分解性の移植可能な医療装置
【課題】改良された分解性の移植可能な医療装置を提供する。
【解決手段】医療装置は、インプラント、グラフトインプラント、血管インプラント、非血管インプラント、創縫合インプラント、縫合糸、薬物送達インプラント、生物学的送達インプラント、尿道インプラント、子宮内インプラント、臓器インプラント、骨プレートを含む骨インプラント、骨ねじ、歯科インプラント、椎間板、または同種のものの形態を取ってもよい。好適な実施態様では、移植可能な医療装置は、血管ステント10、非血管ステント、およびステントグラフトなどの移植可能な管腔プロテーゼを備える。
【解決手段】医療装置は、インプラント、グラフトインプラント、血管インプラント、非血管インプラント、創縫合インプラント、縫合糸、薬物送達インプラント、生物学的送達インプラント、尿道インプラント、子宮内インプラント、臓器インプラント、骨プレートを含む骨インプラント、骨ねじ、歯科インプラント、椎間板、または同種のものの形態を取ってもよい。好適な実施態様では、移植可能な医療装置は、血管ステント10、非血管ステント、およびステントグラフトなどの移植可能な管腔プロテーゼを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、医療装置および医療方法に関する。特に、本発明は、移植可能な管腔プロテーゼおよび生体内環境で分解するその他の医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景技術の説明
冠動脈疾患は、世界中の先進工業国において主要死亡原因となっている。当該疾患は、心臓へ血液を供給する主要な動脈の壁におけるアテローム硬化性の堆積物の蓄積として始まる。堆積物が蓄積すると、心臓への正常な血流が制限される。心臓は、そのような減少した血流をある程度埋め合わせることができるいくつかの代償機構を有する。これらの代償機構以外にも、定評ある多数の薬品治療が、軽度から中程度の冠動脈疾患を持つ患者における症状および死亡率の両方を改善することを示している。しかしながら、疾患が進行するにつれて、薬物治療にもかかわらず、その症状はより明白になる。特に運動時またはストレス時、心臓に十分な血液が得られない場合、進行性冠動脈疾患が消耗性胸痛または狭心症として現れる。現時点では、心臓へ流れる血液の量を増加させるために、機械的インターベンションが必要である。
【0003】
血管形成術は、進行性冠動脈疾患に対する最も一般的なインターベンション療法の1つである。経皮経管冠動脈形成術(Percutaneous Transluminal
Coronary Angioplasty;PTCA)処置を最初に行ったのは、Andreas Gruntzigである。彼は、小型バルーンを持つカテーテルを、大動脈を介して、部分閉塞のある冠動脈内へ進入させた。続いて、バルーンを膨張させ、血小板を動脈壁に対して圧迫し、心臓への血流を回復させた。
【0004】
PTCAは急速に成長し、血管形成カテーテルが小型化してより操作しやすくなったため、インターベンショナル心臓内科医が、より困難な冠閉塞にアクセスすることが可能になった。しかしながら、PTCAは、再狭窄または治療病変の再閉塞に悩まされてきた。一般に、全患者の30〜40%がPTCA後に再狭窄を起こしている。
【0005】
冠状動脈ステントは、再狭窄を防止するために、1990年代半ばに導入された。ステントは、冠動脈に留置された、小型金属コイル、スロット付きチューブ、メッシュ、または、骨格構造である。ステントは、PTCA後に冠動脈内に残存する、永久インプラントである。ステントは、動脈を広げ、血流を改善し、冠動脈疾患の症状を軽減する。冠状動脈ステントは、再狭窄を低減し、再狭窄率を15〜20%に低下させることが証明された初めての装置である。以来、ステントはPTCA処置の大部分において使用されている。
【0006】
従来のステントは、バルーン拡張型ステントおよび自己拡張型ステントという2つの形態を取っていた。一般に、いずれも金属材料で作られており、生体適合被膜を含んでよい。そのようなステントは、それらを展開することによって、または、カテーテルを通じて、人体に永久に埋め込まれる。そのような永久移植は、内膜過形成の量、血栓症、またはその他の医療悪影響を増加させ得る。冠状動脈ステントは、処置後により高い早期内径獲得を維持した結果、PTCA単独の場合と比較して、血管形成術後の15〜20%の低再狭窄率を達成するものである。
【0007】
ラパマイシンおよびパクリタキセル等の薬物を溶出する薬剤溶出ステントは、ステントによる内膜過形成率をさらに低減するように設計されていた。そのような薬剤溶出ステントは、金属または金属合金を、薬物の放出を制御する分解性または非分解性のポリマーと組み合わせたものである。そのような薬物を使用することにより、ステント単独の場合と比較して、再狭窄率をさらに低減させた。
【0008】
従来のステントおよび薬剤溶出ステントの両方に使用される金属または金属合金は、生物学的に安定しており、後で周囲組織とともに外科的に除去されない限り、患者の生涯にわたって体内に残存するように意図されている。したがって、これらのステントは、患者および執刀医にステントを除去するための第二の処置に取り掛かる準備ができていない限り、体内への一時的留置は許可されておらず、ほとんどの場合、困難または不可能である。
【0009】
ステント植込み術の主要な機能の一つは、血管壁に機械的支持を提供することおよび血流のための内腔を保つことであるが、管壁が治癒すると、ステントは継続的な目的をほとんど、または全く果たさなくなる。さらに、機械的に硬質のままであるステントの存在は、場合によっては患者に合併症を引き起こしかねない。したがって、血管の治癒中もしくは直後、またはその後で、溶解または分解するステントを提供することが望まれてきた。
【0010】
ポリ乳酸(Poly‐Lactic Acids;PLA)等の生分解性のポリマー材料からステントを作製するために、いくつかの試みが行われてきた。しかしながら、そのようなポリマーステントは、管壁に提供する機械的支持が弱い傾向があるため、同程度の金属ステントよりも実質的に厚くなくてはならない。その厚さによって、有効な血流腔を低減し、望ましくない生物学的反応を引き起こす場合がある。
【0011】
例えば特許文献1および特許文献2に記載されているように、近年、体内で分解する金属ステントを作製するための試みが行われている。US2004/009808および特許文献3も参照されたい。しかしながら、そのような分解性の金属ステントは、強度、プロファイル、および、従来の金属ステントに見られるその他の望ましい性質を損なっている場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,287,332号明細書
【特許文献2】米国特許第6,854,172号明細書
【特許文献3】国際公開第02/053202号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これらの理由により、物理的および機械的性質を改善した分解性の装置を提供することが望ましいであろう。特に、血管の治癒中および/もしくは治癒時、またはその後に分解可能であり、且つ、血管への損傷または再狭窄のリスクを低減するための機構を有する、ステントまたはその他の管腔プロテーゼを提供することが望ましいであろう。ステント、または、ステントによって治療している場所にある、血管およびその他の身体構造を治療するためのその他の装置から、薬理作用のある物質の局所的且つ制御された放出を提供することも望ましいであろう。そのような薬理作用のある物質は、再狭窄、ならびに、ステントまたはその他の装置に対するあらゆる炎症反応およびそれらの分解産物の両方を最小限に抑え得る。これらの目的の少なくともいくつかが、本発明の側面によって満たされるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
医療装置および医療方法は、臨床的に関連する期間にわたって分解性の本体を備える移植可能な構造体を利用する。本体は、様々な形態を取ってよく、様々な医学療法において使用され得る。好適な実施態様では、本体は、ステント、特に、冠動脈疾患の治療において使用される種類の血管ステントの形態を取る。本体は、装置に望ましい物理的および機械的属性を提供する材料を含む、または、それらの材料から形成もしくは構成される。好適な実施態様では、本体は、金属(純粋なもの、または不純物を持つもの)、金属合金、またはその組み合わせを含む。以下で使用する場合、「金属」という用語は、金属ならびに2つ以上の金属および金属合金の組み合わせに加えて、そのような純粋および不純な金属を含むものとする。移植可能な本体は、生理環境において、少なくとも部分的に分解性である。好ましくは、移植可能な構造体の材料は、以下で論じるように、臨床的に関連する期間の後に構造体が残存しないよう完全に分解可能であり、生理学的に良性の、好ましくは、生体内環境において自然発生する種類である分解副産物を生み出す。より好ましくは、移植可能な構造体の本体は、一般に生理環境内に存在するよりも少ない量の、分解副産物を生み出す。移植可能な構造体の分解速度は、個別に様々な性状において、またはその組み合わせにおいて、制御され得る。典型的な生理環境としては、血管腔ならびに尿管および尿道を含むその他の体腔、固形組織、脳組織等が挙げられる。
【0015】
本発明の第一の側面において、移植可能な構造体の本体の分解速度は、インプラント材料の組成の選択によって制御される。インプラント材料は、約1ヶ月から5年、通常は4ヶ月から2年、また多くの場合、6ヶ月から1年の範囲の、臨床的に関連する期間中に分解することができる、金属もしくは金属合金またはその組み合わせから選択される。したがって、移植可能な構造体の重量または体積は、一般に、約0.05%から3%、通常は一日当たり約0.1%から0.75%、より一般的には、一日当たり0.25%から0.5%の範囲のパーセンテージずつ、毎日減少することになる。
【0016】
移植可能な構造体の、金属、合金、または組み合わせ材料は、通常、0.0001amps/cm2から0.1amps/cm2、通常、一般に0.001amps/cm2から0.01amps/cm2、および、通常0.0025amps/cm2から0.008amps/cm2の範囲で、腐食電流(Icorr)を有するであろう。腐食電流は腐食速度に比例するため、より高いIcorr値を持つ材料は、血管またはその他の生理環境において、より迅速に腐食することになる。Icorrは、インプラントの材料特性、形状、および表面性質によって、ならびに、その他の要因のうち、生理環境によっても可変する。Icorr値は、一般に、本体全体または本体の任意部分の平均値を表すものとなる。
【0017】
第二の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、その形状を変更することにより、少なくとも一部分で制御される。そのような形状変更は、表面積対体積の比を含んでよい。例えば、構造体の分解速度を制御するために使用され得る体積を実質的に増加させずに、表面積を増加させるために、孔、貯留槽、溝他等の属性を本体に組み込むことができる。支柱を有するステントを移植可能な本体が備える場合、変更される形状は、支柱の幅と支柱の厚さの比を含み得る。
【0018】
本発明の第三の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、腐食誘発機構の追加により、少なくとも一部分で制御される。例えば、いくつかの実施態様では、移植可能な構造体は、少なくとも一つの面を有する移植可能な本体と、制御された分解速度で前記構造体の少なくとも一部を分解させる、前記少なくとも一つの面における少なくとも一つの腐食誘発機構と、を備える。好適な実施態様では、移植可能な本体は、金属、金属合金、またはその組み合わせを含む。いくつかの実施態様では、腐食誘発機構は、くぼみ、細孔、部分孔、空隙、またはこれらの組み合わせを備える。その他の実施態様では、腐食誘発機構は、表面の凹凸、擦り傷、筋、隆線、隆起、ざらつき、多孔性焼結金属もしくは合金、粗面またはこれらの組み合わせを備える。さらに他の実施態様では、腐食誘発機構は、孔、部分的もしくは完全な焼結細孔、またはこれらの組み合わせを備える。さらに、いくつかの実施態様では、移植可能な本体は、前記本体の第一の結合部分を伴う第一の面と、前記本体の第二の結合部分を伴う第二の面と、を有し、前記第一の面は、前記第一の結合部分を前記第二の結合部分とは異なる速度で分解させる密度および/または構成で存在する腐食誘発機構を有する。
【0019】
典型的な金属は、鉄、コバルト、タングステン、モリブデン、銀等を含む。これらの金属は、実質的に純粋であってよく、一般に、約90重量%、多くの場合95重量%超、および、頻繁に99.5重量%超の純度を有する。あるいは、これらの金属を、合金としてその他の金属または材料と組み合わせてよい。典型的な合金として、AISI‐1000シリーズの炭素鋼、AISI‐1300シリーズのマンガン鋼、AISI‐4000シリーズのモリブデン鋼、AISI‐4100シリーズのクロムモリブデン鋼、AISI‐4300シリーズおよびAISI‐8600シリーズのニッケルクロムモリブデン鋼、AISI‐4600シリーズのニッケルモリブデン鋼、AISI‐5100シリーズのクロム鋼、AISI‐6100シリーズのクロムバナジウム鋼、AISI‐9200シリーズのケイ素鋼等の鉄含有合金が挙げられる。その他の鉄含有合金は、少なくとも25%の鉄、好ましくは50%の鉄、より好ましくは75%の鉄、および多くの場合90%の鉄、95%の鉄、もしくは99%の鉄、またはそれ以上の重量を有するであろう。鉄合金は、0.05重量%から3重量%、好ましくは0.05重量%から1.0重量%、より好ましくは0.1重量%から0.6重量%の範囲で炭素を包含してよい。銀、スズ、コバルト、タングステン、モリブデン等の合金は、通常、少なくとも25重量%、通常少なくとも50重量%、多くの場合少なくとも75重量%、および時々90重量%、95重量%、もしくは98重量%、またはそれ以上の純金属を有するであろう。
【0020】
本発明の第四の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、インプラント構造体内における腐食強化元素および/または腐食抵抗元素の操作によって、少なくとも一部分で制御される。したがって、腐食に対する金属または金属合金の抵抗を下げる原子または化合物を、追加、または、すでにこれらの材料中に存在する場合には、増加してよい。さらに、一つ以上の腐食抵抗元素が消耗され得る。そのような元素の操作は、金属または合金の腐食を制御するために、インプラント構造体の表面上に、インプラント構造体の至るところに、または、金属もしくは合金の粒界に隣接して、発生し得る。
【0021】
本発明の第五の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、腐食制御剤の添加によって、少なくとも一部分で制御される。そのような剤は、酸性化合物、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩酸、クエン酸、アミノ酸、ヒドロキシアパタイト、過酸化水素、水酸化カリウム等の塩基性化合物、酸性および塩基性医薬品、または、酸性もしくは塩基性副産物を持つポリマー他等の、合成物質または生物製剤、またはその組み合わせであってよい。
【0022】
本発明の第六の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、ガルバニ電池の作成によって、少なくとも一部分で制御される。いくつかの実施態様では、金属または合金粒子は、流体または組織中で、インプラント構造体に隣接して送達される。これらの粒子は、インプラントに接触する流体中にあり、腐食誘発ガルバニ電池を作成する。ガルバニ電池は、例えば、電解生理環境において合金を酸化させるために電流を生成することができるように、異なる電気化学ポテンシャルを有する金属を合金にすることによって作成され得る。
【0023】
本発明の第七の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、材料の層化によって、少なくとも一部分で制御される。いくつかの実施態様では、移植可能な構造体は、第一の分解速度で分解する第一層と、第一の速度とは異なる第二の分解速度で分解する第二層とを有する移植可能な本体を備える。第一層および第二層は、金属、金属合金、またはその組み合わせを含み、それらの層は制御された分解速度で構造体の少なくとも一部を分解させる。第一層および第二層は、異なる不動態を有してよい。第一層および第二層は、電気化学系列が異なっていてよい。代替的に、または追加で、分解期間および/または分解速度は、層の異なる厚さのために異なっていてよい。
【0024】
本発明の第八の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、防護層を組み込むこと、または操作することによって、少なくとも一部分で制御される。いくつかの実施態様では、移植可能な構造体は、分解速度を有する金属、金属合金、またはその組み合わせを含む移植可能な本体と、前記移植可能な本体の少なくとも一部を覆う層とを備え、移植可能な本体の分解速度を制御する層の性状が制御される。防護層は、不動態化層またはコーティングを備えてよい。そのようなコーティングは、ポリマー、金属、金属合金、治療剤、腐食剤、放射線不透過性物質、またはこれらの組み合わせを含んでよい。防護層のそのような性状は、移植可能な構造体の厚さ、化学組成、化学浸透性、耐久性、被覆率の量、またはその組み合わせを含んでよく、防護層のそのような性状は、耐食性酸化物の量を含んでよい。任意で、防護層は、移植可能な本体の基底部分を見せる開口部を有してよく、前記開口部は前記移植可能な本体の前記分解速度を制御することを補助する。
【0025】
本発明のさらなる側面において、制御された速度で分解する少なくとも一部を有する金属、金属合金、またはその組み合わせを含み、前記制御された分解速度は少なくとも二段階の異なる分解速度を有する体内埋め込み本体を備える、移植可能な構造体が提供される。いくつかの実施態様では、前記少なくとも二段階は、後の分解速度よりも遅い最初の分解速度を備える。その他の実施態様では、前記少なくとも二段階は、後の分解速度よりも速い最初の分解速度を備える。
【0026】
本発明の別の側面において、金属、金属合金、またはその組み合わせを含み、その構造によって可変する制御された分解速度で分解する少なくとも一部を有する移植可能な本体を備える、移植可能な構造体が提供される。好適な実施態様では、移植可能な本体はステントを備える。
【0027】
本発明のさらに別の側面において、制御された分解速度を有する金属、金属合金、またはその組み合わせを含む移植可能な本体と、移植可能な構造体から溶出する少なくとも一つの治療剤と、を備える移植可能な構造体が提供される。いくつかの実施態様では、治療剤は、抗癌剤、抗炎症薬、免疫抑制物質、抗増殖性物質、抗血小板物質、またはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、薬理作用のある物質を含む。別の側面において、移植可能な構造体は、移植可能な本体を少なくとも部分的に覆う、少なくとも一枚のコーティングをさらに備える。治療剤は、コーティング内に包含されていてもよいし、コーティングに隣接していてもよい。コーティングは、金属、ポリマー、セラミック;合成もしくは天然;およびまたはその組み合わせであってよい。コーティングは、分解性、部分的に分解性、非分解性、およびまたはその組み合わせであってよい。その他の実施態様では、治療剤は、分解の一段階において溶出する一つの治療剤と、分解の別の段階において溶出するもう一つの治療剤とを備える。さらに、その他の実施態様では、治療剤は、少なくとも部分的に腐食誘発機構内に包含される。
【0028】
本発明のその他の目的および利点は、添付の図面とともに、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
例えば、本願発明は以下を提供する。
(項目1)
少なくとも一つの面を有する移植可能な本体と、
上記少なくとも一つの面における少なくとも一つの腐食誘発機構であって、生理環境において、上記機構がない場合の速度よりも速い速度で、上記本体の少なくとも一部を分解させる腐食誘発機構と、
を備える、分解性の移植可能な構造体。
(項目2)
上記移植可能な本体は、金属、金属合金、またはその組み合わせを含む、項目1に記載の構造体。
(項目3)
上記金属、金属合金、またはその組み合わせは、コバルト、タングステン、ビスマス、銀、銅、鉄、亜鉛、マグネシウム、ジルコニウム、ニオブ、イリジウム、インジウム、ビスマス、スズ、ニッケル、およびその合金のうち少なくとも一つを含む、項目2に記載の構造体。
(項目4)
上記少なくとも一つの腐食誘発機構は、くぼみ、細孔、部分孔、空隙、またはこれらの組み合わせを備える、項目1に記載の構造体。
(項目5)
上記少なくとも一つの腐食誘発機構は、表面の凹凸、切り込み線、擦り傷、筋、隆線、隆起、ざらつき、多孔性焼結金属または合金、粗面、またはこれらの組み合わせを備える、項目1に記載の構造体。
(項目6)
上記少なくとも一つの腐食誘発機構は、孔、貫通孔、貫通焼結細孔、またはこれらの組み合わせを備える、項目1に記載の構造体。
(項目7)
上記移植可能な本体は、上記本体の第一の結合部分を伴う第一の面と、上記本体の第二の結合部分を伴う第二の面と、を有し、上記第一の面は、上記第一の結合部分を上記第二の結合部分とは異なる速度で分解させる密度で存在する腐食誘発機構を有する、項目1に記載の構造体。
(項目8)
上記移植可能な本体は、ステントを備える、項目1に記載の構造体。
(項目9)
第一の分解速度で分解する第一層であって、金属、金属合金、またはその組み合わせを含む第一層と、
上記第一の速度とは異なる第二の分解速度で分解する第二層であって、金属、金属合金、またはその組み合わせを含む第二層と、
を有する移植可能な本体を備え、上記層は生理環境において少なくとも一部の上記構造体を分解させる、分解性の移植可能な構造体。
(項目10)
上記第一層および第二層は、異なる不動態を有する、項目9に記載の構造体。
(項目11)
上記第一層および第二層は、電気化学的状態において異なっている、項目9に記載の構造体。
(項目12)
上記分解速度は、上記層の異なる厚さのために異なっている、項目9に記載の構造体。
(項目13)
上記移植可能な本体はステントを備える、項目9に記載の構造体。
(項目14)
分解速度を有する金属、金属合金、またはその組み合わせを含む移植可能な本体と、上記移植可能な本体の少なくとも一部を覆う層と、
を備え、上記層は上記移植可能な本体の上記分解速度を制御する、分解性の移植可能な構造体。
(項目15)
上記層は、不動態化層を備える、項目14に記載の構造体。
(項目16)
上記分解速度を制御するために、上記不動態化層の移植可能な構造体の厚さ、化学組成、耐久性、被覆率の量のうち少なくとも一つが選択される、項目15に記載の構造体。
(項目17)
上記分解速度を制御するために、上記不動態化層内に存在する耐食性酸化物の量が選択される、項目16に記載の構造体。
(項目18)
上記層は、セラミック、ポリマー、金属、金属合金、治療剤、腐食剤、放射線不透過性物質、またはこれらの組み合わせを含む、項目14に記載の構造体。
(項目19)
上記層は、上記移植可能な本体の基底部分を見せる開口部を有し、上記開口部は上記移植可能な本体の上記分解速度を制御することを補助する、項目18に記載の構造体。
(項目20)
上記移植可能な本体はステントを備える、項目14に記載の構造体。
(項目21)
ある分解速度で分解する部分を少なくとも有する金属、金属合金、またはその組み合わせを含み、上記分解速度は少なくとも二相の異なる分解速度を有する移植可能な本体を備える、分解性の移植可能な構造体。
(項目22)
上記少なくとも二相は、後の分解速度よりも遅い最初の分解速度を備える、項目21に記載の構造体。
(項目23)
上記少なくとも二相は、後の分解速度よりも速い最初の分解速度を備える、項目21に記載の構造体。
(項目24)
上記移植可能な本体はステントを備える、項目21に記載の構造体。
(項目25)
金属、金属合金、またはその組み合わせを含み、長さによって可変する分解速度で分解する部分を少なくとも有する移植可能な本体を備える、分解性の構造体。
(項目26)
上記移植可能な本体はステントを備える、項目25に記載の構造体。
(項目27)
金属、金属合金、またはその組み合わせを含み、その形状が分解速度に影響を及ぼす移植可能な本体を備える、分解性の構造体。
(項目28)
上記形状は、表面積対体積の比を備える、項目27に記載の構造体。
(項目29)
上記移植可能な本体はステントを備える、項目27に記載の構造体。
(項目30)
上記ステントは支柱の幅および支柱の厚さを有する支柱を含み、上記形状は、1.4対1を超える、支柱の幅対支柱の厚さ、または支柱の厚さ対支柱の幅の比を備える、項目29に記載の構造体。
(項目31)
分解速度を有する金属、金属合金、またはその組み合わせを含む移植可能な本体と、
移植可能な構造体から溶出する少なくとも一つの治療剤と、を備える分解性の構造体。
(項目32)
上記少なくとも一つの治療剤は、抗血小板剤、抗増殖剤、免疫抑制剤、薬理学的な因子、抗癌剤、抗炎症剤、医薬品、またはこれらの組み合わせを含む、項目31に記載の構造体。
(項目33)
上記移植可能な本体を少なくとも部分的に覆うコーティングをさらに備える、項目31に記載の構造体。
(項目34)
上記少なくとも一つの治療剤は、上記コーティングから溶出する、項目33に記載の構造体。
(項目35)
上記少なくとも一つの治療剤は、一相の分解において溶出する一つの治療剤と、もう一方の相の分解において溶出するもう一方の治療剤と、を含む、項目31に記載の構造体。
(項目36)
上記少なくとも一つの治療剤は、少なくとも部分的に腐食誘発機構内に含まれる、項目31に記載の構造体。
(項目37)
生理環境において、1ヶ月から5年の間の期間で溶解する速度に近い速度で分解する部分を少なくとも有する、金属、金属合金、またはその組み合わせを含む移植可能な本体
を備える、分解性の構造体。
(項目38)
金属から構成され、構造体を有する本体を備え、上記金属および構造体は、上記本体が生理環境において1ヶ月から5年までの期間で分解されることを可能にするために選択される、分解性のインプラント。
(項目39)
上記金属および構造体は、上記本体が4ヶ月から2年までの期間で分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目40)
上記金属および構造体は、上記構造体が6ヶ月から12ヶ月までの期間で分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目41)
上記金属および構造体は、上記本体が一日あたり平均で0.05%から3%まで質量を損失しながら分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目42)
上記金属および構造体は、上記本体が一日あたり平均で0.1%から0.75%まで質量を損失しながら分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目43)
上記金属および構造体は、上記本体が一日あたり平均で0.25%から0.5%まで質量を損失しながら分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目44)
上記金属および構造体は、上記本体が一日あたり平均で0.05%から3%まで体積を損失しながら分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目45)
上記金属および構造体は、上記本体が一日あたり平均で0.1%から0.75%まで体積を損失しながら分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目46)
上記金属および構造体は、上記本体が一日あたり平均で0.25%から0.5%まで体積を損失しながら分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目47)
上記金属は、鉄、コバルト、タングステン、モリブデン、銀、銅、およびジルコニウム、インジウム、ビスマス、スズ、ニッケルより成る群から選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目48)
上記金属は、少なくとも90%の純度を有する、項目47に記載のインプラント。
(項目49)
上記純度は、少なくとも95%である、項目47に記載のインプラント。
(項目50)
上記純度は、少なくとも99.5%である、項目47に記載のインプラント。
(項目51)
上記金属は、鉄合金である、項目38に記載のインプラント。
(項目52)
上記鉄合金は、少なくとも25%の鉄を含む、項目51に記載のインプラント。
(項目53)
上記鉄合金は、少なくとも50%の鉄を含む、項目51に記載のインプラント。
(項目54)
上記鉄合金は、少なくとも75%の鉄を含む、項目51に記載のインプラント。
(項目55)
上記鉄合金は、少なくとも90%の鉄を含む、項目51に記載のインプラント。
(項目56)
上記鉄合金は、少なくとも99%の鉄を含む、項目51に記載のインプラント。
(項目57)
上記鉄合金は、炭素鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目58)
上記炭素鋼は、少なくとも0.05%から3%の炭素を含む、項目57に記載のインプラント。
(項目59)
上記炭素鋼は、少なくとも0.05%から1%の炭素を含む、項目57に記載のインプラント。
(項目60)
上記炭素鋼は、少なくとも0.1%から0.6%の炭素を含む、項目57に記載のインプラント。
(項目61)
上記炭素鋼は、1000シリーズの炭素鋼である、項目57に記載のインプラント。
(項目62)
上記鉄合金は、1300シリーズのマンガン鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目63)
上記鉄合金は、4000シリーズのモリブデン鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目64)
上記鉄合金は、4100シリーズのクロムモリブデン鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目65)
上記鉄合金は、4300シリーズのクロムモリブデン鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目66)
上記鉄合金は、8600シリーズのクロムモリブデン鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目67)
上記鉄合金は、4600シリーズのニッケル・クロムモリブデン鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目68)
上記鉄合金は、5100シリーズのクロム鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目69)
上記鉄合金は、6100シリーズのクロムバナジウム鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目70)
上記鉄合金は、9200シリーズのケイ素鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目71)
上記鉄合金は、少なくとも80%の鉄を包含する鋳鉄である、項目51に記載のインプラント。
(項目72)
上記金属合金は、銀を含む、項目51に記載のインプラント。
(項目73)
上記銀は、少なくとも25重量%存在する、項目72に記載のインプラント。
(項目74)
上記銀は、少なくとも50重量%存在する、項目72に記載のインプラント。
(項目75)
上記銀は、少なくとも75重量%存在する、項目72に記載のインプラント。
(項目76)
上記銀は、少なくとも90重量%存在する、項目72に記載のインプラント。
(項目77)
上記銀は、少なくとも95重量%存在する、項目72に記載のインプラント。
(項目78)
上記銀は、少なくとも98重量%存在する、項目72に記載のインプラント。
(項目79)
上記金属は、スズを含む、項目38に記載のインプラント。
(項目80)
上記スズは、少なくとも25重量%存在する、項目79に記載のインプラント。
(項目81)
上記スズは、少なくとも50重量%存在する、項目79に記載のインプラント。
(項目82)
上記スズは、少なくとも75重量%存在する、項目79に記載のインプラント。
(項目83)
上記スズは、少なくとも90重量%存在する、項目79に記載のインプラント。
(項目84)
上記スズは、少なくとも95重量%存在する、項目79に記載のインプラント。
(項目85)
上記スズは、少なくとも98重量%存在する、項目79に記載のインプラント。
(項目86)
上記金属は、コバルトを含む、項目38に記載のインプラント。
(項目87)
上記コバルトは、少なくとも25重量%存在する、項目86に記載のインプラント。(項目88)
上記コバルトは、少なくとも50重量%存在する、項目86に記載のインプラント。
(項目89)
上記コバルトは、少なくとも75重量%存在する、項目86に記載のインプラント。
(項目90)
上記コバルトは、少なくとも90重量%存在する、項目86に記載のインプラント。
(項目91)
上記コバルトは、少なくとも95重量%存在する、項目86に記載のインプラント。
(項目92)
上記コバルトは、少なくとも98重量%存在する、項目86に記載のインプラント。
(項目93)
上記金属は、タングステンを含む、項目38に記載のインプラント。
(項目94)
上記タングステンは、少なくとも25重量%存在する、項目93に記載のインプラント。
(項目95)
上記タングステンは、少なくとも50重量%存在する、項目93に記載のインプラント。
(項目96)
上記タングステンは、少なくとも75重量%存在する、項目93に記載のインプラント。
(項目97)
上記タングステンは、少なくとも90重量%存在する、項目93に記載のインプラント。
(項目98)
上記タングステンは、少なくとも95重量%存在する、項目93に記載のインプラント。
(項目99)
上記タングステンは、少なくとも98重量%存在する、項目93に記載のインプラント。
(項目100)
上記金属は、モリブデンを含む、項目38に記載のインプラント。
(項目101)
上記モリブデンは、少なくとも25重量%存在する、項目100に記載のインプラント。
(項目102)
上記モリブデンは、少なくとも50重量%存在する、項目100に記載のインプラント。
(項目103)
上記モリブデンは、少なくとも75重量%存在する、項目100に記載のインプラント。
(項目104)
上記モリブデンは、少なくとも90重量%存在する、項目100に記載のインプラント。
(項目105)
上記モリブデンは、少なくとも95重量%存在する、項目100に記載のインプラント。
(項目106)
上記モリブデンは、少なくとも98重量%存在する、項目100に記載のインプラント。(項目107)
上記金属は、0.0001amps/cm2から0.1amps/cm2までの範囲の腐食電流(Icorr)値を有する、項目38に記載のインプラント。
(項目108)
上記Icorr値は、0.001amps/cm2から0.01amps/cm2までの範囲である、項目107に記載のインプラント。
(項目109)
上記Icorr値は、0.0025amps/cm2から0.008amps/cm2までの範囲である、項目107に記載のインプラント。
(項目110)
上記金属は、生物学的に適合した分解産物に分解する、項目38に記載のインプラント。
(項目111)
上記分解産物は、自然の状態で人体中に存在する物質と化学的に同じものである、項目110に記載のインプラント。
(項目112)
上記金属は、延性である、項目38に記載のインプラント。
(項目113)
上記金属は、破壊前、少なくとも1.2倍に引き伸ばされることができる、項目112に記載のインプラント。
(項目114)
上記金属は、破壊前、少なくとも1.3倍に引き伸ばされることができる、項目112に記載のインプラント。
(項目115)
上記金属は、破壊前、少なくとも1.4倍に引き伸ばされることができる、項目112に記載のインプラント。
(項目116)
上記金属は、破壊前、少なくとも1.6倍に引き伸ばされることができる、項目112に記載のインプラント。
(項目117)
送達のための縮小幅および移植のための拡張幅を有する、引き伸ばし可能なプロテーゼを備える、項目38に記載のインプラント。
(項目118)
上記プロテーゼは、複数の支柱を備える、項目117に記載のインプラント。
(項目119)
上記支柱は、0.004インチ以下の厚さを有する、項目118に記載のインプラント。
(項目120)
上記支柱は、0.003インチ以下の厚さを有する、項目118に記載のインプラント。
(項目121)
上記支柱は、0.002インチ以下の厚さを有する、項目118に記載のインプラント。
(項目122)
上記支柱は、0.0015インチ以下の厚さを有する、項目118に記載のインプラント。
(項目123)
上記支柱は、0.001インチ以下の厚さを有する、項目118に記載のインプラント。
(項目124)
上記支柱は、幅対厚さの比が少なくとも1.4対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目125)
上記支柱は、幅対厚さの比が少なくとも2対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目126)
上記支柱は、幅対厚さの比が少なくとも3対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目127)
上記支柱は、幅対厚さの比が少なくとも4対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目128)
上記支柱は、厚さ対幅が少なくとも1.4対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目129)
上記支柱は、厚さ対幅が少なくとも2対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目130)
上記支柱は、厚さ対幅が少なくとも3対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目131)
上記支柱は、厚さ対幅が少なくとも4対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目132)
生理環境において1ヶ月間分解した後の上記支柱は、その初期の強度の少なくとも25%を依然として維持している、項目118に記載のインプラント。
(項目133)
生理環境において1ヶ月間分解した後の上記支柱は、その初期の強度の少なくとも50%を依然として維持している、項目118に記載のインプラント。
(項目134)
生理環境において1ヶ月間分解した後の上記支柱は、その初期の強度の少なくとも60%を依然として維持している、項目118に記載のインプラント。
(項目135)
上記金属および構造体は、その暴露された表面にわたって実質的に均一に分解するために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目136)
上記金属および構造体は、その暴露された表面にわたって非均一に分解するために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目137)
上記インプラント構造体は、腐食を促進する上記インプラントの暴露された表面において少なくとも一つの機構を備える、項目38に記載のインプラント。
(項目138)
上記機構は、くぼみ、細孔、空隙、焼結、隆起、隆線、および切り込み線のうちの一つ以上を含む、項目137に記載のインプラント。
(項目139)
上記機構は、上記機構のないインプラントと比較して少なくとも10%、生理環境において重量での分解速度を増加させる、項目137に記載のインプラント。
(項目140)
上記機構は、上記機構のないインプラントと比較して少なくとも20%、生理環境において重量での分解速度を増加させる、項目137に記載のインプラント。
(項目141)
上記機構は、上記機構のないインプラントと比較して少なくとも40%、生理環境において重量での分解速度を増加させる、項目137に記載のインプラント。
(項目142)
上記機構は、少なくとも100nmの平均表面粗度を提供する、項目137に記載のインプラント。
(項目143)
上記機構は、少なくとも400nmの平均表面粗度を提供する、項目137に記載のインプラント。
(項目144)
上記機構は、少なくとも1000nmの平均表面粗度を提供する、項目137に記載のインプラント。
(項目145)
上記インプラントの暴露された表面の少なくとも一部は、材料でコーティングされている、項目38に記載のインプラント。
(項目146)
上記コーティング材料は、生理環境において分解性である、項目145に記載のインプラント。
(項目147)
上記材料は、上記本体のものより速い分解速度を有する、項目146に記載のインプラント。
(項目148)
上記材料は、上記本体のものより遅い分解速度を有する、項目146に記載のインプラント。
(項目149)
上記コーティング材料は、生理環境において非分解性である、項目145に記載のインプラント。
(項目150)
上記コーティングは、上記本体の生理環境への暴露を制御するためにパターン化される、項目145に記載のインプラント。
(項目151)
上記コーティングは、多孔性である、項目145に記載のインプラント。
(項目152)
上記コーティングは、非多孔性である、項目145に記載のインプラント。
(項目153)
上記コーティングは、金属性である、項目145に記載のインプラント。
(項目154)
上記コーティングは、非金属性である、項目145に記載のインプラント。
(項目155)
上記コーティングは、セラミックである、項目145に記載のインプラント。
(項目156)
上記コーティングは、ポリマーを含む、項目145に記載のインプラント。
(項目157)
上記コーティングは、治療剤を含む、項目145に記載のインプラント。
(項目158)
上記ポリマーは、多孔率制御剤を含む、項目157に記載のインプラント。
(項目159)
上記多孔率制御剤は、塩および発泡剤より成る群から選択され、上記剤は、移植後少なくとも部分的に浸出する、項目158に記載のインプラント。
(項目160)
2つ以上のコーティング材料を含む、項目145に記載のインプラント。
(項目161)
上記2つ以上のコーティング材料は、異なる分解速度を有する、項目160に記載のインプラント。
(項目162)
上記2つ以上のコーティング材料は、重ねられる、項目160に記載のインプラント。
(項目163)
上記2つ以上のコーティング材料は、上記暴露された表面の異なる領域にわたってコーティングされる、項目160に記載のインプラント。
(項目164)
上記ポリマーコーティング材料は、0.1μmから100μmまでの範囲で上記本体にわたって厚さを有する、項目156に記載のインプラント。
(項目165)
上記ポリマーコーティング材料は、1μmから50μmまでの範囲で上記本体にわたって厚さを有する、項目156に記載のインプラント。
(項目166)
上記ポリマーのコーティング材料は、5μmから25μmまでの範囲で上記本体にわたって厚さを有する、項目156に記載のインプラント。
(項目167)
上記金属製コーティング材料は、0.1nmから100μmまでの範囲で上記本体にわたって厚さを有する、項目153に記載のインプラント。
(項目168)
上記コーティング材料は、1nmから50μmまでの範囲で上記本体にわたって厚さを有する、項目154に記載のインプラント。
(項目169)
上記コーティング材料は、5nmから25μmまでの範囲で上記本体にわたって厚さを有する、項目154に記載のインプラント。
(項目170)
上記コーティングは、治療剤を含む、項目145に記載のインプラント。
(項目171)
上記剤は、1ng/cm2から1000μg/cm2までの量で上記本体上に存在する、項目170に記載のインプラント。
(項目172)
上記剤は、1ng/cm2から500μg/cm2までの量で上記本体上に存在する、項目170に記載のインプラント。
(項目173)
上記剤は、10ng/cm2から400μg/cm2までの量で上記本体上に存在する、項目170に記載のインプラント。
(項目174)
上記治療剤は、生理環境において一日あたり1ng/cm2から1000μg/cm2までの速度で放出される、項目170に記載のインプラント。
(項目175)
上記治療剤は、生理環境において一日あたり1μg/cm2から200μg/cm2までの速度で放出される、項目170に記載のインプラント。
(項目176)
上記治療剤は、生理環境において一日あたり5mcg/cm2から100mcg/cm2までの速度で放出される、項目170に記載のインプラント。
(項目177)
上記治療剤は、生理環境において1日から3年までの範囲の期間にわたって上記本体から放出される、項目170に記載のインプラント。
(項目178)
上記治療剤は、生理環境において2週間から1年までの範囲の期間にわたって上記本体から放出される、項目170に記載のインプラント。
(項目179)
上記治療剤は、生理環境において1ヶ月から6ヶ月までの範囲の期間にわたって上記本体から放出される、項目170に記載のインプラント。
(項目180)
上記治療剤は、抗増殖剤を含む、項目170に記載のインプラント。
(項目181)
上記治療剤は、免疫抑制剤を含む、項目170に記載のインプラント。
(項目182)
上記治療剤は、抗新生物薬を含む、項目170に記載のインプラント。
(項目183)
上記治療剤は、抗炎症剤を含む、項目170に記載のインプラント。
(項目184)
上記治療剤は、抗血小板剤を含む、項目170に記載のインプラント。
(項目185)
上記治療剤は、シロリムスおよびそのアナログを含む、項目170に記載のインプラント。
(項目186)
上記治療剤は、パクリタキセルおよびそのアナログを含む、項目170に記載のインプラント。
(項目187)
上記金属は鉄を含み、上記化合物は鉄種である、項目111に記載のインプラント。
(項目188)
上記金属は、原則的に、鉄または鉄合金から成る、項目187に記載のインプラント。
(項目189)
上記化合物は、自然の状態で人体中に存在する量の10倍未満の量で生成される、項目188に記載のインプラント。
(項目190)
上記化合物は、自然の状態で人体中に存在する量の5倍未満の量で生成される、項目188に記載のインプラント。
(項目191)
上記化合物は、自然の状態で人体中に存在する量の2倍未満の量で生成される、項目188に記載のインプラント。
(項目192)
上記化合物は、自然の状態で人体中に存在する量以下の量で生成される、項目188に記載のインプラント。
(項目193)
上記機構は、上記暴露された表面にわたって均一に分布する、項目137に記載のインプラント。
(項目194)
上記機構は、上記暴露された表面にわたって非均一に暴露される、項目137に記載のインプラント。
(項目195)
上記機構は、1nmから1mmの範囲で、直径、奥行き、幅、および長さから選択される寸法を有する、項目137に記載のインプラント。
(項目196)
上記機構は、10nmから100マイクロメートルの範囲で、直径、奥行き、幅、および長さから選択される寸法を有する、項目137に記載のインプラント。
(項目197)
上記機構は、100nmから1マイクロメートルの範囲で、直径、奥行き、幅、および長さから選択される寸法を有する、項目137に記載のインプラント。
(項目198)
上記機構は、1/cm2から1014/cm2までの範囲の表面密度を有する、項目137に記載のインプラント。
(項目199)
上記機構は、100/cm2から108/cm2までの範囲の表面密度を有する、項目137に記載のインプラント。
(項目200)
上記機構は、1000/cm2から106/cm2までの範囲の表面密度を有する、項目137に記載のインプラント。
(項目201)
機構でコーティングされた表面積のパーセンテージは、0.1%から99.9%までの範囲である、項目137に記載のインプラント。
(項目202)
機構でコーティングされた表面積のパーセンテージは、5%から75%までの範囲である、項目137に記載のインプラント。
(項目203)
機構でコーティングされた表面積のパーセンテージは、10%から50%までの範囲である、項目137に記載のインプラント。
(項目204)
上記コーティングは、治療剤を含むか、それに隣接する、項目145に記載のインプラント。
(項目205)
上記コーティングは、上記分解するインプラントから周囲組織を保護する、項目145に記載のインプラント。
(項目206)
上記コーティングは、分解産物を周囲組織または血液から選択的に離れた方向へ導く、項目145に記載のインプラント。
(項目207)
上記コーティングは、分解産物を周囲組織または血液の方へ選択的に近づける方向へ導く、項目145に記載のインプラント。
(項目208)
上記コーティングは、分解産物を中和する、項目145に記載のインプラント。
(項目209)
上記コーティングの厚さ、化学組成、耐久性、および/または移植可能な構造体の被覆率のうちの少なくとも一つは、分解速度を制御するために選択される、項目14に記載の構造体。
(項目210)
上記多孔率制御剤は、塩および発泡剤より成る群から選択され、移植前少なくとも部分的に浸出する、項目158に記載のインプラント。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明によるインプラントの実施形態の例を、ステントの形態で図示している。
【図2A】図2Aは、金属および金属合金分解データの例を示す。
【図2B】図2Bは、ステンレス鋼と比較した、いくつかの金属および金属合金インプラント材料の経時的な重量損失を表すデータを図示している。
【図3】図3は、その上に腐食誘発機構の例を有するステント本体の一部を図示している。
【図4】図4は、ステント本体上にある腐食誘発機構の例の拡大図を提供している。
【図5】図5は、その中に伸長する腐食誘発機構の例を有するステント本体の支柱の断面を図示している。
【図6】図6は、表面からインプラントへ伸長する、各種形状およびサイズの腐食誘発機構の例を有するインプラントの表面を図示している。
【図7】図7は、表面から伸長してインプラント内で交差または接合する腐食誘発機構の例を持つ、インプラント本体の断面を図示している。
【図8】図8は、表面から伸長し、インプラント内に側枝を含む、腐食誘発機構の例を図示している。
【図9】図9は、表面からインプラント内へ伸長し、表面から外側へ伸長する少なくとも一つの突起を含む、腐食誘発機構の例を図示している。
【図10】図10は、腐食誘発機構の例を、擦り傷の形態で図示している。
【図11】図11は、梨地状表面の形態で腐食誘発機構の例を有するインプラントの表面を図示している。
【図12】図12は、インプラントを通って伸長する孔の形態で腐食誘発機構の例を有するインプラントの、一部の断面を図示している。
【図13】図13は、複数の側枝を含む孔の例を図示している。
【図14】図14は、インプラントの表面全体にわたって実質的に均一に分布された、腐食誘発機構の例を図示している。
【図15】図15は、インプラントの表面全体にわたって不均一に分布された、図14の腐食誘発機構の例を図示している。
【図16】図16は、腐食誘発機構の例を、インプラントの表面全体にわたって実質的に均一に分布された筋の形態で図示している。
【図17】図17は、インプラントの表面全体にわたって不均一に分布された、図16の腐食誘発機構の例を図示している。
【図18】図18は、インプラントに隣接する流体または組織中の粒子の例を図示している。
【図19】図19は、三つの層を有するインプラントの断面図の例を図示している。
【図20】図20は、腐食誘発機構の例を持ついくつかの金属および合金の分解速度を示すプロットを提供している。
【図21】図21は、腐食誘発機構の例を持ついくつかの金属および合金の分解速度を示すプロットを提供している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明の装置は、様々な形態を取ってよく、様々な医学療法において使用され得る。好適な実施態様では、当該装置は、血管疾患の治療において使用される血管ステントの形態を取る。ステントは、動脈、静脈、胆管、または食道等の様々な体腔において使用され得ることが十分に理解できる。
【0031】
その他の実施態様では、本発明の装置は、グラフトインプラント、血管インプラント、非血管インプラント、移植可能な管腔プロテーゼ、創縫合インプラント、薬物送達インプラント、縫合糸、生物学的送達インプラント、尿道インプラント、子宮内インプラント、臓器インプラント、骨プレートを含む骨インプラント、骨ねじ、歯科インプラント、椎間板等、様々なインプラントの形態を取る。当該装置は一般に、過剰増殖性疾患、再狭窄、循環器疾患、創傷治癒、癌、動脈瘤、糖尿病疾患、腹部大動脈瘤、高カルシウム血症、虚血、細動、不整脈他の治療のために、臓器、血管、導管、または骨に対し、支持すること、包含すること、共に保持すること、取り付けること、埋めること、閉じること、薬物を送達すること、生物製剤を送達することのうち一つ以上を可能にする。
【0032】
したがって、以下の詳細な説明では、本発明を説明する手段の一例としてステントを利用し、これは本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0033】
(ステントとしてのインプラント)
好適な実施態様では、インプラントはステントの形態を取る。ステントの設計は、いくつか例を挙げると、コイル、スロット付きチューブ、波形リング、シート、圧延シート、締め付け設計、およびステントグラフトを含む。図1は、ステント10の実施形態を拡張状態で図示するものである。示されているように、ステント10は、第一端12と、第二端14と、中心内腔16とを有する。ステント本体18は、第一端12から第二端14へ伸長している。本体18は、格子状構造を形成する支柱20を有する。支柱20は、円形、長方形またはその他の形状の断面を有し得る。一般に、支柱の厚さは、約0.0005インチから0.010インチ、好ましくは約0.001インチから0.004インチ、より好ましくは約0.0015インチから0.003インチの範囲である。支柱の幅は、一般に、約0.001インチから0.008インチ、好ましくは約0.002インチから0.004インチの範囲である。
【0034】
ステント10は、自己拡張型またはバルーン拡張型であってよい。ステントの拡張前の直径は、一般に、約0.3mmから10mm、好ましくは約0.5mmから4mm、より好ましくは約0.8mmから2mmの範囲である。ステントの拡張後の直径は、一般に、約1.5mmから35mm、好ましくは約2mmから10mm、より好ましくは約2mmから5mmの範囲である。ステント10が形成される材料に応じて、当該材料は一般に、約5%から100%、好ましくは約15%から70%、より好ましくは約20%から50%の範囲の伸び率を有する。
【0035】
(インプラントの分解)
上述したように、本発明の装置は、生物環境において分解性である。分解、微生物分解、溶解、生物吸収、吸収、融食、腐食、浸食、生物浸食、侵食性、生物侵食性、および崩壊という用語は、別段の定めがない限り、化学的、生物学的、電気的、機械的、またはその他任意の手段によって質量、体積、または機能におけるそのような劣化を表現するその他の用語と、同義で使用されることが十分に理解され得る。
【0036】
本発明に関連するような分解は、約1ヶ月から5年等、臨床的に関連する期間内での分解と考えられていることも、十分に理解され得る。一般的な金属または合金は、材料の固有特性および環境条件に応じて、最大1000年以上の範囲までのはるかに長期間で腐食することができるが、そのような金属または金属合金は、臨床現場では非分解性であると考えられている。好適な実施態様では、本発明の装置は、生体内環境において、約1ヶ月から5年、好ましくは約4ヶ月から2年、より好ましくは約6ヶ月から1年の範囲で実質的に分解する。いくつかの実施態様では、当該装置は、生体内環境において、数週間、1週間、数日、1日、数時間、1時間以下等、1ヶ月未満で少なくとも部分的に分解する。例えば、当該装置は、1ヶ月または1ヶ月以内で溶解する速度に近いように制御された分解速度で分解する少なくとも一部を有し得る。分解を生じる生体内環境は、一般に、約3から10、通常は約5から9、一般に約6から8の範囲の局部組織pHを有する。
【0037】
本発明の装置の分解は、一つの段階ではより遅い分解速度、別の段階ではより速い分解速度等、複数の段階で発生し得る。いくつかの実施態様では、当該装置は、初期段階ではより遅い速度、後期段階ではより速い速度で分解する。その他の実施態様では、当該装置は、初期段階ではより速い速度、後期段階ではより遅い速度で分解する。さらに、分解は、構造体に沿って均一であってもよいし、構造体に沿って可変であってもよい。平均質量または体積率損失は、一日あたり約3%から一日あたり0.05%、好ましくは、一日あたり約0.75%から一日あたり0.1%、より好ましくは、一日あたり約0.5%から一日あたり0.25%の範囲であってよい。
【0038】
インプラントが金属または金属合金から構成される場合、インプラントの分解は、金属イオン、塩、または錯体等の副産物を生み出す。好ましくは、これらの副産物は生体内環境内における自然発生的要素であるか、重大な悪影響を引き起こさないものである。より好ましくは、移植可能な構造体は、一般に生体内環境内に存在するより少ない量の分解副産物を生み出す。さらに、インプラントの分解の速度は、分解副産物からのあらゆる負の生物学的反応の可能性を最小限に抑えるように制御され得る。現在、急性血栓症または遅発性血栓症を防止するため、ステント等の従来の非分解性装置の永久移植を受けている患者には、長期抗血小板物質治療が推奨されている。全身抗血小板物質治療は、内出血等の副作用を有する。本発明の分解性のインプラントが使用される場合、インプラントが溶解してしまえば血栓症のリスクが低減されるため、長期抗血小板物質治療は必須ではない。これにより、処置に関連するコストを下げ、薬物の服用量についての患者コンプライアンスに関連するリスクを最小限に抑えることもできる。一例として、インプラントが鉄または鉄合金を備える、または本質的にそれらから成る場合、分解産物は、人体において自然発生する種類の酸化鉄種等、生体適合鉄種を含み得る。分解速度を制御することにより、これらの種の濃度を、正常量の10倍未満、好ましくは5倍未満、より好ましくは2倍未満、最も好ましくは体内に自然に存在する以下の水準に保つことができる。特に好適な金属は炭素鋼であり、その場合、分解された種には、主として、または排他的に鉄と炭素の化合物が含まれることになる。
【0039】
(金属および金属合金)
好適な実施態様では、本発明の装置は、少なくとも部分的に分解性の金属、金属合金、またはその組み合わせを含む。
【0040】
金属の例として、コバルト、タングステン、ビスマス、銀、銅、鉄、亜鉛、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、スズ、またはその他の金属が挙げられる。いくつかの実施態様では、インプラント金属の純度は、約90重量%から100重量%、好ましくは約95重量%から99.99%、より好ましくは約99.5から99.9重量%の範囲である。
【0041】
金属合金の例は、いくつか例を挙げると、1)銀含有合金(銀スズ合金等)、2)コバルト含有合金(コバルト鉄合金等)、3)鉄含有合金(80‐55‐06グレードの延性鋳鉄、その他の延性鋳鉄、AISI‐1010鋼、AISI‐1015鋼、AISI‐1430鋼、AISI‐8620鋼、AISI‐5140鋼、またはその他の鋼他等)、4)タングステン含有合金、5)溶融合金(40%ビスマス‐60%スズ、58%ビスマス‐42%スズ、ビスマス‐スズ‐インジウム合金他等)、6)マグネシウム合金、7)亜鉛合金、8)形状記憶または超弾性合金、および、9)その他の合金を含む。
【0042】
いくつかの実施態様では、本発明の装置は、一つを超える金属または金属合金から構成される。金属+金属インプラントの例としては、コバルト+タングステン、タングステン+鉄、マグネシウム+鉄、銀+亜鉛他が挙げられる。金属+合金インプラントの例としては、タングステン+8620鋼、チタン+低炭素鋼、マグネシウム+1015鋼合金、銀+ビスマス‐スズ合金他が挙げられる。合金+合金インプラントの例としては、8620鋼+銀‐スズ、1015鋼+ビスマス‐スズ他が挙げられる。
【0043】
金属および金属合金の分解データの例を、図2Aに示す。図2Bは、ステンレス鋼と比較した、いくつかの金属および金属合金インプラント材料の経時的な重量損失を表すデータを図示している。
【0044】
金属の分解を一般的に腐食と称し、本明細書では、「分解」および「腐食」という用語は、すべての材料について同義で使用される。ほとんどの金属腐食は、生体内環境内に見られるような、金属と電解質溶液との間の界面における電気化学反応によって発生する。腐食は一般に、陽極および陰極反応の結果として発生する。
【0045】
金属の電位は、陽極および陰極反応がバランスを保つための手段である。金属への電気的接続がない場合、金属によって想定される平衡電位を、開路電位(Open Circuit Potential、Eoc)と呼ぶ。Eocにおける陽極または陰極電流のいずれかの値を、腐食電流(Corrosion Current、Icorr)と呼ぶ。Icorrおよび腐食速度(Corrosion Rate)は、金属の種類、溶液組成、温度、溶液移動、金属過程およびその他多数を含む多くのシステム変数の関数である。
【0046】
温度37℃の食塩水中のインプラントでは、以下の式より、腐食電流磁束(Icorr)は腐食速度(CR)に比例している。
CR=(Icorr×K×EW)/d
CR 腐食速度(mm/年)
Icorr 腐食電流(amps/cm2)
K ファラデー定数=3272(mm/(amp‐cm‐年))
EW 当量(グラム/等価物)
d 密度(グラム/cm3)。
【0047】
生理学的条件下で分解する本発明の一般的なインプラントは、約0.0001amps/cm2から0.1amps/cm2;好ましくは約0.001amps/cm2から0.01amps/cm2、より好ましくは約0.0025amps/cm2から0.008amps/cm2の範囲のIcorr(腐食電流)を有するであろう。
【0048】
いくつかの実施態様では、分解の1ヵ月後、金属または金属合金は、移植前の強度と比較して約25%を超える強度、好ましくは約50%を超える、より好ましくは約60%を超える強度を維持している。これらの、またはその他の実施態様では、分解の2ヵ月後、金属および金属合金インプラントは、移植前の強度と比較して約25%を超える強度、好ましくは約50%を超える、より好ましくは約60%を超える強度を維持している。これらの、またはその他の実施態様では、分解の4ヵ月後、金属および金属合金インプラントは、移植前の強度と比較して約25%を超える強度、好ましくは約50%を超える、より好ましくは約60%を超える強度を維持している。
【0049】
いくつかの実施態様では、インプラントは、(腐食前の本体の重量に基づいて、)0.01重量%を超える、好ましくは0.1重量%を超える、より好ましくは1重量%を超える腐食量で、移植前に腐食する。いくつかの実施態様では、移植前の腐食は、生理環境に露出される本体の表面積の1%を超える、好ましくは表面積の5%を超える、より好ましくは表面積の10%を超える面積を覆うことができる。そのような場合において、腐食は、前治療に起因する場合もあるし、例えば酸素およびいくらかの水分等の酸化性雰囲気を伴う無菌環境内で装置が梱包された結果である場合もある。
【0050】
いくつかの実施態様では、インプラントは、5質量%未満、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満だけ、移植前に腐食する場合がある。いくつかの実施態様では、インプラントは、表面積の10%未満、好ましくは表面積の1%未満、より好ましくは表面積の0.1%未満だけ、移植前に腐食する場合がある。
【0051】
分解速度の制御
1)形状の変更
いくつかの実施態様では、インプラントの分解速度は、表面積対体積の比を最大にすることによって増加される。例えば、インプラントがステントの形態である場合、ステントの支柱の厚さと幅、または幅と厚さの比が1.4:1を超える、好ましくは2:1を超える、より好ましくは3:1を超えるものであってよい。好適な実施態様では、ステントの支柱の厚さは、約100ミクロン未満、好ましくは約70ミクロン未満、より好ましくは約50ミクロン未満である。これにより、必要とされる分解の絶対深度を最小にし、腐食副産物の局所化を最小限に抑える。一般に、インプラント表面積/長さは、約0.001cm2/mmから0.75cm2/mm、好ましくは約0.005cm2/mmから0.25cm2/mm、最も好ましくは0.01から0.1cm2/mmの範囲である。
【0052】
その他の実施態様では、体積を実質的に増加させずに表面積を増加させるために、孔、貯留槽、溝他等の属性がインプラントに組み込まれ得る。
【0053】
2)腐食誘発機構の追加
いくつかの実施態様では、分解を誘発または補助するために、本発明のインプラントの本体に、腐食誘発機構が含まれる。少なくとも一つの露出面に存在する腐食誘発機構の例として、くぼみ、細孔、部分孔、空隙、表面の凹凸、擦り傷、筋、隆線、隆起、ざらつき、多孔性焼結金属もしくは合金、引っ掻き傷、粗面、孔、貫通孔、貫通焼結細孔、またはその他の幾何学的特徴もしくはランダム特徴、またはその組み合わせが挙げられる。腐食誘発機構は、インプラントが大きな孔、貯留槽、溝他を有する例を含む様々な形状または設計構成の面を含む、インプラントの任意の表面に存在し得る。そのような表面特徴は、一般に、重量に基づき10%以上、多くの場合、重量に基づき20%以上、頻繁に、重量に基づき40%以上分だけ、分解速度を増加させるであろう。100nmを超える、多くの場合400nmを超える、頻繁に1000nm(1μm)以上の平均表面粗さ(RA)を提供するために、いくつかの表面特徴が選択されるであろう。表面特徴は、インプラントの露出表面積全体に設けられてもよいし、その他の場合には分解速度を増加させるように設計された露出面の一部分のみに設けられてもよい。表面特徴の不均一な分解は、多くの場合、インプラントにおける不均一な分解プロファイルをもたらすであろうことが十分に理解されるであろう。
【0054】
いくつかの実施態様では、腐食誘発機構を持つインプラントの重量損失率は、機構を持たない同じインプラントよりも、少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは40%大きい。さらに、いくつかの実施態様では、機構を持つインプラントの寸法縮小率は、機構を持たない同じインプラントよりも、少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは40%大きい。
【0055】
図3は、その上に腐食誘発機構30の例を有するステント本体18(図1のステント本体18等)の一部を図示している。図4は、ステント本体18上にある様々な腐食誘発機構30の拡大図を提供している。図示するように、機構30は、いくつか例を挙げると、円形、楕円形、正方形、長方形、五角形、および多角形を含む様々な形状を有してよい。
【0056】
図5は、図3に示すステント本体18の支柱20の断面を図示している。この実施態様では、支柱20は、正方形の断面を有する。支柱20は、ステント10の内腔16の方を向いた内腔縁32と、動脈壁等の体腔の壁の方を向いた外縁34とを含む。支柱20は、ステント本体18のその他の部分(すなわち、その他の支柱)の方を向いた側縁36をさらに含む。ここで、支柱20は、内腔縁32、外縁34、および側縁36のそれぞれの上に、腐食誘発機構30を有する。これらの腐食誘発機構30は、くぼみ、細孔、部分孔、空隙、表面の凹凸他を含む。図6は、表面17からステント本体18へ伸長する、各種形状およびサイズの腐食誘発機構30を有するステント本体18の表面17を図示している。図7は、表面17から伸長してステント本体18内で交差または接合する腐食誘発機構30を図示している。図8は、表面17から伸長し、ステント本体18内に側枝30aを含む、腐食誘発機構30を図示している。図9は、表面17からステント本体18へ伸長し、ステント本体18の表面17から外側へ伸長する少なくとも一つの突起30bを含む、腐食誘発機構30を図示している。
【0057】
図10は、擦り傷の形態で腐食誘発機構30を有するステント本体18の表面の上面図を提供している。擦り傷または筋は、任意の長さ、深さ、幅、配向、または形状を有してよい。形状の例は、いくつか挙げると、直線、曲線、対角線、重複線、交差線、ジグザグ線を含む。
【0058】
図11は、梨地状表面の形態で腐食誘発機構30を有するステント本体18の表面を図示している。結果として生じる表面仕上げを、平均粗さ(Average Roughness;Ra)で表現することができる。平均粗さは、粗さプロファイルとその平均線との間の面積、または、評価長さを超える粗さプロファイル高さの絶対値を積分したものである。そのような腐食誘発機構を有する本発明のインプラントの表面は、約100ナノメートルを超えるRa、好ましくは約400ナノメートルを超えるRa、より好ましくは約1000ナノメートルを超えるRaを有し得る。
【0059】
図12は、外面34と内腔面32とを有する、ステント本体18の一部の断面を図示している。本体18を通って外面34から内腔面32へ伸長する、孔の形態の腐食誘発機構30が示されている。孔は、いくつか例を挙げると、平滑な、ギザギザの、直線状の、対角線状の、曲線状の、接続された、または交差しているものであってよい。さらに、いくつかの実施態様では、少なくとも一つの突起30bが、ステント本体18の面32、34から外側へ伸長していてよい。図13は、ステント本体18の外面34から内腔面32へ伸長する孔の形態で腐食誘発機構30を図示しており、当該孔は複数の側枝30aを含む。
【0060】
2a)腐食誘発機構の作成
上述した腐食誘発機構のいくつかは、インプラント金属もしくは合金またはその組み合わせを、塩酸、フッ化水素酸、硝酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、乳酸、シュウ酸、王水、発煙硫酸、様々な状態の他のもの、またはその組み合わせ等であるがこれらに限定されない化学物質に暴露することによって形成され得る。
【0061】
腐食誘発機構は、インプラント金属もしくは合金またはその組み合わせを、塩水噴霧、水酸化ナトリウム等の強アルカリ性溶液、水酸化カリウム、ナトリウム、炭酸カリウム、およびリン酸塩等の塩を包含する溶液、または、様々な状態のその他の塩基に暴露することによって形成されることもできる。あるいは、当該機構は、食塩水、塩化ナトリウム、塩化第二鉄もしくはその他の塩水、Ferrolyte(Starlight Chemicals,Inc.、イリノイ州シカゴ)、または、様々な状態の他のものに対するインプラントの暴露によって形成され得る。そのような機構を作成するその他の化学物質は、AlCl3、MgCl2を伴うCaCl3、CuSO4、HgCl2、H2SiF6、K2CO3、Na2CO3、Na2HSO3、NaOCl、Na3PO4、NH4C1、NH2SO3H、NI(NO3)2、ZnCl4、臭素、H2O2、酸素のような気体酸化剤、窒素、塩素、もしくは様々な状態の他のもの、またはその組み合わせを含む。
【0062】
別の実施態様では、腐食誘発機構は、様々な状態の液体金属に対するインプラント材料の暴露によって形成される。そのような液体金属は、ビスマス、ガリウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、および、ナトリウムカリウム合金、トリウムマグネシウム、亜鉛他、またはその組み合わせを含む。
【0063】
別の実施態様では、腐食誘発機構は、電子誘起エッチング、グロー放電プラズマエッチング、レーザー支援エッチング、化学支援イオンビームエッチング、レーザー誘起光化学ドライエッチング、パルスプラズマ放電、スパッタビーム、放射線への暴露、正イオンビーム、繰り返し動電位分極、イオン衝撃、もしくはその他の方法、またはその組み合わせ等であるがこれらに限定されない方法によって形成される。
【0064】
別の実施態様では、腐食誘発機構は、貴金属を伴う電解質中に、望ましい腐食誘発機構を形成するのに十分な時間、インプラント材料を留置することによって形成される。
【0065】
擦り傷または筋等のいくつかの腐食誘発機構は、剃刀刃、針、ピンセット、鋭く尖った圧子、エングレーバー、メス、外科用メス、毛ブラシ、鋼綿、ローレット工具、ヤスリ、カーバイドバー、尖ったピック、砥石、チューブカッター、チゼル、スクレーパー、レーザー、放電加工(Electro Discharge Machining;EDM)、もしくはその他の道具等の道具、またはその組み合わせを使用することによって作ることができる。
【0066】
隆線、隆起、ざらつき、または粗面等の腐食誘発機構を得るために、様々な方法を使用することができる。方法の例として、サンドブラスト、ビーズブラスト、化学エッチング、レージング、プラズマエッチング、イオンビーム衝撃、放電加工(EDM)インプリンティング、成形、焼結、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition;CVD)、スパッタリング、電気メッキ、もしくはその他の方法、またはその組み合わせが挙げられる。
【0067】
焼結細孔、孔、および貫通孔等、いくつかの腐食誘発機構は、レージング、放電加工、くぼみ、部分孔、および空隙の準備に使用される化学物質を用いた化学エッチング、放射線もしくはイオンビームへの暴露、金属射出成形、金属もしくは合金のビーズまたはその他の形状の焼結、またはその他の方法、またはその組み合わせによって作ることができる。
【0068】
腐食誘発機構は、製造プロセス中または移植前の任意の時点で形成され得る。当該機構は、ロータブレーダー、カッティングバルーン等の道具または装置、またはその他の技術、またはその他の機械的、電気的、化学的手段、またはその組み合わせを使用して、in‐situでも形成され得る。
【0069】
2b)腐食誘発機構の寸法および分布
腐食誘発機構は、任意の適切なサイズ、直径、幅、長さ、深さ、外周、または寸法等を有してよい。いくつかの実施態様では、インプラント表面にある当該機構の平均直径、幅、または長さは、約1nmから1mm、好ましくは約10nmから100マイクロメートル、より好ましくは約100nmから1マイクロメートルの範囲である。筋および擦り傷等の線形特徴の長さは、これよりも長くてよい。いくつかの実施態様では、インプラント表面にある当該機構の平均深さは、約1nmから10mm、好ましくは約10nmから1mm、より好ましくは約100nmから1マイクロメートルの範囲である。当該機構は、同様の寸法のものであってもよいし、サイズまたは形状が可変してもよい。機構は、その他の機構内に包含されてもよいし、部分的に包含されてもよい。
【0070】
腐食誘発機構は、インプラント表面上に、均一または不均一に分布され得る。図14は、ステントの支柱20等、インプラントの表面全体にわたって実質的に均一に分布された、腐食誘発機構30を図示している。ここでは、機構30は、くぼみ、細孔、孔、空隙、または表面の凹凸を含む。図15は、ステントの支柱20等、インプラントの表面全体にわたって不均一に分布された、これらの腐食誘発機構30を図示している。同様に、図16は、ステントの支柱20等、インプラントの表面全体にわたって実質的に均一に分布された、腐食誘発機構30を図示している。ここでは、機構30は筋を含む。図17は、ステントの支柱20等、インプラントの表面全体にわたって不均一に分布された、これらの腐食誘発機構30を図示している。
【0071】
腐食誘発機構は、インプラント表面を部分的または完全に覆っていてよい。当該機構は、外面、内腔面、縁、またはその他の面等、インプラントの一つ以上の面にあってよい。当該機構は、インプラントが分解するのに望ましい一つ以上のエリアに限定されることができ、その他のエリアは無傷のままである、または、分解しない。当該機構は、インプラントの表面上の異なる場所に、可変の密度で存在することができる。一つ以上のエリアは、その他のエリアよりも速く分解することができる。したがって、インプラントの分解速度は、長手方向、円周方向、またはその他の方向に制御され得る。例として、管腔内ステントの近位端および遠位端は、それらの間にある区域よりも前に分解することができる。
【0072】
インプラントの表面にある、くぼみ、細孔、部分孔、貫通孔、空隙、または表面の凹凸等の腐食誘発機構の表面密度は、約1/cm2から1×1014/cm2、好ましくは約100/cm2から1×108/cm2、より好ましくは約1000/cm2から1×106/cm2の範囲であってよい。機構のないインプラント表面のパーセンテージは、約0%から99.9%、好ましくは約5%から75%、より好ましくは約10%から50%の範囲であってよい。
【0073】
3)腐食強化/抵抗元素 の操作
腐食誘発機構の代替として、またはそれに加えて、本発明のインプラントは、金属または金属合金等、一つ以上の腐食強化元素の濃縮を有する材料から構成されてよい。したがって、腐食に対する金属もしくは金属合金またはその組み合わせの抵抗を下げる原子または化合物を、追加、または、すでにこれらの材料中に存在する場合には、増加してよい。例えば、合金中の炭素、鉄、銅、シリコン、カルシウム、硫黄、硫化マグネシウム、ケイ酸塩、もしくはその他の元素のような元素を濃縮するために、または、クロム、ニッケル、モリブデン、もしくはその他の腐食抵抗元素のようなある種の元素を消耗するために、合金を処理してよい。いくつかの実施態様では、腐食強化元素は、約0.1%を超える、好ましくは約1%を超える、より好ましくは約5%を超える組成を有するように追加され得る。さらに、一つ以上の腐食抵抗元素が消耗され得る。
【0074】
そのような元素の操作は、合金の腐食を制御するために、インプラントの表面上に、インプラントの至るところに、または、合金の粒界に隣接して、発生し得る。いくつかの実施態様では、金属または金属合金は、約0.01%を超える、好ましくは約1%を超える、より好ましくは約10%を超える重量組成の腐食誘発元素を有する。例えば、鋼は、約0.03重量%を超える、好ましくは約0.3%を超える、より好ましくは約3重量%を超えるパーセンテージで、炭素を包含し得る。いくつかの実施態様では、金属または金属合金は、腐食誘発元素の重量の約0.01%を超える、好ましくは約5%を超える、より好ましくは腐食誘発元素の重量の約10%を超える表面組成で、インプラントの表面上における腐食誘発元素の選択的分布を有する。
【0075】
さらに、いくつかの実施態様では、金属または金属合金は、約15%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは約1%未満の重量組成で、表面腐食防護要素を有する。例えば、鋼等のインプラント合金は、約12%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは1%未満である、クロムの表面組成率表面組成率を有し得る。
【0076】
4)腐食制御剤の添加
上述した機構および元素の代替として、またはそれに加えて、本発明のインプラントは、インプラントの分解を制御する腐食制御剤を含んでよい。当該剤は、酸性化合物、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩酸、クエン酸、アミノ酸、ヒドロキシアパタイト、過酸化水素、水酸化カリウム等の塩基性化合物、酸性および塩基性医薬品、または、酸性もしくは塩基性副産物を持つポリマー他等の、合成物質または生物製剤、またはその組み合わせであってよい。インプラントにある剤の量は、約1ナノグラム/cm2から1000ナノグラム/cm2、好ましくは約1から500ナノグラム/cm2、より好ましくは約10から400ナノグラム/cm2の範囲であってよい。
【0077】
一実施態様では、当該剤は、移植前は実質的にインプラントの腐食を誘発しない。
【0078】
別の実施態様では、当該剤は、カテーテル、注入バルーン、シリンジ、シリンジと針、またはその他の方法等、いくつかの手段によって、in‐situでインプラントに隣接する組織に送達される。
【0079】
5)腐食誘発ガルバニ電池の作成
いくつかの実施態様では、金属または合金粒子は、流体または組織中で、インプラントに隣接して送達される。これらの粒子は、インプラントに接触する流体中にあり、腐食誘発ガルバニ電池を作成する。そのようなガルバニ電池は、インプラントの腐食を制御する。図18は、ステント本体18等、インプラントに隣接する流体または組織42中の粒子40を図示している。これらの粒子は、通常、インプラントよりも不動態である金属または合金から作られる。その他の実施態様では、腐食を誘発するために、インプラントに隣接して非金属粒子が送達される。これらの粒子は、それらに対する組織応答を最小にするように、約1ナノメートルから1ミリメートルの範囲のサイズ、好ましくは0.1マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲のサイズであってよい。それらは、カテーテル、注入バルーン、シリンジ、シリンジと針、またはその他の方法等の手段によって、インプラントに隣接して送達され得る。
【0080】
図19は、流体または組織42に隣接するインプラント46の断面図を図示している。インプラント46は3つの層を有し、ここで、中間層48は非導電性材料から構成され、外層50は金属または合金等の導電性材料から構成されて、ガルバニ電池を形成する。任意の数の層が存在し得る。層化について、以下でさらに説明する。
【0081】
6)材料の層化
いくつかの実施態様では、本発明のインプラントは、金属または合金の2つ以上の層から形成される。一実施態様では、これらの金属または合金は、異なる電気化学系列の、または/および異なる不動態の、異なる材料から作られてよい。例えば、一層がタングステンから作られ、他の層がクロムから作られる。別の例において、一層が鉄含有合金から作られ、他の層が銀から作られる。一実施態様では、これらの層は、移植時または移植後に物理的接触または流体接触してよい。一実施態様では、これらの層は、ポリマー、半導体、もしくは誘電体被覆等の層またはコーティングによって隔てられているが、移植時に、またはコーティングの分解が発生するにつれて最終的に、流体接触する。層の厚さ、表面積、被覆率は、望ましい腐食速度に応じて可変し得る。
【0082】
7)防護層の操作
腐食する際、多くの金属はその表面に酸化物層を形成する。その酸化層がさらなる腐食を阻止すると、当該金属は不動態化すると言われている。この状態の金属および金属合金は、耐食性であると考えられている。耐食性金属合金の例として、316、316L、430、304、17‐7、またはその他のステンレス鋼、コバルトクロム合金(L‐605等)、MP35N、Havar、コバルト‐20クロム‐15タングステン‐10ニッケル合金、NiTi合金他が挙げられる。
【0083】
これらの金属合金の分解は、制御状態で防護不動態化層を排除する、または部分的に排除することによって、または、表面酸化層の形成を防止することによって、促進または制御され得る。さらに、酸化物層等の防護層の、存在、被覆率、厚さ、化学組成、化学浸透性、耐久性、またはその他の性状を制御することによって、インプラント分解の開始、均一性、または速度を制御することができる。例えば、低酸素濃度環境または酸素枯渇環境でインプラントを梱包することにより、インプラントは、その表面上に酸化物層等の防護層を形成しないように保護されることができる。これにより、酸素がパッケージの内側に入ること、および、インプラントの早過ぎる腐食を引き起こすことを最小限に抑える。一実施態様では、インプラント含有製品は、真空下でパウチ内に密封される。別の実施態様では、パウチは、窒素、アルゴン、またはその他の不活性ガスでパージされる。別の実施態様では、パッケージ内の有効な酸素含有量を最小にするために、脱酸素剤が使用される。また、防護層の性状は、化学エッチング、ビーズブラスト、電解研磨、レージング、またはその他の手段によって等、化学的、機械的、電気的、熱的手段によって制御され得る。酸化物層等の防護層は、製造プロセス中または移植前に、制御状態で形成、除去、または部分的に除去されることができる。当該層は、ロータブレーダー、カッティングバルーン等の道具または装置、またはその他の技術、またはその他の機械的、電気的、化学的手段、またはその組み合わせを使用して、in‐situでも制御され得る。表面組成、性質、および防護/不動態層の程度、厚さ、場所、または耐久性に制御可能なように作用するために、その他の手段を使用してもよい。
【0084】
不動態化層を改質するために、様々な技術が使用され得る。一実施態様では、インプラントは、スケール除去され、電解研磨される、または部分的に電解研磨されるが、不動態化されない。別の実施態様では、インプラントは、スケール除去されるが電解研磨も不動態化もされない。別の実施態様では、インプラントは、スケール除去も電解研磨も不動態化もされない。
【0085】
一実施態様では、不動態化層の厚さは、制御された分解を提供するために、1nm未満、好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.1nm未満に限定される。別の実施態様では、当該層は、分解を制御するために、インプラントの表面を部分的にのみ覆っている。この部分的な被覆率は、インプラントの一つ以上の面におけるものであってもよいし、ステントの支柱等、インプラントの全長に沿って均一に分布、または、不均一に分布されてもよい。例えば、分解を制御するために、防護層中にある酸化クロム等の耐食性酸化物の量および/または酸化鉄等の低耐食性酸化物の量を制御することができる。一実施態様では、防護層組成は、約1ヶ月から5年、好ましくは4ヶ月から2年、より好ましくは6ヶ月から1年でインプラントが分解するようなものである。
【0086】
いくつかの実施態様では、本発明のインプラントは、分解性または非分解性のコーティングで部分的にまたは完全に被覆され得る。コーティング材料は、ポリマー、金属、金属合金、セラミック、治療剤、腐食剤、もしくは放射線不透過性物質、またはその組み合わせであってよい。コーティングは、疎水性コーティング、親水性コーティング、多孔性、非多孔性、水膨潤性コーティング、酸素障壁、ガス透過性障壁、半透過性障壁他またはその組み合わせであってよい。インプラントは、一枚以上のコーティングを有し得る。いくつかの実施態様では、ポリマーコーティングは、剤(塩、小分子、発泡剤等)をポリマーに組み込み、コーティング後または移植後に当該剤を浸出させることによって、強化された多孔性を有し得る。コーティングは、組織壁に分解するインプラントからの防護を提供し、分解産物を選択的に方向付けること、分解産物を包含すること、分解産物を中和すること、治療、腐食、もしくはその他の目的の剤を放出することによってインプラント分解を制御し、放射線不透過性他、またはその組み合わせを提供することができる。
【0087】
一実施態様では、コーティングは、覆われていない区域に隣接する、または当該区域にあるインプラントの腐食を開始するために、インプラント表面区域の少なくとも一部分を覆っていてよい。例えば、分解性のコーティングは、インプラント分解産物を血管組織から選択的に離れた方向へ導くために、血管ステントの内腔から離れた面を選択的に覆う。別の例において、コーティングは、インプラントの分解速度を制御するために、血管ステントの内腔面を選択的に覆う。
【0088】
別の例において、コーティングは、インプラントの分解速度を制御するために、インプラント金属もしくは合金またはその組み合わせを電解質または流体に接続する開口部をその表面上に有する。一実施態様では、開口部の平均直径、幅、または長さは、約1nmから10mm、好ましくは約100nmから1mm、より好ましくは約1マイクロメートルから100マイクロメートルの範囲であってよい。開口部の長さは、インプラントの長さおよびサイズに基づいてさらに可変し得る。開口部のサイズおよび形状は、円、正方形、楕円形、多角形、またはその他の均一なもしくはランダムな形状、またはその組み合わせ等、いかなる形状であってもよい。インプラントのコーティング上にある開口部の表面密度は、約1/cm2から1×109/cm2、好ましくは約10/cm2から1×106/cm2、より好ましくは約100/cm2から1×103/cm2の範囲であってよい。
【0089】
一実施態様では、コーティングは、インプラント金属もしくは合金またはその組み合わせよりも遅い速度で分解する。これにより、インプラント金属もしくは合金またはその組み合わせの分解の速度は、分解前のより長いインプラント寿命を実現するように制御される。別の実施態様では、コーティングは、インプラント金属もしくは金属合金またはその組み合わせよりも速く分解する。これにより、最初の期間、インプラントの分解を遅延させる。別の実施態様では、コーティングは、3日超、好ましくは1ヶ月超、より好ましくは4ヶ月超、インプラントの分解を遅延させる。別の実施態様では、コーティングは、生体内環境において、3日から3年、好ましくは1ヶ月から2年、より好ましくは4ヶ月から1年の範囲で分解する。さらに別の態様では、コーティングは、インプラントの分解速度に実質的に影響を及ぼすことなく、インプラントより速くまたは遅く分解することができる。任意の一つの装置に、2つ以上のコーティング材料が提供され得る。コーティング材料は、一般に、生理環境において異なる分解速度および/または異なる特性を有するように選択されることになる。多くの場合、一方の層が他方の層よりも速く分解するよう、2つ以上のコーティング材料が、一方を他方に重ねる形で層化されることになる。あるいは、当該2つ以上のコーティング材料を、通常は異なる速度であるが、同時に分解することが多くなるように、露出面の異なる領域上に被覆してもよい。異なる治療剤およびその他の活性剤を担持するために異なるコーティング材料を使用してもよく、この場合、以下でさらに詳細に説明するように、異なる放出速度を有することが望ましい。
【0090】
コーティングの厚さは、約0.1nmから100マイクロメートル、好ましくは1マイクロメートルから25マイクロメートル、より好ましくは5マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲であってよい。いくつかのポリマーコーティングについて、厚さは、約0.1マイクロメートルから100マイクロメートル、好ましくは約1マイクロメートルから50マイクロメートル、より好ましくは約5マイクロメートルから25マイクロメートルの範囲であってよい。いくつかの金属または金属合金コーティングについて、厚さは、約0.1nmから100マイクロメートル、好ましくは約1nmから50マイクロメートル、より好ましくは約1マイクロメートルから25マイクロメートルの範囲であってよい。
【0091】
適切な非分解性または遅分解性のコーティングは、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、酢酸酪酸セルロース、エチレンビニルアルコール共重合体、シリコーン、C‐flex、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パリレン、パリラスト、ポリ(メタクリル酸メチルブチラート)、ポリ‐N‐ブチルメタクリレート、ポリ(エチレンビニルアセテート)を持つポリブチルメタクリレート共重合体、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリエチレンビニルアセテート、ポリカーボネート、ポリアクリルアミドゲル、ポリ無水マレイン酸、ステアリルアンモニウムクロリドおよびベンジルアンモニウムクロリドを含む第四アンモニウム化合物、その他の合成もしくは天然重合物質を含む酢酸酪酸セルロース(Cellulose Acetate Butyrate;CAB)等;混合物、共重合体、またはその組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0092】
適切な生分解性のコーティングは、ポリ(乳酸)、ポリラクテート、ポリ(グリコール酸)、ポリグリコレートおよび共重合体および異性体、ポリジオキサノン、ポリ(エチルグルタメート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリヒドロキシバレレートおよび共重合体、ポリカプロラクトン、ポリアンヒドリド、ポリ(オルトエステル);ポリ(エーテルエステル)、ポリ(イミノカーボネート)、炭酸ポリエチレン等のポリアルキレンカーボネート、ポリトリメチレンカーボネート、デンプン系ポリマー、ポリエステルアミド、ポリエステルアミン、ポリシアノアクリレート、ポリホスファゼン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、N‐ビニル‐2‐ピロリドン、共重合体およびその他の脂肪族ポリエステル、または、ポリ乳酸の共重合体(ポリ‐D‐乳酸、ポリ‐L‐乳酸、ポリ‐DL‐乳酸等)およびポリ‐ε‐カプロラクトンを含むその適切な共重合体;混合物、共重合体、またはその組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0093】
適切な天然コーティングは、フィブリン、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、グリコスアミノグリカン、オリゴ糖とポリサッカリド、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、リン脂質、ホスホリルコリン、糖脂質、タンパク質、セルロース、および混合物、共重合体、またはその組み合わせを含む。
【0094】
適切な金属コーティングは、タングステン、マグネシウム、コバルト、亜鉛、鉄、ビスマス、タンタル、金、プラチナ、316L、304等のステンレス鋼、チタン合金、炭素等の半金属、ナノ多孔性コーティング、またはその組み合わせを含む。
【0095】
コーティングは、噴霧、ディッピング、インクジェット散布、プラズマ蒸着、イオン注入、スパッタリング、蒸発、気相蒸着、熱分解、電気メッキ、グロー放電コーティング他、またはその組み合わせを含むがこれらに限定されない方法によって、塗布され得る。
【0096】
コーティングは、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩、塩酸、クエン酸、アミノ酸、過酸化水素等の酸性化合物、水酸化カリウム等の塩基性化合物、ヒドロキシアパタイト、医薬品、酸性もしくは塩基性副産物を持つポリマー他等の、合成物質または生物製剤、またはその組み合わせである、インプラントまたはコーティングの分解を制御することができる剤から構成されるか、それらを包含するか、またはそれらに隣接してよい。コーティングに隣接して包含された剤は、約1ナノグラム/cm2から1000マイクログラム/cm2、好ましくは約1から500マイクログラム/cm2、より好ましくは約10から400マイクログラム/cm2の範囲であってよい。
【0097】
一例において、当該剤は、インプラントの表面の上部をコーティングで覆う。別の例において、当該剤は、コーティングと混合され、インプラント上に噴霧される。別の例において、コーティングは当該剤である。
【0098】
一実施態様では、当該剤は、移植前はインプラントの移植を誘発しない。別の実施態様では、当該剤は、移植前は実質的にインプラントの腐食を誘発しない。
【0099】
本発明のインプラントは、分解性または非分解性の、放射線不透過性の材料もしくはマーカー、または放射線不透過性のコーティングを包含してよい。
【0100】
治療剤の溶出
本発明のインプラントは、免疫賦活剤、抗癌剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血栓症薬剤、抗血小板剤、抗真菌剤、抗糖尿病剤、抗脂質異常剤、抗血管形成剤、血管形成剤、降圧剤、避妊薬、抗抑制剤、抗発作剤、疼痛管理剤、抗依存性薬剤、治癒促進剤、排卵促進剤、代謝管理剤などの薬理学的な因子、または薬剤もしくはその組み合わせにおけるその他の薬効分類を含んでもよい。実例となる免疫賦活剤は、ラパマイシン、エベロリムス、ABT 578、AP20840、AP23841、AP23573、CCI−779、重水素化ラパマイシン、TAFA93、タクロリムス、シクロスポリン、TKB662、ミリオシン、それらのアナログ、プロドラッグ、塩、その他、またはその組み合わせを含むがそれらに限定されない。
【0101】
実例となる抗癌剤は、以下を含む。アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール、アクロニシン、アドゼレシン、アラノシン、アルデスロイキン、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アモナフィド、アンプリゲン、アムサクリン、アンドロゲン、アンギジン(Anguidine)、グリシン酸アフィジコリン、アサレー(Asaley)、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、バシルス・カルメット・ゲラン(BCG)、(可溶性)ベイカーズアンチフォル、β−2’−デオキシチオグアノシン、ビサントレンHCL、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルフォキシミン、BWA 773U82、塩酸BW 502U83、メシル酸BW 7U85、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、クロロキノキサリン‐スルホンアミド、クロロゾトシン、クロモマイシンA3、シスプラチン、クラドリビン、コルチコステロイド、コリネバクテリウムパルブム、CPT−11、クリスナトール、シクロシチジン、シクロホスファミド、シタラビン、シテンベナ(Cytembena)、マレイン酸DABIS、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デアザウリジン(Deazauridine)、デクスラゾキサン、ジアンヒドロガラクチトール、ジアジコン、ジブロモズルシトール、ダイデムニンB、ジエチルジチオカルバミン酸、ジグリコールデヒド、ジヒドロ−5−アザシチジン、ドキソルビシン、エチノマイシン、エダトレキセート、エデルホシン、エフロルニチン、エリオット溶剤、エルサミトルシン、エピルビシン、エソルビシン、リン酸エストラムスチン、エストロゲン、エタニダゾール、エチオホス、エトポシド、ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、酢酸フラボン、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、5−フルオロウラシル、フルオゾール(登録商標)、フルタミド、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、酢酸ゴセレリン、ヘプスルファム、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ホモハリントニン、硫酸ヒドラジン、4−ヒドロキシアンドロステジオン、ヒドロキシ尿素、塩酸イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン−1αおよびβ、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−6、4−イポメアノール、イプロプラチン、イソトレチノイン、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロイド、レバミゾール、ダウノルビシンリポソーム、リポソーム封入ドキソルビシン、ロムスチン、ロニダミン、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、メルファラン、メノガリル、メルバロン、6−メルカプトプリン、メスナ、バシルス・カルメット・ゲランのメタノール抽出残渣、メトトレキサート、N−メチルホルムアミド、ミフェプリストン、ミトグアゾン、マイトマイシン‐C、ミトタン、塩酸ミトザントロン、単球/マクロファージ、コロニー刺激因子、ナビロン、ナフォキシジン、ネオカルチノスタチン、酢酸オクトレオチド、オルマプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パラ、ペントスタチン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ピラルビシン、ピリトレキシム、塩酸ピロキサントロン、PIXY−321、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プレドニムスチン、プロカルバジン、プロゲスチン、ピラゾフリン、ラゾキサン、サルグラモスチム、セムスチン、スピロゲルマニウム、スピロムスチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、スラミンナトリウム、タモキシフェン、タキソテール、テガフール、テニポシド、テレフタラミジン(Terephthalamidine)、テロキシロン、チオグアニン、チオテパ、チミジン注射、チアゾフリン、トポテカン、トレミフェン、トレチノイン、塩酸トリフロペラジン、トリフルリジン、トリメトレキサート、腫瘍壊死因子、ウラシルマスタード、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンゾリジン、Yoshi 864、ゾルビシン、QP−2、エポチロンD、エポチロンC、パクリタキセル、ドセタキセルなどのタキソール、ABJ879、パツピロン、MN−029、BMS247550、ET−743などのエクチナサイジン、テトラヒドロイソキノリンアルカロイド、シロリムス、アクチノマイシン、メトトレキサート、アンチオペプチン、ビンクリスチン、マイトマイシン、2−クロロデオキシアデノシン、など、カスポファンギン、ファルネシル化ジベンゾジアゼピノン、ECO−4601、フルコナゾール、などの抗真菌剤、フォリスタチン、レプチン、ミッドカイン、アンジオジェニン、アンジオポエチン−1、ベカプレルミン、レグラネクス、などの血管形成剤、カンスタチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、レチノイド、ツミスタチン(Tumistatin)、バスキュロスタチン、アンジオアレスチン、バソスタチン、ベバシズマブ、プリノマスタット、などの抗血管形成剤、メトホルミンなどの抗糖尿病剤、カンデサルタン、ディオバン、ジルチアゼム、アテノロール、アダラート、などの血圧降下剤、ラノラジン、硝酸イソソルビド、などの抗虚血薬。
【0102】
実例となる抗炎症剤は、以下のような標準的な非ステロイド系の抗炎症剤(NSAIDS)を含む。アスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、テノキシカム、トルメチン、ケトロラク、オキサプロシン、メフェナム酸、フェノプロフェン、ナブメトン(レラフェン)、アセトアミノフェン(Tylenol(登録商標))、およびその混合物、など、ニメスリド、NS−398、フロスリド、L−745337、セレコキシブ、ロフェコキシブ、SC−57666、DuP−697、パレコキシブナトリウム、JTE−522、バルデコキシブ、SC−58125、エトリコキシブ、RS−57067、L−748780、L−761066、APHS、エトドラク、メロキシカム、S−2474、およびその混合物、などのCOX−2抑制剤、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、フルプレドニソロン、ベタメタゾン、デキサメサゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン、プロピオン酸フルチカゾン、ピロキシカム、セレコキシブ、メフェナム酸、トラマドール、メロキシカム、メチルプレドニゾン、疑似プテロシン、などのグルココルチコイド、ゾレドロン酸、アレンドロネート、などの高カルシウム血症薬、プラビックス、ヘパリン、アリクストラ、およびフラキシパリン、など、またはその混合物のような抗血栓症薬剤。
【0103】
アナログ、プロドラッグ、誘導体、前駆体、フラグメント、塩、または医薬品のその他変化体もしくは変異体の使用は、すべて含まれる。
【0104】
アナログ、誘導体、プロドラッグ、塩、これらの医薬品の合成または生物学的同等物は、過剰増殖性の疾患、狭窄、創傷治癒、癌、動脈瘤、糖尿病、腹部大動脈瘤、血管形成、高カルシウム血症、虚血、細動、不整脈など、必要とされる治療の種類に応じて、前記分解性のインプラントから放出されることができる。
【0105】
前記剤は、非分解性のコーティング、部分的に分解性のコーティング、完全に分解性のコーティング、または組み合わせを用いて、前記インプラントから放出されることができる。コーティングの、これらの種類における実例となる例は、上記にて議論済みである。前記剤は、前記コーティングでの充填剤として組み入れられることができ、または前記インプラントに適用された上で、速度を制限する障壁として前記コーティングで覆われることができ、または前記薬剤は前記インプラントの面に対して直接コーティングされることができる。一実施例において、剤放出の前記速度は、前記インプラントの前記分解速度または前記インプラント環境内における生物学的反応事象に対応した、ある時間帯で、およびある持続期間中に、放出されるように構成できる。たとえば、抗炎症剤、抗増殖剤、または免疫賦活剤、またはこれらの組み合わせは、分解期間の全体において放出されるように作成できる。複合的な薬品は、前記コーティングの前記分解速度および/または前記インプラントの分解速度を適合させるように放出されることができる。抗血小板剤または抗血栓症薬剤は、初期段階において放出されることができ、抗炎症剤または抗増殖剤または免疫抑制剤は、同時にまたはより後の段階で放出されることができる。
【0106】
一実施例において、前記剤は、くぼみ、孔、貫通孔、筋、擦り傷、細孔、ざらつき、その他、またはその組み合わせなどの機構に包含される、または部分的に包含される。別の実施例において、前記剤は、保有宿主、溝、孔、貫通孔、流路、隆線間、その他、またはその組み合わせ、または前述からの一つ以上の組み合わせなどの、前記インプラント属性に包含される。別の実施例において、前記剤は、前記インプラントの前記面に保護膜として適用される。
【0107】
前記インプラントにおける治療剤またはその他の剤の量は、約1ナノグラム/cm2から1000マイクログラム/cm2、好ましくは約1から500マイクログラム/cm2、より好ましくは約10から400マイクログラム/cm2まで変動することができる。前記剤は、一日あたり約1ナノグラム/cm2から1000マイクログラム/cm2、好ましくは一日あたり約1マイクログラム/cm2から200マイクログラム/cm2、より好ましくは一日あたり約5mcg/cm2から100mcg/cm2までに及ぶ割合で前記インプラントから放出されてもよい。前記インプラントの周囲の組織における前記剤の取り込みは、約0.001ngm/gmの組織から1000マイクログラム/gmの組織、好ましくは約1ngm/gmの組織から100マイクログラム/gmの組織、より好ましくは約100ng/gmの組織から10マイクログラム/gmの組織までに及ぶことができる。
【0108】
いくつかの実施例において、前記剤は、1日から3年、好ましくは2週間から1年、より好ましくは1ヶ月から6ヶ月の範囲の期間にわたって前記インプラントから放出される。他の実施例において、前記剤は、1日より長い、好ましくは2週間より長い、より好ましくは1ヶ月より長い、より好ましくは4ヶ月より長い期間にわたって前記インプラントから放出される。
【0109】
前記剤は、前記ステントまたはインプラントと組み合わせられる、腐食可能なまたは腐食不可能なフィラメントまたは複数のフィラメント内に包含され得ると理解できる。
【0110】
前記インプラントまたはコーティングの分解は、身体環境において炎症反応を引き起こす場合がある。炎症は、全身治療または局部的治療によって提供される、薬理療法によって抑えることができる。実例となる抗炎症剤は、以下のような標準的な非ステロイド系の抗炎症剤(NSAIDS)を含む。アスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、テノキシカム、トルメチン、ケトロラク、オキサプロシン、メフェナム酸、フェノプロフェン、ナブメトン(レラフェン)、アセトアミノフェン(Tylenol(登録商標))、およびその混合物、ニメスリド、NS−398、フロスリド、L−745337、セレコキシブ、ロフェコキシブ、SC−57666、DuP−697、パレコキシブナトリウム、JTE−522、バルデコキシブ、SC−58125、エトリコキシブ、RS−57067、L−748780、L−761066、APHS、エトドラク、メロキシカム、S−2474、およびその混合物などのCOX−2抑制剤、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、フルプレドニソロン、ベタメタゾン、デキサメサゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン、ラパマイシン、などのグルココルチコイド、またはこれらの剤のアナログ、またはその組み合わせ。前記抗炎症剤は、前記インプラント上にコーティングされるか、または組み込まれることができ、または、好ましくは前記インプラントもしくはコーティングが身体環境において溶解するにつれて全身的に提供される。
【0111】
前記溶解性のインプラントからの前記金属イオンは、前記組織内部および/または全身的に提供されてもよく、非常に長い期間がかかる可能性があるが最終的にはシステムから排出される。キレート化のような追加的治療は、前記金属イオンを身体から排出するまたは身体内部で再分配する速度を加速させるために使用できる。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなキレート剤は、経口で、または静脈注射で、または前記インプラントもしくはインプラントコーティングによって包含されるような局部的手段、またはその他の手段によって投与できる。金属イオン封鎖剤は、金属または金属合金またはその組み合わせを身体から排出するまたは身体内部で再分配する速度を加速させるためにも使用できる。実例となる金属イオン封鎖剤の例は、オルトリン酸塩、オルトケイ酸塩、その他、またはその組み合わせを含むがそれらに限定されない。一実施例において、前記キレート剤または金属イオン封鎖剤は、前記インプラントのある部位に供給され、または前記インプラントもしくはコーティング内に組み込まれ、または前記インプラントの前記面の上に適用される。別の実施例において、前記キレート剤または金属イオン封鎖剤は、前記インプラント上で分解性または非分解性のコーティングによって制御放出される。これらの剤は、前記金属イオンが再分配されるか前記システムから排出されるということを確実にするために、前記金属インプラントに基づいて選択できる。前記剤は、前記剤が成分を前記金属イオンと交換する際、前記インプラントのある部位で溶着され得る成分を用いても取り入れることができる。
【実施例】
【0112】
実施例1
EDMドリルまたはSwissスクリューを用いて、直径5mmのコバルト棒の中心に直径1.52mmの孔を開ける。続いて、外径が1.63mmになるまで、棒をセンターレス研削盤にかける。結果として生じたコバルトチューブを、摂氏850度で1時間、真空オーブン中で焼き戻す。チューブをレーザー切断し、長さ18mmの冠状動脈ステントとする。化学処置でスラグおよびスケールを除去した後、直径0.020インチの金属マンドレルにステントを留置し、回転させる。360メッシュの酸化アルミニウム吹き付け加工媒体を持つサンドブラスター(Econoline社、ミシガン州グランドヘブン)のエラーノズルをステントに方向付け、10秒間空気作動させて、コバルトステントのすべての面に梨地状表面を作成する。温水を入れたビーカーに数回浸漬し、その後、100%イソプロパノールを入れたビーカーに浸漬して、ステントを清浄する。続いて、100%イソプロパノールを満たしたビーカー中に、ステントを入れる。このビーカーを超音波浴(Branson Ultrasonic Corporation、コネチカット州ダンベリー)に入れ、当該浴中でステントを5分間清浄する。乾燥後、3.0×20mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0113】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが右冠動脈の病変内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。ステントが展開され、コバルト金属は、ある期間にわたってその大部分を溶解し始める。
【0114】
実施例2
送達カテーテルに圧着する前に、実施例1で作製した冠状動脈ステントを33%ラパマイシンおよび66%ポリエチレン‐ビニルアルコール共重合体を含む基質で被覆する。乾燥後、ステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0115】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが左回旋動脈の病変内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。病変にステントが展開され、コバルト金属は、ある期間にわたってその大部分を溶解し始め、その間、薬物が放出される。
【0116】
実施例3
1.6mmのODおよび0.6mmのIDタングステン棒から冠状動脈ステントを作製する。EDMドリルで孔を1mmまで拡大する。続いて、外径が1.11mmになるまで、棒をセンターレス研削盤にかける。結果として生じたタングステンチューブを、摂氏1400度で1時間、真空オーブン中で焼き戻す。長さ25mmのステントパターンが形成されるような掘削機EDMでスロットを切断して、チューブとする。EDMで切断していないほうの端部を除去する。化学処置でスラグおよびスケールを除去した後、摂氏45度に加熱した2N塩酸で6時間ステントをエッチングして、その表面上に腐食くぼみ特徴を誘発する。
【0117】
温水を入れたビーカーに数回浸漬し、その後、100%エタノールを入れたビーカーに浸漬して、ステントを清浄する。続いて、100%エタノールを満たしたビーカー中に、ステントを入れる。このビーカーを超音波浴(Branson Ultrasonic Corporation、コネチカット州ダンベリー)に入れ、当該浴中でステントを5分間清浄する。乾燥後、3.5×27mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。滅菌後、パウチを金属箔パウチ内に入れる。箔パウチを不活性窒素ガスでパージし、空気を抜いた後、密封する。
【0118】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが左回旋動脈の病変内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。病変にステントが展開され、タングステン金属は、ある期間にわたってその大部分を溶解し始める。
【0119】
実施例4
銀ハイポチューブを切断し、8mmの冠状動脈ステントとする。化学処置でスラグおよびスケールを除去した後、20N塩酸中にステントを留置し、摂氏200度になるまで1時間加熱すると、腐食ピット表面特徴が生じる。熱湯を入れたビーカーに数回浸漬し、その後、100%イソプロパノールを入れたビーカーに浸漬して、ステントを清浄する。続いて、100%イソプロパノールを満たしたビーカー中に、ステントを入れる。このビーカーを超音波浴(Branson Ultrasonic Corporation、コネチカット州ダンベリー)に入れ、当該浴中でステントを5分間清浄する。乾燥後、2.5×10mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。プラスチックに脱酸素剤を埋入して作製したシースを、圧着されたステントの上に置く。ステント送達システムを金属パウチ内に密封し、ガンマ線滅菌で滅菌する。
【0120】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントがLAD冠動脈の病変内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。病変にステントが展開され、銀金属は、ある期間にわたってその大部分を溶解し始める。
【0121】
実施例5
実施例4と同じ手法で作製した18mmの冠状動脈ステントを、200μgのエポチロンDで被覆する。乾燥後、3.25×20mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムを金属パウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0122】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが右冠動脈の病変内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。病変にステントが展開され、銀金属は、薬物が放出される間、ある期間にわたってその大部分を溶解し始める。
【0123】
実施例6
実施例4と同じ手法で作製した13mmの尿道ステントを、タキソール、続いてポリジオキサノンのコーティングで被覆する。乾燥後、3.0×15mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0124】
尿道の閉塞区域にステント送達システムを挿入し、展開する。展開後、ステント金属は、薬物が放出される間、ある期間にわたってその大部分を隣接する組織および尿中に溶解し始める。
【0125】
実施例7
マグネシウムハイポチューブをレーザー切断し、18mmの冠状動脈ステントとする。化学処置でスラグおよびスケールを除去した後、続いて、100%イソプロパノールを満たしたビーカー中に、ステントを入れる。このビーカーを超音波浴(Branson Ultrasonic Corporation、コネチカット州ダンベリー)に入れ、当該浴中でステントを5分間清浄する。スパッタリングにより、ステントを1オングストロームのクロムのコーティングで被覆する。清浄および乾燥後、2.5×20mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0126】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが左冠動脈回旋枝の病変内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。病変にステントが展開され、マグネシウムは、ある期間にわたってその大部分を隣接する組織および血中に溶解し始める。
【0127】
実施例8
タングステンハイポチューブをレーザー切断し、長さ28mmの気管支ステントとする。化学処置でスラグおよびスケールを除去した後、タングステン蒸気の化学気相成長法によって、その表面に多くの小さなヒロックを蒸着させる。ヒロックは、400nmRaの間隔で密集していた。温水を入れたビーカーに数回浸漬し、その後、100%イソプロパノールを入れたビーカーに浸漬して、ステントを清浄する。乾燥後、35×30mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0128】
ガイドワイヤに沿わせて、癌のある左主気管支にステント送達システムを挿入する。ステントを展開させ、腫瘍による気道閉塞を開いて保持し、その間に薬物が癌を治療し、合金は、ある期間にわたって隣接する組織にその大部分を溶解し始める。
【0129】
実施例9
40%ビスマス‐60%スズチューブを回転固定具内に固着させる。チューブを曲げ、チューブの外面全体に傷がつくまで、チューブの表面に剃刀刃で傷をつける。腐食擦り傷特徴が不均一に分布される。次に、フェムト秒レーザーを使用してチューブをレーザー切断し、長さ14mmの動脈瘤ステントパターンとする。化学処置でスラグおよびスケールを除去した後、温水を入れたビーカーに数回浸漬し、その後、100%イソプロパノールを入れたビーカーに浸漬して、ステントを清浄する。乾燥後、2.5×15mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0130】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが脳動脈瘤内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。ステントが動脈瘤に展開され、合金は、ある期間にわたって隣接する組織および血中にその大部分を溶解し始める。
【0131】
実施例10
純タングステン金属から長方形の骨プレートを作製する。沸騰した20N塩酸にプレートを10分間浸して腐食くぼみ特徴を作成し、続いて、熱湯、その後100%イソプロパノール中における超音波清浄によって清浄する。清浄後、骨プレートを梱包し、25キログレイのガンマ放射線で滅菌する。骨プレートを骨折部の片側にある骨折した大腿骨に固定して、一時的な足場を作成する。骨プレートは、ある期間にわたって隣接する組織にその大部分を溶解し始める。
【0132】
実施例11
異なる処置を施した後の、コバルト、40%ビスマス‐60%インジウム合金タングステン、および316Lステンレス鋼から作製した平らな切り取り試片を、個別に秤量した。各切り取り試片を、生理食塩水を満たしたバイアル中に入れた。バイアルを摂氏37度まで加熱し、12rpmで回転させた。時間をおいて、切り取り試片をバイアルから除去し、温水で洗浄した後、100%イソプロパノールを満たしたディッシュに浸した。ディッシュを超音波浴中に5分間置いた。金属および合金からの速度損失の量を示したプロットを、図20〜21に示す。
【0133】
実施例12
1010炭素鋼チューブをレーザー切断し、長さ14mmの冠状動脈ステントとする。750℃で90分間、ステントを炉内で焼き戻す。続いてステントを清浄し、回転固定具内に固着させる。スラグおよびスケールが除去されてステントの表面が400nmRaの粗さのざらついた状態となるまで、20ミクロンの酸化アルミニウム媒体を用いてステントをサンドブラストする。清浄後、30%ラパマイシンアナログを包含する10ミクロンの炭酸ポリエチレンでステントを被覆し、3.5×15mmステント送達カテーテルのバルーンに圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、電子線で滅菌する。
【0134】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが冠動脈内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。ステントが冠動脈に展開され、合金は、ある期間にわたって隣接する組織および血中にその大部分を溶解し始める。
【0135】
実施例13
コバルト箔をレーザー切断し、25mmのフラットパターンの冠状動脈ステントとする。700℃で90分間、当該箔を真空炉内で焼き戻す。ステントは次にHClでスケール除去し、清浄する。清浄後、パターン箔の片側(内腔側)を厚さ1ミクロンのPLLAで被覆する。次に、ステントを管状ステント内に溶接する。清浄後、40%ラパマイシンアナログを包含する厚さ5ミクロンの炭酸ポリエチレンでステントを完全に被覆し、3.0×26mmステント送達カテーテルのバルーンに圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封する。パウチを冷却容器内に置き、当該容器を電子線に暴露して、ステント送達システムを滅菌する。
【0136】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが冠動脈に入るまで、ステント送達システムを挿入する。ステントが冠動脈に展開され、合金は、ある期間にわたって隣接する組織および血中にその大部分を溶解し始める。
【0137】
実施例14
1010炭素鋼チューブをレーザー切断し、長さ14mmの冠状動脈ステントとする。750℃で90分間、ステントを炉内で焼き戻す。続いてステントを清浄し、回転固定具内に固着させる。スラグおよびスケールが除去されてステントの表面が400nmの粗さ(Ra)のざらついた状態となるまで、20ミクロンの酸化アルミニウム媒体を用いてステントをサンドブラストする。清浄後、ステントを150マイクログラムのラパマイシンアナログで被覆し、3.5×15mmステント送達カテーテルのバルーンに圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、電子線で滅菌する。
【0138】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが冠動脈内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。ステントが冠動脈に展開され、合金は、ある期間にわたって隣接する組織および血中にその大部分を溶解し始める。
【0139】
本出願の様々な実施態様、実施例、および構成要素は、本出願全体を通して、別々に適用してもよいし、互いに組み合わせて適用してもよい。
【0140】
本明細書において引用したすべての出版物および特許出願は、個別の出版物または特許出願が具体的にまたは個別に参照することにより組み込まれることを示唆しているように、参照することにより本書に組み込まれる。
【0141】
前述の発明について、明瞭な理解を目的として、図示および実施例を用いてある程度詳細に説明したが、様々な代替形態、変更形態、および均等物を使用することができ、上記の説明は添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが明らかになるであろう。
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、医療装置および医療方法に関する。特に、本発明は、移植可能な管腔プロテーゼおよび生体内環境で分解するその他の医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景技術の説明
冠動脈疾患は、世界中の先進工業国において主要死亡原因となっている。当該疾患は、心臓へ血液を供給する主要な動脈の壁におけるアテローム硬化性の堆積物の蓄積として始まる。堆積物が蓄積すると、心臓への正常な血流が制限される。心臓は、そのような減少した血流をある程度埋め合わせることができるいくつかの代償機構を有する。これらの代償機構以外にも、定評ある多数の薬品治療が、軽度から中程度の冠動脈疾患を持つ患者における症状および死亡率の両方を改善することを示している。しかしながら、疾患が進行するにつれて、薬物治療にもかかわらず、その症状はより明白になる。特に運動時またはストレス時、心臓に十分な血液が得られない場合、進行性冠動脈疾患が消耗性胸痛または狭心症として現れる。現時点では、心臓へ流れる血液の量を増加させるために、機械的インターベンションが必要である。
【0003】
血管形成術は、進行性冠動脈疾患に対する最も一般的なインターベンション療法の1つである。経皮経管冠動脈形成術(Percutaneous Transluminal
Coronary Angioplasty;PTCA)処置を最初に行ったのは、Andreas Gruntzigである。彼は、小型バルーンを持つカテーテルを、大動脈を介して、部分閉塞のある冠動脈内へ進入させた。続いて、バルーンを膨張させ、血小板を動脈壁に対して圧迫し、心臓への血流を回復させた。
【0004】
PTCAは急速に成長し、血管形成カテーテルが小型化してより操作しやすくなったため、インターベンショナル心臓内科医が、より困難な冠閉塞にアクセスすることが可能になった。しかしながら、PTCAは、再狭窄または治療病変の再閉塞に悩まされてきた。一般に、全患者の30〜40%がPTCA後に再狭窄を起こしている。
【0005】
冠状動脈ステントは、再狭窄を防止するために、1990年代半ばに導入された。ステントは、冠動脈に留置された、小型金属コイル、スロット付きチューブ、メッシュ、または、骨格構造である。ステントは、PTCA後に冠動脈内に残存する、永久インプラントである。ステントは、動脈を広げ、血流を改善し、冠動脈疾患の症状を軽減する。冠状動脈ステントは、再狭窄を低減し、再狭窄率を15〜20%に低下させることが証明された初めての装置である。以来、ステントはPTCA処置の大部分において使用されている。
【0006】
従来のステントは、バルーン拡張型ステントおよび自己拡張型ステントという2つの形態を取っていた。一般に、いずれも金属材料で作られており、生体適合被膜を含んでよい。そのようなステントは、それらを展開することによって、または、カテーテルを通じて、人体に永久に埋め込まれる。そのような永久移植は、内膜過形成の量、血栓症、またはその他の医療悪影響を増加させ得る。冠状動脈ステントは、処置後により高い早期内径獲得を維持した結果、PTCA単独の場合と比較して、血管形成術後の15〜20%の低再狭窄率を達成するものである。
【0007】
ラパマイシンおよびパクリタキセル等の薬物を溶出する薬剤溶出ステントは、ステントによる内膜過形成率をさらに低減するように設計されていた。そのような薬剤溶出ステントは、金属または金属合金を、薬物の放出を制御する分解性または非分解性のポリマーと組み合わせたものである。そのような薬物を使用することにより、ステント単独の場合と比較して、再狭窄率をさらに低減させた。
【0008】
従来のステントおよび薬剤溶出ステントの両方に使用される金属または金属合金は、生物学的に安定しており、後で周囲組織とともに外科的に除去されない限り、患者の生涯にわたって体内に残存するように意図されている。したがって、これらのステントは、患者および執刀医にステントを除去するための第二の処置に取り掛かる準備ができていない限り、体内への一時的留置は許可されておらず、ほとんどの場合、困難または不可能である。
【0009】
ステント植込み術の主要な機能の一つは、血管壁に機械的支持を提供することおよび血流のための内腔を保つことであるが、管壁が治癒すると、ステントは継続的な目的をほとんど、または全く果たさなくなる。さらに、機械的に硬質のままであるステントの存在は、場合によっては患者に合併症を引き起こしかねない。したがって、血管の治癒中もしくは直後、またはその後で、溶解または分解するステントを提供することが望まれてきた。
【0010】
ポリ乳酸(Poly‐Lactic Acids;PLA)等の生分解性のポリマー材料からステントを作製するために、いくつかの試みが行われてきた。しかしながら、そのようなポリマーステントは、管壁に提供する機械的支持が弱い傾向があるため、同程度の金属ステントよりも実質的に厚くなくてはならない。その厚さによって、有効な血流腔を低減し、望ましくない生物学的反応を引き起こす場合がある。
【0011】
例えば特許文献1および特許文献2に記載されているように、近年、体内で分解する金属ステントを作製するための試みが行われている。US2004/009808および特許文献3も参照されたい。しかしながら、そのような分解性の金属ステントは、強度、プロファイル、および、従来の金属ステントに見られるその他の望ましい性質を損なっている場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,287,332号明細書
【特許文献2】米国特許第6,854,172号明細書
【特許文献3】国際公開第02/053202号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これらの理由により、物理的および機械的性質を改善した分解性の装置を提供することが望ましいであろう。特に、血管の治癒中および/もしくは治癒時、またはその後に分解可能であり、且つ、血管への損傷または再狭窄のリスクを低減するための機構を有する、ステントまたはその他の管腔プロテーゼを提供することが望ましいであろう。ステント、または、ステントによって治療している場所にある、血管およびその他の身体構造を治療するためのその他の装置から、薬理作用のある物質の局所的且つ制御された放出を提供することも望ましいであろう。そのような薬理作用のある物質は、再狭窄、ならびに、ステントまたはその他の装置に対するあらゆる炎症反応およびそれらの分解産物の両方を最小限に抑え得る。これらの目的の少なくともいくつかが、本発明の側面によって満たされるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
医療装置および医療方法は、臨床的に関連する期間にわたって分解性の本体を備える移植可能な構造体を利用する。本体は、様々な形態を取ってよく、様々な医学療法において使用され得る。好適な実施態様では、本体は、ステント、特に、冠動脈疾患の治療において使用される種類の血管ステントの形態を取る。本体は、装置に望ましい物理的および機械的属性を提供する材料を含む、または、それらの材料から形成もしくは構成される。好適な実施態様では、本体は、金属(純粋なもの、または不純物を持つもの)、金属合金、またはその組み合わせを含む。以下で使用する場合、「金属」という用語は、金属ならびに2つ以上の金属および金属合金の組み合わせに加えて、そのような純粋および不純な金属を含むものとする。移植可能な本体は、生理環境において、少なくとも部分的に分解性である。好ましくは、移植可能な構造体の材料は、以下で論じるように、臨床的に関連する期間の後に構造体が残存しないよう完全に分解可能であり、生理学的に良性の、好ましくは、生体内環境において自然発生する種類である分解副産物を生み出す。より好ましくは、移植可能な構造体の本体は、一般に生理環境内に存在するよりも少ない量の、分解副産物を生み出す。移植可能な構造体の分解速度は、個別に様々な性状において、またはその組み合わせにおいて、制御され得る。典型的な生理環境としては、血管腔ならびに尿管および尿道を含むその他の体腔、固形組織、脳組織等が挙げられる。
【0015】
本発明の第一の側面において、移植可能な構造体の本体の分解速度は、インプラント材料の組成の選択によって制御される。インプラント材料は、約1ヶ月から5年、通常は4ヶ月から2年、また多くの場合、6ヶ月から1年の範囲の、臨床的に関連する期間中に分解することができる、金属もしくは金属合金またはその組み合わせから選択される。したがって、移植可能な構造体の重量または体積は、一般に、約0.05%から3%、通常は一日当たり約0.1%から0.75%、より一般的には、一日当たり0.25%から0.5%の範囲のパーセンテージずつ、毎日減少することになる。
【0016】
移植可能な構造体の、金属、合金、または組み合わせ材料は、通常、0.0001amps/cm2から0.1amps/cm2、通常、一般に0.001amps/cm2から0.01amps/cm2、および、通常0.0025amps/cm2から0.008amps/cm2の範囲で、腐食電流(Icorr)を有するであろう。腐食電流は腐食速度に比例するため、より高いIcorr値を持つ材料は、血管またはその他の生理環境において、より迅速に腐食することになる。Icorrは、インプラントの材料特性、形状、および表面性質によって、ならびに、その他の要因のうち、生理環境によっても可変する。Icorr値は、一般に、本体全体または本体の任意部分の平均値を表すものとなる。
【0017】
第二の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、その形状を変更することにより、少なくとも一部分で制御される。そのような形状変更は、表面積対体積の比を含んでよい。例えば、構造体の分解速度を制御するために使用され得る体積を実質的に増加させずに、表面積を増加させるために、孔、貯留槽、溝他等の属性を本体に組み込むことができる。支柱を有するステントを移植可能な本体が備える場合、変更される形状は、支柱の幅と支柱の厚さの比を含み得る。
【0018】
本発明の第三の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、腐食誘発機構の追加により、少なくとも一部分で制御される。例えば、いくつかの実施態様では、移植可能な構造体は、少なくとも一つの面を有する移植可能な本体と、制御された分解速度で前記構造体の少なくとも一部を分解させる、前記少なくとも一つの面における少なくとも一つの腐食誘発機構と、を備える。好適な実施態様では、移植可能な本体は、金属、金属合金、またはその組み合わせを含む。いくつかの実施態様では、腐食誘発機構は、くぼみ、細孔、部分孔、空隙、またはこれらの組み合わせを備える。その他の実施態様では、腐食誘発機構は、表面の凹凸、擦り傷、筋、隆線、隆起、ざらつき、多孔性焼結金属もしくは合金、粗面またはこれらの組み合わせを備える。さらに他の実施態様では、腐食誘発機構は、孔、部分的もしくは完全な焼結細孔、またはこれらの組み合わせを備える。さらに、いくつかの実施態様では、移植可能な本体は、前記本体の第一の結合部分を伴う第一の面と、前記本体の第二の結合部分を伴う第二の面と、を有し、前記第一の面は、前記第一の結合部分を前記第二の結合部分とは異なる速度で分解させる密度および/または構成で存在する腐食誘発機構を有する。
【0019】
典型的な金属は、鉄、コバルト、タングステン、モリブデン、銀等を含む。これらの金属は、実質的に純粋であってよく、一般に、約90重量%、多くの場合95重量%超、および、頻繁に99.5重量%超の純度を有する。あるいは、これらの金属を、合金としてその他の金属または材料と組み合わせてよい。典型的な合金として、AISI‐1000シリーズの炭素鋼、AISI‐1300シリーズのマンガン鋼、AISI‐4000シリーズのモリブデン鋼、AISI‐4100シリーズのクロムモリブデン鋼、AISI‐4300シリーズおよびAISI‐8600シリーズのニッケルクロムモリブデン鋼、AISI‐4600シリーズのニッケルモリブデン鋼、AISI‐5100シリーズのクロム鋼、AISI‐6100シリーズのクロムバナジウム鋼、AISI‐9200シリーズのケイ素鋼等の鉄含有合金が挙げられる。その他の鉄含有合金は、少なくとも25%の鉄、好ましくは50%の鉄、より好ましくは75%の鉄、および多くの場合90%の鉄、95%の鉄、もしくは99%の鉄、またはそれ以上の重量を有するであろう。鉄合金は、0.05重量%から3重量%、好ましくは0.05重量%から1.0重量%、より好ましくは0.1重量%から0.6重量%の範囲で炭素を包含してよい。銀、スズ、コバルト、タングステン、モリブデン等の合金は、通常、少なくとも25重量%、通常少なくとも50重量%、多くの場合少なくとも75重量%、および時々90重量%、95重量%、もしくは98重量%、またはそれ以上の純金属を有するであろう。
【0020】
本発明の第四の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、インプラント構造体内における腐食強化元素および/または腐食抵抗元素の操作によって、少なくとも一部分で制御される。したがって、腐食に対する金属または金属合金の抵抗を下げる原子または化合物を、追加、または、すでにこれらの材料中に存在する場合には、増加してよい。さらに、一つ以上の腐食抵抗元素が消耗され得る。そのような元素の操作は、金属または合金の腐食を制御するために、インプラント構造体の表面上に、インプラント構造体の至るところに、または、金属もしくは合金の粒界に隣接して、発生し得る。
【0021】
本発明の第五の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、腐食制御剤の添加によって、少なくとも一部分で制御される。そのような剤は、酸性化合物、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩酸、クエン酸、アミノ酸、ヒドロキシアパタイト、過酸化水素、水酸化カリウム等の塩基性化合物、酸性および塩基性医薬品、または、酸性もしくは塩基性副産物を持つポリマー他等の、合成物質または生物製剤、またはその組み合わせであってよい。
【0022】
本発明の第六の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、ガルバニ電池の作成によって、少なくとも一部分で制御される。いくつかの実施態様では、金属または合金粒子は、流体または組織中で、インプラント構造体に隣接して送達される。これらの粒子は、インプラントに接触する流体中にあり、腐食誘発ガルバニ電池を作成する。ガルバニ電池は、例えば、電解生理環境において合金を酸化させるために電流を生成することができるように、異なる電気化学ポテンシャルを有する金属を合金にすることによって作成され得る。
【0023】
本発明の第七の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、材料の層化によって、少なくとも一部分で制御される。いくつかの実施態様では、移植可能な構造体は、第一の分解速度で分解する第一層と、第一の速度とは異なる第二の分解速度で分解する第二層とを有する移植可能な本体を備える。第一層および第二層は、金属、金属合金、またはその組み合わせを含み、それらの層は制御された分解速度で構造体の少なくとも一部を分解させる。第一層および第二層は、異なる不動態を有してよい。第一層および第二層は、電気化学系列が異なっていてよい。代替的に、または追加で、分解期間および/または分解速度は、層の異なる厚さのために異なっていてよい。
【0024】
本発明の第八の側面において、移植可能な構造体の分解速度は、防護層を組み込むこと、または操作することによって、少なくとも一部分で制御される。いくつかの実施態様では、移植可能な構造体は、分解速度を有する金属、金属合金、またはその組み合わせを含む移植可能な本体と、前記移植可能な本体の少なくとも一部を覆う層とを備え、移植可能な本体の分解速度を制御する層の性状が制御される。防護層は、不動態化層またはコーティングを備えてよい。そのようなコーティングは、ポリマー、金属、金属合金、治療剤、腐食剤、放射線不透過性物質、またはこれらの組み合わせを含んでよい。防護層のそのような性状は、移植可能な構造体の厚さ、化学組成、化学浸透性、耐久性、被覆率の量、またはその組み合わせを含んでよく、防護層のそのような性状は、耐食性酸化物の量を含んでよい。任意で、防護層は、移植可能な本体の基底部分を見せる開口部を有してよく、前記開口部は前記移植可能な本体の前記分解速度を制御することを補助する。
【0025】
本発明のさらなる側面において、制御された速度で分解する少なくとも一部を有する金属、金属合金、またはその組み合わせを含み、前記制御された分解速度は少なくとも二段階の異なる分解速度を有する体内埋め込み本体を備える、移植可能な構造体が提供される。いくつかの実施態様では、前記少なくとも二段階は、後の分解速度よりも遅い最初の分解速度を備える。その他の実施態様では、前記少なくとも二段階は、後の分解速度よりも速い最初の分解速度を備える。
【0026】
本発明の別の側面において、金属、金属合金、またはその組み合わせを含み、その構造によって可変する制御された分解速度で分解する少なくとも一部を有する移植可能な本体を備える、移植可能な構造体が提供される。好適な実施態様では、移植可能な本体はステントを備える。
【0027】
本発明のさらに別の側面において、制御された分解速度を有する金属、金属合金、またはその組み合わせを含む移植可能な本体と、移植可能な構造体から溶出する少なくとも一つの治療剤と、を備える移植可能な構造体が提供される。いくつかの実施態様では、治療剤は、抗癌剤、抗炎症薬、免疫抑制物質、抗増殖性物質、抗血小板物質、またはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、薬理作用のある物質を含む。別の側面において、移植可能な構造体は、移植可能な本体を少なくとも部分的に覆う、少なくとも一枚のコーティングをさらに備える。治療剤は、コーティング内に包含されていてもよいし、コーティングに隣接していてもよい。コーティングは、金属、ポリマー、セラミック;合成もしくは天然;およびまたはその組み合わせであってよい。コーティングは、分解性、部分的に分解性、非分解性、およびまたはその組み合わせであってよい。その他の実施態様では、治療剤は、分解の一段階において溶出する一つの治療剤と、分解の別の段階において溶出するもう一つの治療剤とを備える。さらに、その他の実施態様では、治療剤は、少なくとも部分的に腐食誘発機構内に包含される。
【0028】
本発明のその他の目的および利点は、添付の図面とともに、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
例えば、本願発明は以下を提供する。
(項目1)
少なくとも一つの面を有する移植可能な本体と、
上記少なくとも一つの面における少なくとも一つの腐食誘発機構であって、生理環境において、上記機構がない場合の速度よりも速い速度で、上記本体の少なくとも一部を分解させる腐食誘発機構と、
を備える、分解性の移植可能な構造体。
(項目2)
上記移植可能な本体は、金属、金属合金、またはその組み合わせを含む、項目1に記載の構造体。
(項目3)
上記金属、金属合金、またはその組み合わせは、コバルト、タングステン、ビスマス、銀、銅、鉄、亜鉛、マグネシウム、ジルコニウム、ニオブ、イリジウム、インジウム、ビスマス、スズ、ニッケル、およびその合金のうち少なくとも一つを含む、項目2に記載の構造体。
(項目4)
上記少なくとも一つの腐食誘発機構は、くぼみ、細孔、部分孔、空隙、またはこれらの組み合わせを備える、項目1に記載の構造体。
(項目5)
上記少なくとも一つの腐食誘発機構は、表面の凹凸、切り込み線、擦り傷、筋、隆線、隆起、ざらつき、多孔性焼結金属または合金、粗面、またはこれらの組み合わせを備える、項目1に記載の構造体。
(項目6)
上記少なくとも一つの腐食誘発機構は、孔、貫通孔、貫通焼結細孔、またはこれらの組み合わせを備える、項目1に記載の構造体。
(項目7)
上記移植可能な本体は、上記本体の第一の結合部分を伴う第一の面と、上記本体の第二の結合部分を伴う第二の面と、を有し、上記第一の面は、上記第一の結合部分を上記第二の結合部分とは異なる速度で分解させる密度で存在する腐食誘発機構を有する、項目1に記載の構造体。
(項目8)
上記移植可能な本体は、ステントを備える、項目1に記載の構造体。
(項目9)
第一の分解速度で分解する第一層であって、金属、金属合金、またはその組み合わせを含む第一層と、
上記第一の速度とは異なる第二の分解速度で分解する第二層であって、金属、金属合金、またはその組み合わせを含む第二層と、
を有する移植可能な本体を備え、上記層は生理環境において少なくとも一部の上記構造体を分解させる、分解性の移植可能な構造体。
(項目10)
上記第一層および第二層は、異なる不動態を有する、項目9に記載の構造体。
(項目11)
上記第一層および第二層は、電気化学的状態において異なっている、項目9に記載の構造体。
(項目12)
上記分解速度は、上記層の異なる厚さのために異なっている、項目9に記載の構造体。
(項目13)
上記移植可能な本体はステントを備える、項目9に記載の構造体。
(項目14)
分解速度を有する金属、金属合金、またはその組み合わせを含む移植可能な本体と、上記移植可能な本体の少なくとも一部を覆う層と、
を備え、上記層は上記移植可能な本体の上記分解速度を制御する、分解性の移植可能な構造体。
(項目15)
上記層は、不動態化層を備える、項目14に記載の構造体。
(項目16)
上記分解速度を制御するために、上記不動態化層の移植可能な構造体の厚さ、化学組成、耐久性、被覆率の量のうち少なくとも一つが選択される、項目15に記載の構造体。
(項目17)
上記分解速度を制御するために、上記不動態化層内に存在する耐食性酸化物の量が選択される、項目16に記載の構造体。
(項目18)
上記層は、セラミック、ポリマー、金属、金属合金、治療剤、腐食剤、放射線不透過性物質、またはこれらの組み合わせを含む、項目14に記載の構造体。
(項目19)
上記層は、上記移植可能な本体の基底部分を見せる開口部を有し、上記開口部は上記移植可能な本体の上記分解速度を制御することを補助する、項目18に記載の構造体。
(項目20)
上記移植可能な本体はステントを備える、項目14に記載の構造体。
(項目21)
ある分解速度で分解する部分を少なくとも有する金属、金属合金、またはその組み合わせを含み、上記分解速度は少なくとも二相の異なる分解速度を有する移植可能な本体を備える、分解性の移植可能な構造体。
(項目22)
上記少なくとも二相は、後の分解速度よりも遅い最初の分解速度を備える、項目21に記載の構造体。
(項目23)
上記少なくとも二相は、後の分解速度よりも速い最初の分解速度を備える、項目21に記載の構造体。
(項目24)
上記移植可能な本体はステントを備える、項目21に記載の構造体。
(項目25)
金属、金属合金、またはその組み合わせを含み、長さによって可変する分解速度で分解する部分を少なくとも有する移植可能な本体を備える、分解性の構造体。
(項目26)
上記移植可能な本体はステントを備える、項目25に記載の構造体。
(項目27)
金属、金属合金、またはその組み合わせを含み、その形状が分解速度に影響を及ぼす移植可能な本体を備える、分解性の構造体。
(項目28)
上記形状は、表面積対体積の比を備える、項目27に記載の構造体。
(項目29)
上記移植可能な本体はステントを備える、項目27に記載の構造体。
(項目30)
上記ステントは支柱の幅および支柱の厚さを有する支柱を含み、上記形状は、1.4対1を超える、支柱の幅対支柱の厚さ、または支柱の厚さ対支柱の幅の比を備える、項目29に記載の構造体。
(項目31)
分解速度を有する金属、金属合金、またはその組み合わせを含む移植可能な本体と、
移植可能な構造体から溶出する少なくとも一つの治療剤と、を備える分解性の構造体。
(項目32)
上記少なくとも一つの治療剤は、抗血小板剤、抗増殖剤、免疫抑制剤、薬理学的な因子、抗癌剤、抗炎症剤、医薬品、またはこれらの組み合わせを含む、項目31に記載の構造体。
(項目33)
上記移植可能な本体を少なくとも部分的に覆うコーティングをさらに備える、項目31に記載の構造体。
(項目34)
上記少なくとも一つの治療剤は、上記コーティングから溶出する、項目33に記載の構造体。
(項目35)
上記少なくとも一つの治療剤は、一相の分解において溶出する一つの治療剤と、もう一方の相の分解において溶出するもう一方の治療剤と、を含む、項目31に記載の構造体。
(項目36)
上記少なくとも一つの治療剤は、少なくとも部分的に腐食誘発機構内に含まれる、項目31に記載の構造体。
(項目37)
生理環境において、1ヶ月から5年の間の期間で溶解する速度に近い速度で分解する部分を少なくとも有する、金属、金属合金、またはその組み合わせを含む移植可能な本体
を備える、分解性の構造体。
(項目38)
金属から構成され、構造体を有する本体を備え、上記金属および構造体は、上記本体が生理環境において1ヶ月から5年までの期間で分解されることを可能にするために選択される、分解性のインプラント。
(項目39)
上記金属および構造体は、上記本体が4ヶ月から2年までの期間で分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目40)
上記金属および構造体は、上記構造体が6ヶ月から12ヶ月までの期間で分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目41)
上記金属および構造体は、上記本体が一日あたり平均で0.05%から3%まで質量を損失しながら分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目42)
上記金属および構造体は、上記本体が一日あたり平均で0.1%から0.75%まで質量を損失しながら分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目43)
上記金属および構造体は、上記本体が一日あたり平均で0.25%から0.5%まで質量を損失しながら分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目44)
上記金属および構造体は、上記本体が一日あたり平均で0.05%から3%まで体積を損失しながら分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目45)
上記金属および構造体は、上記本体が一日あたり平均で0.1%から0.75%まで体積を損失しながら分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目46)
上記金属および構造体は、上記本体が一日あたり平均で0.25%から0.5%まで体積を損失しながら分解されることを可能にするために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目47)
上記金属は、鉄、コバルト、タングステン、モリブデン、銀、銅、およびジルコニウム、インジウム、ビスマス、スズ、ニッケルより成る群から選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目48)
上記金属は、少なくとも90%の純度を有する、項目47に記載のインプラント。
(項目49)
上記純度は、少なくとも95%である、項目47に記載のインプラント。
(項目50)
上記純度は、少なくとも99.5%である、項目47に記載のインプラント。
(項目51)
上記金属は、鉄合金である、項目38に記載のインプラント。
(項目52)
上記鉄合金は、少なくとも25%の鉄を含む、項目51に記載のインプラント。
(項目53)
上記鉄合金は、少なくとも50%の鉄を含む、項目51に記載のインプラント。
(項目54)
上記鉄合金は、少なくとも75%の鉄を含む、項目51に記載のインプラント。
(項目55)
上記鉄合金は、少なくとも90%の鉄を含む、項目51に記載のインプラント。
(項目56)
上記鉄合金は、少なくとも99%の鉄を含む、項目51に記載のインプラント。
(項目57)
上記鉄合金は、炭素鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目58)
上記炭素鋼は、少なくとも0.05%から3%の炭素を含む、項目57に記載のインプラント。
(項目59)
上記炭素鋼は、少なくとも0.05%から1%の炭素を含む、項目57に記載のインプラント。
(項目60)
上記炭素鋼は、少なくとも0.1%から0.6%の炭素を含む、項目57に記載のインプラント。
(項目61)
上記炭素鋼は、1000シリーズの炭素鋼である、項目57に記載のインプラント。
(項目62)
上記鉄合金は、1300シリーズのマンガン鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目63)
上記鉄合金は、4000シリーズのモリブデン鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目64)
上記鉄合金は、4100シリーズのクロムモリブデン鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目65)
上記鉄合金は、4300シリーズのクロムモリブデン鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目66)
上記鉄合金は、8600シリーズのクロムモリブデン鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目67)
上記鉄合金は、4600シリーズのニッケル・クロムモリブデン鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目68)
上記鉄合金は、5100シリーズのクロム鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目69)
上記鉄合金は、6100シリーズのクロムバナジウム鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目70)
上記鉄合金は、9200シリーズのケイ素鋼である、項目51に記載のインプラント。
(項目71)
上記鉄合金は、少なくとも80%の鉄を包含する鋳鉄である、項目51に記載のインプラント。
(項目72)
上記金属合金は、銀を含む、項目51に記載のインプラント。
(項目73)
上記銀は、少なくとも25重量%存在する、項目72に記載のインプラント。
(項目74)
上記銀は、少なくとも50重量%存在する、項目72に記載のインプラント。
(項目75)
上記銀は、少なくとも75重量%存在する、項目72に記載のインプラント。
(項目76)
上記銀は、少なくとも90重量%存在する、項目72に記載のインプラント。
(項目77)
上記銀は、少なくとも95重量%存在する、項目72に記載のインプラント。
(項目78)
上記銀は、少なくとも98重量%存在する、項目72に記載のインプラント。
(項目79)
上記金属は、スズを含む、項目38に記載のインプラント。
(項目80)
上記スズは、少なくとも25重量%存在する、項目79に記載のインプラント。
(項目81)
上記スズは、少なくとも50重量%存在する、項目79に記載のインプラント。
(項目82)
上記スズは、少なくとも75重量%存在する、項目79に記載のインプラント。
(項目83)
上記スズは、少なくとも90重量%存在する、項目79に記載のインプラント。
(項目84)
上記スズは、少なくとも95重量%存在する、項目79に記載のインプラント。
(項目85)
上記スズは、少なくとも98重量%存在する、項目79に記載のインプラント。
(項目86)
上記金属は、コバルトを含む、項目38に記載のインプラント。
(項目87)
上記コバルトは、少なくとも25重量%存在する、項目86に記載のインプラント。(項目88)
上記コバルトは、少なくとも50重量%存在する、項目86に記載のインプラント。
(項目89)
上記コバルトは、少なくとも75重量%存在する、項目86に記載のインプラント。
(項目90)
上記コバルトは、少なくとも90重量%存在する、項目86に記載のインプラント。
(項目91)
上記コバルトは、少なくとも95重量%存在する、項目86に記載のインプラント。
(項目92)
上記コバルトは、少なくとも98重量%存在する、項目86に記載のインプラント。
(項目93)
上記金属は、タングステンを含む、項目38に記載のインプラント。
(項目94)
上記タングステンは、少なくとも25重量%存在する、項目93に記載のインプラント。
(項目95)
上記タングステンは、少なくとも50重量%存在する、項目93に記載のインプラント。
(項目96)
上記タングステンは、少なくとも75重量%存在する、項目93に記載のインプラント。
(項目97)
上記タングステンは、少なくとも90重量%存在する、項目93に記載のインプラント。
(項目98)
上記タングステンは、少なくとも95重量%存在する、項目93に記載のインプラント。
(項目99)
上記タングステンは、少なくとも98重量%存在する、項目93に記載のインプラント。
(項目100)
上記金属は、モリブデンを含む、項目38に記載のインプラント。
(項目101)
上記モリブデンは、少なくとも25重量%存在する、項目100に記載のインプラント。
(項目102)
上記モリブデンは、少なくとも50重量%存在する、項目100に記載のインプラント。
(項目103)
上記モリブデンは、少なくとも75重量%存在する、項目100に記載のインプラント。
(項目104)
上記モリブデンは、少なくとも90重量%存在する、項目100に記載のインプラント。
(項目105)
上記モリブデンは、少なくとも95重量%存在する、項目100に記載のインプラント。
(項目106)
上記モリブデンは、少なくとも98重量%存在する、項目100に記載のインプラント。(項目107)
上記金属は、0.0001amps/cm2から0.1amps/cm2までの範囲の腐食電流(Icorr)値を有する、項目38に記載のインプラント。
(項目108)
上記Icorr値は、0.001amps/cm2から0.01amps/cm2までの範囲である、項目107に記載のインプラント。
(項目109)
上記Icorr値は、0.0025amps/cm2から0.008amps/cm2までの範囲である、項目107に記載のインプラント。
(項目110)
上記金属は、生物学的に適合した分解産物に分解する、項目38に記載のインプラント。
(項目111)
上記分解産物は、自然の状態で人体中に存在する物質と化学的に同じものである、項目110に記載のインプラント。
(項目112)
上記金属は、延性である、項目38に記載のインプラント。
(項目113)
上記金属は、破壊前、少なくとも1.2倍に引き伸ばされることができる、項目112に記載のインプラント。
(項目114)
上記金属は、破壊前、少なくとも1.3倍に引き伸ばされることができる、項目112に記載のインプラント。
(項目115)
上記金属は、破壊前、少なくとも1.4倍に引き伸ばされることができる、項目112に記載のインプラント。
(項目116)
上記金属は、破壊前、少なくとも1.6倍に引き伸ばされることができる、項目112に記載のインプラント。
(項目117)
送達のための縮小幅および移植のための拡張幅を有する、引き伸ばし可能なプロテーゼを備える、項目38に記載のインプラント。
(項目118)
上記プロテーゼは、複数の支柱を備える、項目117に記載のインプラント。
(項目119)
上記支柱は、0.004インチ以下の厚さを有する、項目118に記載のインプラント。
(項目120)
上記支柱は、0.003インチ以下の厚さを有する、項目118に記載のインプラント。
(項目121)
上記支柱は、0.002インチ以下の厚さを有する、項目118に記載のインプラント。
(項目122)
上記支柱は、0.0015インチ以下の厚さを有する、項目118に記載のインプラント。
(項目123)
上記支柱は、0.001インチ以下の厚さを有する、項目118に記載のインプラント。
(項目124)
上記支柱は、幅対厚さの比が少なくとも1.4対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目125)
上記支柱は、幅対厚さの比が少なくとも2対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目126)
上記支柱は、幅対厚さの比が少なくとも3対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目127)
上記支柱は、幅対厚さの比が少なくとも4対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目128)
上記支柱は、厚さ対幅が少なくとも1.4対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目129)
上記支柱は、厚さ対幅が少なくとも2対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目130)
上記支柱は、厚さ対幅が少なくとも3対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目131)
上記支柱は、厚さ対幅が少なくとも4対1である、項目118に記載のインプラント。
(項目132)
生理環境において1ヶ月間分解した後の上記支柱は、その初期の強度の少なくとも25%を依然として維持している、項目118に記載のインプラント。
(項目133)
生理環境において1ヶ月間分解した後の上記支柱は、その初期の強度の少なくとも50%を依然として維持している、項目118に記載のインプラント。
(項目134)
生理環境において1ヶ月間分解した後の上記支柱は、その初期の強度の少なくとも60%を依然として維持している、項目118に記載のインプラント。
(項目135)
上記金属および構造体は、その暴露された表面にわたって実質的に均一に分解するために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目136)
上記金属および構造体は、その暴露された表面にわたって非均一に分解するために選択される、項目38に記載のインプラント。
(項目137)
上記インプラント構造体は、腐食を促進する上記インプラントの暴露された表面において少なくとも一つの機構を備える、項目38に記載のインプラント。
(項目138)
上記機構は、くぼみ、細孔、空隙、焼結、隆起、隆線、および切り込み線のうちの一つ以上を含む、項目137に記載のインプラント。
(項目139)
上記機構は、上記機構のないインプラントと比較して少なくとも10%、生理環境において重量での分解速度を増加させる、項目137に記載のインプラント。
(項目140)
上記機構は、上記機構のないインプラントと比較して少なくとも20%、生理環境において重量での分解速度を増加させる、項目137に記載のインプラント。
(項目141)
上記機構は、上記機構のないインプラントと比較して少なくとも40%、生理環境において重量での分解速度を増加させる、項目137に記載のインプラント。
(項目142)
上記機構は、少なくとも100nmの平均表面粗度を提供する、項目137に記載のインプラント。
(項目143)
上記機構は、少なくとも400nmの平均表面粗度を提供する、項目137に記載のインプラント。
(項目144)
上記機構は、少なくとも1000nmの平均表面粗度を提供する、項目137に記載のインプラント。
(項目145)
上記インプラントの暴露された表面の少なくとも一部は、材料でコーティングされている、項目38に記載のインプラント。
(項目146)
上記コーティング材料は、生理環境において分解性である、項目145に記載のインプラント。
(項目147)
上記材料は、上記本体のものより速い分解速度を有する、項目146に記載のインプラント。
(項目148)
上記材料は、上記本体のものより遅い分解速度を有する、項目146に記載のインプラント。
(項目149)
上記コーティング材料は、生理環境において非分解性である、項目145に記載のインプラント。
(項目150)
上記コーティングは、上記本体の生理環境への暴露を制御するためにパターン化される、項目145に記載のインプラント。
(項目151)
上記コーティングは、多孔性である、項目145に記載のインプラント。
(項目152)
上記コーティングは、非多孔性である、項目145に記載のインプラント。
(項目153)
上記コーティングは、金属性である、項目145に記載のインプラント。
(項目154)
上記コーティングは、非金属性である、項目145に記載のインプラント。
(項目155)
上記コーティングは、セラミックである、項目145に記載のインプラント。
(項目156)
上記コーティングは、ポリマーを含む、項目145に記載のインプラント。
(項目157)
上記コーティングは、治療剤を含む、項目145に記載のインプラント。
(項目158)
上記ポリマーは、多孔率制御剤を含む、項目157に記載のインプラント。
(項目159)
上記多孔率制御剤は、塩および発泡剤より成る群から選択され、上記剤は、移植後少なくとも部分的に浸出する、項目158に記載のインプラント。
(項目160)
2つ以上のコーティング材料を含む、項目145に記載のインプラント。
(項目161)
上記2つ以上のコーティング材料は、異なる分解速度を有する、項目160に記載のインプラント。
(項目162)
上記2つ以上のコーティング材料は、重ねられる、項目160に記載のインプラント。
(項目163)
上記2つ以上のコーティング材料は、上記暴露された表面の異なる領域にわたってコーティングされる、項目160に記載のインプラント。
(項目164)
上記ポリマーコーティング材料は、0.1μmから100μmまでの範囲で上記本体にわたって厚さを有する、項目156に記載のインプラント。
(項目165)
上記ポリマーコーティング材料は、1μmから50μmまでの範囲で上記本体にわたって厚さを有する、項目156に記載のインプラント。
(項目166)
上記ポリマーのコーティング材料は、5μmから25μmまでの範囲で上記本体にわたって厚さを有する、項目156に記載のインプラント。
(項目167)
上記金属製コーティング材料は、0.1nmから100μmまでの範囲で上記本体にわたって厚さを有する、項目153に記載のインプラント。
(項目168)
上記コーティング材料は、1nmから50μmまでの範囲で上記本体にわたって厚さを有する、項目154に記載のインプラント。
(項目169)
上記コーティング材料は、5nmから25μmまでの範囲で上記本体にわたって厚さを有する、項目154に記載のインプラント。
(項目170)
上記コーティングは、治療剤を含む、項目145に記載のインプラント。
(項目171)
上記剤は、1ng/cm2から1000μg/cm2までの量で上記本体上に存在する、項目170に記載のインプラント。
(項目172)
上記剤は、1ng/cm2から500μg/cm2までの量で上記本体上に存在する、項目170に記載のインプラント。
(項目173)
上記剤は、10ng/cm2から400μg/cm2までの量で上記本体上に存在する、項目170に記載のインプラント。
(項目174)
上記治療剤は、生理環境において一日あたり1ng/cm2から1000μg/cm2までの速度で放出される、項目170に記載のインプラント。
(項目175)
上記治療剤は、生理環境において一日あたり1μg/cm2から200μg/cm2までの速度で放出される、項目170に記載のインプラント。
(項目176)
上記治療剤は、生理環境において一日あたり5mcg/cm2から100mcg/cm2までの速度で放出される、項目170に記載のインプラント。
(項目177)
上記治療剤は、生理環境において1日から3年までの範囲の期間にわたって上記本体から放出される、項目170に記載のインプラント。
(項目178)
上記治療剤は、生理環境において2週間から1年までの範囲の期間にわたって上記本体から放出される、項目170に記載のインプラント。
(項目179)
上記治療剤は、生理環境において1ヶ月から6ヶ月までの範囲の期間にわたって上記本体から放出される、項目170に記載のインプラント。
(項目180)
上記治療剤は、抗増殖剤を含む、項目170に記載のインプラント。
(項目181)
上記治療剤は、免疫抑制剤を含む、項目170に記載のインプラント。
(項目182)
上記治療剤は、抗新生物薬を含む、項目170に記載のインプラント。
(項目183)
上記治療剤は、抗炎症剤を含む、項目170に記載のインプラント。
(項目184)
上記治療剤は、抗血小板剤を含む、項目170に記載のインプラント。
(項目185)
上記治療剤は、シロリムスおよびそのアナログを含む、項目170に記載のインプラント。
(項目186)
上記治療剤は、パクリタキセルおよびそのアナログを含む、項目170に記載のインプラント。
(項目187)
上記金属は鉄を含み、上記化合物は鉄種である、項目111に記載のインプラント。
(項目188)
上記金属は、原則的に、鉄または鉄合金から成る、項目187に記載のインプラント。
(項目189)
上記化合物は、自然の状態で人体中に存在する量の10倍未満の量で生成される、項目188に記載のインプラント。
(項目190)
上記化合物は、自然の状態で人体中に存在する量の5倍未満の量で生成される、項目188に記載のインプラント。
(項目191)
上記化合物は、自然の状態で人体中に存在する量の2倍未満の量で生成される、項目188に記載のインプラント。
(項目192)
上記化合物は、自然の状態で人体中に存在する量以下の量で生成される、項目188に記載のインプラント。
(項目193)
上記機構は、上記暴露された表面にわたって均一に分布する、項目137に記載のインプラント。
(項目194)
上記機構は、上記暴露された表面にわたって非均一に暴露される、項目137に記載のインプラント。
(項目195)
上記機構は、1nmから1mmの範囲で、直径、奥行き、幅、および長さから選択される寸法を有する、項目137に記載のインプラント。
(項目196)
上記機構は、10nmから100マイクロメートルの範囲で、直径、奥行き、幅、および長さから選択される寸法を有する、項目137に記載のインプラント。
(項目197)
上記機構は、100nmから1マイクロメートルの範囲で、直径、奥行き、幅、および長さから選択される寸法を有する、項目137に記載のインプラント。
(項目198)
上記機構は、1/cm2から1014/cm2までの範囲の表面密度を有する、項目137に記載のインプラント。
(項目199)
上記機構は、100/cm2から108/cm2までの範囲の表面密度を有する、項目137に記載のインプラント。
(項目200)
上記機構は、1000/cm2から106/cm2までの範囲の表面密度を有する、項目137に記載のインプラント。
(項目201)
機構でコーティングされた表面積のパーセンテージは、0.1%から99.9%までの範囲である、項目137に記載のインプラント。
(項目202)
機構でコーティングされた表面積のパーセンテージは、5%から75%までの範囲である、項目137に記載のインプラント。
(項目203)
機構でコーティングされた表面積のパーセンテージは、10%から50%までの範囲である、項目137に記載のインプラント。
(項目204)
上記コーティングは、治療剤を含むか、それに隣接する、項目145に記載のインプラント。
(項目205)
上記コーティングは、上記分解するインプラントから周囲組織を保護する、項目145に記載のインプラント。
(項目206)
上記コーティングは、分解産物を周囲組織または血液から選択的に離れた方向へ導く、項目145に記載のインプラント。
(項目207)
上記コーティングは、分解産物を周囲組織または血液の方へ選択的に近づける方向へ導く、項目145に記載のインプラント。
(項目208)
上記コーティングは、分解産物を中和する、項目145に記載のインプラント。
(項目209)
上記コーティングの厚さ、化学組成、耐久性、および/または移植可能な構造体の被覆率のうちの少なくとも一つは、分解速度を制御するために選択される、項目14に記載の構造体。
(項目210)
上記多孔率制御剤は、塩および発泡剤より成る群から選択され、移植前少なくとも部分的に浸出する、項目158に記載のインプラント。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明によるインプラントの実施形態の例を、ステントの形態で図示している。
【図2A】図2Aは、金属および金属合金分解データの例を示す。
【図2B】図2Bは、ステンレス鋼と比較した、いくつかの金属および金属合金インプラント材料の経時的な重量損失を表すデータを図示している。
【図3】図3は、その上に腐食誘発機構の例を有するステント本体の一部を図示している。
【図4】図4は、ステント本体上にある腐食誘発機構の例の拡大図を提供している。
【図5】図5は、その中に伸長する腐食誘発機構の例を有するステント本体の支柱の断面を図示している。
【図6】図6は、表面からインプラントへ伸長する、各種形状およびサイズの腐食誘発機構の例を有するインプラントの表面を図示している。
【図7】図7は、表面から伸長してインプラント内で交差または接合する腐食誘発機構の例を持つ、インプラント本体の断面を図示している。
【図8】図8は、表面から伸長し、インプラント内に側枝を含む、腐食誘発機構の例を図示している。
【図9】図9は、表面からインプラント内へ伸長し、表面から外側へ伸長する少なくとも一つの突起を含む、腐食誘発機構の例を図示している。
【図10】図10は、腐食誘発機構の例を、擦り傷の形態で図示している。
【図11】図11は、梨地状表面の形態で腐食誘発機構の例を有するインプラントの表面を図示している。
【図12】図12は、インプラントを通って伸長する孔の形態で腐食誘発機構の例を有するインプラントの、一部の断面を図示している。
【図13】図13は、複数の側枝を含む孔の例を図示している。
【図14】図14は、インプラントの表面全体にわたって実質的に均一に分布された、腐食誘発機構の例を図示している。
【図15】図15は、インプラントの表面全体にわたって不均一に分布された、図14の腐食誘発機構の例を図示している。
【図16】図16は、腐食誘発機構の例を、インプラントの表面全体にわたって実質的に均一に分布された筋の形態で図示している。
【図17】図17は、インプラントの表面全体にわたって不均一に分布された、図16の腐食誘発機構の例を図示している。
【図18】図18は、インプラントに隣接する流体または組織中の粒子の例を図示している。
【図19】図19は、三つの層を有するインプラントの断面図の例を図示している。
【図20】図20は、腐食誘発機構の例を持ついくつかの金属および合金の分解速度を示すプロットを提供している。
【図21】図21は、腐食誘発機構の例を持ついくつかの金属および合金の分解速度を示すプロットを提供している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明の装置は、様々な形態を取ってよく、様々な医学療法において使用され得る。好適な実施態様では、当該装置は、血管疾患の治療において使用される血管ステントの形態を取る。ステントは、動脈、静脈、胆管、または食道等の様々な体腔において使用され得ることが十分に理解できる。
【0031】
その他の実施態様では、本発明の装置は、グラフトインプラント、血管インプラント、非血管インプラント、移植可能な管腔プロテーゼ、創縫合インプラント、薬物送達インプラント、縫合糸、生物学的送達インプラント、尿道インプラント、子宮内インプラント、臓器インプラント、骨プレートを含む骨インプラント、骨ねじ、歯科インプラント、椎間板等、様々なインプラントの形態を取る。当該装置は一般に、過剰増殖性疾患、再狭窄、循環器疾患、創傷治癒、癌、動脈瘤、糖尿病疾患、腹部大動脈瘤、高カルシウム血症、虚血、細動、不整脈他の治療のために、臓器、血管、導管、または骨に対し、支持すること、包含すること、共に保持すること、取り付けること、埋めること、閉じること、薬物を送達すること、生物製剤を送達することのうち一つ以上を可能にする。
【0032】
したがって、以下の詳細な説明では、本発明を説明する手段の一例としてステントを利用し、これは本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0033】
(ステントとしてのインプラント)
好適な実施態様では、インプラントはステントの形態を取る。ステントの設計は、いくつか例を挙げると、コイル、スロット付きチューブ、波形リング、シート、圧延シート、締め付け設計、およびステントグラフトを含む。図1は、ステント10の実施形態を拡張状態で図示するものである。示されているように、ステント10は、第一端12と、第二端14と、中心内腔16とを有する。ステント本体18は、第一端12から第二端14へ伸長している。本体18は、格子状構造を形成する支柱20を有する。支柱20は、円形、長方形またはその他の形状の断面を有し得る。一般に、支柱の厚さは、約0.0005インチから0.010インチ、好ましくは約0.001インチから0.004インチ、より好ましくは約0.0015インチから0.003インチの範囲である。支柱の幅は、一般に、約0.001インチから0.008インチ、好ましくは約0.002インチから0.004インチの範囲である。
【0034】
ステント10は、自己拡張型またはバルーン拡張型であってよい。ステントの拡張前の直径は、一般に、約0.3mmから10mm、好ましくは約0.5mmから4mm、より好ましくは約0.8mmから2mmの範囲である。ステントの拡張後の直径は、一般に、約1.5mmから35mm、好ましくは約2mmから10mm、より好ましくは約2mmから5mmの範囲である。ステント10が形成される材料に応じて、当該材料は一般に、約5%から100%、好ましくは約15%から70%、より好ましくは約20%から50%の範囲の伸び率を有する。
【0035】
(インプラントの分解)
上述したように、本発明の装置は、生物環境において分解性である。分解、微生物分解、溶解、生物吸収、吸収、融食、腐食、浸食、生物浸食、侵食性、生物侵食性、および崩壊という用語は、別段の定めがない限り、化学的、生物学的、電気的、機械的、またはその他任意の手段によって質量、体積、または機能におけるそのような劣化を表現するその他の用語と、同義で使用されることが十分に理解され得る。
【0036】
本発明に関連するような分解は、約1ヶ月から5年等、臨床的に関連する期間内での分解と考えられていることも、十分に理解され得る。一般的な金属または合金は、材料の固有特性および環境条件に応じて、最大1000年以上の範囲までのはるかに長期間で腐食することができるが、そのような金属または金属合金は、臨床現場では非分解性であると考えられている。好適な実施態様では、本発明の装置は、生体内環境において、約1ヶ月から5年、好ましくは約4ヶ月から2年、より好ましくは約6ヶ月から1年の範囲で実質的に分解する。いくつかの実施態様では、当該装置は、生体内環境において、数週間、1週間、数日、1日、数時間、1時間以下等、1ヶ月未満で少なくとも部分的に分解する。例えば、当該装置は、1ヶ月または1ヶ月以内で溶解する速度に近いように制御された分解速度で分解する少なくとも一部を有し得る。分解を生じる生体内環境は、一般に、約3から10、通常は約5から9、一般に約6から8の範囲の局部組織pHを有する。
【0037】
本発明の装置の分解は、一つの段階ではより遅い分解速度、別の段階ではより速い分解速度等、複数の段階で発生し得る。いくつかの実施態様では、当該装置は、初期段階ではより遅い速度、後期段階ではより速い速度で分解する。その他の実施態様では、当該装置は、初期段階ではより速い速度、後期段階ではより遅い速度で分解する。さらに、分解は、構造体に沿って均一であってもよいし、構造体に沿って可変であってもよい。平均質量または体積率損失は、一日あたり約3%から一日あたり0.05%、好ましくは、一日あたり約0.75%から一日あたり0.1%、より好ましくは、一日あたり約0.5%から一日あたり0.25%の範囲であってよい。
【0038】
インプラントが金属または金属合金から構成される場合、インプラントの分解は、金属イオン、塩、または錯体等の副産物を生み出す。好ましくは、これらの副産物は生体内環境内における自然発生的要素であるか、重大な悪影響を引き起こさないものである。より好ましくは、移植可能な構造体は、一般に生体内環境内に存在するより少ない量の分解副産物を生み出す。さらに、インプラントの分解の速度は、分解副産物からのあらゆる負の生物学的反応の可能性を最小限に抑えるように制御され得る。現在、急性血栓症または遅発性血栓症を防止するため、ステント等の従来の非分解性装置の永久移植を受けている患者には、長期抗血小板物質治療が推奨されている。全身抗血小板物質治療は、内出血等の副作用を有する。本発明の分解性のインプラントが使用される場合、インプラントが溶解してしまえば血栓症のリスクが低減されるため、長期抗血小板物質治療は必須ではない。これにより、処置に関連するコストを下げ、薬物の服用量についての患者コンプライアンスに関連するリスクを最小限に抑えることもできる。一例として、インプラントが鉄または鉄合金を備える、または本質的にそれらから成る場合、分解産物は、人体において自然発生する種類の酸化鉄種等、生体適合鉄種を含み得る。分解速度を制御することにより、これらの種の濃度を、正常量の10倍未満、好ましくは5倍未満、より好ましくは2倍未満、最も好ましくは体内に自然に存在する以下の水準に保つことができる。特に好適な金属は炭素鋼であり、その場合、分解された種には、主として、または排他的に鉄と炭素の化合物が含まれることになる。
【0039】
(金属および金属合金)
好適な実施態様では、本発明の装置は、少なくとも部分的に分解性の金属、金属合金、またはその組み合わせを含む。
【0040】
金属の例として、コバルト、タングステン、ビスマス、銀、銅、鉄、亜鉛、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、スズ、またはその他の金属が挙げられる。いくつかの実施態様では、インプラント金属の純度は、約90重量%から100重量%、好ましくは約95重量%から99.99%、より好ましくは約99.5から99.9重量%の範囲である。
【0041】
金属合金の例は、いくつか例を挙げると、1)銀含有合金(銀スズ合金等)、2)コバルト含有合金(コバルト鉄合金等)、3)鉄含有合金(80‐55‐06グレードの延性鋳鉄、その他の延性鋳鉄、AISI‐1010鋼、AISI‐1015鋼、AISI‐1430鋼、AISI‐8620鋼、AISI‐5140鋼、またはその他の鋼他等)、4)タングステン含有合金、5)溶融合金(40%ビスマス‐60%スズ、58%ビスマス‐42%スズ、ビスマス‐スズ‐インジウム合金他等)、6)マグネシウム合金、7)亜鉛合金、8)形状記憶または超弾性合金、および、9)その他の合金を含む。
【0042】
いくつかの実施態様では、本発明の装置は、一つを超える金属または金属合金から構成される。金属+金属インプラントの例としては、コバルト+タングステン、タングステン+鉄、マグネシウム+鉄、銀+亜鉛他が挙げられる。金属+合金インプラントの例としては、タングステン+8620鋼、チタン+低炭素鋼、マグネシウム+1015鋼合金、銀+ビスマス‐スズ合金他が挙げられる。合金+合金インプラントの例としては、8620鋼+銀‐スズ、1015鋼+ビスマス‐スズ他が挙げられる。
【0043】
金属および金属合金の分解データの例を、図2Aに示す。図2Bは、ステンレス鋼と比較した、いくつかの金属および金属合金インプラント材料の経時的な重量損失を表すデータを図示している。
【0044】
金属の分解を一般的に腐食と称し、本明細書では、「分解」および「腐食」という用語は、すべての材料について同義で使用される。ほとんどの金属腐食は、生体内環境内に見られるような、金属と電解質溶液との間の界面における電気化学反応によって発生する。腐食は一般に、陽極および陰極反応の結果として発生する。
【0045】
金属の電位は、陽極および陰極反応がバランスを保つための手段である。金属への電気的接続がない場合、金属によって想定される平衡電位を、開路電位(Open Circuit Potential、Eoc)と呼ぶ。Eocにおける陽極または陰極電流のいずれかの値を、腐食電流(Corrosion Current、Icorr)と呼ぶ。Icorrおよび腐食速度(Corrosion Rate)は、金属の種類、溶液組成、温度、溶液移動、金属過程およびその他多数を含む多くのシステム変数の関数である。
【0046】
温度37℃の食塩水中のインプラントでは、以下の式より、腐食電流磁束(Icorr)は腐食速度(CR)に比例している。
CR=(Icorr×K×EW)/d
CR 腐食速度(mm/年)
Icorr 腐食電流(amps/cm2)
K ファラデー定数=3272(mm/(amp‐cm‐年))
EW 当量(グラム/等価物)
d 密度(グラム/cm3)。
【0047】
生理学的条件下で分解する本発明の一般的なインプラントは、約0.0001amps/cm2から0.1amps/cm2;好ましくは約0.001amps/cm2から0.01amps/cm2、より好ましくは約0.0025amps/cm2から0.008amps/cm2の範囲のIcorr(腐食電流)を有するであろう。
【0048】
いくつかの実施態様では、分解の1ヵ月後、金属または金属合金は、移植前の強度と比較して約25%を超える強度、好ましくは約50%を超える、より好ましくは約60%を超える強度を維持している。これらの、またはその他の実施態様では、分解の2ヵ月後、金属および金属合金インプラントは、移植前の強度と比較して約25%を超える強度、好ましくは約50%を超える、より好ましくは約60%を超える強度を維持している。これらの、またはその他の実施態様では、分解の4ヵ月後、金属および金属合金インプラントは、移植前の強度と比較して約25%を超える強度、好ましくは約50%を超える、より好ましくは約60%を超える強度を維持している。
【0049】
いくつかの実施態様では、インプラントは、(腐食前の本体の重量に基づいて、)0.01重量%を超える、好ましくは0.1重量%を超える、より好ましくは1重量%を超える腐食量で、移植前に腐食する。いくつかの実施態様では、移植前の腐食は、生理環境に露出される本体の表面積の1%を超える、好ましくは表面積の5%を超える、より好ましくは表面積の10%を超える面積を覆うことができる。そのような場合において、腐食は、前治療に起因する場合もあるし、例えば酸素およびいくらかの水分等の酸化性雰囲気を伴う無菌環境内で装置が梱包された結果である場合もある。
【0050】
いくつかの実施態様では、インプラントは、5質量%未満、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満だけ、移植前に腐食する場合がある。いくつかの実施態様では、インプラントは、表面積の10%未満、好ましくは表面積の1%未満、より好ましくは表面積の0.1%未満だけ、移植前に腐食する場合がある。
【0051】
分解速度の制御
1)形状の変更
いくつかの実施態様では、インプラントの分解速度は、表面積対体積の比を最大にすることによって増加される。例えば、インプラントがステントの形態である場合、ステントの支柱の厚さと幅、または幅と厚さの比が1.4:1を超える、好ましくは2:1を超える、より好ましくは3:1を超えるものであってよい。好適な実施態様では、ステントの支柱の厚さは、約100ミクロン未満、好ましくは約70ミクロン未満、より好ましくは約50ミクロン未満である。これにより、必要とされる分解の絶対深度を最小にし、腐食副産物の局所化を最小限に抑える。一般に、インプラント表面積/長さは、約0.001cm2/mmから0.75cm2/mm、好ましくは約0.005cm2/mmから0.25cm2/mm、最も好ましくは0.01から0.1cm2/mmの範囲である。
【0052】
その他の実施態様では、体積を実質的に増加させずに表面積を増加させるために、孔、貯留槽、溝他等の属性がインプラントに組み込まれ得る。
【0053】
2)腐食誘発機構の追加
いくつかの実施態様では、分解を誘発または補助するために、本発明のインプラントの本体に、腐食誘発機構が含まれる。少なくとも一つの露出面に存在する腐食誘発機構の例として、くぼみ、細孔、部分孔、空隙、表面の凹凸、擦り傷、筋、隆線、隆起、ざらつき、多孔性焼結金属もしくは合金、引っ掻き傷、粗面、孔、貫通孔、貫通焼結細孔、またはその他の幾何学的特徴もしくはランダム特徴、またはその組み合わせが挙げられる。腐食誘発機構は、インプラントが大きな孔、貯留槽、溝他を有する例を含む様々な形状または設計構成の面を含む、インプラントの任意の表面に存在し得る。そのような表面特徴は、一般に、重量に基づき10%以上、多くの場合、重量に基づき20%以上、頻繁に、重量に基づき40%以上分だけ、分解速度を増加させるであろう。100nmを超える、多くの場合400nmを超える、頻繁に1000nm(1μm)以上の平均表面粗さ(RA)を提供するために、いくつかの表面特徴が選択されるであろう。表面特徴は、インプラントの露出表面積全体に設けられてもよいし、その他の場合には分解速度を増加させるように設計された露出面の一部分のみに設けられてもよい。表面特徴の不均一な分解は、多くの場合、インプラントにおける不均一な分解プロファイルをもたらすであろうことが十分に理解されるであろう。
【0054】
いくつかの実施態様では、腐食誘発機構を持つインプラントの重量損失率は、機構を持たない同じインプラントよりも、少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは40%大きい。さらに、いくつかの実施態様では、機構を持つインプラントの寸法縮小率は、機構を持たない同じインプラントよりも、少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは40%大きい。
【0055】
図3は、その上に腐食誘発機構30の例を有するステント本体18(図1のステント本体18等)の一部を図示している。図4は、ステント本体18上にある様々な腐食誘発機構30の拡大図を提供している。図示するように、機構30は、いくつか例を挙げると、円形、楕円形、正方形、長方形、五角形、および多角形を含む様々な形状を有してよい。
【0056】
図5は、図3に示すステント本体18の支柱20の断面を図示している。この実施態様では、支柱20は、正方形の断面を有する。支柱20は、ステント10の内腔16の方を向いた内腔縁32と、動脈壁等の体腔の壁の方を向いた外縁34とを含む。支柱20は、ステント本体18のその他の部分(すなわち、その他の支柱)の方を向いた側縁36をさらに含む。ここで、支柱20は、内腔縁32、外縁34、および側縁36のそれぞれの上に、腐食誘発機構30を有する。これらの腐食誘発機構30は、くぼみ、細孔、部分孔、空隙、表面の凹凸他を含む。図6は、表面17からステント本体18へ伸長する、各種形状およびサイズの腐食誘発機構30を有するステント本体18の表面17を図示している。図7は、表面17から伸長してステント本体18内で交差または接合する腐食誘発機構30を図示している。図8は、表面17から伸長し、ステント本体18内に側枝30aを含む、腐食誘発機構30を図示している。図9は、表面17からステント本体18へ伸長し、ステント本体18の表面17から外側へ伸長する少なくとも一つの突起30bを含む、腐食誘発機構30を図示している。
【0057】
図10は、擦り傷の形態で腐食誘発機構30を有するステント本体18の表面の上面図を提供している。擦り傷または筋は、任意の長さ、深さ、幅、配向、または形状を有してよい。形状の例は、いくつか挙げると、直線、曲線、対角線、重複線、交差線、ジグザグ線を含む。
【0058】
図11は、梨地状表面の形態で腐食誘発機構30を有するステント本体18の表面を図示している。結果として生じる表面仕上げを、平均粗さ(Average Roughness;Ra)で表現することができる。平均粗さは、粗さプロファイルとその平均線との間の面積、または、評価長さを超える粗さプロファイル高さの絶対値を積分したものである。そのような腐食誘発機構を有する本発明のインプラントの表面は、約100ナノメートルを超えるRa、好ましくは約400ナノメートルを超えるRa、より好ましくは約1000ナノメートルを超えるRaを有し得る。
【0059】
図12は、外面34と内腔面32とを有する、ステント本体18の一部の断面を図示している。本体18を通って外面34から内腔面32へ伸長する、孔の形態の腐食誘発機構30が示されている。孔は、いくつか例を挙げると、平滑な、ギザギザの、直線状の、対角線状の、曲線状の、接続された、または交差しているものであってよい。さらに、いくつかの実施態様では、少なくとも一つの突起30bが、ステント本体18の面32、34から外側へ伸長していてよい。図13は、ステント本体18の外面34から内腔面32へ伸長する孔の形態で腐食誘発機構30を図示しており、当該孔は複数の側枝30aを含む。
【0060】
2a)腐食誘発機構の作成
上述した腐食誘発機構のいくつかは、インプラント金属もしくは合金またはその組み合わせを、塩酸、フッ化水素酸、硝酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、乳酸、シュウ酸、王水、発煙硫酸、様々な状態の他のもの、またはその組み合わせ等であるがこれらに限定されない化学物質に暴露することによって形成され得る。
【0061】
腐食誘発機構は、インプラント金属もしくは合金またはその組み合わせを、塩水噴霧、水酸化ナトリウム等の強アルカリ性溶液、水酸化カリウム、ナトリウム、炭酸カリウム、およびリン酸塩等の塩を包含する溶液、または、様々な状態のその他の塩基に暴露することによって形成されることもできる。あるいは、当該機構は、食塩水、塩化ナトリウム、塩化第二鉄もしくはその他の塩水、Ferrolyte(Starlight Chemicals,Inc.、イリノイ州シカゴ)、または、様々な状態の他のものに対するインプラントの暴露によって形成され得る。そのような機構を作成するその他の化学物質は、AlCl3、MgCl2を伴うCaCl3、CuSO4、HgCl2、H2SiF6、K2CO3、Na2CO3、Na2HSO3、NaOCl、Na3PO4、NH4C1、NH2SO3H、NI(NO3)2、ZnCl4、臭素、H2O2、酸素のような気体酸化剤、窒素、塩素、もしくは様々な状態の他のもの、またはその組み合わせを含む。
【0062】
別の実施態様では、腐食誘発機構は、様々な状態の液体金属に対するインプラント材料の暴露によって形成される。そのような液体金属は、ビスマス、ガリウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、および、ナトリウムカリウム合金、トリウムマグネシウム、亜鉛他、またはその組み合わせを含む。
【0063】
別の実施態様では、腐食誘発機構は、電子誘起エッチング、グロー放電プラズマエッチング、レーザー支援エッチング、化学支援イオンビームエッチング、レーザー誘起光化学ドライエッチング、パルスプラズマ放電、スパッタビーム、放射線への暴露、正イオンビーム、繰り返し動電位分極、イオン衝撃、もしくはその他の方法、またはその組み合わせ等であるがこれらに限定されない方法によって形成される。
【0064】
別の実施態様では、腐食誘発機構は、貴金属を伴う電解質中に、望ましい腐食誘発機構を形成するのに十分な時間、インプラント材料を留置することによって形成される。
【0065】
擦り傷または筋等のいくつかの腐食誘発機構は、剃刀刃、針、ピンセット、鋭く尖った圧子、エングレーバー、メス、外科用メス、毛ブラシ、鋼綿、ローレット工具、ヤスリ、カーバイドバー、尖ったピック、砥石、チューブカッター、チゼル、スクレーパー、レーザー、放電加工(Electro Discharge Machining;EDM)、もしくはその他の道具等の道具、またはその組み合わせを使用することによって作ることができる。
【0066】
隆線、隆起、ざらつき、または粗面等の腐食誘発機構を得るために、様々な方法を使用することができる。方法の例として、サンドブラスト、ビーズブラスト、化学エッチング、レージング、プラズマエッチング、イオンビーム衝撃、放電加工(EDM)インプリンティング、成形、焼結、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition;CVD)、スパッタリング、電気メッキ、もしくはその他の方法、またはその組み合わせが挙げられる。
【0067】
焼結細孔、孔、および貫通孔等、いくつかの腐食誘発機構は、レージング、放電加工、くぼみ、部分孔、および空隙の準備に使用される化学物質を用いた化学エッチング、放射線もしくはイオンビームへの暴露、金属射出成形、金属もしくは合金のビーズまたはその他の形状の焼結、またはその他の方法、またはその組み合わせによって作ることができる。
【0068】
腐食誘発機構は、製造プロセス中または移植前の任意の時点で形成され得る。当該機構は、ロータブレーダー、カッティングバルーン等の道具または装置、またはその他の技術、またはその他の機械的、電気的、化学的手段、またはその組み合わせを使用して、in‐situでも形成され得る。
【0069】
2b)腐食誘発機構の寸法および分布
腐食誘発機構は、任意の適切なサイズ、直径、幅、長さ、深さ、外周、または寸法等を有してよい。いくつかの実施態様では、インプラント表面にある当該機構の平均直径、幅、または長さは、約1nmから1mm、好ましくは約10nmから100マイクロメートル、より好ましくは約100nmから1マイクロメートルの範囲である。筋および擦り傷等の線形特徴の長さは、これよりも長くてよい。いくつかの実施態様では、インプラント表面にある当該機構の平均深さは、約1nmから10mm、好ましくは約10nmから1mm、より好ましくは約100nmから1マイクロメートルの範囲である。当該機構は、同様の寸法のものであってもよいし、サイズまたは形状が可変してもよい。機構は、その他の機構内に包含されてもよいし、部分的に包含されてもよい。
【0070】
腐食誘発機構は、インプラント表面上に、均一または不均一に分布され得る。図14は、ステントの支柱20等、インプラントの表面全体にわたって実質的に均一に分布された、腐食誘発機構30を図示している。ここでは、機構30は、くぼみ、細孔、孔、空隙、または表面の凹凸を含む。図15は、ステントの支柱20等、インプラントの表面全体にわたって不均一に分布された、これらの腐食誘発機構30を図示している。同様に、図16は、ステントの支柱20等、インプラントの表面全体にわたって実質的に均一に分布された、腐食誘発機構30を図示している。ここでは、機構30は筋を含む。図17は、ステントの支柱20等、インプラントの表面全体にわたって不均一に分布された、これらの腐食誘発機構30を図示している。
【0071】
腐食誘発機構は、インプラント表面を部分的または完全に覆っていてよい。当該機構は、外面、内腔面、縁、またはその他の面等、インプラントの一つ以上の面にあってよい。当該機構は、インプラントが分解するのに望ましい一つ以上のエリアに限定されることができ、その他のエリアは無傷のままである、または、分解しない。当該機構は、インプラントの表面上の異なる場所に、可変の密度で存在することができる。一つ以上のエリアは、その他のエリアよりも速く分解することができる。したがって、インプラントの分解速度は、長手方向、円周方向、またはその他の方向に制御され得る。例として、管腔内ステントの近位端および遠位端は、それらの間にある区域よりも前に分解することができる。
【0072】
インプラントの表面にある、くぼみ、細孔、部分孔、貫通孔、空隙、または表面の凹凸等の腐食誘発機構の表面密度は、約1/cm2から1×1014/cm2、好ましくは約100/cm2から1×108/cm2、より好ましくは約1000/cm2から1×106/cm2の範囲であってよい。機構のないインプラント表面のパーセンテージは、約0%から99.9%、好ましくは約5%から75%、より好ましくは約10%から50%の範囲であってよい。
【0073】
3)腐食強化/抵抗元素 の操作
腐食誘発機構の代替として、またはそれに加えて、本発明のインプラントは、金属または金属合金等、一つ以上の腐食強化元素の濃縮を有する材料から構成されてよい。したがって、腐食に対する金属もしくは金属合金またはその組み合わせの抵抗を下げる原子または化合物を、追加、または、すでにこれらの材料中に存在する場合には、増加してよい。例えば、合金中の炭素、鉄、銅、シリコン、カルシウム、硫黄、硫化マグネシウム、ケイ酸塩、もしくはその他の元素のような元素を濃縮するために、または、クロム、ニッケル、モリブデン、もしくはその他の腐食抵抗元素のようなある種の元素を消耗するために、合金を処理してよい。いくつかの実施態様では、腐食強化元素は、約0.1%を超える、好ましくは約1%を超える、より好ましくは約5%を超える組成を有するように追加され得る。さらに、一つ以上の腐食抵抗元素が消耗され得る。
【0074】
そのような元素の操作は、合金の腐食を制御するために、インプラントの表面上に、インプラントの至るところに、または、合金の粒界に隣接して、発生し得る。いくつかの実施態様では、金属または金属合金は、約0.01%を超える、好ましくは約1%を超える、より好ましくは約10%を超える重量組成の腐食誘発元素を有する。例えば、鋼は、約0.03重量%を超える、好ましくは約0.3%を超える、より好ましくは約3重量%を超えるパーセンテージで、炭素を包含し得る。いくつかの実施態様では、金属または金属合金は、腐食誘発元素の重量の約0.01%を超える、好ましくは約5%を超える、より好ましくは腐食誘発元素の重量の約10%を超える表面組成で、インプラントの表面上における腐食誘発元素の選択的分布を有する。
【0075】
さらに、いくつかの実施態様では、金属または金属合金は、約15%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは約1%未満の重量組成で、表面腐食防護要素を有する。例えば、鋼等のインプラント合金は、約12%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは1%未満である、クロムの表面組成率表面組成率を有し得る。
【0076】
4)腐食制御剤の添加
上述した機構および元素の代替として、またはそれに加えて、本発明のインプラントは、インプラントの分解を制御する腐食制御剤を含んでよい。当該剤は、酸性化合物、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩酸、クエン酸、アミノ酸、ヒドロキシアパタイト、過酸化水素、水酸化カリウム等の塩基性化合物、酸性および塩基性医薬品、または、酸性もしくは塩基性副産物を持つポリマー他等の、合成物質または生物製剤、またはその組み合わせであってよい。インプラントにある剤の量は、約1ナノグラム/cm2から1000ナノグラム/cm2、好ましくは約1から500ナノグラム/cm2、より好ましくは約10から400ナノグラム/cm2の範囲であってよい。
【0077】
一実施態様では、当該剤は、移植前は実質的にインプラントの腐食を誘発しない。
【0078】
別の実施態様では、当該剤は、カテーテル、注入バルーン、シリンジ、シリンジと針、またはその他の方法等、いくつかの手段によって、in‐situでインプラントに隣接する組織に送達される。
【0079】
5)腐食誘発ガルバニ電池の作成
いくつかの実施態様では、金属または合金粒子は、流体または組織中で、インプラントに隣接して送達される。これらの粒子は、インプラントに接触する流体中にあり、腐食誘発ガルバニ電池を作成する。そのようなガルバニ電池は、インプラントの腐食を制御する。図18は、ステント本体18等、インプラントに隣接する流体または組織42中の粒子40を図示している。これらの粒子は、通常、インプラントよりも不動態である金属または合金から作られる。その他の実施態様では、腐食を誘発するために、インプラントに隣接して非金属粒子が送達される。これらの粒子は、それらに対する組織応答を最小にするように、約1ナノメートルから1ミリメートルの範囲のサイズ、好ましくは0.1マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲のサイズであってよい。それらは、カテーテル、注入バルーン、シリンジ、シリンジと針、またはその他の方法等の手段によって、インプラントに隣接して送達され得る。
【0080】
図19は、流体または組織42に隣接するインプラント46の断面図を図示している。インプラント46は3つの層を有し、ここで、中間層48は非導電性材料から構成され、外層50は金属または合金等の導電性材料から構成されて、ガルバニ電池を形成する。任意の数の層が存在し得る。層化について、以下でさらに説明する。
【0081】
6)材料の層化
いくつかの実施態様では、本発明のインプラントは、金属または合金の2つ以上の層から形成される。一実施態様では、これらの金属または合金は、異なる電気化学系列の、または/および異なる不動態の、異なる材料から作られてよい。例えば、一層がタングステンから作られ、他の層がクロムから作られる。別の例において、一層が鉄含有合金から作られ、他の層が銀から作られる。一実施態様では、これらの層は、移植時または移植後に物理的接触または流体接触してよい。一実施態様では、これらの層は、ポリマー、半導体、もしくは誘電体被覆等の層またはコーティングによって隔てられているが、移植時に、またはコーティングの分解が発生するにつれて最終的に、流体接触する。層の厚さ、表面積、被覆率は、望ましい腐食速度に応じて可変し得る。
【0082】
7)防護層の操作
腐食する際、多くの金属はその表面に酸化物層を形成する。その酸化層がさらなる腐食を阻止すると、当該金属は不動態化すると言われている。この状態の金属および金属合金は、耐食性であると考えられている。耐食性金属合金の例として、316、316L、430、304、17‐7、またはその他のステンレス鋼、コバルトクロム合金(L‐605等)、MP35N、Havar、コバルト‐20クロム‐15タングステン‐10ニッケル合金、NiTi合金他が挙げられる。
【0083】
これらの金属合金の分解は、制御状態で防護不動態化層を排除する、または部分的に排除することによって、または、表面酸化層の形成を防止することによって、促進または制御され得る。さらに、酸化物層等の防護層の、存在、被覆率、厚さ、化学組成、化学浸透性、耐久性、またはその他の性状を制御することによって、インプラント分解の開始、均一性、または速度を制御することができる。例えば、低酸素濃度環境または酸素枯渇環境でインプラントを梱包することにより、インプラントは、その表面上に酸化物層等の防護層を形成しないように保護されることができる。これにより、酸素がパッケージの内側に入ること、および、インプラントの早過ぎる腐食を引き起こすことを最小限に抑える。一実施態様では、インプラント含有製品は、真空下でパウチ内に密封される。別の実施態様では、パウチは、窒素、アルゴン、またはその他の不活性ガスでパージされる。別の実施態様では、パッケージ内の有効な酸素含有量を最小にするために、脱酸素剤が使用される。また、防護層の性状は、化学エッチング、ビーズブラスト、電解研磨、レージング、またはその他の手段によって等、化学的、機械的、電気的、熱的手段によって制御され得る。酸化物層等の防護層は、製造プロセス中または移植前に、制御状態で形成、除去、または部分的に除去されることができる。当該層は、ロータブレーダー、カッティングバルーン等の道具または装置、またはその他の技術、またはその他の機械的、電気的、化学的手段、またはその組み合わせを使用して、in‐situでも制御され得る。表面組成、性質、および防護/不動態層の程度、厚さ、場所、または耐久性に制御可能なように作用するために、その他の手段を使用してもよい。
【0084】
不動態化層を改質するために、様々な技術が使用され得る。一実施態様では、インプラントは、スケール除去され、電解研磨される、または部分的に電解研磨されるが、不動態化されない。別の実施態様では、インプラントは、スケール除去されるが電解研磨も不動態化もされない。別の実施態様では、インプラントは、スケール除去も電解研磨も不動態化もされない。
【0085】
一実施態様では、不動態化層の厚さは、制御された分解を提供するために、1nm未満、好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.1nm未満に限定される。別の実施態様では、当該層は、分解を制御するために、インプラントの表面を部分的にのみ覆っている。この部分的な被覆率は、インプラントの一つ以上の面におけるものであってもよいし、ステントの支柱等、インプラントの全長に沿って均一に分布、または、不均一に分布されてもよい。例えば、分解を制御するために、防護層中にある酸化クロム等の耐食性酸化物の量および/または酸化鉄等の低耐食性酸化物の量を制御することができる。一実施態様では、防護層組成は、約1ヶ月から5年、好ましくは4ヶ月から2年、より好ましくは6ヶ月から1年でインプラントが分解するようなものである。
【0086】
いくつかの実施態様では、本発明のインプラントは、分解性または非分解性のコーティングで部分的にまたは完全に被覆され得る。コーティング材料は、ポリマー、金属、金属合金、セラミック、治療剤、腐食剤、もしくは放射線不透過性物質、またはその組み合わせであってよい。コーティングは、疎水性コーティング、親水性コーティング、多孔性、非多孔性、水膨潤性コーティング、酸素障壁、ガス透過性障壁、半透過性障壁他またはその組み合わせであってよい。インプラントは、一枚以上のコーティングを有し得る。いくつかの実施態様では、ポリマーコーティングは、剤(塩、小分子、発泡剤等)をポリマーに組み込み、コーティング後または移植後に当該剤を浸出させることによって、強化された多孔性を有し得る。コーティングは、組織壁に分解するインプラントからの防護を提供し、分解産物を選択的に方向付けること、分解産物を包含すること、分解産物を中和すること、治療、腐食、もしくはその他の目的の剤を放出することによってインプラント分解を制御し、放射線不透過性他、またはその組み合わせを提供することができる。
【0087】
一実施態様では、コーティングは、覆われていない区域に隣接する、または当該区域にあるインプラントの腐食を開始するために、インプラント表面区域の少なくとも一部分を覆っていてよい。例えば、分解性のコーティングは、インプラント分解産物を血管組織から選択的に離れた方向へ導くために、血管ステントの内腔から離れた面を選択的に覆う。別の例において、コーティングは、インプラントの分解速度を制御するために、血管ステントの内腔面を選択的に覆う。
【0088】
別の例において、コーティングは、インプラントの分解速度を制御するために、インプラント金属もしくは合金またはその組み合わせを電解質または流体に接続する開口部をその表面上に有する。一実施態様では、開口部の平均直径、幅、または長さは、約1nmから10mm、好ましくは約100nmから1mm、より好ましくは約1マイクロメートルから100マイクロメートルの範囲であってよい。開口部の長さは、インプラントの長さおよびサイズに基づいてさらに可変し得る。開口部のサイズおよび形状は、円、正方形、楕円形、多角形、またはその他の均一なもしくはランダムな形状、またはその組み合わせ等、いかなる形状であってもよい。インプラントのコーティング上にある開口部の表面密度は、約1/cm2から1×109/cm2、好ましくは約10/cm2から1×106/cm2、より好ましくは約100/cm2から1×103/cm2の範囲であってよい。
【0089】
一実施態様では、コーティングは、インプラント金属もしくは合金またはその組み合わせよりも遅い速度で分解する。これにより、インプラント金属もしくは合金またはその組み合わせの分解の速度は、分解前のより長いインプラント寿命を実現するように制御される。別の実施態様では、コーティングは、インプラント金属もしくは金属合金またはその組み合わせよりも速く分解する。これにより、最初の期間、インプラントの分解を遅延させる。別の実施態様では、コーティングは、3日超、好ましくは1ヶ月超、より好ましくは4ヶ月超、インプラントの分解を遅延させる。別の実施態様では、コーティングは、生体内環境において、3日から3年、好ましくは1ヶ月から2年、より好ましくは4ヶ月から1年の範囲で分解する。さらに別の態様では、コーティングは、インプラントの分解速度に実質的に影響を及ぼすことなく、インプラントより速くまたは遅く分解することができる。任意の一つの装置に、2つ以上のコーティング材料が提供され得る。コーティング材料は、一般に、生理環境において異なる分解速度および/または異なる特性を有するように選択されることになる。多くの場合、一方の層が他方の層よりも速く分解するよう、2つ以上のコーティング材料が、一方を他方に重ねる形で層化されることになる。あるいは、当該2つ以上のコーティング材料を、通常は異なる速度であるが、同時に分解することが多くなるように、露出面の異なる領域上に被覆してもよい。異なる治療剤およびその他の活性剤を担持するために異なるコーティング材料を使用してもよく、この場合、以下でさらに詳細に説明するように、異なる放出速度を有することが望ましい。
【0090】
コーティングの厚さは、約0.1nmから100マイクロメートル、好ましくは1マイクロメートルから25マイクロメートル、より好ましくは5マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲であってよい。いくつかのポリマーコーティングについて、厚さは、約0.1マイクロメートルから100マイクロメートル、好ましくは約1マイクロメートルから50マイクロメートル、より好ましくは約5マイクロメートルから25マイクロメートルの範囲であってよい。いくつかの金属または金属合金コーティングについて、厚さは、約0.1nmから100マイクロメートル、好ましくは約1nmから50マイクロメートル、より好ましくは約1マイクロメートルから25マイクロメートルの範囲であってよい。
【0091】
適切な非分解性または遅分解性のコーティングは、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、酢酸酪酸セルロース、エチレンビニルアルコール共重合体、シリコーン、C‐flex、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パリレン、パリラスト、ポリ(メタクリル酸メチルブチラート)、ポリ‐N‐ブチルメタクリレート、ポリ(エチレンビニルアセテート)を持つポリブチルメタクリレート共重合体、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリエチレンビニルアセテート、ポリカーボネート、ポリアクリルアミドゲル、ポリ無水マレイン酸、ステアリルアンモニウムクロリドおよびベンジルアンモニウムクロリドを含む第四アンモニウム化合物、その他の合成もしくは天然重合物質を含む酢酸酪酸セルロース(Cellulose Acetate Butyrate;CAB)等;混合物、共重合体、またはその組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0092】
適切な生分解性のコーティングは、ポリ(乳酸)、ポリラクテート、ポリ(グリコール酸)、ポリグリコレートおよび共重合体および異性体、ポリジオキサノン、ポリ(エチルグルタメート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリヒドロキシバレレートおよび共重合体、ポリカプロラクトン、ポリアンヒドリド、ポリ(オルトエステル);ポリ(エーテルエステル)、ポリ(イミノカーボネート)、炭酸ポリエチレン等のポリアルキレンカーボネート、ポリトリメチレンカーボネート、デンプン系ポリマー、ポリエステルアミド、ポリエステルアミン、ポリシアノアクリレート、ポリホスファゼン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、N‐ビニル‐2‐ピロリドン、共重合体およびその他の脂肪族ポリエステル、または、ポリ乳酸の共重合体(ポリ‐D‐乳酸、ポリ‐L‐乳酸、ポリ‐DL‐乳酸等)およびポリ‐ε‐カプロラクトンを含むその適切な共重合体;混合物、共重合体、またはその組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0093】
適切な天然コーティングは、フィブリン、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、グリコスアミノグリカン、オリゴ糖とポリサッカリド、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、リン脂質、ホスホリルコリン、糖脂質、タンパク質、セルロース、および混合物、共重合体、またはその組み合わせを含む。
【0094】
適切な金属コーティングは、タングステン、マグネシウム、コバルト、亜鉛、鉄、ビスマス、タンタル、金、プラチナ、316L、304等のステンレス鋼、チタン合金、炭素等の半金属、ナノ多孔性コーティング、またはその組み合わせを含む。
【0095】
コーティングは、噴霧、ディッピング、インクジェット散布、プラズマ蒸着、イオン注入、スパッタリング、蒸発、気相蒸着、熱分解、電気メッキ、グロー放電コーティング他、またはその組み合わせを含むがこれらに限定されない方法によって、塗布され得る。
【0096】
コーティングは、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩、塩酸、クエン酸、アミノ酸、過酸化水素等の酸性化合物、水酸化カリウム等の塩基性化合物、ヒドロキシアパタイト、医薬品、酸性もしくは塩基性副産物を持つポリマー他等の、合成物質または生物製剤、またはその組み合わせである、インプラントまたはコーティングの分解を制御することができる剤から構成されるか、それらを包含するか、またはそれらに隣接してよい。コーティングに隣接して包含された剤は、約1ナノグラム/cm2から1000マイクログラム/cm2、好ましくは約1から500マイクログラム/cm2、より好ましくは約10から400マイクログラム/cm2の範囲であってよい。
【0097】
一例において、当該剤は、インプラントの表面の上部をコーティングで覆う。別の例において、当該剤は、コーティングと混合され、インプラント上に噴霧される。別の例において、コーティングは当該剤である。
【0098】
一実施態様では、当該剤は、移植前はインプラントの移植を誘発しない。別の実施態様では、当該剤は、移植前は実質的にインプラントの腐食を誘発しない。
【0099】
本発明のインプラントは、分解性または非分解性の、放射線不透過性の材料もしくはマーカー、または放射線不透過性のコーティングを包含してよい。
【0100】
治療剤の溶出
本発明のインプラントは、免疫賦活剤、抗癌剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血栓症薬剤、抗血小板剤、抗真菌剤、抗糖尿病剤、抗脂質異常剤、抗血管形成剤、血管形成剤、降圧剤、避妊薬、抗抑制剤、抗発作剤、疼痛管理剤、抗依存性薬剤、治癒促進剤、排卵促進剤、代謝管理剤などの薬理学的な因子、または薬剤もしくはその組み合わせにおけるその他の薬効分類を含んでもよい。実例となる免疫賦活剤は、ラパマイシン、エベロリムス、ABT 578、AP20840、AP23841、AP23573、CCI−779、重水素化ラパマイシン、TAFA93、タクロリムス、シクロスポリン、TKB662、ミリオシン、それらのアナログ、プロドラッグ、塩、その他、またはその組み合わせを含むがそれらに限定されない。
【0101】
実例となる抗癌剤は、以下を含む。アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール、アクロニシン、アドゼレシン、アラノシン、アルデスロイキン、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アモナフィド、アンプリゲン、アムサクリン、アンドロゲン、アンギジン(Anguidine)、グリシン酸アフィジコリン、アサレー(Asaley)、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、バシルス・カルメット・ゲラン(BCG)、(可溶性)ベイカーズアンチフォル、β−2’−デオキシチオグアノシン、ビサントレンHCL、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルフォキシミン、BWA 773U82、塩酸BW 502U83、メシル酸BW 7U85、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、クロロキノキサリン‐スルホンアミド、クロロゾトシン、クロモマイシンA3、シスプラチン、クラドリビン、コルチコステロイド、コリネバクテリウムパルブム、CPT−11、クリスナトール、シクロシチジン、シクロホスファミド、シタラビン、シテンベナ(Cytembena)、マレイン酸DABIS、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デアザウリジン(Deazauridine)、デクスラゾキサン、ジアンヒドロガラクチトール、ジアジコン、ジブロモズルシトール、ダイデムニンB、ジエチルジチオカルバミン酸、ジグリコールデヒド、ジヒドロ−5−アザシチジン、ドキソルビシン、エチノマイシン、エダトレキセート、エデルホシン、エフロルニチン、エリオット溶剤、エルサミトルシン、エピルビシン、エソルビシン、リン酸エストラムスチン、エストロゲン、エタニダゾール、エチオホス、エトポシド、ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、酢酸フラボン、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、5−フルオロウラシル、フルオゾール(登録商標)、フルタミド、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、酢酸ゴセレリン、ヘプスルファム、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ホモハリントニン、硫酸ヒドラジン、4−ヒドロキシアンドロステジオン、ヒドロキシ尿素、塩酸イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン−1αおよびβ、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−6、4−イポメアノール、イプロプラチン、イソトレチノイン、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロイド、レバミゾール、ダウノルビシンリポソーム、リポソーム封入ドキソルビシン、ロムスチン、ロニダミン、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、メルファラン、メノガリル、メルバロン、6−メルカプトプリン、メスナ、バシルス・カルメット・ゲランのメタノール抽出残渣、メトトレキサート、N−メチルホルムアミド、ミフェプリストン、ミトグアゾン、マイトマイシン‐C、ミトタン、塩酸ミトザントロン、単球/マクロファージ、コロニー刺激因子、ナビロン、ナフォキシジン、ネオカルチノスタチン、酢酸オクトレオチド、オルマプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パラ、ペントスタチン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ピラルビシン、ピリトレキシム、塩酸ピロキサントロン、PIXY−321、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プレドニムスチン、プロカルバジン、プロゲスチン、ピラゾフリン、ラゾキサン、サルグラモスチム、セムスチン、スピロゲルマニウム、スピロムスチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、スラミンナトリウム、タモキシフェン、タキソテール、テガフール、テニポシド、テレフタラミジン(Terephthalamidine)、テロキシロン、チオグアニン、チオテパ、チミジン注射、チアゾフリン、トポテカン、トレミフェン、トレチノイン、塩酸トリフロペラジン、トリフルリジン、トリメトレキサート、腫瘍壊死因子、ウラシルマスタード、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンゾリジン、Yoshi 864、ゾルビシン、QP−2、エポチロンD、エポチロンC、パクリタキセル、ドセタキセルなどのタキソール、ABJ879、パツピロン、MN−029、BMS247550、ET−743などのエクチナサイジン、テトラヒドロイソキノリンアルカロイド、シロリムス、アクチノマイシン、メトトレキサート、アンチオペプチン、ビンクリスチン、マイトマイシン、2−クロロデオキシアデノシン、など、カスポファンギン、ファルネシル化ジベンゾジアゼピノン、ECO−4601、フルコナゾール、などの抗真菌剤、フォリスタチン、レプチン、ミッドカイン、アンジオジェニン、アンジオポエチン−1、ベカプレルミン、レグラネクス、などの血管形成剤、カンスタチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、レチノイド、ツミスタチン(Tumistatin)、バスキュロスタチン、アンジオアレスチン、バソスタチン、ベバシズマブ、プリノマスタット、などの抗血管形成剤、メトホルミンなどの抗糖尿病剤、カンデサルタン、ディオバン、ジルチアゼム、アテノロール、アダラート、などの血圧降下剤、ラノラジン、硝酸イソソルビド、などの抗虚血薬。
【0102】
実例となる抗炎症剤は、以下のような標準的な非ステロイド系の抗炎症剤(NSAIDS)を含む。アスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、テノキシカム、トルメチン、ケトロラク、オキサプロシン、メフェナム酸、フェノプロフェン、ナブメトン(レラフェン)、アセトアミノフェン(Tylenol(登録商標))、およびその混合物、など、ニメスリド、NS−398、フロスリド、L−745337、セレコキシブ、ロフェコキシブ、SC−57666、DuP−697、パレコキシブナトリウム、JTE−522、バルデコキシブ、SC−58125、エトリコキシブ、RS−57067、L−748780、L−761066、APHS、エトドラク、メロキシカム、S−2474、およびその混合物、などのCOX−2抑制剤、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、フルプレドニソロン、ベタメタゾン、デキサメサゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン、プロピオン酸フルチカゾン、ピロキシカム、セレコキシブ、メフェナム酸、トラマドール、メロキシカム、メチルプレドニゾン、疑似プテロシン、などのグルココルチコイド、ゾレドロン酸、アレンドロネート、などの高カルシウム血症薬、プラビックス、ヘパリン、アリクストラ、およびフラキシパリン、など、またはその混合物のような抗血栓症薬剤。
【0103】
アナログ、プロドラッグ、誘導体、前駆体、フラグメント、塩、または医薬品のその他変化体もしくは変異体の使用は、すべて含まれる。
【0104】
アナログ、誘導体、プロドラッグ、塩、これらの医薬品の合成または生物学的同等物は、過剰増殖性の疾患、狭窄、創傷治癒、癌、動脈瘤、糖尿病、腹部大動脈瘤、血管形成、高カルシウム血症、虚血、細動、不整脈など、必要とされる治療の種類に応じて、前記分解性のインプラントから放出されることができる。
【0105】
前記剤は、非分解性のコーティング、部分的に分解性のコーティング、完全に分解性のコーティング、または組み合わせを用いて、前記インプラントから放出されることができる。コーティングの、これらの種類における実例となる例は、上記にて議論済みである。前記剤は、前記コーティングでの充填剤として組み入れられることができ、または前記インプラントに適用された上で、速度を制限する障壁として前記コーティングで覆われることができ、または前記薬剤は前記インプラントの面に対して直接コーティングされることができる。一実施例において、剤放出の前記速度は、前記インプラントの前記分解速度または前記インプラント環境内における生物学的反応事象に対応した、ある時間帯で、およびある持続期間中に、放出されるように構成できる。たとえば、抗炎症剤、抗増殖剤、または免疫賦活剤、またはこれらの組み合わせは、分解期間の全体において放出されるように作成できる。複合的な薬品は、前記コーティングの前記分解速度および/または前記インプラントの分解速度を適合させるように放出されることができる。抗血小板剤または抗血栓症薬剤は、初期段階において放出されることができ、抗炎症剤または抗増殖剤または免疫抑制剤は、同時にまたはより後の段階で放出されることができる。
【0106】
一実施例において、前記剤は、くぼみ、孔、貫通孔、筋、擦り傷、細孔、ざらつき、その他、またはその組み合わせなどの機構に包含される、または部分的に包含される。別の実施例において、前記剤は、保有宿主、溝、孔、貫通孔、流路、隆線間、その他、またはその組み合わせ、または前述からの一つ以上の組み合わせなどの、前記インプラント属性に包含される。別の実施例において、前記剤は、前記インプラントの前記面に保護膜として適用される。
【0107】
前記インプラントにおける治療剤またはその他の剤の量は、約1ナノグラム/cm2から1000マイクログラム/cm2、好ましくは約1から500マイクログラム/cm2、より好ましくは約10から400マイクログラム/cm2まで変動することができる。前記剤は、一日あたり約1ナノグラム/cm2から1000マイクログラム/cm2、好ましくは一日あたり約1マイクログラム/cm2から200マイクログラム/cm2、より好ましくは一日あたり約5mcg/cm2から100mcg/cm2までに及ぶ割合で前記インプラントから放出されてもよい。前記インプラントの周囲の組織における前記剤の取り込みは、約0.001ngm/gmの組織から1000マイクログラム/gmの組織、好ましくは約1ngm/gmの組織から100マイクログラム/gmの組織、より好ましくは約100ng/gmの組織から10マイクログラム/gmの組織までに及ぶことができる。
【0108】
いくつかの実施例において、前記剤は、1日から3年、好ましくは2週間から1年、より好ましくは1ヶ月から6ヶ月の範囲の期間にわたって前記インプラントから放出される。他の実施例において、前記剤は、1日より長い、好ましくは2週間より長い、より好ましくは1ヶ月より長い、より好ましくは4ヶ月より長い期間にわたって前記インプラントから放出される。
【0109】
前記剤は、前記ステントまたはインプラントと組み合わせられる、腐食可能なまたは腐食不可能なフィラメントまたは複数のフィラメント内に包含され得ると理解できる。
【0110】
前記インプラントまたはコーティングの分解は、身体環境において炎症反応を引き起こす場合がある。炎症は、全身治療または局部的治療によって提供される、薬理療法によって抑えることができる。実例となる抗炎症剤は、以下のような標準的な非ステロイド系の抗炎症剤(NSAIDS)を含む。アスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、テノキシカム、トルメチン、ケトロラク、オキサプロシン、メフェナム酸、フェノプロフェン、ナブメトン(レラフェン)、アセトアミノフェン(Tylenol(登録商標))、およびその混合物、ニメスリド、NS−398、フロスリド、L−745337、セレコキシブ、ロフェコキシブ、SC−57666、DuP−697、パレコキシブナトリウム、JTE−522、バルデコキシブ、SC−58125、エトリコキシブ、RS−57067、L−748780、L−761066、APHS、エトドラク、メロキシカム、S−2474、およびその混合物などのCOX−2抑制剤、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、フルプレドニソロン、ベタメタゾン、デキサメサゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン、ラパマイシン、などのグルココルチコイド、またはこれらの剤のアナログ、またはその組み合わせ。前記抗炎症剤は、前記インプラント上にコーティングされるか、または組み込まれることができ、または、好ましくは前記インプラントもしくはコーティングが身体環境において溶解するにつれて全身的に提供される。
【0111】
前記溶解性のインプラントからの前記金属イオンは、前記組織内部および/または全身的に提供されてもよく、非常に長い期間がかかる可能性があるが最終的にはシステムから排出される。キレート化のような追加的治療は、前記金属イオンを身体から排出するまたは身体内部で再分配する速度を加速させるために使用できる。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなキレート剤は、経口で、または静脈注射で、または前記インプラントもしくはインプラントコーティングによって包含されるような局部的手段、またはその他の手段によって投与できる。金属イオン封鎖剤は、金属または金属合金またはその組み合わせを身体から排出するまたは身体内部で再分配する速度を加速させるためにも使用できる。実例となる金属イオン封鎖剤の例は、オルトリン酸塩、オルトケイ酸塩、その他、またはその組み合わせを含むがそれらに限定されない。一実施例において、前記キレート剤または金属イオン封鎖剤は、前記インプラントのある部位に供給され、または前記インプラントもしくはコーティング内に組み込まれ、または前記インプラントの前記面の上に適用される。別の実施例において、前記キレート剤または金属イオン封鎖剤は、前記インプラント上で分解性または非分解性のコーティングによって制御放出される。これらの剤は、前記金属イオンが再分配されるか前記システムから排出されるということを確実にするために、前記金属インプラントに基づいて選択できる。前記剤は、前記剤が成分を前記金属イオンと交換する際、前記インプラントのある部位で溶着され得る成分を用いても取り入れることができる。
【実施例】
【0112】
実施例1
EDMドリルまたはSwissスクリューを用いて、直径5mmのコバルト棒の中心に直径1.52mmの孔を開ける。続いて、外径が1.63mmになるまで、棒をセンターレス研削盤にかける。結果として生じたコバルトチューブを、摂氏850度で1時間、真空オーブン中で焼き戻す。チューブをレーザー切断し、長さ18mmの冠状動脈ステントとする。化学処置でスラグおよびスケールを除去した後、直径0.020インチの金属マンドレルにステントを留置し、回転させる。360メッシュの酸化アルミニウム吹き付け加工媒体を持つサンドブラスター(Econoline社、ミシガン州グランドヘブン)のエラーノズルをステントに方向付け、10秒間空気作動させて、コバルトステントのすべての面に梨地状表面を作成する。温水を入れたビーカーに数回浸漬し、その後、100%イソプロパノールを入れたビーカーに浸漬して、ステントを清浄する。続いて、100%イソプロパノールを満たしたビーカー中に、ステントを入れる。このビーカーを超音波浴(Branson Ultrasonic Corporation、コネチカット州ダンベリー)に入れ、当該浴中でステントを5分間清浄する。乾燥後、3.0×20mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0113】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが右冠動脈の病変内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。ステントが展開され、コバルト金属は、ある期間にわたってその大部分を溶解し始める。
【0114】
実施例2
送達カテーテルに圧着する前に、実施例1で作製した冠状動脈ステントを33%ラパマイシンおよび66%ポリエチレン‐ビニルアルコール共重合体を含む基質で被覆する。乾燥後、ステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0115】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが左回旋動脈の病変内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。病変にステントが展開され、コバルト金属は、ある期間にわたってその大部分を溶解し始め、その間、薬物が放出される。
【0116】
実施例3
1.6mmのODおよび0.6mmのIDタングステン棒から冠状動脈ステントを作製する。EDMドリルで孔を1mmまで拡大する。続いて、外径が1.11mmになるまで、棒をセンターレス研削盤にかける。結果として生じたタングステンチューブを、摂氏1400度で1時間、真空オーブン中で焼き戻す。長さ25mmのステントパターンが形成されるような掘削機EDMでスロットを切断して、チューブとする。EDMで切断していないほうの端部を除去する。化学処置でスラグおよびスケールを除去した後、摂氏45度に加熱した2N塩酸で6時間ステントをエッチングして、その表面上に腐食くぼみ特徴を誘発する。
【0117】
温水を入れたビーカーに数回浸漬し、その後、100%エタノールを入れたビーカーに浸漬して、ステントを清浄する。続いて、100%エタノールを満たしたビーカー中に、ステントを入れる。このビーカーを超音波浴(Branson Ultrasonic Corporation、コネチカット州ダンベリー)に入れ、当該浴中でステントを5分間清浄する。乾燥後、3.5×27mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。滅菌後、パウチを金属箔パウチ内に入れる。箔パウチを不活性窒素ガスでパージし、空気を抜いた後、密封する。
【0118】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが左回旋動脈の病変内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。病変にステントが展開され、タングステン金属は、ある期間にわたってその大部分を溶解し始める。
【0119】
実施例4
銀ハイポチューブを切断し、8mmの冠状動脈ステントとする。化学処置でスラグおよびスケールを除去した後、20N塩酸中にステントを留置し、摂氏200度になるまで1時間加熱すると、腐食ピット表面特徴が生じる。熱湯を入れたビーカーに数回浸漬し、その後、100%イソプロパノールを入れたビーカーに浸漬して、ステントを清浄する。続いて、100%イソプロパノールを満たしたビーカー中に、ステントを入れる。このビーカーを超音波浴(Branson Ultrasonic Corporation、コネチカット州ダンベリー)に入れ、当該浴中でステントを5分間清浄する。乾燥後、2.5×10mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。プラスチックに脱酸素剤を埋入して作製したシースを、圧着されたステントの上に置く。ステント送達システムを金属パウチ内に密封し、ガンマ線滅菌で滅菌する。
【0120】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントがLAD冠動脈の病変内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。病変にステントが展開され、銀金属は、ある期間にわたってその大部分を溶解し始める。
【0121】
実施例5
実施例4と同じ手法で作製した18mmの冠状動脈ステントを、200μgのエポチロンDで被覆する。乾燥後、3.25×20mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムを金属パウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0122】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが右冠動脈の病変内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。病変にステントが展開され、銀金属は、薬物が放出される間、ある期間にわたってその大部分を溶解し始める。
【0123】
実施例6
実施例4と同じ手法で作製した13mmの尿道ステントを、タキソール、続いてポリジオキサノンのコーティングで被覆する。乾燥後、3.0×15mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0124】
尿道の閉塞区域にステント送達システムを挿入し、展開する。展開後、ステント金属は、薬物が放出される間、ある期間にわたってその大部分を隣接する組織および尿中に溶解し始める。
【0125】
実施例7
マグネシウムハイポチューブをレーザー切断し、18mmの冠状動脈ステントとする。化学処置でスラグおよびスケールを除去した後、続いて、100%イソプロパノールを満たしたビーカー中に、ステントを入れる。このビーカーを超音波浴(Branson Ultrasonic Corporation、コネチカット州ダンベリー)に入れ、当該浴中でステントを5分間清浄する。スパッタリングにより、ステントを1オングストロームのクロムのコーティングで被覆する。清浄および乾燥後、2.5×20mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0126】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが左冠動脈回旋枝の病変内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。病変にステントが展開され、マグネシウムは、ある期間にわたってその大部分を隣接する組織および血中に溶解し始める。
【0127】
実施例8
タングステンハイポチューブをレーザー切断し、長さ28mmの気管支ステントとする。化学処置でスラグおよびスケールを除去した後、タングステン蒸気の化学気相成長法によって、その表面に多くの小さなヒロックを蒸着させる。ヒロックは、400nmRaの間隔で密集していた。温水を入れたビーカーに数回浸漬し、その後、100%イソプロパノールを入れたビーカーに浸漬して、ステントを清浄する。乾燥後、35×30mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0128】
ガイドワイヤに沿わせて、癌のある左主気管支にステント送達システムを挿入する。ステントを展開させ、腫瘍による気道閉塞を開いて保持し、その間に薬物が癌を治療し、合金は、ある期間にわたって隣接する組織にその大部分を溶解し始める。
【0129】
実施例9
40%ビスマス‐60%スズチューブを回転固定具内に固着させる。チューブを曲げ、チューブの外面全体に傷がつくまで、チューブの表面に剃刀刃で傷をつける。腐食擦り傷特徴が不均一に分布される。次に、フェムト秒レーザーを使用してチューブをレーザー切断し、長さ14mmの動脈瘤ステントパターンとする。化学処置でスラグおよびスケールを除去した後、温水を入れたビーカーに数回浸漬し、その後、100%イソプロパノールを入れたビーカーに浸漬して、ステントを清浄する。乾燥後、2.5×15mmステント送達カテーテルのバルーンにステントを圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、EtOで滅菌する。
【0130】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが脳動脈瘤内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。ステントが動脈瘤に展開され、合金は、ある期間にわたって隣接する組織および血中にその大部分を溶解し始める。
【0131】
実施例10
純タングステン金属から長方形の骨プレートを作製する。沸騰した20N塩酸にプレートを10分間浸して腐食くぼみ特徴を作成し、続いて、熱湯、その後100%イソプロパノール中における超音波清浄によって清浄する。清浄後、骨プレートを梱包し、25キログレイのガンマ放射線で滅菌する。骨プレートを骨折部の片側にある骨折した大腿骨に固定して、一時的な足場を作成する。骨プレートは、ある期間にわたって隣接する組織にその大部分を溶解し始める。
【0132】
実施例11
異なる処置を施した後の、コバルト、40%ビスマス‐60%インジウム合金タングステン、および316Lステンレス鋼から作製した平らな切り取り試片を、個別に秤量した。各切り取り試片を、生理食塩水を満たしたバイアル中に入れた。バイアルを摂氏37度まで加熱し、12rpmで回転させた。時間をおいて、切り取り試片をバイアルから除去し、温水で洗浄した後、100%イソプロパノールを満たしたディッシュに浸した。ディッシュを超音波浴中に5分間置いた。金属および合金からの速度損失の量を示したプロットを、図20〜21に示す。
【0133】
実施例12
1010炭素鋼チューブをレーザー切断し、長さ14mmの冠状動脈ステントとする。750℃で90分間、ステントを炉内で焼き戻す。続いてステントを清浄し、回転固定具内に固着させる。スラグおよびスケールが除去されてステントの表面が400nmRaの粗さのざらついた状態となるまで、20ミクロンの酸化アルミニウム媒体を用いてステントをサンドブラストする。清浄後、30%ラパマイシンアナログを包含する10ミクロンの炭酸ポリエチレンでステントを被覆し、3.5×15mmステント送達カテーテルのバルーンに圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、電子線で滅菌する。
【0134】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが冠動脈内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。ステントが冠動脈に展開され、合金は、ある期間にわたって隣接する組織および血中にその大部分を溶解し始める。
【0135】
実施例13
コバルト箔をレーザー切断し、25mmのフラットパターンの冠状動脈ステントとする。700℃で90分間、当該箔を真空炉内で焼き戻す。ステントは次にHClでスケール除去し、清浄する。清浄後、パターン箔の片側(内腔側)を厚さ1ミクロンのPLLAで被覆する。次に、ステントを管状ステント内に溶接する。清浄後、40%ラパマイシンアナログを包含する厚さ5ミクロンの炭酸ポリエチレンでステントを完全に被覆し、3.0×26mmステント送達カテーテルのバルーンに圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封する。パウチを冷却容器内に置き、当該容器を電子線に暴露して、ステント送達システムを滅菌する。
【0136】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが冠動脈に入るまで、ステント送達システムを挿入する。ステントが冠動脈に展開され、合金は、ある期間にわたって隣接する組織および血中にその大部分を溶解し始める。
【0137】
実施例14
1010炭素鋼チューブをレーザー切断し、長さ14mmの冠状動脈ステントとする。750℃で90分間、ステントを炉内で焼き戻す。続いてステントを清浄し、回転固定具内に固着させる。スラグおよびスケールが除去されてステントの表面が400nmの粗さ(Ra)のざらついた状態となるまで、20ミクロンの酸化アルミニウム媒体を用いてステントをサンドブラストする。清浄後、ステントを150マイクログラムのラパマイシンアナログで被覆し、3.5×15mmステント送達カテーテルのバルーンに圧着する。ステント送達システムをパウチ内に密封し、電子線で滅菌する。
【0138】
ガイドワイヤに沿わせて、ステントが冠動脈内に入るまで、ステント送達システムを挿入する。ステントが冠動脈に展開され、合金は、ある期間にわたって隣接する組織および血中にその大部分を溶解し始める。
【0139】
本出願の様々な実施態様、実施例、および構成要素は、本出願全体を通して、別々に適用してもよいし、互いに組み合わせて適用してもよい。
【0140】
本明細書において引用したすべての出版物および特許出願は、個別の出版物または特許出願が具体的にまたは個別に参照することにより組み込まれることを示唆しているように、参照することにより本書に組み込まれる。
【0141】
前述の発明について、明瞭な理解を目的として、図示および実施例を用いてある程度詳細に説明したが、様々な代替形態、変更形態、および均等物を使用することができ、上記の説明は添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが明らかになるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−63319(P2013−63319A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−270170(P2012−270170)
【出願日】平成24年12月11日(2012.12.11)
【分割の表示】特願2008−505501(P2008−505501)の分割
【原出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(507331221)エリクシアー メディカル コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−270170(P2012−270170)
【出願日】平成24年12月11日(2012.12.11)
【分割の表示】特願2008−505501(P2008−505501)の分割
【原出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(507331221)エリクシアー メディカル コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】
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