説明

分解安定化生体適合性コラーゲンマトリックス

【課題】高度の生物学的分解安定性(加水分解安定性)ならびに化粧品および医学用途に適する、特に水和状態における機械的引裂強度(湿潤引裂強度)の両方を有する凍結乾燥コラーゲンマトリックスを提供する。
【解決手段】可溶性コラーゲンおよびペプチド成分を含有する分解安定化生体適合性コラーゲンマトリックス、そのようなコラーゲンマトリックスを調製するためのプロセスであって、特にエポキシ官能性架橋剤を用いた化学架橋処理を包含するプロセス、および特に局所使用のための化粧品もしくは医薬品として、およびさらにヒトまたは動物における創傷治療薬、インプラントもしくは止血剤としての、ならびにさらにバイオテクノロジー、基礎研究および組織工学分野における細胞集団用の足場としてのコラーゲンマトリックスの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特別には不溶性コラーゲン繊維の他に可溶性コラーゲンおよびペプチド成分を含有するという事実によって識別される分解安定化生体適合性コラーゲンマトリックス、そのようなコラーゲンマトリックスを調製するためのプロセスであって、特にエポキシ官能性架橋剤を用いた化学架橋処理を包含するプロセス、および特に局所使用のための化粧品もしくは医薬品として、およびさらにヒトまたは動物における創傷治療薬、インプラントもしくは止血剤としての、ならびにさらにバイオテクノロジー、基礎研究および組織工学分野における細胞集団の足場としての本発明によるコラーゲンマトリックスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲン材料の分野においては、機械的に安定性かつ柔軟性であり、生物学的分解に対して適正な安定性を示す材料および足場の提供は重要な役割を果たす。そのような製品要件は、特に創傷治療、生物学的インプラントの分野ならびに組織工学および細胞集団の足場の分野においてますます重要になりつつあるが、創傷治癒および止血の分野における高吸収性材料の分野においても同様である。化粧品の分野では追加して、材料が、皮膚に良好に忍容されながら同時に心地よい感触および外観を有することが特に望ましい。さらに、追加して高い機械的安定性を有するそのような分解安定化された補助材料または原材料による有効成分の提供は、化粧品および医薬品用途ならびに組織工学のどちらにおいても重要な側面である。例えば、組織工学の足場と有効成分との組み合わせは、極めて多数の刊行物において熟考されている戦略である。足場に吸着もしくは共有結合することによって、またはデポー剤から持続的に放出されることによって長期間にわたり生物学的活性を発現する有効成分は、先行技術の一部である。対応する有効成分デポー剤からの持続的放出は、特に生物学的半減期が短い有効成分の場合には、創傷治癒における標的インターベンションの道を開く。例えば、多数の極めて重要な現象、例えば細胞分化、細胞増殖および凝集は、遺伝子発現を介してシグナルタンパク質の影響を受ける。個別細胞の入手可能性および分化、再生もしくは置換、細胞分割および調節は、研究の主要な目的である(Rui Miguel Paz,Dissertation RWTH Aachen 2004)。生体材料にそれらの機能性を改善するために生物学的に活性な物質を備えさせることは、純粋に受動性のインプラント材料の周囲組織または組織流体との目的にかなう相互作用を開始する活性インプラントへの進化を例示している。生物学的に活性な物質と生体材料との組み合わせは医学界において広く行われており、例えばインプラント関連性感染症の防止においてますます大きな役割を果たしている。例えば、創傷ドレッシングの分野では、創傷環境の改善、感染の減少、ならびに有効成分を加えることだけではなく材料の物理的特性、例えば特にマトリックス材料の剛性などを制御された方法で調節することによって細胞の分化および細胞の発現パターンに目的にかなう影響を及ぼすことによる細胞増殖の刺激がますますより重要な役割を果たしている。いわゆる創傷浸出液管理は、慢性創傷の場合には特に発散性、つまり浸出性の創傷において、物理的レベルでの純粋に吸着機能による創傷浸出液などの管理、および薬理的レベルでの有効成分の放出の両方での影響および相互作用に関係しており、同様に近年ますます重要になってきた。
【0003】
コラーゲンマトリックスへのタンパク質有効成分、例えば成長因子の装填は、ずっと以前より公知であり、例えば、国際公開第85/04413号または米国特許第5219576号(欧州特許第0428541B1号)に記載されている。
【0004】
しかし補助材料の高度の機械的安定性という製品要件もまた達成できるためには、さらに例えば創傷もしくは身体内のインプラントにおいて望ましくない過度に急激な生物学的分解の低下を達成するためには、架橋する、特に化学架橋剤を用いて架橋する方法が公知で広く使用されている。特に、エポキシ官能性架橋剤を用いたコラーゲンの化学架橋処理を実施する方法もまた公知である。
【0005】
これに関連して、エポキシ架橋剤との架橋が固体の乾燥した、一般には凍結乾燥したコラーゲン材料上で実施される広く公知のプロセスが存在する。独国特許第69533285号は、例えば、化学架橋または部分架橋させることのできるバイオポリマー繊維の半月板プロテーゼについて記載しており、この場合の架橋は既に凍結乾燥したコラーゲン繊維上で行われる。
【0006】
国際公開第2003/053490A1号(欧州特許第1455855A1号)もまた、化学架橋させることのできる凍結乾燥コラーゲン材料を提供している。凍結乾燥コラーゲン−エラスチン材料の化学架橋処理についても上記明細書に記載されているが、この場合にはグルタルアルデヒドが化学架橋剤として使用されており、エポキシド類は架橋剤として一般的にしか参照されていない。
【0007】
独国特許第102006006461A1号および独国特許第102004039537A1号は、皮膚細胞が集団生息するコラーゲンマトリックス(完全皮膚モデル)であって、細胞が集団生息するコラーゲン材料がグルタルアルデヒドを用いた化学架橋処理にかけられるコラーゲンマトリックスを提供している。極めて多数のまた別の化学架橋剤は、一般的にのみ列挙されている。この場合もまた、既に凍結乾燥した材料の架橋結合についてしか記載されていない。
【0008】
これらのプロセスにおける化学架橋処理は、従来法では、固体コラーゲン材料、特にシートまたは層の形状にある固体コラーゲン材料を架橋剤を含有する液中に浸漬させることによって実施される。シート状固体コラーゲン材料(層)は、一般には最初に、従来法プロセスによってコラーゲン材料を乾燥する(例えば、凍結乾燥する)工程、および架橋剤を含有する溶液中に浸漬させた後にまた別の乾燥する工程(例、また別の凍結乾燥工程)にかけることによって得られる。追加の工程では、架橋反応が発生した後に、結合しなかった過剰の架橋剤が一般には強力なすすぎ洗い工程によって洗浄して材料から除去されるが、この工程は架橋した材料の生体適合性または架橋剤残留物によって引き起こされる毒性の減少という観点から不可欠である。
【0009】
対応するプロセスは、特に、「Cross−linking of Collagen−based materials」(dissertation R.Zeeman,1998)ならびにZeeman et al.によってJ Biomed Mater Res,46,424−433,1999、J Biomed Mater Res,47,270−277,1999、Biomaterials,20,921−931,1999、およびJ Biomed Mater Res,51,541−548,2000の中で記載されている。そのプロセスでは、例えば、凍結乾燥工程によって得られた層状ヒツジ皮膚コラーゲン(DSC層)が酸性またはアルカリ性pHのエポキシ官能性架橋剤、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)の溶液中に浸漬させられ、数日間にわたり室温(20〜30℃)で架橋される。完全に架橋したコラーゲン層は、次に洗浄され、エポキシ架橋コラーゲン材料を得るために再び凍結乾燥される。それらの刊行物では、架橋のために使用されるpH値が架橋した材料の柔軟性および弾性に重大な影響を及ぼし、<6の酸性pH値(pH4〜6)で架橋させた材料はアルカリ性pH値で架橋させた材料と比較して高い柔軟性および弾性を有すると報告されている。
【0010】
欧州特許第0898973B1号もまた、コラーゲンの化学架橋処理のためのプロセスについて記載している。この明細書では、コラーゲン懸濁液もまた原則としては化学架橋処理のために考えられる出発材料として記述されている。しかし、記載された架橋プロセスは、実質的には少なくとも2つの架橋工程からなり、一般には4〜9のpH値で実施される。架橋処理がエポキシド架橋剤、例えばBDDGEを用いて実施される唯一の具体的な実施例は、BDDGEを含有する溶液中に浸漬され、7日間の反応時間後に洗浄され、次に再び凍結乾燥される上述したシート状のヒツジ皮膚コラーゲン(DSC)に関するものである。
【0011】
架橋処理が固体の乾燥(凍結乾燥)させたコラーゲン材料を浸漬させ、その後にそれを再び乾燥する工程によって実施されるそのようなプロセスの欠点は、一方では特にプロセス経済性の理由から不都合である数回の乾燥する工程を実施する必要性であり、他方では数日間にわたる特に架橋時間に関連する時間に関しての高い経費である。さらにまた、架橋した、既に凍結乾燥させた材料が再び凍結乾燥される場合は、材料における、特に層状材料の収縮の形状での望ましくない変化が観察され得ることも見いだされている。コラーゲン材料、特にコラーゲンが天然の生物学的構造タンパク質として存在するコラーゲン材料の構造への不都合な作用、例えばコラーゲンペプチド構造における変性の増加もしくはその他の構造的変化は、追加して第2の乾燥プロセスによって不可避的に引き起こされるコラーゲン材料への熱応力の増大に起因して予想しなければならない。
【0012】
これとは対照的に、欧州特許第0793511A1号からは、特にコラーゲンおよびエラスチンのポリマー混合物もまた含む複合バイオポリマーフォームを調製するためのプロセスであって、架橋剤がポリマー懸濁液に加えられ、その後にのみ単一の乾燥する工程、特に凍結乾燥する工程が実施されるプロセスが公知である。しかし、そのようなポリマー混合物のエポキシ官能性架橋剤による架橋は、開示されていない。
【0013】
欧州特許第0680990A1号もまた、ポリマー懸濁液への架橋剤の添加について記載しており、コラーゲンおよび合成親水性ポリマー、例えば特に機能的に活性化された合成親水性ポリマー、例えば、グリコール、好ましくは二官能的に活性化されたポリエチレングリコール(PEG)のポリマー混合物が架橋結合反応にかけられる。架橋剤としてのエポキシドは、多数の考えられる架橋剤の1つとして一般的にのみ列挙されている。
【0014】
米国特許第4,883,864号は、コラーゲンがペプシンによって溶解させられ、その後に架橋剤の添加によって架橋させられる化学修飾(架橋)コラーゲン組成物について記載している。エポキシドは、同様にこの刊行物において単に一般的に考えられる架橋剤としてのみ記述されている。実施例18は、本発明によるコラーゲン材料を凍結乾燥し、外科用スポンジ材料として使用できると記述している。不溶性天然コラーゲンの、特に凍結乾燥する工程と関連付けた使用またはエポキシドの具体的な使用については、この明細書では同様に開示されていない。
【0015】
特に酸不溶性天然コラーゲンの化学的に架橋したコラーゲン材料は、本出願人の以前の特許出願である独国特許第10350654A1号から公知である。その出願では、2〜4のpH値を有するコラーゲン水性懸濁液が好ましくは使用される。さらに、架橋剤をそのようなコラーゲン水性懸濁液に加え、その後に凍結乾燥する可能性について記述されている。さらに、特に酸性媒体中で反応する架橋剤を使用する場合は、架橋処理は凍結乾燥する前に行うことができると記述されている。様々な群の多官能性架橋剤が考えられる架橋剤として列挙されているが、この一般的リストは、さらにまたジエポキシド類、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)も包含している。しかし、好ましくは熱脱水架橋処理(dehydrothermal crosslinking)が実施される。EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド)によって架橋された材料については、コラーゲン材料の血管新生特性における驚くべき改善もまた記述されている。その明細書の中で好ましいと識別されている熱脱水架橋と関連して、少なくとも50〜180℃の凍結乾燥温度が好ましい記述されており、熱脱水架橋のためには80℃を超える高温が特に好ましいと記述されている。特に例えば<4の具体的なpH値および選択された凍結乾燥温度範囲を考慮に入れた具体的な手順と組み合わせたエポキシドの架橋剤としての具体的な選択は、それからは明白ではない。さらに、この文献は、繊維性の天然不溶性コラーゲンのコラーゲン懸濁液のワークアップおよび調製について記載している。しかし、コラーゲン材料中での、おそらくはこのワークアップの状況の範囲内で形成される放出され得る酸可溶性コラーゲンおよびペプチド成分の保存に関する参考文献は存在しない。特に一般的にのみ記述されている化学架橋処理と関連付けて、そのような可溶性成分を保存する必要性も、このためその可能性についても全く記述されていない。対照的に、この文献は酸不溶性コラーゲン材料の望ましい使用については明示的に述べており、酸可溶性コラーゲンは不都合であると明示的に述べられている。例えば、タンパク質を構成する有効成分(成長因子など)の導入は、この場合にはマイクロスフェアの被包化および組み込みによって達成される。
【0016】
天然酸不溶性コラーゲンは、慣習的には酸性溶液中に不溶性であり、遠心分離によって沈降させることができ、光線顕微鏡によって視認できる繊維を含有するコラーゲン懸濁液の分画を意味している;本発明の範囲内では、天然酸不溶性コラーゲンは、特に<4のpHの酸性溶液中に不溶性であり、16,000gでの遠心分離によって沈降させることができ、光線顕微鏡下で視認できる(0.2μm以上の繊維厚)繊維を含有する純粋コラーゲン懸濁液の分画を包含する。
【0017】
他方、天然可溶性もしくは酸可溶性コラーゲンは、<4のpHにある酸性溶液中で透明溶液を形成し、光線顕微鏡下で視認できる繊維構造を全く含有しないコラーゲン分画を意味する。
【0018】
天然の可溶性、または酸可溶性コラーゲンは、例えばSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)の公知のプロセスによる成分分別によって>250kDaの分子量を有する高分子量天然完全コラーゲン分子および<250kDaの分子量を有する低分子量コラーゲンペプチドに分けることができる。低分子量コラーゲンペプチドは、それによって完全コラーゲン分子に指定することはできない。
【0019】
原則としては、可溶性完全コラーゲン分子ならびに低分子量ペプチド成分の存在は、公知の方法、例えば以下の実施例に記載したSDS−PAGE(硫酸ドデシルナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法)による可溶性成分の分析によって定性的に検出することができる。
【0020】
酸可溶性コラーゲン成分およびコラーゲンペプチドは、様々な有益な特徴を有する。例えば、それらはフィルム形成特性を有しており、皮膚上に局所的に塗布される、または担体材料から放出されると、皮膚の保水能力を改善し、したがってその塗膜形成によって経皮的水分損失を減少させることができる。さらに、可溶性コラーゲン分画は、創傷の治療および細胞集団/細胞反応の制御性における積極的な特性をもたらす重要なシグナルメッセンジャーおよびマトリックス成分であり、特に組織工学の分野において細胞集団のいわゆる発現プロファイルに関して有益かつ望ましい。このため本発明の重要な態様は、凍結乾燥し、分解安定化した(化学的に架橋した)コラーゲンマトリックス中のそのような酸可溶性コラーゲン成分およびペプチドならびにその他の低分子量ペプチド成分を、使用時に該マトリックスから放出させ、塗布部位でそれらの有益な作用を達成できるように保存することである。
【0021】
先行技術から公知の化学的に架橋した、これにより分解安定化したコラーゲン材料は、もはや酸可溶性コラーゲン分画、フラグメントおよびその他のペプチド成分を含有していないが、それは例えば分割皮膚コラーゲンもしくは上述したヒツジ皮膚コラーゲン(DSC)層の場合における材料の基本的性質、または実施されるエポキシド架橋結合プロセスおよびそこで適用される架橋結合条件のいずれかのためである。先行技術において記載されたエポキシ架橋結合プロセスは、少なくとも72時間という長期間にわたり大量の体積の溶媒中で顕著に過剰の架橋剤を使用して実施される。原材料中に存在する可能性がある可溶性分画は、それにより大量の溶媒によって遊離させられ、希釈され、したがって洗い流される。高い希釈作用の結果として、可溶性のペプチドおよびコラーゲン分画は材料中にほんの少量でしか存在しない。わずかに今なお存在する可溶性のペプチドおよびコラーゲン成分は高い架橋剤濃度および長い架橋作用時間によってコラーゲンストランドと架橋され、したがって架橋した材料内に分離不能に結合される。上記に記載したプロセスは追加して必要な工程として架橋した材料から架橋剤を洗い流す工程を包含するので、結合していない可溶性コラーゲン分画または可溶性コラーゲンフラグメントまたは低分子量可溶性ペプチド成分は遅くともその洗浄工程において架橋した材料から洗い流される。したがって、先行技術は化学架橋の結果として高い分解安定性および機械的強度を有する、同時に該架橋した材料から放出され得る高い生体適合性(低毒性)および酸可溶性の分画、フラグメントおよび/またはその他のペプチド成分を有する化学的に架橋したコラーゲン材料を提供していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第85/04413号
【特許文献2】米国特許第5219576号
【特許文献3】欧州特許第0428541B1号
【特許文献4】独国特許第69533285号
【特許文献5】国際公開第2003/053490A1号
【特許文献6】欧州特許第1455855A1号
【特許文献7】独国特許第102006006461A1号
【特許文献8】独国特許第102004039537A1号
【特許文献9】欧州特許第0898973B1号
【特許文献10】欧州特許第0793511A1号
【特許文献11】欧州特許第0680990A1号
【特許文献12】米国特許第4,883,864号
【特許文献13】独国特許第10350654A1号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Rui Miguel Paz,Dissertation RWTH Aachen 2004
【非特許文献2】「Cross−linking of Collagen−based materials」(dissertation R.Zeeman,1998)
【非特許文献3】J Biomed Mater Res,46,424−433,1999
【非特許文献4】J Biomed Mater Res,47,270−277,1999
【非特許文献5】Biomaterials,20,921−931,1999
【非特許文献6】J Biomed Mater Res,51,541−548,2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
このため本発明の目的は、高度の生物学的分解安定性(加水分解安定性)ならびに化粧品および医学用途に適する、特に水和状態における機械的引裂強度(湿潤引裂強度)の両方を有する凍結乾燥コラーゲンマトリックスを提供することであった。さらに、本コラーゲンマトリックスは、低毒性を特徴とする高度の生体適合性を有していなければならず、そして使用時には架橋したマトリックスからの可溶性コラーゲンおよびペプチド成分の放出を可能にしなければならない。さらに、本架橋コラーゲンマトリックスは高度の液体吸収能力および水和速度を有していなければならず、そして本コラーゲンマトリックスは、特に化粧品もしくは医薬品として、特別には化粧品用ドレッシング材もしくはマスクおよび創傷治療剤、インプラントもしくは止血剤として、およびさらに組織工学における細胞集団/細胞培養のための足場としても使用するために、高度の柔軟性および弾性していなければならず、ならびに手触りがよく、魅力的な光学特性(例、高い光学密度)を有していなければならない。また別の態様では、剛性を制御して適応させた結果として、バイオテクノロジー、基礎研究および組織工学の分野において細胞分化および細胞の発現パターンに目的にかなうように影響を及ぼすことのできるコラーゲンマトリックスが提供されなければならない。細胞の発現パターンに影響を及ぼすこと、およびコラーゲン材料の高度の生体適合性に関して安定性で最適化された足場は、例えばインプラントして使用される場合、および組織工学における細胞足場として使用される場合に新規細胞およびそれらの性能の組み込みを促進するための要件である。
【0025】
最後に重要な点は、本プロセスが経済的観点から先行技術より優れていなければならないことである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者らは、そのような特別の改良されたコラーゲン材料が、<4のpH値でエポキシ官能性架橋剤を繊維性酸不溶性天然コラーゲンに加えて、上記に規定した天然可溶性(酸可溶性)コラーゲンおよびコラーゲンペプチドの分画、および/または構造形成剤およびマトリックスタンパク質、細胞外マトリックス成分、タンパク質を構成する有効成分および可溶性のタンパク質もしくはペプチド成分を含むコラーゲン水性懸濁液に加える工程と、次にこの混合液を凍結し、<100℃の温度で凍結乾燥する工程とによって得られることを見いだした。別には、驚くべきことに、この新規プロセスがエポキシド架橋剤の含量を先行技術から公知の架橋剤含量と比較して、架橋結合度に関する損失を伴うことなく劇的に減少させられることが見いだされている。<4という低いpH値ならびに減少した架橋剤含量は、特に凍結乾燥工程後の残留エポキシド活性に関して、および使用時に放出され得る架橋していない可溶性コラーゲンおよびペプチド成分の保存に関して、さらにしたがって架橋コラーゲン材料の毒性および生体適合性に関して有益である。熱脱水架橋において従来法で適用される温度より低い凍結乾燥温度は、経済的観点から有益な可能性があるが、それらは特に緩徐な加工処理および温度感受性成分(例、不安定性有効成分)の保護のために必須であることが公知である。本発明によるプロセスのまた別の利点は、いわゆるワンポットプロセスであって、架橋剤をコラーゲン懸濁液に加える工程と、次に凍結乾燥する工程を、好ましくは該凍結乾燥する工程前の24時間以内のコラーゲン/架橋剤混合液の短い待機時間(ポット時間)を用いて架橋した最終生成物を得るためにすぐに実施するワンポットプロセスの使用である。それにより総合的に顕著により経済的な方法が可能になる。
【0027】
したがって、特別には使用時に放出され得る未架橋の可溶性コラーゲンおよびペプチド成分を含有する機械的に安定性であり分解安定化した生体適合性エポキシ架橋コラーゲンマトリックスを調製するためのプロセスであって、下記の工程:
a)コラーゲン水性懸濁液を調製する工程と、
b)工程a)からの該コラーゲン懸濁液のpH値をpH<4へ調整する工程と、
c)任意でまた別の構造形成剤、有効成分および/または補助物質を加える工程と、
d)エポキシ官能性架橋剤を加える工程であって、工程c)およびd)の順序は変えられる工程と、
e)工程d)から得られるコラーゲン混合液を凍結させる工程と、
f)工程e)からの凍結した混合物を<100℃の凍結乾燥温度で凍結乾燥する工程と、
g)任意でそのように得ることのできる該凍結乾燥した架橋コラーゲン材料の含水量を凍結乾燥したコラーゲン材料に基づいて<25重量%に調整する工程と、
h)任意で工程g)から得られる材料を所望の形態に変換させ、滅菌および/または加工処理する工程とを含むプロセスを提供することによって上記の目的を達成することが可能になった。
【0028】
本発明はさらに、本プロセスによって入手できる、使用時に放出され得る未架橋の可溶性コラーゲンおよびペプチド成分を含有する機械的に安定性および分解安定化された架橋生体適合性コラーゲンマトリックスを提供する。
【0029】
架橋コラーゲンマトリックスを調製するために本発明によって使用されるコラーゲンは、特別にはウシ、ブタ、ウマまたはヒト起源である、または遺伝子工学によって製造されたコラーゲンである。特に好ましくは、コラーゲンは、ウシ起源のコラーゲンである。特に好ましいコラーゲンの調製は、本出願人の独国特許第4048622(A1)号および独国特許第10350654(A1)号に記載されている。コラーゲンスポンジを調製するためにその中に記載されたプロセスは、
コラーゲン原料をアルカリ処理にかける工程と、
生じたコラーゲン材料を洗浄する工程と、
生じたコラーゲンを酸処理にかける工程と、
生じたコラーゲン材料を洗浄する工程と、
生じたコラーゲン材料を特別にはコロイドミルを使用して粉砕する工程とを含んでいる。
【0030】
このとき上述した工程の各々は任意で数回繰り返すことができる。
【0031】
それにより繊維および原線維の形態にある、追加して測定可能な量の酸可溶性コラーゲンおよび酸可溶性ペプチド成分を含む、いわゆる天然酸不溶性コラーゲンのコラーゲン水溶液が得られる。そのような酸可溶性分画の定性的検出は、例えば、本明細書に記載したSDS−PAGEによって実施できる。このコラーゲン懸濁液は、次に本発明によるプロセスであって、本発明による生成物を得るために、pH値をpH<4に調整する工程と、任意で別の構造形成剤、化粧品もしくは医薬品用有効成分および補助物質を加える工程と、その後にエポキシ官能性架橋剤を加える工程と、<100℃の凍結乾燥温度で凍結乾燥する工程とによるプロセスによって加工処理することができる。
【0032】
先行技術において多数回にわたり記載された(例えば、米国特許第4,883,864号を参照されたい)酸可溶性コラーゲン材料だけの使用は、本発明によるプロセスにおいて使用される、主として繊維および原線維の形態にある酸不溶性コラーゲンを含有するコラーゲン懸濁液に比較して、適正な架橋度を達成するためには、酸可溶性コラーゲンだけの場合より顕著に多量の架橋剤が必要とされるために、不都合である。純粋に酸可溶性コラーゲンから調製された材料は、本質的に湿潤状態では、酸不溶性コラーゲンから得られる材料と比較して不適正な機械的強度(湿潤引裂強度)および低い分解安定性を有することが公知である。これは実質的に、酸可溶性コラーゲンは個別コラーゲン分子から成るが、他方酸不溶性コラーゲンは実質的に、既に相互に自然に架橋している横方向に配列されたコラーゲン分子から構成されるコラーゲン原線維から成るという事実に帰せることができる。これらの原線維は、順に天然架橋によって横方向に結合されてより大きな凝集体であるコラーゲン繊維を形成する。既に自然に架橋したコラーゲン繊維および化学的に架橋したコラーゲン繊維の両方のコラーゲン繊維の分解は、繊維複合体内に包含される個別タンパク質鎖の小さな比表面積および減少した接近可能性のために顕著により緩徐に発生する。
【0033】
本発明によるコラーゲン材料は、実質的にタイプI、IIIおよびVの、主としてタイプIのコラーゲンである。本発明によるプロセスにおいて使用されるコラーゲン懸濁液は、例えば独国特許第3203957A1号から公知のプロセスによって得ることができ、事前に粉砕、ホモジナイズ、および繊維離開させた形態にある前処理および精製されたコラーゲン材料を含有しており、本発明による架橋コラーゲンマトリックスのための出発材料を表す水性懸濁液として存在する。
【0034】
この分散液の乾燥重量は、およそ1〜4重量%、好ましくは1.5〜2.5重量%でなければならない。この水性懸濁液のpH値は、<4でなければならず、さもなければpH値はpH<4に調整されなければならない。pH値の調整は、好ましくは希塩酸を用いて実施する。好ましくは、コラーゲン水性懸濁液のpH値は、pH2.5〜3.5、より好ましくはpH2.7〜3.3、最も好ましくはpH3に調整する。
【0035】
上述した調製のおかげで、特に粉砕する工程のおかげで、このようにして得られるコラーゲン懸濁液は、繊維性の天然酸不溶性コラーゲンに加えて、好ましくは、コロイド粉砕する工程によって放出されていて本発明によって望ましい酸可溶性コラーゲンおよびペプチド成分もまた含有する。酸可溶性成分の量は、本プロセスによって制御し、所望の量へ調整することができる。酸可酸可溶性コラーゲンおよびペプチド成分の量は、16,000gでの遠心分離におよびその後の凍結乾燥する工程の後に得られる可溶性成分の量÷重量によって決定されるコラーゲン懸濁液の乾燥質量に基づいて7重量%までが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】BCA法:エラスチン加水分解産物を用いて熱脱水的にのみ架橋したコラーゲンマトリックス(「未架橋」)と比較して、調製例2に記載の追加の可溶性マトリックスタンパク質(エラスチン加水分解産物)を伴うエポキシ架橋コラーゲンマトリックス中での可溶性タンパク質成分[%]の決定。
【図2a】コラゲナーゼ消化試験:エラスチン加水分解産物を用いて熱脱水的にのみ架橋したコラーゲンマトリックス(「未架橋」)と比較して、調製例1aおよび2aに記載の本発明によるエポキシ架橋コラーゲンマトリックスの分解率[%]の決定;6時間以内。
【図2b】コラゲナーゼ消化試験:エラスチン加水分解産物を用いて熱脱水的にのみ架橋したコラーゲンマトリックス(「未架橋」)と比較して、調製例1aおよび2aに記載の本発明によるエポキシ架橋コラーゲンマトリックスの溶解した部分の絶対量(10mgに標準化)の決定;23時間以内。
【図3】加水加水分解安定性:a)トリグリセリド類/中性油を用いて熱脱水的に架橋したコラーゲンマトリックス(「未架橋」)(凍結乾燥温度>120℃);b)調製例3に記載の本発明によるエポキシ架橋コラーゲンマトリックス(5%エポキシド/DM;トリグリセリド類/中性油を備える;凍結乾燥温度<100℃);c)調製例3に記載の組成に対応するエポキシ架橋コラーゲンマトリックス(5%エポキシド/DM;トリグリセリド類/中性油を備える;凍結乾燥温度>120℃)。
【図4】b)調製例3に記載の本発明によるコラーゲンマトリックスと比較した、a)熱脱水的に架橋したコラーゲンマトリックスの18日後の加水分解度。
【図5】凍結乾燥温度が湿潤引裂強度に及ぼす影響(内測法UV8801)。
【図6】凍結乾燥温度およびエポキシド架橋剤濃度が湿潤引裂強度に及ぼす影響(内測法UV8801)。
【図7】コラーゲン水性懸濁液/混合液の凍結前の待機時間および待機時間中の温度が湿潤引裂強度に及ぼす影響(内測法UV8801)。
【図8】調製例1に記載の本発明によるコラーゲンマトリックスの残留エポキシド活性および残留エポキシド活性の減少に再湿潤が及ぼす影響。
【図9】剛性/弾性係数Eを測定するための試験配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明によるコラーゲン組成物への存在してよいまた別の構造形成剤または任意で化粧品もしくは医薬品有効成分および任意で以下に記載する補助物質の添加は、この時点に該コラーゲン水性懸濁液への添加によって実施することができる。また別の構造形成剤、またはマトリックスタンパク質、細胞外マトリックス成分、タンパク質を構成する有効成分および可溶性タンパク質もしくはペプチド成分などの群からの有効成分を添加することによって、コラーゲン懸濁液中の上述した可溶性コラーゲンおよびペプチド成分の量を自然に増加させることができ、特別にはそれによって>7重量%(乾燥質量)という顕著に高い含量を達成することも可能である。それ自体は少量の酸可溶性コラーゲンおよびペプチドしか含有していないコラーゲン懸濁液が使用される場合、そのような成分は、好ましくはこの時点に所望の量で該懸濁液中に混合することができる。
【0038】
エポキシド架橋剤の該コラーゲン懸濁液への添加を実施する。しかし、任意のまた別の構造形成剤を添加する前に、存在してよい有効成分または補助物質を該エポキシド架橋剤中で混合することもまた同等に可能である。したがってこれらの工程は、プロセス順序を変えることができ、原則的には互換可能である。
【0039】
エポキシ官能性架橋剤は、特別にはジエポキシド類ならびにポリエポキシ化合物、例えば1〜3の重合度を有するポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ポリオールポリグリシジルエーテル類、グリコールジグリシジルエーテル類、グリセロールジグリシジルエーテル類、グリセロールトリグリシジルエーテル類、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル類、エチレングリコールグリシジルエーテル類、ブタンジオールジグリシジルエーテル類、例えば特別には1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジカルボン酸ジグリシジルエーテル類などを含むエポキシド化合物(エポキシド類)の群から選択される。エポキシ官能性架橋剤は、特別には下記一般式によるポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類の群:
【化1】

またはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリエチレンプロピレングリコールのポリグリシジルエーテル官能性分子の群(該ジグリシジルエーテル誘導体は下記一般式によって表される:
【化2】

【0040】
(式中、x+z=0〜70およびy=0〜90である))から選択される。
【0041】
ジエポキシド類の群には、特別には下記一般式に対応するジエポキシド類が包含される:
【化3】

【0042】
(式中、Rは架橋プロセスを妨害しない、および/または水溶液中の架橋剤の水溶性を減少させる任意の置換基であってよく、n=1〜6、好ましくはn=1〜4である)。
【0043】
原則的には、本発明によるコラーゲンマトリックスの本質的特性は、例えばその二官能性、鎖長などに関して適切なエポキシド架橋剤の選択によって制御することができる。
【0044】
水溶性エポキシド架橋剤が好ましい;該エポキシド架橋剤は、特に好ましくは、ジエポキシド類の群から選択されるが、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGEO)が特に最も好ましい。適切な条件下では、エポキシド化合物は、アミンおよびカルボキシル基を包含する極めて多数の官能基との酸触媒反応および塩基触媒反応の両方を受けることができる。先行技術(Zeeman et al.)では、酸性pH範囲(pH4〜6)内で架橋させると、主としてカルボキシル基の架橋結合が発生するが、他方アルカリ性架橋(pH9)の場合には架橋結合は主としてアミド基で発生する。
【0045】
架橋剤ならびに可溶性タンパク質およびペプチド成分からの考えられるまた別の成分、ならびに有効成分および/または補助物質を組み込むためには、コラーゲン懸濁液は、好ましくは室温(23℃)より低い温度へ冷却される。特別には、混合は<20℃、好ましくは<10℃、特に好ましくは≦5℃の温度で行われるが、コラーゲン懸濁液/混合液の温度は当然ながらプロセス順序におけるこの時点にはまだ該塊を凍結させるほどは低下させられない。
【0046】
このようにして得られた、架橋剤ならびに任意の構造形成剤、有効成分および/または補助物質を含有し、<4のpH値を有する上述したコラーゲン水性懸濁液(コラーゲン混合液)は、次に好ましくは24時間以内に凍結されるので、このコラーゲン水性懸濁液の待機時間(ポット時間)はたとえあっても24時間を超えない。
【0047】
これらの待機時間(ポット時間)中のコラーゲン水性混合液の好ましい温度は、上記で規定した混合作業の低下した温度に対応しており、コラーゲン混合液はしたがっていずれの待機時間中にもコラーゲン混合液を凍結させることなく<20℃、好ましくは<10℃、特に好ましくは≦5℃の温度で維持される。
【0048】
コラーゲン混合液中での混合中およびコラーゲン混合液の凍結する工程前の待機時間中の低下させた温度は、驚くべきことに本発明による凍結乾燥コラーゲンマトリックスの機械的強度(湿潤引裂強度)に有益な影響を及ぼす。例えば、驚くべきことに、機械的湿潤引裂強度における改善は、待機時間中の温度を下げることによって達成できることが証明されている。
【0049】
好ましくは、その後の凍結する工程は、0.5〜4時間、好ましくは1〜3時間の期間にわたり、−10〜−60℃の温度で行われる。
【0050】
驚くべきことに、先行技術に記載されている数日間という長い待機時間は、明らかに完全かつ満足できる架橋結合を達成するために絶対的に必要ではないことが見いだされている。対照的に、驚くべきことに、凍結する前の長い待機時間は、本発明によるプロセスにおいて架橋度およびしたがって引裂強度(湿潤引裂強度)および分解速度に有害な作用を有することが証明されている。これに関連して、本発明によるプロセスにおいてはコラーゲン水性混合液をその調製後直ちに、24時間を超えない期間内、より好ましくは18時間を超えない期間内、特に好ましくは12時間未満の期間内に凍結させるのが有益であることが見いだされている。材料特性に関する有益な作用に加えて、短い待機時間はプロセス経済性のためにもまた好ましい。
【0051】
水性混合液内のペプチド分子と架橋剤分子との間の架橋結合反応は、以下に説明するように、連続して起こる反応機序に関する理論に起因して有益である、水性懸濁液の即時の凍結によって抑制されると推定されている。
【0052】
エポキシ官能性架橋剤がコラーゲン水性懸濁液へ添加されると、原則としては、一方ではエポキシド加水分解(エポキシド⇔HO)と他方ではエポキシドおよびタンパク質の架橋結合反応(エポキシド⇔タンパク質)との間で競合反応が発生する。即時に凍結する工程は、反応成分が固定化され、反応があたかも「凍結された」かのようになることを引き起こす。さらに、それにより水分は高度に純粋な形態で凍結し、HO結晶周辺で溶解した成分(エポキシド)と置換し、それにより該エポキシドは架橋結合対象のタンパク質の相当近くに濃縮形で局在することになる。結果として生じる接近とタンパク質に比較した該エポキシドの増加した濃度のおかげで、コラーゲン繊維との有益な反応動態がおそらくは得られ、競合反応は「エポキシド⇔タンパク質」の方向で置換される。さらに、それにより凍結水分子が直ちに昇華によって気体状態へ変換させられる、それによって発生するエネルギー入力によって凍結乾燥プロセスが開始されると、それにより反応が開始される反応「エポキシド⇔タンパク質」のための活性化エネルギーもまた利用可能になる。さらに、昇華のおかげで水はもはや液相の中間状態にはならないので、競合する加水分解反応「エポキシド⇔HO」は追加して抑制される。
【0053】
したがって本発明によると、水性懸濁液中での反応時間をできる限り短く保持し、該懸濁液を凍結形態へできる限り急速に変換させることが特に好ましい。
【0054】
上記の陳述に基づくと、本発明によるプロセスにおいては極めて少量のエポキシ架橋剤を使用することもまた特に可能である。本発明によると、好ましくは、各場合に該コラーゲン懸濁液の乾燥質量に基づいて最大50重量%まで、好ましくは20重量%まで、より好ましくは10重量%まで、特に好ましくは7重量%まで、または各場合にコラーゲン水性懸濁液(任意でまた別の構造形成剤、有効成分および補助物質をさらに含む)に基づいて最大1重量%まで、好ましくは0.4重量%まで、より好ましくは0.2重量%まで、特に好ましくは0.14重量%までのエポキシ濃度を使用するのが好ましい。
【0055】
満足できる架橋度(湿潤引裂強度/分解率/加水分解安定性)を達成するためには、架橋剤は、各場合にコラーゲン水性懸濁液の乾燥質量に基づいて少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、いっそうより好ましくは少なくとも3重量%、または各場合にコラーゲン水性懸濁液(任意でまた別の構造形成剤、有効成分および補助物質をさらに含む)に基づいて少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.02重量%、より好ましくは少なくとも0.06重量%の量で使用される。適切な架橋剤濃度の選択は、所望の材料特性および特定の用途分野に高度に依存する。
【0056】
対照的に、先行技術で使用されるエポキシド濃度は何倍も高い。そのような低いエポキシド濃度の使用は、最終生成物中のエポキシド架橋剤の残留活性(およびしたがって低毒性)に対応する特に生体適合性に有益な作用を有しており、追加して該最終生成物の使用時に放出され得る酸可溶性コラーゲンおよびペプチド成分の所望の保存を可能にする。
【0057】
関連する毒性の可能性のために、残留エポキシド活性は、架橋マトリックスの生体適合性の尺度を表す。残留エポキシ活性の決定は、本明細書で詳細に記載したように、Zocher et al.(2000)「Epoxide hydrolase activity of Streptomyces strains」J.Biotechnol.Feb 17;77(2−3),p.287−292にしたがって修正されたAgarwal et al.(1979)Bull.Environm.Contam.Toxicol.23,p.825−829による「Detection of Epoxides with 4−(p−nitrobenzylpyridine)」に基づく修正NBPアッセイ(ニトロベンジル−ピリジンアッセイ)によって実施することができる。
【0058】
本発明によるコラーゲンマトリックスの低い残留エポキシ活性、およびしたがって高い生体適合性は、おそらくは本プロセスのために好ましい<4という低いpH値にも帰せることができるが、それは最終生成物における低いpH値は残っている残留エポキシドの迅速な加水分解に効力を及ぼし、したがって最終生成物における分解性を促進するためである。この作用は、さらにまた、以下で詳細に説明するように、架橋コラーゲンマトリックス(最終生成物中)の含水量によって大きく影響を受ける。
【0059】
さらにまた、驚くべきことに、本発明によると好ましい低いエポキシド濃度は引裂強度、加水分解安定性、および酵素分解(例、コラゲナーゼ分解)に大きな影響を及ぼすことが見いだされている。最適の結果は、この場合は上記に規定した好ましい範囲内で達成された。
【0060】
上述した工程によって得ることのできる懸濁液は、好ましくはシートの形状で凍結されるが、その他の考えられる幾何的に自然な形態または生理学的形態から適応させた任意の構造もまた可能である。生じるシートの厚さは、0.5〜5.0cm、好ましくは1.0〜3.0cm、特に好ましくは1.5〜2.0cmであってよい。
【0061】
本発明によるプロセスによって得られるコラーゲンマトリックスは多孔性コラーゲン材料であるが、これは特にまたそれらの高い吸着もしくは給水能力および水和速度の理由でもある。本発明によるコラーゲンマトリックスの多孔性は、組織工学における細胞集団/細胞培養のための足場としての適合性のための重要な特性もまた表している。
【0062】
本発明によるコラーゲン材料の多孔度は、実質的に2つのパラメーターである材料密度および氷晶サイズの関数である。水性懸濁液中の高い固体含量は凍結乾燥最終生成物における材料密度を増加させ、再水和剤/固体界面を減少させる。高い凍結勾配は小さな氷晶をもたらし、これは材料の大きな内面積を導き、順に再水和を助長する。他方低い凍結勾配は、大きな氷晶を誘発し、これは順に最終生成物における孔の大きな材料構造を生じさせる。本発明によるコラーゲンマトリックスの孔径は、したがって凍結速度を制御することによって目的にかなうように影響を及ぼすことができる。さらに、追加して界面活性剤を加えることによって孔径に影響を及ぼすことも可能であるが、これは余り好ましくない。
【0063】
得られたシートは、任意で−3℃〜−35℃で直ちに保存することができる。好ましくは、凍結シートは、少なくとも24時間保存される。
【0064】
凍結および任意の中間保管後に、シートは凍結乾燥する工程にかけられる。
【0065】
驚くべきことに、本発明によるプロセスでは、凍結乾燥温度は、機械的引裂強度、加水分解安定性、低残留エポキシ活性に対応する生体適合性、および最終生成物中の放出され得る可溶性コラーゲンおよびペプチド成分または放出され得る構造形成剤もしくはマトリックスタンパク質、細胞外マトリックス成分、タンパク質を構成する有効成分および可溶性タンパク質もしくはペプチド成分などの群からの有効成分の保存、ならびに該材料の柔軟性、弾性および柔らかさの形態における手触りに関連する態様に関して所望の最適な特性を有する架橋コラーゲンマトリックスを得るためには、100℃を超えてはならない。
【0066】
先行技術から、50〜180℃の相当に高い凍結乾燥温度およびコラーゲンマトリックスの熱脱水架橋を達成するためには好ましくは>80℃の温度を適用することは公知である。さらに、架橋度、およびしたがって引裂強度は凍結乾燥温度に伴って上昇することが公知である。先行技術によると、80〜150℃の凍結乾燥温度または110〜150℃の温度を用いると特に高度の架橋度が達成される。したがって、より高い凍結乾燥温度はさらにまた架橋度に関して、およびしたがって架橋剤の使用と結び付いた引裂強度に関してより優れた結果を導くと推定されるであろう。しかしこれとは反対に、本発明によるエポキシド架橋プロセスでは、高い凍結乾燥温度は引裂強度(湿潤引裂強度)に関して不良な結果をもたらすことが見いだされている。特に、>100℃の温度での熱脱水後架橋は湿潤引裂強度に有害な作用を及ぼすこともまた見いだされた。この作用は、当業者であれば化学架橋と熱脱水架橋の相加的作用を予期するであろうから驚くべきことであった。
【0067】
本発明による<100℃の凍結乾燥温度の利点は、昇華プロセスの関連する延長によって決定されると想定されている。相当に低い凍結乾燥温度のおかげで、材料の乾燥を完了するための延長された昇華プロセスは、架橋剤とペプチド分子との完全な反応のための延長された期間を利用できる結果として、不可欠である。したがって、この架橋結合反応の完了は、より高度の架橋結合をもたらす延長された昇華プロセス中に可能であるが、他方高い凍結乾燥温度はその後に非均質および不均一に発生して低引裂強度を備える最終生成物を生じさせる加速された架橋結合反応をもたらす。したがって、本発明によるプロセスは、<100℃の凍結乾燥温度で実施されるが、<85℃の凍結乾燥温度がより好ましく、<80℃はいっそうより好ましい。
【0068】
既に上述したように、満足できる熱脱水架橋を達成するために有益であるような>100℃の凍結乾燥温度は、放出され得るコラーゲンおよびペプチド成分および/または、マトリックスタンパク質、細胞外マトリックス成分、タンパク質を構成する有効成分および可溶性タンパク質もしくはペプチド成分の群からの構造形成剤もしくは有効成分に関しては不都合であるが、これは一方ではこれらの構成成分が同時に架橋され、したがって材料中で分離不可能に結合しているためであり、他方では高すぎる温度ではそれらのタンパク質を構成する成分の望ましくない、少なくとも部分的な熱変性が発生する可能性があるためである。
【0069】
先行技術に記載された、20〜30℃の範囲内の凍結乾燥温度が使用される架橋結合プロセスによると、44時間まで、つまり数日間(7日間まで)という相当に長い架橋時間が凍結乾燥する工程までに必要とされる。他方本発明によるプロセスでは、凍結乾燥する工程の前に追加の架橋時間は必要とされず、凍結乾燥する工程が実施される前のコラーゲン懸濁液の待機時間は24時間以下であり、次に架橋は実質的に凍結乾燥する工程の経過中に発生する。詳細には、≧40℃、好ましくは≧50℃、より好ましくは≧60℃の凍結乾燥温度が最適プロセスのために有益である。本発明によるプロセスにおける架橋結合反応は実質的に凍結乾燥する工程中に発生するので、上記に規定したより高い架橋結合温度は、架橋度、したがって結果として生じる材料安定性に有害な影響を及ぼさずに特に短い凍結乾燥時間、したがって特に短い架橋時間を可能にする。さらに、時間の利点は、架橋反応および凍結乾燥する工程を単一工程で実施することからも得られる。
【0070】
本発明によるプロセスでは、結果として生じる凍結乾燥した架橋コラーゲン材料の含水量は、次に任意で凍結乾燥した架橋コラーゲン材料に基づいて、最大25重量%までの含水量に調整される(再水)。より好ましくは、凍結乾燥した架橋コラーゲン材料に基づいて、各場合において20重量%まで、いっそうより好ましくは15重量%までの含水量に調整される。好ましくは、含水量の再水和または調整は、凍結乾燥した架橋コラーゲン材料に基づいて、各場合において少なくとも3重量%へ、より好ましくは少なくとも5重量%へ、いっそうより好ましくは少なくとも7重量%へ実施される。詳細には、含水量は、凍結乾燥した架橋コラーゲン材料に基づいて、各場合において3〜25重量%に、より好ましくは5〜20重量%に、いっそうより好ましくは7〜15重量%に調整するのが有益である。含水量の再水和または調整は、原則としては昇華または水分調整のための公知のプロセスによって実施することができる。例えば、本発明による凍結乾燥した架橋コラーゲン材料は、適切な期間、例えば5〜120時間、より好ましくは12〜80時間にわたって適切な温度および湿度が調節された周囲条件下、例えば10〜25℃の温度、40〜95%、より好ましくは50〜75%の相対湿度で保存することによって適切に調整または状態調節することができる。原則としては、当業者であれば、所望の水分調整に関して考えられる最善の結果を達成するために、上述したパラメーターである温度、湿度および貯蔵時間を適切に組み合わせることができる。
【0071】
驚くべきことに、凍結乾燥した架橋コラーゲン材料の含水量のそのような調整は、凍結乾燥した材料中のエポキシド架橋剤の残留活性に関して有益であることが見いだされている。詳細には、本明細書に規定した決定方法によって、再水和条件(含水量、貯蔵時間)を適切に選択することによって残留エポキシ活性のもはや検出できないレベルへの減少を顕著に促進できることを証明することができた。詳細には、したがって再水和パラメーターを選択することによって、残留エポキシ活性の枯渇を目的に合わせて制御し、したがって経済的に有益な方法で本プロセスに影響を及ぼすことが可能である。
【0072】
本発明による結果として生じるエポキシ架橋凍結乾燥コラーゲンマトリックスは、好ましくは任意で適切な形状に切断し、滅菌し、加工処理することのできる多孔性のスポンジ様形状の製品である。
【0073】
コラーゲン材料から工程h)による所望の形状への変換は、有益には切断によって実施される。原則としては、それらは従来法の公知のプロセスを使用して任意の所望の幾何的形状または厚さに切断することができる。
【0074】
本発明によるコラーゲンマトリックスの滅菌は、治療用途のために重要であり、詳細にはこのための従来法のプロセスを参照されたい。γ線/X線による滅菌が好ましい。
【0075】
加工処理には、本発明によるコラーゲンマトリックスの任意で印刷、エンボス加工、スタンプ、穿孔および/または積層化ならびに任意でレーザー彫刻(表面構造の変更)、ならびにパッケージングが包含される。
【0076】
本発明による多孔性コラーゲンマトリックスは、好ましくは0.1〜30mm、好ましくは0.5〜20mm、いっそうより好ましくは1〜10mmの厚さ(最小の縦の長さを有する寸法)を有する層状材料の形態で提供される。
【0077】
本発明による架橋コラーゲンマトリックスは、コラーゲンに加えて、任意で追加してまた別の構造形成剤、化粧品もしくは医薬品有効成分および/または補助物質からなる群から選択される少なくとも1つのまた別の成分を含有することができる。
【0078】
また別の構造形成剤の群からは、好ましくはアルギネート類、エラスチン、ヒアルロン酸が選択される。
【0079】
本発明の範囲内の化粧品有効成分には、主として疾患、苦痛、身体傷害または病理学的病状を緩和もしくは排除するために意図されない限り、特別にはクレンジング、ケアのため、または外観もしくは体臭に影響を及ぼすため、または香りの印象を与えるために、ヒトに外用適用することを目的とする有効成分が包含される。この状況内では、本発明による化粧品使用のための材料は、例えば、入浴用調製物、皮膚洗浄剤およびクレンジング剤、スキンケア剤、特別には顔面スキンケア剤、眼用化粧品、リップケア剤、ネイルケア剤、フットケア剤、ヘアケア剤、特別にはヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、ヘア軟化剤など、スクリーニング剤、皮膚日焼け剤およびライトニング剤、脱色剤、デオドラント剤、抗水腫薬、脱毛剤、防虫剤など、またはそのような物質の組み合わせである。化粧品用ドレッシング剤またはマスクとしての使用が特に好ましい。
【0080】
化粧品用の、任意でさらに、例えば皮膚学的治療活性を有する化合物の例には、抗ニキビ剤、抗菌剤、制汗剤、収れん剤、デオドラント剤、除毛剤、皮膚用のコンディショニング剤、皮膚平滑剤、皮膚の水和を増加させる物質、例えばデクスパンテノール(パンテノール、パントテノール)、グリセロールもしくは尿素ならびにその他のNMF(天然湿潤剤)例えば、ピロリドンカルボン酸、乳酸およびアミノ酸、サンスクリーン剤、角質溶解剤、フリーラジカルのためのラジカル受容体、酸化防止剤、抗脂漏薬、ふけ防止剤、防腐有効成分、皮膚老化の徴候を治療するための有効成分および/または皮膚分化および/または増殖および/または色素沈着を調節する物質、プロテアーゼ阻害剤、例えばMMP(マトリックス・メタロプロテイナーゼ)阻害剤、AGE(糖化最終産物)物質の形成を減少させるための糖化阻害剤、ビタミン類、例えばビタミンC(アスコルビン酸)およびその誘導体、例えばグリコシド類、例えばアスコルビルグルコシド、またはアスコルビン酸のエステル類、例えばリン酸アスコルビルまたはパルミチン酸およびステアリン酸アスコルビルナトリウムもしくはマグネシウム、L−アスコルビン酸リン酸エステル類、アルカリ金属塩類、例えばL−アスコルビン酸リン酸エステル類のナトリウムおよびカリウム塩;アルカリ土類金属塩類、例えばL−アスコルビン酸リン酸エステル類のマグネシウムおよびカルシウム塩;三価金属塩類、例えばL−アスコルビン酸リン酸エステル類のアルミニウム塩;L−アスコルビン酸硫酸エステル類のアルカリ金属塩類、例えばL−アスコルビン酸硫酸エステル類のナトリウムおよびカリウム塩;L−アスコルビン酸硫酸エステル類のアルカリ金属塩類、例えばL−アスコルビン酸硫酸エステル類のマグネシウムおよびカルシウム塩;ならびにL−アスコルビン酸エステル類の三価金属塩類、例えばアルミニウム塩、任意の天然、ネーチャーアイデンティカルおよび人工ペプチド類、例えば神経ペプチド類、抗菌ペプチド類および脂肪酸への共有結合またはエステル化による修飾を伴う、または伴わないマトリカイン類が包含される。
【0081】
刺激性副作用を有する有効成分、例えばα−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸、α−ケト酸、β−ケト酸、レチノイド類(レチノール、レチナール、レチン酸)、アントラリン類(ジオキシアントラノール)、アントラノイド類、過酸化物類(特に過酸化ベンゾイル)、ミノキシジル、リチウム塩、抗代謝薬、ビタミンDおよびその誘導体;カテコール類、フラボノイド類、セラミド類、ポリ不飽和脂肪酸、必須脂肪酸(γ−リノール酸)、リポソーム構造を有する有効成分、担体系、酵素、補酵素、酵素阻害剤、水和剤、皮膚沈静剤、洗浄剤もしくは発泡剤、および無機もしくは合成マッティングフィラー(mattifying filler)、または化粧品用物質、例えばファンデーション、メークアップファンデーションのための顔料もしくは着色剤および着色粒子、および目、唇、顔面などのその他の化粧品用装飾および着色用の物質ならびに研磨剤。
【0082】
さらに植物有効成分抽出物またはそれから得られた抽出物もしくは単一物質を挙げることができる。植物有効成分抽出物は、一般には、固体植物抽出物、液体植物抽出物、親水性植物抽出物、親油性植物抽出物、単一植物成分;ならびにそれらの混合物、例えばフラボノイド類およびそれらのアグリカ(aglyca):ルチン、クエルセチン、ジオスミン、ヒペロシド、(ネオ)ヘスペリジン、ヘスペリチン、イチョウ(gingko biloba)(例、イチョウフラボン配糖体)、クラテグス抽出物(例、オリゴマープロシアニジン)、ソバ(例、ルチン)、エンジュ(Sophora japonica)(例、ルチン))、カバノキの葉(例、クエルセチン配糖体、ヒペロシドおよびルチン)、ニワトコの花(例、ルチン)、菩提樹の花(例、クエルセチンおよびファルネソールを含む精油)、オドリギソウ油(St.John’s Wort oil)もしくはオドリギソウ抽出物、月見草油(例、オリーブ油抽出物)、キンセンカ、アルニカ(例、精油を含む花の油性抽出物、フラボノイド類を含む極性抽出物)、メリッサ(例、フラボン類、精油);免疫刺激剤:ムラサキバレンギク(Echinacea purpurea)(例、アルコール抽出物、新鮮植物ジュース、圧搾ジュース)、シベリアニンジン(Eleutherococcus senticosus);アルカロイド類:カフェイン、テイン、紅茶もしくは紅茶抽出物、テオブロミン、カプサイシン、アジュマリン(例、プラジュマリン)、エバグリーン(例、ビンカミン);さらに植物医薬品:アロエ、セイヨウトチノキ(例、エスシン)、ニンニク(例、ニンニク油)、パイナップル(例、ブロメライン)、チョウセンニンジン(例、ギンセノシド類)、ミルクシッスルフルーツ(例、標準化シリマリン抽出物)、ナギイカダの根(例、ルスコゲニン)、カノコソウ(例、バレポトリエート、tct.valerianae)、カバ・カバ(例、カバラクトン)、ホップの花(例、ホップ苦味物質)、抽出トケイソウ、エンジアン(例、エタノール抽出物)、アントラキノン含有薬抽出物、例、アロイン含有アロエベラジュース、花粉抽出物、藻類抽出物、カンゾウの根抽出物、ヤシ抽出物、キントラノオ(例、マザーチンクチャー)、ヤドリギ(例、水性エタノール抽出物)、フィトステロール類(例、β−シトステロール)、モウズイカの花(例、水性アルコール抽出物)、モウセンゴケ(例、リキュールワイン抽出物)、海のクロウメモドキ(例、それから得られたジュースまたは海のクロウメモドキ油)、ウスベニタチアオイの根、プリムローズの根抽出物、タチアオイ、ヒレハリソウ、アイビー、トクサ、ノコギリソウ、ヘラオオバコ(例、圧搾ジュース)、イラクサ、クサノオウ、パセリからの新鮮植物抽出物;ノロラエナ・ロバタ(Norolaena lobata)、ミントマリーゴールド(Tagetes lucida)、テオマ・シエムス(Teeoma siems)、ツルレイシ(Momordica charantia)からの植物抽出物およびアロエベラ抽出物、フウセンカズラ(Cardiospermum)マザーチンクチャー、ドゥルカマラ抽出物、ならびに日焼け剤およびタンニンからなる群から選択される。
【0083】
実質的に化粧品に使用される上述した有効成分とは相違して、治療用有効成分(薬剤)は、薬事法の目的の範囲内では、特に疾患、病気、身体傷害または病理的病状を治癒させる、緩和する、または予防することを目的とする成分である。本発明によって適切であるのは、特に外用もしくは経皮適用のために、特に創傷治療および治癒の分野ならびに火傷の治療、特別には火傷の応急手当を目的とする物質および有効成分である。
【0084】
皮膚もしくは経皮適用のための有効成分は、特に皮膚有効成分だけではなくさらに経皮有効成分でもある。それらには、例えば、火傷を治療するための作用物質、皮膚疾患を治療するための作用物質、外用適用のための鎮痛薬、例えば、デキストロプロポキシフェン、ペンタゾシン、ペチジン、ブプレノルフィン;抗リウマチ薬/消炎薬(抗炎症薬)(NSAR)、例えばフランキンセンスもしくはフランキンセンス抽出物、インドメタシン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ケトプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、サリチル酸およびその誘導体、例えばアセチルサリチル酸、オキシカム類;ステロイドホルモン類、例えばコルチコイド類およびグルココルチコイド類、例えばヒドロコルチゾン、コルチゾール、酢酸コルチゾン、クロプレドノール、プレドニゾン、プレドニゾロン、デフラザコート、フルオコルトロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、フロン酸モメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、エチニルエストラジオール、メドロエルゴタミン、ジヒドロエルゴトキシン;抗痛風薬、例えばベンズブロマロン、アロプリノール;皮膚外用剤、抗ヒスタミン剤、例えばブロムフェニラミン、バミピン;抗生物質、例えばエリスロマイシン、クリンダマイシン、テトラサイクリン、例えばコロイド銀および銀塩類、例えば塩化銀、硝酸銀、ヨウ化銀、またはまた別の先行技術から公知の銀含有創傷治療薬を包含する抗菌剤;抗真菌薬、ペプチド薬剤、抗ウイルス有効成分、抗炎症性有効成分、かゆみ止め有効成分、例えば麻酔有効成分、例えば、抗ヒスタミン剤、ベンゾカイン、ポリドカノールもしくはコルチコイド類およびグルココルチコイド類;抗ニキビ剤;抗寄生虫有効成分;外用適用のためのホルモン剤;静脈治療薬;免疫抑制剤、例えばカルシノイリン阻害剤、例えばタクロリムスおよびピメクロリムス、鉱物および微量元素、例えば、無機もしくは有機セレニウム化合物、亜鉛および亜鉛塩類などの、全部が皮膚または経皮適用のための作用物質が含まれる。
【0085】
明確にするために、本発明の状況内での化粧品用または治療用有効成分の群への有効成分の分類は最終分類を表すのではないことに留意されたい。詳細には、本明細書で行った分類は、対応する有効成分が化粧品およびさらに治療用有効成分の両方として使用される可能性を排除するものではない。
【0086】
皮膚および経皮適用のために好ましい有効成分は、皮膚疾患、例えば神経皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、酒さなどを治療するための作用物質、抗炎症性有効成分、痒み止め有効成分、日焼け剤、局所鎮痛薬、麻酔薬および抗菌有効成分を含有する群から選択される。
【0087】
特に好ましくは、少なくとも1つの有効成分は、例えばリン脂質、中性脂質およびスフィンゴ脂質を含む皮膚様脂質ならびに例えば尿素、アミノ酸およびカルボン酸、ピロリドンカルボン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、乳酸塩(乳酸)、クエン酸、塩化物、リン酸塩など、尿酸およびその他の有機酸を含む皮膚の天然保湿因子(NMF)からなる群から選択される。
【0088】
さらに特に好ましいのは、創傷治療の分野において、特別には慢性創傷、褥瘡、下腿潰瘍、糖尿病性足症候群などを治療するために使用される有効成分、例えば鎮痛薬、例えば免疫抑制剤、ホルモン剤、麻酔有効成分、駆虫性、殺真菌性もしくは抗真菌性および抗菌性有効成分、例えば特に銀含有有効成分、例えば硝酸銀、塩化銀、ヨウ化銀、マイクロサイズの銀粒子または先行技術から公知である銀を含有する創傷治療物質、創傷環境を支持および調節するための有効成分、例えば特に電解質、シリカ、鉱物および微量元素、例えばカリウム、マグネシウム、カルシウム、セレニウム、ヨウ素など、創傷清拭を達成するための有効成分、例えばコラゲナーゼ類もしくは先行技術から公知の他の適切なタンパク質分解酵素、ならびに創傷治癒を支援するための有効成分、例えば、成長因子、酵素阻害剤、マトリックスタンパク質もしくは細胞外マトリックス成分または可溶性(低分子量)タンパク質およびペプチド成分、本発明によって使用されるコラーゲン懸濁液中に既に含有されているI、IIIおよびV型コラーゲン以外のコラーゲンタイプである。
【0089】
創傷治療薬の分野から特に好ましい有効成分は、銀含有有効成分、例えば特に硝酸銀、塩化銀、マイクロサイズの銀粒子、タクロリムス、ピメクロリムス、抗ヒスタミン薬、ポリドカノール、フランキンセンス/フランキンセンス抽出物、カプサイシン、タンニン、セイヨウオトギリソウ油/セイヨウオトギリソウ油抽出物、デクスパンテノールならびに無機もしくは有機セレニウム化合物、亜鉛および亜鉛塩から選択される。
【0090】
さらに好ましい有効成分は、好ましくは成長因子、タンパク質を構成するホルモン、酵素、補酵素、糖タンパク質、血液凝固因子、その他のサイトカイン類を含むタンパク質を構成する有効成分および遺伝子組換え技術によって調製される上述の有効成分の変形の群から選択される有効成分である。
【0091】
本発明によって使用できる成長因子は、好ましくはVEGF(血管内皮成長因子)、bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)、FGF−1(酸性線維芽細胞成長因子)、TGF−β、TGF−α(トランスフォーミング成長因子βまたはα)、EGF(内皮成長因子)、HGF(肝細胞成長因子)、TNFα(腫瘍壊死因子α)、IGF IおよびII(インスリン様成長因子/インスリン結合成長因子IおよびII)、ヘパリン結合成長因子IおよびII、PDGF(血小板由来成長因子)、PD−ECGF(血小板由来内皮細胞成長因子)、BMP(骨形体形成成長因子)、GHRP(成長ホルモン放出因子)、軟骨誘導因子AおよびB、骨成長因子、インターロイキン8、アンギオポエチン、アンギオゲニン、アプロチニン、およびvWF(フォン・ビルブランド因子)からなる群から選択される。
【0092】
有効成分としての糖タンパク質には、例えば免疫グロブリンおよび抗体が含まれる。
【0093】
有効成分としての他のサイトカイン類には、例えばインターロイキン類およびインターフェロンが含まれる。
【0094】
さらに好ましい有効成分は、止血作用を有する成分、例えば血液凝固因子、例えばトロンビン、フィブリノーゲンもしくは硫酸コレステリル(例、硫酸コレステリルナトリウム)、または外因性および/または内因性凝固カスケードの因子および物質への活性化作用を有する有効成分、例えばリン脂質類、カオリン、アプロチニン、因子もしくは因子類、組織因子またはカルシウムイオン類の濃縮物である。
【0095】
さらにまた、本発明による組成物中で、例えば経皮有効成分パッチの形態でまた別の有効成分、例えば気管支治療薬、例えば抗喘息薬、鎮咳薬、粘液溶解薬など、抗糖尿病薬、例えばグリベンクラミド、ホルモン剤、ステロイドホルモン剤、例えばデキサメタゾン、強心配糖体、例えばジギトキシン、心臓および循環器治療薬、例えばβブロッカー、抗不整脈薬、降圧薬、カルシウム拮抗薬など、向精神薬および抗うつ薬、例えば三環系抗うつ薬(NSMRI)、セロトニン再摂取阻害剤(SSRI)、ノルアドレナリン再摂取阻害剤(NRI)、セロトニンーノルアドレナリン再摂取阻害剤(SNRI)、モノアミノオキシダーゼ(MAO)阻害剤など、神経弛緩薬、抗痙攣薬もしくは抗てんかん薬、催眠薬、鎮静薬、麻酔薬、胃腸治療薬、脂質低下薬、鎮痛薬、例えば偏頭痛治療薬、パラセタモール、サリチル酸およびその誘導体、例えばアセチルサリチル酸、ジクロフェナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンなど、抗炎症薬、血管拡張薬、利尿薬、抗痛風薬、細胞増殖抑制薬、筋弛緩薬、例えばホルモンパッチの形態にある避妊薬、例えばニコチンパッチの形態にある抗嗜癖薬、植物抽出物、プロビタミン類、例えばβカロテン、ビタミン剤、例えばビタミンC、A、B、Eなどを投与することも想定できる。
【0096】
本発明によると、また別の構造形成剤もしくは有効成分として、マトリックスタンパク質、細胞外マトリックス成分もしくは可溶性(低分子量)タンパク質ならびに好ましくはエラスチン、エラスチン加水分解産物、グリコサミノグリカン類、例えば硫酸ヘパラン、硫酸コンドロイチン、硫酸デルマタン、硫酸ケラタン、ヘパリンおよびヒアルロン酸、プロテオグリカン類、例えばアグリカン、フィブロモジュリン、デコリン、バイグリカン、バーシカン、パールカン、高密度基底膜プロテオグリカン、シンデカンおよびセルグリシン、フィブリン、フィブロネクチン、グルカン類、例えばパラミロンの群から選択される物質を加えるのが最も好ましい。特にそのタイプの最も好ましい細胞外マトリックス成分および構造形成剤は、エラスチンおよびエラスチン加水分解産物、ヒアルロン酸およびフィブロネクチンである。
【0097】
コラーゲン材料自体もまた一定の治療作用、例えば特に止血作用または創傷治癒における好都合の補助作用を有する可能性がある。しかし、コラーゲン材料は、本発明の意図に含まれる有効成分ではない。
【0098】
上述の有効成分は、架橋したコラーゲンマトリックス中に、単独または複数の有効成分の組み合わせで、好ましくは凍結乾燥最終生成物に基づいて有益には40重量%まで、好ましくは60重量%まで、より好ましくは80重量%までの量で存在する。
【0099】
凍結乾燥コラーゲンマトリックス中では、マトリックスタンパク質、細胞外マトリックス成分、タンパク質を構成する有効成分および可溶性タンパク質もしくはペプチド成分の群からの構造形成剤もしくは有効成分を、使用されるコラーゲン懸濁液のワークアップからの任意の酸可溶性コラーゲンおよびペプチド成分と一緒に、本明細書に規定した決定法(BCA)によって測定して総計10重量%まで、より好ましくは20重量%までの量を占めることができる。
【0100】
本発明によるコラーゲンマトリックスは、任意で少なくとも1つの補助物質を含有することができる。
【0101】
補助物質には、pHを調整するための物質、例えば緩衝液、無機および有機酸または塩基;脂肪質物質、例えば鉱油、例えばパラフィン油、ワセリン油、シリコーン油、植物油、例えばココナッツ油、甘扁桃油、アンズ油、コーン油、ホホバ油、オリーブ油、アボカド油、ゴマ油、パーム油、ユーカリ油、ローズマリー油、ラベンダー油、松根油、タイム油、ミント油、カルダモン油、オレンジブロッサム油、大豆油、ヌカ油、米油、ナタネ油およびヒマシ油、コムギ麦芽油およびそれから単離されたビタミンE、月見草油、植物性レシチン類(例、大豆レシチン)、植物から単離されたスフィンゴ脂質類/セラミド類、動物油もしくは脂肪類、例えば獣脂、ラノリン、バター油、中性油、スクアラン、脂肪酸エステル類、脂肪アルコールのエステル類、トリグリセリド類、および例えば皮膚の温度に対応する融点を有するろう類(動物ろう、例えば蜜ろう、カルナウバろうおよびカンデリラろう、ミネラルろう、例えば微結晶ろう、および合成ろう、例えばポリエチレンもしくはシリコーンろう)、ならびにCTFA paper,Cosmetic Ingredient handbook,1st Edition,1988,The Cosmetic,Toiletry and Fragrance Association,Inc.,Washingtonで記述された化粧品用に適切なすべての油類(いわゆる化粧品用油類)、上述した洗浄用活性剤に加えて界面活性剤、例えば分散剤、湿潤剤、乳化剤など;充填剤;安定剤;補助溶剤;医薬品用および化粧品用の従来型もしくはその他の着色剤および顔料、特別にはヒトの身体に塗布および着色するためではなく主としてヒドロゲル組成物を着色するために使用される着色剤および顔料、例えば有効成分;保存料;皮膚軟化剤;潤滑剤および平滑剤などの群の下に列挙された装飾用着色剤のような顔料および着色剤が含まれる。
【0102】
本発明による好ましい補助物質は、脂肪および油である。特に好ましいのは、上記に列挙した化粧品用油、特にトリグリセリド類、特に好ましくはカプリン酸/カプロン酸トリグリセリド類、スクアランまたはホホバ油ならびに月見草油である。
【0103】
上述の補助物質は、架橋したコラーゲンマトリックス中に、単独または複数の補助物質の組み合わせで、好ましくは凍結乾燥最終生成物に基づいて有益には80重量%まで、好ましくは60重量%まで、より好ましくは40重量%までの量で存在する。
【0104】
一般に、本発明の状況に含まれる補助物質のカテゴリーへの上述した物質の分類は、これらの補助物質がさらにまた所定の化粧品用および/または治療用作用を有することができる可能性を排除するものではなく、これは特に好ましくは使用される上述した化粧品用油について言えることである。
【0105】
本発明によるコラーゲン材料が上述した群、構造形成剤、有効成分および/または補助物質の少なくとも2つからの追加の成分の組み合わせを含有する場合は、多孔性コラーゲン担体マトリックス全体中のこれらの追加の成分の総量は、凍結乾燥コラーゲン材料に基づいて、各々の場合に40重量%まで、好ましくは60重量%まで、より好ましくは80重量%までである。
【0106】
そのような構造形成剤、有効成分および/または補助物質の、単独または上述した群の少なくとも2つの組み合わせのいずれかでの量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
【0107】
上述したように、本発明によるプロセスのまた別の利点は、特別な手順、特に本プロセスに起因する低残留エポキシド活性および凍結乾燥する工程後の含水量を調整することにより任意の残留活性を不活性化できるために、例えば先行技術のプロセス(例、Zeeman研究グループ)から公知であるようなエポキシド架橋剤を洗い流す必要はない。これは凍結乾燥架橋材料内で放出可能に使用されるコラーゲン懸濁液の酸可溶性コラーゲンおよびペプチド成分を保存するためだけではなく、さらに本明細書に規定したマトリックスタンパク質、細胞外マトリックス成分、タンパク質を構成する有効成分および可溶性タンパク質もしくはペプチド成分の群からの構造形成剤もしくは有効成分、例えば、コラーゲン懸濁液に追加して加えられるエラスチンなどのためにも重要である。使用時にそのような成分が積極的な作用を発生させるためには、それらの成分は、使用時に主として担体材料として作用する架橋したコラーゲンマトリックスから放出可能でなければならない。このため、そのようなタンパク質を構成する有効成分および成分が材料内で主として未架橋のままで存在すること、そして例えばエポキシの添加によってコラーゲン材料中で架橋しない、およびそれにより分離不能に結合されないことが必須である。本発明によるプロセスによって、未架橋形にあるこれらの可溶性マトリックスタンパク質成分をコラーゲン材料内に導入し、それらを主としてその中で未架橋状態で保存することが可能であるが、これは特に本発明によるプロセス内には極めて少量のエポキシド架橋剤しか存在しないためである。架橋剤が少量しか存在しない結果として、架橋結合反応は主として少量のエポキシド架橋剤と、低分子量のタンパク質を構成するマトリックス分子の代わりに反応パートナーとして過剰に存在するコラーゲンポリペプチドとの間で発生する。
【0108】
全体として、本発明によるコラーゲンマトリックス中で使用時に放出され得るそのような可溶性の未架橋のタンパク質を構成する成分の量は、凍結乾燥コラーゲン材料の乾燥質量に基づいて、各々の場合に少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、特に好ましくは≧5重量%である。酸可溶性コラーゲンおよびペプチド成分および/またはマトリックスタンパク質、細胞外マトリックス成分、タンパク質を構成する有効成分および可溶性タンパク質もしくはペプチド成分の群からの構造形成剤もしくは有効成分を含むそのような放出され得る可溶性成分の量は、有益には最大20重量%までである。
【0109】
そのような可溶性の放出され得るコラーゲンおよびペプチド成分の定量的量は、例えば、BCAアッセイ(bichinoic acid assay)によって、本明細書で詳細に記載するように、37℃で24時間の期間にわたり0.9% NaCl中での抽出後に上清中の標準物質としてのウシ血清アルブミンと比較して決定することができる。
【0110】
先行技術によるプロセスでは、そのような可溶性のタンパク質を構成する成分はさらにまた、大量の架橋剤のために架橋結合され、したがって担体材料に分離不能に結合される。いくらかの未架橋残基は、さらに残留エポキシ活性を減少させるために必要な残留エポキシド架橋剤の洗い流しによって、その後のプロセスにおいて材料から洗い流されてしまう。
【0111】
本プロセスの特に好ましい実施形態では、合成親水性ポリマー、特に機能的に活性化された合成親水性ポリマー、例えばグリコール、例えば特に機能的に活性化されたポリエチレングリコールは、架橋剤の添加前にコラーゲン懸濁液に全く加えられない。したがって、本発明による架橋したコラーゲンマトリックスの特に好ましい実施形態は、コラーゲンと合成ポリマーとのコンジュゲートを含まない実施形態である。
【0112】
上述したように、本発明による凍結乾燥エポキシ架橋したコラーゲンマトリックスは、遅くとも水分調整の工程後には、本明細書に記載した方法によって測定した場合に、もはや検出可能な残留エポキシ反応性を示さない。
【0113】
さらに、本発明によるプロセスによって入手できるコラーゲン材料は、そのような架橋したコラーゲン材料の高い生体適合性のまた別の証拠である毒性決定についてのインビトロ(in vitro)標準プロセス(XTT試験)において毒性を全く示さないこともまた証明されている。
【0114】
本発明による凍結乾燥エポキシ架橋結合コラーゲンマトリックスは、以下で定義および説明するように、各場合において追加して分解速度の減少(コラゲナーゼ分解/コラゲナーゼ消化の減少)、加水分解安定性の改善および湿潤引裂強度の改善という意味における機械的安定性の増加に対応する、分解安定性の改善によって識別される。
【0115】
分解速度、または分解率は、コラーゲンマトリックスの酵素分解に対する、特にコラゲナーゼ消化に対する安定性を反映するので、例えば、コラゲナーゼ消化試験によって決定することができる。この試験では、酵素コラゲナーゼ(PBS(リン酸緩衝食塩液)緩衝液中のクロストリジウム‐ヒストリチクム(1型)由来のコラゲナーゼ)によるコラーゲン繊維および原線維の分解が目的に合わせて制御された条件下で引き起こされ、規定の反応時間後に、分解物の量が、以下の実施例において詳細に記載するように、分光光度計におけるUV/VIS測定によって決定される。
【0116】
本発明による分解安定化コラーゲンマトリックスは、本明細書に記載したコラゲナーゼ消化試験によって決定することのできる、未架橋または熱脱水的にのみ架橋した凍結乾燥コラーゲンと比較して、可溶性分解産物の量の減少の意味における分解率の減少によって識別される。
【0117】
分解率は、一方では使用された架橋剤の量に左右されるが、他方では加えられる任意の可溶性タンパク質成分(マトリックスタンパク質など)にもまた左右される。使用するプロセスパラメーターによって、分解特性は、所望の塗布分野に依存して制御することができる。
【0118】
本発明によるコラーゲンマトリックスは、好ましくは、コラゲナーゼの添加6時間の反応時間後に測定した場合に、未架橋または熱脱水的にのみ架橋した凍結乾燥コラーゲン(分解率100%)と比較して85%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下の分解率を有する。これは、未架橋または熱脱水的にのみ架橋したコラーゲンと比較して、少なくとも15%、好ましくは少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも50%の分解安定性における改善を意味する。
【0119】
コラーゲンマトリックスの分解率を決定するためのまた別の方法では、コラーゲンマトリックスの分解速度は、クロストリジウム‐ヒストリチクム(I型、Worthington Biochemicals社)由来のコラゲナーゼによる酵素分解の前後にサンプルの重量を決定することによって決定される。そのために、コラーゲンマトリックスの規定試験片を1mLのPBS(pH7.2)中に規定単位のコラゲナーゼを含有する溶液中に浸漬し、緩徐に振とうしながら37℃で2時間にわたりインキュベートする。分解を0.2mLの0.25M EDTA溶液の添加によって停止させ、10分間にわたり氷上での冷却を実施する。このサンプルを次に5mLのPBS緩衝液(pH7.2)を用いて15分間ずつ3回洗浄し、5mLの脱塩水を用いて15分間ずつ3回洗浄し、−80℃で一晩冷凍し、次に凍結乾燥する。凍結乾燥する工程後に、部分分解したコラーゲン担体サンプルの重量を決定し、分解速度を以下のように決定する:
分解速度(%)=100×(初期重量ー分解後の重量)/初期重量
本発明によるコラーゲンマトリックスは、約60%以下、より好ましくは約50%以下、いっそうより好ましくは約40%以下の分解速度によって識別されるが、分解速度は、好ましくは少なくとも約2%、より好ましくは少なくとも約4%、いっそうより好ましくは少なくとも8%、いっそうより好ましくは少なくとも10%である。
【0120】
架橋度に依存して、本発明による架橋したコラーゲンマトリックスは、多かれ少なかれ急速に再吸収可能な材料である。つまり、低度の架橋を有する材料は、例えば皮下または筋肉内投与後に生体内で優勢な条件下で酵素的に分解される。創傷と接触させられた後には、この材料は適宜にその上またはその中に残留して、創傷の治癒を支援することができる。材料の除去は、有益にも必要とされない。そのような適用は、創傷治療剤として使用する場合に特に有益である。そのような創傷治療剤が創傷中に残留することが意図される場合は、それらは分解性インプラントとも称される。
【0121】
増加した機械的安定性(引裂強度)を有することとともに、架橋したコラーゲン材料は、生分解性(例えば、酵素的分解)に対する増加した安定性を有し、特に組織再建もしくは欠損部充填のための半永久的インプラントとして、または例えば組織工学の分野における、例えば細胞集団のための足場として適合する。
【0122】
コラーゲンマトリックスの低い分解速度、およびしたがって高い分解安定性は、特に化粧品用ドレッシング、細胞集団足場として使用するため、または例えば真空支援創傷治療療法における創傷浸出液を吸収するためのスポンジ材料として使用するためにも有益である。
【0123】
しかし他方、創傷治療剤および分解性創傷治療用インプラントとして使用するためのマトリックスの低すぎる分解率は、創傷内もしくは身体内での不完全に分解した材料の被包化およびしたがって組織の望ましくない硬化の発生を引き起こす可能性があるので望ましくない。このため本発明によると、分解速度/率を所望の用途のために最適に調整することが特に重要である。コラーゲン材料の分解特性は、上記に記載したように得られた材料の性質および本発明によるコラーゲンマトリックスの調製中に架橋結合またはそれに適用される乾燥条件の両方によって影響を受ける。本発明によると、特に有益な分解特性は、上述したように調製したコラーゲン材料を、特別には所望の適用分野に依存して、以下で説明するコラーゲンマトリックスのための好ましい調製条件と組み合わせて用いることで達成できる。
【0124】
特に化粧品用ドレッシングとして、組織工学における細胞集団のための足場として、および真空支援創傷治療療法において使用するためのドレッシング材料として使用するためのコラーゲン材料は、未架橋または熱脱水的にのみ架橋したコラーゲンと比較して、分解安定性における少なくとも50%の改善に対応する50%以下の低い分解率を有する。他方では、創傷治療剤もしくは創傷内に残留すべき分解性創傷治療剤(分解性インプラント)として、または組織再建ならびに深部皮膚欠損をライニングするためのインプラントとして使用するためのコラーゲン材料は、未架橋または熱脱水的にのみ架橋したコラーゲンと比較して、分解安定性における少なくとも15〜30%の改善に対応する85以下〜70%の低い分解率を有する。
【0125】
本発明の範囲内では、架橋作用もしくは架橋度は、一方では分解率の減少または他方では原理的には従来型決定法、特別には本明細書に記載した方法によって決定できる引裂強度(湿潤引裂強度)の増加による機械的安定性の増加によって達成できるコラーゲンマトリックスの分解安定性の増加、およびさらに弾性係数を測定することによって定量可能な材料の剛性の増加を意味する。
【0126】
例えば、コラーゲン構造のコラゲナーゼに対する耐性は、例えば、架橋結合の尺度である、未架橋の材料が架橋した材料の場合より相当急速に酵素的に分解される本明細書に記載した方法(コラゲナーゼ消化)よって決定することができる。
【0127】
加水分解安定性は、さらにまたコラーゲンマトリックスの架橋結合の尺度であり、例えば規定量のコラーゲン材料を水溶液中に入れ、経時的な材料特性の変化を決定することによって証明することができる。未架橋または熱脱水的に架橋したコラーゲン材料は選択された条件(50℃の水溶液)下で<18日後に完全加水分解(マトリックス構造の構造的分解)を示したが、同一条件下での本発明による架橋したコラーゲン材料の場合は、マトリックスの構造的変化が観察されなかった。
【0128】
本発明によるコラーゲンマトリックスの湿潤引裂強度は、DIN EN ISO 3376によって決定することができ、好ましくは>50cN/mm(層厚)、より好ましくは>100cN/mm、いっそうより好ましくは>300cN/mmである。
【0129】
しかし好ましくは、湿潤引裂強度は、以下の実施例で記載するように、内測法(UV8801)を使用して決定される。この内測法(UV 8801)によって決定される本発明による架橋したコラーゲンマトリックスの好ましい湿潤引裂強度は、>200cN/mm(層厚)、より好ましくは>400cN/mm、いっそうより好ましくは>500cN/mmである。
【0130】
本発明による凍結乾燥エポキシ架橋結合コラーゲンマトリックスは、未架橋コラーゲンマトリックスと比較して、および熱脱水架橋によってのみ、または他の公知の化学架橋剤によってのみ架橋しているコラーゲンマトリックスと比較して、追加して顕著に改善された吸収、液体吸収および貯蔵能力ならびに湿潤化または水和率の増加を示す。
【0131】
本発明によるコラーゲンマトリックスの液体吸収もしくは貯蔵能力は、特にそのような吸収された液体量を貯蔵および保持する能力と組み合わせて多量の液体を吸収する能力を意味する。本発明によると、それらの自重の1〜200倍、好ましくは10〜100倍の量の液体を吸収および貯蔵することのできる架橋したコラーゲンマトリックスが好ましい。
【0132】
本材料が吸収できる液体量の尺度は、質量膨潤度(Q)によって表すことができる:
【化4】

【0133】
(式中、Qは、膨潤材料の質量(mGel)対膨潤前の乾燥材料の質量(mtr.Pr.)の比率を表す)
したがって質量膨潤度を測定するために、凍結乾燥した材料を計量し、次に水の表面上で15〜25℃の温度で過剰の蒸留水を含有する皿の中に入れ、10分間にわたり膨潤させる。過剰の水は、機械的作用を使用せずに流し捨てる。膨潤した組成物の重量を再び測定した後、上記の式にしたがって質量膨潤度を計算する。
【0134】
本発明による凍結乾燥組成物は、好ましくは15〜100の質量膨潤度を有する。
【0135】
さらに、組成物の重量に基づいて液体保持能力を指示することもまた可能である。そのためには上述した試験配列で計算した膨潤材料サンプルの重量の増加を過度の液体を除去した後に、その重量増加に対応する液体の体積に変換すると、使用した組成物1gに基づく吸収された液体体積が指示される。
【0136】
本発明によるコラーゲンマトリックスは、さらにまた未架橋または熱脱水的にのみ架橋したコラーゲンマトリックスと比較して高い光学密度によっても識別される。
【0137】
光学密度は、本明細書では、層厚1mを有する層状コラーゲンマトリックス上でHeiland SW密度計TD03を使用して計算して、照射された光線密度に対する透過光密度指数の常用対数として測定した定量的単位である光学密度を意味する。本発明のコラーゲンマトリックスは、層厚1mmに付き≧0.02、より好ましくは≧0.03、いっそうより好ましくは≧0.05の光学密度を有する。
【0138】
本発明によるプロセスの実質的な結果である本発明によるコラーゲンマトリックスの上述した利点に加えて、本発明によるエポキシド架橋コラーゲン材料は、未架橋または熱脱水的にのみ架橋したコラーゲン材料または他の公知の化学架橋剤によって架橋したコラーゲン材料より優れている、特に以下の有益な特性を有する:
・より優れた感触:この材料は、例えば同一の層厚を備える未架橋/熱脱水架橋した材料よりもビロード様で、柔らかく、より十分な、またはそれ以上のボリュームがあるように感じられる。これは、特に化粧品分野において有益である。
・より高い光学密度:化粧品用途の分野および色の印象によって評価されなければならない実施形態のために有益である。
・より高い回復力:架橋した材料は湿潤状態では機械的作用に反応して例えば未架橋/熱脱水架橋した材料ほど容易に崩壊することはなく、スポンジと同様に、より容易に最初の体積を再獲得すると考えられる。
・改善された給水能力
・改善された水和率
・高い弾性および柔軟性
・制御可能な細胞集団/細胞反応(細胞の材料への反応)。
【0139】
制御可能な細胞集団/細胞反応と結び付けると、本発明によるプロセスによって、剛性および柔軟性、酵素的分解性(分解率)および放出され得る可溶性コラーゲンおよびペプチド成分または上記に列挙したようなまた別のマトリックスタンパク質および可溶性ペプチド成分などに関して材料特性を目的に合わせて制御できる可能性が見いだされていることに留意されたい。
【0140】
剛性および柔軟性の制御に関して、細胞集団に適合するマトリックスの剛性/柔軟性がそれに付着する細胞の特性に重大な影響を及ぼすことが公知であることに留意されたい。細胞環境が細胞表現型およびその発現パターン、移動および増殖挙動に及ぼす影響は、近年ますます、組織工学の分野における基礎研究の最前線に推し進められてきた。その組成とは別に、細胞外マトリックス(ECM)の剛性(硬さまたは剛性)および弾性は、特定の細胞環境の主要な態様である。
【0141】
細胞外マトリックスの剛性は、細胞の挙動にとっての調節シグナルである。例えば、幹細胞の分化は、基質の剛性に直接左右される;同様に、例えば筋線維芽細胞の挙動は、細胞環境の特定剛性に基づいている。細胞は、それらを取り囲むECMの機械的フィードバックへ直接的に反応する(機械化学的感知)。
【0142】
細胞を取り囲む材料の剛性とそれに基づく細胞反応との関連について試験するためには、様々な剛性および組成のゲル使用が先行技術として公知である(Mih et al.in PLoS ONE 6(5):e19929;2011)。合成基質の例は、相違する重合度のポリアクリルアミドヒドロゲルならびに高分子電解質多層(PEM)である;タンパク質をベースとするゲル、例えばコラーゲンゲルが同様に使用される(例、Yang et al.in Biophysical Journal Vol.97,2051 2060;2009による)。可溶性コラーゲンのコラーゲンゲルの剛性はゲル形成タンパク質の濃度に直接的に左右され、さらに例えばグルタルアルデヒドまたはさらにゲニピンを用いた追加の架橋結合によって修飾することができる。
【0143】
問題の材料の弾性は、いわゆる弾性係数(ヤング係数(Young’s modulus))Eによって定量される。これは以下のように規定されている:
弾性係数(物理学者Thomas Youngから、ヤング係数とも言う)は、線形弾性挙動を備える固体の変形への応力および歪みとの関係を説明する材料工学からの材料定数である。弾性係数は、記号Eを用いて略記される。
【0144】
弾性係数の数値は、材料の変形に対する抵抗性が大きいほど高い。このため高い弾性係数を有する材料は剛性であり、低い弾性係数を有する材料は柔軟性である。
【0145】
健常および罹患もしくは損傷組織のECM剛性が幅広い分布を有することは公知である。
【0146】
例えば、神経組織(脳)の剛性はE=約2.5kPa、筋組織の剛性はE=12kPaおよび骨の剛性はE=18GPaである。創傷治癒中に存在するような顆粒組織については、0.1〜1kPaの初期剛性および7日後の18kPaの剛性が報告されている(Krishnan et al.in Cell Adhesion & Migration 2:2,83−94;2008)。
【0147】
バイオテクノロジー、基礎研究および組織工学分野における3D培養のための、ならびに高い生体適合性および対応する分解安定性を有し、さらに問題の組織に特異的な剛性を有し、培養対象の細胞にとって最適な細胞環境を提供することができるために目的に合わせて調整できる足場を提供することには関心が高い。
【0148】
本発明によるコラーゲンマトリックスは、本発明によるプロセスによって、0.01〜100kPaの範囲内、好ましくは0.1〜60kPaの範囲内、特に好ましくは2〜40kPaの範囲内に調整可能な剛性を有する。
【0149】
したがって、コラーゲンマトリックスを架橋させるための本発明のプロセスによって、最適な細胞内方増殖(集団)、細胞分化、特に該マトリックスと直接に接触する細胞のいわゆる発現プロファイルのための要件に材料特性を目的に合わせて適応させることが可能である。発現プロファイルは、例えば、特定のマトリックスタンパク質、細胞骨格タンパク質(アクチン類)、サイトカイン類、プロテアーゼ類などの発現を表示する。細胞分化または集団化したマトリックスの発現プロファイルのそのような制御は、特に組織工学およびバイオインプラントの分野においてだけではなく、基礎研究、診断学および分析におけるモデル系の確立においても有益である。
【0150】
本発明による架橋したコラーゲンマトリックスの上述した有益な特性のために、それらは化粧品用および医学用、製薬学またはバイオテクノロジー使用のために特に適合する。
【0151】
したがって、本発明はさらに、本発明によるコラーゲンマトリックスの、化粧品として、特に化粧品用ドレッシングもしくはマスクとしての化粧品使用を提供する。
【0152】
本発明による凍結乾燥エポキシ架橋コラーゲンマトリックスの化粧品用ドレッシングもしくはマスクとしての使用は、好ましくは乾燥状態にあるドレッシングもしくはマスクを治療対象の身体部分へ適用し、その後にそれを水または1つ以上の有効成分および/または任意の補助物質の水溶液で水和させる工程、または処置対象の身体部分に適用する前に化粧品用ドレッシングもしくはマスクの形態にあるコラーゲンマトリックスを1つ以上の有効成分および/または任意の補助物質の水溶液に浸す工程のいずれかによって実施される。
【0153】
対応する乾燥もしくは事前に湿らせた適用はさらに、本発明によるコラーゲンマトリックスを創傷治療のための薬剤として使用した場合にも実施できる。
【0154】
本発明は、さらに医薬品(医療器具もまた包含する)として、特に局所もしくは非不適用のため、またはヒトもしくは動物に埋め込むために使用するための本発明による凍結乾燥エポキシ架橋コラーゲンマトリックスに関する。
【0155】
特に好ましいのは、本発明によるコラーゲンマトリックスの、インプラント、皮膚もしくは経皮的皮膚治療剤として、および/または止血剤および組織工学分野における細胞培養のための足場としての使用である。
【0156】
本発明はさらに、以下の:急性もしくは慢性創傷の治療、創傷治癒の改善、組織欠損の均等化、体積を構築しながらの深部皮膚欠損の内張り、組織再生の支援、真皮の再生、火傷の治療、形成手術における使用、瘢痕切開後の使用、自家分割皮膚移植片との併用療法、顆粒組織形成の支援、血管形成の支援、より優れた瘢痕の質の保証、慢性創傷、例えば下腿潰瘍、褥瘡および糖尿病足の治療、開放創傷の治療、創傷治癒障害の治療、深部皮膚欠損を伴う疾患の治療、顎インプラントの製造、骨インプラントの製造、軟骨インプラントの製造、組織インプラントの製造、皮膚インプラントの製造、医療用ドレッシングの製造、経皮ドレッシングの製造、創傷プラスターの製造、創傷包帯材料の製造、創傷ドレッシングの製造および細胞マトリックス単位を移植するための細胞増殖用の細胞培養マトリックスの製造、ならびに基礎研究、診断学および分析のための組織系のインビトロ再生のためのモデル系の製造におけるバイオテクノロジーからなる群から選択される少なくとも1つの適応もしくは用途において使用するための本発明によるコラーゲンマトリックスに関する。
【0157】
さらに、本発明によるコラーゲンマトリックスはさらにまた、例えば、原理的には先行技術から公知であり、米国特許出願第2007/0027414号に記載されたように、真空支援創傷治療療法においても使用できる。それらの高度の柔軟性のために、本発明によるコラーゲンマトリックスは、そのような真空治療において創傷床内に首尾良く導入することができ、創傷床ではそれらの優れた吸収および水和特性のために過剰の創傷流体の除去を支援する。浸出液の輸送は、既に一方ではその基本的に高い親水性および膨潤性のために透過性の多孔質コラーゲンマトリックス材料によって達成される。さらに、本発明によるコラーゲンマトリックスは、追加して液体の通過を容易にする凍結乾燥する工程の結果として、高い多孔率を有する。本発明によるコラーゲンマトリックス自体が既に、その中に含有される放出され得る可溶性コラーゲン、ペプチドおよびタンパク質成分のために、創傷治癒プロセスに積極的な影響を及ぼすことは追加の利点である。
【0158】
本発明によるコラーゲンマトリックスは、特に同様に低い残留エポキシ活性に対応するそれらの高い生体適合性、ならびにそれらが含有する放出され得る可溶性コラーゲン、ペプチドおよびタンパク質成分のために、特に適合する。
【0159】
本発明による架橋したコラーゲンマトリックスの上述した好ましい適用分野のために、それらは好ましくは層状のマスク、シート、マトリックス、ドレッシング、パッド、層の形態または類似の平坦な形態にある。そのような層状の形態は、特に皮膚の大きな罹患領域の外部からの平面の治療に適合する。
【0160】
また別の可能性のある実施形態では、そのような層状コラーゲンマトリックスは、さらにまた完全もしくは部分的に積層化されている、つまり相互に結合した多層(サンドイッチ層)の形態で存在していてよい。例えば接着剤接着、高温積層化、架橋結合などの従来法によって本発明の範囲内で担体材料にしっかりと結合させることのできる、先行技術から公知の従来型材料、例えば、適切な材料、例えばレーヨン、セルロース、ポリエチレン(PE)もしくはポリウレタン(PU)またはその他の合成もしくは半合成ポリマー/コポリマー類の繊維、不織布、網、フィルムまたはホイルをラミネートとして使用できる。そのような積層化は、本発明による層状コラーゲン材料の機械的安定性を追加して増加させるため、ならびに特に湿潤状態にある薬物適用中のそれらの取り扱いを改善するために、特に適合する。好ましい積層化は、粘着性層もしくは好ましくは粘着性ラミネート層が全体として、または部分的に辺縁でコラーゲン材料を越えて突き出て、積層化コラーゲン材料は、従来型プラスター配列に類似して、辺縁で突き出る粘着性積層化によって治療対象の皮膚の領域に容易に固定できるような方法で層状コラーゲン材料に適用される層状プラスター材料を用いた積層化を含んでいる。そのような粘着性の積層化コラーゲン材料の場合には、特に好ましいのは、皮膚によって特に良好に忍容され、刺激およびアレルギーを誘発する傾向が低く、粘着層の除去時に既に損傷もしくは刺激されている可能性のある皮膚の領域に追加の損傷を引き起こさないために取り除くのが容易な粘着性積層化コーティングである。所望の使用分野に依存して、そのような積層化は、閉塞性、半閉塞性または親水性および非閉塞性であってよいが、好ましいのは、使用するために積層化コラーゲン材料の水和を許容するために親水性、非閉塞性またはせいぜい(「せいぜいさらに」の意味で)半閉塞性の積層化である。さらに、そのような粘着性の積層化コーティングを選択する場合は、材料を湿潤化させたときに接着剤が溶解されることがなく、したがって接着もしくは固定作用が失われることがないように、接着層が非水溶性であることが保証されなければならない。
【0161】
したがって、本発明はさらに、全体または部分的に層状コラーゲン材料に、辺縁でともに終了する、または全体もしくは部分的に辺縁で該コラーゲン材料を越えて突き出るような方法で適用される繊維、不織布、網、フィルムもしくはホイルまたは粘着層が用意されている特に層状の架橋したコラーゲン材料を含んでいる。
【0162】
上述したように、本発明によるコラーゲンマトリックスは、化粧用使用前および医学的使用前のどちらでも、事前に浸漬する、つまり完全に再水和させることができる。そのような浸漬もしくは再水和は、好ましくは水および任意で脱塩水もしくはいわゆる熱水、生理学的溶液および少なくとも1つの有効成分および/または補助物質を含有する水溶液を含む群から選択される水溶液を用いて実行される。浸漬または再水和のために使用する水溶液は、アクチベーター溶液とも呼ばれる。
【0163】
そのようなアクチベーター溶液は、例えば、調製プロセス、例えば凍結乾燥する工程のために、凍結乾燥材料内に導入してはならない、または導入することができない、例えばエーテル油、香料などの所定の分画などの易揮発性有効成分および/または補助物質の溶液であってよい。さらに、追加の水和作用、およびこの水和作用のため、または吸湿傾向のために、本発明による凍結乾燥コラーゲンマトリックス内に組み込むことのできない、または凍結乾燥コラーゲン材料自体の安定性、または存在する任意の水分不安定性有効成分の安定性をもはや維持できないためにほんの少量でしか組み込むことのできない有効成分および/または補助物質が存在する可能性がある。
【0164】
原理上は、上述した1つ以上の有効成分および/または補助物質がアクチベーター溶液中に存在してよい。詳細には、上述した1つ以上の好ましい有効成分または補助物質を含有する有効成分溶液は、特に本発明によると好ましい適応において治療使用するために適合する。
【0165】
特に好ましい実施形態では、ポリエーテル類、ポリエチレングリコール類(PEGs)、ポリプロピレングリコール類(PPGs)およびポリグリコール類(PGs)の群からの保存料および/または補助物質を実質的に含まないアクチベーター水溶液が使用される。
【0166】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本発明のエポキシ架橋コラーゲン材料は、関連する空間的配置(複合製剤、適用キット、セット、部品のキットなど)でアクチベーター溶液とともに存在する。そのような複合製剤または部品のキットの配置は、好ましくは少なくとも1つの、好ましくは層状ドレッシング、パッドもしくはマスクの形態にある本発明によるコラーゲンマトリックス、ならびに1つ以上の有効成分および/または少なくとも1つ以上の補助物質(アクチベーター溶液)を含有することのできる少なくとも1つの水溶液を含んでいる。
【0167】
一方では本発明によるコラーゲン材料のそのような複合製剤または部品のキットの構成および他方ではアクチベーター溶液は、別個に部品のキットの配置から取り出し、その後に使用するためにその外側で結合できる2つの成分を提供することができる。しかしまた、部品のキットの包装自体の中で、例えばそのために提供されたチャンバー内でそれらの成分を結合し、次に再水和させた組成物を次にさらに外用または経皮使用のためにそこから直接に持ち出すことも想定できる。これは、好ましくは最終使用者が直接的に実施することができる。
【0168】
以下の実施例では、本発明を極めて詳細に説明する。
【実施例1】
【0169】
調製例1a
エポキシド架橋を備える純粋コラーゲンマトリックス
(5%エポキシド架橋剤/乾燥質量)
また別の可溶性タンパク質もしくはペプチド成分、有効成分および/または補助物質を添加せずに、コラーゲン懸濁液の乾燥質量に基づいて5%の量のエポキシド架橋剤を使用する、本発明によるエポキシ架橋コラーゲンバイオマトリックスを調製するための実施例。
【0170】
a)独国特許第4048622A1号および特に独国特許第10350654A1号に記載のプロセスによって調製する、3,000gのコラーゲン懸濁液(乾燥コラーゲン含量:1.6%、コラーゲン含量:48g)の準備。
【0171】
b)コラーゲン懸濁液のpH値のpH3.3への調整。
【0172】
c)(削除)
d)10℃未満の温度で、2.4gの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE、Sigma−Aldrich社)を、600rpsでパドル攪拌器(eurostar、IKA社製)を用いて攪拌しながら5分間以内にコラーゲン懸濁液に滴下する。生じた塊は約750gずつ真空ミキサー(Smartmix、Amann/Girrbach社)中で脱気させる。
【0173】
e)架橋剤中での混合2時間以内に、脱気させた懸濁液をシート状に注ぎ出して凍結させ、コラーゲン懸濁液は凍結するまで<18℃の温度で維持する。
【0174】
f)凍結した塊をその後24時間にわたり−20℃で貯蔵し、次に凍結乾燥する工程にかけるが、凍結乾燥温度は100℃未満に維持する。
【0175】
g)凍結乾燥コラーゲンマトリックスは、24〜48時間にわたり60〜70%の相対湿度で、乾燥したコラーゲンマトリックスに基づいて25%までの含水量に再水和させる。
【0176】
h)このようにして得られたコラーゲンマトリックスを1〜2mmの層に分割し、加工処理し、任意でガンマ線滅菌(20kGy)にかける。
【0177】
調製例1b
エポキシド架橋を備える純粋コラーゲンマトリックス
(10%エポキシド架橋剤/乾燥質量)
また別の可溶性タンパク質もしくはペプチド成分、有効成分および/または補助物質を添加せずに、コラーゲン懸濁液の乾燥質量に基づいて10%の量のエポキシド架橋剤を使用する、本発明によるエポキシド架橋コラーゲンバイオマトリックスを調製するための実施例
この調製は、調製例1aと同様に実施するが、工程d)では、4.8gの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE、Sigma−Aldrich社)を加え、工程g)では再水和を96時間まで実施する。
【実施例2】
【0178】
調製例2a
マトリックスタンパク質(エラスチン加水分解物)の群からの追加の可溶性タンパク質成分を備えるエポキシド架橋コラーゲンマトリックス
(5%エポキシド架橋剤/乾燥質量)
また別の可溶性タンパク質/ペプチド成分(マトリックスタンパク質:エラスチン)を添加して、コラーゲン懸濁液の乾燥質量に基づいて5%の量のエポキシド架橋剤を使用する、本発明によるエポキシ架橋コラーゲンバイオマトリックスを調製するための実施例。
【0179】
a)独国特許第4048622A1号および特に独国特許第10350654A1号に記載のプロセスによって調製する、3,000gのコラーゲン懸濁液(乾燥コラーゲン含量:1.6%、コラーゲン含量:48g)の準備。
【0180】
b)コラーゲン懸濁液のpH値のpH3.3への調整。
【0181】
c)10℃未満の温度で、2.4gの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE、Sigma−Aldrich社)を、550rpsでパドル攪拌器(eurostar、IKA(登録商標)を用いて攪拌しながら5分間以内にコラーゲン懸濁液に滴下する。
【0182】
d)次に同一条件下で30gのエラスチン加水分解物(Elastin spezial B1N、GfN、Naturextrakten GmbH社)の添加。生じた塊(水性コラーゲン混合物)を約750gずつ真空ミキサー(Smartmix、Amann/Girrbach社)中で5分間ずつ2回脱気させる。
【0183】
e)架橋剤およびエラスチン加水分解物中での混合2時間以内に、脱気させた懸濁液をシート状に注ぎ出して凍結させ、コラーゲン懸濁液は凍結するまで<10℃の温度で維持する。
【0184】
f)凍結した塊をその後24時間にわたり−20℃で貯蔵し、次に凍結乾燥する工程にかけるが、凍結乾燥温度は100℃未満に維持する。
【0185】
g)凍結乾燥コラーゲンマトリックスは、24〜48時間にわたり60〜70%の相対湿度で、乾燥したコラーゲンマトリックスに基づいて25%までの含水量に再水和させる。
【0186】
h)このようにして得られたコラーゲンマトリックスを1〜2mmの層に分割し、加工処理し、任意でガンマ線滅菌(20kGy)にかける。
【0187】
調製例2b
マトリックスタンパク質(エラスチン加水分解物)の群からの追加の可溶性タンパク質成分を備えるエポキシド架橋コラーゲンマトリックス
(10%エポキシド架橋剤/乾燥質量)
また別の可溶性タンパク質/ペプチド成分(マトリックスタンパク質:エラスチン)を添加して、コラーゲン懸濁液の乾燥質量に基づいて10%の量のエポキシド架橋剤を使用する、本発明によるエポキシ架橋コラーゲンバイオマトリックスを調製するための実施例。
【0188】
この調製は、調製例2aと同様に実施するが、工程c)では、4.8gの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE、Sigma−Aldrich社)を加え、工程g)では再水和を96時間まで実施する。
【実施例3】
【0189】
調製例3
化粧品用脂質および油(トリグリセリドルイ/中性油)の群からの追加の有効成分/補助物質を備えるエポキシド架橋コラーゲンマトリックス
(4.8%エポキシド架橋剤/乾燥質量)
脂質および油(トリグリセリド類/中性油)の群からのまた別の有効成分/補助物質を添加して、コラーゲン懸濁液の乾燥質量に基づいて4.8%の量のエポキシド架橋剤を使用する、本発明によるエポキシ架橋コラーゲンバイオマトリックスを調製するための実施例。
【0190】
a)独国特許第4048622A1号および特に独国特許第10350654A1号に記載のプロセスによって調製する、3,900gのコラーゲン懸濁液(乾燥コラーゲン含量:1.6%、コラーゲン含量:62.4g)の準備。
【0191】
b)コラーゲン懸濁液のpH値のpH3.3への調整。
【0192】
c)10℃未満の温度で、2.95gの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE、Sigma−Aldrich社)を、550rpsでパドル攪拌器(eurostar、IKA社)を用いて攪拌しながら5分間以内にコラーゲン懸濁液に滴下する。
【0193】
d)次に同一条件下で3.8gの中性油を添加する。生じた塊(水性コラーゲン混合物)を約750gずつ真空ミキサー(Smartmix、Amann/Girrbach社)中で5分間ずつ2回脱気させる。
【0194】
e)架橋剤および中性油中での混合2時間以内に、脱気させた懸濁液をシート状に注ぎ出して凍結させ、コラーゲン懸濁液は凍結するまで<10℃の温度で維持する。
【0195】
f)凍結した塊をその後24時間にわたり−20℃で貯蔵し、次に凍結乾燥する工程にかけるが、凍結乾燥温度は100℃未満に維持する。
【0196】
g)凍結乾燥コラーゲンマトリックスは、24〜48時間にわたり60〜70%の相対湿度で、乾燥したコラーゲンマトリックスに基づいて25%までの含水量に再水和させる。
【0197】
h)このようにして得られたコラーゲンマトリックスを1〜2mmの層に分割し、加工処理し、任意でガンマ線滅菌(20kGy)にかける。
【実施例4】
【0198】
可溶性タンパク質のSDS−PAGEによる定性的決定
簡単な説明:SDS−PAGE
SDS=ドデシル硫酸ナトリウム、洗剤、長鎖脂肪酸のナトリウム塩
PAGE=ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、アクリルアミドのポリマーゲル内での電気泳動法
電気泳動法:粒子の移動を生じさせる電圧の印加による、担体物質中での荷電粒子の分離。
【0199】
簡単な解説:>7のpHでのイオン性洗剤の添加によって、未荷電タンパク質は荷電粒子に変換させられ、これは電圧の印加によってゲル内で分離し、結果として移動距離に沿ってそれらのサイズおよび形状に基づいて電場を生じさせる。低質量のタンパク質は高質量の大きなタンパク質より急速に移動する。球状タンパク質は、細長い糸状タンパク質より急速に移動する。タンパク質群は、ゲル内でサイズにしたがって分離して細長い縞(バンドと呼ばれる)を形成するが、これは特殊染料を用いると視認できる。タンパク質またはタンパク質フラグメントのサイズは、参照物質(分子量標準物質=公知のサイズのタンパク質)と比較してそれらの移動距離に基づいて視覚的に評価される。
【0200】
適切な試験系は、市販で入手できる標準試験系、例えばBiorad社のCriterion系である:
Criterion XT Precast Gel 4〜12%アクリルアミド、
緩衝液系:Bis−Tris、12+2 Well Comb、1ウェル当たり45μL
ゲルの厚さ:1mm、製品番号345−0123 Bio Rad社
緩衝液B:Criterion XT Mes(緩衝液、20x)コントロール210007145
サンプル緩衝液:XTサンプル緩衝液;4x、10mLのコントロール310008088
完成したタンパク質ゲルの染色は、タンパク質感受性色素であるクマジンブルー(Coomassie Blue)に基づいて、すぐ使用できる試薬GelCode Blue Safe Stain(Thermo Scientific社)によって達成する。
【実施例5】
【0201】
可溶性タンパク質成分のBCA法による定量的決定
可溶性タンパク質成分のBCA法による検出は、タンパク質がアルカリ溶液中ではCu2+イオンと錯体を形成する(ビウレット反応)という事実に基づいている。この錯体のCu2+イオンは、Cuイオンに還元させられ、ビシンキノン酸(BCA)との紫色の錯体を形成する。この着色錯体の吸光度は、562nmでの分光分析によって測定される。還元は、システイン、チロシン、トリプトファンおよびペプチド結合の側鎖によって実施され、色形成(関係する基の酸化還元挙動)の強度は特に温度に左右されるので、本試験の感度は温度の変化によって修正することができる。
【0202】
適切な試験系は、市販で入手できる標準試験系、例えばPierce BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Scientific社)である。
【0203】
決定は、BSA(ウシ血清アルブミン)の標準溶液と比較して行われる。
【0204】
色発生のための反応条件:60℃、反応時間は1時間。
【0205】
試験結果:
図1は、コラーゲン懸濁液の乾燥質量に基づいて、エラスチン加水分解物を用いて熱脱水的にのみ架橋したコラーゲンマトリックス(100%)に比較して、各場合において5%および10%のエポキシ濃度で架橋した調製例2aおよび2bによる組成物に対応する、追加の可溶性マトリックスタンパク質(エラスチン加水分解物)を備えるエポキシ架橋コラーゲンマトリックス中の可溶性タンパク質成分のパーセンテージを示している(図面では、「未架橋」は熱脱水的に架橋した(つまり、化学的に架橋したのではない)コラーゲンマトリックスを意味する)。この図は明らかに、化学架橋にもかかわらず、材料中に高い比率の可溶性タンパク質成分およびマトリックスタンパク質が保持されていることを示している。この測定はさらに、試験した材料について、各場合に凍結乾燥した最終生成物に基づいて、可溶性タンパク質成分の以下の量÷重量を示した。
【0206】
エラスチンを用いて熱脱水的に架橋したコラーゲンマトリックス(「未架橋」):>15重量%
5%エポキシドを用いた調製例2a:>10重量%
10%エポキシドを用いた調製例2b:>4重量%
【実施例6】
【0207】
分解率の決定
コラゲナーゼ消化試験
コラーゲンマトリックスの酵素的安定性(分解安定性)の決定は、酵素のコラゲナーゼによるコラゲナーゼ繊維の分解に基づく方法によって実施される。この試験では、酵素コラゲナーゼ(PBS(リン酸緩衝食塩液)緩衝液中のクロストリジウム‐ヒストリチクム(1型)由来のコラゲナーゼ)によるコラーゲン繊維および原線維の分解が目的に合わせて制御された条件下で引き起こされ、規定の反応時間後に、分解物の量が、以下の実施例において詳細に記載するように、分光光度計におけるUV/VIS測定によって決定される。
【0208】
使用した化学薬品:
TRIS緩衝液:TRIZMA塩基(Fluka社製品番号93350 LOT 450756/1)、CaCl 6HO(Riedel de Haen社製品番号12074 LOT 12610)、
HCl 25%(Merck社製品番号1.00316.1000 LOT Z730816335)
EDTA溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物0.2mol/L(Fluka社製品番号03679 LOT 1104109 10505293)
コラゲナーゼ:Sigma C 688T LOT122k8607、700U/mg
コラーゲンマトリックス:例えば、調製例1〜3による
試薬の調製:
TRIS緩衝液0.1M/25mM CaCl
1.21gのTRIZMA塩基は、80mLのRO水中に0.55gのCaCl6HOと一緒に溶解させ、約1mLの25%hClを用いて7.4のpH値へ調整する。この溶液を次に100mLのメスフラスコに移し、RO水で残りを満たす。
【0209】
EDTA溶液0.2mol/L:
3.7224gのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物を50mLのRO水中に溶解させる(約30分間にわたりマグネチックスターラーを使用する)。
【0210】
酵素溶液:
5mgの酵素を1mLのTRIS緩衝液中に溶解させる。個別の試験のために、50または100U(荷電依存性容量、この場合は=35および70μL)を試験系に加える。
【0211】
酢酸0.95%:
0.95mLの氷酢酸にRO水を加えて1,000mLにする。
【0212】
手順:
半径10mmを有する試験片(乾燥重量約15mg)を厚さ2mmのコラーゲンシートから切断し、乾燥器内で12時間乾燥させる。これらのサンプルを2mLのエッペンドルフ(Eppendorf)試験管(Safe Lock試験管0030.120.094)に測り入れ、1.5mLのTRIS緩衝液を加える。35μLの酵素溶液を加えたらすぐに、サンプルをThermoblock(Stuart Scientific社製ブロックヒーター)内で37℃で硬度調節する。
【0213】
対応する消化時間(1.5時間、3時間、6時間および23時間)後、200μLのEDTA溶液をエッペンドルフ試験管に加え、18℃で40分間にわたり最大能力で遠心分離を実施する。7.5mLの0.95%氷酢酸を用いて希釈するために、800μLのアリコートを10mLの標準摺り合せ試験管(standard−ground test tubes)に移し、ストッパーで密封し、均質化の目的で左右に緩徐に動かす。
【0214】
光度測定:
測定は、234nmの波長でUV/VIS分光光度計で実施する。10mmの石英キュベットを使用する。800μLのTRIS緩衝液を伴う7.5mLの酢酸をブランク値として測定する。サンプルを測定する前に、対応する酵素溶液(この場合は:酢酸7.5mL中で800μLである、エッペンドルフ試験管中の1.5mLのTRIS緩衝液中の35μLの酵素溶液)をゼロ値として測定しなければならないが、その吸光度を図でのゼロ値(吸光度値、約0.0166)として設定する。
【0215】
絶対値を決定するために、較正溶液もまた調製し、上記の手順にしたがって測定する。
【0216】
較正溶液の調製:
0.1006gのコラーゲンは、233μLのコラゲナーゼ溶液を備える8mLのTRIS緩衝液(600Uに対応する)中において37℃で一晩で完全に分解した。翌日、1,333μLのEDTA溶液をこの溶液に加え、これをメスフラスコ中でTRIS緩衝液を用いて10mLにした。対応する容量のこの溶液を以下の表にしたがって、0.95%酢酸を用いて10mLに希釈し、この溶液の吸光度を234nmで測定した。
【表1】

【0217】
対応する較正曲線は一次方程式を有する。
【0218】
A(234nm)=0.0011c−0.0407(R=0.9983)。
【0219】
試験結果:
図2aは、調製例1aに記載の追加の成分を伴わないエポキシ架橋コラーゲンマトリックスおよび調製例2aに記載の追加の可溶性マトリックスタンパク質(エラスチン加水分解物)を伴うエポキシ架橋コラーゲンマトリックスの、エラスチン加水分解物を用いて熱脱水的にのみ架橋したコラーゲンマトリックス単独と比較した相対分解率(%)を示している(図面では、「未架橋」は熱脱水的に架橋した(つまり、化学的に架橋したのではない)コラーゲンマトリックスを意味する)。
【0220】
この図面は、本発明によるエポキシド架橋コラーゲン材料の分解率における減少(酵素的分解の減少)としての分解における改善を明らかに示している。
【0221】
6時間後に完全に溶解したマトリックスをこの場合には100%と設定した。吸光度値は、マトリックス10mgに対して標準化した。
【0222】
較正曲線を決定することによって、溶解した量の絶対値は吸光度曲線から計算することができる:
【表2】

【0223】
図2bは、23時間までの期間にわたって使用されたマトリックス10mgに標準化した溶解したマトリックスの対応する絶対濃度を示している。
【0224】
図2bは、分解のパーセンテージとして23時間までの期間にわたる分解の発生をさらに示している。したがって本発明によって架橋したコラーゲンマトリックスは、23時間にわたるコラゲナーゼ消化後でさえ化学的に未架橋のマトリックスより顕著に優れた分解安定性を示す。
【実施例7】
【0225】
加水分解安定性の決定
コラーゲンマトリックスの加水分解安定性は、規定のコラーゲン材料を水溶液中に入れ、それを50℃で貯蔵し、材料特性の変化を経時的に決定することによって試験する。
【0226】
加水分解安定性を試験するための水溶液の例は、以下の組成を有する:
【表3】

【0227】
調製法:
1)マグネチックスターラーを使用してガラス製ビーカー内でグリセロール、ペンタンジオールおよびRokonsal(商標)MEPを溶解させる
2)攪拌しながら、超純水(SHC 101)を用いて最終量の約98%までにする
3)NaClを加え、マグネチックスターラーを使用して溶解させる
4)1%クエン酸溶液を用いてpH値をpH5.0へ調整する
5)超純水(SHC 101)を用いて最終量にする
6)pH値をチェックし、必要であれば再びpH5.0へ調整する
加水分解安定性は、一方ではマトリックスの収縮によって引き起こされる表面積の減少を測定することによって決定できる。
【0228】
加水分解安定性は、さらに次式にしたがって決定される質量の減少によって決定することができる:
加水分解安定性(%)=Mtx×100/Mt0
(式中、Mtx=乾燥無傷/粘着性マトリックス材料の質量、
t0=試験開始前の乾燥マトリックス材料の質量)
試験結果:
加水分解安定性は、上述の条件下で、下記の表面積の減少を決定することによって試験した。
【0229】
a)>120℃の凍結乾燥温度で凍結乾燥させた、トリグリセリド類/中性油を含有する熱脱水的に架橋した(「未架橋」)コラーゲンマトリックス、
b)調製例3の本発明による(トリグリセリド類/中性油を含有する)エポキシ架橋コラーゲンマトリックス、および
c)>120℃の凍結乾燥温度で凍結乾燥させた、調製例3による組成物(トリグリセリド類/中性油を含有する)に対応するエポキシ架橋コラーゲンマトリックス(5%エポキシド/DM)
図3は、a)に記載の熱脱水的にのみ架橋したコラーゲン材料(「未架橋」)は選択された試験条件下でたった5日後に完全な加水分解(マトリックス構造の構造的分解)を示すが、他方b)に記載の本発明によるエポキシ架橋コラーゲンマトリックスの場合には、マトリックス内の構造的変化は同一条件下で18日後でさえ全く観察されないことを示している。時間的に同一時点に、c)に記載の>100℃の凍結乾燥温度で乾燥させたエポキシ架橋コラーゲン材料は、b)に記載の本発明による材料と比較して加水分解の開始(表面積の収縮)を示す。約4週間後、b)に記載の本発明によるマトリックスもまた加水分解の開始を示すが、より高い温度で乾燥させたc)に記載の材料はその時点には顕著に不良な加水分解安定性を示す。したがってこれらの結果は、凍結乾燥温度もまた加水分解安定性に影響及ぼすという事実を反映している。したがって、>100℃の凍結乾燥温度に曝露させたマトリックスは、本発明により製造した材料(<100℃の凍結乾燥温度)と比較して不良な加水分解安定性を示す。
【0230】
例として、図4は、上述した試験条件下で18日間にわたり保存した後のb)に記載の本発明によるマトリックスと比較してa)に記載の熱脱水的に架橋したマトリックスの加水分解度を示している。
【実施例8】
【0231】
湿潤引裂強度の決定
内測法(UV8801)
ダイによって引裂強度を決定するための方法(内測法UV8801)では、丸頭(径25mm)を有する金属製ダイが機械的試験機(Zwick材料試験機、BZ2.5/TN1S)を使用して本発明によるコラーゲンマトリックスの層状実施形態上に押し込まれ、ダイが通った軌跡および及ぼした力が記録される。
【0232】
決定のためには、厚さ1.5mmを有する層状コラーゲンマトリックスを8×8cmのサイズに切断し、試験機の試験片受容部に挿入し、その中で完全に湿潤させる。次に測定を開始すると、球状ダイは材料が引裂かれるまでサンプルに加圧する。
【0233】
材料が引裂かれる力は、電子データ記録によって記録され、計算して表示される。
【0234】
試験結果:
例として、図5は、熱脱水的にのみ架橋したコラーゲンマトリックス(100℃で乾燥させた未架橋であり、「未架橋」は熱脱水的にのみ架橋されている(すなわち、化学的架橋していない))と比較して、調製例1aに記載の組成を有するエポキシ架橋コラーゲンマトリックスの湿潤引裂強度(内測法UV8801による)における改善を示している。
【0235】
図5はさらに、凍結乾燥温度が湿潤引裂強度に及ぼす影響を示している。図によると、≧100℃の凍結乾燥温度または>100℃での後乾燥に曝露させたマトリックスは、本発明によって調製した材料より不良な湿潤引裂強度を示す。
【0236】
さらに、図6は、エポキシド架橋剤の濃度が湿潤引裂強度に及ぼす影響を追加して示している。エポキシド濃度が>5%(コラーゲン水性懸濁液/混合液のDMで)増加するにつれて、湿潤引裂強度は低下することが示されている。最適湿潤引裂強度は、5%〜10%のエポキシド濃度(DM)を用いる所定のプロセス条件下で達成される。この図は追加して、予想通りに、凍結乾燥温度が増加するにつれ熱脱水的にのみ架橋したコラーゲン材料の湿潤引裂強度の増加を証明している。
【0237】
図7は、コラーゲン水性懸濁液/混合液の凍結乾燥する工程前の待機時間およびそれによって維持された温度が湿潤引裂強度に及ぼす影響を示している。そこから長い待機時間および高い温度の両方がコラーゲン材料の湿潤引裂強度に不都合な影響を及ぼすことは明白である。
【0238】
試験したエポキシ架橋マトリックス材料は、全部が>400cN/mm(層厚)の湿潤引裂強度を示した。
【0239】
熱脱水的に架橋した材料は、<200cN/mm(層厚さ)の湿潤引裂強度を示した。
【実施例9】
【0240】
反応性エポキシ化合物の検出
残留エポキシ活性の決定
(NBPアッセイ)
残留エポキシ活性は、Zocher et al.(2000)「Epoxidehydrolase activity of Streptomyces strains」J.Biotechnol.Feb 17;77(2−3),p.287−292にしたがって修正されたAgarwal et al.(1979)Bull.Environm.Contam.Toxicol.23,p.825−829による「Detection of Epoxides with 4−(p−nitrobenzylpyridine)」に基づく修正NBPアッセイ(ニトロベンジル−ピリジンアッセイ)によって決定することができる。
【0241】
1.原理
本試験プロセスは、エポキシド類を用いて安定化させたバイオマトリックスの場合における凍結乾燥最終生成物中の可溶性反応性エポキシ化合物の定量的決定のために使用される。
【0242】
p−ニトロベンジルピリジンはアルキル化化合物(エポキシド類を包含する)と反応して、塩基と反応すると青色の難溶性色素に脱プロトン化される無色の難溶性塩が生じる。色の強度は、570nmの波長での分光分析によって検出することができる。
【0243】
2.試薬/化学薬品
パラ−ニトロベンジルピリジン(NBP)(Merck社、合成用)
エチレングリコール(Fluka社、工業用)
アセトン(Fluka社、UV分光分析用)
トリエチルアミン(Fluka、工業用)
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルまたはBDDGまたはエポキシド(Sigma Aldrich社、工業用)
RO水
抽出起源:
基質溶液:1gのNBPを5mLのエチレングリコールおよび1.25mLのアセトン中に50℃で溶解させる
(10サンプルのための十分な量)
塩基溶液:アセトン中の50%トリエチルアミン(v/v)
(10サンプルのために十分な量)
3.装置類
摺り合せガラス、摺り合せガラスストッパー、摺り合せガラスクランプを備える試験管またはネジ蓋付き50mLの実験室用フラスコ
高温キャビネットおよび加熱ブロック(50℃)
安全クロージャーまたはネジ込みクロージャーを備える2mL反応容器
ピペットチップと適合する、200μLおよび1,000μL用マイクロピペット(エッペンドルフ)
UV分光計(570nm)
1.5mLのディスポーザブルのプラスチック製キュベット(Plastikbrand社、製品番号7591 50)
4.試験片
1試験片に付き試験対象のコラーゲン材料を切断する(12mm)
(3片ずつ)1〜3ダイ
比較試験片:化学架橋剤を使用していない凍結乾燥バイオマトリックス(例えば、熱脱水的にのみ架橋したコラーゲンマトリックス)
5.手順
基質溶液:
各場合に10試験片に対して、1gのNBPを摺り合せガラスを備える試験管内に測り入れ、5mLのエチレングリコールおよび1.25mLのアセトンと混合する。より多数の標本については、量をそれに応じて増やし、ネジ蓋付きのフラスコを使用する。
【0244】
容器(摺り合せガラスストッパー/摺り合せクランプまたはネジ蓋付き)を注意深く密閉した後、基質混合物は、固体が完全に溶解するまで(1/2〜1時間)、時々左右に動かしながら高温キャビネット内で約50℃で加熱する。次に基質溶液を室温へ冷却する。塩は溶解したままとなる。
【0245】
塩基溶液:
試験管内の3mLのトリエチルアミンと3mLのアセトンを摺り合せガラスで密封し、混合する。
【0246】
較正曲線のための標準試験片の調製:
予備希釈:
0.001gまでの精度で1gのエポキシドを100mLのメスフラスコ内へパスツールピペット(ガラス製)によって直接測り入れ、RO水で100mLにし、完全に混合する(1:100)。
【0247】
正確に1,000μLの予備希釈液を1,000μLのピペットを使用して100mLのメスフラスコに移し、100mLにし、完全に混合する。これは、標準測定値(較正曲線)を作成するためのエポキシド希釈液(1:10,000)である。
【0248】
標準測定値:
2mL反応容器に比較材料(架橋剤なし)の等量の12mm片を加え、反応容器に表示する。200μLのピペットを使用して、様々な量のRO水を不織布に加え(量については表1のA列を参照されたい)、次に600μLの基質溶液を加える。
【表4】

【0249】
最後に−試験片が完成した後にのみ−エポキシド希釈液1:10,000(量については、表1のB列を参照されたい)を反応容器内の標準シリーズに加える。短時間、再び左右に動かす。
【0250】
試験材料:
1〜3片の試験対象の材料である12mm片を0.1mgまでの精度で2mL反応容器に3回ずつ測り入れ、200μLのRO水に浸漬させる。次に浸漬した試験片に600μLの基質溶液を加える。
【0251】
最初は濁っている懸濁液が透明になるまで、反応容器を緩徐にタッピングする。反応溶液が上部の下方にある場合は、短時間の遠心分離によって液体を底部に移動させる。全試験片は、注意深く密封し、50℃の高温キャビネット内または加熱ブロック内で1時間にわたりインキュベートする。
【0252】
室温に冷却し、次に600μLの基質溶液を加え、短時間振とうする。吸光度の測定は、10分以内に実施しなければならない。
【0253】
コラーゲン片の全上清は1,000μLのピペットを使用して取り出し、1.5mLプラスチック製キュベットへ移す。
【0254】
基質溶液の添加後10分以内に570nmで吸光度を測定する。
【0255】
測定プログラム:方法/濃度/ENBP
較正点:標準測定値50(=25nmolエポキシド)
平行ビームおよびブランク:空のプラスチック製キュベット
6.評価
反応性エポキシドの量は、較正曲線によって決定する(相関濃度/吸光度)。測定結果を試験したマトリックス材料の最初に計量した量と関連付けると下記が得られる:
エポキシドの含量:ng/mg(コラーゲン)
試験結果:
例として、図8は、調製例1aに記載のマトリックスに基づいて本発明によって調製されたコラーゲン材料の残留エポキシド活性および凍結乾燥する工程後の経時的な指数関数的減少(分解曲線)を示している。そこで試験されたマトリックスは、60℃を超えない凍結乾燥温度で乾燥させた。この図は追加して、特に再水和条件が残留エポキシド活性の減少に及ぼす影響を示している。本試験のために、コラーゲン材料は凍結乾燥する工程の直後に制御された気候条件下で再水和させた。下記の再水和期間
a)24時間、
b)48時間、
c)72時間、および
d)96時間
に伴う材料の残留活性の減少を比較した。
【0256】
この決定は、各場合において再水和の完了直後に実施した。サンプルa)だけは、初回測定を実施する前に通常周囲条件下で24時間にわたり貯蔵した。そこでa)およびb)の試験片については48時間(2日間)後、a)、b)およびc)の試験片については72時間(3日間)後、a)、b)、c)およびd)の試験片については96時間(4日間)後、ならびにa)〜d)の全試験片については168時間(7日間)後および336時間(14日間)後の指示測定点が得られた。
【0257】
残留エポキシド活性は、再水和期間が増加するにつれて、顕著に迅速に激減し、もはや検出できないレベルに低下する可能性があることは明白である。
【実施例10】
【0258】
調製例3に記載のエポキシ架橋コラーゲン材料についてのインビトロ細胞毒性試験(XTT試験)
1.装置および方法
1.1試験材料:
調製例3に記載の凍結乾燥エポキシ架橋コラーゲン材料
1.2.抽出物の調製
試験材料から、3枚の相違するコラーゲンシートから同一サイズ(9.6cm)の試験片を切断した。切断した試験片は37±1.5℃で24時間にわたり、振とうしながら10% FCS(Gibco、Invitrogen社、製品番号10270−106)、1mMピルビン酸ナトリウム、4mNのL−グルタミンおよび100μg/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを補給した9.6mLの細胞培養培地(RPMI1640培地)(完全培地)中で抽出した。陽性および陰性コントロールは同一方法で抽出した。
【0259】
試験材料は、3cm/mLの表面積/容積比でISO10993−12に準拠して抽出した。
【0260】
1.3.コントロール
事前に陰性および陽性コントロールの抽出物をより多量に調製し、−20℃で貯蔵した。処理の直前に100%抽出物を解凍して希釈した。陰性および陽性コントロールは、6cm/mLの表面積/容積比でISO10993−12に準拠して完全培地中で抽出した。
【0261】
1.3.1陰性コントロール
RM−C(高密度ポリエチレン)
製造業者:秦野研究所(Hatano Research Institute)、秦野市/日本国(Hatano/Japan)
ロット:C − 042
1.3.2陽性コントロール
名称ラテックス
供給業者:VWR International GmbH(64295ダルムシュタット、独国(Darmstadt,Germany))
ロット:03200694110385
1.4試験系
1.4.1細胞系L929を選択するための基準
ATCC、CCL1 NCTCクローン929細胞系(L系統のクローン、マウス結合組織)は、インビトロ実験において長年にわたり上首尾で使用されてきた。特に、高い増殖率(倍増時間:16時間、1992年10月22日に測定)および未処理細胞の優れた生存性(一般には70%を超える)は、どちらも試験の適切な実行のために不可欠であり、この細胞系の選択に有利な態様であった。
【0262】
1.4.2細胞培養
多量のL929細胞系(供給業者:LMP、ダルムシュタット工科大学、D−64287ダルムシュタット)は、実験での同一細胞培養バッチの反復使用を許容するHarlan Cytotest Cell Research社の細胞バンクの液体窒素中に保管されていた。結果として、これらの細胞の再現性特性のおかげで、実験において一定パラメーターを維持することが保証される。
【0263】
解凍した幹細胞培養は、37±1.5℃のプラスチック製ボトル(Greiner社、D−72634フリッケンハウゼン)内で増殖させ、培養は6mLの完全培地中で約2×10 cells/培養ボトルを用いて実施した。細胞は週2回継代培養した。細胞培養は、37±1.5℃、5.0±0.5%の二酸化炭素雰囲気中でインキュベートした。
【0264】
1.5試験群
1.5.1 培地コントロール:完全培地
1.5.2.陰性コントロール:RM−C
24時間にわたり完全培地を用いて抽出した、100%抽出物
1.5.3.陽性コントロール:ラテックス
24時間にわたり完全培地を用いて抽出した;3%抽出物、10%抽出物、30%抽出物、70%抽出物、100%抽出物
1.5.4.試験材料:調製例3に記載のコラーゲンマトリックス
24時間にわたり完全培地を用いて抽出した;3%抽出物、10%抽出物、30%抽出物、100%抽出物
1.6試験手順
1.6.1.細胞の培養
50%を超えるコンフルエントへ指数関数的に増殖する幹細胞は、Ca−Mg無含有塩溶液ですすぎ洗いし、トリプシンを用いて37±1℃で5分間にわたり処理した(Gibco BRLトリプシン/EDTA溶液、10×、製品番号35400−019)。次に酵素的溶解は完全培地を添加して停止させ、単細胞懸濁液を調製した。
【0265】
Ca−Mg無含有塩溶液は、以下の組成(1リットル当たり)を有していた:
NaCl8,000mg
KCl400mg
グルコース1,000mg
NaHCO350mg
約15,000個の細胞を含有する0.1mLの培地を96ウェル細胞培養マイクロタイタープレート(Greiner社)の個別ウェルに加えた。培地は完全培地であった。
【0266】
プレートは、細胞接着を可能にするために24時間にわたりインキュベートした。
【0267】
1.6.2処理
次に培地を取り除き、0.1モルの処理培地を細胞に加えたが、処理培地は様々な濃度の試験材料の抽出物、陰性および陽性コントロール抽出物および培地コントロールを含有していた。
【0268】
全インキュベーションは、5.0±0.5%のCO雰囲気中の37±1.5℃で実施した。
【0269】
1.6.3XTT標識化および測定
24時間のインキュベーション時間後に、50μLのXTT標識化混合物を加えた。混合物はXTT標識化試薬および電子結合試薬を含有する(体積比1:100)。細胞を約1時間35分間インキュベートし、次に吸光度を測定する(参照波長690nm)ための450nmフィルターを装備したマイクロプレートリーダー(Versamax(登録商標)Molecular Devices、D−85737イスマニング)に移した。
【0270】
1.7データの記録
生成されたデータは、生データとして記録した。結果は、試験材料を含む試験群、陰性培地およびコントロール群を含有する表の形態で示した。
【0271】
1.8結果の評価
生存細胞の数の減少は、サンプル中のミトコンドリアデヒドロゲナーゼの全活性における減少を生じさせる。この減少は、吸光度によって測定される、生成されたオレンジホルマザン(orange formazan)の量と直接相関している。用量依存性細胞毒性反応についての結果は、算術平均値±標準偏差として示すことができる。培地コントロール(XTT50)に比較して吸光度を50%減少させるために必要な毒性材料の濃度を計算するために、以下の式を使用した:
【化5】

【0272】
a)Conc.>50=培地コントロールに比して>50%の最大測定濃度(%)
b)Conc.<50=培地コントロールに比して<50%の最小測定濃度(%)
c)%>50=a)での相対吸光度(%)
d)%<50=b)での相対吸光度(%)
XTT50値が小さいほど、試験材料の細胞傷害能が高い。
【0273】
培地コントロールの<70%および≧50%への生存性の減少は低細胞毒性を意味する。生存性の減少が培地コントロールの<50%である場合は、細胞傷害能が存在する。
【0274】
2.結果
2.1.結果の表
完全培地中での24時間の抽出後の結果
【表5】

【0275】
指示した吸光度は丸めた数値を示している。相対吸光度は、正確な吸光度値を使用して計算した。
【0276】
影付きの試験群は、処理後の顕微鏡検査が細胞毒性の発生に起因して細胞内での形態学的変化を示した時点の試験材料濃度を表している。
【0277】
*7ウェルの平均(絶対)吸光度
**相対吸光度[丸めた数値]:
【化6】

【0278】
試験材料のXTT50値は、細胞の生存性が関連方法で減少しなかったために計算することができなかった。
【0279】
陽性コントロールのXTT50値:16.3%(v/v)
3.考察
このインビトロ試験は、調製例3に記載の凍結乾燥エポキシ架橋コラーゲン材料の細胞傷害能をマウス細胞系L929を使用するXTT試験によって調査するために実施した。
【0280】
同一試験片(9.6cm)を3種の試験材料から切断し、切断試験片は上述したように抽出した。
【0281】
以下の濃度の試験抽出物を試験した:
3%、10%、30%および100%(v/v)
以下の濃度の抽出物(陽性コントロール)を試験した:
3%、10%、30%、70%および100%(v/v)
培地コントロール(完全培地)と陰性コントロール(抽出した陰性コントロールRM−C)との間で重要な差は観察できなかった。
【0282】
陽性コントロール(ラテックス)は、細胞生存性および細胞増殖における顕著な用量依存性減少を示した。未希釈参照標準抽出物(100%)を用いると、各ウェル内で細胞生存性および/または細胞増殖の約1.81%の減少が見いだされた。計算XTT50値は、16.3%(v/v)である。
【0283】
インキュベーション後の細胞毒性作用は、調製例3に記載のコラーゲン材料の試験抽出物のいずれにおいても観察できなかった。XTT50値は、細胞の生存性が関連方法で減少しなかったために計算することができなかった。
【0284】
4.結果
要約すると、上述の実験条件下での本試験の状況内では、調製例3に記載の試験材料の抽出物は、最高試験濃度までのすべてで細胞傷害能を全く証明しなかった。
【実施例11】
【0285】
調製例2aおよび2bに記載のエポキシ架橋コラーゲン材料の剛性/弾性係数Eの測定(Stok et al.;J Biomed Mater Res;2009による)
(5%および10%エポキシド架橋剤/乾燥質量)
剛性は、Stok et al.2009にしたがって、5N力センサーを備える材料試験機(Zwick/Roell 1456、ウルム)を使用する圧縮試験によって測定した。試験ダイに適切なサイズはSpilker et al.;Journal of Biomechanical Engineering,series 114,H.2,p.191−201;1992にしたがって計算した;直径は1.38mmであった。試験片は、マイクロ座標表上のホルダー内に配置し(図を参照)、PBSの層で被覆した。プレキシガラス製のカバーは、サンプルが上方向に曲がるのを防止した。
【0286】
ダイは試験片の厚さの5%、15%および25%の深さへ試験片内に段階的に移動させ、試験系が弛緩するまで保持した。弾性係数は3回の加圧工程の平衡相の最終10回の数値の平均値から決定した:
弾性係数[kPa]は、歪み(x)および応力(y)の勾配である。
【0287】
歪み=圧入深さ[mm]/試験片の厚さ[mm]
応力=力[mN]/ダイの表面積[mm
試験片は少なくとも15分間にわたりPBS中に浸漬し、ホルダー内に配置し、そこに放置して少なくとも5分間にわたりPBS層で被覆する。サンプルの表面積は、センサーが0.1mNの抵抗を検出する位置であると規定した。E値の決定は、3回ずつの測定によって実施した(n=3)。
【0288】
試験配置は、例として図9に示した:
結果:
調製例2aに記載のコラーゲンマトリックス(5%エポキシド)は、9kPaの剛性を示す。
【0289】
調製例2bに記載のコラーゲンマトリックス(10%エポキシド)は、22kPaの剛性を示す。
【0290】
未架橋(熱脱水架橋)コラーゲン−エラスチンマトリックスは、6kPaの剛性しか示さなかった。
【実施例12】
【0291】
架橋したコラーゲンマトリックスの使用
調製例1〜3に記載の本発明による材料は、化粧品および医薬品として使用するために特に適合する。
【0292】
適用例12a
化粧品用マスクとしての使用
治療のために、調製例1〜3に記載の本発明による材料を治療対象の皮膚領域の所望の形状およびサイズに切断し、
a)治療対象の皮膚上に乾燥状態で配置するか、または飽和するまで水もしくはアクチベーター溶液を用いて湿潤させることで再水和させる、または
b)皮膚上に配置する前に飽和するまで水もしくはアクチベーター溶液に浸漬させ、その後に治療対象の皮膚の領域上に再水和状態で配置する。
【0293】
再水和したコラーゲンドレッシング類は、およそ20〜30分間の期間にわたり皮膚の治療領域に放置した。
【0294】
この治療中に、存在する赤みもしくは刺激、ならびに存在する掻痒の顕著な緩和、よりみずみずしい外観、より大きな皮膚弾性および改善された皮膚の水和が生じた。
【0295】
適用例12b
皮下インプラントとしての使用
調製例1〜2に記載の本発明による材料は形成外科または再建外科の分野における皮下インプラントとして、例えば顔面中央の領域における様々な原因に続発性の皮膚量消失の場合における容積構築の再建を目的として、例えば腫瘍手術後、または関係する身体部分とは無関係の外傷後に必要とされる鼻形成術手技ならびに審美的再建手術のために使用することができる。
【0296】
移植前に、乾燥状態にある材料は、切断して皮膚の下の領域に適切に適応させることができる。
【0297】
マトリックスが準備された皮膚ポケット内に導入される前に、本材料は大量の無菌生理的食塩液もしくはリンガー液(Ringer’s solution)中で再水和させなければならない。準備された皮下皮膚ポケット内への本マトリックスの挿入は、無菌生理的食塩液もしくはリンガー液中での本マトリックスの再水和が完了したら直ちに迅速に実施する。創傷閉鎖は、手術手技にしたがって適応させなければならず、治療担当医師が決定しなければならない。
【0298】
マトリックスの作用:
移植時に、マトリックスは足場として作用し、構築中の皮膚組織に含まれる細胞の内方増殖を可能にする。
【0299】
移動した細胞は治癒プロセス中に自家組織構造を合成するので、挿入されたインプラントの領域内の体積の所望の増加を提供する。
【0300】
組織新生が進行するにつれて、マトリックスの構造は完全に吸収されてリモデリングされることができる。
【0301】
天然の構造的に完全なコラーゲン鋳型は、細胞および血管の内方増殖を促進するために特に適合する;これは結果として、組織再生を支援する。相違する組織層間に配置したマトリックスの使用は、癒着形成および続発性拘縮に対して予防的に作用する。
【0302】
適用例12c
代用皮膚(インプラント)としての使用
(急性および慢性創傷)
調製例1〜2に記載の本発明による材料は、移植を必要とする火傷手術、形成−再建外科および治癒不良創傷(例、慢性創傷)の治療において、深部皮膚欠損および全層皮膚創傷の症例で自家分割皮膚移植片と組み合わせて真皮構築のために使用できる。
【0303】
適用:
対応する材料片を無菌状態で放送から取り出し、皮膚欠損部に合わせて大まかに切断する。
【0304】
乾燥材料を次に創傷上に配置し、胃用クロス(stomach cloth)によって最初に創傷領域内に押し入れる。
【0305】
材料を創傷液に浸し、空気穴が形成されるリスクが生じないように創傷床に接着する。辺縁は、約2mmの細い重なり部を残して円に切断する。
【0306】
本材料が創傷領域に適正に据えられたら、食塩液をシリンジによって注意深く適用する;食塩液に漬けた高度に湿潤した胃用クロスを適用し、数分間放置することができる。この時間後には、材料は完全に再水和され、事前の配置にしたがって創傷床内に正確に置かれる。
【0307】
創傷領域内への分割皮膚の移植は、材料上で直接的に実施する。分割皮膚と一緒の材料の追加の固定は、縫合またはステープルによって達成する。マトリックスが後になっても分割皮膚移植片で被覆されない場合は、確実にそれが完全に乾いてしまわないようにしなければならない。このためには、生理的食塩液に漬けた非粘着性ガーゼが適合する。
【0308】
創傷を被覆するためには、湿潤創傷環境を確保するために非閉塞性シリコンホイルまたは複数層の有効成分を含まないガーゼを使用することが推奨される。このためには、実際には5〜6層の脂肪ガーゼと3〜4層のガーゼ包帯を組み合わせた緊密な包帯の使用が有益であることが見いだされている。包帯技術は、分割皮膚、本マトリックスおよび創傷ベースの間の良好な接触を保証し、剪断力を吸収するように設計されなければならない。治療される創傷への真空包帯の適用は、各特定の場合に医師の裁量によって決定される。多くの場合、優れた結果はこの包帯技術によって達成されてきた。
【0309】
治療の目的は、修復された皮膚の質を改善するために、新真皮を構築することである。瘢痕形成を減少させ、創傷拘縮を予防しなければならない。
【0310】
適用例12d
止血剤としての使用
(急性および慢性創傷)
調製例1および2に記載の本発明による材料は、好ましくは、例えば内臓手術、心胸郭血管手術、神経手術、上顎手術および一般口腔病学、ENT、鼻尿器学および婦人科学における静脈および広汎性出血を伴う手術において局所投与のための止血剤として使用することができる。
【0311】
本材料は、好ましくはスワブで消毒した創傷上に乾燥状態で配置され、それに少し形を合わせられるが、さらにまた使用前に湿潤させることもできる。より重度の出血がある場合は、湿布を用いてタンポナーデ処置を実施することができる。大きな創傷領域には数枚の材料片を用意する;小さな領域には、材料はハサミで適切に切断することができる。
【0312】
作用様式:
本材料は、自重の数倍の液体を吸収する。血小板が大きな内面で凝集するので、凝固因子の遊離によって局所止血に寄与する。形成される繊維素は、コラーゲンマトリックスを創傷基部に固定するので、安定性の創傷閉鎖を形成する。
【0313】
この治療によって迅速な止血を達成できる。
【0314】
適用例12e
浸出性創傷用の皮膚/経皮創傷ドレッシングとしての使用
(慢性創傷)
調製例1および2に記載の本発明による材料は、局所的相互作用創傷治療のための創傷ドレッシングとして使用することができる。最適な作用のためには、材料は創傷床全体に直接適用しなければならない。滲出を全くまたはわずかにしか伴わない創傷では、本材料は食塩液またはリンガー液で再水和させることができる。
【0315】
創傷ドレッシングは、湿潤創傷治癒環境を維持するために、適切な二次包帯で被覆しなければならない。最初の適用後、創傷は、72時間まで浸出液の程度に依存した間隔で再度治療されなければならない。任意の非吸収性マトリックスは、創傷内に残留することができる。
【0316】
作用様式:
本材料は自重の数倍の液体を吸収することができるので、このため創傷液を管理するために素晴らしく適合する。創傷分泌液を吸収できると、創傷から押し出された壊死組織、細菌および繊維素被膜もまた吸収することができ、その結果として顆粒組織の形成を支援して促進することができる。どちらの作用も創傷治癒の促進に寄与する。
【0317】
適用例12f
真空支援創傷治療療法における使用
(慢性創傷)
使用するために、調製例1および2に記載の本発明による材料は、乾燥状態で治療対象の身体部分または創傷に適用し、本材料は必要であれば創傷の形状に切断する。本材料は、次に存在する創傷液または水溶液もしくは生理的食塩液のいずれかに完全に漬け、再水和させる。さらに、それらを治療対象の身体部分に適用する前に、本発明による材料を湿潤させることができる。
【0318】
この創傷は、次に従来型真空気密被覆ホイルを用いて気密方法で閉鎖する。適切な真空の適用後、創傷液は創傷流体を運び去るための従来型機器(ドレナージ装置)によって従来型真空療法プロセスによって取り出される。
【0319】
この治療によって、創傷表面積の減少、創傷辺縁の拘縮、顆粒組織形成の増強およびさらに、創傷治癒の加速を達成することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋したコラーゲンマトリックスを調製するための方法であって、
a)コラーゲン水性懸濁液を調製する工程と、
b)工程a)からの前記コラーゲン懸濁液のpH値をpH<4へ調整する工程と、
c)任意で他の構造形成剤、有効成分および/または補助物質を加える工程と、
d)エポキシ官能性架橋剤を加える工程であって、但し、工程c)とd)の順序は変えられ、
e)工程d)から得られる前記コラーゲン混合液を凍結させる工程と、
f)工程e)からの凍結した前記混合物を<100℃の凍結乾燥温度で凍結乾燥する工程と、
g)任意でそのように得ることのできる前記凍結乾燥架橋したコラーゲン材料の含水量を最終生成物に基づいて25重量%までに調整する工程と、
h)任意で工程g)から得られる前記材料を所望の形態に変換させ、滅菌および/または加工処理する工程とを含む前記方法。
【請求項2】
工程a)からの前記コラーゲン懸濁液は繊維および原線維の形状にある天然酸不溶性コラーゲンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コラーゲン懸濁液は、酸可溶性コラーゲンおよびペプチド成分を含む、および/または工程c)においてマトリックスタンパク質、細胞外マトリックス成分、タンパク質を構成する有効成分および可溶性タンパク質もしくはペプチド成分の群から選択される有効成分または構造形成剤が加えられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記エポキシ官能性架橋剤は、例えば特に1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)などのジエポキシド類から選択される、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記エポキシ官能性架橋剤は、工程a)からの前記コラーゲン懸濁液の乾燥質量に基づいて50重量%以下の量で加えられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程e)に記載の前記凍結する工程は、工程d)からの前記コラーゲン混合液の調製の24時間以内に実施される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって得られる架橋したコラーゲンマトリックス。
【請求項8】
使用時に放出されることができ、BCA法により検出可能であり、好ましくは、凍結乾燥コラーゲンマトリックスに基づいて、BCA法にしたがって測定した全体に占める量が少なくとも0.1%の量である、未架橋酸可溶性コラーゲンおよび/またはペプチド成分および/または構造形成剤、またはマトリックスタンパク質、細胞外マトリックス成分、タンパク質を構成する有効成分および可溶性タンパク質もしくはペプチド成分の群から選択される有効成分を含有する凍結乾燥エポキシ架橋コラーゲンマトリックス。
【請求項9】
DIN EN ISO 3376によって測定して>50cN/mm(層厚さ)、またはUV8801法によって測定して>200cN/mm(層厚さ)の湿潤引裂強度を有する、請求項7もしくは8のいずれかに記載の凍結乾燥エポキシ架橋結合コラーゲンマトリックスまたは請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって得られるコラーゲンマトリックス。
【請求項10】
少なくとも1つの他の構造形成剤、少なくとも1つの化粧品用もしくは医薬品用有効成分および/または少なくとも1つの補助物質を含有する請求項7〜9のいずれか一項に記載の凍結乾燥エポキシ架橋結合コラーゲンマトリックスまたは請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって得られるコラーゲンマトリックス。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか一項に記載の凍結乾燥エポキシ架橋結合コラーゲンマトリックスまたは請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって得られるコラーゲンマトリックスであって、層状ドレッシング、シート、パッドまたはマスクの形態であり、任意で全体もしくは部分的に、繊維、不織布、網、フィルムもしくはホイルから選択されるまた別の層、または辺縁で一緒に終了する、または辺縁で前記コラーゲン材料を完全もしくは部分的に突き出るような方法で層状コラーゲン材料に適用される粘着性層を備えることのできる、前記コラーゲンマトリックス。
【請求項12】
皮膚治療のため、皮膚疾患の治療のため、創傷治療もしくは止血のための皮膚および経皮的有効成分、特にマトリックスタンパク質、可溶性ペプチド成分、例えば特にエラスチンおよび/または成長因子、抗菌創傷治療薬、例えば特に銀含有有効成分、特に硝酸銀を含む群から選択される有効成分、および/または化粧品用油および脂肪、例えば特にトリグリセリド類もしくは中性油から選択される少なくとも1つの補助物質の群から選択される少なくとも1つの有効成分を含有する、請求項7〜11のいずれか一項に記載の凍結乾燥エポキシ架橋結合コラーゲンマトリックスまたは請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって得られるコラーゲンマトリックス。
【請求項13】
医薬品として使用するため、特に急性および/または慢性創傷を治療するための薬剤として、インプラントとして、皮膚もしくは経皮的皮膚治療薬として、止血剤として使用するため、および/または真空支援創傷治療療法において使用するための、請求項7〜12のいずれか一項に記載の凍結乾燥エポキシ架橋結合コラーゲンマトリックスまたは請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって得られるコラーゲンマトリックス。
【請求項14】
化粧品として、化粧品用ドレッシングもしくはマスクとして、または細胞集団のための足場としての、請求項7〜12のいずれか一項に記載の凍結乾燥エポキシ架橋結合コラーゲンマトリックスまたは請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって得られるコラーゲンマトリックスの使用。
【請求項15】
請求項7〜13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの凍結乾燥エポキシ架橋結合コラーゲンマトリックスまたは請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって得られるコラーゲンマトリックス、ならびに1つ以上の有効成分および/または任意で1つ以上の補助物質を含有する少なくとも1つの水溶液を、1セットまたは部品のキットの組み合わせとして関連した空間的配列で含有する複合製剤。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−140423(P2012−140423A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−279269(P2011−279269)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(509044785)ドクトル ズーヴェラッハ スキン アンド ヘルス ケア アーゲー (6)
【Fターム(参考)】