説明

分離システム及び方法

【課題】
【解決手段】分離システムは、(i)各々が流体入口と流体出口とを含む2以上の分離ユニットであって、分離ユニットの出口と入口が直列に接続されて分離ユニット列を形成する、2以上の分離ユニットと、(ii)各分離ユニット間にインラインで設けられ、分離ユニットの列のうち1つの分離ユニットから次の分離ユニットへと流れる流体の1以上の環境特性パラメータを連続的に監視及び調節するための、検知・調節手段とを含む。分離ユニットと流体の1以上の流れのインライン調節とを使用して、所望の化学種を含有する液体を精製するための、分離システム及び方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物の分離及び精製に関し、具体的には生体分子、特に複数の分離ステップが実施される分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
過去10年間、薬剤開発及び治療用途に対するモノクローナル抗体のようなタンパク質の利用が大幅に増大している。しかし、製薬等級のモノクローナル抗体の大規模生産は、厳格な規制要件を満たすために、複数のクロマトグラフィー及び濾過ステップを要する複雑なプロセスである。
【0003】
生体分子の生産は、生物由来系で所望の生物材料を合成することから始まる。所望の材料の調製は、通常、特別に設計・順序付けられた一連の物理分離技術によって達成される。
【0004】
例えば、モノクローナル抗体の生産プロセスは、通常、哺乳類遺伝子組換え細胞培養での発現を含む。遠心分離後、培養生成物は、「捕獲」段階、「中間精製」段階、及び「高純度精製」段階を一般に含む、下流精製(DSP)に付される。捕獲段階は、大抵、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーに基づく。得られる生成物は、次に、更に精製及び高純度精製され、通常は、カチオン交換及びアニオン交換クロマトグラフィーステップを用いて分解生成物及び不純物を除去する。最後に、組み込まれた濾過ステップでウイルス分子を除去する。
【0005】
しかし、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーには、プロテインAの漏れを始めとする不都合な点が幾つかあることから、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーをカチオン交換捕獲段階で置き換えた簡便な精製プロセスが開発されている。カチオン捕獲ステップでは、単一の高純度精製ステップで十分に残渣を取り除ける程度の低いレベルにまでプロセス関連夾雑物が除去される。プロセスモノクローナル抗体の下流精製には、カチオン交換クロマトグラフィーステップ、アニオン交換クロマトグラフィーステップ、及びウイルス除去濾過ステップが含む。
【0006】
従来使用の下流精製プロセスは、異なるクロマトグラフィー及び濾過のステップの間に保留タンクを用いるバッチプロセスを用いて実施される。各プロセスステップには、プロセス後の洗浄及び保存用の液体の他に、或る一定のpH及び導電率の1種以上の緩衝液を使用する。各ステップに先立ち、生成物の流れの中のpH及びタンパク質濃度等の状態の調節が必要なことが多いため、これらの調節ステップは、次に個別の中間バッチ操作として実施される。
【0007】
従来技術では、自動化と溶出液のオンライン調節が少なくとも或る程度は可能な分離システム及びプロセスが提案されている。
【0008】
米国特許出願公開第2009/0149638号には、タンパク質の下流精製を大規模に行う、自動化可能なシステム及びプロセスが開示されており、このプロセスは、高いスループットで連続的に動作可能である。このプロセスでは、中間の限外濾過/透析濾過ステップを用いず、1つのクロマトグラフィーステップが他のステップに続き、1つのタンクからの溶出液を酸性又は塩基性にし得る中間の保持タンクを介して他のタンクに移送する。
【0009】
米国特許出願公開第2009/0126466号には、多次元高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が開示されており、ここでは、第1のクロマトグラフィー分離を第1の移動相を用いて第1のpHで実施し、ここから回収された1以上の画分を、第2の移動相を用いて第2の異なるpHで第2のクロマトグラフィー分離にかける。この1以上の画分を第2のクロマトグラフィー分離方式にかける前に、第1の分離から回収された1以上の画分を、任意選択的に、オンラインで濃縮又は希釈することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0149638号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0126466号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0039375号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、展開時間、処理時間、及び物品のコストを一層削減可能で、中間の保持タンクを必要としない、改良された自動化分離システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、単一の動作ユニットを形成するように直列に接続された幾つかの分離ユニットを有する分離又は精製システムによって、上記その他の目的及び利点を達成するが、このシステムには、分離ユニット間の流体の流れのパラメータを測定し、測定されたパラメータを調節するための手段、好ましくは閉ループ手段が、各分離ユニット間にインラインで設けられる。このようなシステムでは、動作時間が短縮され、例えば、モノクローナル抗体の生産で必要とされるような中間保持や中間試験の必要がなくなる。
【0013】
しかし、上記の発明概念は、クロマトグラフィーカラム又はフィルタの形態における下流精製(DSP)又は分離ユニットに限定されるものではなく、抗体等のタンパク質の精製に限定されるものでもない。むしろ、本発明は、化学又は生化学種のいかなる分離又は精製に対しても、これらの生産の上流と下流のいずれに対しても、概して同様に適用可能である。
【0014】
したがって、本発明は、一態様において、請求項1に定義した分離システムを提供する。
【0015】
この分離システムは、複数の分離ユニットを含み、各分離ユニットは、流体入口と流体出口とを含む。分離ユニットの出口と入口が直列に接続され、分離ユニットの列を形成する。各分離ユニット間には、分離ユニットの列うち1つの分離ユニットからその次の分離ユニットに流れる流体の1以上の環境特性パラメータを監視及び調節するための、検知・調節手段がインラインで設けられる。
【0016】
本明細書で使用する用語「分離ユニット」は、広義に解釈されるべきであり、例えば、カラム及び膜を含むクロマトグラフ装置、フィルタ、遠心分離器、二段分離装置等も包含する。
【0017】
また、本明細書で使用するシステム中の流体の流れに関する用語「環境特性パラメータ」もまた、広義に解釈されるべきで、例えば、導電率、圧力、粘度、温度、屈折率、濁度、流量等の流体の物理的なパラメータ、及びpH、分子の濃度(例えば、生成物、塩)、全有機体炭素(TOC)等の化学的パラメータも包含する。
【0018】
この分離システムは、好ましくは、分離システムを操作するためのコンピュータ制御及びデータ解析システムを含む。
【0019】
本発明は、別の態様において、請求項14に定義した精製方法を含む。
【0020】
この方法は、1種以上の所望の化学種を含有する液体を精製するためのものであり、(i)この液体を第1の分離ユニットに流入させ、そこから所望の化学種を含有する精製後の流体流出物を得るステップと、(ii)流体流出物の1以上の環境特性パラメータをオンラインで監視し、所望の値に調節するステップと、(iii)流出物を第2の分離ユニットに導き、そこから所望の化学種を含有する精製後の流体流出物を得るステップと、(iv)所望の化学種を含有する精製後の流出物を回収するステップとを含む。
【0021】
好ましい実施形態として、この方法は、第2の分離ユニットからの流出物を1以上の付加分離ユニットにかけるステップを含み、各付加分離ユニットへの流体の入口流れの1以上の環境特性パラメータを監視し、所望の値に調節する。
【0022】
好ましくは、これらの方法ステップを、コンピュータ制御及びデータ解析システムによって制御する。
【0023】
また別の態様では、本発明は請求項16に定義したように、生体分子の研究用の、最初に述べた態様による分離システムの利用を含む。
【0024】
更に他の態様では、本発明は請求項17に定義したように、分離手法の開発用の、最初に述べた態様による分離システムの利用を含む。
【0025】
本発明の上述の態様のその他の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0026】
以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することにより、本発明をより完全に理解し、更なる特徴及び利点をより完全に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】3つの分離ユニットを有する本発明による基本的な分離システム構成を説明する線図である。
【図2】本発明の一実施形態によるクロマトグラフィーシステム構成の線図である。
【図3】図2のクロマトグラフィーシステムの特性を試験するために使用する、クロマトグラフィーシステム試験用のプラットフォーム構成の線図である。
【図4】図2のクロマトグラフィーシステムの特性を試験するために使用する、別のクロマトグラフィーシステム試験用のプラットフォーム構成の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上述のように、本発明は、概して、複数の分離ユニットが直列に接続されて単一の動作ユニットを形成する分離又は精製システムに関し、この分離又は精製システムは、各分離ユニット間にインラインの検知・調節手段を含む。以下、抗体、特にモノクローナル抗体用の下流精製システムの形態において、本発明をより詳細に説明するが、これは単に例示目的によるものであって、本発明の実施形態がこれに限定されることはない。
【0029】
この分離システムは、ストレートスルー・プロセッシング(STP)システムとも称され、複数のクロマトグラフィーステップとウイルス濾過ステップとを単一の連続プロセスに統合したものである。STPシステムの基本的な特徴は、これに限定されることはないが、pH、導電率、及び生成物の流れのUV吸光度を含むプロセスパラメータの制御を、好ましくは閉ループ方式で実施するように設計されていることである。
【0030】
図1は、本発明によるSTPシステムの基本構成を線図で示しており、本図面では3つの分離ユニットを有するが、例示を目的とするものであって、これに限定されることはない。
【0031】
図1では、第1の分離ユニット1(ここではDSP1と称する)は、自身の出口を介して、直導管、即ちパイプ2によって第2の分離ユニット3(ここではDSP2と称する)の入口に接続される。次に、第2の分離ユニット3の出口は、直導管4を介して第3の分離ユニット5(ここではVFと称する)の入力部に接続され、これによって、3つの分離ユニットが連続した分離ユニットの列を形成する。
【0032】
各分離ユニット1、3、及び5の間には、監視及び制御(上昇又は降下、即ち増加又は減少)を行うインライン調節(ILA)のための手段を備える。第1のインライン調節手段6は、第1の分離ユニット1の導入管7に連結され、第2のインライン調節手段8は、第1及び第2の分離ユニット1、3間で導管2に連結され、第3のインライン調節手段9は、第2及び第3の分離ユニット3、5間で導管4に連結される。これらのインライン調節手段は、従来のバッチに基づく処理装置におけるプロセス内サンプリングと、プロセスパラメータ試験とを置換するものと考えられる。インライン調節は、以下に詳述するように、閉ループ(フィードバックループ)を介してセンサを使用して行われるので、異常発生時には即座に応答可能である。
【0033】
精製後の生成物を含有する流体の流れは、導出管10を介してウイルス除去フィルタ5から回収される。
【0034】
通常、様々なシステムユニットが、プラットフォーム即ち架台上に搭載される。また、STPシステムの操作は、通常、コンピュータ制御及びデータ解析システムを用いて行われる。
【0035】
例示した分離システムが、例えば、モノクローナル抗体等のタンパク質の下流精製(DSP)を意図したものである場合、3つの分離ユニットは、例えば、図1のように、DSP1、DSP2、及びVFで示す、2つのクロマトグラフカラムと1つのウイルス除去フィルタを直列に含むであろう。第1のカラムDSP1がカチオン交換クロマトグラフィー(CIEX)カラム、第2のカラムDSP2がアニオン交換クロマトグラフィー(AIEX)カラム、そしてウイルス除去フィルタVFが、例えばメンブレンフィルタであってよい。或いは、3つの異なるクロマトグラフカラムを使用してもよい。
【0036】
そのような場合、インラインの環境調節は、例えば、第1のカラム(DSP1)に流入する生成物の流れに対するイオン強度(導電率)調節を含み得る。第1(DSP1)と第2(DSP2)のカラム間のインライン調節は、pH及び/又は導電率の変更を含み得る。第2のカラム(DSP2)とウイルス濾過(VF)との間のインライン調節は、希釈(生成物の濃度)、及び任意選択的にpH調節も含み得る。使用する緩衝液とその他の液体を、予め調製された溶液の入ったタンクで供給しても、或いは、インライン調製(インライン希釈)システムを使用してリアルタイムで調製してもよく、例えば、本明細書に付随して出願された同時係属中の出願「Method and system for preparation of liquid mixtures(液体混合物の調製のための方法及びシステム」に記載されたタイプのものであってよい。
【0037】
従来のバッチに基づくモノクローナル抗体の下流精製と比べると、本発明の自動化されたストレートスルー方式では、より短いバッチ処理時間で能率的に一連のプロセスが行われ、調製設備の利用効率と処理能力が向上し、ステップ間の容器及びこれら容器の付属物が不要になり、処理コストが少くて済む。また、センサに基づくインライン調節によって、より堅固なプロセスが提供される。
【0038】
本発明の分離システムには広範囲な用途があるだろう。このように、直接的な生成物の精製以外の用途も、既存の手動中心のシステムに比べて、かなり簡便化されるであろう。そのような用途には、例えば、生体分子の研究及び分離手法の開発を含む。他の用途には、幾つか挙げるだけでも、例えば、媒体及び/又は装置の寿命のスケールアップ及びスケールダウンに関する研究、クリアランスに関する研究、クリーニングに関する研究を含む。
【0039】
この分離システムでは、高精度に加え、高い再現性を得ることができる。
【0040】
この分離システムは、分離環境の制御だけでなく、分離される分子の環境にも影響を与え得る。例えば、低pHを使用することでウイルスを不活化することができ、pH、イオン強度、及びタンパク質濃度を、所望の生成物が安定で、プロテアーゼが不活化し、且つ/又は好ましくない凝集体が形成されないレベルとすることができる。
【0041】
上述のように、インライン調節は、閉ループ(フィードバックループ)を介してセンサを使用して行われる。閉ループ制御システムは、簡単な設計では、閉ループ状に接続されたプロセスと制御装置とを含む。このプロセスは、自身の入力信号(制御信号)の影響を受ける。測定信号、即ちプロセス出力信号は、制御対象のプロセスに関する情報を与える。制御装置は、測定信号と、この測定信号の所望値を示す設定点の2つの信号を有する。2つの信号間の差は、プロセスの実際の応答が所望の応答に近付くような結果をもたらす動作を生じる。つまり、これによって信号差がゼロになる。より複雑な制御システムでは、複数の測定信号と複数の制御信号を有する。閉ループ制御システムは周知のため、本明細書で詳細に説明する必要はない。
【0042】
一般的に使用されている閉ループ制御装置は、PID(比例・積分・微分)制御装置である。PID制御装置は、3つの個別のパラメータ、即ち、比例、積分、及び微分値を計算する。比例値は、現在の誤差に対する応答を決定し、積分値は、最近の誤差の総和に基づき応答を決定し、微分値は、誤差が変化した速度に基づき応答を決定する。これら3つの作用の加重和を使用して、制御値の一部分を調節する。
【0043】
上記で概説したインライン調節手段では、インライン検知装置、即ちセンサ(検出器)が、制御装置と、通常は流体送達のためのポンプその他の原動力である液体送達装置とに、閉ループ状に接続されており、検知されたシステムパラメータ値と設定点との間の差で、ポンプの作動を制御する。
【0044】
基本的に、スペクトル測定(例えば、近赤外、UV)又はイオン測定(導電率、pH)に基づくセンサ等、システムの流体及び流れの特定のパラメータを検出して測定可能な(アナログ又はデジタル)信号を出力可能な、任意のセンサを使用可能である。
【0045】
インライン調節手段は、通常、コンピュータ制御で動作するが、STPシステムの動作に使用されるコンピュータ制御及び解析システムとは別の形態のものでも、同じ形態のものでもよい。上述のタンパク質精製の場合、プロセスに供給する流れにおいて、段階的な変化、急激な変化、及び緩慢な変化がこれらのパラメータに生じると、例えば、インライン調節でpH、導電率、及びUVの閉ループ制御が実施される。
【0046】
図2は、タンパク質、特にモノクローナル抗体の下流精製用に設計された、本発明によるクロマトグラフィーシステムの一実施形態の構成を示す。
【0047】
このクロマトグラフィーシステムは、直列に接続された3つの分離ユニット、即ち、カチオン交換カラム21と、アニオン交換カラム22と、ウイルス除去フィルタ23とを含む。具体的には、カラム21は導管24を用いてカラム22に連結され、カラム22は弁、圧力遮断タンク26、及びポンプ27を介して導管25を用いてウイルス除去フィルタ23に連結される。
【0048】
クロマトグラフィーカラム21の入口は、導管28を通じて、弁と気泡トラップ30とを介して第1のクロマトグラフィーポンプ29に、T字接合部32で導管28に接続する導管31を通じて、第2のクロマトグラフィーポンプ33に接続される。第1のポンプ29は、導入ライン34を有し、この導入ラインは(この場合)4つの導入弁35を備え、そのうち1つがサンプル弁として作用する。同様に、第2のポンプ33は導入ライン36を有し、この導入ラインは(この場合)4つの導入及びサンプル弁37を備える。
【0049】
閉ループ制御回路(PID)は、クロマトグラフィーポンプ29及び33の動作を制御すると共に、導入管28の導電率を検知するためのインライン導電率センサ38を含み、このインライン導電率センサ38は、ポンプ29及び33に更に接続される制御装置39に接続される。クロマトグラフィーカラム21及び22を接続する導管24に連結されるインラインフローセンサ40もまた、閉ループ方式で制御装置39に接続される。
【0050】
クロマトグラフィーポンプ29及び33は、クロマトグラフィーで従来使用されているグラジエントポンプに相当し、上述の閉ループ制御回路は、グラジエントシステム上に設けられる標準的な導電率フィードバック調節ロジックに相当する。
【0051】
例示したクロマトグラフィーシステムは、4つのインライン調節構造を含む。
【0052】
第1のインライン調節構造は、クロマトグラフィーカラム21からの流出物の導電率を調節するためのもので、緩衝液ポンプ41を含むが、このポンプは、導管42を介して下流の混合器44付近のT字接合部43で導管24に接続されている。PID閉ループ制御回路が、ポンプ41の動作を制御するために設けられ、混合器44の下流で導管24に連結されるインライン導電率センサ45を含んでいる。導電率センサ45は更に、ポンプ41に接続される制御装置46に接続される。PIDループは、センサ45から導電率を読み取ってポンプ41を調節し、導電率を所望の設定点に到達させてこれを維持する。
【0053】
第2のインライン調節構造は、クロマトグラフィーカラム21からの流出物のpHを調節するもので、緩衝液ポンプ47を含むが、このポンプは、導管48を介して下流の混合器50付近のT字接合部49で導管24に接続されている。PID閉ループ制御回路が、ポンプ47の動作を制御するために設けられ、混合器50の下流で導管24に連結されるインラインpHセンサ51を含む。pHセンサ51は更に、ポンプ47に接続される制御装置52に接続されている。PIDループは、センサ51からpHを読み取ってポンプ47を調節し、pHを所望の設定点に到達させてこれを維持する。
【0054】
第3のインライン調節構造は、導管25中の第2のクロマトグラフィーカラム22からの流出物のUV吸光度(生成物濃度)を調節するもので、緩衝液ポンプ53を含むが、このポンプは、導管54を介して下流の混合器56付近のT字接合部55で導管25に接続されている。PID閉ループ制御回路は、混合器56の下流で導管25に連結されるインラインUVセンサ57を含み、ポンプ53の動作を制御する。UVセンサ57は、ポンプ53に更に接続される制御装置58に接続されている。PIDループは、センサ57からUV吸光度を読み取ってポンプ53を調節し、UV吸光度を所望の設定点に到達させてこれを維持する。
【0055】
第4のインライン調節構造は、圧力遮断タンク26の下流で導管25中の生成物の流れのUV吸光度(生成物濃度)の最終調節を行うために設けられる。このインライン調節構造は、希釈緩衝液ポンプ27と、ポンプ27の動作を制御するPID閉ループ制御回路とを含み、ポンプ27とウイルス除去フィルタ23との間で導管25に連結されるインラインUVセンサ59と制御装置60とを含む。PIDループは、センサ59からUV吸光度を読み取ってポンプ27を調節し、UV吸光度を所望の設定点に到達させてこれを維持するが、この設定点は、フィルタの詰まりを避けるために必要なだけの濾過前の希釈度に相当するように選択される。
【0056】
第1のカラムへローディング中の生成物の流れの導電率及び/又はpHのインライン調節は、クロマトグラフィーポンプ29及び33、並びに、関連するPID制御回路38、39によって行われ、任意で、これを第5のインライン調節構造とみなすこともできる。
【0057】
例示したクロマトグラフィーシステムは、更に、気泡トラップ30の上流にインライン圧力センサ61を含み、カラム21の下流且つ接合部43の上流に、インラインの導電率センサ62、pHセンサ63、及びUVセンサ64を含む。
【0058】
ウイルス除去フィルタ23は、例えば、メンブレンフィルタである。
【0059】
クロマトグラフィーシステム中の各種ポンプは、例えば、ペリスタポンプ、ピストンポンプ、及びダイアフラムポンプから選択される。
【0060】
混合器44、50、56は、チューブ内、即ちチューブの内径寸法が増減するパイプの区画の、流れの中に乱流を発生させる定置式ミキサでよい。
【0061】
このクロマトグラフィーシステムは、制御ソフトウェアによって制御される。典型的なこのような制御ソフトウェアとして、UNICORN(商標)制御システム(スウェーデン、ウプサラのGEヘルスケアバイオサイエンスAB)が含まれるが、これは、制御装置とコンピュータグラフィックユーザインターフェースを備えたI/Oインターフェースを基盤とする、一体化制御システム部である。
【0062】
図2に図示し上述したシステムは、様々な方式で機能し得る。以下、3つの典型的な利用形態を例示目的において説明する。
1.第1のカラム(21)が結合・溶出方式、最後がウイルス濾過(23)の場合。
2.第1のカラム(21)が結合・溶出方式、第2のカラム(22)が捕獲方式(フロースルー)、最後がウイルス濾過(23)の場合。
3.第1のカラム(21)が結合・溶出方式、第2のカラム(22)が結合・溶出方式、最後がウイルス濾過(23)の場合。
【0063】
1.第1のカラムが結合・溶出方式、最後がウイルス濾過の場合
第1のカラム21は、予め調製された溶液、或いは、前述の同時係属中の出願「Method and system for preparation of liquid mixtures(液体混合物の調製のための方法及びシステム)」に開示されたのもの等インライン緩衝液調製ユニット又は構造を使用してリアルタイムで調製された緩衝液のいずれかと平衡になっている。次に、サンプルは、直接、或いは、ポンプ33及び制御回路38、39、40を介した導電率又はpHの調節を伴って、カラム21にローディングされる。サンプルが結合し、非結合のサンプルの洗浄が完了した後、タンパク質が溶出される。
【0064】
溶出は、固定pH又は導電率で均一濃度で行われ、予め調製された溶液又は(分離システムがそのように装備されている場合は)インラインの緩衝液調製ユニットを使用して調製された緩衝液に供給可能である。或いは、ポンプ29、33及び制御回路39、38、40を用いた、流れ又は導電率の勾配溶出も適用可能である。勾配溶出では、ポンプ間の混合物に対する目標設定点を直線的な割合で変化させることが可能であり、システム制御の制御アルゴリズムによって、混合物をこの変化する直線状の設定点に追従させる。
【0065】
任意で、カラム21の溶出時に、ポンプ41、導管42、T字接合部43、混合器44、及び導電率制御回路45、46を含む第1のインライン調節構造を介して、導電率を溶出中にインラインで特定値に調節可能である。同様に、ポンプ47、導管48、T字接合部49、混合器50、及びpH制御回路51、52を含む第2のインライン調節構造を介して、pHもインラインで調節可能であり、ポンプ53、導管54、T字接合部55、混合器56、及びUV制御回路57、58を含む第3のインライン調節構造を介して、タンパク質の濃度もインラインで調節可能である。
【0066】
濃度調節後の生成物は、ポンプ27及びUV制御回路59、60を使用して、定圧で連続的にフィルタ23を通過する。
【0067】
2. 第1のカラムが結合・溶出方式、第2のカラムが捕獲方式(フロースルー)、最後がウイルス濾過の場合
第1と第2のカラム21、22は、予め調製された溶液又は(そのように装備されている場合は)システムのインライン緩衝液調製機能を使用してリアルタイムで調製された緩衝液のいずれかと平衡になっている。この平衡溶液が2つのカラムに対して同一の場合は、これを一緒に実施してもよいが、別のカラムをバイパスして平衡化を順次実施してもよい。
【0068】
次に、サンプルを、直接、或いは導電率33、38又はpH39、40の調節を行って、カラム21にローディングする。この操作の間、第2のカラム22は、プロセスの要件に応じて、インラインであってもバイパスされてもよい。サンプルが結合し、非結合のサンプルの洗浄が完了した後、タンパク質が溶出される。
【0069】
溶出時、第2のカラム22が未だインラインでない場合は、第2のカラム22をインラインにする。溶出は、固定のpH又は導電率で均一濃度で行われ、予め調製された溶液又は(そのように装備されている場合は)システムのインラインの緩衝液調製機能を使用して調製された緩衝液に供給可能である。或いは、ポンプ29、33、及び制御回路39、38、40を用いた、流れ又は導電率の勾配溶出も適用可能である。勾配溶出では、ポンプ間の混合物に対する目標設定点を直線的な割合で変化させることが可能であり、システム制御の制御アルゴリズムによって、混合物をこの変化する直線状の設定点に追従させる。
【0070】
任意で、第1のカラム21の溶出時に、導電率及び/又はpHを第2のカラム22の適用要件に合わせてインラインで調節可能であり、ポンプ41、導管42、T字接合部43、混合器44、及び制御回路45、46を含む第1のインライン調節構造を介して、導電率が調節され、ポンプ47、導管48、T字接合部49、混合器50、及び制御回路51、52を含む第2のインライン調節構造を介してpHが調節される。
【0071】
第2のカラム22からのタンパク質濃度は、ポンプ53、導管54、T字接合部55、混合器56及び制御回路57、58を含む第3のインライン調節構造によって、インラインで特定値に調節可能である。
【0072】
濃度調節後の生成物は、ポンプ27及び制御回路59、60を使用して、定圧で連続的にフィルタ23を通過する。
【0073】
なお、プロセス要件を満たすことが必要な場合に、中間的な導電率調節ループ41、42、43、44、45、46(第1のインライン調節構造)及びpH調節ループ47、48、49、50、51、52(第2のインライン調節構造)の位置を変えることによって、このシステムを第2のカラム22の後での調節が可能なように、システムの動作前に(又は動作時に追加の弁を加えることによって)システムを容易に構成できる。
【0074】
3.第1のカラムが結合・溶出方式、第2のカラムが結合・溶出方式、最後がウイルス濾過の場合
第1と第2のカラム21、22は、予め調製された溶液又は(装備されている場合は)システムのインライン緩衝液調製機能を使用してリアルタイムで調製された緩衝液と平衡になっている。平衡溶液が2つのカラムに対して同一の場合、インラインで一緒これを実施してもよいが、別のカラムをバイパスして順番に平衡化を実施してもよい。この時点では、フィルタ23はインラインでない。
【0075】
サンプルは、直接又はポンプ33及び制御回路38、39、40を通じて、導電率又はpHの調節を行って、カラム21にローディングされる。この操作の間、第2のカラム22はバイパスされる。サンプルが結合し、非結合のサンプルの洗浄が完了した後、タンパク質が溶出される。
【0076】
溶出は、固定のpH又は導電率で均一濃度で行われ、予め調製された溶液又は(そのように装備されている場合は)システムのインラインの緩衝液調製機能を使用して調製された緩衝液に供給可能である。或いは、ポンプ29、33及び制御回路39、38、40を用いた、流れ又は導電率の勾配溶出も適用可能である。勾配溶出では、ポンプ間の混合物に対する目標設定点を直線的な割合で変化させることが可能であり、システム制御の制御アルゴリズムによって、混合物をこの変化する直線状の設定点に追従させる。
【0077】
第1のカラム21からの溶出時に、第2のカラム22がインラインになり、第1のカラム21からの溶出液が第2のカラム22に結合する。任意で、第1のカラム21の溶出時に、第2のカラム22に結合するための適用要件に合うように、導電率及び/又はpHをインラインで調節可能であり、ポンプ41、導管42、T字接合部43、混合器44、及び制御回路45、46を含む第1のインライン調節構造によって導電率が調節され、ポンプ47、導管48、T字接合部49、混合器50、及び制御回路51、52を含む第2のインライン調節構造を通じてpHが調節される。
【0078】
第1のカラム21からの全てのタンパク質が第2のカラム22に結合した後、第1のカラム21はバイパスされ、第2のカラム22で非結合のサンプルが洗浄される。第2のカラム22の洗浄が完了すると、フィルタ23がインラインになり、第2のカラム22からの溶出が始まる。
【0079】
溶出は、固定のpH又は導電率で均一濃度で行われ、予め調製された溶液又は(そのように装備されている場合は)システムのインラインの緩衝液調製機能を使用して調製された緩衝液に供給可能である。或いは、ポンプ29、33及び制御回路39、38、40を用いた、流れ又は導電率の勾配溶出も適用可能である。勾配溶出では、ポンプ間の混合物に対する目標設定点を直線的な割合で変化させることが可能であり、システム制御の制御アルゴリズムによって、混合物をこの変化する直線状の設定点に追従させる。
【0080】
第2のカラム22からのタンパク質濃度は、ポンプ53、導管54、T字接合部55、混合器56、及び制御回路57、58を含む第3のインライン調節構造を使用して、インラインで特定値に調節可能である。溶出生成物は、制御回路59、60を介して、定圧で、ポンプ27によって連続的にフィルタ23にポンプ送りされる。
【0081】
なお、プロセス要件を満たすことが必要な場合に、中間的な導電率調節ループ41、42、43、44、45、46(第1のインライン調節構造)及びpH調節ループ47、48、49、50、51、52(第2のインライン調節構造)の位置を変えることによって、このシステムを第2のカラム22の後での調節が可能なように、システムの動作前に(又は動作時に追加の弁を加えることによって)システムを容易に構成できる。
【0082】
以下、本発明の機能性を実証する試験用プラットフォームを用いて実施した実験について説明する。
【実施例】
【0083】
以下に例を用いて本発明を説明するが、本例は単に例示目的を意図したもので、添付の特許請求の範囲に定義された本発明を限定するものではないと理解されたい。ここでは、以下又は本願の他の部分に述べた参照符号を引用する。
【0084】
2つのカラムとウイルス濾過を直列に有する、上述した本発明のSTPシステムの実施形態の機能性が、それぞれが単一のカラムを有するがウイルスフィルタを有さない、2つの試験用プラットフォーム上で、2つのモデルのモノクローナル抗体(Mab)生成物に対して実施された試験によって実証された。
【0085】
2つの試験用プラットフォームは、標準的な10mmのBioProcessポリプロピレンシステム(スウェーデン、ウプサラのGEヘルスケアバイオサイエンスAB)を基に、幾つかの追加的な機能をこのシステムに組み込んだものである。
【0086】
試験用プラットフォームI
図3は、第1のモデルのモノクローナル抗体のDPC(直接生成物捕獲)生成物に使用される、第1の試験用プラットフォーム用のクロマトグラフィーシステムの構成を示し、以下では「Mab1」と称する。
【0087】
クロマトグラフィーカラム71の入口は、気泡トラップ73を包含する導管72を介して第1のダイアフラム・クロマトグラフィーポンプ74(独レオンベルクのLewa GmbH)に、そして導管72に接続する導管75を介して第2のダイアフラム・クロマトグラフィーポンプ76(Lewa GmbH)に、接続される。ポンプ74は導入管77を有し、この導入管は(この場合)4つの導入弁78を備え、そのうち1つがサンプル弁として作用する。同様に、ポンプ76は導入管79を有し、この導入管は(この場合)4つの導入及びサンプル弁80を備える。カラム71の出口は導管81を介して、(この場合)4つの導出弁82に接続されるが、そのうち1つは廃棄用である。
【0088】
第1のペリスタ滴定緩衝液ポンプ83(米国マサチューセッツ州ウィルミントンのWatson−Marlow社のWatson−Marlow 604IU IP55)は、導管84を介してT字接合部85でカラム導出管81に接続される。パイプ内定置式混合器86は、接合部85の下流に設けられる。第2のペリスタ滴定緩衝液ポンプ87(Watson−Marlow 520DU IP31)は、導管88を介してT字接合部89で導出管81に接続され、パイプ内定置式混合器90が接合部89の下流に設けられる。
【0089】
第1のPID閉ループ制御回路は、クロマトグラフィーポンプ74及び76の動作を制御するが、導入管72の導電率を検知するためのインライン導電率センサ91(GEヘルスケアバイオサイエンスABのCMC−DN8、CM−P)を含み、更にポンプ74、76に接続される制御装置92(GEヘルスケアバイオサイエンスABのUNICORN(商標))に接続される。この制御装置92には更に、カラム導出管81に連結されるインラインフローセンサ93(スイスのライナハのEndress+HauserのPROMASS(商標)M、60 MT−AUG00A00B2B)が、閉ループ方式で接続される。
【0090】
第2のPID閉ループ制御回路は、滴定緩衝液ポンプ83の動作を制御するが、混合器86とT字接合部89の間でカラム導出管81に連結されるインラインのUVセンサ94(生成物濃度検知用)(GEヘルスケアバイオサイエンスABの光学ユニットUV1、UV−P)を含む。UVセンサ94は、制御装置95(GEヘルスケアバイオサイエンスABのUNICORN(商標))に接続され、この制御装置は更にポンプ83に接続される。
【0091】
第3のPID閉ループ制御回路は、滴定緩衝液ポンプ87の動作を制御するが、混合器90の下流でカラム導出管81に連結されるインラインのpHセンサ96(Endress+HauserのpHセンサ、GEヘルスケアバイオサイエンスABのトランスミッタpH−P)を含む。pHセンサ96は、制御装置97(GEヘルスケアバイオサイエンスABのUNICORN(商標))に接続され、この制御装置は更にポンプ87に接続される。
【0092】
図示のクロマトグラフィー試験用プラットフォームは、更に、カラム71の上流にインライン圧力センサ98を、カラム71の下流且つ混合器86の上流にインラインの導電率センサ99、pHセンサ100、及びUVセンサ101を含み、pHセンサ96の下流にインライン導電率センサ102を含む。
【0093】
緩衝液のみの動作
実際のタンパク質での全ての動作実施に先立ち、緩衝液だけで一連の動作を行い、システムに組み込まれた制御ループの動作の検証と、過渡及び定常状態における、導電率、pH及びUV(タンパク質濃度)の制御機能のプロファイリングを行った。各制御回路を使用し、プロセスの流れを設定値で制御した。
【0094】
Mab1生成物実験
次に、(i)目標の導電率に対するローディング中のサンプルのインライン希釈の実証、(ii)溶出中のカラム後pH調節の実証、及び(iii)溶出中のカラム後タンパク質濃度(UV)調節の実証を目標として、Mab1モノクローナル抗体生成物で実験を行った。
【0095】
カラム71は、SP SEPHAROSE(商標)XLカチオンクロマトグラフ用樹脂(GEヘルスケアバイオサイエンスAB)を充填した25cmのクロマトグラフィーカラム(スウェーデン、ウプサラのGEヘルスケアバイオサイエンスABのBPG(商標))を使用した。流速は、150cm/hで実施した溶出を除き、全てのステップで200cm/hとした。
【0096】
カチオン交換クロマトグラフィープロセス用に以下の緩衝液を使用した。
【0097】
【表1】

【0098】
導電率センサ91及び制御装置92を含むフィードバック制御ループによって、サンプルローディング用にカラム前の導電率調節を実施した。
【0099】
カラム後では、溶出緩衝液を希釈液として使用し、ペリスタポンプ83によってT字接合部85中にこれを供給してUV調節を行い、次に、混合器86(内径が増減する寸法変化区間のパイプ)を用いて混合した。ポンプ83に連結されると共にセンサ94と制御装置95とを含むPIDループで、混合器86の下流のセンサ94からUVを読み取って、UVが設定点に到達するようにポンプ83を調節した。
【0100】
pH調節をUV調節の後で行い、トリス緩衝液を調節用緩衝液として使用し、ペリスタポンプ87によって、混合器86の下流のT字接合部89から導出管81中に供給すると共に、流れ中のパイプ内定置式混合器90に供給して、乱流を発生させた。ポンプ87に連結されたPIDループで、混合器90の下流のセンサ96からpHを読み取って、pHが設定点に到達するようにポンプ87を調節した。
【0101】
試験用プラットフォームII
図4は、第2のモデルのモノクローナル抗体のDPC(直接生成物捕獲)生成物に使用される、第2の試験用プラットフォーム用のクロマトグラフィーシステム構成を示しており、以下ではこれを「Mab2」と称する。
【0102】
クロマトグラフィーカラム121の入口は、気泡トラップ123を包含する導管122を介して第1のダイアフラム・クロマトグラフィーポンプ124(独レオンベルクのLewa GmbH)に接続されると共に、導管122に接続する導管125を介して第2のダイアフラム・クロマトグラフィーポンプ126(Lewa GmbH)に接続される。ポンプ124は、導入管127を有し、この導入管は(この場合)4つの導入弁128を備え、その内の1つがサンプル弁として作用する。同様に、ポンプ126は導入管129を有し、この導入管は(この場合)4つの導入及びサンプル弁130を備える。カラム121の出口は導管131を介して、(この場合)4つの導出弁132に接続されるが、そのうち1つは廃棄用である。
【0103】
第1のピストン滴定緩衝液ポンプ133(スウェーデン、ウプサラのGEヘルスケアバイオサイエンスABのポンプP900)は、気泡トラップ123の下流のT字接合部135で導管134を介してカラム導入管122に接続される。パイプ内定置式混合器136が、接合部135の下流に設けられる。第2のペリスタ滴定緩衝液ポンプ137(Watson−Marlow 604U IP55)は、導管138を介してT字接合部139でカラム導出管131に接続され、パイプ内定置式混合器140が接合部139の下流に設けられる。
【0104】
第1のPID閉ループ制御回路は、クロマトグラフィーポンプ124及び126の動作を制御するが、導入管122の導電率を検知するためのインライン導電率センサ141(GEヘルスケアバイオサイエンスABのCMC−DN8、CM−P)を含み、更にポンプ124、126に接続される制御装置142に接続される。カラム導出管131に連結されるインラインフローセンサ143もまた、閉ループ方式で制御装置142に接続される。
【0105】
第2のPID閉ループ制御回路は、滴定緩衝液ポンプ133の動作を制御するが、混合器136とカラム121との間でカラム導入管122に連結されるインラインのpHセンサ144(Endress+HauserのpHセンサ、GEヘルスケアバイオサイエンスABのトランスミッタpH−P)を含む。pHセンサ144は制御装置145に接続され、この制御装置は更に、ポンプ133に接続される。
【0106】
第3のPID閉ループ制御回路は、滴定緩衝液ポンプ137の動作を制御するが、混合器140の下流でカラム導出管131に連結されるインラインのUVセンサ146(GEヘルスケアバイオサイエンスABの光学ユニットUV1、UV−P)を含む。UVセンサ146は、制御装置147に接続され、この制御装置は更にポンプ137に接続される。
【0107】
例示のクロマトグラフィー試験用プラットフォームは、更に、気泡トラップ123の上流にインライン圧力センサ148を、カラム121とT字接合部139との間にインラインの導電率センサ149、pHセンサ150、及びUVセンサ151を、UVセンサ146の下流にインライン導電率センサ152を含む。
【0108】
Mab2生成物実験
次に、(i)サンプルローディング中のカラム前インラインpH(下降)調節の実証、及び(ii)溶出中のカラム後タンパク質濃度(UV)調節の実証を目標として、Mab2モノクローナル抗体生成物で実験を行った。
【0109】
カラム121は、SP SEPHAROSE(商標)XLカチオンクロマトグラフ用樹脂(GEヘルスケアバイオサイエンスAB)を充填した25cmのクロマトグラフィーカラム(スウェーデン、ウプサラのGEヘルスケアバイオサイエンスABのBPG(商標))を使用した。流速は、全てのステップで250cm/hとした。
【0110】
カチオン交換クロマトグラフィープロセス用に以下の緩衝液を使用した。
【0111】
【表2】

【0112】
カラム前のpH調節は、2Mの酢酸を調節緩衝液として使用して行ったが、P900容積式ポンプ(スウェーデン、ウプサラのGEヘルスケアバイオサイエンスAB)によってT字接合部135中に供給し、流れ中の定置式混合器136を用いて乱流を発生させた。制御装置145を含むPIDループで、pH用定置式混合器136の下流でセンサ144からpHを読み取って、pHが設定点に到達するようにポンプ133を調節した。
【0113】
カラム後は、溶出緩衝液を希釈液として使用してUV調節を行った。ペリスタポンプによって配管のT字区間の接合部139において、これを流れに供給し、混合器140で攪拌した。制御装置147を含むPIDループで、T字結合部139の下流のセンサ146からUVを読み取って、UVが設定点に到達するようにポンプ137を調節した。
【0114】
結果/結論
緩衝液動作では、ポンプが自身の直線的動作範囲で動作していれば、多くの動的な条件にシステムが応答可能であることがわかった。
【0115】
Mab2サンプル動作では、システムが異なった開始導電率のサンプルに応答可能であり、カラムへのローディングと結合が成功することを実証した。インライン希釈を伴うサンプルローディングでは、サンプルバッチの開始導電率又はpHの差にかかわらず、適切なローディング条件を確実に満たすローディングパラメータの自動調節を実証した。この技術では、手動操作でバッチを調節しなくてもローディングが確実に成功するように、条件を調節することができる。ローディング中のUV測定によると、生成物の損失はなかった。
【0116】
カラム後のpH調節、並びにカラム後のタンパク質濃度制御が成功したことも実証された。pH調節では、カラムから溶出するpHを調節できることがわかったが、これでpH調節を行って第2のカラム又は他の分離装置へのローディングを行うこともできる。インラインで調節を実施することによって、システムが溶出流れの状態変化に応答できるようになるので、次のカラムへの抗体又はタンパク質が確実に適切になるように調製したり、不安定な状態の時間を最小限にすることができる。このことは、タンクでのバッチ調節方式では達成し得ないことである。このように、STPシステムでは、当該種類の抗体精製システムにおいて、カラム1と2の間で容器の必要がなくなる。
【0117】
サンプル濃度調節は、抗体精製システムにおいて、第2のカラムの下流にあるウイルスフィルタで早期の詰まりが生じ得るレベルよりも濃度を確実に低く保つことに有効であった。繰り返しになるが、インラインでの調節によって、システムの応答が可能になるので、動作後の希釈にかかる時間と労力を節約し、無菌濾過ステップへ流れを直接適用できるようになり、手動でのインタラクションをなくすことによって品質が向上する。このように、STPシステムは、抗体精製システムにおいて、カラム2とウイルスフィルタとの間で調節を行う容器が不要になる。
【0118】
本発明は、上述の好適な実施形態に限定されることはない。各種代替手段、変更、及び等価物の使用が可能である。したがって、上記の実施形態は、本発明の範囲を限定するものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されるとみなされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々流体入口と流体出口とを含む2以上の分離ユニットであって、分離ユニットの出口と入口とが直列に接続されて分離ユニット列を形成している2以上の分離ユニットと、
各分離ユニット間にインラインで設けられた検知・調節手段であって、分離ユニット列のうち1つの分離ユニットから次の分離ユニットに流れる流体の1以上の環境特性パラメータを連続的に監視及び調節する検知・調節手段と
を備える、分離システム。
【請求項2】
検知・調節手段が、流体送達装置と閉ループで接続された制御装置及びインラインセンサを含む、請求項1記載の分離システム。
【請求項3】
3以上の分離ユニットを含む、請求項1記載の分離システム。
【請求項4】
分離ユニットがカラム及びフィルタから選択される、請求項1記載の分離システム。
【請求項5】
流体送達装置が1以上のポンプを含む、請求項2記載の分離システム。
【請求項6】
2以上のクロマトグラフィーカラムを含む、請求項4記載の分離システム。
【請求項7】
1以上の環境特性パラメータが、pH、導電率、化学種の濃度から選択される、請求項1記載の分離システム。
【請求項8】
化学種の濃度を監視及び調節するための検知・調節手段が、UVセンサを含む、請求項7記載の分離システム。
【請求項9】
2つのクロマトグラフィーカラムとウイルス除去フィルタとを含む、タンパク質精製のための請求項4記載の分離システム。
【請求項10】
クロマトグラフィーカラムが、カチオン交換カラム及びアニオン交換カラムを含む、請求項9記載の分離システム。
【請求項11】
カチオン交換カラムとアニオン交換カラムとの間に設けられる検知・調節手段が、導電率とpHのうち少なくとも1つを監視及び調節するための検知・調節手段を含む、請求項10記載の分離システム。
【請求項12】
アニオン交換カラムとウイルス除去フィルタとの間に設けられる検知・調節手段が、UV吸光度を監視及び調節するための検知・調節手段を含む、請求項10記載の分離システム。
【請求項13】
分離システムを操作するためのコンピュータ制御及びデータ解析システムを含む、請求項1記載の分離システム。
【請求項14】
1種以上の所望の化学種を含有する液体を精製する方法であって、
液体を第1の分離ユニットにローディングし、そこから所望の化学種を含有する精製後の流体流出物を得るステップと、
流体流出物の1以上の環境特性パラメータを、オンラインで監視して所望の値に調節するステップと、
流出物を第2の分離ユニットに導き、そこから所望の化学種を含有する精製後の流体流出物を得るステップと、
所望の化学種を含有する精製後の流出物を回収するステップと
を含む方法。
【請求項15】
第2の分離ユニットからの流出物を、1以上の付加分離ユニットにかけるステップを含み、各付加分離ユニットへの流体の入口流れの1以上の環境特性パラメータを監視して所望の値に調節する、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−506127(P2013−506127A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530844(P2012−530844)
【出願日】平成22年9月20日(2010.9.20)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051003
【国際公開番号】WO2011/037522
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(598041463)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイション (43)