説明

分離媒体及びその製造方法

本発明は分離媒体を製造する方法に関し、当該方法では、実質的に球状のポリマービーズのスラリーを天然高分子水溶液中で調製し、このスラリーを乳化剤の存在下で有機溶媒に接触させ、ビーズを凝集させる。好ましい実施形態では、天然高分子はアガロースである。本発明には、1種以上の凝集体からなる分離媒体も包含され、各凝集体は多孔質ゲルによって集合した複数の実質的に球状の多孔質ポリマービーズからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロマトグラフィーや濾過に有用な分離媒体の製造方法に関する。本発明は、新規分離媒体だけでなく、液体から化合物を分離するための分離媒体の使用を包含する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィー媒体や濾過媒体のような分離媒体は、目的によってはその特性が不十分であることが多々ある。この分野の重要な因子は、媒体の物質移動特性、クロマトグラフィーカラム内で使用する際の媒体の流動特性、膜として使用する際の流動特性、煩雑で信頼性に劣る製造方法などである。この分野での改善を図るための開発が継続して行われている。
【0003】
ZhaoとWhistlerはテンプン顆粒のある特性を発見した(Zhao,J.及びWhistler,L.,“Spherical Aggregates of Starch Granules as Flavor Carriers”,Food Technol. Chicago (1994),48(7),104−5)。具体的には、小さな不規則形状のテンプン顆粒をタンパク質や多糖類のような少量の結合剤と共に噴霧乾燥すると結合して潜在的に有用な興味深いポップコーン形構造をなすことが記載されている。このポップコーン形構造は、顆粒の多孔質構造からの徐放性を示すので、香料のような様々な食品添加物の担体として有用である。しかし、噴霧乾燥はアガロースゲルのような熱感受性の高い材料には適さないことが当技術分野で周知である。アガロースゲルは乾燥すると大きく変形し、粒子が潰れて縮んだ構造となる。このような収縮した構造を元の形状に膨潤させることは不可能である。
【0004】
国際公開第02/47665号(President and Fellows of Harvard College)は、活性剤のカプセル化の方法及び組成物に関する。具体的には、コロイドソームと呼ばれる選択的透過性をもつ弾性微視的構造体が開示されている。かかるコロイドソームは、液滴の表面を粒子で被覆し、液滴表面の粒子を安定化することによって調製される。コロイドソームは実質的に球状の粒子からなるシェルを有し、各粒子は隣接粒子と結合している。シェルは活性剤を収容する大きさの内室を画成する。
【0005】
Reederらは、コロイドを凝集させて球状粒子の階層的構造を形成する簡単で安価な方法を開示している(Reeder,David H.,Clausen, Andrew M.,Annen, Michael J.,Carr, Peter W.,Flickinger, Michael C.及びMcCormick, Alon V.,Dep. Chem. Eng., Univ. Minnesota(米国ミネソタ州ミネアポリス),“An approach to hierarchically structured porous zirconia aggregates”,Journal of Colloid and Interface Science,(1996),184(1),328−330)。2つの粒度スケールの自己相似形の粒子で、二分散型サイズ分布をもつ規則的な網状孔構造によって透過性をもつ粒子を集合させるため、逐次凝集工程が用いられる。ミクロ孔及びマクロ孔の網状組織及び構造の機械的健全性は、焼結条件を変えることによって制御できる。最終的に得られる粒子には、バインダーは全く残らない。しかし、この凝集法の短所は、逐次工程が必要とされ、凝集体の調製に時間とコストがかかることである。
【0006】
また、米国特許第5652292号には、懸濁重合ポリマー粒子からなる水性吸収剤が開示されており、具体的には、使用時又は加工時の摩耗を最小限に抑えるためポリマービーズを互いに結合させてクラスターを作る方法が開示されている。粒子は水溶液を素早く吸収するための開放構造を特徴とし、その製造方法は、不活性有機相中でモノマーの微細液滴が形成されるようにモノマー混合物を高剪断撹拌下で連続相に懸濁させることからなる。クラスターの合体を防ぐために懸濁剤が使用される。水相に実質的に可溶性の第一のポリエチレン性不飽和モノマー架橋剤と有機相に可溶性の開始剤系を使用して、ポリマー粒子表面で重合反応を起こし、上記発明に係る多孔質クラスターを形成させる。クラスター同士が合体しないようにクラスターをさらに架橋するために、実質的に油溶性の第二の架橋剤を適宜用いてもよい。しかし、この粒子はフロキュレーションによって調製されるため、その形状は球状ではない。
【0007】
Ramstorpらは、二段階逆相懸濁重合について記載しており、ポリアクリルアミドゲルに酵母細胞を固定化している(Ramstorp, M.及びMattiasson, B.,“Affinity chromatographic purification of lentil lectin using immobilised yeast cells”,Appl. Biochem. and Biotechn.,(1982),7,67−70)。第一工程では、重合混合物をトルエン、CHCl及び界面活性剤と共に高速撹拌しながら、小さなビーズを形成する。第二の工程では、撹拌速度を下げ、ビーズを凝集させてラズベリー状のクラスターを形成する。この論文には良好な流動特性をもつゲルが得られたと記載されているが、図面にはわずか4個のビーズからなるクラスターが示されているにすぎない。通常、このような小さな凝集体は脆すぎて、大規模アフィニティ分離の好ましい態様である充填カラムでの用途には使えない。また、技術的にみて、Ramstorpらの提案した逆相懸濁重合では球状クラスターを得ることはできないと思われる。これはクロマトグラフィーには不利である。球状材料の方がカラムに充填し易いからである。
【0008】
国際出願PCT/US95/07011号(Minnesota Mining and Manufacture Company)には、不織繊維マトリックスに疎水性ケイ質モレキュラーシーブを絡み込ませてなる固相抽出膜及びクロマトグラフ膜が開示されている。具体的には、マトリックスはポリテトラフルオロエチレン又はブローンミクロ繊維のいずれかであり、開放構造を有する繊維塊であると定義される。モレキュラーシーブはゼオライト、ケイ酸塩及び炭素被覆ケイ酸塩から選択され、モレキュラーシーブは、アルミニウム原子とケイ素原子の結晶骨格を有し、ハニカム状構造を有する内部空隙の三次元網状組織を形成するものと定義される。上記の膜は平板クロマトグラフィーに使用することが示唆されており、粒子充填カラムに比べて顕著な利点を与えると記載されている。
【0009】
米国特許第5476665号には、溶媒相反転によって形成した膜にアズラクトン官能性粒子を共有結合で組み込んだ複合膜が開示されている。複合膜のアズラクトン官能性粒子は流体中の検体との生物学的又は化学的相互作用を示し、連続多孔質マトリックスの機能は流体中の検体との物理的相互作用を可能にすることである。米国特許第5476665号の発明者らは、アズラクトン官能性粒子の存在下での溶媒相反転によって複合膜を得ることができ、アズラクトン官能性粒子が溶媒相膜形成条件に耐えて残存するという予想外の知見を得ている。
【0010】
欧州特許出願公開第0266580号(Excorim KB)は、クロマトグラフィー及び免疫吸着治療の分野に関するもので、大きな活性表面と低い流動抵抗をもつ支持体が開示されている。具体的には、開示された支持体は、小さな孔のみを有するか或いは孔が全くない固体内部コアからなり、コアはゲルの薄層で被覆されている。ゲルは吸着基を結合させるためのものである。被覆は、親水性粒子をゲル形成物質とゲル化温度よりも高い温度で混合して個々の粒子を被覆することによって行われ、粒子を互いに分離して冷却する。被覆粒子を疎水性溶媒に分散させることによって分離を行ってもよい。粒子の好ましい材料は親水性ガラスであるが、PVC、ポリアミド及びポリカーボネートも示唆されている。被覆層は例えばアガロースでもよい。
【0011】
国際公開第92/13027号は、電気泳動イメージング用液体トナーとして有用なポリマー封入粒子を始めとする微細ポリマー粒子の形成法に関する。具体的には、この方法は、ポリマーとその選択的な溶媒の溶液を、ポリマーに封入すべき成分と共に形成し、溶液を加熱し、次いで溶液を冷却して、溶解ポリマーを粒状ポリマー又はポリマー封入粒子として析出させることからなる。また、選択的な溶媒中で一対のホモポリマーの溶液を同様に形成し、第一の条件変化によって一方のポリマーをコア粒子として作用する微粒子の懸濁液として析出させ、さらに第二の条件変化によって他方のポリマーを析出させてコア粒子を封入して、コア/シェル型ポリマー微粒子を形成する方法も開示されている。析出粒子を洗浄して残留有機溶媒を除去すれば、電気泳動イメージング用液体トナーが得られる。別法として、析出ポリマー封入粒子を乾燥すれば乾燥粉末が得られる。このように、この方法の生成物は分離した粒子である。
【特許文献1】国際公開第02/47665号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5652292号明細書
【特許文献3】国際公開第96/02322号パンフレット
【特許文献4】米国特許第5476665号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0266580号明細書
【特許文献6】国際公開第92/13027号パンフレット
【非特許文献1】J.Zhao,L.Whistler,“Spherical Aggregates of Starch. Granules as Flavor Carriers”, Food Technol.(1994),48(7),104−5
【非特許文献2】D.H.Reeder,A.M.Clausen,M.J.Annen,P.W.Carr,M.C.Flickinger,A.V.Mccormick,“An Approach to Hierarchically Structured Porous Zirconia Aggregates”, Journal of Colloid and Interface Science(1996),184(1),328−330
【非特許文献3】M.Ramstorp,B.Mattiasson,“Affinity Chromatographic Purification of Lentil Lectin Using Immobilised Yeast Cells”,Appl. Biochem. and Biotechn.,(1982),7,67−70
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
数多くの方法が提案されているが、分離媒体の改良製造法に対するニーズが依然存在する。また、従来技術とは特性の異なる新規分離媒体に対するニーズも依然存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、階層的孔構造を有する分離媒体の製造方法を提供することである。この課題は、本発明では、特許請求の範囲にさらに具体的に規定されているように、天然高分子が溶解した溶液中で多孔質ポリマービーズを凝集させ、次いでゲル化して多孔質ゲルを形成し、ゲル中で実質的に球状の多孔質ポリマービーズからなる凝集体を生成する方法によって達成される。
【0014】
本発明の他の目的は、従来の分離媒体に比べて物質移動特性に優れた分離媒体を提供することである。この課題は、階層的孔構造を有する多孔質ポリマー分離媒体によって達成される。具体的には、本発明の分離媒体は1種以上の凝集体を含み、各凝集体はゲル内に複数の実質的に球状の多孔質ポリマービーズを含んでなる。
【0015】
本発明の別の目的は、粒子の形態(例えば充填層吸着又は流動層吸着など)又は膜の形態のいずれでもクロマトグラフィーに有用な分離媒体を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、2種類の異なるリガンドを有する分離媒体を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、流動層吸着(EBA)での使用に特に適した分離媒体を提供することである。本発明では、この課題は、その重量が流動層に適している分離媒体によって達成される。
【0018】
本発明のその他の目的及び有利な効果は、特許請求の範囲及び以下の詳細な説明から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
定義
本明細書で用いる「階層的」という用語は、大きな孔が外部に開いた多孔質構造をいう。こうした大きな孔の壁面には、小さな孔の系が開いている。適宜、小さな孔の壁面にさらに小さな孔が開いていてもよい。
【0020】
本明細書では「分離媒体」という用語は、広義に用いられ、クロマトグラフや濾過のような分離法で固定相として有用なあらゆる材料を包含する。分離媒体はそのままでも使用できるし、濾過における硬質支持体のような他の材料と併用することもできる。さらに、本明細書で用いる「分離媒体」には、吸着や篩分けに直接使用できる材料だけでなく、リガンドとして知られる吸着基が結合した材料も包含される。
【0021】
本発明の第一の態様は、1種以上の実質的に球状の凝集体からなる分離媒体を製造する方法であって、当該方法が、
(a)天然高分子をその融点よりも高い温度に加熱することによって天然高分子の水溶液中で実質的に球状のポリマービーズのスラリーを調製する工程、
(b)工程(a)で得られたスラリーを乳化剤の存在下で有機溶媒に接触させて、ポリマービーズを凝集させる工程、
(c)得られた混合物を撹拌する工程、
(d)攪拌混合物を天然高分子のゲル化点未満の温度に冷却して、ビーズ周囲の溶液をゲル化し、過剰の乳化剤を除去する工程、及び
(e)適宜、形成した凝集体を篩分けする工程
を含み、各凝集体が多孔質ゲルによって集合した複数の多孔質ポリマービーズからなる、方法である。
【0022】
工程(a)で調製するスラリーは、水溶液(好ましくは脱イオン水のような水)中に適当な種類のポリマービーズを含む。
【0023】
本発明の一実施形態では、ポリマービーズはアガロースやデキストランのような天然高分子である。天然高分子の多孔質ポリマービーズは、逆懸濁ゲル化(S Hjerten,Biochim Biophys Acta,(1964),79(2),393−398)や回転ディスク法(例えば国際公開第88/07414号(Prometic Biosciences Inc)参照)のような常法で当業者が容易に製造できる。
【0024】
別法として、商業的供給元から天然高分子ビーズを入手して本発明に従って凝集させる。かかる有用な天然ポリマービーズの例示的な商品名としては、例えばSepharose(商標)又はSephadex(商標)(Amersham Biosciences AB(スウェーデン、ウプサラ))がある。ある実施形態では、本発明の分離媒体はコンパクトアガロースからなるポリマービーズから製造される。かかるコンパクトアガロースは、係属中の特許出願(Amersham Biosciences社の英国特許出願第0314993.7号)に開示された方法で製造され、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。要約すると、この方法では、アガロースビーズの懸濁液でスラリーを調製し、NaSO及び/又はMgSOのような1種以上の金属塩を加え、撹拌しながら(好ましくは約90℃を超える温度に)加熱し、スラリーを冷却、濾過し、適宜濾液を蒸留水や脱イオン水等で洗浄する。好ましい実施形態では、これらの工程を繰り返す。
【0025】
別の実施形態では、ビーズはジビニルベンゼン又はスチレンのような合成ポリマーからなる。合成ポリマービーズは常法で容易に製造できる。例えば、R.Arshady,“Styrene based polymer supports developed by suspension polymerization”,Chimica e L’Industria,(1988),70(9),70−75参照。或いは、Source(商標)(Amersham Biosciences AB(スウェーデン国ウプサラ))のような市販品を本発明に従って凝集させる。
【0026】
さらに別の実施形態では、ビーズはシリカのような無機質のものである。かかるビーズ及びその製造方法も当技術分野で周知である。
【0027】
そこで、天然高分子の融点よりも高い温度に加熱することによって天然高分子の水溶液中で実質的に球状のポリマービーズのスラリーを調製し、粘稠溶液を得る。水の量は最小限にすることが望ましく、ビーズ同士の連結にちょうど足りる量とすべきである。工程(a)での天然高分子/ビーズの比は、好ましくは質量比(weight/weight)で計算して0.1/100、例えば1/100である。
【0028】
工程(a)で溶解させる天然高分子は、多孔質ゲルを形成できるものであればどんなポリマーであってもよく、通常は融解溶液の冷却によって不可逆的にゲル化し得るものである。本発明の媒体の一実施形態では、天然高分子はアガロース、ゼラチン、寒天、セルロース、デキストラン、キトサン、コンニャク、カラゲナン、ジェラン、アルギン酸塩及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、ポリマーゲルはアガロースである。
【0029】
工程(a)で得られる水溶液は、当技術分野で周知の通り、通常、従来の反応容器内で調製される。工程(b)の接触は、工程(a)で得たスラリーを有機溶液と単に混合すればよく、例えば、有機溶液を調製した反応容器にスラリーを加えればよい。撹拌速度は凝集体の所望の粒度が得られるように設定する。周知の通り、撹拌速度だけでなく乳化剤の量も凝集体の粒度に影響する。一実施形態では、凝集体の粒度は約50〜2000μmの範囲内、例えば約500〜1000μmに制御される。
【0030】
クロマトグラフィーのような幾つかの用途では、凝集体の形状が球状であるのが最も好ましい。実質的に球状の凝集体が得られるように工程(b)の溶液の水相/有機相の比を調整することは当業者が容易になし得ることである。そこで、一実施形態では、水相/有機相の比を実質的に球状の凝集体が得られるように制御する。これに関連して、「実質的に球状」とは、アスペクト比rが1又はその近傍(例えば約0.8〜1.2)であり、好ましくは0.9〜1.1であることを意味する。
【0031】
本方法の好適な実施形態では、攪拌混合物をジクロロエタンのような有機溶媒の冷溶液に加えることによって冷却を実施する。これに関して「冷」とは、天然高分子のゲル化点未満の温度、例えば30〜45℃、好ましくは35〜40℃を意味する。一実施形態では、混合物を次いでエタノールのような有機溶媒中で洗浄し、過剰の乳化剤を除去する。
【0032】
工程(e)の篩分けは多くの用途で好ましい工程であり、篩分けは標準的な装置を用い標準的手順で容易に実施される。
【0033】
一実施形態では、工程(d)に続く工程でゲルのポリマーを化学的に架橋する。かかる架橋剤は市販されており、天然高分子の通常の架橋法は当業者に周知である。こで、本発明の好適な実施形態では、ビーズを凝集体に集合させる天然高分子ゲルは架橋アガロースである。アガロースその他のゲル化ポリマーは広範な供給業者から容易に入手できる。
【0034】
出発原料によっては、本発明の分離媒体をリガンド(クロマトグラフィーに適した結合基)でさらに誘導体化してもよい。一実施形態では、上記工程(f)の後の工程でゲルを誘導体化し得る。簡単に述べると、アガロースのヒドロキシル基を例えばグリシドールで誘導体化する。三フッ化ホウ素エーテラートを加えることによって、複数のグリシドール分子を重合してヒドロキシル基に結合させることができ、複数のヒドロキシル基を含むポリマー鎖からなる共有結合被覆層が生じる。また、ヒドロキシル基を酸化して複数のカルボン酸基を生じさせてもよい。別の実施形態では、ヒドロキシル基をエピブロモヒドリン等のエピハロヒドリンのような化合物と反応させれば共有結合被覆層に末端ハライド基を導入することができ、これをさらにアミンと反応させれば四級アミンが導入される。アガロースのような天然高分子の誘導体化技術は当技術分野で周知であり、その詳細は例えば国際公開第98/33572(Amersham Pharmacia Biotech)を参照されたい。
【0035】
工程(a)で使用するビーズが天然高分子の場合、誘導体化は同様に実施し得る。或いは上記の通り、工程(a)で使用するビーズは市販品又は予備調製しておいた誘導体化分離媒体であってもよい。
【0036】
本発明の第二の態様は、1種以上の実質的に球状の凝集体からなる分離媒体であって、各凝集体が多孔質ゲルによって集合した複数の実質的に球状の多孔質ポリマービーズを含む分離媒体である。好適な実施形態では、各凝集体はその直径に約10個以上、好ましくは約20個以上のビーズを含むが、これについては後で詳しく述べる。本発明の分離媒体は、例えばクロマトグラフィーの固定相、濾過膜等として使用できる。
【0037】
一実施形態では、各凝集体のゲル/ビーズの比は、質量比(weight/weight)で計算して約0.1/100、例えば約1/100である。ここで「ゲル」という用語は周囲のゲル化した天然高分子相をいう。最も好ましい実施形態では、ゲルの量は最小限、つまりビーズを集合させて凝集体にするのに足りる最小限の量に保つ。この実施形態では、ゲルは接着剤又は結合剤として作用し、概ねビーズを被覆する。他の実施形態では、各凝集体はゲルをさらに高い割合で含んでおり、かかるゲルは連続ゲル相に存在するビーズからなる。つまり、この実施形態では、ビーズはゲルの中に埋め込まれている。ただし、本発明の最も広義な実施形態では、本発明は上述の2つの実施形態の中間的な実施形態も包含し、換言すれば、本発明ではゲル/ポリマービーズ比はいかなる値であってもよい。当業者には自明であろうが、ここでいうゲルの割合は、工程(a)のスラリーの調製法でポリマービーズを調製する水溶液の割合に対応する。
【0038】
本発明の第一の態様に関して上述した通り、ゲルのポリマーはアガロース、ゼラチン、寒天、セルロース、デキストラン、キトサン、コンニャク、カラゲナン、ジェラン、アルギン酸塩、及びこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される天然高分子を含む。最も好ましい実施形態では、ポリマーゲルはアガロースである。
【0039】
好適な実施形態では、ゲルのポリマーは化学的に架橋している。凝集体がその内部にポリマービーズを囲繞するマトリックスとして化学的に架橋したゲルからなる場合には、例えば手荒な方法を用いた洗浄及び/又は充填作業に関して、他の実施形態よりも耐性に優れた分離媒体を与える。ただし、化学架橋していないゲルからなる凝集体は、慣用篩分け工程(これも通常比較的手荒い)において、さらには超音波洗浄でさえ、耐性を示すことが判明した。それでも、ある種の用途、例えば高い流動耐性が求められる場合には、架橋ゲルマトリックスが好ましい。ゲルの多孔度はポリマーの性状及び製造方法依存する。しかし、好適な実施形態では、本発明のゲル内の孔径及び細孔分布は市販の天然高分子ビーズの性質に類似している。
【0040】
従って、凝集体を構成するビーズ自体が多孔質であるとともに、周囲のゲルも多孔質であるので、本発明の凝集体は階層的細孔構造を有する。
【0041】
凝集体の粒度に関しては、実際上は球状凝集体を形成するため最低限の数のビーズが必要とされるが、その数は例えばビーズの大きさに応じて異なる。一実施形態では、本発明の媒体における平均的凝集体は、直径に約10個以上、好ましくは約20個以上、例えば100個以上のビーズを含む。各凝集体におけるビーズ数の望ましい上限は、使用目的によって左右される。そこで、一実施形態では、本発明の媒体における平均的凝集体は、直径に最大約400個、例えば最大約200個のビーズを含む。従って、本発明の凝集体の粒度は広い範囲で変化させることができ、例えば粒径数μから数百μ、さらには千μ、例えば約50〜2000μm、例えば100〜1000μmとし得る。上述の通り、各凝集体中のビーズの数、つまり凝集体の粒度は、撹拌速度だけでなく、その調製に用いる乳化剤の量によっても制御できる。一般に、製造時に適当なパラメーターを選択することによって、所望の粒度の凝集体を調製することができる。
【0042】
本発明の媒体の好適な実施形態では、凝集体の形状は実質的に球状である。球形状は、クロマトグラフィー法等で有利であり、固定相として用いる凝集体の流動特性が改善される。当業者には周知の通り、乳化粒子の粒子形状はスラリーの粘度のようなパラメータに依存し、後で本発明の第三の態様に関して詳しく述べる通り、ここではビーズと溶液の比に依存する。
【0043】
本発明の媒体の一実施形態では、ポリマービーズはアガロース、ゼラチン、寒天、セルロース、デキストラン、キトサン、コンニャク、カラゲナン、ジェラン、アルギン酸塩、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1種以上の天然高分子を含む。好適な実施形態では、ビーズはアガロースやデキストランのような多糖類である。ある特定の実施形態では、ビーズはアガロースマトリックスにデキストランの層をグラフトしたものからなる。かかるビーズは、上記の方法に関して述べた通り、得ることができる。
【0044】
本発明の媒体の別の実施形態では、ポリマービーズは、スチレンもしくはスチレン誘導体、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、ビニルエステル、ビニルアミドのような架橋合成ポリマーからなる。かかるビーズは、上記の方法に関して述べた通り、得ることができる。
【0045】
ただし、ポリマービーズはシリカのような無機質のものであってもよい。
【0046】
凝集体は上述の各種ポリマービーズの1種類からなるものでも、それらの混合物からなるものでもよい。さらに、ビーズは実質的に同じ粒度のものであっても、所定の範囲内で異なる粒度のものであってもよい。市販のビーズは概して、ある特定の粒度のものであるか或いは所定の範囲内の粒度のものである。一定粒度のビーズを用いるか或いは複数の粒度のビーズを用いるかは、凝集体の用途に応じて決まる。
【0047】
上述の通り、市販のビーズは、ポリマーの性状に応じて、架橋状態で提供されることが多く、物理的にゲル化した状態で提供されることもある。一実施形態では、多孔質ビーズのポリマーは化学的に架橋されたものである。ビーズの孔径及び多孔度は、その調製に用いたビーズの種類によって左右される。
【0048】
そこで、本発明の凝集体は、その内部に含まれるビーズと同等の結合特性を示す。ビーズの表面も、かかるビーズを含む分離媒体中で利用できるからである。従って、第一の分離特性又は機能は、封入されたビーズによって与えられる。かかる特性の具体例は、例えばイオン交換リガンド、親和性基、疎水性相互作用活性表面等である。ただし、ある特定の実施形態では、本発明の分離媒体は第二の特性又は機能を示し、これらはアガロースマトリックス、すなわち相互結合型アガロースによって与えられる。例えば、ある特定の実施形態では、アガロースマトリックスのヒドロキシル基を誘導体化して結合基(リガンド)とする。こうしたアガロースの誘導体化は当業者に周知であり、常法で容易に実施できる。
【0049】
好適な実施形態では、本発明の媒体は上記の方法で製造される。
【0050】
上述の通り、本発明の媒体はクロマトグラフィーや濾過に使用できる。ゲル及び適宜ビーズは、適当な結合基を与えるため上述の通り誘導体化したものであってもよい。自明であろうが、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー等の、どのような種類のクロマトグラフィーに本発明の分離媒体が有用であるかは、結合基の性状によって決まる。
【0051】
ある一実施形態では、媒体は、複数の上記凝集体を独立した実質的に球状の物体として含んでおり、充填層吸着又は流動層吸着での使用に適している。これらのクロマトグラフィー法は当業者に周知である。
【0052】
別の実施形態では、媒体は、複数の上記凝集体を支持体上に集合させた膜であり、濾過での使用に適している。吸着媒体からかかる膜を形成する方法は当業者に周知である。
【0053】
本発明のもう一つの態様は、1種以上の凝集体からなる分離媒体の製造に実質的に球状の多孔質ポリマービーズを使用する方法であり、各凝集体は複数、例えば10個以上、好ましくは20個以上のビーズを含んでおり、ビーズは多孔質ポリマーゲルによって集合している。一実施形態では、本発明の使用方法は、Amersham Biosciences AB(スウェーデン、ウプサラ)製のSepharose(商標)、Sephadex(商標)及びSource(商標)から選択されるビーズを使用する。この態様に関する詳細は、上記の詳細な説明に明確に示されている。
【0054】
本発明の最後の態様は、液体から1種以上の化合物を分離する方法であって、液体を本発明の分離媒体又は本発明に従って製造した分離媒体に接触させ、化合物を媒体に吸着させる方法である。クロマトグラフィー法は当技術分野で周知であり、この方法を適当な手法に適合させることは当業者が容易になし得ることである。簡単に述べると、まず第一の工程で、所望の化合物を含む溶液を、上記マトリックスに存在するリガンド(結合基)に化合物が吸着するような条件下で分離媒体に流す。かかる条件は、pH及び/又は塩濃度(つまり溶液中のイオン強度)によって制御される。媒体の容量を超えないように注意すべきである。つまり、充分に吸着されるように充分にゆっくりと流すべきである。この工程では、溶液の他の成分は原則的に何の妨げもなく流れ去る。次いで、適宜、媒体を水溶液等で洗浄し、残留及び/又は緩く結合した物質を除く。次の工程では、第二の溶液として溶出液を脱離(所望の化合物の解離)が起こる条件下で媒体に流す。かかる条件は、一般にpH低下及び/又は塩濃度(イオン強度)の増加によって達成される。pHが下がると、化合物の正味荷電が変化して正電荷が多くなって、静電相互作用に対する機会の多くが変わる。同様に、塩の添加によるイオン強度の増加も、化合物とリガンドとの親和性を変化させる。液体中に1種以上の化合物が存在すると、所望の化合物以外のものも媒体に吸着することがある。所望の化合物とその他の化合物は、異なる条件下で媒体から脱着するので、選択的に溶出に利用できる。
【0055】
所望の化合物は、組換えタンパク質、ペプチド、核酸、ウイルスなど、或いは液体から除去すべき有機化合物のような不都合な夾雑物など、いかなる化合物であってもよい。
【0056】
所望の目標化合物の分離の具体例として、プラスミド精製について述べる。この場合、本発明の分離媒体の凝集体は、従来の媒体のように構成ビーズ自体を媒体として使用する場合に比べ、比較的大きな孔径のものが有利である。
【0057】
さらに本発明の有益さを実証し得る別の用途は流動層吸着クロマトグラフィーであり、かかる用途では粒子をある最小限の密度に抑えることが望まれる。こうした密度は、本発明の凝集体によって容易に得られる。
【0058】
本発明の凝集体のその他の用途は、例えば細胞培養の担体(この場合、大きなビーズで、適宜粒度分布の比較的広いものが有利である。)、或いは薬物送達システムのような各種送達系の担体である。
【0059】
図面の詳細な説明
図1は、どのようにして実質的に球状の多孔質ポリマービーズを融解ポリマーの溶液と接触させ、エマルジョンによって凝集させて本発明の分離媒体を形成するかを示す概略図である。天然高分子の例としてアガロースを挙げ、このケースではビーズもアガロースからなる。アガロース溶液を1,2−ジクロロエタン/エチルセルロース中に懸濁するが、エチルセルロースは乳化剤として作用する。
【0060】
図2は、本発明の方法でSP Sepharose HP(商標)(Amersham Biosciences(スウェーデン、ウプサラ))を用いて得られた凝集体の写真である。この図に示す凝集体は、以下の実施例1で説明する通り、アガロースによって集合した天然高分子ビーズからなる。図2において、3cmは210μmに相当する。この写真は複数のビーズが球状凝集体を形成している様子を示す。
【0061】
図3は、本発明の方法でSP Sepharose HP(商標)(Amersham Biosciences(スウェーデン、ウプサラ))を用いて得られた凝集体の写真である。図3では、2.7cmが64.3μmに相当する。この写真は、ビーズが凝集体中で密に充填され、基本的にビーズ同士を接着して凝集体とするのに必要なゲルしかビーズ間に存在していない様子を示す。
【0062】
図4は、本発明の方法でSource(商標)15Q(Amersham Biosciences(スウェーデン、ウプサラ))を用いて得られた凝集体の一つの写真である。この図に示す凝集体は、以下の実施例2で詳しく説明する通り、アガロースによって集合した合成ポリマービーズからなる。この写真は複数のビーズ同士が球状凝集体を形成している様子を示す。
【0063】
図5は、以下の実施例2で詳しく説明する通り、本発明の方法でSource(商標)15Q(Amersham Biosciences(スウェーデン、ウプサラ))を用いて得られた凝集体の別の写真である。図5では、2.2cmが50μmに相当する。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は単なる例示にすぎず、特許請求の範囲に規定する本発明を限定するものではない。本明細書で引用した文献の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0065】
実施例1:
天然高分子ビーズ(SP Sepharose(商標)HP)からの凝集体の製造
ビーズ状(ビーズ径30μ)のSP Sepharose(商標)HP(Amersham Biosciences(スウェーデン、ウプサラ))分離マトリックス150〜200mLを、ガラスフィルター上で蒸留水で洗浄し、エタノールを除去する。洗浄したビーズに次いで0.2M硫酸ナトリウム溶液(1200〜1500mL)を数回に分けて注いで、流出させる。メカニカルスターラーと温度計を備えた250mL三ツ口丸底フラスコを、グリセロールを入れた加熱浴に取り付ける。60mLの蒸留水をフラスコに入れ、次いで撹拌下で1.9gのアガロースを加える。攪拌混合物を加熱(浴温90〜95℃)してアガロースを溶解させる。アガロースが溶解した後、同じ温度で30分間撹拌する。
【0066】
撹拌アガロース溶液に上記の分離マトリックス95gを加える。スラリーの温度を80℃±2℃に調整して30分間撹拌する。その後撹拌を止め、アガロース/ビーズスラリーを二塩化エチレン/エチルセルロース溶液(後述)に注ぎ込んで、エマルジョンを形成する。
【0067】
ターボ型スターラーを装着し循環槽に連結し緩く蓋をした側面が直線的な500mL枝付き反応フラスコに二塩化エチレン300mLを仕込む。撹拌を開始し、エチルセルロース10gを小分けにして加える。30分後、循環槽内の温度を30℃に上げる。撹拌を続けてエチルセルロースを溶解させる(1〜2時間)。次いで循環槽内の温度を62℃に固定する。この温度で30分間後、スターラーの速度を360rpmに調整し、アガロース/ゲルスラリーを反応容器に注入する。ほぼ即座にエマルジョンが形成される。エマルジョンを30分間撹拌し続けてから、冷却のため冷二塩化エチレン(後述)を入れた反応容器に移す。
【0068】
アンカー型スターラーを装着し循環槽に連結し緩く蓋をした側面が直線的な2L枝付き反応フラスコに二塩化エチレン1300mLを仕込む。攪拌を開始し、温度を17℃に設定する。循環槽温度を17℃に20分間保ってから、適度に激しく撹拌しながら上記エマルジョン混合物を冷却混合物に注入する。20分後、500mLのエタノール(99.5%)を加え、反応混合物を清澄化する。表面に浮かんだ凝集体を反応容器から取り出して、500〜600mLのエタノールを入れたビーカーに移す。乳化剤のエチルセルロースはエタノールに溶解する。使用したエタノールから乳化剤がなくなるまで、この洗浄工程を数回(3〜4回)繰り返す。凝集体を次いで蒸留水で洗浄し、適当な瓶に移して蒸留水に浸す。
【0069】
得られたSP Sepharose(商標)HP凝集体のビーズ粒度分布は200〜2000μmであり、最初のビーズの粒度は30μmである。
【0070】
得られた凝集体の写真を図2及び図3に示す。
【0071】
実施例2
合成ポリマービーズ(Source(商標)15Q)からの凝集体の製造
ビーズ状(ビーズ径15μm)のSource(商標)15Q(Amersham Biosciences(スウェーデン、ウプサラ))分離マトリックス100〜150mLをガラスフィルター上で蒸留水で洗浄して、エタノールを除去し、水を排出させる。
【0072】
メカニカルスターラーと温度計を備えた250mL三ツ口丸底フラスコを、グリセロールを入れた加熱浴に取り付ける。60mLの蒸留水をフラスコに入れ、次いで撹拌下で1.5gのアガロースを加える。攪拌混合物を加熱(浴温90〜95℃)してアガロースを溶解させる。アガロースが溶解した後、同じ温度で30分間撹拌する。
【0073】
撹拌アガロース溶液に上記の水抜きした分離マトリックス60gを加える。スラリーの温度を80℃±2℃に調整して30分間撹拌する。その後撹拌を止め、アガロース/ビーズスラリーを二塩化エチレン/エチルセルロース溶液(後述)に注ぎ込んで、エマルジョンを形成する。
【0074】
ターボ型スターラーを装着し循環槽に連結し緩く蓋をした側面が直線的な500mL枝付き反応フラスコに二塩化エチレン300mLを仕込む。撹拌を開始し、エチルセルロース10gを小分けにして加える。30分後、循環槽内の温度を30℃に上げる。撹拌を続けてエチルセルロースを溶解させる(1〜2時間)。次いで循環槽内の温度を62℃に固定する。この温度で30分間後、スターラーの速度を360rpmに調整し、アガロース/ゲルスラリーを反応容器に注入する。ほぼ即座にエマルジョンが形成される。エマルジョンを30分間撹拌し続けてから、冷却のため冷二塩化エチレン(後述)を入れた反応容器に移す。
【0075】
アンカー型スターラーを装着し循環槽に連結し緩く蓋をした側面が直線的な2L枝付き反応フラスコに二塩化エチレン1300mLを仕込む。攪拌を開始し、温度を17℃に設定する。循環槽温度を17℃に20分間保ってから、適度に激しく撹拌しながら上記エマルジョン混合物を冷却混合物に注入する。20分後、500mLのエタノール(99.5%)を加え、反応混合物を清澄化する。表面に浮かんだ凝集体を反応容器から取り出して、500〜600mLのエタノールを入れたビーカーに移す。乳化剤のエチルセルロースはエタノールに溶解する。使用したエタノールから乳化剤がなくなるまで、この洗浄工程を数回(3〜4回)繰り返す。凝集体を次いで蒸留水で洗浄し、適当な瓶に移して蒸留水に浸す。
【0076】
得られたSource(商標)15Qの凝集体のビーズ粒度分布は100〜1000μであり、最初のビーズの粒度は15μである。
【0077】
形成した凝集体の写真を図4及び図5に示す。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】どのようにして実質的に球状の多孔質ポリマービーズを融解ポリマーの溶液と接触させ、エマルジョンによって凝集させて本発明の分離媒体を形成するかを示す概略図。
【図2】実施例1に記載の通り、本発明の方法でSP Sepharose(商標)HP(Amersham Biosciences(スウェーデン、ウプサラ))を用いて得られた凝集体の写真である。
【図3】本発明の方法でSP Sepharose(商標)HP(Amersham Biosciences(スウェーデン、ウプサラ))を用いて得られた凝集体の別の写真である。
【図4】実施例2に記載の通り、本発明の方法でSource(商標)15Q(Amersham Biosciences(スウェーデン、ウプサラ))を用いて得られた凝集体の写真である。
【図5】実施例2に記載の通り、本発明の方法でSource(商標)15Q(Amersham Biosciences(スウェーデン、ウプサラ))を用いて得られた凝集体の別の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の実質的に球状の凝集体からなる分離媒体を製造する方法であって、当該方法が、
(a)天然高分子をその融点よりも高い温度に加熱することによって天然高分子の水溶液中で実質的に球状のポリマービーズのスラリーを調製する工程、
(b)工程(a)で得られたスラリーを乳化剤の存在下で有機溶媒に接触させて、ポリマービーズを凝集させる工程、
(c)得られた混合物を撹拌する工程、
(d)攪拌混合物を天然高分子のゲル化点未満の温度に冷却して、ビーズ周囲の溶液をゲル化し、過剰の乳化剤を除去する工程、及び
(e)適宜、形成した凝集体を篩分けする工程
を含み、
各凝集体が多孔質ゲルによって集合した複数の多孔質ポリマービーズからなる、方法。
【請求項2】
工程(a)における天然高分子/ビーズの質量比が約0.1/100、例えば約1/100である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)において、水相/有機相の比を制御して実質的に球状の凝集体を得る、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程(d)に続く工程において、ゲルのポリマーを化学的に架橋する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程(d)に続く工程において、ゲルのポリマーの官能基を誘導体化し、2種類の異なるリガンドを有する分離媒体を得る、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
1種以上の凝集体からなる分離媒体であって、各凝集体が多孔質ゲルによって集合した複数の実質的に球状の多孔質ポリマービーズを含み、平均的凝集体が約10個以上、好ましくは約20個以上のビーズを含む、分離媒体。
【請求項7】
各凝集体における集合ゲル/ビーズの質量比が約0.1/100、例えば約1/100である、請求項6記載の分離媒体。
【請求項8】
前記ゲルが、アガロース、ゼラチン、寒天、セルロース、デキストラン、キトサン、コンニャク、カラゲナン、ジェラン、アルギン酸塩及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される天然高分子を含む、請求項6又は請求項7記載の分離媒体。
【請求項9】
前記ゲルのポリマーが化学的に架橋している、請求項6乃至請求項8のいずれか1項記載の分離媒体。
【請求項10】
凝集体内でビーズに結合したリガンドとビーズ周囲のゲルのポリマーに結合した別の種類のリガンドとを提示する、請求項6乃至請求項9のいずれか1項記載の分離媒体。
【請求項11】
凝集体が球状である、請求項6乃至請求項10のいずれか1項記載の分離媒体。
【請求項12】
前記ポリマービーズがアガロースやデキストランのような天然高分子からなる、請求項6乃至請求項11のいずれか1項記載の分離媒体。
【請求項13】
前記ポリマービーズがスチレン及び/又はジビニルベンゼンのような1種以上の合成ポリマーからなる、請求項6乃至請求項11のいずれか1項記載の分離媒体。
【請求項14】
前記ビーズのポリマーが化学的に架橋している、請求項6乃至請求項13のいずれか1項記載の分離媒体。
【請求項15】
前記凝集体が独立した実質的に球状の物体であり、分離媒体が充填層吸着又は流動層吸着での使用に適している、請求項6乃至請求項14のいずれか1項記載の分離媒体。
【請求項16】
前記分離媒体が、複数の凝集体を支持体上に設けてなる膜であり、濾過での使用に適している、請求項6乃至請求項14のいずれか1項記載の分離媒体。
【請求項17】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法で製造された請求項6乃至請求項16のいずれか1項記載の分離媒体。
【請求項18】
1種以上の凝集体からなる分離媒体の製造に実質的に球状の多孔質ポリマービーズを使用する方法であって、該凝集体が多孔質ゲルによって集合した複数の実質的に球状の多孔質ポリマービーズを含み、平均的凝集体が約10個以上、好ましくは約20個以上のビーズを含む、方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公表番号】特表2006−510482(P2006−510482A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562188(P2004−562188)
【出願日】平成15年12月16日(2003.12.16)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001962
【国際公開番号】WO2004/056473
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(597064713)アメルシャム・バイオサイエンシーズ・アクチボラグ (109)
【氏名又は名称原語表記】Amersham Biosciences Aktiebolag
【Fターム(参考)】