説明

分解検知機能を有する錠装置

【課題】錠装置が分解されることにより不正行為がなされることを防止する。
【解決手段】錠装置1には、錠装置本体10と、外側エスカチオン13、シリンダユニット14、内側エスカチオン16およびサムターンユニット17のそれぞれとの間を電気的に接続するループ状回路部23、26、29、32と、ループ状回路部23、26、29、32の切断をそれぞれ検知する検知部21、24、27、30と、各検知部21、24、27、30が各ループ状回路部23、26、29、32の切断を検知したときにブザー音を出力する制御部33およびブザー34等を設ける。外側エスカチオン13、シリンダユニット14、内側エスカチオン16およびサムターンユニット17のいずれかが錠装置本体10または扉2から取り外されたときにはブザー音が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉に取り付けられ、施錠時に扉を開扉不能にする錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、扉に用いられる錠装置は、錠ケースおよび錠ケース内に設けられたボルト機構を有して扉内部に設けられた錠装置本体と、扉の室外側の面に取り付けられた外側エスカチオンと、扉の室外側において、外側エスカチオンの取付孔を介して錠装置本体に取り付けられたシリンダユニットと、扉の室内側の面に取り付けられた内側エスカチオンと、扉の室内側において、内側エスカチオンの取付孔を介して錠装置本体に取り付けられたサムターンユニットとを備えている。
【0003】
このような錠装置は、通常、室外側から分解することができない構造となっているが、室内側からは分解することができるようになっている。例えば、鍵を変更する必要が生じた場合には、管理者から依頼を受けた作業者等が、室内側から錠装置を分解して、シリンダユニットを交換することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、錠装置は室内側から分解することができるので、例えば、不正行為者が扉に取り付けられた錠装置を部屋内側から分解し、当該錠装置のシリンダユニットを、不正行為者が予め用意しておいた別のシリンダユニットにすり替えるといったことが起こり得る。そして、当該不正行為者が、すり替えたシリンダユニットの合鍵を持っており、後日、その合鍵を用いて当該錠装置を解錠し、当該部屋の扉を開けて当該部屋内に侵入し、窃盗を行うといったことが起こるおそれがある。
【0005】
なお、このような不正行為が実際に行われた事実は少なくとも日本国内においては報告されておらず、また、このような不正行為は錠装置からシリンダユニットを容易に取り外すことができないようにする等の措置を講じることにより抑制することができる。しかし、不正行為防止をより一層強化することが望ましい。
【0006】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、錠装置が分解されることにより不正行為がなされることを防止することができる錠装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の錠装置は、扉に取り付けられ、施錠時に扉を開扉不能にする錠装置であって、錠ケース、および前記錠ケース内に設けられ施錠時にボルトを前記扉から突出させた状態で固定することにより前記扉を開扉不能にするボルト機構を有し、前記扉の内部に設けられた錠装置本体と、前記扉の一面側に取り付けられた一側エスカチオンと、前記扉の一面側において前記錠装置本体に取り付けられ、鍵穴を有し、前記鍵穴に鍵を挿入することにより前記ボルト機構を動作させて施解錠を行うシリンダユニットと、前記扉の他面側に取り付けられた他側エスカチオンと、前記扉の他面側において前記錠装置本体に取り付けられ、摘みを有し、前記摘みを操作することにより前記ボルト機構を動作させて施解錠を行うサムターンユニットと、前記一側エスカチオン、前記シリンダユニット、前記他側エスカチオンおよび前記サムターンユニットのうちの少なくとも1つである検知対象物が前記錠装置本体または前記扉から取り外されたことを検知する分解検知手段と、前記検知対象物が前記錠装置本体または前記扉から取り外されたことを前記分解検知手段が検知したときに警報を出力する警報出力手段とを備えていることを特徴とする。
【0008】
上述した本発明の第1の錠装置によれば、一側エスカチオン、シリンダユニット、他側エスカチオンまたはサムターンユニットが錠装置本体または扉から取り外されたとき、警報が出力される。これにより、例えば管理者等は、錠装置が分解されたことを知ることができ、窃盗準備行為の防止等を図ることができる。
【0009】
また、本発明の第2の錠装置は、上述した本発明の第1の錠装置において、前記分解検知手段は、前記検知対象物と前記錠装置本体との間を電気的に接続する電気回路を有し、前記電気回路が切断されたことを検知することを特徴とする。
【0010】
上述した本発明の第2の錠装置によれば、一側エスカチオン、シリンダユニット、他側エスカチオンまたはサムターンユニットが錠装置本体または扉から取り外されたことを確実に検知することができ、しかも、このような検知手段を簡単に形成することができる。
【0011】
上述した本発明の第3の錠装置は、上述した本発明の第2の錠装置において、前記錠装置本体および前記検知対象物には前記錠装置本体または前記扉に前記検知対象物が取り付けられた状態で互いに接触すると共に前記電気回路の途中に接続された端子がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0012】
上述した本発明の第3の錠装置によれば、錠装置本体に検知対象物を取り付けるときに、錠装置本体に設けられた端子と検知対象物に設けられた端子とを互いに接触させれば分解検知のための電気回路を形成することができるので、分解検知のための電気回路を簡単に形成することができる。また、錠装置の構造を複雑化させることを防止でき、錠装置の組立性の悪化を防ぐことができる。
【0013】
また、本発明の第4の錠装置は、上述した本発明の第2または第3の錠装置において、前記ボルト機構は、当該錠装置外または当該錠装置内に設けられた駆動電源から供給される電力により駆動し、前記ボルトを動かして施解錠動作を行う電動アクチュエータを有し、当該錠装置内には、前記分解検知手段および前記警報出力手段を動作させるための電力を前記分解検知手段および前記警報出力手段に供給する、前記駆動電源とは別の専用電源が設けられていることを特徴とする。
【0014】
上述した本発明の第4の錠装置によれば、たとえ駆動電源が切られても、専用電源によって分解検知手段および警報出力手段を動作させることができ、分解の検知および警報の出力を行うことができる。
【0015】
また、本発明の第5の錠装置は、上述した本発明の第1ないし第4のいずれかの錠装置において、前記警報出力手段はブザーであることを特徴とする。
【0016】
上述した本発明の第5の錠装置によれば、一側エスカチオン、シリンダユニット、他側エスカチオンまたはサムターンユニットが錠装置本体または扉から取り外されたことを確実に報知することができ、しかも、このような警報手段を簡単に形成することができる。
【0017】
また、本発明の第6の錠装置は、上述した本発明の第1ないし第5のいずれかの錠装置において、前記一側エスカチオン、前記シリンダユニット、前記他側エスカチオンおよび前記サムターンユニットのそれぞれが前記検知対象物であり、前記分解検知手段は、前記検知対象物が前記錠装置本体または前記扉から取り外されたことを前記検知対象物ごとに検知し、前記警報出力手段は、前記分解検知手段の検知結果に基づき、前記検知対象物のうちの1つでも前記錠装置本体または前記扉から取り外されたときには警報を出力することを特徴とする。
【0018】
上述した本発明の第6の錠装置によれば、一側エスカチオン、シリンダユニット、他側エスカチオンおよびサムターンユニットのうちの1つでも錠装置本体または扉から取り外されたならば警報が出力される。これにより、例えば管理者等は、窃盗準備行為の着手があった時点で、直ちに当該行為が行われたことを知ることができるので、窃盗準備行為の防止等を一層効果的に図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、錠装置が分解されることにより不正行為がなされることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態による錠装置を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態による錠装置の分解検知回路等を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態による錠装置を示している。図1において、本発明の実施形態による錠装置1は、例えば部屋の扉2に取り付けられている。
【0022】
錠装置1は錠装置本体10を備え、錠装置本体10は扉2の内部に設けられている。錠装置本体10は錠ケース11を備え、錠ケース11内にはボルト機構12が設けられている。本実施形態による錠装置1は電気錠である。そのため、ボルト機構12は、デッドボルト、デッドボルトを移動させるための電動アクチュエータ、電動アクチュエータの動力をデッドボルトに伝達する動力伝達機構、電動アクチュエータの駆動を制御する駆動制御回路、および駆動制御回路に電力を供給する駆動電源としての電池を備えている。また、本実施形態による錠装置1にはラッチボルト機構が組み込まれている。そのため、ボルト機構12は、ラッチボルト、並びに外側レバーハンドル15および内側レバーハンドル18の動きをラッチボルトに伝達する動力伝達機構を備えている。なお、このようなボルト機構12の内部構成は周知であるので詳細な図示を省略する。
【0023】
また、扉2の部屋外側において、錠装置1は、外側エスカチオン13、シリンダユニット14および外側レバーハンドル15を備えている。外側エスカチオン13は扉2の部屋外側の面に取り付けられている。シリンダユニット14は、外側エスカチオン13に設けられた取付孔13Aを介して錠装置本体10に取り付けられている。シリンダユニット14において、部屋外側の端部には鍵穴14Aが開口しており、部屋内側の端部は、ボルト機構12におけるデッドボルトを移動させるための動力伝達機構に連結されている。また、外側レバーハンドル15において、部屋外側の端部には把持部15Aが設けられ、部屋内側の端部は、ボルト機構12におけるラッチボルトを移動させるための動力伝達機構に連結されている。
【0024】
また、扉2の部屋内側において、錠装置1は、内側エスカチオン16、サムターンユニット17および内側レバーハンドル18を備えている。内側エスカチオン16は扉2の部屋内側の面に取り付けられている。サムターンユニット17は、内側エスカチオン16に設けられた取付孔16Aを介して錠装置本体10に取り付けられている。サムターンユニット17において、部屋内側の端部には摘み17Aが設けられ、部屋外側の端部は、ボルト機構12におけるデッドボルトを移動させるための動力伝達機構に連結されている。また、内側レバーハンドル18において、部屋内側の端部には把持部18Aが設けられ、部屋外側の端部は、ボルト機構12におけるラッチボルトを移動させるための動力伝達機構に連結されている。
【0025】
また、錠装置1は受信器19を備え、受信器19は、扉2の部屋内側において、内側エスカチオン16に設けられた取付孔16Bに取り付けられている。また、錠装置1は、錠装置1が分解されたときに、これを検知して警報を鳴らす分解検知回路20を備えている。分解検知回路20は、分解検知手段および警報出力手段の具体例である。受信器19および分解検知回路20については後述する。
【0026】
このような構成を有する錠装置1の基本的な施解錠動作は次のとおりである。すなわち、施錠時には、デッドボルトを、扉2から突出するように移動させた状態で固定することにより、扉2を開扉不能にする。解錠時には、デッドボルトを、扉2内に引き込むように移動させることにより、扉2を開扉可能にする。デッドボルトのこのような移動は、錠装置1の外部(例えば部屋内に設けられた操作盤、または扉2の部屋外側の面に取り付けられたカードリーダ(いずれも図示せず))から出力される施解錠制御信号に従い、ボルト機構12の電動アクチュエータを駆動させることにより行うことができる。また、デッドボルトのこのような移動は、シリンダユニット14の鍵穴14Aに合鍵を挿入して回転させ、ボルト機構12におけるデッドボルトを移動させるための動力伝達機構を動作させることによっても行うことができる。さらに、デッドボルトのこのような移動は、サムターンユニット17の摘み17Aを回転させ、ボルト機構12におけるデッドボルトを移動させるための動力伝達機構を動作させることによっても行うことができる。
【0027】
図2は、錠装置1内に設けられた分解検知回路等を示している。図2に示すように、錠装置1は、錠装置1が分解されたときに、これを検知して警報を鳴らす分解検知回路20を備えている。
【0028】
分解検知回路20は、4つの検知回路部を備えている。第1の検知回路部は、外側エスカチオン13が扉2から取り外されたことを検知する検知回路部であり、検知部21、端子22A、22B、およびループ状回路部23を備えている。検知部21は、錠ケース11内に配置された基板37上に設けられている。端子22Aは錠ケース11に2個設けられており、各端子22Aは、その一端側が錠ケース11において外側エスカチオン13と接触または対向する面上で露出するように錠ケース11に固定されている。また、各端子22Aの他端側は配線コード等を介して検知部21に接続されている。なお、錠ケース11が金属で形成されている場合には、端子22Aと錠ケース11との間に絶縁体を介在させる。端子22Bは外側エスカチオン13に2個設けられており、各端子22Bは、その一端側が外側エスカチオン13において錠ケース11と接触または対向する面上で露出するように外側エスカチオン13に固定されている。また、一方の端子22Bの他端側は配線コード等を介して他方の端子22Bの他端側に接続されている。
【0029】
扉2の内部に錠装置本体10が設けられ、扉2の部屋外側の面に外側エスカチオン13が取り付けられた状態では、各端子22Aと各端子22Bとが相互に直接接触し、それぞれの間が電気的に接続される。これにより、錠装置本体10と外側エスカチオン13との間を電気的に接続するループ状回路部23が形成される。一方、外側エスカチオン13または錠装置本体10が扉2から取り外され、外側エスカチオン13と錠装置本体10とが相互に分離すると、各端子22Aと各端子22Bとが相互に接触しなくなり、ループ状回路部23が切断される。検知部21は、ループ状回路部23がこのように切断されたことを検知し、ループ状回路部23が切断されたことを示す切断検知信号を制御部33に出力する。
【0030】
また、第2の検知回路部は、シリンダユニット14が錠制御装置10から取り外されたことを検知する検知回路部であり、検知部24、端子25A、25B、およびループ状回路部26を備えている。検知部24は、錠ケース11内において基板37上に設けられている。端子25Aは錠ケース11に2個設けられており、各端子25Aは、その一端側が錠ケース11においてシリンダユニット14と接触または対向する面上で露出するように錠ケース11に固定されている。また、各端子25Aの他端側は配線コード等を介して検知部24に接続されている。なお、錠ケース11が金属で形成されている場合には、端子25Aと錠ケース11との間に絶縁体を介在させる。端子25Bはシリンダユニット14に2個設けられており、各端子25Bは、その一端側がシリンダユニット14において錠ケース11と接触または対向する面上で露出するようにシリンダユニット14に固定されている。また、一方の端子25Bの他端側は配線コード等を介して他方の端子25Bの他端側に接続されている。
【0031】
扉2の内部に錠装置本体10が設けられ、錠装置本体10にシリンダユニット14が取り付けられた状態では、各端子25Aと各端子25Bとが相互に直接接触し、それぞれの間が電気的に接続される。これにより、錠装置本体10とシリンダユニット14との間を電気的に接続するループ状回路部26が形成される。一方、シリンダユニット14または錠装置本体10が扉2から取り外され、シリンダユニット14と錠装置本体10とが相互に分離すると、各端子25Aと各端子25Bとが相互に接触しなくなり、ループ状回路部26が切断される。検知部24は、ループ状回路部26がこのように切断されたことを検知し、ループ状回路部26が切断されたことを示す切断検知信号を制御部33に出力する。
【0032】
また、第3の検知回路部は、内側エスカチオン16が扉2から取り外されたことを検知する検知回路部であり、検知部27、端子28A、28B、およびループ状回路部29を備えている。検知部27は、錠ケース11内において基板37上に設けられている。端子28Aは錠ケース11に2個設けられており、各端子28Aは、その一端側が錠ケース11において内側エスカチオン16と接触または対向する面上で露出するように錠ケース11に固定されている。また、各端子28Aの他端側は配線コード等を介して検知部27に接続されている。なお、錠ケース11が金属で形成されている場合には、端子28Aと錠ケース11との間に絶縁体を介在させる。端子28Bは内側エスカチオン16に2個設けられており、各端子28Bは、その一端側が内側エスカチオン16において錠ケース11と接触または対向する面上で露出するように内側エスカチオン16に固定されている。また、一方の端子28Bの他端側は配線コード等を介して他方の端子28Bの他端側に接続されている。
【0033】
扉2の内部に錠装置本体10が設けられ、扉2の部屋内側の面に内側エスカチオン16が取り付けられた状態では、各端子28Aと各端子28Bとが相互に直接接触し、それぞれの間が電気的に接続される。これにより、錠装置本体10と内側エスカチオン16との間を電気的に接続するループ状回路部29が形成される。一方、内側エスカチオン16または錠装置本体10が扉2から取り外され、内側エスカチオン16と錠装置本体10とが相互に分離すると、各端子28Aと各端子28Bとが相互に接触しなくなり、ループ状回路部29が切断される。検知部27は、ループ状回路部29がこのように切断されたことを検知し、ループ状回路部29が切断されたことを示す切断検知信号を制御部33に出力する。
【0034】
また、第4の検知回路部は、サムターンユニット17が錠制御装置10から取り外されたことを検知する検知回路部であり、検知部30、端子31A、31B、およびループ状回路部32を備えている。検知部30は、錠ケース11内において基板37上に設けられている。端子31Aは錠ケース11に2個設けられており、各端子31Aは、その一端側が錠ケース11においてサムターンユニット17と接触または対向する面上で露出するように錠ケース11に固定されている。また、各端子31Aの他端側は配線コード等を介して検知部30に接続されている。なお、錠ケース11が金属で形成されている場合には、端子31Aと錠ケース11との間に絶縁体を介在させる。端子31Bはサムターンユニット17に2個設けられており、各端子31Bは、その一端側がサムターンユニット17において錠ケース11と接触または対向する面上で露出するようにサムターンユニット17に固定されている。また、一方の端子31Bの他端側は配線コード等を介して他方の端子31Bの他端側に接続されている。
【0035】
扉2の内部に錠装置本体10が設けられ、錠装置本体10にサムターンユニット17が取り付けられた状態では、各端子31Aと各端子31Bとが相互に直接接触し、それぞれの間が電気的に接続される。これにより、錠装置本体10とサムターンユニット17との間を電気的に接続するループ状回路部32が形成される。一方、サムターンユニット17または錠装置本体10が扉2から取り外され、サムターンユニット17と錠装置本体10とが相互に分離すると、各端子31Aと各端子31Bとが相互に接触しなくなり、ループ状回路部32が切断される。検知部30は、ループ状回路部32がこのように切断されたことを検知し、ループ状回路部32が切断されたことを示す切断検知信号を制御部33に出力する。
【0036】
また、分解検知回路20は、制御部33およびブザー34を備えている。制御部33は、錠ケース11内において基板37上に設けられており、基板37上において検知部21、24、27,30およびブザー34に配線パターン等を介して接続されている。制御部33は、検知部21、24、27および30のうちの少なくとも1つから切断検知信号を受け取ったときに、警報としてのブザー音をブザー34に出力させるための警報出力信号をブザー34に出力する。ブザー34は、基板37上に設けられており、制御部33からの警報出力信号によりブザー音を出力する。
【0037】
また、制御部33には受信器19が配線コード等を介して接続されている。受信器19は、例えば専用の発信装置との間で赤外線等を介して無線通信を行うことができる。発信装置から警報オフ信号が発信されると、警報オフ信号は受信器19により受信され、制御部33に入力される。警報オフ信号が入力されると、制御部33はオフ状態となり、各検知部21、24、27、30から切断検知信号が出力されても、警報出力信号をブザー34に出力しなくなる。一方、発信装置から警報オン信号が発信され、警報オン信号が受信器19を介して制御部33に入力されると、制御部33はオン状態となり、各検知部21、24、27、30から切断検知信号が出力されたとき、警報出力信号をブザー34に出力するようになる。
【0038】
また、錠ケース11内において、基板37上には、専用電源35および充電回路36が設けられている。専用電源35は、検知部21、24、27、30、ループ状回路部23、26、29、32、制御部33およびブザー34を動作させるための電力をこれらに供給する電源であり、例えば蓄電池である。なお、検知部21、24、27、30、ループ状回路部23、26、29、32、制御部33およびブザー34と専用電源35との間の電力供給用の配線は図示を省略している。専用電源35は、ボルト機構12の電動アクチュエータを駆動するための駆動電源とは別の電源である。専用電源35は、錠ケース11を分解しない限り取り出すことができないように錠ケース11内に収容されている。充電回路36は、ボルト機構12の電動アクチュエータを駆動するための駆動電源を用いて専用電源35を充電するための回路である。例えば、充電回路36は駆動電源である電池が交換されたときに、専用電源35を充電する。
【0039】
このような構成を有する分解検知回路20の動作は次のとおりである。例えば、部屋の管理者等は、通常時は、制御部33をオン状態にしておく。制御部33がオン状態の間に、例えば不正行為者が、部屋内側から、錠装置1の内側エスカチオン16を扉2から取り外すと、ループ状回路部29が切断される。ループ状回路部29が切断されると、検知部27がその旨を検知し、切断検知信号を制御部33に出力する。切断検知信号を受け取った制御部33は、警報出力信号をブザー34に出力する。この結果、ブザー34は警報としてブザー音を出力する。
【0040】
また、もし不正行為者が、例えば切削工具等を用いて、内側エスカチオン16を扉2から取り外さずに、シリンダユニット14を取り外したとしても、これによりループ状回路部23が切断されるので、検知部21がこれを検知し、切断検知信号を制御部33に出力する。切断検知信号を受け取った制御部33は、警報出力信号をブザー34に出力し、この結果、ブザー34からブザー音が出力される。不正行為者がサムターンユニット17や外側エスカチオン13を取り外した場合も、同様に、ブザー34からブザー音が出力される。
【0041】
このように、内側エスカチオン16、シリンダユニット14、サムターンユニット17および外側エスカチオン13のいずれか1つでも錠装置本体10または扉2から取り外されるとブザー音が出力される。これにより、管理者等は錠装置1が不正行為者により分解されていることを知ることができ、不正行為を早期に発見し、当該不正行為者によるシリンダユニットのすり替え行為や窃盗行為等を未然に防ぐことができる。また、ブザー音が鳴っている最中では、不正行為者は心理的に不正行為を続行することが困難になるので、不正行為者による不正行為の遂行を阻止することができる。
【0042】
また、もし不正行為者が、ボルト機構12の電動アクチュエータを駆動するための駆動電源である電池を取り外し、あるいは、当該駆動電源に接続されている配線を切断してから、シリンダユニット14等の取外行為を行った場合でも、分解検知回路20は、駆動電源とは別の専用電源35で動作するので、ブザー34からブザー音が出力される。これにより、不正行為者が、駆動電源(主電源)さえ切ってしまえば錠装置1の機能がすべて停止するであろうと予想して取外行為に着手しても、取り外した結果、ブザー音が出力されるので、不正行為の続行を阻止することができる。
【0043】
一方、正当な理由によりシリンダユニット14の交換や錠装置1の修理をする必要が生じた場合等には、管理者または管理者から依頼を受けた作業者等は、発信装置から錠装置1に警報オフ信号を発信し、制御部33をオフ状態にした後、錠装置1を分解する。この場合には、内側エスカチオン16、シリンダユニット14、サムターンユニット17および外側エスカチオン13のいずれを取り外しても、ブザー音は出力されない。これにより、正当な理由によるシリンダユニット14の交換や錠装置1の修理を適切に行うことができる。
【0044】
なお、上述した実施形態では、外側エスカチオン13、シリンダユニット14、内側エスカチオン16およびサムターンユニット17を、分解検知回路20により取外検知を行う検知対象物に設定する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。例えば、不正行為者によるすり替えの対象であるシリンダユニット14のみを検知対象物に設定してもよいし、取外行為の着手時に最初に取り外される可能性が最も高い内側エスカチオン16のみを検知対象物としてもよい。また、外装である内側エスカチオン16および外側エスカチオン13のみを検知対象物に設定してもよいし、内部部品であるシリンダユニット14およびサムターンユニット17のみを検知対象物に設定しもよい。さらに、外側エスカチオン13、シリンダユニット14、内側エスカチオン16およびサムターンユニット17以外の錠装置1を構成する部品を検知対象物に設定することもできる。
【0045】
また、上述した実施形態では、端子22A、25A、28A、31Aと端子22B、25B、28B、31Bとの分離により、外側エスカチオン13、シリンダユニット14、内側エスカチオン16およびサムターンユニット17のいずれかが錠装置本体10または扉2から取り外されたことを検知する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。例えば、錠装置本体10と、外側エスカチオン13、シリンダユニット14、内側エスカチオン16およびサムターンユニット17のそれぞれとを配線コードによって直接接続し、これら配線コードのうちのいずれかが切断されたことを検知することで、外側エスカチオン13、シリンダユニット14、内側エスカチオン16およびサムターンユニット17のいずれかが錠装置本体10または扉2から取り外されたことを認識する構成としてもよい。もっとも、上記実施形態のように、端子22A、25A、28A、31Aおよび端子22B、25B、28B、31Bを用いた方が分解検知回路20を簡単に形成することができ、錠装置1の組立性も良い。
【0046】
また、上述した実施形態では、ループ状回路部23、26、29、32の切断を電気的に検知することにより、外側エスカチオン13、シリンダユニット14、内側エスカチオン16およびサムターンユニット17のいずれかが錠装置本体10または扉2から取り外されたことを認識する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。例えば、錠装置本体10と外側エスカチオン13、シリンダユニット14、内側エスカチオン16およびサムターンユニット17のそれぞれとの間にスイッチを設け、外側エスカチオン13、シリンダユニット14、内側エスカチオン16およびサムターンユニット17のそれぞれが錠装置本体10または扉2に取り付けられているときには、各スイッチがオンとなり、外側エスカチオン13、シリンダユニット14、内側エスカチオン16およびサムターンユニット17のそれぞれが錠装置本体10または扉2から取り外されたときに各スイッチがオフとなるようにし、いずれかのスイッチがオフとなったときに、外側エスカチオン13、シリンダユニット14、内側エスカチオン16およびサムターンユニット17のいずれかが錠装置本体10または扉2から取り外されたことを認識する構成としてもよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、外側エスカチオン13、シリンダユニット14、内側エスカチオン16およびサムターンユニット17のいずれかが錠装置本体10または扉2から取り外されたときの警報としてブザー音を出力する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。警報として、ランプを点灯ないし点滅させたり、警報信号を錠装置1の外部に送信してもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、錠装置1が電気錠である場合を例にあげたが、本発明は、電気錠でない錠装置にも適用することができる。また、上述した実施形態では、ラッチボルト機構やレバーハンドル15、18が一体的に組み込まれたタイプの錠装置1を例にあげたが、本発明は、ラッチボルト機構やレバーハンドルが設けられていないタイプの錠装置にも適用することができる。
【0049】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う錠装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1 錠装置
2 扉
10 錠装置本体
11 錠ケース
12 ボルト機構
13 外側エスカチオン(一側エスカチオン)
14 シリンダユニット
16 内側エスカチオン(他側エスカチオン)
17 サムターンユニット
20 分解検知回路(分解検知手段)
21、24、27、30 検知部
22A、22B、25A、25B、28A、28B、31A、31B 端子
23、26、29、32 ループ状回路部(電気回路)
33 制御部
34 ブザー(警報出力手段)
35 専用電源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉に取り付けられ、施錠時に扉を開扉不能にする錠装置であって、
錠ケース、および前記錠ケース内に設けられ施錠時にボルトを前記扉から突出させた状態で固定することにより前記扉を開扉不能にするボルト機構を有し、前記扉の内部に設けられた錠装置本体と、
前記扉の一面側に取り付けられた一側エスカチオンと、
前記扉の一面側において前記錠装置本体に取り付けられ、鍵穴を有し、前記鍵穴に鍵を挿入することにより前記ボルト機構を動作させて施解錠を行うシリンダユニットと、
前記扉の他面側に取り付けられた他側エスカチオンと、
前記扉の他面側において前記錠装置本体に取り付けられ、摘みを有し、前記摘みを操作することにより前記ボルト機構を動作させて施解錠を行うサムターンユニットと、
前記一側エスカチオン、前記シリンダユニット、前記他側エスカチオンおよび前記サムターンユニットのうちの少なくとも1つである検知対象物が前記錠装置本体または前記扉から取り外されたことを検知する分解検知手段と、
前記検知対象物が前記錠装置本体または前記扉から取り外されたことを前記分解検知手段が検知したときに警報を出力する警報出力手段とを備えていることを特徴とする錠装置。
【請求項2】
前記分解検知手段は、前記検知対象物と前記錠装置本体との間を電気的に接続する電気回路を有し、前記電気回路が切断されたことを検知することを特徴とする請求項1に記載の錠装置。
【請求項3】
前記錠装置本体および前記検知対象物には前記錠装置本体または前記扉に前記検知対象物が取り付けられた状態で互いに接触すると共に前記電気回路の途中に接続された端子がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2に記載の錠装置。
【請求項4】
前記ボルト機構は、当該錠装置外または当該錠装置内に設けられた駆動電源から供給される電力により駆動し、前記ボルトを動かして施解錠動作を行う電動アクチュエータを有し、
当該錠装置内には、前記分解検知手段および前記警報出力手段を動作させるための電力を前記分解検知手段および前記警報出力手段に供給する、前記駆動電源とは別の専用電源が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の錠装置。
【請求項5】
前記警報出力手段はブザーであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の錠装置。
【請求項6】
前記一側エスカチオン、前記シリンダユニット、前記他側エスカチオンおよび前記サムターンユニットのそれぞれが前記検知対象物であり、
前記分解検知手段は、前記検知対象物が前記錠装置本体または前記扉から取り外されたことを前記検知対象物ごとに検知し、
前記警報出力手段は、前記分解検知手段の検知結果に基づき、前記検知対象物うちの1つでも前記錠装置本体または前記扉から取り外されたときには警報を出力することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の錠装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−26203(P2012−26203A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167310(P2010−167310)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】