1)×100(単位:%)
また、対照のバッター液で作成した揚げ玉FBFで求めた吸油率に対する減少率を以下の式で求めた。
減少率=(1−揚げ玉の吸油率/FBFの吸油率)×100(単位:%)
【0028】
【表3】

【0029】
試験例1の結果より、沈降積が0.4〜2.1mlであり、加熱粘度が50〜10000mPa・sの範囲であるFB3〜7の吸油率が減少し、特にFB4〜6の吸油率が少なく、FB5の吸油率が最も少なく良好であった。油脂を添加混合して加熱分解したHDS5を用いたFB5はその原料であるC5を用いたFBC5より加水量が増加した。
【0030】
<試験例2>
(エビの天ぷらの作成)
薄力小麦粉80部に、ベーキングパウダー1部と、実施例2で得られたHDS1〜8およびC5を20部混合し、調整後のバッター液の粘度が、測定温度10℃で2500±500mPa・sになるようにバッター液を調製するため、HDS1〜8混合サンプルは水130部を、C5混合サンプルは水120部を加えてバッター液を作った。このバッター液を用いて剥きエビを種として、175℃の植物油で2分間フライし、エビの天ぷらST1〜8およびSTC5を得た。また、対照として薄力小麦粉100部に水130部を加えて得られたバッター液で作成したサンプルSTFを同様に調製した。
【0031】
以下、これらエビの天ぷらを用いた食感評価を行なった。なお食感評価は、5名のパネラーによる官能評価で「食感のよさ」および「油っこさの少なさ」を以下に示す5段階で評価を行ない、その平均値を評価とした。試験例2の結果を表4に示す。
【0032】
(食感のよさ)
5:サクサク感が強くて口溶けがとても良く、非常に好ましい食感である。
4:適度にサクサク感があり口溶けが良く、好ましい食感である。
3:少しサクサク感がある。
2:サクサク感があまりなく、食感が硬くひきがある。
1:サクサク感がほとんどなく、食感が硬すぎてひきが強い。
【0033】
(油っこさの少なさ)
5:油っこさがほとんど感じられない。
4:油っこさがあまり感じられない。
3:少し油っこさを感じる。
2:油っこい。
1:かなり油っこい。
(合計点)
合計点が2.0〜4.9は×、5.0〜6.9は△、7.0〜8.9は○、9.0〜10は◎と評価し、×評価は比較例として扱い、△、○、◎は本発明の実施例として扱う。
【0034】
【表4】

【0035】
試験例2についての「食感のよさ」の評価結果より、ST4、5、6の食感はサクサク感が強く、特にST5の食感はサクサク感が強く評価も良好であった。また、「油っこさの少なさ」の評価より、ST4〜6の結果が良好であった。合計の評価ではST5の評価が最も良かった。沈降積が0.4〜2.1mlの範囲外の架橋澱粉を分解したHDS1、2を用いたST1、2や未変性澱粉の加熱分解品HDS8を用いたST8は評価が悪かった。
【0036】
〔実施例3〕
実施例1で得られた架橋澱粉C5を1000部用いて、添加するエゴマ油の量を原料に対し、0部、0.1部、0.3部、0.5部、1部、3部、5部、10部、20部とした以外は、実施例2と同様の方法で試作し、分解処理架橋澱粉HDS5および9〜16を得た。それらの加熱粘度を表5に示す。
【0037】
【表5】

【0038】
<試験例3>
実施例3で得られたHDS5および9〜16を用いて、HDS9は加水量120部で、HDS10〜12は加水量125部で、HDS5および13〜16は加水量130部で、試験例1と同様の方法で揚げ玉FB5および9〜16を作成し、得られた揚げ玉の吸油率および減少率を測定した。結果を表6に示す。
【0039】
【表6】

【0040】
試験例3の結果より、いずれも吸油率が少なく、特にFB5および9〜15が吸油率が低くなり、中でもFB5および12〜14良好であった。また、バッター液の歩留まりの観点からは、加水量が多いほど歩留まりが高くなるのでFB5、13〜16が良好であった。油脂を添加・混合していないHDS9を使用したFB9は加水量が小さくなった。総合的にみるとFB5、13、14が特に良好である。加熱粘度が50mPa・s未満であったHDS16を用いたFB16は吸油量が多くなった。
【0041】
<試験例4>
実施例3で得られたHDS5および9〜16を用いて、HDS9は加水量120部で、HDS10〜12は加水量125部で、HDS5および13〜16は加水量130部で、試験例2と同様の方法でエビの天ぷらST5および9〜16を得て、食感評価を行なった。結果を表7に示す。
【0042】
【表7】

【0043】
試験例4の結果より、ST5および11〜14が、適度にサクサク感がある食感であり、かつ油っこさが少なく良好であった。また、バッター液の歩留まりの観点からはFB5および13〜16の加水量が大きいため、総合的にみるとST5、13、14が特に良好である。油脂を添加・混合することなく分解したST9や分解が過度に進み、加熱粘度が50mPa・s未満となったST16を使用したエビの天ぷらは評価が悪かった。
【0044】
〔実施例4〕
実施例1で得られた架橋澱粉C1〜C7と未変性のタピオカ澱粉を用いて、澱粉1000部に対し、塩化ナトリウム10部を100部の水に溶かした水溶液と、エゴマ油3部を添加混合後、水分が10%以下になるまで50℃で風乾し、精粉した。その後、加熱分解処理としてエアバスで150℃、4時間加熱して、タピオカ分解処理架橋澱粉HDS17〜24を得た。それらの加熱粘度を表8に示す。無機塩と油脂を添加・混合して加熱分解したことにより、油脂のみを添加・混合した場合よりも短時間で目的の粘度に到達することができた。
【0045】
【表8】

【0046】
<試験例5>
薄力小麦粉80部に、実施例4で得られたHDS17〜24を20部混合し、加水量を水130部として、試験例1と同様の方法で揚げ玉FB17〜24を作成し、得られた揚げ玉の吸油率および減少率の測定を行なった。結果を表9に示す。
【0047】
【表9】

【0048】
試験例5の結果より、沈降積が0.4〜2.1mlであり、加熱粘度が50〜10000mPa・sの範囲であるFB19〜23の吸油率が少なく、特にFB21の吸油率が最も少なく良好であった。
【0049】
<試験例6>
実施例4で得られたHDS17〜24を用いて、加水量を130部として、試験例2と同様の方法でエビの天ぷらST17〜24を得て、食感評価を行なった。結果を表10に示す。
【0050】
【表10】

【0051】
試験例6の評価結果より、ST20〜22の食感はサクサク感が強く、特にST21の食感はサクサク感が強く評価も良好であった。また、「油っこさの少なさ」の評価より、ST20〜22の結果が良好であった。合計の評価ではST21の評価が最も良かった。沈降積が0.4〜2.1ml、加熱粘度が50〜10000mPa・sという条件を満たさないHDS17、18、24を用いたST17、18、24は評価が悪かった。
【0052】
〔実施例5〕
実施例1で得られた架橋澱粉C5を1000部用いて、添加する塩化ナトリウムの量を原料に対し、0部、1部、2部、5部、10部、20部、50部とした以外は、実施例4と同様の方法で試作し(塩化ナトリウム50部のみ150部の水に溶解して添加)、分解処理架橋澱粉HDS25〜30およびHDS21を得た。それらの加熱粘度を表11に示す。
【0053】
【表11】

【0054】
<試験例7>
実施例5で得られたHDS21および25〜30を用いて、加水量を130部として試験例1と同様の方法で揚げ玉FB20および25〜30を作成し、得られた揚げ玉の吸油率および減少率を測定した。結果を表12に示す。
【0055】
【表12】

【0056】
試験例7の結果より、いずれも吸油率が少なく良好であった。
【0057】
<試験例8>
実施例5で得られたHDS21および25〜30を用いて、加水量を130部とし試験例2と同様の方法でエビの天ぷらST21および25〜30を得て、食感評価を行なった。結果を表13に示す。
【0058】
【表13】

【0059】
試験例8の結果より、ST21および26〜30が、適度にサクサク感がある食感であり、かつ油っこさが少なく良好であった。特にST21の評価が最も良かった。無機塩を添加しなかったHDS25を用いたST25は、加熱時間が短いことによる分解不足のために評価が劣った。
【0060】
〔実施例6〕
実施例1で得られた架橋澱粉C5を1000部用いて、添加するエゴマ油の量を原料に対し、0部、0.1部、0.3部、0.5部、1部、3部、5部、10部、20部とした以外は、実施例4と同様の方法で試作し、分解処理架橋澱粉HDS21および31〜38を得た。それらの加熱粘度を表14に示す。
【0061】
【表14】

【0062】
<試験例9>
実施例6で得られたHDS21および31〜38を用いて、HDS31は加水量120部で、HDS32〜34は加水量125部で、HDS21および35〜38は加水量130部で、試験例1と同様の方法で揚げ玉FB21および31〜38を作成し、得られた揚げ玉の吸油率および減少率を測定した。結果を表15に示す。
【0063】
【表15】

【0064】
試験例9の結果より、いずれも吸油率が少なくなり、特にFB21およびFB31〜37は吸油率が小さくなった。また、バッター液の歩留まりの観点からは油脂を添加しないHDS31を使用したFB31より、油脂を添加した澱粉を使用したFB21および32〜38が加水量が多く、特にFB21および35〜38が良好であった。
【0065】
<試験例10>
実施例6で得られたHDS21および31〜38を用いて、HDS31は加水量120部で、HDS32〜34は加水量125部で、HDS21および35〜38は加水量130部で、試験例2と同様の方法でエビの天ぷらST21および31〜38を得て、食感評価を行なった。結果を表16に示す。
【0066】
【表16】

【0067】
試験例10の結果より、ST21および32〜37が、適度にサクサク感がある食感であり、かつ油っこさが少なく良好であった。特に、ST21、35、36の評価が最も良好であった。また、バッター液の歩留まりの観点からは、ST21および35〜38が良好で、総合的にはST21、35、36の評価が特に良好である。
〔実施例7〕
実施例1で得られた架橋澱粉C5を原料とし、添加する無機塩を、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを適宜添加した以外は、実施例4と同様の方法で試作し、分解処理架橋澱粉HDS21および39〜42を得た。それらの加熱粘度を表17に示す。
【0068】
【表17】

【0069】
<試験例11>
実施例7で得られたHDS21および39〜42を用いて、加水量を130部として、試験例1と同様の方法で揚げ玉FB21および39〜42を作成し、得られた揚げ玉の吸油率および減少率の測定を行なった。結果を表18に示す。
【0070】
【表18】

【0071】
試験例11の結果より、いずれも吸油率が少なく、減少率も高く良好であった。
【0072】
<試験例12>
実施例7で得られたHDS21および39〜42を用いて、加水量を130部とし、試験例2と同様の方法でエビの天ぷらS21および39〜42を得て、食感評価を行なった。結果を表19に示す。
【0073】
【表19】

【0074】
試験例12の結果より、いずれも適度にサクサク感がある食感であり、かつ油っこさが少なく良好であった。
【0075】
〔実施例8〕
実施例1で得られた架橋澱粉C5を原料とし、添加する油脂類を、サフラワー油、ゴマ油、こめ油、オリーブ油とした以外は、実施例4と同様の方法で試作し、分解処理架橋澱粉HDS21および43〜46を得た。それらの加熱粘度を表20に示す。
【0076】
【表20】

【0077】
<試験例13>
実施例8で得られたHDS21および43〜46を用いて、HDS44〜46は加水量を125部とし、HDS21、43は加水量を130部として、試験例1と同様の方法で揚げ玉FB21および43〜46を作成し、得られた揚げ玉の吸油率および減少率の測定を行なった。結果を表21に示す。
【0078】
【表21】

【0079】
試験例13の結果より、いずれも吸油率が少なく、減少率も高く良好であった。また、エゴマ油、サフラワー油を用いたHDS21、43は他の油を用いた場合より加水量が多くなり、バッター液の歩留まりを加味すると特に良好であった。
【0080】
<試験例14>
実施例8で得られたHDS21および43〜46を用いて、HDS44〜46は加水量125部とし、HDS21、43は加水量130部として、試験例2と同様の方法でエビの天ぷらST21および43〜46を得て、食感評価を行なった。結果を表22に示す。
【0081】
【表22】

【0082】
試験例14の結果より、いずれも適度にサクサク感がある食感であり、かつ油っこさが少なく良好であった。また、バッター液の歩留まりを加味した場合、FB21、43が特に良好である。
【0083】
〔実施例9〕
馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチを用いて、トリメタリン酸ソーダの添加量を0.2部、0.5部、0.7部とした以外は、架橋澱粉の調製1と同様の方法で試作し、架橋澱粉C8〜16を得た。それらの粘度および沈降積を、使用した原料とともに表23に示す。
【0084】
【表23】

【0085】
〔実施例10〕
実施例9で得られた架橋澱粉C8〜16と原料澱粉(PS、CS、WS)を実施例4と同様の方法で試作し、分解処理架橋澱粉HDS47〜58を得た。それらの加熱粘度を表24に示す。
【0086】
【表24】

【0087】
<試験例15>
実施例10で得られたHDS47〜58を用いて、加水量を130部とし、試験例1と同様の方法で揚げ玉FB47〜58を作成し、得られた揚げ玉の吸油率および減少率の測定を行なった。結果を表25に示す。
【0088】
【表25】

【0089】
試験例15の結果より、タピオカ澱粉以外の澱粉を原料とした場合であっても沈降積が0.4〜2.1mlであり、加熱粘度が50〜10000mPa・sの範囲であるFB49、50、53、54、57、58の吸油率が低く、特にFB50、54、58の吸油率が少なく、良好であった。
【0090】
<試験例16>
実施例10で得られたHDS47〜58を用いて、加水量を130部とし、試験例2と同様の方法でエビの天ぷらST47〜58を得て、食感評価を行なった。結果を表26に示す。
【0091】
【表26】

【0092】
試験例16の結果より、FB49、50、53、54、57、58の評価が高く、特にST50、54、58が、食感がよく油っこさも少なく良好であった。沈降積が0.4〜2.1ml、加熱粘度が50〜10000mPa・sという条件を満たさないHDS47、48、51、52、55、56を用いたST47、48、51、52、55、56は評価が悪かった。
【0093】
〔実施例11〕
実施例1で得られたC4〜C7を用いて、加熱時間を2、4、6時間とした以外は、実施例4と同様の方法で試作を行ない、分解処理架橋澱粉HDS20〜23および59〜66を得た。それらの加熱粘度を表27に示す。
【0094】
【表27】

【0095】
<試験例17>
実施例11で得られたHDS20〜23および59〜66を用いて、加水量を130部として、試験例1と同様の方法で揚げ玉FB20〜23および59〜66を作成し、得られた揚げ玉の吸油率および減少率の測定を行なった。結果を表28に示す。
【0096】
【表28】

【0097】
試験例17の結果より、いずれの揚げ玉も吸油率は減少し、中でもFB20〜22と59、61〜65の吸油率が低く、特にFB21、61の吸油率が低く良好であった。
【0098】
<試験例18>
実施例11得られたHDS20〜23および59〜66を用いて、加水量を130部として、試験例2と同様の方法でエビの天ぷらST20〜23および59〜66を得て、食感評価を行なった。結果を表29に示す。
【0099】
【表29】

【0100】
試験例18の結果より、食感の評価はST20〜22および59、61、62、64がサクサク感があり良好であり、油っこさの評価はいずれも良好で、特にST20〜23とST61〜66が良好であった。したがって食感と油っこさの両方を加味した場合、ST20、21、61、62が良好であり、最も良好であったのはST21であった。C4〜C7はいずれも沈降積が0.4〜2.1mlの範囲内であるが、加熱粘度が50〜10000mPa・sという条件を満たさないHDS60、65を用いたST60、65は総合評価が劣る結果となった。
【0101】
〔実施例12〕
実施例1で得られた架橋澱粉C5を用いて、エアバスで150℃での加熱時間が1、2、3、4、5、6時間とした以外は、実施例4と同様の方法で試作し分解処理架橋澱粉HDS21、61、62および67〜69を得た。それらの加熱粘度を表30に示す。
【0102】
【表30】

【0103】
<試験例19>
実施例12で得られたHDS21、61、62および67〜69を用いて、HDS67は加水量を125部とし、HDS21、61、62、68、69は加水量を130部として、試験例1と同様の方法で揚げ玉FB21、61、62および67〜69を作成し、得られた揚げ玉の吸油率と減少率の測定を行なった。結果を表31に示す。
【0104】
【表31】

【0105】
試験例19の結果より、いずれも吸油率は減少し、中でもFB21、61および67〜69が吸油率が低く良好であった。また、バッター液の歩留まりを加味した場合、FB21、61、68、69が特に良好である。
【0106】
<試験例20>
実施例12で得られたHDS21、61、62および67〜69を用いて、HDS67は加水量を125部、その他は加水量を130部とし、試験例2と同様の方法でエビの天ぷらST21、61、62および67〜69を得て、食感評価を行なった。結果を表32に示す。
【0107】
【表32】

【0108】
試験例20の結果より、いずれも食感がよく、油っこさが少なかったが、特にST21、61、68、69が、適度にサクサク感がある食感であり、かつ油っこさが少なく良好であった。また、バッター液の歩留まりを加味した場合でも、FB21、61、68、69が特に良好である。
【0109】
<試験例21>
実施例4で得られた分解処理架橋澱粉HDS21を用いて、小麦粉に対する置換量を、5、10、20、30、40、50、60、70、80部とし、加水量を130〜140部の下記加水量として、試験例1と同様の方法で揚げ玉FB20および70〜77を作成し、得られた揚げ玉の吸油率および減少率の測定を行なった。結果を表33に示す。
【0110】
【表33】

【0111】
試験例21の結果より、いずれも吸油率は減少し、中でもHDS21の添加量が10部以上、50部以下の揚げ玉が吸油率が低く良好であった。
【0112】
<試験例22>
実施例4で得られた分解処理架橋澱粉HDS21を用いて、薄力小麦粉に対する置換量を5、10、20、30、40、50、60、70、80部とし、加水量を130〜140部の下記加水量として、試験例2と同様の方法でエビの天ぷらST21および70〜77を得て、食感評価を行った。結果を表34に示す。
【0113】
【表34】

【0114】
試験例22の結果より、HDS21の添加量が10部以上、50部以下のサンプルが、適度にサクサク感がある食感であり、添加量が増えるにつれてサクサク感は強くなった。かつ油っこさが少なく良好であった。添加量が10%以下だとサクサク感が弱く吸油率も高かった。添加量が50%以上だと食感が硬すぎて口溶けが悪くなり油っこさも目立つようになった。
【0115】
<試験例23>
(いもの天ぷらの作成)
未変性タピオカ澱粉と架橋澱粉C5、C5を加熱分解したHDS21、未変性タピオカ澱粉を加熱分解したHDS24を用い、未変性タピオカ澱粉と架橋澱粉C5は加水量120部とし、HDS21、24は加水量130部として、試験例2において、剥きエビを輪切りにしたサツマイモとした以外は、試験例2と同様の方法で試験を行ない、芋の天ぷらSPを得て、食感評価を行った。結果を表35に示す。
【0116】
【表35】

【0117】
試験例23の結果よりSP21が芋の天ぷらにおいて、適度にサクサク感がある食感であり、かつ油っこさが少なく良好であった。
【0118】
<試験例24>
(かき揚げの作成)
未変性タピオカ澱粉と架橋澱粉C5、C5を加熱分解したHDS21、未変性タピオカ澱粉を加熱分解したHDS24を用い、未変性タピオカ澱粉と架橋澱粉C5は加水量120部とし、HDS21、24は加水量130部として、試験例2において、剥きエビを玉ねぎと人参とゴボウとし、クッキングシートを用いてバッター液をまぶして揚げた以外は、試験例2と同様の方法で試験を行ない、野菜のかき揚げVTを得て、食感評価を行った。結果を表36に示す。
【0119】
【表36】

【0120】
試験例24の結果よりVT21が野菜のかき揚げにおいて、適度にサクサク感がある食感であり、かつ油っこさが少なく良好であった。
【0121】
<試験例25>
(鳥のから揚げの作成)
未変性タピオカ澱粉と架橋澱粉C5、C5を加熱分解したHDS21、未変性タピオカ澱粉を加熱分解したHDS24を用い、鶏肉片にしょう油とみりんと砂糖を溶かした液で下味を付けた後、馬鈴薯澱粉80部に各試料20部を混合した粉を用いて、鶏肉表面に粉をまぶして175℃の植物油で2分フライし、鳥のから揚げFCを得て、食感評価を行った。結果を表37に示す。
【0122】
【表37】

【0123】
試験例25の結果よりFC21が鳥のから揚げにおいて、サクサク感が強い食感であり、かつ油っこさが少なく良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈降積が0.4〜2.1mlである架橋澱粉に、油脂類を添加混合し加熱分解した分解処理架橋澱粉が配合された、揚げ物用ミックス粉。
【請求項2】
前記架橋澱粉に対して前記油脂類を0.01〜1.0質量%添加混合し、加熱分解した分解処理架橋澱粉の加熱粘度が、無水換算12質量%濃度・30℃で50〜10000mPa・sである、請求項1記載の揚げ物用ミックス粉。
【請求項3】
沈降積が0.4〜2.1mlである架橋澱粉に、無機塩と油脂類を添加混合し加熱分解した分解処理架橋澱粉が配合された、揚げ物用ミックス粉。
【請求項4】
前記無機塩の添加量が、前記架橋澱粉に対して0.1〜5質量%であり、かつ前記油脂類の添加量が、前記架橋澱粉に対して0.01〜1.0質量%であり、加熱分解した分解処理架橋澱粉の加熱粘度が、無水換算12質量%濃度・30℃で50〜10000mPa・sである、請求項3記載の揚げ物用ミックス粉。
【請求項5】
分解処理架橋澱粉が10〜50質量%配合された、請求項1ないし4記載の揚げ物用ミックス粉。
【請求項6】
請求項1ないし5記載の揚げ物用ミックス粉を用いた揚げ物食品。