分離可能な蓋材
【課題】蓋材をプルタブから引き剥がすことで容易にプラスチック成形容器から剥離可能で、かつ、基材と透過層に分離可能な蓋材を提供すること。
【解決手段】フランジ付きプラスチック成形容器の開口部を覆い、成形容器周縁のフランジ部分と密封シールされる外周縁にプルタブが形成された蓋材において、外側から基材（１１）、分離層（１２）、透過層（１３）が順次積層された複合フィルムからなる蓋材であって、分離層はポリマーアロイ単層、又は多層構成のイージーピールシーラント層からなる。イージーピールシーラント層は、ベース層（１２ａ）とポリマーアロイ層（１２ｂ）からなる。透過層（１３）は多層構成からなり、分離層側に溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層（１３ａ）が配置され被着体側には容器と同系の樹脂層が配置されシーラント層（１３ｂ）を形成する。
【解決手段】フランジ付きプラスチック成形容器の開口部を覆い、成形容器周縁のフランジ部分と密封シールされる外周縁にプルタブが形成された蓋材において、外側から基材（１１）、分離層（１２）、透過層（１３）が順次積層された複合フィルムからなる蓋材であって、分離層はポリマーアロイ単層、又は多層構成のイージーピールシーラント層からなる。イージーピールシーラント層は、ベース層（１２ａ）とポリマーアロイ層（１２ｂ）からなる。透過層（１３）は多層構成からなり、分離層側に溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層（１３ａ）が配置され被着体側には容器と同系の樹脂層が配置されシーラント層（１３ｂ）を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、内容物の溶媒を飛散させて消臭・芳香機能を発現するような内容物容器の蓋材に関するものであり、特には、容器へのシール工程は一回で加工可能、使用時は分離箇所で保存用の基材をはじめとする上蓋層を分離し、容器側に飛散量調整用の通気孔を設けた飛散フィルムである透過層を残すことができる分離可能な蓋材に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、消臭剤、芳香剤、除湿剤、香料等の容器は、内容物をフランジ付きのプラスチック成形容器に収納し、その開口部をヒートシール性の不織布、有孔フィルム、あるいはヒートシール性ニスを処理した紙等から構成される通気性蓋材で覆うことにより、容器転倒時に内容物が落下することなく、かつ、内容物の溶媒あるいは芳香成分が該通気性蓋材を通過し得るようにしてある。
【０００３】
また、使用時まで前記通気性蓋材による通気性を封印するため、この通気性蓋材をさらにポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）フィルム／／アルミニウム箔／イージーピールシーラント、ＰＥＴフィルムに硅素酸化物またはアルミニウム酸化物の透明蒸着薄膜層を設けた蒸着フィルム（ＶＭＰＥＴ）／ヒートシール性ニス、延伸ポリエチレンテレフタレート（ＯＰＥＴ）フィルム／延伸ナイロン（ＯＮｙ）フィルム、ポリエチレン（ＰＥ）等の構成からなるバリア性の外蓋で覆うといったことが行われている。
【０００４】
しかしながらこの方法は、通気性蓋材とバリア性蓋材の２種類の蓋材をヒートシール等のシール方法を用いて容器に密封シールすることになり、シールを２工程で行わねばならず、加工費が高い、２種類の蓋材を使用することによる蓋材のコストも高い、等の問題があった。
【０００５】
最内層がＰＥ樹脂からなるフランジ付きプラスチック容器の蓋材に関する以上のような問題に着目して多くの研究開発が行われた（例えば、特許文献１参照）。
【０００６】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献１】特開２００２−１２８１２７号公報。
【０００７】
この発明は、一工程のシールで密封が可能で、転倒しても内容物がこぼれ出ない、通気層とバリア層に分離が可能な蓋材を提供している。しかしながら被着体である容器構成に制約があり、また特に、内容物の溶媒成分が水等の常温では飛散しにくい成分である場合、溶媒・香料飛散量にも制約がある。
【０００８】
この問題を解決すべく発明者らは、バリア層／分離層／シーラント層からなる積層構成において、シーラント層を貫通するハーフカット加工を施すことにより、バリア層剥離後容器に透過膜として残るシーラント層に内容物溶媒飛散量を調整する穴を設けることを可能にした。また、ハーフカット穴からの内容物浸出を防ぐために、分離層としてはイージーピールシーラント層を使用し、剥離時にはイージーピールシーラント層の凝集剥離になるような工夫をした（特許文献２参照）。
【０００９】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献２】特開２００３−２３７８１１号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１０】
しかしながら上記の発明は、イージーピールシーラント層の材質構成は特に指定されておらず、シーラントに対してイージーピールシーラント層を構成するベースポリマーの融点が低い場合、容器へのシール部においてイージーピール層が潰れて良好な剥離が発揮されない等の問題が発生する場合がある。また、シーラント層のハーフカット線を剥離きっかけとしているが、容器シール時にハーフカット部の再融着が発生することがあるため、この構成でこの剥離きっかけ手法を利用することは困難であることがわかった。
【００１１】
本発明は、フランジ付きプラスチック成形容器の開口部を覆い、成形容器周縁にフランジ部分と一工程のシールで密封が可能で、基材と透過層に分離可能な蓋材に関する以上のような問題に鑑みてなされたもので、蓋材をプルタブから引き剥がすことで容易にプラスチック容器から剥離可能で、かつ、基材と透過層に分離可能な蓋材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
本発明の請求項１の発明は、フランジ付きプラスチック成形容器の開口部を覆い、成形容器周縁のフランジ部分と密封シールされる、外周縁にプルタブが形成された蓋材において、外側から基材、分離層、透過層が順次積層された複合フィルムからなる蓋材であって、前記分離層はポリマーアロイ単層から成ることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００１３】
このように請求項１記載の発明によれば、蓋材が外側から基材、分離層、透過層が順次積層された複合フィルムからなり、分離層はポリマーアロイ単層から構成されているので、基材と透過層を容易に分離することが可能である。
【００１４】
また、請求項２の発明は、請求項１の発明において、前記ポリマーアロイは、ポリプロピレン（ＰＰ）樹脂を主要樹脂成分とし、少なくとも第２成分を含むブロックコポリマーＰＰ層であることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００１５】
このように請求項２記載の発明によれば、ポリマーアロイ単層は、ＰＰ樹脂を主要樹脂成分としているので、ポリエチレンと比べて熱影響を受け難く、成形シール部においてポリマーアロイ層が潰れて良好な剥離が発揮されない等の問題を回避できる。
また、第２成分として添加されている樹脂が溶融ポリエチレン押し出し層と近似した構造を持つため、隣接するポリエチレン層と疑似接着することが可能である。
【００１６】
また、請求項３の発明は、請求項１の発明において、前記分離層は、多層構成のイージーピールシーラント層から成ることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００１７】
このように請求項３記載の発明によれば、分離層が多層構成のイージーピールシーラント層から構成されているので、必要最低限のポリマーアロイ層以外はベース樹脂層で構成することが可能であるためコスト低減にも有用な構成である。
【００１８】
また、請求項４の発明は、請求項３の発明において、前記多層構成のイージーピールシーラント層は、ベース層とポリマーアロイ層からなり、ポリマーアロイ層は透過層側に配置され、ベース層とポリマーアロイ層の厚み比は９／１〜１／１、ベース層を構成する樹脂は前記ポリマーアロイ層を構成する第１成分と同じＰＰ樹脂であり、ベース層を構成する樹脂の融点はポリマーアロイ層を構成する樹脂の融点よりも高いことを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００１９】
このように請求項４記載の発明によれば、多層構成のイージーピールシーラント層は、ベース層とポリマーアロイ層からなり、ポリマーアロイ層は透過層側に配置され、ベース層とポリマーアロイ層の厚み比は９／１〜１／１、ベース層を構成する樹脂は前記ポリマーアロイを構成する第１成分と同じＰＰ樹脂であり、ベース層を構成する樹脂の融点はポリマーアロイ層を構成する樹脂の融点よりも高いので、成形容器へのシール部においてベース層がポリマーアロイ層に食い込むことを回避し，シール部においても安定した剥離状態を保つことができる。
【００２０】
また、請求項５の発明は、請求項１〜４のいずれか１項の発明において、前記透過層は多層構成からなり、分離層側に溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層が配置され、容器側となる被着体側には容器と同系の樹脂層が配置されていることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００２１】
このように請求項５記載の発明によれば、透過層は多層構成からなり、分離層側に溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層が配置され、容器側となる被着体側には容器と同系の樹脂層が配置されているので、蓋材が容器である被着体と密封シールした後、蓋材を剥がすと、透過層は被着体と溶着して分離層と分離する。
【００２２】
また、請求項６の発明は、請求項５の発明において、前記透過層の、溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層の内側に中間層が配置されたことを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００２３】
このように請求項６記載の発明によれば、前記透過層の溶融押し出し法により形成されたＰＥ樹脂層の内側に中間層を配置することができるので、例えば、ガスバリア性に優れた蓋材にすることができる。
【００２４】
また、請求項７の発明は、請求項１〜６のいずれか１項の発明において、前記蓋材は分離層と透過層の層間で剥がれ、その剥離強度は０．１〜０．５Ｎ／１５ｍｍであることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００２５】
このように請求項７記載の発明によれば、蓋材は分離層と透過層の層間で剥がれ、その剥離強度は０．１〜０．５Ｎ／１５ｍｍであるので、隣接する透過層にダメージを与えることなくバリア層を除去することができる。
【００２６】
また、請求項８の発明は、請求項１〜７のいずれか１項の発明において、前記プルタブ基部には、剥離きっかけとなる透過層のみを貫通するハーフカット線がシール外周とフランジ外周の間に設けられていることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００２７】
このように請求項８記載の発明によれば、プルタブ基部には、剥離きっかけとなる透過層のみを貫通するハーフカット線がシール外周とフランジ外周の間に設けられているので、透過層／容器間にから分離層／透過層間に剥離界面を移行することができる。
【００２８】
また、請求項９の発明は、請求項１〜８のいずれか１項の発明において、前記プルタブ基部の透過層の分離層側に、易剥離塗工層が設けられていることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００２９】
このように請求項９記載の発明によれば、プルタブ基部の透過層の分離層側に、易剥離塗工層が設けられているので、部分的に剥離強度を低減することができる。
【００３０】
また、請求項１０の発明は、請求項１〜９のいずれか１項の発明において、前記透過層
には通気孔が穿設されていることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００３１】
このように請求項１０記載の発明によれば、透過層には通気孔が穿設されているので、内容物溶媒飛散量を調節することができる。
【００３２】
また、請求項１１の発明は、請求項１〜１０のいずれか１項の発明において、前記基材の表面又は裏面に、印刷層が設けられていることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００３３】
このように請求項１１記載の発明によれば、基材の表面又は裏面に、印刷層が設けられているので、蓋材に綺麗なデザイン等を施すことができる。
【発明の効果】
【００３４】
このように本発明の分離可能な蓋材は、従来の二重蓋構成と比較してコストダウンが可能である。すなわち、蓋材が一枚でできるため生産コストの低下と、充填ラインの簡素化が可能である。
【００３５】
また、透過層に設けたスリット孔の大きさを変えることにより、開口面積を調整でき、内容物から薬効成分の揮発量や溶媒飛散量を調整できる。
【００３６】
さらに、容器とのシール部で非加熱部と比べて剥離強度を強くすることにより、流通時の内容物流出を防ぎ、凝集破壊痕跡が残るためのいたずら防止機能も付加することができる。またポリプロピレンベースの分離層を使用することにより、シールフランジ部における分離層の潰れを防ぎ、良好な剥離強度を保つことができる。
【００３７】
また、透過層へのハーフカット線をきっかけに剥離する際、透過層の中間層として延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム等を配することによりシール熱によるハーフカット線の再融着を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００３８】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
本発明の分離可能な蓋材は、例えば、図１〜図８に示すように、フランジ付きプラスチック成形容器（２０）の開口部を覆い、成形容器周縁のフランジ部分（２１）と密封シール（２２）される、外周縁にプルタブ（２）が形成された蓋材（１）であり、外側から基材（１１）、分離層（１２）、透過層（１３）が順次積層された複合フィルムからなる。そして、分離層（１２）はポリマーアロイ単層から成る。
【００３９】
基材（１１）は、蓋材の基材であって、延伸ポリエチレンテレフタレート（Ｏ−ＰＥＴ）フィルム単層、あるいはこれにＯ−ＰＥＴフィルムの片面に酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの無機化合物の薄膜を物理蒸着あるいは化学蒸着などの蒸着法により２０〜１００ｎｍ程度の厚さに設けた無機化合物蒸着ＰＥＴフィルム（ＧＬフィルム）やアルミニウム箔等のバリア層を積層することも可能である。
また、基材の裏面または表面に印刷層（１５）を形成させることもできる（図５参照）。印刷層を設けることにより、蓋材に綺麗な模様やデザインを施すことができ加飾が可能になる。
【００４０】
分離層（１２）は、基材（１１）と後記するシーラント層となる透過層（１３）を無理なく容易に剥離させる層であって、図１に示すように、ポリマーアロイ単層から成る。そしてポリマーアロイは、ＰＰ樹脂を主要樹脂成分とし、少なくとも第２成分を含むブロックコポリマーＰＰ層で、第２成分はポリエチレンまたはポリオレフィン系エラストマーである。ほかにポリブテン、エチレン−αオレフィン共重合体等を第３成分として含むこと
も可能である。
【００４１】
分離層（１２）を図２に示すように、多層構成のイージーピールシーラント層としても良い。その場合、多層構成のイージーピールシーラント層は、ベース層（１２ａ）とポリマーアロイ層（１２ｂ）とから成り、ポリマーアロイ層（１２ｂ）は透過層（１３）側に配置され、ベース層（１２ａ）とポリマーアロイ層（１２ｂ）の層厚比は９／１〜１／１、ベース層（１２ａ）を構成する樹脂は前記ポリマーアロイを構成する第１成分と同じＰＰ樹脂であり、ベース層（１２ａ）を構成する樹脂の融点はポリマーアロイ層（１２ｂ）を構成する樹脂の融点よりも高いことが必要である。
【００４２】
透過層（１３）は、成形容器（２０）のフランジ（２１）と熱融着する必要があると共に、成形容器に収納された内容物（５）の飛散量の調節が可能な層であるため、多層構成からなり、分離層（１２）側に溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層（１３ａ）が配置され、容器側となる被着体側には成形容器と同系の樹脂層が配置されてシーラント層（１３ｂ）を構成している（図３参照）。
【００４３】
透過層（１３）の、溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層（１３ａ）の内側に中間層（１３ｃ）が配置された構成としても良い（図４参照）。中間層（１３ｃ）としては、Ｏ−ＰＥＴフィルムやＯ−ＮＹフィルムのような延伸フィルムが好ましく使用できる。
【００４４】
プラスチック成形容器（２０）のフランジ（２１）に熱融着されている蓋材（１）を成形容器から剥がす際は、分離層（１２）と透過層（１３）の層間で剥がれ、その剥離強度は、Ｔ字剥離で０．１〜０．５Ｎ／１５ｍｍとなることが好ましい。
【００４５】
蓋材（１）をフランジ（２１）から剥がす際、剥離きっかけとなる蓋材のプルタブ（２）の基部に、透過層（１３）のみを貫通するハーフカット線（ｈ）をシール（２２）外周とフランジ（２１）外周の間に設けておくことにより、透過層／容器間から分離層／透過層間に剥離界面を移行することができる（図９、図１０参照）。
【００４６】
ハーフカット線（ｈ）は一本でも良いし、平行に複数本設けても良い。また、透過層に延伸フィルムが含まれない場合、剥離きっかけ部分に線シールを設けることで、透過層の樹脂厚みを部分的に低減することにより剥離界面を移行することができる。
【００４７】
プルタブ（２）基部の透過層（１３）の分離層側に、ポリアミド、硝化綿等を主成分とする易剥離塗工層（１４）を設けることにより、蓋材（１）をフランジ（２１）から剥がす際、部分的に剥離強度を低減することができ、剥離界面をさらに開き易くすることができる（図１１参照）。
【００４８】
透過層（１３）には、透過層のみを貫通するハーフカット加工をすることにより蓋材（１）を基材層と透過層に分離する際、内容物溶媒飛散量を調整するための通気孔（３）が開くような工夫がなされている（図８参照）。
孔開け手法としてはトムソン刃によるハーフカットや、ポーラス加工、熱針加工等がある。
【００４９】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。
【００５０】
本実施例では基材／分離層／透過層からなる構成の試料を作製した。全ての試料において、基材（１１）としては厚さ３８μｍのＰＥＴフィルムを使用し、基材（１１）と分離層（１２）はポリウレタン樹脂系の接着剤によるドライラミネートにより貼り合わせ、被
着体（２０）はＰＰ成形容器を使用した。
【実施例１】
【００５１】
厚さ２４μｍのＰＰ樹脂層をベース層（１２ａ）とし、厚さ６μｍのＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５の配合からなる樹脂層をポリマーアロイ層（１２ｂ）としたイージーピールシーラント層を分離層（１２）として準備した。
そして基材（１１）と、イージーピールシーラント層のベース層側とを対向させて貼り合わせた。
【００５２】
別に、中間層（１３ｃ）である厚さ１２μｍのＰＥＴフィルムとシーラント層（１３ｂ）である厚さ３０μｍのＰＰフィルムをドライラミネート法で貼り合わせた複合フィルムと、先に準備した基材と分離層を貼り合わせたフィルムのポリマーアロイ層（１２ｂ）面とを対向させ、溶融ポリエチレンで貼り合わせ（ＰＥ厚は１５μｍ）、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＰ（２４μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５）（６μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の実施例１の蓋材用フィルムを作製した（図６参照）。
【実施例２】
【００５３】
ベース層（１２ａ）として厚さ１５μｍのＰＰ樹脂層を使用し、ポリマーアロイ層（１２ｂ）として厚さ１５μｍのＰＰ／ＰＥ＝９０／１０の樹脂層を使用した以外は、実施例１と同様の方法により、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＰ（１５μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＰＥ＝９０／１０）（１５μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の実施例２の蓋材用フィルムを作製した（図６参照）。
【実施例３】
【００５４】
分離層（１２）をポリマーアロイ層（１２ｂ）単層とし、厚さ７０μｍのＰＰ／プロピレンゴム＝９５／５構成とした以外は、実施例１と同様にして、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）（ＰＰ／プロピレンゴム＝９５／５）（７０μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の実施例３の蓋材用フィルムを作製した（図７参照）。
【実施例４】
【００５５】
以下の実施例４から実施例８までは本発明の比較例として実施した。
【００５６】
ベース層（１２ａ）として、厚さ２９μｍのＰＰ樹脂層を使用し、ポリマーアロイ層（１２ｂ）として樹脂構成は実施例１と同じで厚さを１μｍに変化させた以外は、実施例１と同様にして、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＰ（２９μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５）（１μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の比較例となる実施例４の蓋材用フィルムを作製した。
【実施例５】
【００５７】
ポリマーアロイ層（１２ｂ）の樹脂配合割合を、ＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝４５／４５／１０とした以外は、実施例１と同様にして、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＰ（２４μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝４５／４５／１０）（６μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の比較例である実施例５の蓋材用フィルムを作製した。
【実施例６】
【００５８】
ベース層（１２ａ）として厚さ２４μｍのＰＥ樹脂に変更した以外は、実施例１と同様にして、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＥ（２４μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５）（６μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の比較例である実施例６の蓋材用フィルムを作製した。
【実施例７】
【００５９】
ポリマーアロイ層（１２ｂ）の樹脂とその配合割合を、ＰＰ／ＥＶＡ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５とした以外は、実施例１と同様にして、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＰ（２４μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＥＶＡ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５）（６μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の比較例である実施例７の蓋材用フィルムを作製した。
【実施例８】
【００６０】
透過層（１３）として、中間層を用いず厚さ７０μｍの共押し出しＰＰフィルムを用いた以外は、実施例１と同様にして、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＰ（２４μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５）（６μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／共押出ＰＰフィルム（７０μｍ）（１３ｂ））構成の比較例である実施例８の蓋材用フィルムを作製した。
【００６１】
こうして作製した実施例１〜実施例８の蓋材用フィルムを透過層（１３ｂ）が貫通するハーフカット線（ｈ）で剥離きっかけ用のプルタブ基部及び、短冊状の通気孔（３）を図６に示すように抜き加工した。そしてプラスチック成形容器に内容物であるゲル状芳香性消臭剤（ＰＨ；２）を適量充填し、各蓋材の透過層を接着面にしてヒートシールして、蓋材の剥離性と保存性を下記の方法により評価した。その結果を表１に示す。
【００６２】
剥離性の評価 ‥ 蓋材のプルタブ部分を上方に持ち上げて、分離層以上の層が適切な剥離強度で剥離可能で、プラスチック成形容器に通気孔の開いた透過層が残った試料を良好（○）と表記し、そうでないものを不良（×）と表記した。
【００６３】
保存性の評価 ‥ 内容物を充填した各試料を４０°Ｃの恒温槽に１か月間保存し、分離箇所の剥離発生の有無を確認し、剥離発生のないものを良好（○）と表記し、剥離発生したものを不良（×）と表記した。
【００６４】
【表１】
【図面の簡単な説明】
【００６５】
【図１】本発明の分離可能な蓋材の一実施例を示す、断面説明図である。
【図２】本発明の分離可能な蓋材の別の実施例を示す、断面説明図である。
【図３】本発明の分離可能な蓋材のさらに別の実施例を示す、断面説明図である。
【図４】本発明の分離可能な蓋材のさらに別の実施例を示す、断面説明図である。
【図５】本発明の分離可能な蓋材のさらに別の実施例を示す、断面説明図である。
【図６】本発明の分離可能な蓋材のさらに別の実施例を示す、断面説明図である。
【図７】本発明の分離可能な蓋材のさらに別の実施例を示す、断面説明図である。
【図８】本発明の分離可能な蓋材の一実施例を示す、平面説明図である。
【図９】本発明の分離可能な蓋材をプラスチック成形容器に熱融着させて密封シールした状態の模式説明図である。
【図１０】図９のプルタブから蓋材を剥がしている状態を示す、模式説明図である。
【図１１】本発明の分離可能な蓋材をプラスチック成形容器に熱融着させて密封シールした状態の別の模式説明図である。
【符号の説明】
【００６６】
１‥‥蓋材
２‥‥プルタブ
３‥‥通気孔
５‥‥内容物
１０‥‥複合フィルム
１１‥‥基材
１２‥‥分離層
１２ａ‥ベース層
１２ｂ‥ポリマーアロイ層
１３‥‥透過層
１３ａ‥ポリエチレン樹脂層
１３ｂ‥シーラント層
１３ｃ‥中間層
１４‥‥易剥離塗工層
１５‥‥印刷層
２０‥‥プラスチック成形容器
２１‥‥フランジ
２２‥‥密封シール
ｈ‥‥ハーフカット線
【技術分野】
【０００１】
本発明は、内容物の溶媒を飛散させて消臭・芳香機能を発現するような内容物容器の蓋材に関するものであり、特には、容器へのシール工程は一回で加工可能、使用時は分離箇所で保存用の基材をはじめとする上蓋層を分離し、容器側に飛散量調整用の通気孔を設けた飛散フィルムである透過層を残すことができる分離可能な蓋材に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、消臭剤、芳香剤、除湿剤、香料等の容器は、内容物をフランジ付きのプラスチック成形容器に収納し、その開口部をヒートシール性の不織布、有孔フィルム、あるいはヒートシール性ニスを処理した紙等から構成される通気性蓋材で覆うことにより、容器転倒時に内容物が落下することなく、かつ、内容物の溶媒あるいは芳香成分が該通気性蓋材を通過し得るようにしてある。
【０００３】
また、使用時まで前記通気性蓋材による通気性を封印するため、この通気性蓋材をさらにポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）フィルム／／アルミニウム箔／イージーピールシーラント、ＰＥＴフィルムに硅素酸化物またはアルミニウム酸化物の透明蒸着薄膜層を設けた蒸着フィルム（ＶＭＰＥＴ）／ヒートシール性ニス、延伸ポリエチレンテレフタレート（ＯＰＥＴ）フィルム／延伸ナイロン（ＯＮｙ）フィルム、ポリエチレン（ＰＥ）等の構成からなるバリア性の外蓋で覆うといったことが行われている。
【０００４】
しかしながらこの方法は、通気性蓋材とバリア性蓋材の２種類の蓋材をヒートシール等のシール方法を用いて容器に密封シールすることになり、シールを２工程で行わねばならず、加工費が高い、２種類の蓋材を使用することによる蓋材のコストも高い、等の問題があった。
【０００５】
最内層がＰＥ樹脂からなるフランジ付きプラスチック容器の蓋材に関する以上のような問題に着目して多くの研究開発が行われた（例えば、特許文献１参照）。
【０００６】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献１】特開２００２−１２８１２７号公報。
【０００７】
この発明は、一工程のシールで密封が可能で、転倒しても内容物がこぼれ出ない、通気層とバリア層に分離が可能な蓋材を提供している。しかしながら被着体である容器構成に制約があり、また特に、内容物の溶媒成分が水等の常温では飛散しにくい成分である場合、溶媒・香料飛散量にも制約がある。
【０００８】
この問題を解決すべく発明者らは、バリア層／分離層／シーラント層からなる積層構成において、シーラント層を貫通するハーフカット加工を施すことにより、バリア層剥離後容器に透過膜として残るシーラント層に内容物溶媒飛散量を調整する穴を設けることを可能にした。また、ハーフカット穴からの内容物浸出を防ぐために、分離層としてはイージーピールシーラント層を使用し、剥離時にはイージーピールシーラント層の凝集剥離になるような工夫をした（特許文献２参照）。
【０００９】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献２】特開２００３−２３７８１１号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１０】
しかしながら上記の発明は、イージーピールシーラント層の材質構成は特に指定されておらず、シーラントに対してイージーピールシーラント層を構成するベースポリマーの融点が低い場合、容器へのシール部においてイージーピール層が潰れて良好な剥離が発揮されない等の問題が発生する場合がある。また、シーラント層のハーフカット線を剥離きっかけとしているが、容器シール時にハーフカット部の再融着が発生することがあるため、この構成でこの剥離きっかけ手法を利用することは困難であることがわかった。
【００１１】
本発明は、フランジ付きプラスチック成形容器の開口部を覆い、成形容器周縁にフランジ部分と一工程のシールで密封が可能で、基材と透過層に分離可能な蓋材に関する以上のような問題に鑑みてなされたもので、蓋材をプルタブから引き剥がすことで容易にプラスチック容器から剥離可能で、かつ、基材と透過層に分離可能な蓋材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
本発明の請求項１の発明は、フランジ付きプラスチック成形容器の開口部を覆い、成形容器周縁のフランジ部分と密封シールされる、外周縁にプルタブが形成された蓋材において、外側から基材、分離層、透過層が順次積層された複合フィルムからなる蓋材であって、前記分離層はポリマーアロイ単層から成ることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００１３】
このように請求項１記載の発明によれば、蓋材が外側から基材、分離層、透過層が順次積層された複合フィルムからなり、分離層はポリマーアロイ単層から構成されているので、基材と透過層を容易に分離することが可能である。
【００１４】
また、請求項２の発明は、請求項１の発明において、前記ポリマーアロイは、ポリプロピレン（ＰＰ）樹脂を主要樹脂成分とし、少なくとも第２成分を含むブロックコポリマーＰＰ層であることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００１５】
このように請求項２記載の発明によれば、ポリマーアロイ単層は、ＰＰ樹脂を主要樹脂成分としているので、ポリエチレンと比べて熱影響を受け難く、成形シール部においてポリマーアロイ層が潰れて良好な剥離が発揮されない等の問題を回避できる。
また、第２成分として添加されている樹脂が溶融ポリエチレン押し出し層と近似した構造を持つため、隣接するポリエチレン層と疑似接着することが可能である。
【００１６】
また、請求項３の発明は、請求項１の発明において、前記分離層は、多層構成のイージーピールシーラント層から成ることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００１７】
このように請求項３記載の発明によれば、分離層が多層構成のイージーピールシーラント層から構成されているので、必要最低限のポリマーアロイ層以外はベース樹脂層で構成することが可能であるためコスト低減にも有用な構成である。
【００１８】
また、請求項４の発明は、請求項３の発明において、前記多層構成のイージーピールシーラント層は、ベース層とポリマーアロイ層からなり、ポリマーアロイ層は透過層側に配置され、ベース層とポリマーアロイ層の厚み比は９／１〜１／１、ベース層を構成する樹脂は前記ポリマーアロイ層を構成する第１成分と同じＰＰ樹脂であり、ベース層を構成する樹脂の融点はポリマーアロイ層を構成する樹脂の融点よりも高いことを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００１９】
このように請求項４記載の発明によれば、多層構成のイージーピールシーラント層は、ベース層とポリマーアロイ層からなり、ポリマーアロイ層は透過層側に配置され、ベース層とポリマーアロイ層の厚み比は９／１〜１／１、ベース層を構成する樹脂は前記ポリマーアロイを構成する第１成分と同じＰＰ樹脂であり、ベース層を構成する樹脂の融点はポリマーアロイ層を構成する樹脂の融点よりも高いので、成形容器へのシール部においてベース層がポリマーアロイ層に食い込むことを回避し，シール部においても安定した剥離状態を保つことができる。
【００２０】
また、請求項５の発明は、請求項１〜４のいずれか１項の発明において、前記透過層は多層構成からなり、分離層側に溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層が配置され、容器側となる被着体側には容器と同系の樹脂層が配置されていることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００２１】
このように請求項５記載の発明によれば、透過層は多層構成からなり、分離層側に溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層が配置され、容器側となる被着体側には容器と同系の樹脂層が配置されているので、蓋材が容器である被着体と密封シールした後、蓋材を剥がすと、透過層は被着体と溶着して分離層と分離する。
【００２２】
また、請求項６の発明は、請求項５の発明において、前記透過層の、溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層の内側に中間層が配置されたことを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００２３】
このように請求項６記載の発明によれば、前記透過層の溶融押し出し法により形成されたＰＥ樹脂層の内側に中間層を配置することができるので、例えば、ガスバリア性に優れた蓋材にすることができる。
【００２４】
また、請求項７の発明は、請求項１〜６のいずれか１項の発明において、前記蓋材は分離層と透過層の層間で剥がれ、その剥離強度は０．１〜０．５Ｎ／１５ｍｍであることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００２５】
このように請求項７記載の発明によれば、蓋材は分離層と透過層の層間で剥がれ、その剥離強度は０．１〜０．５Ｎ／１５ｍｍであるので、隣接する透過層にダメージを与えることなくバリア層を除去することができる。
【００２６】
また、請求項８の発明は、請求項１〜７のいずれか１項の発明において、前記プルタブ基部には、剥離きっかけとなる透過層のみを貫通するハーフカット線がシール外周とフランジ外周の間に設けられていることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００２７】
このように請求項８記載の発明によれば、プルタブ基部には、剥離きっかけとなる透過層のみを貫通するハーフカット線がシール外周とフランジ外周の間に設けられているので、透過層／容器間にから分離層／透過層間に剥離界面を移行することができる。
【００２８】
また、請求項９の発明は、請求項１〜８のいずれか１項の発明において、前記プルタブ基部の透過層の分離層側に、易剥離塗工層が設けられていることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００２９】
このように請求項９記載の発明によれば、プルタブ基部の透過層の分離層側に、易剥離塗工層が設けられているので、部分的に剥離強度を低減することができる。
【００３０】
また、請求項１０の発明は、請求項１〜９のいずれか１項の発明において、前記透過層
には通気孔が穿設されていることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００３１】
このように請求項１０記載の発明によれば、透過層には通気孔が穿設されているので、内容物溶媒飛散量を調節することができる。
【００３２】
また、請求項１１の発明は、請求項１〜１０のいずれか１項の発明において、前記基材の表面又は裏面に、印刷層が設けられていることを特徴とする、分離可能な蓋材である。
【００３３】
このように請求項１１記載の発明によれば、基材の表面又は裏面に、印刷層が設けられているので、蓋材に綺麗なデザイン等を施すことができる。
【発明の効果】
【００３４】
このように本発明の分離可能な蓋材は、従来の二重蓋構成と比較してコストダウンが可能である。すなわち、蓋材が一枚でできるため生産コストの低下と、充填ラインの簡素化が可能である。
【００３５】
また、透過層に設けたスリット孔の大きさを変えることにより、開口面積を調整でき、内容物から薬効成分の揮発量や溶媒飛散量を調整できる。
【００３６】
さらに、容器とのシール部で非加熱部と比べて剥離強度を強くすることにより、流通時の内容物流出を防ぎ、凝集破壊痕跡が残るためのいたずら防止機能も付加することができる。またポリプロピレンベースの分離層を使用することにより、シールフランジ部における分離層の潰れを防ぎ、良好な剥離強度を保つことができる。
【００３７】
また、透過層へのハーフカット線をきっかけに剥離する際、透過層の中間層として延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム等を配することによりシール熱によるハーフカット線の再融着を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００３８】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
本発明の分離可能な蓋材は、例えば、図１〜図８に示すように、フランジ付きプラスチック成形容器（２０）の開口部を覆い、成形容器周縁のフランジ部分（２１）と密封シール（２２）される、外周縁にプルタブ（２）が形成された蓋材（１）であり、外側から基材（１１）、分離層（１２）、透過層（１３）が順次積層された複合フィルムからなる。そして、分離層（１２）はポリマーアロイ単層から成る。
【００３９】
基材（１１）は、蓋材の基材であって、延伸ポリエチレンテレフタレート（Ｏ−ＰＥＴ）フィルム単層、あるいはこれにＯ−ＰＥＴフィルムの片面に酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの無機化合物の薄膜を物理蒸着あるいは化学蒸着などの蒸着法により２０〜１００ｎｍ程度の厚さに設けた無機化合物蒸着ＰＥＴフィルム（ＧＬフィルム）やアルミニウム箔等のバリア層を積層することも可能である。
また、基材の裏面または表面に印刷層（１５）を形成させることもできる（図５参照）。印刷層を設けることにより、蓋材に綺麗な模様やデザインを施すことができ加飾が可能になる。
【００４０】
分離層（１２）は、基材（１１）と後記するシーラント層となる透過層（１３）を無理なく容易に剥離させる層であって、図１に示すように、ポリマーアロイ単層から成る。そしてポリマーアロイは、ＰＰ樹脂を主要樹脂成分とし、少なくとも第２成分を含むブロックコポリマーＰＰ層で、第２成分はポリエチレンまたはポリオレフィン系エラストマーである。ほかにポリブテン、エチレン−αオレフィン共重合体等を第３成分として含むこと
も可能である。
【００４１】
分離層（１２）を図２に示すように、多層構成のイージーピールシーラント層としても良い。その場合、多層構成のイージーピールシーラント層は、ベース層（１２ａ）とポリマーアロイ層（１２ｂ）とから成り、ポリマーアロイ層（１２ｂ）は透過層（１３）側に配置され、ベース層（１２ａ）とポリマーアロイ層（１２ｂ）の層厚比は９／１〜１／１、ベース層（１２ａ）を構成する樹脂は前記ポリマーアロイを構成する第１成分と同じＰＰ樹脂であり、ベース層（１２ａ）を構成する樹脂の融点はポリマーアロイ層（１２ｂ）を構成する樹脂の融点よりも高いことが必要である。
【００４２】
透過層（１３）は、成形容器（２０）のフランジ（２１）と熱融着する必要があると共に、成形容器に収納された内容物（５）の飛散量の調節が可能な層であるため、多層構成からなり、分離層（１２）側に溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層（１３ａ）が配置され、容器側となる被着体側には成形容器と同系の樹脂層が配置されてシーラント層（１３ｂ）を構成している（図３参照）。
【００４３】
透過層（１３）の、溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層（１３ａ）の内側に中間層（１３ｃ）が配置された構成としても良い（図４参照）。中間層（１３ｃ）としては、Ｏ−ＰＥＴフィルムやＯ−ＮＹフィルムのような延伸フィルムが好ましく使用できる。
【００４４】
プラスチック成形容器（２０）のフランジ（２１）に熱融着されている蓋材（１）を成形容器から剥がす際は、分離層（１２）と透過層（１３）の層間で剥がれ、その剥離強度は、Ｔ字剥離で０．１〜０．５Ｎ／１５ｍｍとなることが好ましい。
【００４５】
蓋材（１）をフランジ（２１）から剥がす際、剥離きっかけとなる蓋材のプルタブ（２）の基部に、透過層（１３）のみを貫通するハーフカット線（ｈ）をシール（２２）外周とフランジ（２１）外周の間に設けておくことにより、透過層／容器間から分離層／透過層間に剥離界面を移行することができる（図９、図１０参照）。
【００４６】
ハーフカット線（ｈ）は一本でも良いし、平行に複数本設けても良い。また、透過層に延伸フィルムが含まれない場合、剥離きっかけ部分に線シールを設けることで、透過層の樹脂厚みを部分的に低減することにより剥離界面を移行することができる。
【００４７】
プルタブ（２）基部の透過層（１３）の分離層側に、ポリアミド、硝化綿等を主成分とする易剥離塗工層（１４）を設けることにより、蓋材（１）をフランジ（２１）から剥がす際、部分的に剥離強度を低減することができ、剥離界面をさらに開き易くすることができる（図１１参照）。
【００４８】
透過層（１３）には、透過層のみを貫通するハーフカット加工をすることにより蓋材（１）を基材層と透過層に分離する際、内容物溶媒飛散量を調整するための通気孔（３）が開くような工夫がなされている（図８参照）。
孔開け手法としてはトムソン刃によるハーフカットや、ポーラス加工、熱針加工等がある。
【００４９】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。
【００５０】
本実施例では基材／分離層／透過層からなる構成の試料を作製した。全ての試料において、基材（１１）としては厚さ３８μｍのＰＥＴフィルムを使用し、基材（１１）と分離層（１２）はポリウレタン樹脂系の接着剤によるドライラミネートにより貼り合わせ、被
着体（２０）はＰＰ成形容器を使用した。
【実施例１】
【００５１】
厚さ２４μｍのＰＰ樹脂層をベース層（１２ａ）とし、厚さ６μｍのＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５の配合からなる樹脂層をポリマーアロイ層（１２ｂ）としたイージーピールシーラント層を分離層（１２）として準備した。
そして基材（１１）と、イージーピールシーラント層のベース層側とを対向させて貼り合わせた。
【００５２】
別に、中間層（１３ｃ）である厚さ１２μｍのＰＥＴフィルムとシーラント層（１３ｂ）である厚さ３０μｍのＰＰフィルムをドライラミネート法で貼り合わせた複合フィルムと、先に準備した基材と分離層を貼り合わせたフィルムのポリマーアロイ層（１２ｂ）面とを対向させ、溶融ポリエチレンで貼り合わせ（ＰＥ厚は１５μｍ）、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＰ（２４μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５）（６μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の実施例１の蓋材用フィルムを作製した（図６参照）。
【実施例２】
【００５３】
ベース層（１２ａ）として厚さ１５μｍのＰＰ樹脂層を使用し、ポリマーアロイ層（１２ｂ）として厚さ１５μｍのＰＰ／ＰＥ＝９０／１０の樹脂層を使用した以外は、実施例１と同様の方法により、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＰ（１５μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＰＥ＝９０／１０）（１５μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の実施例２の蓋材用フィルムを作製した（図６参照）。
【実施例３】
【００５４】
分離層（１２）をポリマーアロイ層（１２ｂ）単層とし、厚さ７０μｍのＰＰ／プロピレンゴム＝９５／５構成とした以外は、実施例１と同様にして、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）（ＰＰ／プロピレンゴム＝９５／５）（７０μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の実施例３の蓋材用フィルムを作製した（図７参照）。
【実施例４】
【００５５】
以下の実施例４から実施例８までは本発明の比較例として実施した。
【００５６】
ベース層（１２ａ）として、厚さ２９μｍのＰＰ樹脂層を使用し、ポリマーアロイ層（１２ｂ）として樹脂構成は実施例１と同じで厚さを１μｍに変化させた以外は、実施例１と同様にして、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＰ（２９μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５）（１μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の比較例となる実施例４の蓋材用フィルムを作製した。
【実施例５】
【００５７】
ポリマーアロイ層（１２ｂ）の樹脂配合割合を、ＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝４５／４５／１０とした以外は、実施例１と同様にして、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＰ（２４μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝４５／４５／１０）（６μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の比較例である実施例５の蓋材用フィルムを作製した。
【実施例６】
【００５８】
ベース層（１２ａ）として厚さ２４μｍのＰＥ樹脂に変更した以外は、実施例１と同様にして、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＥ（２４μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５）（６μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の比較例である実施例６の蓋材用フィルムを作製した。
【実施例７】
【００５９】
ポリマーアロイ層（１２ｂ）の樹脂とその配合割合を、ＰＰ／ＥＶＡ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５とした以外は、実施例１と同様にして、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＰ（２４μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＥＶＡ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５）（６μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／ＰＥＴフィルム（１２μｍ）（１３ｃ）／／ＰＰフィルム（３０μｍ）（１３ｂ））構成の比較例である実施例７の蓋材用フィルムを作製した。
【実施例８】
【００６０】
透過層（１３）として、中間層を用いず厚さ７０μｍの共押し出しＰＰフィルムを用いた以外は、実施例１と同様にして、ＰＥＴフィルム（３８μｍ）（１１）／ＰＰ（２４μｍ）（１２ａ）／（ＰＰ／ＰＥ／エチレン−プロピレンゴム＝７０／２５／５）（６μｍ）（１２ｂ）／（ＰＥ（１５μｍ）（１３ａ）／共押出ＰＰフィルム（７０μｍ）（１３ｂ））構成の比較例である実施例８の蓋材用フィルムを作製した。
【００６１】
こうして作製した実施例１〜実施例８の蓋材用フィルムを透過層（１３ｂ）が貫通するハーフカット線（ｈ）で剥離きっかけ用のプルタブ基部及び、短冊状の通気孔（３）を図６に示すように抜き加工した。そしてプラスチック成形容器に内容物であるゲル状芳香性消臭剤（ＰＨ；２）を適量充填し、各蓋材の透過層を接着面にしてヒートシールして、蓋材の剥離性と保存性を下記の方法により評価した。その結果を表１に示す。
【００６２】
剥離性の評価 ‥ 蓋材のプルタブ部分を上方に持ち上げて、分離層以上の層が適切な剥離強度で剥離可能で、プラスチック成形容器に通気孔の開いた透過層が残った試料を良好（○）と表記し、そうでないものを不良（×）と表記した。
【００６３】
保存性の評価 ‥ 内容物を充填した各試料を４０°Ｃの恒温槽に１か月間保存し、分離箇所の剥離発生の有無を確認し、剥離発生のないものを良好（○）と表記し、剥離発生したものを不良（×）と表記した。
【００６４】
【表１】
【図面の簡単な説明】
【００６５】
【図１】本発明の分離可能な蓋材の一実施例を示す、断面説明図である。
【図２】本発明の分離可能な蓋材の別の実施例を示す、断面説明図である。
【図３】本発明の分離可能な蓋材のさらに別の実施例を示す、断面説明図である。
【図４】本発明の分離可能な蓋材のさらに別の実施例を示す、断面説明図である。
【図５】本発明の分離可能な蓋材のさらに別の実施例を示す、断面説明図である。
【図６】本発明の分離可能な蓋材のさらに別の実施例を示す、断面説明図である。
【図７】本発明の分離可能な蓋材のさらに別の実施例を示す、断面説明図である。
【図８】本発明の分離可能な蓋材の一実施例を示す、平面説明図である。
【図９】本発明の分離可能な蓋材をプラスチック成形容器に熱融着させて密封シールした状態の模式説明図である。
【図１０】図９のプルタブから蓋材を剥がしている状態を示す、模式説明図である。
【図１１】本発明の分離可能な蓋材をプラスチック成形容器に熱融着させて密封シールした状態の別の模式説明図である。
【符号の説明】
【００６６】
１‥‥蓋材
２‥‥プルタブ
３‥‥通気孔
５‥‥内容物
１０‥‥複合フィルム
１１‥‥基材
１２‥‥分離層
１２ａ‥ベース層
１２ｂ‥ポリマーアロイ層
１３‥‥透過層
１３ａ‥ポリエチレン樹脂層
１３ｂ‥シーラント層
１３ｃ‥中間層
１４‥‥易剥離塗工層
１５‥‥印刷層
２０‥‥プラスチック成形容器
２１‥‥フランジ
２２‥‥密封シール
ｈ‥‥ハーフカット線
【特許請求の範囲】
【請求項１】
フランジ付きプラスチック成形容器の開口部を覆い、成形容器周縁のフランジ部分と密封シールされる、外周縁にプルタブが形成された蓋材において、
外側から基材、分離層、透過層が順次積層された複合フィルムからなる蓋材であって、前記分離層はポリマーアロイ単層から成ることを特徴とする、分離可能な蓋材。
【請求項２】
前記単層構成のポリマーアロイは、ポリプロピレン樹脂を主要樹脂成分とし、少なくとも第２成分を含むブロックコポリマーポリプロピレン層であることを特徴とする、請求項１記載の分離可能な蓋材。
【請求項３】
前記分離層は、多層構成のイージーピールシーラント層から成ることを特徴とする、請求項１記載の分離可能な蓋材。
【請求項４】
前記多層構成のイージーピールシーラント層は、ベース層とポリマーアロイ層とからなり、ポリマーアロイ層は透過層側に配置され、ベース層とポリマーアロイ層の層厚比は９／１〜１／１、ベース層を構成する樹脂は前記ポリマーアロイを構成する第１成分と同じポリプロピレン樹脂であり、ベース層を構成する樹脂の融点はポリマーアロイ層を構成する樹脂の融点よりも高いことを特徴とする、請求項３記載の分離可能な蓋材。
【請求項５】
前記透過層は、多層構成からなり、分離層側に溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層が配置され、容器側となる被着体側には容器と同系の樹脂層が配置されてシーラント層を構成していることを特徴とする、請求項１〜４のいずれか１項記載の分離可能な蓋材。
【請求項６】
前記透過層の、溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層の内側に中間層が配置されていることを特徴とする、請求項５記載の分離可能な蓋材。
【請求項７】
前記蓋材は分離層と透過層の層間で剥がれ、その剥離強度は０．１〜０．５Ｎ／１５ｍｍであることを特徴とする、請求項１〜６のいずれか１項記載の分離可能な蓋材。
【請求項８】
前記プルタブ基部には、剥離きっかけとなる透過層のみを貫通するハーフカット線がシール外周とフランジ外周の間に設けられていることを特徴とする、請求項１〜７のいずれか１項記載の分離可能な蓋材。
【請求項９】
前記プルタブ基部の透過層の分離層側に、易剥離塗工層が設けられていることを特徴とする、請求項１〜８のいずれか１項記載の分離可能な蓋材。
【請求項１０】
前記透過層には、通気孔が穿設されていることを特徴とする、請求項１〜９のいずれか１項記載の分離可能な蓋材。
【請求項１１】
前記基材の表面又は裏面に、印刷層が設けられていることを特徴とする、請求項１〜１０のいずれか１項記載の分離可能な蓋材。
【請求項１】
フランジ付きプラスチック成形容器の開口部を覆い、成形容器周縁のフランジ部分と密封シールされる、外周縁にプルタブが形成された蓋材において、
外側から基材、分離層、透過層が順次積層された複合フィルムからなる蓋材であって、前記分離層はポリマーアロイ単層から成ることを特徴とする、分離可能な蓋材。
【請求項２】
前記単層構成のポリマーアロイは、ポリプロピレン樹脂を主要樹脂成分とし、少なくとも第２成分を含むブロックコポリマーポリプロピレン層であることを特徴とする、請求項１記載の分離可能な蓋材。
【請求項３】
前記分離層は、多層構成のイージーピールシーラント層から成ることを特徴とする、請求項１記載の分離可能な蓋材。
【請求項４】
前記多層構成のイージーピールシーラント層は、ベース層とポリマーアロイ層とからなり、ポリマーアロイ層は透過層側に配置され、ベース層とポリマーアロイ層の層厚比は９／１〜１／１、ベース層を構成する樹脂は前記ポリマーアロイを構成する第１成分と同じポリプロピレン樹脂であり、ベース層を構成する樹脂の融点はポリマーアロイ層を構成する樹脂の融点よりも高いことを特徴とする、請求項３記載の分離可能な蓋材。
【請求項５】
前記透過層は、多層構成からなり、分離層側に溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層が配置され、容器側となる被着体側には容器と同系の樹脂層が配置されてシーラント層を構成していることを特徴とする、請求項１〜４のいずれか１項記載の分離可能な蓋材。
【請求項６】
前記透過層の、溶融押し出し法により形成されたポリエチレン樹脂層の内側に中間層が配置されていることを特徴とする、請求項５記載の分離可能な蓋材。
【請求項７】
前記蓋材は分離層と透過層の層間で剥がれ、その剥離強度は０．１〜０．５Ｎ／１５ｍｍであることを特徴とする、請求項１〜６のいずれか１項記載の分離可能な蓋材。
【請求項８】
前記プルタブ基部には、剥離きっかけとなる透過層のみを貫通するハーフカット線がシール外周とフランジ外周の間に設けられていることを特徴とする、請求項１〜７のいずれか１項記載の分離可能な蓋材。
【請求項９】
前記プルタブ基部の透過層の分離層側に、易剥離塗工層が設けられていることを特徴とする、請求項１〜８のいずれか１項記載の分離可能な蓋材。
【請求項１０】
前記透過層には、通気孔が穿設されていることを特徴とする、請求項１〜９のいずれか１項記載の分離可能な蓋材。
【請求項１１】
前記基材の表面又は裏面に、印刷層が設けられていることを特徴とする、請求項１〜１０のいずれか１項記載の分離可能な蓋材。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【公開番号】特開２００６−１３１２３３（Ｐ２００６−１３１２３３Ａ）
【公開日】平成１８年５月２５日（２００６．５．２５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００４−３１８９０９（Ｐ２００４−３１８９０９）
【出願日】平成１６年１１月２日（２００４．１１．２）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年５月２５日（２００６．５．２５）
【国際特許分類】
【出願日】平成１６年１１月２日（２００４．１１．２）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
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