説明

分配装置、及び分配方法

【課題】粒状物を分配先容器に自動的に分配できる分配装置を提供する。
【解決手段】上方が開口しており、液体と液体よりも密度の大きい粒状物とが入れられる容器11と、流体を吸引及び吐出するノズル31を有し、容器11の底に存在する粒状物をノズル31で吸引してノズル31の先端で保持し、分配先容器に吐出する分注器12と、分注器12と容器11及び分配先容器との相対的な位置関係を変化させる移動部13と、容器11の粒状物が分注器12のノズル31で吸引され、吸引された粒状物が分配先容器に吐出されるように分注器12と移動部13とを制御する制御部14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物を分配する分配装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を分注する分注装置について、種々の開発がなされてきている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−322904号公報
【特許文献2】特開2006−250832号公報
【特許文献3】特開2008−246363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の分注装置は、液体を分注するものであって、固体物、特に粒状物を分配することはできなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、粒状物を分配することができる分配装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による分配装置は、上方が開口しており、液体と液体よりも密度の大きい粒状物とが入れられる容器と、流体を吸引及び吐出するノズルを有し、容器の底に存在する粒状物をノズルで吸引してノズルの先端で保持し、分配先容器に吐出する分注器と、分注器と、容器及び分配先容器との相対的な位置関係を変化させる移動部と、容器の粒状物が分注器のノズルで吸引され、吸引された粒状物が分配先容器に吐出されるように分注器と移動部とを制御する制御部と、を備えたものである。
【0007】
このような構成により、粒状物を分配先容器に自動的に分配することができる。なお、分配前の粒状物は液体中に存在するため、その粒状物を分注器のノズルで吸引した際に、ノズルと粒状物との隙間が液体によって適切にシールされることになる。したがって、粒状物をノズルの先端で適切に保持することができることになる。また、例えば、ノズルの先端で粒状物を保持した後には、吸引をストップすることもできうる。
【0008】
また、本発明による分配装置では、容器の内側の断面は、容器の底の近傍において底に向かうほど幅が狭くなる略V字型であってもよい。
このような構成により、粒状物が略V字型の底の方に集まることになる。その結果、その底の位置まで分注器のノズルの先端を挿入することによって、分注器が液体のみを吸引することがなくなり、粒状物を適切に吸引することができるようになる。
【0009】
また、本発明による分配装置では、粒状物は種子であってもよい。
このような構成により、種子を分配することができるようになる。従来、種子を分配する作業は、手作業によって行われていたが、この分配装置によって、その作業を自動化することができる。また、容器において、種子を液体につけることによって、不良な種子(例えば、発芽しない種子)は浮かぶことになる。したがって、分注器が容器の底に存在する種子を吸引することによって、不良な種子を分配しないようにできる。さらに、微小な種子を空気中で分配する場合には、静電気によって、想定外の方向に飛んでしまったり、複数の種子がくっついてしまったりすることがあったが、種子を液体につけることによって、そのような静電気の影響も除去できる。
【0010】
また、本発明による分配装置では、液体は、種子の培養液であってもよい。
分注器が粒状物である種子を分配先容器に吐出する際には、容器中の少量の液体も一緒に吐出することになる。したがって、このような構成により、種子と、その種子の培養液とを一緒に分配先容器に分配することができ、分配先容器において、種子の育成に好適な環境を整えることができるようになる。
【0011】
また、本発明による分配装置では、粒状物は、ノズルで吸引された際に、ノズルとの間に隙間が生じないように表面が変形するものであってもよい。
このような構成により、粒状物をノズルの先端で適切に保持できるようになる。
【0012】
また、本発明による分配装置では、粒状物は、ノズルで吸引された際に、ノズルとの間に隙間が生じない表面がなめらかなものであってもよい。
このような構成により、粒状物をノズルの先端で適切に保持できるようになる。
【0013】
また、本発明による分配装置では、分注器は、ノズルと、ノズルに接続されたシリンジと、シリンジ内を移動するピストンと、ピストンをシリンジ内で移動させるピストン駆動部と、を備えてもよい。
このような機構によって、分注器は、粒状物を吸引したり、吐出したりすることができるようになる。
【0014】
また、本発明による分配装置では、分注器は、複数のノズルを有し、複数のノズルのそれぞれによって粒状物を吸引し、吐出する多連分注器であってもよい。
このような構成により、粒状物を効率よく分配することができるようになる。
【0015】
また、本発明による分配装置では、分配先容器は、マイクロプレートであってもよい。
【0016】
また、本発明による分配方法は、流体を吸引及び吐出するノズルを有する分注器のノズルの先端が、上方が開口しており、液体と液体よりも密度の大きい粒状物とが入れられる容器の粒状物の位置となるように分注器と容器との相対的な位置関係を変化させる工程と、分注器が、容器の底に存在する粒状物をノズルで吸引してノズルの先端で保持する工程と、ノズルの先端で保持されている粒状物が分配先容器の上方の位置となるように分注器と分配先容器との相対的な位置関係を変化させる工程と、分注器が、ノズルの先端で保持されている粒状物を分配先容器に吐出する工程と、を備えたものである。
このような構成により、前述のように、粒状物を分配先容器に自動的に分配することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による分配装置等によれば、粒状物を分配することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1による分配装置の構成を示す図
【図2】同実施の形態における容器の一例を示す図
【図3】同実施の形態における容器の断面の一例を示す図
【図4】同実施の形態における分注器の構成を示す図
【図5】同実施の形態による分配装置の動作を示すフローチャート
【図6】同実施の形態による分配装置の動作について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による分配装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0020】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による分配装置1について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による分配装置1は、液中の粒状物を分配先容器に分配するものである。
【0021】
図1は、本実施の形態による分配装置1の構成を示す模式図である。本実施の形態による分配装置1は、容器11と、分注器12と、移動部13と、制御部14と、供給スタッカ15と、回収スタッカ16とを備える。
【0022】
容器11では、分配装置1における分配の対象となる物である粒状物が保持される。また、その粒状物は、粒状物よりも密度の小さい液体中で保持されることになる。すなわち、容器11は、液体と、液体よりも密度の大きい粒状物とが入れられるものである。その容器11の上方(鉛直方向の上方)は開口している。その開口を介して、分注器12のノズル31が出し入れ可能になっている。粒状物は、例えば、ノズル31で吸引された際に、ノズル31との間に隙間が生じないように表面が変形するものであってもよい。具体的には、種子や細胞等であってもよい。種子は通常、表面に繊毛が存在する。したがって、種子が液体中に存在する場合には、その繊毛によって、まるで種子の表面が変形するかのようになる。その種子は、例えば、シロイヌナズナ等であってもよい。また、粒状物は、例えば、ノズル31で吸引された際に、ノズル31との間に隙間が生じない表面がなめらかなものであってもよい。具体的には、ベアリング等の微小な部品であってもよい。通常、分配対象である粒状物は、例えば、種子や細胞、ベアリング等のように微小なものである。なお、液体はどのようなものであってもよいが、粒状物が種子である場合には、種子の培養液であってもよい。種子の培養液とは、種子の成長に必要な栄養分等を含んだ液体のことである。また、粒状物が細胞である場合には、その液体は細胞の培養液や保存液であってもよい。また、粒状物が部品である場合には、その液体は部品の洗浄液等であってもよい。また、液体は水であってもよい。なお、その液体は、粒状物に対して悪影響を与えないものであることが好適である。また、ノズル31で粒状物を吸引した際に、ノズル31の先端と粒状物との隙間を、その液体によってシールすることができるようになる。
【0023】
その容器11の内側の断面は、容器11の底の近傍において底に向かうほど幅が狭くなる略V字型であってもよい。このような形状を有することによって、粒状物が底の方に集まることになる。前述のように、粒状物は液体よりも密度が大きいためである。なお、分注器12が1個のノズル31を有するものである場合には、容器11の内側の形状は、底の近傍において円錐や角錐等の形状であってもよい。一方、分注器12が複数のノズル31を有する多連のものである場合には、容器11の内側の形状は、図2で示されるように、長さ方向に直交する断面が、略V字型であってもよい。その場合には、その容器11に多連のノズル31が挿入される際に、ノズル31の並び方向が、図2の長さ方向になる。また、その容器11の内側の断面は、容器11の底の近傍において、開口から底に向かうほど幅が狭くなる略V字型であれば、図1や図2のものに限定されず、例えば、図3で示されるものであってもよい。前述のように、粒状物は容器11中の液体よりも密度が大きいため、容器11がこのような断面であることによって、粒状物は、容器の底(略V字型の頂点の付近)の方に集まることになる。したがって、ノズル31を容器11の底まで入れることによって、分注器12は、適切に粒状物を吸引することができるようになる。
【0024】
また、粒状物が種子である場合には、通常、不良な種子は沈まないで浮くことになる。したがって、分注器12によって、容器11の底から種子を吸引することによって、不良な種子を分配しないようにすることができる。ここで、不良な種子とは、例えば、発芽しない種子のことである。
【0025】
分注器12は、流体を吸引及び吐出するノズル31を有する。そして、分注器12は、容器11の底に存在する粒状物をノズル31で吸引してノズル31の先端で保持し、分配先容器2に吐出する。この分注器12は、液体を分注する公知の分注器と同様のものである。前述のように、分注器12は、1個のノズル31のみを有するものであってもよく、複数のノズル31を有する多連のものであってもよい。なお、分配先容器2は、粒状物の分配先となりうる容器であれば、その種類を問わない。ただし、通常、粒状物を上方から分配先容器2に吐出するため、分配先容器2は、上方が開口しうるものが好適である。例えば、分配先容器2は、マイクロプレートであってもよく、試験管であってもよく、マイクロチューブであってもよく、遠沈管であってもよく、その他のシャーレ等の容器であってもよい。分配先容器2がマイクロプレートである場合に、そのマイクロプレートのウェルの数は問わない。例えば、24ウェルであってもよく、96ウェルであってもよく、384ウェルであってもよい。また、分配先容器2が試験管である場合には、例えば、ラックに立てられた複数の試験管であってもよい。本実施の形態では、分配先容器2が96ウェルのマイクロプレートである場合について主に説明する。分注器12が粒状物を分注先容器2に吐出する際に、その吐出する位置が決まっていてもよく、あるいは、決まっていなくてもよい。例えば、分注先容器2がシャーレである場合に、粒状物の吐出する位置は、シャーレの中央に決まっていてもよく、あるいは、シャーレ内である以外は決まっていなくてもよい。また、例えば、分注先容器2がマイクロプレートや試験管である場合に、粒状物を吐出する位置は、マイクロプレートにおける所望のウェルの位置や、試験管ラックにおける所望の試験管の位置に決まっていてもよい。さらに、そのウェルや試験管における位置(例えば、中心など)も決まっていてもよい。また、そのウェルの位置や試験管の位置は、分配ごとに少しずつずれていってもよい。そのようにすることで、マイクロプレートのすべてのウェルや、試験管ラックのすべての試験管に粒状物を分配することができるようになる。
【0026】
図4は、分注器12の構成の一例を示す模式図である。図4において、分注器12は、ノズル31と、パイプ32と、シリンジ33と、ピストン34と、ピストン駆動部35とを備える。
【0027】
ノズル31は、円筒状の部材であり、通常、その開口は円形である。その円形の開口は、例えば、ノズル31の長さ方向に直角な面内に存在してもよい。ノズル31は、例えば、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。そのノズル31の開口の内径は、分配対象の粒状物の最も小さい径よりも小さいことが好適である。粒状物をノズル31の内部に吸い込まないようにするためである。また、そのノズル31の開口の内径は、ノズル31で粒状物を吸引して保持し、分配先容器にまで移動させる際に、粒状物が落下しない程度に大きいことが好適である。したがって、ノズル31の開口の内径は、例えば、粒状物の最も小さい径に、0.7〜0.9を掛けた程度のものであってもよい。
【0028】
シリンジ33は、ノズル31に接続される。後述するピストン34によってシリンジ33内の容積が変化することによって、分注器12は、吸引や吐出を行うことができる。シリンジ33とノズル31とは、直接接続されてもよく、図4で示されるように、パイプ32を介して接続されてもよい。パイプ32は、分注器12が吸引を行う際に、パイプ32の内径が小さくならない程度の強度を有することが好適である。適切な吸引を実現するためである。パイプ32は、例えば、テフロン(登録商標)製であってもよく、その他の材質から構成されるものであってもよい。パイプ32がテフロン(登録商標)製である場合には、パイプ32に対して減菌のための処理をする場合にもパイプ32が変質することがなく、好適である。
【0029】
ピストン(プランジャ)34は、シリンジ33内を移動する。図4において、ピストン34が図中、下方向に移動することによって、ノズル31からの吐出が行われ、図中、上方向に移動することによって、ノズル31による吸引が行われることになる。
【0030】
ピストン駆動部35は、ピストン34をシリンジ33内で移動させる。ピストン駆動部35は、例えば、前述の特許文献2,3で示されるように、パルスモータによってピストン34を駆動してもよく、ソレノイドによってピストン34を駆動してもよく、あるいは、その他の方法によってピストン34を駆動してもよい。
【0031】
なお、図4で示されるように、ノズル31、パイプ32、シリンジ33の内部には、容器11に入っている液体と同じ液体が満ちている。したがって、シリンジ33内に気体が入っている場合よりも的確に吸引を行うことができるようになる。また、分注器12の各構成については、すでに公知であり、詳細な説明を省略する。
【0032】
また、分注器12は、前述のように、複数のノズル31を有し、複数のノズル31のそれぞれによって粒状物を吸引し、吐出する多連分注器であってもよい。分注器12が多連の場合でも、ノズル31ごとにシリンジ33とピストン34とが存在することが好適である。そのようにすることで、いずれかのノズル31によって粒状物を適切に保持できなかった場合でも、他のノズル31には影響が出ないようにすることができるからである。なお、分注器12が多連の場合に、ピストン駆動部35は、ノズル31ごとに存在してもよく、あるいは、単一のピストン駆動部35によって複数のピストン34を駆動してもよい。後者の場合には、分注器12の構成部品を少なくすることができ、分注器12を小型化でき、コストを低減できるメリットがある。また、分注器12が多連の場合には、その複数のノズル31の先端は、すべて同じ高さにそろっていることが好適である。各ノズル31によって、容器11の底の粒状物を的確に吸引することができるようになるためである。本実施の形態では、分注器12が8連の多連分注器である場合について主に説明する。なお、図4は、分注器12の構成の一例であって、それ以外の構成であってもよいことは言うまでもない。
【0033】
移動部13は、分注器12と、容器11及び分配先容器2との相対的な位置関係を変化させる。分注器12と容器11との相対的な位置関係を変化させる際に、移動部13は、分注器12を移動させてもよく、容器11を移動させてもよく、あるいは、両方であってもよい。同様に、分注器12と分配先容器2との相対的な位置関係を変化させる際に、移動部13は、分注器12を移動させてもよく、分配先容器2を移動させてもよく、あるいは、両方であってもよい。本実施の形態では、移動部13は、XYZ移動手段21と、搬送ステージ22とである場合について説明する。
【0034】
XYZ移動手段21は、分注器12をXYZの3軸方向に移動させる移動手段である。X軸方向は、図1の図中、左右の方向である。Y軸方向は、図1の紙面に垂直な方向である。Z軸方向は、図1の図中、上下の方向である。なお、図1、図6の図面中のY軸方向は、便宜的に斜めに表示したものであって、実際には、X軸、Z軸の両方に垂直な方向(すなわち、紙面に垂直な方向)である。このXYZ移動手段21は、すでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0035】
搬送ステージ22は、分配先容器2をX軸方向に搬送するものであり、例えば、ベルトコンベアであってもよく、レールに摺動可能に設けられた、分配先容器2の載置台と、その載置台を移動させる移動手段とを備えたものであってもよく、あるいは、その他の構成であってもよい。この搬送ステージ22は、すでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0036】
制御部14は、分注器12と、移動部13と、供給スタッカ15と、回収スタッカ16とを制御するものである。制御部14は、容器11の粒状物が分注器12のノズル31で吸引され、吸引された粒状物が分配先容器2に吐出されるように分注器12と移動部13とを制御する。具体的な制御については、図5のフローチャートを用いて後述する。
【0037】
供給スタッカ15は、粒状物が分配されていない分配先容器2を収容しているスタッカであり、その分配先容器2を搬送ステージ22に供給する。なお、種子を分配する場合には、その分配先容器2に、例えば、寒天培地や培養土などがあらかじめ入っていてもよい。
回収スタッカ16は、粒状物が分配された分配先容器2を収容しているスタッカであり、その分配先容器2を搬送ステージ22から回収する。
なお、マイクロプレート等の分配先容器2を供給するスタッカや、回収するスタッカは、すでに公知であり(例えば、前述の特許文献1を参照されたい)、その詳細な説明を省略する。
【0038】
次に、本実施の形態による分配装置1の動作について、図5のフローチャートを用いて説明する。図5のフローチャートの各ステップの処理は、特に明記はしないが、制御部14による制御によって実行される。
【0039】
(ステップS101)供給スタッカ15は、搬送ステージ22にブランクの分配先容器2を供給する。
【0040】
(ステップS102)搬送ステージ22は、供給スタッカ15から供給されたブランクの分配先容器2を分注器12が粒状物の分配を行う位置に搬送する。
【0041】
(ステップS103)XYZ移動手段21は、分注器12を容器11の位置に移動させる。また、XYZ移動手段21は、分注器12のノズル31の先端が、容器11の底の位置になるように分注器12を移動させる。
【0042】
(ステップS104)分注器12は、ノズル31で粒状物を吸引し、ノズル31の先端で粒状物を保持する。その吸引の際には、ピストン駆動部35がピストン34を駆動することによって、シリンジ33内の液体の量を増やすようにすればよい。
【0043】
(ステップS105)XYZ移動手段21は、分注器12を移動させ、ノズル31の先端が分配先容器2の上方の決められた位置になるようにする。分配先容器2がマイクロプレートである場合には、XYZ移動手段21は、まだ粒状物が入っていないウェル上にノズル31の先端が位置するようにする。
【0044】
(ステップS106)分注器12は、粒状物を分配先容器2に吐出する。
【0045】
(ステップS107)制御部14は、分配先容器2への粒状物の分配がすべて終了したかどうか判断する。そして、終了した場合には、ステップS108に進み、そうでない場合には、ステップS103に戻って、再度、粒状物の分配を行う。例えば、96ウェルのマイクロプレートに8連の多連分注器2によって粒状物を分配する場合には、ステップS103〜S106の処理が12回繰り返されることになる。
【0046】
(ステップS108)搬送ステージ22は、粒状物の分配された分配先容器2を回収スタッカ16の位置まで搬送する。
【0047】
(ステップS109)回収スタッカ16は、粒状物の分配された分配先容器2をスタッカ内に回収する。
【0048】
(ステップS110)制御部14は、あらかじめ決められた数の分配先容器2に対する粒状物の分配を行ったかどうか判断する。そして、粒状物を分配しなければならない次の分配先容器2が存在する場合には、ステップS101に戻り、そうでない場合には、粒状物を分配先容器2に分配する一連の処理は終了となる。
【0049】
なお、図5のフローチャートのステップS105において、分注器12を移動させると共に、分配先容器2も移動させてもよい。また、ステップS105において、ノズル31の先端の位置は、ステップS103〜S107が繰り返されるごとにずれていってもよい。例えば、分配先容器2がマイクロプレートである場合に、ステップS103〜S107が繰り返されるごとに、1列ずつずれていってもよい。なお、このような分配(分注)に関する詳細な制御については、すでに従来の自動分注装置において公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0050】
次に、本実施の形態による分配装置1の具体的な動作について、図6を参照しながら説明する。この具体例では、8連の多連分注器2によって96ウェルのマイクロプレートに種子を分配する場合について説明する。また、容器11では、種子が培養液の中に入れられているものとする。
【0051】
(1)まず、供給スタッカ15は、マイクロプレート2を搬送ステージ22に供給する(ステップS101)。なお、そのマイクロプレート2の各ウェルには、あらかじめ寒天培地が入れられているものとする。
【0052】
(2)次に、搬送ステージ22は、そのマイクロプレート2を多連分注器2が種子を分配する位置に搬送する(ステップS102)。
【0053】
(3)その後、XYZ移動手段21は、分注器12をZ軸の鉛直上方に移動させ、X軸方向(図6の図中、右の向き)に移動させることによって、ノズル31が、容器11の最も深い底の上方に位置するようにする。そして、XYZ移動手段21は、ノズル31の先端が容器11の底付近になるように、分注器12をZ軸の鉛直下方に移動させる(ステップS103)。その結果、ノズル31の先端は、種子の中に潜ることになる。なお、この際に、ノズル31の先端が容器11の底に付かないことが好適である。
【0054】
(4)分注器12のピストン駆動部35は、ピストン34をシリンジ33の内部で移動させることによって、ノズル31による吸引を行う。その結果、ノズル31の先端付近の種子が吸引され、ノズル31の開口をふさぐようになる。その後、ピストン駆動部35は、ピストン34の移動を停止し、そのピストン34の位置を保持する(ステップS104)。
【0055】
(5)XYZ移動手段21は、分注器12をZ軸の鉛直上方に移動させ、X軸方向(図6の図中、左の向き)に移動させ、さらにZ軸の鉛直下方に移動させることによって、ノズル31が、マイクロプレート2の1列目のウェルの上方に位置するようにする(ステップS105)。
【0056】
(6)分注器12のピストン駆動部35は、ピストン34をシリンジ33の内部で移動させることによって、ノズル31の先端で保持されている種子をマイクロプレート2の各ウェルに吐出する(ステップS106)。その際に、少量の液体(種子の培養液)も一緒にウェルに入ることになる。
【0057】
なお、その後、2列目から12列目までのすべてのウェルに対して種子を分配する処理、すなわち、図6の(3)〜(6)の処理が繰り返して実行される(ステップS103〜S107)。
【0058】
(7)マイクロプレート2のすべてのウェルへの種子の分配が終了すると、搬送ステージ22は、種子の入ったマイクロプレート2を回収スタッカ16の位置まで搬送する(ステップS108)。
【0059】
(8)回収スタッカ16は、マイクロプレート2を回収する。このようにして、1個のマイクロプレート2に対する種子の分配が終了する。
【0060】
その後、所望の数のマイクロプレート2への種子の分配が終了するまで、図6の(1)〜(8)の処理が繰り返して実行されることになる(ステップS101〜S110)。
【0061】
なお、シロイヌナズナの野生型の種子(直径は0.4〜0.5mm程度である)を96ウェルのマイクロプレート(MP)に分配する実験をしたところ、次のような結果になった。
【0062】
[実験結果]
MPの枚数 種子数 分配成功数 成功率(%) 処理時間(分)
実験1 200枚 19200 19171 99.85 400
実験2 70枚 6720 6675 99.33 140
【0063】
通常、手作業で種子の分配を行った場合には、90%の成功率で十分であるが、本実施の形態による分配装置1によって自動分配を行うことによって、さらに高い成功率で分配を行うことができた。また、手作業で種子の分配を行う場合には、熟練した作業者であっても、1個の種子を分配するのに5秒程度かかるため、96ウェルのマイクロプレートに対する分配に、8分程度かかることになる。一方、本実施の形態による分配装置1を用いることによって、96ウェルのマイクロプレートに2分で種子を分配することができ、種子の分配の高速化を実現することができると共に、成功率を著しく向上することができる。
【0064】
以上のように、本実施の形態による分配装置1によれば、粒状物を分配先容器に自動的に分配することができる。また、乾燥したものを吸引する場合には、ノズル31の先端と、分配対象物との隙間から空気が漏れることによって、ノズル31の先端から分配対象物が落下する可能性があるため、分配対象物をノズル31の先端で保持している際には、絶えず吸引するようにしなければならない(すなわち、ピストン34に対して絶えず、シリンジ33内の容量を増やす方向に力を掛けておかなくてはならない)。一方、本実施の形態による分配装置1のように、液体中の粒状物を吸引する場合には、ノズル31の先端と、粒状物との隙間が液体によってシールされるため、粒状物をノズル31の先端で保持している際には、吸引を継続しなくてもよい(すなわち、ピストン34の位置を固定しておくだけでよく、ピストン34に対して力を掛けておかなくてもよい)。その結果、柔らかい粒状物(例えば、細胞等)をノズル31の先端で保持している場合に、その粒状物を壊さないようにすることができる。また、ノズル31の先端と、粒状物との隙間が液体によってシールされるため、種子や細胞のように不定型なものでも、落下させることなく適切に分配できる。
【0065】
なお、本実施の形態では、容器11の内側の断面が底付近で略V字型である場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、容器11に多量の粒状物が入っている場合には、ノズル31の先端で容易に粒状物を吸引できるため、容器11の構造がそのようになっていなくてもよい。
【0066】
また、本実施の形態では、ノズル31の先端で粒状物を保持した後に、吸引をストップする場合について説明したが、そうでなくてもよい。ノズル31の先端で粒状物を保持している間中、吸引を行うようにしてもよい。
【0067】
また、種子や細胞等の粒状物を分配する際には、分配装置1の全体に対して減菌処理を行った後に、分配の処理を行うようにしてもよい。そのようにすることで、種子等を無菌的(減菌的)に育成することができうる。
【0068】
また、本実施の形態では、分配装置1が供給スタッカ15や回収スタッカ16を有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。分配装置1は、それらのスタッカを備えていなくてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0071】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値や各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していない場合であっても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0072】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素(例えば、制御部14)については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。
【0073】
また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。
【0074】
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0075】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上より、本発明による分配装置等によれば、粒状物を自動的に分配できるという効果が得られ、例えば、種子をマイクロプレートに分配する装置等として有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 分配装置
2 分配先容器
11 容器
12 分注器
13 移動部
14 制御部
15 供給スタッカ
16 回収スタッカ
21 XYZ移動手段
22 搬送ステージ
31 ノズル
32 パイプ
33 シリンジ
34 ピストン
35 ピストン駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口しており、液体と当該液体よりも密度の大きい粒状物とが入れられる容器と、
流体を吸引及び吐出するノズルを有し、前記容器の底に存在する粒状物を前記ノズルで吸引して当該ノズルの先端で保持し、分配先容器に吐出する分注器と、
前記分注器と、前記容器及び前記分配先容器との相対的な位置関係を変化させる移動部と、
前記容器の粒状物が前記分注器のノズルで吸引され、当該吸引された粒状物が前記分配先容器に吐出されるように前記分注器と前記移動部とを制御する制御部と、を備えた分配装置。
【請求項2】
前記容器の内側の断面は、当該容器の底の近傍において底に向かうほど幅が狭くなる略V字型である、請求項1記載の分配装置。
【請求項3】
前記粒状物は種子である、請求項1または請求項2記載の分配装置。
【請求項4】
前記液体は、種子の培養液である、請求項3記載の分配装置。
【請求項5】
前記粒状物は、前記ノズルで吸引された際に、当該ノズルとの間に隙間が生じないように表面が変形するものである、請求項1または請求項2記載の分配装置。
【請求項6】
前記粒状物は、前記ノズルで吸引された際に、当該ノズルとの間に隙間が生じない表面がなめらかなものである、請求項1または請求項2記載の分配装置。
【請求項7】
前記分注器は、
ノズルと、
当該ノズルに接続されたシリンジと、
前記シリンジ内を移動するピストンと、
前記ピストンを前記シリンジ内で移動させるピストン駆動部と、を備える、請求項1から請求項6のいずれか記載の分配装置。
【請求項8】
前記分注器は、複数のノズルを有し、当該複数のノズルのそれぞれによって粒状物を吸引し、吐出する多連分注器である、請求項1から請求項7のいずれか記載の分配装置。
【請求項9】
前記分配先容器は、マイクロプレートである、請求項1から請求項8のいずれか記載の分配装置。
【請求項10】
流体を吸引及び吐出するノズルを有する分注器のノズルの先端が、上方が開口しており、液体と当該液体よりも密度の大きい粒状物とが入れられる容器の粒状物の位置となるように前記分注器と前記容器との相対的な位置関係を変化させる工程と、
前記分注器が、前記容器の底に存在する粒状物を前記ノズルで吸引して当該ノズルの先端で保持する工程と、
前記ノズルの先端で保持されている粒状物が分配先容器の上方の位置となるように前記分注器と前記分配先容器との相対的な位置関係を変化させる工程と、
前記分注器が、前記ノズルの先端で保持されている粒状物を前記分配先容器に吐出する工程と、を備えた分配方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224454(P2011−224454A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95985(P2010−95985)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(591272044)中立電機株式会社 (5)
【出願人】(390021669)椿本興業株式会社 (20)
【出願人】(000113573)マイクロニクス株式会社 (13)
【Fターム(参考)】