説明

分離膜、この製造方法および分離膜を含む水処理装置

【課題】高強度、高気孔率および高親水化度を有しつつも、脱塩率に優れた分離膜、この製造方法および分離膜を含む水処理装置の提供。
【解決手段】支持層と前記ポリマーマトリックス層とを備える分離膜が提供される。前記支持層は、一般式1で表される構造単位を含む高分子を含み、前記ポリマーマトリックス層は、半透膜であり、前記支持層よりも分離対象物質に対する阻止率(rejection rate)が高い。
前記一般式1は、発明の詳細な説明の欄における説明と同様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜、この製造方法および分離膜を含む水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、低エネルギー消費および高効率を両立できる分離膜の技術開発へのニーズが高まることに伴い、正浸透(Forward Osmosis;FO)法への関心が高まりつつある。正浸透法は、逆浸透法と同様に、浸透圧誘発溶質をろ過できる分離膜を必要とする。しかしながら、逆浸透法とは異なり、正浸透工程においては、圧力差ではなく、濃度差を用いて物質の分離が行われる。このため、極めて低圧力の状態や、圧力を排除した状態でも工程を行うことができる。最近のある研究によれば、海水の淡水化において、逆浸透法により生産された水の1トン当たりのエネルギー消費量は3〜5kWhであるのに対し、正浸透法を用いるときには、1トン当たりのエネルギー消費量を1kWhのレベルまで下げられることが報告されている。
【0003】
メンブレン内部の濃度分極現象は、正浸透システムの性能を左右する最も重要な因子の一つである。濃度分極とは、溶液から水を分離する過程中に、分離膜の表面周囲と内部における物質の濃度が周りの環境のそれとは異なってしまうことをいう。これにより、分離膜の運転性能は、理論的に計算した値には遥かに及ばないという結果が得られてしまう。分離膜の表面周囲に発生する濃度分極現象は外部濃度分極と呼ばれるが、これは、分離膜の運転条件の調節により比較的に簡単に解決することができる。しかしながら、分離膜の内部において発生する濃度分極現象は工程的に解決することができず、このような内部濃度分極を極力抑えられる分離膜の開発が並行される必要がある。
【0004】
逆浸透工程に汎用される分離膜は、正浸透工程に用いられるときに深刻な濃度分極現象が発生してしまう。正浸透工程においては、分離膜の構造だけではなく、化学的な特性もまた、正浸透システムの性能を決める重要な要素である。逆浸透工程において、分離膜を通過する水の移動は圧力によってなされるため、支持体の化学的な特性が分離膜の透過流量に決定的な変数として作用することはない。しかしながら、正浸透工程における透水は、浸透圧差によって自発的になされるため、支持体の化学的な特性、すなわち、親水性の有無が透過流量に大きな影響を与える。最近、支持体の素材が親水性を帯びるほど、膜厚が薄くなるほど、しかも、多孔性であるほど透過流量が改善されるという研究結果が報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高強度、高気孔率および高親水化度を有しつつも、脱塩率に優れた分離膜を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、上記の分離膜の製造方法を提供することである。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、前記分離膜を用いた水処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態によれば、下記一般式1で表される構造単位を含む高分子を含む支持層と、ポリマーマトリックス層と、を備える分離膜を提供する。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、または−CORであり、
前記Rは、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリール基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基であり、
但し、R〜Rのうちの少なくとも一つおよびR〜Rのうちの少なくとも一つは、それぞれ同じまたは異なる−CORであり、
但し、R〜Rのうちの少なくとも一つおよびR〜Rのうちの少なくとも一つは、それぞれ同じまたは異なる、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリーレン基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリーレン基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキレン基であり、
〜Lは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリーレン基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリーレン基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキレン基であり、
前記nおよびmは、それぞれ独立して、0〜150の整数であり、
前記o、p、q、およびrは、それぞれ独立して、0〜100の整数である。
【0011】
前記高分子は、前記R〜Rがアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である場合における置換度(DS)が無水グルコース単位当たり約1〜約2であり、前記一般式1における−CORの置換基の置換度(DS)が無水グルコース単位当たり約1〜約2であってもよい。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記一般式1における−CORの置換基の置換度(DS)が、無水グルコース単位当たり約1.2〜約1.8であってもよい。
【0013】
前記高分子の重量平均分子量は、約20,000〜約800,000であってもよい。
【0014】
前記支持層は、スキン層および多孔性層により形成された単一膜であり、前記スキン層の密度が前記多孔性層の密度よりも高くてもよい。
【0015】
前記多孔性層は、指状構造の気孔を有するものであってもよい。
【0016】
前記多孔性層は、前記分離膜の表面と平行な方向の断面において前記指状構造を形成する一つの指状の気孔の最長径が約10μm〜約50μmであり、前記一つの指状の気孔の最長径の平均は約20μm〜約40μmであり、前記分離膜の表面と平行な方向に隣り合う両指状間の厚さは約1μm〜約20μmであってもよい。
【0017】
前記支持層は、気孔度が約50〜約80体積%であってもよい。
【0018】
前記支持層は、下記数式1で計算された気孔度(ε)が約50%〜約95%であってもよい。
【0019】
【数1】

【0020】
式中、mは水を含んでいる前記支持層の質量(g)であり、mは乾燥された膜の質量(g)であり、ρは水の密度(g/cm)であり、ρは前記支持層を構成する高分子の密度(g/cm)である。
【0021】
前記ポリマーマトリックス層は透水性であり、且つ、分離対象物質に対しては非透過性を示す半透膜であってもよい。
【0022】
前記ポリマーマトリックス層は、分離対象物質に対する阻止率が約50〜約99.9%であってもよい。
【0023】
前記ポリマーマトリックス層は、前記支持層の片面または両面に形成されていてもよい。
【0024】
前記ポリマーマトリックス層は、前記支持層のスキン層と接して片面に形成されていてもよい。
【0025】
前記ポリマーマトリックス層は、ポリアミド、架橋結合されたポリアミド、ポリアミド−ヒドラジド、ポリ(アミド−イミド)、ポリイミド、ポリ(アリルアミン)ヒドロクロリド/ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PAH/PSS)、ポリベンズイミダゾール、スルホン化されたポリ(アリーレンエーテルスルホン)およびこれらの組み合わせから選ばれたいずれか一種を含むか、あるいは、ポリアミド、架橋結合されたポリアミド、ポリアミド−ヒドラジド、ポリ(アミド−イミド)、ポリイミド、ポリ(アリルアミン)ヒドロクロリド/ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PAH/PSS)、ポリベンズイミダゾール、スルホン化されたポリ(アリーレンエーテルスルホン)およびこれらの組み合わせから選ばれたいずれか一種と無機物との複合体を含んでいてもよい。
【0026】
前記ポリマーマトリックス層の膜厚は、約0.01μm〜約0.5μmであってもよい。
【0027】
前記分離膜に対して計算された下記数式2によって定義される構造因子(S)が約10〜約1500であってもよい。
【0028】
【数2】

【0029】
式中、AおよびBは、それぞれ下記式によって決められ、
【数3】

【数4】

は、逆浸透(Reverse osmosis:RO)システムにおける透水度(単位:LMH)であり、△Pは、逆浸透(Reverse osmosis:RO)システムの適用圧力であり、Rは、逆浸透(Reverse osmosis:RO)システムにおける脱塩率(salt rejection)であり、R=1−cp/cb(cbは、バルク流入水の塩濃度であり、cpは透過水の塩濃度である)で計算され、kはクロスフローセルにおける物質移動係数であり、
Dは、正浸透システムにおける誘導溶質の拡散係数であり、Jは、正浸透システムにおける膜の透水流量であり、ΠDbは、正浸透システムにおける誘導溶液のバルク浸透圧であり、
Kは、K=tτ/Dεで計算される値であり、tは、前記支持層の膜厚であり、τは、前記分離膜の屈曲率(tortuosity)であり、εは、分離膜の孔隙率(porosity)である。
【0030】
前記分離膜は、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜または正浸透膜であってもよい。
【0031】
本発明の他の実施形態によれば、下記一般式1で表される構造単位を含む高分子および有機溶媒を含む高分子溶液を用意するステップと、前記高分子溶液を基材に塗布するステップと、前記高分子溶液が塗布された基材を非溶媒に沈殿させて、スキン層と多孔性層により形成された支持層を製造するステップと、前記支持層の片面または両面の上に緻密高分子形成用の高分子を界面重合反応させて、ポリマーマトリックス層を形成するステップと、を含む分離膜の製造方法を提供する。
【0032】
【化2】

【0033】
式中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、または−CORであり、
前記Rは、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリール基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基であり、
但し、R〜Rのうちの少なくとも一つおよびR〜Rのうちの少なくとも一つは、それぞれ同じまたは異なる−CORであり、
但し、R〜Rのうちの少なくとも一つおよびR〜Rのうちの少なくとも一つは、それぞれ同じまたは異なり、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリーレン基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリーレン基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキレン基であり、
〜Lは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリーレン基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリーレン基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキレン基であり、
前記nおよびmは、それぞれ独立して、0〜150の整数であり、
前記o、p、q、およびrは、それぞれ独立して、0〜100の整数である。
【0034】
前記高分子溶液は、前記一般式1で表される構造単位を含む高分子を約9〜約15重量%含むものであってもよい。
【0035】
前記支持層およびポリマーマトリックス層を含む複合膜に焼き鈍し(アニール)工程を行うステップをさらに含んでいてもよい。
【0036】
本発明のさらに他の実施形態によれば、精製されるべき不純物が含まれている流入水と、流入水よりも高い浸透圧を有する浸透誘導溶液と、片面は前記流入水と接し、反対面は前記浸透誘導溶液と接するように位置する前記分離膜と、浸透誘導溶液の誘導溶質を分離する回収システムと、前記回収システムによって分離された浸透誘導溶液の誘導溶質を、前記分離膜に接する浸透誘導溶液に再投入する連結手段と、を備える正浸透水処理装置を提供する。
【0037】
前記正浸透水処理装置は、前記流入水から前記浸透誘導溶液へと浸透圧によって前記半透膜を通過した水を含む浸透誘導溶液に対して、前記回収システムによって誘導溶質を分離した残部を処理水として排出する手段をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る分離膜は、親水性に優れており、透水流量が高く、しかも、高強度特性を有することから、耐久性に優れており、内部濃度分極を極力抑えることができる他、脱塩率にも優れている。なお、その製造工程が簡単であり、しかも、経済性に富んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態による分離膜の概略断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態による正浸透水処理装置の模式図である。
【図3】AおよびBは、本発明の実施形態による製造方法によって製造された分離膜の一部である支持層の電子走査顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】本発明の実施形態について、透水流量を測定して示したグラフである。
【図5】本発明の実施形態について、NaCl塩の逆透過量を測定して示したグラフである。
【図6】本発明の実施形態について、透水流量およびNaCl塩の逆透過量を測定して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態について、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳述する。しかしながら、本発明は種々の異なる形態によって実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。
【0041】
この明細書において、「置換」とは、特に断りのない限り、C1〜C30のアルキル基;C1〜C10のアルキルシリル基;C3〜C30のシクロアルキル基;C6〜C30のアリール基;C2〜C30のヘテロアリール基;C1〜C10のアルコキシ基;フルオロ基、トリフルオロメチル基などのC1〜C10のトリフルオロアルキル基;またはシアノ基で置換されたものを意味する。
【0042】
この明細書において、「ヘテロ」とは、特に断りのない限り、一つの化合物または置換基内にN、O、SおよびPよりなる群から選ばれるヘテロ原子を1〜3個含み、且つ、残部は炭素であるものを意味する。
【0043】
この明細書において、「これらの組み合わせ」とは、特に断りのない限り、2以上の置換基が連結基によって結合されているか、あるいは、2以上の置換基が縮合して結合されているものを意味する。
【0044】
また、この明細書において、「*」とは、同じまたは異なる原子もしくは一般式と連結される部分を意味する。
【0045】
この明細書において、「アルキル(alkyl)基」とは、特に断りのない限り、あるアルケニル(alkenyl)やアルキニル(alkynyl)を含んでいない「飽和アルキル(saturated alkyl)基」;および少なくとも一つのアルケニルまたはアルキニルを含んでいる「不飽和アルキル(unsaturated alkyl)基」をいずれも含むものを意味する。前記「アルケニル」とは、少なくとも二つの炭素原子が少なくとも一つの炭素−炭素の二重結合を形成する置換基を意味し、前記「アルキニル基」とは、少なくとも二つの炭素原子が少なくとも一つの炭素−炭素の三重結合を形成する置換基を意味する。なお、前記アルキル基は、分枝鎖状、直鎖状または環状であってもよい。
【0046】
前記アルキル基は、C1〜C30の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であってもよく、より具体的に、C1〜C6のアルキル基、C7〜C10のアルキル基、または、C11〜C20のアルキル基であってもよい。
【0047】
例えば、C1〜C4のアルキル基とは、アルキル鎖に1〜4個の炭素原子が存在するものを意味し、これは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルよりなる群から選ばれることを示す。
【0048】
典型的なアルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。
【0049】
「芳香族基」とは、環状の置換基の全ての元素がp−軌道を有しており、これらのp−軌道が共役(conjugation)を形成している置換基を意味する。その具体例としては、アリール基とヘテロアリール基が挙げられる。
【0050】
「アリール(aryl)基」とは、単一環または融合環(すなわち、炭素原子の隣り合う対を共有する複数の環)置換基を含む。
【0051】
「ヘテロアリール(heteroaryl)基」とは、アリール基内にN、O、SおよびPよりなる群から選ばれるヘテロ原子を1〜3個含み、且つ、残部は炭素であるものを意味する。前記ヘテロアリール基が融合環である場合、それぞれの環ごとに前記ヘテロ原子を1〜3個含んでいてもよい。
【0052】
本発明を明確に説明するために、説明と無関係な部分は省略されており、明細書の全体を通じて同一または類似の構成要素に対しては同じ参照符号を付している。
【0053】
また、図示の各構成要素の大きさおよび厚さは、説明の便宜のために任意に示されているため、本発明は必ずしも図示の大きさおよび厚さには限定されない。
【0054】
さらに、図示の各構成要素の大きさおよび厚さは、説明の便宜のために任意に誇張されているため、本発明は必ずしも図示の大きさおよび厚さには限定されない。
【0055】
図中、複数の層および領域を明確に表現するために膜厚を拡大して示している。そして、図中、説明の便宜のために、一部の層および領域の厚さを誇張している。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとしたとき、これは、他の部分の「真上に」ある場合だけではなく、これらの間に他の部分が存在する場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「真上に」あるとしたとき、これらの間に他の部分が存在しないことを意味する。
【0056】
図1は、本発明の一実施形態による分離膜10の断面を示す模式図であり、前記分離膜10は、支持層11と、ポリマーマトリックス層12と、を備える。前記分離膜10は、支持層11およびポリマーマトリックス層12がこの順に積層されている構造であってもよい。
【0057】
前記支持層11は、下記一般式1で表される構造単位を含む高分子を含む。
【0058】
【化3】

【0059】
式中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、または−CORであり、
前記Rは、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリール基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基であり、
但し、R〜Rのうちの少なくとも一つおよびR〜Rのうちの少なくとも一つは、それぞれ同じまたは異なる−CORであり、
但し、R〜Rのうちの少なくとも一つおよびR〜Rのうちの少なくとも一つは、それぞれ同じまたは異なり、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリーレン基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリーレン基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキレン基であり、
〜Lは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリーレン基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリーレン基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキレン基であり、
前記nおよびmは、それぞれ独立して、0〜150の整数であり、
前記o、p、q、およびrは、それぞれ独立して、0〜100の整数である。
【0060】
前記nおよびmは、具体的に、それぞれ独立して、2〜100の整数であってもよく、さらに具体的に、それぞれ独立して、2〜50の整数であってもよい。
【0061】
前記高分子において、mの平均値が約2〜約100であってもよく、nの平均値が約2〜約100であってもよい。
【0062】
前記o、p、q、およびrは、具体的に、それぞれ独立して、0〜30の整数であってもよく、さらに具体的に、それぞれ独立して、0〜15の整数であってもよい。
【0063】
前記一般式1において、アルキル基またはアルキレン基は、直鎖状または分枝鎖状であってもよい。
【0064】
前記高分子は水に溶解されないため、分離膜として製造し易く、しかも、高親水性および高強度が得られる。
【0065】
前記高分子は、−COR基を有する疎水性のエステル基を含むことになって、水に対して不溶解性でありつつも、セルロース骨格そのものが親水性を示すことができ、アルキル基またはアリール基などの置換基の種類およびその置換度を適切に調節することにより、膜の親水度を適切に調節することができるだけではなく、特定の溶媒への溶解度も調節することができる。これにより、前記高分子を含む膜が、水には溶解されず、かつ、アセトン、酢酸、メタノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、トリフルオロ酢酸(TFA)、テトラヒドロフラン(THF)、ピリジン、メチレンクロリド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テルピネオール、2−ブトキシエチルアセテート、2(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテートなどの特定の有機溶媒には溶解できるように製造され得る。
【0066】
前記高分子は、このような性質を用いて、溶液流延(solvent casting)、湿式紡糸(wet spinning)、乾式紡糸(dry spinning)などの加工が可能であり、溶融点を有することから、射出などの溶融加工および溶融紡糸(melt spinning)などに適用可能である。
【0067】
例えば、前記高分子は、一般式1の構造単位において、R〜Rがアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である場合における置換度(DS)が無水グルコース単位当たり約1〜約2であり、一般式1の構造単位において、−COR基の置換基の置換度(DS)が無水グルコース単位当たり約1〜約2であってもよい。
【0068】
例えば、前記R〜Rがメチル基(Me)である場合、置換度(DS)がそれぞれ約1、1.25、1.5、1.75または2であるとき、前記高分子は−OMe(Meは、メチル基)基をそれぞれ約17、21、25、29、または33重量%含んでいてもよい。
【0069】
前記置換度(DS:Degree of substitution)は、無水グルコース単位当たりの置換された水酸基の平均個数を意味する。無水グルコース単位当たりに最大3つの水酸基が存在するため、単官能性置換体で置換される場合には、理論的な最大置換度(DS)は3である。
【0070】
本発明の一実施形態において、前記一般式1における−COR基の置換基の置換度(DS)が無水グルコース単位当たり約1.2〜約1.8であってもよい。
【0071】
前記R〜Rがいずれも水素ではない場合、前記R〜Rがアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である場合における置換度(DS)と、前記一般式1における−COR基の置換基の置換度(DS)との和が3である。この場合、例えば、前記R〜Rがアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である場合における置換度(DS)が無水グルコース単位当たり約1.75であり、前記一般式1における−COR基の置換基の置換度(DS)が約1.25であってもよい。本発明の他の実施形態において、前記R〜Rがアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である場合における置換度(DS)が無水グルコース単位当たり約1.7であり、前記一般式1における−COR基の置換基の置換度(DS)が約1.3であってもよい。本発明のさらに他の実施形態において、前記R〜Rがアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である場合における置換度(DS)が無水グルコース単位当たり約1.25であり、前記一般式1における−COR基の置換基の置換度(DS)が約1.75であってもよい。
【0072】
前記R〜Rが水素である場合を含めると、前記R〜Rがアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である場合における置換度(DS)と、前記一般式1における−COR基の置換基の置換度(DS)との和が3よりも小さい。
【0073】
前記高分子は、後述する製造方法によって高分子量を有するように製造可能であるため、高強度が得られる。分離膜の気孔率を高めると、強度面で不利になる虞があるため、高分子の場合に高分子量に製造されることにより、強度の側面を補完することが可能になる。
【0074】
このように前記高分子は高分子量に製造可能であるため高強度が得られ、これにより、高気孔率を有するように製造することが可能になる。例えば、前記高分子の重量平均分子量は約20,000〜約800,000であってもよい。他の例を挙げると、前記高分子の重量平均分子量は、粘度などのメンブレンの製膜性に影響する因子を考慮したとき、約200,000〜約300,000であってもよい。重量平均分子量が約500,000以上である場合、高分子の溶解度が大幅に低下する傾向にある。前記高分子が前記範囲の分子量を有するとき、分離膜の製造に適した強度が得られる。
【0075】
以下、前記高分子を製造する方法について説明する。
【0076】
まず、セルロース化合物をエーテル化反応させて、少なくとも一つのヒドロキシ基を有するセルロースエーテル化合物を得た後、前記セルロースエーテル化合物をエステル化反応させてエステル化セルロースエーテルを得ることにより、前記高分子を製造することができる。
【0077】
前記高分子を製造する方法を本発明の一実施形態により詳述すると、まず、セルロースの少なくとも一部のヒドロキシ基の水素原子をアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基(以下、置換基という);および少なくとも一つのヒドロキシ基を含有するアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基(以下、少なくとも一つのヒドロキシ基を含有する置換基という)で置換する。このとき、前記アルキル基または置換基内のアルキル基は、上述したように、直鎖状であってもよく分枝鎖状であってもよい。前記少なくとも一つのヒドロキシ基を含有する置換基の前記少なくとも一つのヒドロキシ基の水素原子は、さらに置換基または少なくとも一つのヒドロキシ基を含有する置換基で置換されてもよい。このように新たに含まれたヒドロキシ基の水素原子に、さらに上述したような置換基または少なくとも一つのヒドロキシ基を含有する置換基が置換されてもよく、このように重複的に置換基が連結されて前記一般式1において繰り返し的に連結された構造である−(0−L−、−(0−L−、−(0−L−、−(0−L−、−(0−L−、および−(0−L−を形成することができる。
【0078】
このように、まず、セルロース化合物を一次的にエーテル化反応させ、これによりセルロースの水素結合が破壊されて非結晶構造に変わる。このようにして合成されたセルロースエーテルは、非結晶構造を有し、且つ、前記含まれたヒドロキシ基は反応性に優れたヒドロキシ基となる。次いで、前記反応性に優れたヒドロキシ基の水素原子を−COR基で置換して(この置換反応をエステル化という、前記Rは、上述した定義の通りである)エステル化させることにより、エステル化されたセルロースエーテルが得られる。
【0079】
前記製造方法により、セルロースを次第にエーテル化およびエステル化させて、ほとんど分子量を減少させず、かつ、エステル化させることができる。すなわち、前記製造方法による場合、エステル化させるためにセルロースの結晶構造を破壊してエステル化反応を行うことが不要になり、セルロースの結晶構造を破壊するために用いられる無機酸などの極性触媒を使用しないことから、極性触媒によってセルロースの主鎖が切断されない結果、高分子量を有するエステル化セルロースエーテルが得られる。このような高分子量のエステル化セルロースエーテルにより製造された分離膜は、高強度であり、耐久性に優れている他、親水性を有する。
【0080】
前記高分子は、セルロースに起因する親水性を有するだけではなく、置換基の種類と置換度を調節して親水性を調節することができ、また、エステル化の度合いに応じて水溶性または水不溶性の性質を膜に与えることが可能になる。例えば、水処理膜として用いたい場合、水不溶性になるようにエステル化の度合いを調節することができる。本発明の一実施形態において、水不溶性を与えるために、前記一般式1における−CORの置換基の置換度(DS)が無水グルコース単位当たり約1〜約2.6であってもよく、具体的に、約1.1〜約2.3であってもよく、さらに具体的に、約1.1〜約1.9であってもよい。
【0081】
前記高分子を含む分離膜の親水度は、前記分離膜の表面に水(液滴)を滴下して接触角を測定する方法により測ることができる。例えば、前記RCO−基の置換度は、滴定(titration)によって測定して調節することができる。
【0082】
例えば、前記高分子を含む支持層11の水への接触角が約50〜約65°であってもよい。
【0083】
また、接触角は、成膜に際して表面粗さ(roughness)によって増大されるため、気孔の構造にも大きく影響される。このため、接触角から間接的に気孔特性を把握することが可能である。
【0084】
細い気孔に初めて水が入るとき、疎水性素材の場合には、強く押し込むことや親水処理が求められるのに対し、親水性素材の場合には、濡れ性が良好であるため、浸透だけで気孔に水が入り易くなり、死気孔(dead pore)の発生を低減することができる。また、疎水性素材はメンブレンの駆動時にバブルなどのトラップが発生する虞があるのに対し、親水性素材は物質移動(mass transfer)の側面で有利になる結果、死気孔の発生を低減することができる。
【0085】
前記高分子を含む支持層11は、親水性に優れているため、透水抵抗度を低めることができる。
【0086】
前記支持層11は、スキン層11aおよび多孔性層11bにより形成された単一膜に製造されてもよい(図1参照)。例えば、前記高分子を用い、非溶媒誘導相分離法(Non−slovent Induced Phase Separation;NIPS)によって、スキン層11aおよび多孔性層11bにより形成された単一膜を製造することができる。単一膜とは、同じ物質により形成された膜を意味する。スキン層11aは、多孔性層11bよりも密度が高い。多孔性層11bは、様々な気孔構造を有するものとして実現可能であり、その気孔の形状、気孔率などは、実現しようとする分離膜の種類に応じて変わる。例えば、指状(finger−like)構造、スポンジ状構造、指状/スポンジ状の混合構造などがある。図1には、指状構造を有する多孔性層11bが示してある(図1参照)。図1に示すように、指状構造とは、指状の気孔が膜の表面と略垂直方向に形成されている構造を意味する。
【0087】
具体的に、多孔性層11bにおいて、前記分離膜10の表面と平行な方向の断面において前記指状構造を形成する一つの指状の気孔の最長径が約10μm〜約50μmであり、前記一つの指状の気孔の最長径の平均は約20μm〜約40μmであってもよい。なお、分離膜10の表面と平行な方向に隣り合う両指状間の厚さは、約1μm〜約20μmであってもよい。
【0088】
このような気孔構造を有する多孔性層11bを有する支持層11の気孔度が約50%〜約80%であってもよい。前記気孔度は、膜全体の体積に気孔が占める相対体積を意味するものであり、公知の方法を用いて、商業的に入手可能な機器により膜の気孔体積を測定することができる。
【0089】
一方、下記数式1によって気孔度(ε)を実験的に測定することもできる。下記数式1によって測定された気孔度(ε)は、実験的な測定値であり、前記気孔体積とは統一された数値に計算されなくてもよい。
【0090】
【数5】

【0091】
式中、mは、まず、膜を水に含浸させて水を含ませた後の、水を含んでいる膜の質量(g)であり、mは、乾燥された膜の質量(g)であり、ρは、水の密度(g/cm)であり、ρは、膜を構成するポリマーの密度(g/cm)である。
【0092】
支持層11は、気孔度(ε)が約50%〜約95%であってもよい。例えば、前記支持層11は、気孔度(ε)が約70%〜約90%であってもよい。
【0093】
スキン層11aおよび多孔性層11bの膜厚比は、約1/10〜約1/400であってもよい。
【0094】
例えば、前記スキン層11aの膜厚は、約0.01μm〜約20μmであってもよい。
【0095】
例えば、支持層11の膜厚は、約200μm未満、約10μm〜約200μmであってもよく、例えば、約25μm〜約100μmである。
【0096】
前記分離膜10は、ポリマーマトリックス層12を含む複合膜として製造されて、支持層11単独で用いられる場合に比べて、阻止率(rejection rate)を高める。複合膜とは、異種の物質により形成された膜を意味する。前記分離膜10は、支持層11およびポリマーマトリックス層12がそれぞれ異種の材質により形成された複合膜である。
【0097】
前記ポリマーマトリックス層12は透水性であり、分離対象物質に対して非透過性を示す半透膜である。前記ポリマーマトリックス層12は、緻密高分子膜(dense polymer layer)に形成されて活性層として働くことができ、このように緻密高分子膜に形成されることから、前記ポリマーマトリックス層12は、前記支持層11よりも分離対象物質に対する阻止率が高い。上述したように、支持層11は、指状構造などの気孔を有する多孔性層を備えるが、前記ポリマーマトリックス層12は、非多孔性(non−porous)の緻密質の高分子膜に形成されるため、前記ポリマーマトリックス層12は、前記支持層11よりも分離対象物質に対する阻止率が高くなる。
【0098】
このように、前記ポリマーマトリックス層12は分離膜において活性層として用いられるために製造される程度の緻密高分子膜に製造可能であり、例えば、分離対象物質に対する阻止率が約50〜約99.9%であってもよい。前記阻止率は、(1−Cp/Cf)×100で計算される。前記Cpは、ポリマーマトリックス層を透過した分離対象物質の濃度であり、前記Cfは、分離対象物質を含む流入溶液における濃度である。具体的に、前記ポリマーマトリックス層12は、分離対象物質に対する阻止率が約80〜約99.9%であってもよく、さらに具体的に、分離対象物質に対する阻止率が約90〜約99.9%であってもよい。
【0099】
前記ポリマーマトリックス層12の素材は、分離膜の素材として用いられる高分子であれば、特に制限なしに使用可能であり、緻密高分子膜を形成可能な高分子であれば、特に制限なしに使用可能である。その具体例として、前記ポリマーマトリックス層12は、ポリアミド、架橋結合されたポリアミド、ポリアミド−ヒドラジド、ポリ(アミド−イミド)、ポリイミド、ポリ(アリルアミン)ヒドロクロリド/ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PAH/PSS)、ポリベンズイミダゾール、スルホン化されたポリ(アリーレンエーテルスルホン)およびこれらの組み合わせから選ばれた一つを含むか、あるいは、ポリアミド、架橋結合されたポリアミド、ポリアミド−ヒドラジド、ポリ(アミド−イミド)、ポリイミド、ポリ(アリルアミン)ヒドロクロリド/ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PAH/PSS)、ポリベンズイミダゾール、スルホン化されたポリ(アリーレンエーテルスルホン)およびこれらの組み合わせから選ばれた一つと無機物との複合体を含む。前記無機物の例としては、ゼオライト、金属酸化物、カーボンナノチューブなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0100】
例えば、前記ポリアミドは、下記一般式5の構造単位を含むものであってもよい。
【0101】
【化4】

【0102】
前記架橋結合されたポリアミドは、前記一般式5の構造単位と、下記一般式6の構造単位とを含むものであってもよい。
【0103】
【化5】

【0104】
前記ポリアミド−ヒドラジドは、下記一般式7の構造単位を含むものであってもよい。
【0105】
【化6】

【0106】
前記ポリ(アミド−イミド)は、下記一般式8の構造単位を含むものであってもよい。
【0107】
【化7】

【0108】
前記ポリイミドは、下記一般式9の構造単位を含むものであってもよい。
【0109】
【化8】

【0110】
前記ポリベンズイミダゾールは、下記一般式10の構造単位を含むものであってもよい。
【0111】
【化9】

【0112】
前記PAH/PSSは、下記一般式11の構造単位を含むものであってもよい。
【0113】
【化10】

【0114】
前記スルホン化されたポリ(アリーレンエーテルスルホン)は、下記一般式12および一般式13の構造単位を含むものであってもよい。式中、sおよびtは、前記各構造単位を複数含んでいてもよいことを示すための正数である。
【0115】
【化11】

【0116】
式中、Mはアルカリ金属である。
【0117】
【化12】

【0118】
分離膜の用途に応じて、ポリマーマトリックス層12を形成する高分子の種類を選択することができる。例えば、海水を淡水化させるための正浸透水処理装置に用いるための分離膜の場合、海水中のNaClが除去される必要があり、このような用途の分離膜を製造するために、前記ポリマーマトリックス層12は非気孔性のポリアミド層から製造可能である。
【0119】
分離膜10は、ポリマーマトリックス層12を有することにより、透水性が悪化することがあるため、これを極力抑えるために、ポリマーマトリックス層12は、できる限り薄くして透水性を確保する必要がある。例えば、ポリマーマトリックス層12の膜厚は、約0.01μm〜約0.5μmであってもよい。例えば、ポリマーマトリックス層12の膜厚は、約0.1μm〜約0.5μmであってもよい。
【0120】
ポリマーマトリックス層12は、支持層11の片面または両面に積層されていてもよい。図1は、ポリマーマトリックス層12が支持層11のスキン層11aの上に積層されてなる分離膜10を示している。前記ポリマーマトリックス層12は、界面重合反応によって前記支持層11に積層されていてもよい。
【0121】
前記分離膜10は、下記数式2によって定義される構造因子(structure factor;S)の値を計算してその膜の特性を把握することができる。
【0122】
前記構造因子Sは、下記数式2により定義される。
【0123】
【数6】

【0124】
式中、Aは、逆浸透(RO)システムにおける水の固有透過度(intrinsic water permeability)であり、Bは、逆浸透(RO)システムにおける溶質透過係数であり、AおよびBは、それぞれ下記式によって決められる。
【0125】
【数7】

【0126】
【数8】

は、逆浸透(RO)システムにおける透水度(単位:LMH)であり、△Pは、逆浸透(RO)システムの適用圧力であり、Rは、逆浸透(RO)システムにおける脱塩率(salt rejection)であり、R=1−cp/cb(cbは、バルク流入水の塩濃度であり、cpは、透過水(permeate)の塩濃度である)で計算され、kは、クロスフローセル(crossflow cell)における物質移動係数である。
【0127】
上記の数式2に戻り、AおよびBは、上述のようにして計算されて定数値に定められ、Dは、正浸透システムの誘導溶質の拡散係数であり、Jは、正浸透システムにおける膜の透水流量であり、ΠDbは、正浸透システムにおける誘導溶液のバルク浸透圧である。Kは、K=tτ/Dεで計算される値であり、tは、分離膜の膜厚であり、τは、分離膜の屈曲率であり、εは、分離膜の孔隙率である。
【0128】
膜の屈曲率(τ)は、膜の膜厚に対する膜の内部の水の実質的な移動経路の割合である。「屈曲率が1である」とは、水が膜の厚さ方向に何ら妨げられることなく垂直に通過することができるということを意味する。もし、膜の内部に水の移動を妨げるような構造が存在すれば(例えば、膜の密度が高い場合)、屈曲率が増大することがある。このため、屈曲率の下限は1であり、単位は割合であるため存在しない。
【0129】
膜の孔隙率(ε)は、膜の内部の体積に対する孔隙の割合を意味する。すなわち、「孔隙率が1である」とは、分離膜の内部が中空であることを意味する。孔隙率が小さいほど密度が高いことが認められる。孔隙率もまた割合であるため、単位は存在しない。
【0130】
このように定義される構造因子(S)は、拡散による物質移動の側面で膜の構造による抵抗度を意味するものであると認められる。このため、構造因子(S)の値が大きくなるほど、透水に対する抵抗が大きくなる。
【0131】
前記分離膜10に対する構造因子(S)は、約10〜約1500であってもよい。また、例えば、前記分離膜10に対する構造因子(S)は、約25〜約1500であってもよい。
【0132】
前記分離膜10は、用途に応じて、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜または正浸透膜であってもよい。分離対象となる粒子の粒径に応じて、上記の分離膜に分類することが可能である。これらの種類の分離膜を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法によって気孔径、気孔構造などを調節して製造することができる。
【0133】
前記分離膜10は、例えば、浄水処理、廃水処理および再利用、海水の淡水化など水処理分野だけではなく、浸透圧を用いた塩分濃度差発電にも適用可能である。前記分離膜10は、例えば、正浸透方式の水処理装置に使用可能であるが、本発明はこれに制限されることはない。
【0134】
本発明の他の実施形態は、前記分離膜10を製造する方法を提供する。
【0135】
前記分離膜10を製造する方法は、下記一般式1で表される構造単位を含む高分子および有機溶媒を含む高分子溶液を用意するステップと、前記高分子溶液を基材に塗布するステップと、前記高分子溶液が塗布された基材を非溶媒に沈殿させて、スキン層および多孔性層により形成された支持層11を製造するステップと、前記支持層11の片面または両面の上に緻密高分子形成用の高分子を界面重合反応させて、ポリマーマトリックス層を形成するステップと、を含む。
【0136】
【化13】

【0137】
式中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、または−CORであり、
前記Rは、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリール基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基であり、
但し、R〜Rのうちの少なくとも一つおよびR〜Rのうちの少なくとも一つは、それぞれ同じまたは異なる−CORであり、
但し、R〜Rのうちの少なくとも一つおよびR〜Rのうちの少なくとも一つは、それぞれ同じまたは異なる、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリーレン基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリーレン基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキレン基であり、
〜Lは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリーレン基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリーレン基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキレン基であり、
前記nおよびmは、それぞれ独立して、0〜150の整数であり、
前記o、p、qおよびrは、それぞれ独立して、0〜100の整数である。
【0138】
前記ポリマーマトリックス層12を形成する高分子を界面重合するために使用可能な単量体は、ポリアミド、架橋結合されたポリアミド、ポリアミド−ヒドラジド、ポリ(アミド−イミド)、ポリイミド、ポリ(アリルアミン)ヒドロクロリド/ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PAH/PSS)、ポリベンズイミダゾール、スルホン化されたポリ(アリーレンエーテルスルホン)およびこれらの組み合わせの高分子を形成できる単量体であってもよい。前記ポリマーマトリックス層12形成用の高分子と無機物複合体との錯体型の物質によりポリマーマトリックス層12を形成することもできる。ポリマーマトリックス層12形成用の無機物を界面重合時に添加して前記錯体を形成することができる。前記無機物の例としては、ゼオライト、金属酸化物、カーボンナノチューブなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0139】
一般に、高分子溶液により製膜を行う際に、高分子溶液の濃度を下げて指状構造の形成を有利にするか、あるいは、気孔度を高めて透水性の側面で好適なものにするが、製膜を行う(または、欠陥が発生しない所定レベルの膜を形成する)ためには、所定レベル以上の濃度が必要となる。前記所定レベルの濃度は、「臨界高分子濃度(critical polymer concentration)」の値であってもよい(Chung et al.、1997、Peng et al.、2008)。高分子濃度を変えてせん断粘度(shear viscosity)を測定すると、高分子濃度が増大するに伴い、せん断粘度が徐々に増大していて、特定の濃度値以上からは増加率が急増する。臨界高分子濃度は、低い高分子濃度におけるせん断粘度の外挿ラインと、高い高分子濃度におけるせん断粘度の外挿ラインとが遭遇する点で決められる。このようにして決められた臨界高分子濃度以上に高分子溶液の濃度を調節して製膜を行ってはじめて、欠陥のない製膜が行われる。
【0140】
臨界高分子濃度は、高分子の種類によるが、前記一般式1で表される構造単位を含む高分子は、公知の他の分離膜形成用の高分子に比べて、前記製膜可能な最低濃度を下げることができ、その結果、気孔度が高められる。
【0141】
他方、正浸透分離膜において、誘導溶液の塩が流入水に向かって逆に通過する現象が発生することがあるが、このような塩の逆透過量(reverse salt flux)が高くなると、誘導溶液の濃度が下がる結果、浸透圧が低くなってしまう。このため、優れた膜特性を得るために、塩の逆透過量を下げる必要がある。前記高分子溶液の濃度を下げる場合、かえって塩の逆透過量が高くなることがあるため、これを考慮にいれて、適切な範囲の高分子濃度を選択すればよい。
【0142】
例えば、前記高分子溶液は、前記一般式1で表される構造単位を含む高分子を約9〜約15重量%含んでいてもよい。例えば、前記高分子溶液は、約10〜約12重量%の前記高分子を含んでいてもよい。前記範囲の濃度を有する高分子溶液を塗布して製膜を行う場合、膜の欠陥(defect)を低減する側面で好ましい。
【0143】
高分子溶液の基材への塗布(casting)は、例えば、65±5%の相対湿度と25±1℃の温度の条件下で行うことができる。
【0144】
前記高分子溶液が塗布された基材を非溶媒に沈殿させるステップは、非溶媒凝固浴に高分子溶液が塗布された基材を沈殿させることにより製膜して行うことができる。高分子溶液内の有機溶媒と非溶媒は混和性を有しつつも、高分子は非溶媒に不溶性であるため、前記高分子溶液が塗布された基材を非溶媒に沈殿させると、スキン層11aおよび多孔性層11bが形成されて製膜が行われる。
【0145】
非溶媒凝固浴に沈殿させる前に蒸発するステップをさらに行ってもよく、蒸発ステップは、約20℃〜約40℃において、約1分〜約30分間行うことができる。
【0146】
前記凝固浴としては、例えば、蒸留水を用いることができ、約15℃〜約50℃の温度に合わせることができる。凝固浴への沈殿時間は、約1分〜約30分間行うことができる。
【0147】
非溶媒凝固浴に沈殿させて製膜を行った後、約50℃〜約100℃において焼き鈍しなどの熱処理を行うことができる。
【0148】
前記蒸発時間と、製膜後の熱処理温度および時間などの工程条件を調節して、分離膜の内部構造および気孔構造を変えることができる。上記の例示の範囲の工程条件によるとき、分離膜の表面気孔が小さくなると共に、内部気孔度が大きくなる可能性が高くなる。
【0149】
このようにして、スキン層11aおよび指状構造の内部気孔を有する多孔性層11bを形成することができ、前記多孔性層11bによって多孔化が図れる結果、内部濃度分極が極力抑えられる。前記指状構造の多孔性層11bは、透過流量の確保の側面で非常に有利な構造である。
【0150】
前記高分子に関する詳細な説明は、上述の通りである。
【0151】
前記分離膜10を製造する方法において、前記高分子溶液は、前記高分子約9〜約15重量%、気孔形成剤約0〜約10重量%および有機溶媒約75〜約91重量%を含んでいてもよい。前記組成比の範囲は、非溶媒誘導相分離法を用いて分離膜を製造する上で好適な範囲である。
【0152】
前記非溶媒誘導相分離法は、重合体を溶媒に溶かした後、これをさらに非溶媒に浸漬して分離膜を製造する方法であり、前記分離膜の製造方法は、前記非溶媒誘導相分離法を用いるものである。このような非溶媒誘導相分離法は、分離膜が製造し易く、製造コストが安価である他、種々の分離膜の製造に応用可能である。
【0153】
以上述べたように、前記高分子は高分子量に製造可能であるため、高強度が得られる結果、非溶媒誘導相分離法を適用して指状構造を形成する上で好適である。
【0154】
前記基材は、ガラス板またはポリエステル不織布であってもよいが、本発明はこれらに制限されない。
【0155】
前記高分子溶液を基材に塗布するステップは、前記高分子溶液を前記基材に約25〜約200μmの膜厚にて塗布するステップであってもよい。前記膜厚の範囲は、目的とする分離膜の膜厚に応じて適切に調節可能である。
【0156】
前記気孔形成剤は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチルオキサゾリン、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エタノール、メタノール、アセトン、リン酸、酢酸、プロパン酸、塩化リチウム、硝酸リチウム、過塩素酸リチウムまたはこれらの組み合わせであってもよいが、本発明はこれらに制限されない。
【0157】
前記有機溶媒は、低沸点(約120℃未満の沸点)のアセトン、酢酸メタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1,4−ジオキサン、高沸点(約150℃〜約300℃の沸点)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはこれらの組み合わせであってもよいが、本発明はこれらに制限されない。
【0158】
前記非溶媒は、前記高分子が溶解されない溶媒であり、一般に、容易に入手可能であり、しかも、価格面で有利な水が使用可能である。
【0159】
前記非溶媒と前記溶媒は、混和性を有する必要がある。
【0160】
以上のようにして支持層11を製造した後、ポリマーマトリックス層12を界面重合反応によって支持層11の少なくとも片面の上に積層することができる。例えば、支持層11のスキン層11aの上にポリマーマトリックス層12を積層することができる。
【0161】
まず、ポリマーマトリックス層12を形成する高分子を製造するための単量体を用意する。前記ポリマーマトリックス層12を形成する高分子およびその単量体は、上述した通りである。このようにして用意された単量体の一部は水溶液とし、残りの一部は水と混ざらない有機溶媒に混合して溶液として、合計で2種類の単量体を含む溶液を用意する。このとき、前記ポリマーマトリックス層12を形成するために用意された単量体に無機物をさらに混合した混合溶液を用意してもよい。前記2種類の溶液は、水と有機溶媒とが互いに混ざらないため、混合すれば界面を形成しつつ混ざらず、前記界面において両溶液に含まれている単量体が重合されるが、これを界面重合と呼ぶ。前記ポリマーマトリックス層12は、このような界面重合によって形成可能である。界面重合によって極めて薄膜、例えば、ナノ寸法の膜を形成することができるので、界面重合によって形成されたポリマーマトリックス層12は、その膜厚を極めて薄くして超薄膜状に形成することができる。
【0162】
前記分離膜10の製造に際しては、支持層11を製造し、界面重合によってポリマーマトリックス層12を積層して複合膜を形成した後、焼き鈍し工程をさらに行うことができる。例えば、焼き鈍し工程は、約60〜約95℃の温度において約1分〜30分間行うことができる。一般に、セルロース系高分子は、熱的な焼き鈍し過程を通じて膜の気孔径を減らすことができ、複合膜の製造に際しても熱的な焼き鈍し過程が行われ得る。
【0163】
前記方法によって製造された分離膜10のスキン層11aは、上述した気孔添加剤を用いることにより、適切な膜厚と密度を有するように製造されるので、今後、熱的な焼き鈍し工程を行った後にも欠陥が発生せず、ポリマーマトリックス層12が積層されて複合膜として形成できるという表面特性を有することができる。
【0164】
前記分離膜10に焼き鈍し工程をさらに行うと、焼き鈍しの前後の透水流量が減るが、これは、気孔径が小さく調節されたためであると認められる。焼き鈍し工程を行うことにより、所望のレベルの透水流量特性を持たせることができる。例えば、焼き鈍しの温度、時間などの条件を適宜に調節して正浸透分離膜に適した透水流量を持たせることができる。
【0165】
本発明のさらに他の実施形態は、精製されるべき不純物が含まれている流入水と、流入水よりも高い浸透圧を有する浸透誘導溶液と、片面は前記流入水と接し、反対面は前記浸透誘導溶液と接するように位置する分離膜と、浸透誘導溶液の誘導溶質を分離する回収システムと、前記回収システムによって分離された浸透誘導溶液の誘導溶質を前記分離膜10に接する浸透誘導溶液に再投入する連結手段と、を備える正浸透水処理装置を提供する。
【0166】
前記正浸透水処理装置は、前記流入水から前記浸透誘導溶液へと浸透圧によって前記半透膜を通過した水を含む浸透誘導溶液に対して、前記回収システムによって誘導溶質を分離した残部を処理水として排出する手段をさらに備えていてもよい。
【0167】
前記分離膜10に関する詳細な説明は、上述した通りである。
【0168】
正浸透工程に用いられる分離膜は、親水性を帯びるほど、膜厚が薄いほど、しかも、孔隙率が高いほど透過流量が改善される。このため、上述した分離膜は、このような正浸透工程に好適に用いられる。
【0169】
前記正浸透水処理装置の作動機構を説明すると、処理対象となる流入水中の水を、浸透圧を用いて、高濃度の浸透誘導溶液へと分離膜10を通過させて移動させ、前記流入水中の水が含まれている浸透誘導溶液を回収システムに移動させて誘導溶質を分離し、その残部を処理水として排出する。なお、前記分離された誘導溶質は、さらに処理対象となる流入水と接するように再使用する。図2は、前記機構により作動する正浸透水処理装置の模式図である。
【0170】
前記回収システムは、浸透誘導溶液から誘導溶質を分離するための装置として設けられる。
【0171】
前記正浸透工程は、流入水に比べて高濃度の浸透誘導溶液を用いて、流入水から浸透誘導溶液に向かって水分子を移動させた後、浸透誘導溶液から誘導溶質は分離して再使用して淡水を生産する。
【0172】
前記流入水は、例えば、海水(sea water)、汽水(brackish water)、廃水、飲用水として処理されるべき水道水などであってもよい。
【0173】
例えば、前記正浸透水処理装置は、浄水処理、廃水処理および再利用、ならびに海水の淡水化などに使用可能である。
【0174】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げる。但し、下記の実施例は本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これらにより本発明が制限されることはない。
【実施例】
【0175】
合成例1:アセチル化セルロースエーテル高分子の合成
攪拌器付き3Lの反応機に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース70g、酢酸無水物1120gおよびピリジン350gを投入した後、200rpmにて攪拌しつつ90℃において3時間反応させて、アセチル化セルロースエーテルを製造する。このとき、ピリジンが触媒として用いられる。このようにして製造されたアセチル化セルロースエーテルのメチル基置換度(DS)は1.84であり、ヒドロキシプロピルのモル置換度(MS:degree of molar substitution)は0.25であり、アセチル基の置換度(DS)は1.15であり、重量平均分子量は280,000である。
【0176】
実施例1
前記合成例1に従い製造された高分子9重量%、および気孔形成剤としてのLiCl4重量%をジメチルアセトアミド(DMAC)と混合して高分子溶液を製造する。前記高分子溶液をポリエステル不織布に150μmの膜厚にて塗布する。塗布した基板を25℃の脱イオン水からなる凝固浴に浸す。形成されたメンブレンに脱イオン水を流して残留溶媒を除去して(洗い流して)分離膜の支持層を製造する。次いで、前記製造された支持層を2重量%の1,3−フェニレンジアミン(MPD)水溶液に120秒間含浸した後、膜の表面から余剰の溶液を除去する。次いで、MPDを含んでいる支持層をIsopar−C(炭化水素溶剤、パラフィン系)内の0.1重量%の1,3,5−ベンゼントリカルボニルトリクロリド(TMC)溶液に60秒間含浸する。この過程で、超薄膜ポリアミド層が緻密な高分子膜としての第2の層として形成された複合膜が製造される。次いで、前記複合膜を0.2重量%のNaCO水溶液および脱イオン水で洗浄して、最終的に分離膜を製造する。
【0177】
実施例2
高分子溶液を合成例1に従い製造された高分子10重量%を含むように製造して用いた以外は、実施例1の方法と同様にして分離膜を製造する。
【0178】
実施例3
高分子溶液を合成例1に従い製造された高分子11重量%を含むように製造して用いた以外は、実施例1の方法と同様にして分離膜を製造する。
【0179】
実施例4
高分子溶液を合成例1に従い製造された高分子12重量%を含むように製造して用いた以外は、実施例1の方法と同様にして分離膜を製造する。
【0180】
比較例1
前記合成例1に従い製造された高分子10重量%、および気孔形成剤としてのLiCl4重量%をジメチルアセトアミド(DMAC)と混合して高分子溶液を製造する。前記高分子溶液をポリエステル不織布に150μmの膜厚にて塗布する。塗布した基板を25℃の脱イオン水からなる凝固浴に浸す。形成されたメンブレンに脱イオン水を流して残留溶媒を除去して(洗い流して)分離膜の支持層を製造する。
【0181】
比較例2
高分子溶液を合成例1に従い製造された高分子11重量%を含むように製造して用いた以外は、比較例1の方法と同様にして分離膜を製造する。
【0182】
比較例3
高分子溶液を合成例1に従い製造された高分子12重量%を含むように製造して用いた以外は、比較例1の方法と同様にして分離膜を製造する。
【0183】
図3Aおよび図3Bは、実施例2に従い製造された支持層に対して倍率を異ならせて撮像した走査電子顕微鏡(SEM)写真である。図3Aから、支持層内のスキン層が5μmにて形成されていることが確認でき、また、図3Aおよび図3Bから、実施例2に従い製造された分離膜は、指状構造がしっかりと形成された多孔性層を有していることが確認できる。
【0184】
実施例2の分離膜に対して、下記数式1におけるm、m、ρおよびρ(これらのm、m、ρおよびρは、発明の詳細な説明の欄における定義の通りである)をそれぞれ測定した後、これらにより気孔度(ε)を計算する。その値は91%である。
【0185】
【数9】

【0186】
実施例2〜4の分離膜に対して、下記数式2によって計算された構造因子(S)の値を計算し、下記表1に示す。
【0187】
【数10】

【0188】
式中、それぞれのパラメータが意味するところは、発明の詳細な説明の欄に示す通りである。
【0189】
実験室規模のクロスフロー逆浸透テスト単位でAおよびBの値を決めるための因子を測定して決めた。有効分離膜の面積は60cmであり、クロスフロー速度は10.7cm/sであり、温度は25±0.5℃である。まず、400psi(27.6bar)で脱イオン水を用いて分離膜を圧密化させる。体積透過率を分離膜の面積で除算すれば、
【数11】

が計算される。脱塩率は、400psi(27.6bar)において適用圧力を維持して特定し、電気伝導度測定機器を用いて、200ppmのNaCl溶液の除去率(rejection)を測定する。
【0190】
逆浸透システムにおける水の固有透過度(A)を下記式によって計算する。
【0191】
【数12】

【0192】
測定されたNaCl除去率(R)は、R=1−cp/cb(cbは、バルク流入水の塩濃度であり、cpは、透過水の塩濃度である)で計算する。
【0193】
kは、クロスフローセルにおける物質移動係数であり、矩形セルの形状と層流(laminar flow)が補正されて計算される。
【0194】
このように定数として得られたAおよびBの値を下記表1に示す。
【0195】
前記分離膜の性能を正浸透モードにおいて評価するために、正浸透セルにおいてテストを行う。単位セルは、77mmの長さ、26mmの幅および3mmの深さのチャンネルで形成し、有効分離膜の面積は、両面ともに20.2cmである。単位セルは、メッシュスペーサーなしでコーカレント・クロスフロー(co−current crossflow)で作動され、直交流速度(crossflow velocity)は10.7cm/sであり、水浴(water bath)は流入水および誘導溶液が両方とも25±0.5℃の温度に維持される。初期流入水および誘導溶液の体積は、両方とも2.0Lである。1.5MのNaCl溶液を誘導溶質として用い、脱イオン水を流入水として用いる。結果的なバルク浸透圧差は、75.6barである(OLI Systems, Inc.(Morris Plains, NJ)のソフトウェアパッケージにより計算される)。透水流れが安定化した後、1時間かけて平均を測定する。水の体積透過率が誘導溶液の体積に比べて相対的に低いため、誘導溶液の濃度は一定であると見なす。発明の詳細な説明の欄において既に説明した方法に準じてK値を計算し、前記数式2の構造因子(S)を計算して下記表1に示す。
【0196】
【表1】

【0197】
上記表1における実施例2〜4の構造因子(S)の値より、実施例2〜4に従い製造された分離膜は、正浸透分離膜として好適に用いられるような特性を有することが確認できる。
【0198】
正浸透工程における透水流量特性の評価
各実施例および比較例に従い製造された分離膜を正浸透工程に適用して、透水流量およびNaCl塩の逆透過量を測定する。
【0199】
正浸透工程の条件は、脱イオン水を流入水とし、誘導溶液としては1.5M濃度のNaCl(58.44g/mol)を用い、実施例2〜4および比較例2〜4の分離膜は2.6cm×7.7cmのサイズに切断して用い、直交流速度は10.7cm/sである。
【0200】
図4は、実施例1〜4の分離膜を正浸透分離膜として適用するときの透水流量を測定して示すグラフである。透水流量の単位は、LMHにて示し、前記LMHは、単位時間当たりに通過する水の量を意味する。前記Lは、膜を通過する水の量(l)、前記Mは、膜の面積(m)、前記Hは、通過する時間(hour)である。すなわち、1mの膜面積あたりに1時間で何リットルの水が通過したかに対する評価単位である。
【0201】
図5は、実施例2〜4の分離膜を正浸透分離膜として適用するときのNaCl塩の逆透過量を測定して示すグラフである。塩の逆透過量の単位はgMHにて示し、前記gMHは、単位時間あたりに通過する塩の量を意味する。前記gは、膜を通過する塩の質量(g)、前記Mは、膜の面積(m)、前記Hは、通過する時間(hour)である。すなわち、1mの膜面積あたりに1時間で塩が通過する質量に対する測定単位である。
【0202】
図6は、比較例1〜3の分離膜を正浸透分離膜として適用するときの透水流量およびNaCl塩の逆透過量を測定して示すグラフである。図6の結果から、比較例1〜3の分離膜は、実施例2〜4の分離膜に比べて、NaCl塩の逆透過量の数値が極めて大きい。
【0203】
実施例の分離膜は、正浸透分離膜として適用して好適なレベルの透水流量特性を示すことが確認でき、NaCl塩の逆透過量は、比較例の分離膜に比べて著しく減少することが確認できる。
【0204】
以上、本発明の好適な実施形態を詳述したが、本発明の権利範囲はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に定義されている本発明の基本概念を用いた当業者の種々の変形および改良もまた本発明の権利範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0205】
10:分離膜
11:支持層
11a:スキン層
11b:多孔性層
12:ポリマーマトリックス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1で表される構造単位を含む高分子を含む支持層と、
ポリマーマトリックス層と、
を備える分離膜:
【化1】

式中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、または−CORであり、
前記Rは、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリール基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基であり、
但し、R〜Rのうちの少なくとも一つおよびR〜Rのうちの少なくとも一つは、それぞれ同じまたは異なる−CORであり、
但し、R〜Rのうちの少なくとも一つおよびR〜Rのうちの少なくとも一つは、それぞれ同じまたは異なり、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリーレン基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリーレン基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキレン基であり、
〜Lは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリーレン基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリーレン基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキレン基であり、
前記nおよびmは、それぞれ独立して、0〜150の整数であり、
前記o、p、q、およびrは、それぞれ独立して、0〜100の整数である。
【請求項2】
前記高分子は、前記R〜Rがアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である場合における置換度(DS)が無水グルコース単位当たり1〜2であり、前記一般式1における−CORの置換基の置換度(DS)が無水グルコース単位当たり1〜2である、請求項1に記載の分離膜。
【請求項3】
前記一般式1における−CORの置換基の置換度(DS)が、無水グルコース単位当たり1.2〜1.8である、請求項1に記載の分離膜。
【請求項4】
前記高分子の重量平均分子量は、20,000〜800,000である、請求項1に記載の分離膜。
【請求項5】
前記支持層は、スキン層および多孔性層により形成された単一膜であり、前記スキン層の密度が前記多孔性層の密度よりも高い、請求項1に記載の分離膜。
【請求項6】
前記多孔性層は、指状構造の気孔を有するものである、請求項5に記載の分離膜。
【請求項7】
前記多孔性層は、前記分離膜の表面と平行な方向の断面において前記指状構造を形成する一つの指状の気孔の最長径が10μm〜50μmであり、前記一つの指状の気孔の最長径の平均は20μm〜40μmであり、前記分離膜の表面と平行な方向に隣り合う両指状間の厚さは1μm〜20μmである、請求項6に記載の分離膜。
【請求項8】
前記支持層は、気孔度が50〜80体積%である、請求項1に記載の分離膜。
【請求項9】
前記支持層は、下記数式1で計算された気孔度(ε)が50%〜95%である、 請求項1に記載の分離膜:
【数1】

式中、mは水を含んでいる前記支持層の質量(g)であり、mは乾燥された膜の質量(g)であり、ρは水の密度(g/cm)であり、ρは前記支持層を構成する高分子の密度(g/cm)である。
【請求項10】
前記ポリマーマトリックス層は透水性であり、且つ、分離対象物質に対しては非透過性を示す半透膜である、請求項1に記載の分離膜。
【請求項11】
前記ポリマーマトリックス層は、分離対象物質に対する阻止率が50〜99.9%である、請求項1に記載の分離膜。
【請求項12】
前記ポリマーマトリックス層が、前記支持層の片面または両面に形成されている、請求項1に記載の分離膜。
【請求項13】
前記ポリマーマトリックス層が、前記支持層のスキン層と接して片面に形成されている、請求項5に記載の分離膜。
【請求項14】
前記ポリマーマトリックス層は、ポリアミド、架橋結合されたポリアミド、ポリアミド−ヒドラジド、ポリ(アミド−イミド)、ポリイミド、ポリ(アリルアミン)ヒドロクロリド/ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PAH/PSS)、ポリベンズイミダゾール、スルホン化されたポリ(アリーレンエーテルスルホン)およびこれらの組み合わせから選ばれたいずれか一種を含むか、あるいは、ポリアミド、架橋結合されたポリアミド、ポリアミド−ヒドラジド、ポリ(アミド−イミド)、ポリイミド、ポリ(アリルアミン)ヒドロクロリド/ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PAH/PSS)、ポリベンズイミダゾール、スルホン化されたポリ(アリーレンエーテルスルホン)およびこれらの組み合わせから選ばれたいずれか一種と無機物との複合体を含む、請求項1に記載の分離膜。
【請求項15】
前記ポリマーマトリックス層の膜厚は、0.01μm〜0.5μmである、 請求項1に記載の分離膜。
【請求項16】
前記分離膜に対して計算された下記数式2によって定義される構造因子(S)が10〜1500である、請求項1に記載の分離膜:
【数2】

式中、AおよびBは、それぞれ下記式によって決められ、
【数3】

【数4】

は、逆浸透(RO)システムにおける透水度(単位:LMH)であり、△Pは、逆浸透(RO)システムの適用圧力であり、Rは、逆浸透(RO)システムにおける脱塩率であり、R=1−cp/cb(cbは、バルク流入水の塩濃度であり、cpは透過水の塩濃度である)で計算され、kはクロスフローセルにおける物質移動係数であり、
Dは、正浸透システムにおける誘導溶質の拡散係数であり、Jは、正浸透システムにおける膜の透水流量であり、ΠDbは、正浸透システムにおける誘導溶液のバルク浸透圧であり、
Kは、K=tτ/Dεで計算される値であり、tは、前記支持層の膜厚であり、τは、前記分離膜の屈曲率であり、εは、分離膜の孔隙率である。
【請求項17】
前記分離膜は、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜または正浸透膜である、請求項1に記載の分離膜。
【請求項18】
下記一般式1で表される構造単位を含む高分子および有機溶媒を含む高分子溶液を用意するステップと、
前記高分子溶液を基材に塗布するステップと、
前記高分子溶液が塗布された基材を非溶媒に沈殿させて、スキン層と多孔性層により形成された支持層を製造するステップと、
前記支持層の片面または両面の上に緻密高分子形成用の高分子を界面重合反応させて、ポリマーマトリックス層を形成するステップと、
を含む分離膜の製造方法:
【化2】

式中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、または−CORであり、
前記Rは、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリール基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基であり、
但し、R〜Rのうちの少なくとも一つおよびR〜Rのうちの少なくとも一つは、それぞれ同じまたは異なる−CORであり、
但し、R〜Rのうちの少なくとも一つおよびR〜Rのうちの少なくとも一つは、それぞれ同じまたは異なり、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリーレン基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリーレン基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキレン基であり、
〜Lは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン基、置換若しくは非置換のC2〜C30のヘテロアリーレン基、置換若しくは非置換のC7〜C30のアルキルアリーレン基、または置換若しくは非置換のC7〜C30のアリールアルキレン基であり、
前記nおよびmは、それぞれ独立して、0〜150の整数であり、
前記o、p、q、およびrは、それぞれ独立して、0〜100の整数である。
【請求項19】
前記高分子溶液は、前記一般式1で表される構造単位を含む高分子を9〜15重量%含むものである、請求項18に記載の分離膜の製造方法。
【請求項20】
前記支持層およびポリマーマトリックス層を含む複合膜に焼き鈍し工程を行うステップをさらに含む、請求項18に記載の分離膜の製造方法。
【請求項21】
精製されるべき不純物が含まれている流入水と、
流入水よりも高い浸透圧を有する浸透誘導溶液と、
片面は前記流入水と接し、反対面は前記浸透誘導溶液と接するように位置し、請求項1〜17のいずれか1項に記載の分離膜と、
浸透誘導溶液の誘導溶質を分離する回収システムと、
前記回収システムによって分離された浸透誘導溶液の誘導溶質を、前記分離膜に接する浸透誘導溶液に再投入する連結手段と、
を備える、正浸透水処理装置。
【請求項22】
前記正浸透水処理装置は、前記流入水から前記浸透誘導溶液へと浸透圧によって前記半透膜を通過した水を含む浸透誘導溶液に対して、前記回収システムによって誘導溶質を分離した残部を処理水として排出する手段をさらに備える、請求項21に記載の正浸透水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22588(P2013−22588A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−100867(P2012−100867)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】