説明

分離ケーシング設置方法及び設置装置

【課題】岩盤内の不連続面位置等の特定された区間を除いて分離したケーシングパイプが固定される方法及び装置を提供する。
【解決手段】分離ケーシング設置装置1は、2本のケーシング5,5と、夫々のケーシング5を内側より一時的に押圧固定するメカニカルパッカ6と、離隔したケーシング5,5間に配設する連結部材7を有し、メカニカルパッカ6により同一中心軸を有して一体をなした状態で組立て、孔井3内に挿入して不連続面4の位置とケーシング5の離隔位置が対応するように高さ調整し、連結部材7の内側に水圧を負荷して拡張変形させ孔井壁面3aに密着させながらケーシング5と孔壁3aとの間に固結材9を充填して、岩盤不連続面4の孔井壁面開口部を固定材で塞がない分割ケーシング構造を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、土木工学分野において、断層やジョイントなど不連続面を岩盤孔井内において精密に計測する場合、又地震工学分野において、岩盤内断層の三次元挙動を精密監視する場合に、孔井内の特定区間位置で分離したケーシングを打設するための分離ケーシング設置方法及び分離ケーシング設置装置に関し、さらに資源開発分野において、石油などの地下資源採取におけるケーシングで中間部に採取口を設けるための分離ケーシング設置方法及び分離ケーシング設置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工学分野あるいは地震工学分野においては、岩盤内の開削に伴う応力状態やひずみエネルギの変化を検出するため、あるいは岩盤内に賦存する亀裂、ジョイントなどの不連続面の挙動を的確に計測するため、岩盤に孔井を穿ち、この孔井内に計測機器を挿入してさまざまな計測が行なわれている。
【0003】
従来岩盤に穿った孔井内に計測装置を設置して、不連続面を挟む両側岩盤の相対的変位を三次元的に検出する技術としては、例えば下記に示すようなものがあった。
【特許文献1】特開平05−308277号公報
【0004】
このような計測装置を孔井内に設置する際、断層など不連続面周辺の擾乱した岩質が広範囲に存在すると機器の設置に不具合が生ずる恐れがあるため、孔井壁面を改善する必要があった。又、不連続面は力学的な変化によって既に岩盤内に造成されたものであるため、岩盤の健全な部分と比較して102〜103小さい剛性で変形し易く、その三次元挙動等を精密監視するため、あるいは高感度な計測を実施するためにも擾乱岩質の孔井壁面はその状態を改善することが望ましかった。
【0005】
このため、岩盤孔井内の断層など不連続面周辺の擾乱した岩質を改善することを目的として、先にセメントやモルタルなどの固結材を岩盤孔井内に充填固定した後に、再度孔井を穿つ方法が実用に供されていた
【0006】
又、資源開発分野の石油削井技術等では、岩盤孔井内に打設したケーシングの中間部に新たな採取口を設けることがあるが、このような場合、当該特定区間を切断してケーシングを分離していた。実用に供されている従来の分離方法は、連続して固定されたケーシング内に回転と同時に拡径となるドリルビットを挿入し、所定の分離位置におけるケーシング及びセメントなどの固結材を切削する方法であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、岩盤孔井内をセメントなどの固結材で充填した後に再度削井する方法では、岩盤内不連続面の計測目的に合う不連続面位置での分離した岩盤壁面を実現できないほか、孔井壁面の仕上げが削井に依存することになり、かなり荒い切削面となるため、精密かつ高感度な計測を実現するには適していなかった。
【0008】
従来、このような擾乱岩質の不連続面の孔壁を改善する目的で、計測用の孔井内にケーシングを設置する技術開発はなされていない。即ち、一本の連続したケーシングを固定した場合には、不連続面を挟む両側岩盤の相対的変位を検出することが不可能になるからであり、この不連続面に相当する特定区間位置で分離したケーシングを打設する方法も適用されていなかった。
【0009】
一方、資源開発分野の石油削井技術等で行われている固定されたケーシングを後から切削する方法の場合、岩盤孔井内にケーシングを打設する従来法の他に特殊な拡径ドリルビットの工具、更なる切削工程など膨大なコストと時間を要する問題点があった。
【0010】
又、当該技術を計測用孔井壁面に適用した場合、従来のケーシングを固定する方法ではケーシング内側に固定材を投入して外側に押し出す手法が取られており、これに加えて切削工具にて内面を切削するため、ケーシング内壁面へのダメージを回避できない問題点があった。あるいは、岩盤孔井内の不連続面位置をケーシング内側から確認できない、などの不都合があった。
【0011】
この発明は、従来の岩盤孔井内に分離したケーシングを打設する方法及び装置が有する上記の問題点を解消すべくなされたものであり、岩盤内の不連続面の相対変位計測を孔井内で高精度に実現するため不連続面位置を除いて分離したケーシングパイプが固定される方法及び装置を提供することを目的としている。
【0012】
又固定されたケーシングを後から切削して分離ケーシングを打設する従来の方法に比べ、特殊な切削機械が不要で、設置するための工数も少なく、コスト面においても、又設置時間の面においても従来に比べ有利で、かつケーシング内壁面のダメージがなく、岩盤孔井内の特定区間位置をケーシング内側から確認可能な分離ケーシング設置方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、この発明の分離ケーシング設置方法は、岩盤に穿った孔井内で特定区間の長さ及び位置を設定し、外面にセントライザを備える複数のケーシングを前記特定区間の長さに対応して離隔配置し、これらのケーシング内に外径の拡大縮小が可能な内側固定装置を挿入して夫々のケーシングを内側より押圧固定し、複数のケーシングを装着する内側固定装置を前記孔井内に挿入して前記特定区間位置とケーシングの離隔位置が対応するように高さ調整し、前記特定区間を除いた孔井壁面とケーシングの間に固結材を充填して固定した後、内側固定装置の外径を縮小して取り出し、孔井内の特定区間位置で分離したケーシングを打設することを特徴とするものである。
【0014】
孔井内の特定区間には、事前に挿入したボアホールテレビカメラ等によって孔井壁面を観察した結果、特定された岩盤不連続面の位置や、ボーリングコア等によって特定された新たな採取口となるべき岩盤層の位置などが適用される。
【0015】
セントライザは、ケーシング外面に取り付ける弾性変形可能な材質からなり、挿入されるケーシングが孔井内のほぼ中心に配置されるように位置決めを行う部材で、孔壁とケーシングとの間に固結材充填用の空隙を確保する。例えば、張り出しバネ状の円弧状板材を点対称配置で各ケーシング毎に一組以上設ける。
【0016】
離隔配置されたケーシング間には、少なくとも一方の変位が他方に影響し得るような剛性の高い連結部材は設けないが、フレキシブルな連結部材は設置可能である。
【0017】
内側固定装置は、各ケーシングに該当する箇所に変形部を夫々設け、この複数の変形部を同時に変形させてケーシング内面を夫々押圧し、分離したケーシング間の距離を固定する。内側固定装置としては、例えばリング状パッキングゴム材料とセンターホールジャッキを備えたメカニカルパッカ装置等が適用できる。このメカニカルパッカ装置を作動させることによって分離した2本のケーシングが同一中心軸を有して一体をなし、孔井内に挿入される。
【0018】
孔井内の特定区間とケーシングの離隔部分を一致させた後、その高さを維持しながら、孔井壁面とケーシング外周との間に、例えばフレキシブルチューブ等を介してセメントやモルタルの固結材を圧送する。この時、ケーシングの離隔部分には固結材が侵入しないようにする。又、ケーシングの先端部分及び後端部分からも固結材がケーシング内に侵入しないように適宜閉鎖する。
【0019】
ケーシング離隔部分への固結材侵入防止方法としては、下半部の固結材を充填した後、離隔部上方に設ける変形可能な隙間閉塞材を機能させて下半部への流下を阻止した後、上半部の固結材を充填する分離打設方法と、離隔部分に伸縮自在な連結材を設け、ケーシングと孔井壁面との間全体に固結材を充填した後、連結材を拡張して当該部分の固結材を排除する一体打設方法とがある。
【0020】
分離打設方法における隙間閉塞材は、下半部への充填時には、例えばフレキシブルチューブ等からなる固結材圧送手段を挿通させ、上半部充填時にはこの圧送手段を取り除いた後、隙間を完全に閉塞できるものが望ましい。なお、下半部へ充填する固結材は、孔井を削孔した後、ケーシング建て込み前に投入する場合もある。
【0021】
固結材が硬化した後、内側固定装置の変形部を縮小させてケーシング内面から離し、取り出す。この一連のケーシング工程によって、岩盤孔井内の特定区間に固定材が入り込まない中空を形成し、両側岩盤に分離固定されたケーシングの設置が実現する。
【0022】
請求項2記載の分離ケーシング設置装置は、外面にセントライザを備え所定長さ離隔して配置する複数のケーシングと、これらのケーシング内に挿入して夫々のケーシングを内側より押圧固定するため外径の拡大縮小が可能な内側固定装置と、夫々のケーシング外周に装着して孔井壁面とケーシングの間に充填する固結材がケーシング内へ流入することを防止するための固結材流入防止手段を備えることを特徴とするものである。
【0023】
固結材流入防止手段としては、ケーシング先後端の内方を閉鎖する板材やシール材等の他、孔井壁面とケーシング間を随時閉鎖する変形可能な隙間閉塞材がある。隙間閉塞材には、ケーシング離隔部分を連結するものと、ケーシング外周に突設する環状部材がある。
【0024】
環状部材としては、時間経過により膨潤して隙間を閉鎖するため外周に貼着する膨潤性樹脂や、孔井内挿入時には、窄まった状態を維持しながら、その上面に固結材を載荷すると拡開してこれを受ける篭形部材等が適用可能である。
【0025】
請求項3記載の分離ケーシング設置装置は、固結材流入防止手段として、離隔したケーシング間に水圧に耐え得る伸縮自在な連結部材を配設し、この連結部材の内側に水圧を負荷して岩盤孔井壁面に密着させため前記内側固定装置に圧力供給手段を備えることを特徴とするものである。
【0026】
連結部材としては、例えば、円筒状ゴム材の両端にケーシングと密着するリング材を固着し、2本のケーシングを接続する。縮小状態で孔井内に挿入し、必要時に水圧を負荷させて拡張する。拡張された連結部材は孔井壁面に密着するので、当該部分に存在する硬化前の固結材を排除することができ、又上半部の固結材を受けることもできる。
【発明の効果】
【0027】
この発明の分離ケーシング設置方法は、離隔配置されたケーシング内に内側固定装置を挿入して固定し、ケーシングが離隔する特定区間を除いた孔井壁面とケーシングの間に固結材を充填して固定した後、内側固定装置を取り出すので、孔井内の特定区間位置で分離したケーシングを打設することができる。
【0028】
このため、擾乱岩質の孔井壁面の状態を飛躍的に改善することができ、孔井内における計測機器等の設置が容易になると同時に、断層など不連続面を挟む両側の岩盤の相対変位等を精密監視することができる。
【0029】
又固定されたケーシングを後から切削して分離ケーシングを打設する従来の方法に比べ、特殊な切削機械が不要で、設置するための工数も少なく、コスト面においても、又設置時間の面においても従来に比べ有利で、かつケーシング内壁面のダメージがなく、岩盤孔井内の特定区間位置をケーシング内側から確認することも可能である。
【0030】
請求項2記載の分離ケーシング設置装置は、離隔配置されたケーシング内に挿入して固定する内側固定装置と、固結材流入防止手段を備えるので、岩盤孔井内の特定区間に固定材が入り込まない中空を形成し、両側岩盤に分離固定されたケーシングの設置を実現することができる。
【0031】
固結材流入防止手段は、ケーシング離隔部分を連結したり、孔井壁面とケーシング間を随時閉鎖したり、適宜選択できるので、孔井の状況や孔井の利用形態に応じて、固結材の分離打設や一体打設を任意に選ぶことができる。
【0032】
請求項3記載の分離ケーシング設置装置は、ケーシング離隔部分に伸縮自在な連結部材を配設し、圧力供給手段により連結部材を岩盤孔井壁面に密着することができるため、当該部分に存在する硬化前の固結材を排除することができる。又上半部の固結材を受けることもでき、分離打設及び一体打設の双方に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次にこの発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は岩盤内の亀裂やジョイントなど不連続面において三次元変形等を精密計測するため、岩盤に穿った孔井内に分離ケーシングを設置固定する一例を示すもので、分離ケーシング設置装置1は、岩盤2内に孔井3を削孔し、亀裂などの不連続面4を挟む両岩盤の位置に挿入する。
【0034】
分離ケーシング設置装置1は、2本の鋼製円柱状パイプからなるケーシング5,5と、夫々のケーシング5を内側より一時的に押圧固定するメカニカルパッカ6と、離隔したケーシング5,5間に配設する連結部材7を有する。
【0035】
各ケーシング5は、張り出しバネ状の円弧状板材からなるセントライザ8をケーシング外面に点対称配置で固着し、ケーシング5が孔井3内のほぼ中心に配置されるように位置決めを行い、孔壁3aとケーシング5との間にセメントやモルタル等からなる固結材9を充填するための空隙を確保する。
【0036】
2本のケーシング5,5は不連続面4の厚さに対応する間隔をもって離隔配置し、対向する端部同士を伸縮自在な連結部材7で接続する。連結部材7は水圧に耐え得る拡張変形可能な円筒状ゴム材からなり、その両端には図示しないネジ付のリング材を固着し、ケーシング5に水密に螺着する。
【0037】
この連結部材7はメカニカルパッカ6に設ける圧力供給手段10を介して、連結部材7の内側に水圧を負荷し、拡張変形させることにより岩盤孔井壁面に密着させて、孔井壁面3aとケーシング5の間に充填する固結材9が不連続面4を覆わないよう排除すると同時に、ケーシング5内へ固結材9が流入することを防止するための固結材流入防止手段としての役目も果たす。
【0038】
他の固結材流入防止手段としては、ケーシング下端に設ける底板11やケーシング上端でメカニカルパッカ6とケーシング5の隙間を塞ぐシール材12がある。
【0039】
メカニカルパッカ6は、各ケーシング5に該当する箇所にリング状パッキングゴム材料からなる変形部13を夫々設け、圧力供給手段10を介してセンターホールジャッキ14を作動し、複数の変形部13を同時に圧縮変形させてケーシング5の内面を夫々押圧し、分離したケーシング5,5間の距離を固定する。
【0040】
次にメカニカルパッカの構成を図2に基づき説明する。図2はメカニカルパッカの構成の詳細を示す断面図である。メカニカルパッカ6は、先端金具15に着脱自在に嵌着する円筒状芯金16を有し、この芯金16の前部と後部には、夫々二つのシール用ゴムからなる変形部13が、円輪状でかつ断面形状が外周方向に広がる台形状の三つの鋼製エンドピース17および水孔18を有する一つの長軸な鋼製リング19を介して繋がるように嵌められている。芯金16の後半には鋼製リング19に連絡する水導孔20を穿設している。なお、先端金具15にはセントライザの役を果たす車輪21が点対称配置で回転自在に設けられている。
【0041】
円筒状芯金16の後端部には、センターホールジャッキ14の一部を構成する鋼製ロッド22が取付けられる。この鋼製ロッド22にはリング状のシリンダー23が嵌合し、この鋼製ロッド22とシリンダー23がピストン部を構成する。
【0042】
鋼製ロッド22には上記円筒状芯金16に穿設した水導孔20と連通する水導孔24のほか、ピストン部に至る油導孔25を穿設する。この油導孔25を経てピストン部に油圧が加わることにより、シリンダー23がスプリング26に抗して前進し、シリンダー23の前端面で一番後ろの鋼製エンドピース17の後端面を押圧し、これにより変形部13のいずれもが挟圧力を受け円周方向に張り出すパッカ機能を実現する。油圧が解除されるとスプリング26の復元力で元の状態に戻されることになる。
【0043】
センターホールジャッキ14の後端部には配管・配線ポート27が着脱自在に取付く。この配管・配線ポート27は、地上の圧力水発生源からの水圧ライン28を前記した水導孔20,24に繋ぎ、又油圧ライン29を油導孔25に繋げるようになすとともに、これらの圧力を検出する圧力センサー30を設け、地上の計器類と連結する図示しない信号ケーブルを圧力センサー30に電気的に接続している。
【0044】
次に分離ケーシングの設置方法を図3及び図4に基づき説明する。図3は岩盤に穿った孔井内で不連続面などの特定区間の長さ及び位置を設定するため、ケーシング打設に先立ち目視計測装置を挿入する岩盤内孔井の断面図、図4は分離ケーシングの打設手順の説明図である。
【0045】
目視計測装置31は、岩盤2内に削孔された孔井3に挿入して亀裂などの不連続面4の長さ・位置を確認するもので、先端金具32の後端部には、方位計部33が着脱自在に嵌着し、その後端にはボアホールテレビ部34と、その回転駆動部35が接続している。
【0046】
ボアホールテレビ部34の筒状ガラス34a内には、回転駆動部35内の図示しない回転モータと連動して回転する取付部材に孔井壁面3aを照明する光源、反射鏡及びテレビカメラが取付けられている。テレビカメラによる映像の方位は方位計部33の方位計で示されるようになっている。
【0047】
ボアホールテレビ部34及び回転駆動部35に続いてパッカー部36、配管・配線ポート37が順に取付けられている。パッカー部36は回転駆動部35の後端部に図示しない円筒状芯金が着脱自在に嵌着し、その円筒状芯金に両端が鋼製リングの円筒状のゴム製パッカー36aを嵌装する。円筒状芯金にはゴム製パッカー36aを膨脹させる水導孔を穿設する。円筒状芯金の水導孔は配管・配線ポート37を介して圧力ホース38と連続させ、信号ケーブル39は圧力センサーのほか、方位計部33、ボアホールテレビ部34に夫々電気的に接続させる。
【0048】
目視計測装置31を孔井3内に挿入し、パッカー部36を作動させて固定しながらボアホールテレビ部34で孔壁3aを目視し、不連続面4の位置を特定する。その後目視計測装置31を取出し、分離ケーシングの設置準備にかかる。
【0049】
先ず2本のケーシング5,5を特定された不連続面4の厚さに対応する間隔をもって離隔配置し、対向する端部同士を連結部材7で接続する。これらのケーシング5,5内にメカニカルパッカ6を挿入してリング状パッキングゴム材料からなる変形部13を変形させ、夫々のケーシング5を内側より押圧固定する。なお、ケーシング下端には底板11を、ケーシング上端にはシール材12を夫々設け、ケーシング5内へ固結材が流入することを防止する(図4(a))。
【0050】
次にメカニカルパッカ6により同一中心軸を有して一体をなした状態で組立てられた分離ケーシング設置装置1を、孔井3内に挿入して不連続面4の位置とケーシング5の離隔位置が対応するように高さ調整しながら位置決めを行い(図4(b))、下側ケーシング5と孔壁3aとの間が充填されるよう固結材9を一定量投入する(図4(c))。この時、固結材9の上部が連結部材7の下方に留まるよう適宜投入量を調整する。
【0051】
その後、メカニカルパッカ6に設ける圧力供給手段10を介して、連結部材7の内側に水圧を負荷し、拡張変形させることにより孔井壁面3aに円筒状ゴム材を密着させる(図4(d))。この状態を維持しながら上側ケーシング5と孔壁3aとの間に固結材9を充填する(図4(e))。固結材9が硬化してケーシング5が固定された後、連結部材7内側の水圧を除荷し、さらに油圧を除荷してシリンダー23をスプリング26の回復力で戻すことによってメカニカルパッカ6の変形部13の張り出しを解除し、ケーシング5内からメカニカルパッカ6を取り除く。
【0052】
これにより、岩盤不連続面4の孔井壁面開口部を固定材で塞がない分割ケーシング構造を達成し、不連続面4を挟む両側岩盤間の相対変位が両側岩盤にそれぞれ固定したケーシング5,5間の相対変位と一致し、不連続面4からの湧水などがケーシング5内に入り込まない防水状態を実現できる。中心軸を一致させた両ケーシング5,5間の相対変位精密に計測することによって岩盤不連続面4の三次元的な相対変位を高精度で計測できる状態が可能になる。
【0053】
連結部材7は、図4に示す固結材9を分離して打設する方法に用いられる他、一体的に打設する方法にも適用可能である。この実施形態を図5に示す。図5は固結材の一体打設方法による分離ケーシングの打設手順の説明図である。組立てられた分離ケーシング設置装置1を、孔井3内に挿入して位置決めを行い(図5(a))、次にケーシング5と孔壁3aとの間が隙間なく充填されるよう上部まで一気に固結材9を投入する(図5(b))。その後、直ちに、連結部材7の内側に水圧を負荷し、拡張変形させて不連続面4にある未硬化の固結材9を排除する(図5(c))。
【0054】
又分離打設方法の場合、ケーシング建て込み前に固結材を投入する手順もある。この実施形態を図6に示す。図6は固結材先行投入時の分離ケーシングの打設手順の説明図である。孔井3を削孔した後、所定量の固結材9を先行して投入し(図6(a))、その後組立てられた分離ケーシング設置装置1を挿入する。この時下半部のケーシング5を固結材9の中に圧入し、下側ケーシング5と孔壁3aとの間を固結材9で充填する(図6(b))。その後、連結部材7を拡張変形させ(図6(c))、この状態を維持しながら上側ケーシング5と孔壁3aとの間に固結材9を充填する(図6(d))。
【0055】
以上説明した分離ケーシングの設置方法及び設置装置は、離隔したケーシングをフレキシブルな素材で連結するケースであるが、これらケーシング間は開放状態でもよい。その実施形態を図7に示す。図7は、石油削井等で岩盤孔井内に打設するケーシングの中間部にも採取口を設ける際の分離ケーシング設置装置を示す岩盤内孔井の断面図である。
【0056】
ボーリングコア等によって特定された新たな採取口となるべき岩盤層40の位置に合わせ、2本のケーシング5,5を離隔配置し、メカニカルパッカ6を挿入して固定する。ケーシング5の下端外周には変形可能な隙間閉塞材41が突設する。この隙間閉塞材41は分割した板材を移動可能に重ねながら環状に配置するもので、孔井3内への挿入時には、窄まった状態を維持しながら、その上面に固結材9を載荷すると拡開してこれを受ける構成となっている。
【0057】
又上半部のケーシング5の下端外周には膨潤性樹脂42を環状に貼着する。この膨潤性樹脂42は、水分の供給を受けて時間経過により膨潤して隙間を閉鎖するもので、下半部への固結材充填時には、例えばフレキシブルチューブ等からなる固結材圧送手段を膨潤性樹脂42と孔壁3a間に挿通させ、上半部充填時にはこの圧送手段を取り除いた後、十分に膨潤させ隙間を完全に閉塞した後、上部の固結材9を充填する。
【0058】
なお、隙間閉塞材41や膨潤性樹脂42は、主に分離打設方法にて用いられるが、一体打設においても利用可能である。又、孔井壁面3aとケーシング5間で固結材圧送手段の装着取外しが任意にできるものであれば何れを上部に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
この発明の分離ケーシング設置方法及び分離ケーシング設置装置は、土木工学分野や地震工学分野における岩盤孔井内での計測機器設置のほか、資源開発分野等において分割されたケーシングを打設する場合に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】分離ケーシングの設置状況を示す岩盤内孔井の断面図である。
【図2】メカニカルパッカの断面図である。
【図3】目視計測装置を挿入する岩盤内孔井の断面図である。
【図4】分離ケーシングの打設手順の説明図である。
【図5】固結材の一体打設方法による分離ケーシングの打設手順の説明図である。
【図6】固結材先行投入時の分離ケーシングの打設手順の説明図である。
【図7】ケーシング間を開放する分離ケーシングの設置状況を示す岩盤内孔井の断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 分離ケーシング設置装置
2 岩盤
3 孔井
4 不連続面
5 ケーシング
6 メカニカルパッカ
7 連結部材
8 セントライザ
9 固結材
10 圧力供給手段
13 変形部
14 センターホールジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤に穿った孔井内で特定区間の長さ及び位置を設定し、外面にセントライザを備える複数のケーシングを前記特定区間の長さに対応して離隔配置し、これらのケーシング内に外径の拡大縮小が可能な内側固定装置を挿入して夫々のケーシングを内側より押圧固定し、複数のケーシングを装着する内側固定装置を前記孔井内に挿入して前記特定区間位置とケーシングの離隔位置が対応するように高さ調整し、前記特定区間を除いた孔井壁面とケーシングの間に固結材を充填して固定した後、内側固定装置の外径を縮小して取り出し、孔井内の特定区間位置で分離したケーシングを打設することを特徴とする分離ケーシング設置方法。
【請求項2】
外面にセントライザを備え所定長さ離隔して配置する複数のケーシングと、これらのケーシング内に挿入して夫々のケーシングを内側より押圧固定するため外径の拡大縮小が可能な内側固定装置と、夫々のケーシング外周に装着して孔井壁面とケーシングの間に充填する固結材がケーシング内へ流入することを防止するための固結材流入防止手段を備えることを特徴とする分離ケーシング設置装置。
【請求項3】
前記請求項2記載の分離ケーシング設置装置は、前記固結材流入防止手段として、離隔したケーシング間に水圧に耐え得る伸縮自在な連結部材を配設し、この連結部材の内側に水圧を負荷して岩盤孔井壁面に密着させため前記内側固定装置に圧力供給手段を備えることを特徴とする分離ケーシング設置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−113290(P2007−113290A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306382(P2005−306382)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】