説明

分離型液体調味料の製造方法

【課題】油相部と水性調味料が分離しているタイプの分離型液体調味料において、柑橘原料だけで柑橘のさっぱりとした香味が充分に感じられる分離型液体調味料を得る。
【解決手段】乾燥柑橘果皮を食用油脂に浸漬し柑橘の香味を食用油脂中に抽出し、柑橘果皮を分離除去することなく、柑橘果皮を含んだまま柑橘香味油を水性調味料に添加するか、柑橘果皮を柑橘香味油から分離し、分離して得られた抽出後の柑橘果皮を、柑橘果皮を分離除去した柑橘香味油とともに水性調味料に添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘のさっぱりした香味が充分に感じられる分離型液体調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食用油脂を主成分とする油相部と、それ以外の液体調味料である水相部(以下、水性調味料という)とが分離したタイプの分離型液体調味料において、原料の一部に透明レモン果汁を含むことを特徴とする分離型ドレッシング(例えば、特許文献1参照)、ゆず果皮粉砕物を配合した分離タイプの酸性液体調味料(例えば、特許文献2参照)などが知られている。これらの分離型液体調味料は、柑橘の風味が食用油脂にマスキングされ、本来のすっきりとした香りが感じられにくくなるという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、レモン果汁と食用油脂を含むドレッシングなどの分離型液体調味料を製造するにあたり、特定のハーブを添加する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この方法では特定のハーブを添加しなければならず、また、ハーブの添加量によっては、食用油脂および柑橘の風味が抑えられて、液体調味料全体の風味バランスが崩れてしまうという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭60−1864号公報
【特許文献2】特開2001−299263号公報
【特許文献3】特許第2950745号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、油相部と水性調味料が分離しているタイプの分離型液体調味料において、柑橘原料だけで、柑橘のさっぱりとした香味が充分に感じられる分離型液体調味料を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、食用油脂を用いて、乾燥柑橘果皮から柑橘の香味を抽出することにより柑橘香味油を調製し、香味抽出後の柑橘果皮を配合した水性調味料に該柑橘香味油を添加することにより、柑橘のさっぱりとした香味が充分に感じられる分離型液体調味料が得られることを知った。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいて完成したものであって、以下の通りである。
(1)油相部と水相部が分離しているタイプの分離型液体調味料の製造において、食用油脂を用いて乾燥柑橘果皮から柑橘の香味を抽出して柑橘香味油を調製し、抽出後の柑橘果皮とともに該柑橘香味油を水相部の液体調味料に添加することを特徴とする分離型液体調味料の製造方法。
(2)乾燥柑橘果皮が、レモンの乾燥果皮である前記(1)に記載の分離型液体調味料の製造方法。
(3)食用油脂が、ゴマ油である前記(1)に記載の分離型液体調味料の製造方法。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の製造方法で製造した分離型液体調味料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油相部と水相部が分離しているタイプの分離型液体調味料において、柑橘原料だけで柑橘のさっぱりとした香味が充分に感じられる、分離型液体調味料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いる乾燥柑橘果皮としては、例えば、ゆず、かぼす、すだち、レモンなどの柑橘類の果皮を水分約15%以下に乾燥したものであり、乾燥した後にフードカッター、ダイサー、カッターミキサーなどの粉砕機で粉砕したものが好ましい。また、これらの粉砕物の大きさは、0.1〜5mmが好ましく、0.5〜2mmがさらに好ましい。粉砕物の大きさが0.1mmより小さいと調味料の製造時に粉砕物が飛散してしまい取り扱いにくく、5mmより大きいと香味の抽出効率が悪くなり、また分離型液体調味料の食感も悪くなる。
【0010】
本発明で用いる食用油脂としては、一般に食用として使用される油脂であればよいが、柑橘風味の香味油を調製するには、常温で液体の植物性油脂が好ましい。例えば、大豆油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、菜種油、綿実油、オリーブオイル、パーム油、ゴマ油、米油などが挙げられる。また、柑橘のさっぱりした香味を引き立たせるには、食用油脂自体の香味が強くないものがよい。例えば、ゴマ油の場合は、ゴマの焙煎強度の低い淡口のゴマ油が好ましい。
【0011】
本発明の分離型液体調味料に使用する水性調味料は、醤油成分、味噌成分、甘味成分(砂糖、みりん、水飴など)、酸味成分(食酢、ゆず、レモンなどの香酸柑橘)、酒類成分、果汁成分、香辛料成分、および、野菜成分(大根、ニンジン、にんにく、たまねぎなど)を適宜組合わせ、必要によりさらに増粘剤(澱粉、増粘多糖類など)、化学調味料(グルタミン酸ソーダ、イノシン酸ソーダなど)、香料などで構成される。
【0012】
本発明の分離型液体調味料を調製するには、まず、粉砕した乾燥柑橘果皮を食用油脂に浸漬し、柑橘の成分を食用油脂により抽出する。食用油脂に添加する乾燥柑橘果皮の割合は、食用油脂100重量部に対して1〜20重量部であることが好ましい、1重量部より少ないと柑橘の香りを感じるほどの効果がなく、20重量部を超える量を添加しても柑橘の香りを増やす効果は少なく、また、食感も悪くなる。
【0013】
浸漬する時間は、1〜120分が好ましく、15〜60分がより好ましい。ここで、抽出する際の品温は重要で、浸漬中の品温は10〜90℃、より好ましくは20〜60℃である。10℃より低いと柑橘のすっきりとした香味が充分に食用油脂に抽出されず、90℃より高いと食用油脂の焙煎香が強くなり、柑橘の香味を消してしまうので良くない。なお、抽出の際は、抽出効率を高めるために、乾燥柑橘果皮を添加した食用油脂をプロペラ式撹拌装置などで常法により撹拌してもよい。
【0014】
上記の抽出操作により、柑橘果皮を含む柑橘香味油が得られる。この柑橘果皮を含む柑橘香味油を、柑橘果皮を分離除去することなく、そのまま水性調味料に添加することにより本発明の分離型液体調味料が得られる。その際、柑橘香味油に含まれる柑橘果皮は、水相部に移行する。また、濾過などの固液分離操作により、柑橘果皮を含む柑橘香味油から柑橘果皮を分離除去する場合は、分離して得られた抽出後の柑橘果皮を、柑橘果皮を分離除去した柑橘香味油とともに水性調味料に添加して本発明の分離型液体調味料が得られる。
【0015】
油相部と水相部の配合比は、重量比で、油相部:水相部が1:99〜20:80とすることが好ましい。上記範囲を超えて、油相部の比率を多くしても柑橘香味油の香り立ちの効果はあまり期待することはできない。反対に、油相部の比率を少なくするときは、油相部が水相部と混じりあって柑橘の香り立ちが弱くなるので好ましくない。
【0016】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0017】
(柑橘香味油の調製)
乾燥レモン果皮粉末5重量部をゴマ油30重量部に浸漬し、常温で1時間撹拌してレモンの香味を抽出して、レモン果皮を含んだ柑橘香味油を調製した。また、これとは別に、同様にして得られたレモン果皮を含んだ柑橘香味油から、抽出後のレモン果皮をろ紙濾過により分離して、レモン果皮を分離除去した柑橘香味油と抽出後のレモン果皮を調製した。なお、使用した乾燥レモン果皮粉末は、0.5〜1mmの大きさの粉末を使用した。
【0018】
(水性調味料の調製)
濃口醤油160重量部、果糖ぶどう糖液糖100重量部、ショ糖50重量部、醸造酢15重量部、レモン果汁20重量部、食塩30重量部、たまねぎみじん切り110重量部、おろしにんにく5重量部、おろししょうが5重量部、唐辛子粉末1重量部、グルタミン酸ナトリウム5重量部、キサンタンガム1重量部、および、水470重量部を混合溶解し水性調味料を調製した。
【0019】
(本発明の分離型液体調味料の調製)
上記水性調味料970gを85℃になるまで加熱したのち40℃以下に冷却してから、上記柑橘香味油の調製で得られたレモン果皮を含んだ柑橘香味油35gを添加して、本発明の分離型液体調味料を調製した。
【0020】
(比較例1の分離型液体調味料の調製)
上記水性調味料970gを85℃になるまで加熱したのち40℃以下に冷却してから、上記柑橘香味油の調製で得られたレモン果皮を分離除去した柑橘香味油30gを添加して、比較例1の分離型液体調味料を調製した。
【0021】
(比較例2の分離型液体調味料の調製)
上記柑橘香味油の調製に使用したものと同じ乾燥レモン果皮粉末5gを上記水性調味料970gに添加混合し、これを85℃になるまで加熱したのち40℃以下に冷却してから、上記柑橘香味油の調製に使用したものと同じゴマ油30gを添加して、比較例2の分離型液体調味料を調製した。
【0022】
(比較例3の分離型液体調味料の調製)
上記柑橘香味油の調製に使用したものと同じ乾燥レモン果皮粉末5gを上記水性調味料970gに添加混合し、これを85℃になるまで加熱したのち40℃以下に冷却してから、上記柑橘香味油の調製で得られたレモン果皮を分離除去した柑橘香味油30gを添加して、比較例3の分離型液体調味料を調製した。
表1に本発明および比較例の配合の違いを示す。
【0023】
(表1)

【0024】
(官能評価)
上記比較例1、2および3の分離型液体調味料に対して、上記本発明の分離型液体調味料をそれぞれ2点比較法にて官能評価を行った。官能評価は、識別能力を有するパネル19人により実施した。分離型液体調味料をよく混合してから20gずつ受け皿に注ぎ、ホットプレートで焼いた厚さ3mm程度の牛ばら肉をこの分離型液体調味料につけて食したときのレモンの風味、および、さっぱり感について官能評価を行った。ここで、さっぱり感とは、牛肉由来の脂っこさが弱まることを意味する。
その結果を表2に示す。表中の数値は、比較例に比べて本発明のレモン風味、または、さっぱり感を強いと感じた人数である。
【0025】
(表2)

【0026】
比較例1は、柑橘香味油からレモン果皮を取り除いているため、本発明に比べてレモン風味、さっぱり感ともに弱く感じられる。また、比較例2は、原材料として、水性調味料、ゴマ油、および、乾燥レモン果皮を本発明と同量使用しているが、乾燥レモン果皮をゴマ油に混合せずに、水性調味料に直接添加している点で異なり、そのため本発明に比べて、レモン風味、さっぱり感ともに弱く感じられる。
【0027】
一方、比較例3は、乾燥レモン果皮を添加した水性調味料に、レモン果皮を分離除去した柑橘香味油を添加して調製した分離型液体調味料である。ゴマ油に浸漬除去した乾燥レモン果皮と水性調味料に新たに添加した乾燥レモン果皮を必要とするため、原料としての乾燥レモン果皮は本発明の2倍使用しているが、レモン風味、および、さっぱり感は本発明と有意差が無い。すなわち、本発明によれば、比較例3の半分の量の乾燥レモン果皮で、比較例3と同じ程度のレモン風味、および、さっぱり感のある分離型液体調味料が得られることがわかる。
【実施例2】
【0028】
(柑橘香味油調製時の最適品温)
実施例1の柑橘香味油の調製において、浸漬中のゴマ油の品温を20℃、60℃、90℃、120℃にして、レモン果皮を含んだ柑橘香味油をそれぞれ調製し、調製したレモン果皮を含んだ柑橘香味油35gを実施例1の水性調味料970gに添加して、分離型液体調味料をそれぞれ調製した。
上記、柑橘香味油調製時の品温が異なる分離型液体調味料について、実施例1と同様に、焼肉に分離型液体調味料をつけて食したときのレモンの風味、および、さっぱり感について官能評価を行った。結果を表3に示した。
【0029】
(表3)

【0030】
表3に示したように、柑橘香味油調製時の品温が90℃を超えるとゴマ油の焙煎香が強くなるために、レモン風味を消してしまう。そのため、柑橘香味油調製時のゴマ油の温度は、90℃以下である必要があることがわかる。
【実施例3】
【0031】
(生柑橘果皮で調製した柑橘香味油)
実施例1の柑橘香味油の調製において、乾燥レモン果皮を水分約80%の生レモン果皮に替えて柑橘香味油を調製した。柑橘香味油として官能評価したところ、生レモン果皮を使用した柑橘香味油は、レモン風味がほとんどしなかった。このことから、柑橘香味油の原料としての柑橘果皮は、乾燥柑橘果皮を使用する必要があることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相部と水相部が分離しているタイプの分離型液体調味料の製造において、食用油脂を用いて乾燥柑橘果皮から柑橘の香味を抽出して柑橘香味油を調製し、抽出後の柑橘果皮とともに該柑橘香味油を水相部の液体調味料に添加することを特徴とする分離型液体調味料の製造方法。
【請求項2】
乾燥柑橘果皮が、レモンの乾燥果皮である請求項1に記載の分離型液体調味料の製造方法。
【請求項3】
食用油脂が、ゴマ油である請求項1に記載の分離型液体調味料の製造方法。
【請求項4】
上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法で製造した分離型液体調味料。